説明

防爆型無線装置

【課題】無線基地局装置を収納する防爆容器の構成を簡略化してコストダウンを実現するとともに、防爆容器の配置場所を容易に設定できるようにする。
【解決手段】防爆容器10に収納された無線基地局装置1と、コネクタ3とともにアンテナ側容器20に収納されたアンテナと、をアンテナ側通信線30によって接続した。防爆容器10は、火花を発生する可能性のある電気回路を有する大型の装置である無線基地局装置1を収納するため、耐圧防爆構造とした。アンテナ側容器20は、火花を発生しない小型の電気部品であるコネクタ3を収納するため、安全増防爆構造とした。アンテナ側容器20において、蓋体22の凹部22B及び貫通孔22Cにアンテナ2を支持する支持台22Dを配置した。アンテナ2においてアンテナ側容器20の外部に露出した部分をケース40によって被覆して安全増防爆構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引火性ガス雰囲気区域等の危険区域内に設置され、無線基地局を構成する防爆型無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
危険区域に設置されて無線基地局を構成する防爆型無線装置として、従来より、送信機又は受信機の少なくとも一方からなる無線基地局装置を、防爆構造の筐体(以下、防爆容器ともいう。)内に収納したものがある。無線基地局装置は、通常、アンテナを備えている。また、防爆容器は、一般に、金属材料によって構成されている。このため、アンテナを含む無線基地局装置の全体を防爆容器内に収納すると、無線基地局装置はアンテナを介して防爆容器の外部との間で電波を送受信することができない。
【0003】
そこで、従来より、図3(A)に示すように、防爆容器101内にアンテナ102用の本質安全防爆構造の安全保持器103を無線基地局装置104とともに収納した防爆型無線装置がある。この防爆型無線装置では、防爆容器101の一部に開口部101Aを形成し、この開口部101Aにケーブル引込器具105を固定している。ケーブル引込器具105を貫通するケーブル106及び防爆容器101内の安全保持器103を介して無線基地局装置104とアンテナ102とを接続する。
【0004】
ところが、この構成では、アンテナを防爆構造とするために安全保持器が必要になる。また、ケーブル引込器具においてケーブルが貫通した貫通孔を樹脂等の充填によって閉塞しなければならない。(例えば、特許文献1参照。)
そこで、図3(B)に示すように、無線基地局装置114のみを防爆容器111内に収納し、無線基地局装置114に付属のアンテナ112を防爆容器111に形成された開口部111Aから外部に露出し、防爆容器111の外部に露出したアンテナ112を非金属材料のカバー113によって覆うようにしたものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第2589899号公報
【特許文献2】特許第3040068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載された構成では、防爆容器から露出したアンテナを覆う耐圧防爆構造の非金属材料のカバーが必要になり、例えば、厚肉の強化ガラス等を素材として円筒形状に形成しなければならない。また、この非金属材料のカバーを無線基地局装置を収納した防爆容器に両者の間の耐圧防爆構造を維持したままで一体的に固定しなければならない。これらのことから、コストの高騰を招く問題がある。
【0006】
さらに、無線基地局装置と外部の装置との通信状態を良好に維持するためには、アンテナとともに防爆容器に収納された無線基地局装置を電波の届き易い場所に配置しなければならないが、防爆容器はアンテナ及び無線基地局装置を収納しているために配置に大きなスペースを必要とし、防爆容器の配置場所を容易に設定することができない問題がある。
【0007】
この発明の目的は、アンテナを無線基地局装置から分離して配置できるようにし、無線基地局装置を収納する防爆容器の構成を簡略化してコストダウンを実現できるとともに、比較的小型のアンテナ部のみを電波の届き易い場所に配置できるようにして防爆容器の配置場所を容易に設定することができる防爆型無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0009】
(1)無線基地局装置を収納する防爆容器と、前記防爆容器の外部に配置される防爆構造のアンテナと、前記無線基地局装置と前記アンテナとを接続する装置側信号線と、から構成したことを特徴とする。
【0010】
この構成においては、防爆容器の外部に配置された防爆構造のアンテナが、装置側信号線を介して防爆容器に収納された無線基地局装置に接続される。したがって、防爆容器には無線基地局装置のみが収納され、アンテナは無線基地局装置から離間した任意の位置に配置可能な状態にされる。
【0011】
(2)前記防爆容器を耐圧防爆構造とし、前記アンテナと前記通信線との接続用の端子を前記アンテナとともに安全増防爆構造のアンテナ側容器に収納したことを特徴とする。
【0012】
この構成においては、防爆容器の内部で爆発が発生しても、防爆容器外部の爆発性ガスに点火しないようにした耐圧防爆構造の防爆容器に無線基地局装置が収納され、火花若しくはアークを発生せず、又は高温となって点火源となる虞のないものについて、絶縁性能及び温度の上昇による危険、並びに外部からの損傷等に対する安全度を増加した安全増防爆構造のアンテナ側容器にアンテナ及び端子が収納される。
【0013】
したがって、火花の発生する可能性のある電気回路を備えた無線基地局装置が、耐圧防爆構造の防爆容器に収納され、電気回路に発生した火花によって防爆容器の外部の危険ガスが点火することがない。また、火花の発生する可能性のないアンテナ及び端子が、比較的平易な構造の安全増防爆構造のアンテナ側容器に収納される。
【0014】
(3)前記アンテナ側容器は、前記アンテナを収納する本体側容器と、前記端子を収納する端子側容器と、からなり、前記アンテナと前記端子とを接続するアンテナ側信号線が貫通する引込器具を介して前記本体側容器と前記端子側容器とを連結したことを特徴とする。
【0015】
この構成においては、アンテナ側容器が引込器具を介して連結された本体側容器と端子側容器とからなり、本体側容器に収納されたアンテナと端子側容器に収納された端子とが引込器具を貫通したアンテナ側信号線によって接続される。したがって、アンテナ側容器は、アンテナと端子とを分離して配置する必要のある構造規格の防爆構造を満足する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0017】
(1)防爆容器の外部に配置された防爆構造のアンテナを、装置側信号線を介して防爆容器に収納された無線基地局装置に接続することにより、アンテナを防爆容器に収納された無線基地局装置から離間した任意の位置に配置することができる。これによって、外部との間の電波の通信状態を確保する必要のあるアンテナを無線基地局装置が収納される防爆容器内に収納する必要がなく、無線基地局装置が収納される防爆容器の構造を簡略化することができる。また、電波の届き易い場所にはアンテナのみを設置すればよく、無線基地局装置を収納した防爆容器の設置場所は電波状態の考慮することなく設定することができ、無線基地局装置を収納した防爆容器の設置場所を容易に設定することができる。さらに、防爆容器に収納された無線基地局装置とアンテナとの間は、装置側通信線のみによって接続されているため、防爆容器を設置後にアンテナを電波の届き易い位置に容易に移動させることができる。
【0018】
(2)火花の発生する可能性のある電気回路を備えた無線基地局装置を耐圧防爆構造の防爆容器に収納するとともに、火花の発生する可能性のないアンテナ及び端子を比較的平易な構造の安全増防爆構造のアンテナ側容器に収納することにより、収納する機器に応じた容器を使用して無線基地局装置を通信可能な状態で危険地域内に安全に設置することができる。
【0019】
(3)本体側容器に収納されたアンテナと端子側容器に収納された端子とを接続するアンテナ側信号線を本体側容器と端子側容器とを連結する引込器具に貫通したアンテナ側信号線によって接続することにより、アンテナ側容器を構造規格の防爆構造に適合した構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、この発明の実施形態に係る防爆型無線装置の構成を示す図である。この発明の防爆型無線装置100は、防爆容器10、アンテナ側容器20及び装置側通信線30を備えている。
【0021】
防爆容器10は、本体11と蓋12とからなり、内部に無線基地局装置1を収納する。防爆容器10は、火花を発生する可能性のある電気回路を有する大型の装置である無線基地局装置1を収納するため、少なくとも耐圧防爆構造とする必要があり、比較的大きな形状となる。本体11は、上面に開放した一例として中空直方体形状を呈し、上面の周縁部にフランジ部11Aが形成されている。本体11の一方の側面には孔部11Bが形成されており、この孔部11Bにケーブル引込器具11Cが嵌着されている。ケーブル引込器具11Cは、例えば、パッキン式引込器具であり、装置側通信線30が貫通する。
【0022】
蓋体12は、略平板形状を呈し、底面には本体11のフランジ部11Aが嵌入する段部12Aが形成されている。蓋体12は、本体11の上面の周縁部との対向部分を貫通する図示しない締結ネジを介して、本体11の上面に固定され、本体11の上面を被覆する。
【0023】
アンテナ側容器20は、本体21と蓋22とからなり、内部にこの発明の端子であるコネクタ3を収納する。アンテナ側容器20は、火花を発生しない小型の電気部品であるコネクタ3を収納するため、例えば安全増防爆構造とすることができ、比較的小型に構成される。本体21は、上面に開放した中空直方体形状を呈し、上面の周縁部にフランジ部21Aが形成されている。本体21の一方の側面には孔部21Bが形成されており、この孔部21Bにケーブル引込器具21Cが嵌着されている。ケーブル引込器具21Cは、例えば、パッキン式引込器具であり、装置側通信線30が貫通する。
【0024】
蓋体22は、略平板形状を呈し、底面の周囲には本体21のフランジ部21Aが嵌入する段部22Aが形成されている。蓋体22は、本体21の上面の周縁部との対向部分を貫通する図示しない締結ネジを介して、本体21の上面に固定され、本体21の上面を被覆する。蓋体22の中央部の内側面には凹部22Bが形成されている。この凹部22Bには、貫通孔22Cが形成されている。凹部22B及び貫通孔22Cには支持台22Dが配置されている。支持台22Dは、アンテナ2を支持する。
【0025】
アンテナ2は、金属材料の棒状体であり、支持台22Dの中央部を上下に貫通している。アンテナ2の上下方向における支持台22Dよりも下方に位置する部分は、アンテナ側容器20の内部に収納されている。アンテナ2の上下方向における支持台22Dよりも上方に位置する部分は、アンテナ側容器20の外部に露出している。アンテナ2においてアンテナ側容器20の外部に露出した部分は、ガラス又は樹脂等の電波を透過するケース40によって被覆され、安全増防爆構造にされている。
【0026】
ケース40は、下端部が開放した中空形状を呈し、下端部の内部に支持台22Dが嵌入するとともに貫通孔22Cに嵌入している。ケース40は、蓋体22に対して安全増防爆構造を維持して取り付けられる。このため、蓋体22に対するケース40の取付は、アンテナ2を被覆するケースを防爆容器10の蓋体12に本質安全防爆構造を維持して取り付ける場合と比較して容易である。
【0027】
コネクタ3は、アンテナ側容器20内に支持されたソケット3Aと装置側通信線30の一端に接続されたプラグ3Bとを着脱自在にして構成された同軸中継コネクタである。なお、装置側通信線30の他端は、防爆容器10内において無線基地局装置1に接続されている。アンテナ側容器20の内部において、アンテナ2の下端部はアンテナ側通信線4を介してコネクタ3のソケット3Aに接続されている。したがって、アンテナ2は、アンテナ側通信線4、コネクタ3及び装置側通信線30を介して無線基地局装置1に接続されている。
【0028】
以上の構成により、アンテナ側容器20に収納されたアンテナ2を防爆容器10に収納された無線基地局装置1から分離して配置することができる。これによって、危険地域内における防爆容器10の設置場所を無線基地局装置1の通信状態を考慮することなく設定しても、アンテナ2を収納したアンテナ側容器20を電波の届き易い位置に配置することで、無線基地局装置1と外部の装置との間で良好に通信を行うことができる。この場合に、アンテナ側装置20は防爆容器10に比較して十分に小さいため、電波の届き易い場所に容易に配置することができる。
【0029】
また、防爆容器10の一部からアンテナ2を露出させる必要がないため、アンテナ2を被覆するケースを防爆容器10に本質安全防爆構造を維持した状態で備える必要がなく、防爆容器10を簡単な構造とすることができ、コストダウンを実現できる。
【0030】
さらに、防爆容器10に収納された無線基地局装置1とアンテナ2との間は、装置側通信線30のみによって接続されているため、防爆容器10を設置後にアンテナ2を電波の届き易い位置に容易に移動させることができる。
【0031】
また、無線基地局装置1の仕様にかかわらず、同一のアンテナ側容器20を用いることができる。
【0032】
図2は、上記防爆型無線装置におけるアンテナ側容器の別の構成を示す図である。このアンテナ側容器120は、図1に示したアンテナ側容器20の構成に加えて、仕切り部材130及び引込器具123を備えたものであり、その他の構成はアンテナ側容器20と共通するため、アンテナ側装置20と同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
アンテナ側容器120の内部には、仕切り部材130が備えられている。仕切り部材130は、上面が開放した一例として金属製の中空筐体であり、上面の周囲にフランジ部130Aにおいて蓋体22の内側面に固定されている。仕切り部材130は、蓋体22の凹部22Bの下面側を覆う。また、仕切り部材130の底面の中央部には、貫通孔130Bが形成されている。貫通孔130Bには、引込器具123が嵌着されている。引込器具123は、例えば、パッキン式引込器具であり、アンテナ側信号線4が安全増防爆構造を維持した状態で貫通する。
【0034】
以上の構成によって、アンテナ側容器120の内部は、アンテナ2を収納する本体側容器120Aとコネクタ3を収納する端子側容器120Bと、に分離され、アンテナ2とコネクタ3のソケット3Aとを接続するアンテナ側通信線4が貫通する引込器具123を介して本体側容器120Aと端子側容器120Bとを連結している。
【0035】
このため、アンテナ側容器120は、アンテナ部と端子部とを分離しなければならないとする構造規格の安全増防爆構造を満足することができる。
【0036】
以上、本実施形態では、装置側通信線を介してアンテナ側容器と防爆容器とを分離した構成を用いて説明したが、必ずしもアンテナ側容器と防爆容器とを分離する必要はなく、電波の届き易い場所等では、アンテナ側容器と防爆容器とをネジ等を用いて一体的に連結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施形態に係る防爆型無線装置の構成を示す図である。
【図2】上記防爆型無線装置におけるアンテナ側容器の別の構成を示す図である。
【図3】従来の防爆型無線装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 無線基地局装置
2 アンテナ
3 コネクタ(端子)
4 アンテナ側通信線
10 防爆容器
20 アンテナ側容器
30 装置側通信線
123 引込器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局装置を収納する防爆容器と、前記防爆容器の外部に配置される防爆構造のアンテナと、前記無線基地局装置と前記アンテナとを接続する装置側信号線と、から構成したことを特徴とする防爆型無線装置。
【請求項2】
前記防爆容器を耐圧防爆構造とし、前記アンテナと前記通信線との接続用の端子を前記アンテナとともに安全増防爆構造のアンテナ側容器に収納したことを特徴とする請求項1に記載の防爆型無線装置。
【請求項3】
前記アンテナ側容器は、前記アンテナを収納する本体側容器と、前記端子を収納する端子側容器と、からなり、前記アンテナと前記端子とを接続するアンテナ側信号線が貫通する引込器具を介して前記本体側容器と前記端子側容器とを連結したことを特徴とする請求項2に記載の防爆型無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−42558(P2006−42558A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222106(P2004−222106)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】