説明

防爆型積層表示装置

【課題】大型のガラス管を必要とすることなく危険区域に配置できるようにし、コストの上昇を防止できるとともに、設置作業や運搬作業を容易にでき、音響装置を有効に使用できるようにする。
【解決手段】本質安全防爆構造の積層表示灯1と、安全保持回路23を収納した耐圧防爆構造の基台2と、から構成した。基台2の側面に設けられた耐圧防爆用引込口22には、積層表示灯1の表示部11A〜11Cに電源を供給する図示しない電源線が貫通する。基台2の上面に設けられた耐圧防爆用引込口21には、積層表示灯1の図示しない導線が貫通する。積層表示灯1は、基台2の内部において導線及び安全保持回路23を介して電源線に接続される。基台2は、安全保持回路23と導線及び電源線との接続が完了した後に、内部に例えば珪素パウダ又は樹脂が充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引火性ガス雰囲気等の危険区域内に設置され、積層された表示部を選択的に点灯することによって装置の動作状態等を表示する防爆型積層表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場内の工作機械等の装置の動作状態等を表示するために、複数の表示灯を積層した積層表示灯が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。積層表示灯は、例えば青色の表示灯、黄色の表示灯及び赤色の表示灯を下から上にこの順に積層し、装置の正常時には青色の表示灯、軽微な異常時には黄色の表示灯、重大な異常時には赤色の表示灯をそれぞれ点灯させる。また、積層表示灯には例えば重大な異常時に鳴動する警報器等の音響装置を備えたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
装置に異常を生じた場合には、直ちに異常を回避するための作業を実行しなければならないため、積層表示灯の表示状態を周囲のいずれの位置においても視認できるようにする必要がある。このため、積層表示灯は一般に円筒形状を呈し、全周にわたって表示光を発光するように構成されている。
【0004】
積層表示灯には表示灯の駆動電源が供給されるため、積層表示灯によって動作状態を表示すべき装置が引火性ガス雰囲気区域等の危険区域内に設置される場合には、全周にわたって表示光を発光する構成を維持したまま積層表示灯を防爆構造としなければならない。
【0005】
このため、従来の積層表示灯100は、例えば図4に示すように、円筒形状の耐圧防爆用ガラス管201を有する耐圧防爆構造容器200に収納して危険区域内で使用されていた。耐圧防爆構造容器200は、耐圧防爆用ガラス管201の上下端部を閉塞する耐圧防爆用上蓋202及び耐圧防爆用基台203を備えている。ガラス管201は、基台203上に載置された積層表示灯100の周囲を被覆する。基台203は、耐圧防爆用引込口204を備え、内部に外部配線用端子台205を収納している。積層表示灯100は、基台203の内部において引込口204を貫通した電源線に外部配線用端子台205を介して接続される。
【0006】
積層表示灯100は、上蓋202及び基台203によって密閉された透光性のガラス管201によって周囲を被覆されており、表示光を全周から視認することができる状態を維持したままで耐圧防爆構造にされ、危険区域内で安全に使用することができる。
【特許文献1】特開平07−326209号公報
【特許文献2】特開2004−062653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の構成では、積層表示灯の周囲を覆うことができる大型のガラス管が必要になり、コストの上昇だけでなく、設置作業や運搬作業が困難になる問題がある。また、ガラス管の上下端を上蓋及び基台によって閉塞するために高い加工精度が要求され、樹脂を用いてガラス管の上下端と上蓋及び基台とを固着する場合には環境試験に合格しなければならならず、積層表示灯の大きさに応じて複数種類のガラス管を準備する必要があり、これらによってもコストの上昇を招く。さらに、積層表示灯の周囲を被覆するために内部で発生した音が外部に伝わり難く、積層表示灯に備えられることのある音響装置を有効に使用することができない問題もある。
【0008】
この発明の目的は、周囲を覆う大型のガラス管を必要とすることなく危険区域に配置できるようにし、コストの上昇を防止することができるとともに、設置作業や運搬作業を容易にすることができ、音響装置を有効に使用することができる防爆型積層表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するため、少なくとも1つが表示光を発光する表示器である複数の表示部を積層して構成した本質安全防爆構造の積層表示灯と、
少なくとも電源線が貫通する耐圧防爆用引込口を備え、内部に前記電源線を前記積層表示灯に接続する安全保持回路を収納した耐圧防爆構造の基台と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成においては、光源の消費電力が充分に小さい表示器を備えた本質安全防爆構造の積層表示灯が、基台に収納された安全保持回路を介して電源線に接続される。したがって、防爆容器に収納することなく積層表示灯の防爆構造が維持され、危険区域内で表示光を外部に発光できる状態で積層表示灯の周囲を被覆するガラス管が不要になる。
【0011】
前記積層表示灯として、前記表示部の1つが音響装置であるものが使用される。積層表示灯の周囲が被覆されないため、積層表示灯が発生した音が外部に確実に伝わることから、音響装置を備えた積層表示灯が使用可能になる。
【0012】
前記基台は、砂詰防爆構造又は樹脂充填防爆構造とされる。基台の防爆構造が砂詰又は樹脂充填により容易に実現される。
【0013】
前記積層表示灯と前記基台内の前記安全保持回路とを着脱自在に接続するコネクタが備えられる。同一の基台に組み合わされる積層表示灯が容易に交換される。
【0014】
前記安全保持回路は、単一の安全保持器に前記複数の表示部を直列に接続するとともに、前記複数の表示部のうちの少なくとも1つの表示部の入力側と出力側とを短絡手段によって選択的に短絡する。複数の表示部に対して備えるべき安全保持器が単数になり、コストが低減される。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、防爆容器に収納することなく積層表示灯の防爆構造を維持することができ、危険区域内で表示光を外部に発光できる状態で積層表示灯の周囲を被覆するガラス管を不要にすることができる。このため、コストの上昇を防止することができるとともに、設置作業や運搬作業を容易にすることができ、積層表示灯が備える音響装置を有効に使用することができる。
【0016】
砂詰又は樹脂充填により基台を容易に防爆構造とすることができ、コストをさらに低減できる。
【0017】
コネクタによって積層表示灯と安全保持回路とを着脱自在に接続することにより、同一の基台に組み合わされる積層表示灯の交換作業を容易に行うことができる。
【0018】
単一の安全保持器に積層表示灯の複数の表示部を直列に接続するとともに、少なくとも1つの表示部の入力側と出力側とを選択的に短絡する短絡手段を備えることにより、複数の表示部に対して備えるべき安全保持器を単一にすることができ、コストをさらに低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、この発明の実施形態に係る防爆型積層表示装置の構成を示す図であり、同図(A)は積層表示灯と基台とを一体にした状態を示し、同図(B)は積層表示灯と基台とを別体にした状態を示している。この発明の防爆型積層表示装置10は、本質安全防爆構造の積層表示灯1と耐圧防爆構造の基台2を含む。積層表示灯1は、一例として3個の表示部11A〜11Cを上下に積層して構成されている。表示部11A〜11Cのそれぞれは、透光性樹脂を素材とする円筒形状のレンズ内にLED等の電力消費量の小さい光源を収納したこの発明の表示器である。これによって、積層表示灯1は、本質安全防爆構造にされている。なお、表示部の積層数は3個に限るものではない。
【0020】
基台2は、上面及び側面に耐圧防爆用引込口21,22を備え、内部に安全保持回路23を収納している。基台2の側面に設けられた耐圧防爆用引込口22には、積層表示灯1の表示部11A〜11Cに電源を供給する図示しない電源線が貫通する。基台2の上面に設けられた耐圧防爆用引込口21には、積層表示灯1の図示しない導線が貫通する。積層表示灯1は、基台2の内部において導線及び安全保持回路23を介して電源線に接続される。
【0021】
基台2は、安全保持回路23と導線及び電源線との接続が完了した後に、内部に例えば珪素パウダ又は樹脂が充填されることにより、砂詰防爆構造又は樹脂充填防爆構造とすることができる。これによって、基台2の筐体自体を耐圧防爆構造とする必要がなく、基台2を低廉に製造することができる。
【0022】
図1(A)に示す状態では、耐圧防爆用引込口21は、一方が積層表示灯1の底面に固定されるとともに他方が基台2の上面に固定されたプラグ及びソケットによって構成されており、積層表示灯1と基台2とを連結する機能を備えたものである。これによって、積層表示灯1は、基台2の上面に載置された状態に固定される。
【0023】
また、図1(B)に示す状態では、積層表示灯1の底面に本質安全防爆用引込口24を備えるとともに基台2の上面に耐圧防爆用引込口21を備え、本質安全防爆用引込口24と耐圧防爆用引込口21とをケーブル25によって接続することにより、積層表示灯1を基台2から分離して配置している。これによって、積層表示灯1を防爆構造でない通常の積層表示灯と同様の作業で所望の場所に設置することができる。
【0024】
さらに、例えば、基台2の内部において、積層表示灯1と安全保持回路23との間にコネクタを備え、コネクタを介して積層表示灯1と安全保持回路23とを着脱自在に接続することもできる。これによって、積層表示灯1の故障時や用途の変更等における積層表示灯の交換作業を容易に行うことができる。この場合に、使用する積層表示灯の大きさが変化した場合にも同一の基台2を用いることができ、積層表示灯の大きさに応じて複数のサイズの基台2を準備する必要がない。
【0025】
防爆型積層表示装置10は、外観において、本質安全防爆構造の積層表示灯1と耐圧防爆構造の基台2とからなり、高価で重く破損し易いガラス管を必要としない。したがって、設置作業や運搬作業を容易に行うことができるとともに、コストダウンを実現できる。
【0026】
図2は、上記積層表示装置における安全保持回路の構成を示す図てある。図2(A)に示すように、安全保持回路23は、積層表示灯1の各表示部11A〜11Cに設けられている光源用のLED12A〜12Cのそれぞれに接続された安全保持器23A〜23Cを備え、各LED12A〜12Cのそれぞれに個別の安全保持回路を構成している。安全保持器23A〜23Cのそれぞれは、例えばツェナダイオードや抵抗器等の電流制限手段によって構成されている。
【0027】
安全保持回路23は、図2(B)に示すように構成することもできる。図2(B)に示す例では、単一の安全保持器23Dから積層表示灯1の各表示部11A〜11Cに設けられた光源用のLED12A〜12Cを直列に接続した単一の安全保持回路を構成し、この安全保持回路におけるLED12A〜12Cのそれぞれの入力端子と出力端子との間を短絡する短絡手段13A〜13Cを備えている。短絡手段13A〜13Cのそれぞれは、例えばフォトカプラによって構成されている。
【0028】
この構成において、例えば、LED12B,12Cに対応した短絡手段13B,13Cを信号線14B,14Cを介して供給された信号によって短絡すると、電源は安全保持器23DからLED12A、短絡手段13B、短絡手段13Cを順に経由し、LED12B,12Cを経由することなく安全保持器23Dに戻る。このため、LED12Aのみが点灯し、LED12B,12Cは点灯しない。このように、短絡手段13A〜13Cを選択的に有効にすることにより、LED12A〜12Cのうち、有効にした短絡手段に対応するものを消灯させることができる。
【0029】
このように、図2(B)に示す構成によれば、比較的高価な安全保持器の数を図2(A)に示した構成に比較して少なくすることができ、コストダウンを実現できる。
【0030】
図3は、この発明の別の実施形態に係る防爆型積層表示装置における安全保持回路の構成を示す図である。この実施形態に係る防爆型積層表示装置は、一例としてLED12A〜12C及び警報器32のそれぞれを収納した4層の表示部を積層したものである。警報器32は、この発明の音響装置であり、異常発生時に鳴動する。この防爆型積層表示装置は、積層表示灯の周囲を被覆する耐圧防爆用ガラス管を備えていないため、警報器32の鳴動時に警報を周囲に伝えることができる。
【0031】
基台2に収納される安全保持回路23は、図3(A)に示すように、LED12A〜12Cのそれぞれに対応した安全保持器23A〜23Cと警報器32に対応した安全保持器23Eとを備えている。安全保持器23A〜23Cは、LED12A〜12Cに流れる電流値に応じた電流制限手段を備えている。LED12A〜12Cが同一の仕様であれば、安全保持器23A〜23Cは同一の構成とすることができる。安全保持器23Eは、警報器32に流れる電流値に応じた電流制限手段を備えている。一般的に、警報器32に流れる電流値はLED12A〜12Cに流れる電流値と異なるため、安全保持器23Eは安全保持器23A〜23Cとは異なる構成である。
【0032】
このように、図3(A)に示す安全保持回路23は、LED12A〜12C及び警報器32のそれぞれに対して個別の安全保持回路を構成している。
【0033】
図3(B)に示す安全保持回路23は、LED12A〜12Cを構成するLED及び警報器32のそれぞれに対応する電流制限手段によって構成された単一の安全保持器33を備えている。安全保持器33のLEDに対応した電流制限手段にはLED12A〜12Cが直列に接続されており、LED12A〜12Cのそれぞれの入力端子及び出力端子の間を選択的に短絡する短絡手段13A〜13Cを備えている。安全保持器33の警報器32に対応した電流制限手段には、警報器32及び短絡手段34が直列に接続されている。短絡手段13A〜13C及び34のそれぞれは、例えばフォトカプラによって構成されている。
【0034】
この構成において、例えば、LED12B,12Cに対応した短絡手段13B,13Cを信号線14B,14Cを介して供給された信号によって短絡すると、電源は安全保持器33からLED12A、短絡手段13B、短絡手段13Cを順に経由し、LED12B,12Cを経由することなく安全保持器33に戻る。このため、LED12Aのみが点灯し、LED12B,12Cは点灯しない。このように、短絡手段13A〜13Cを選択的に有効にすることにより、LED12A〜12Cのうち、有効にした短絡手段に対応するものを消灯させることができる。
【0035】
また、短絡手段34を信号線14Dを介して供給された信号によって短絡すると、電源は安全保持器33から警報器32及び短絡手段34を経由して安全保持器33に戻る。したがって、短絡手段34を有効にすると警報器32が鳴動する。
【0036】
このように、図3(B)に示す構成によれば、比較的高価な安全保持器の数を図3(A)に示した構成に比較して少なくすることができ、コストダウンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施形態に係る防爆型積層表示装置の構成を示す図である。
【図2】上記防爆型積層表示装置における安全保持回路の構成を示す図である。
【図3】この発明の別の実施形態に係る防爆型積層表示装置における安全保持回路の構成を示す図である。
【図4】従来の防爆型積層表示装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 積層表示灯
2 基台
10 防爆型積層表示装置
11A〜11C 表示部
12A〜12C LED
13A〜13C 短絡手段
21,22 耐圧防爆用引込口
23 安全保持回路
23A〜23D 安全保持器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つが表示光を発光する表示器である複数の表示部を積層して構成した本質安全防爆構造の積層表示灯と、
少なくとも電源線が貫通する耐圧防爆用引込口を備え、内部に前記電源線を前記積層表示灯に接続する安全保持回路を収納した耐圧防爆構造の基台と、
を含むことを特徴とする防爆型積層表示装置。
【請求項2】
前記積層表示灯は、前記表示部の1つが音響装置であることを特徴とする請求項1に記載の防爆型積層表示装置。
【請求項3】
前記基台は、砂詰防爆構造又は樹脂充填防爆構造であることを特徴とする請求項1に記載の防爆型積層表示装置。
【請求項4】
前記積層表示灯と前記基台に収納された前記安全保持回路とをコネクタを介して着脱自在に接続することを特徴とする請求項1に記載の防爆型積層表示装置。
【請求項5】
前記安全保持回路は、単一の安全保持器に前記複数の表示部を直列に接続するとともに、前記複数の表示部のうちの少なくとも1つの表示部の入力側と出力側とを選択的に短絡する短絡手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の防爆型積層表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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