説明

防爆高温対応形マルチ渦流量計

【課題】防爆高温対応形とすることが可能なマルチ渦流量計を提供する。
【解決手段】感温センサ21、加熱感温センサ22は、この金属管体36、37が渦検出器4の管体挿通穴19、20に挿通された状態で溶接により液密に固定されている。Oリングを用いずにシール性の確保がなされている。感温センサ21及び加熱感温センサ22の各リード線42及び43は、内部空間35において渦検出センサ11のリード線27と共に纏められ、そして、この纏められたリード線27、42、43は金属パイプ34を介して図示しない流量変換器側へ引き出されている。各リード線27、42、43は、内部空間35で纏められて金属パイプ34を介し流量変換器側へ引き出される構造であることから、センサと流量変換器との取り合い部分が一つになるようになっている。このような構造によって防爆取得が容易なものになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えたマルチ渦流量計に関し、詳しくは、防爆及び高温対応形となるマルチ渦流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流管に流れる被測定流体の流量を計測するために、渦流量計や熱式流量計が用いられている。
【0003】
渦流量計は、周知のように、流体の流れの中に渦発生体を配設したとき、所定のレイノルズ数範囲では、渦発生体から単位時間内に発生するカルマン渦の数(渦周波数)が気体、液体に関係なく流量に比例することを利用したもので、この比例定数はストローハル数と呼ばれている。渦検出器としては、熱センサ、歪みセンサ、光センサ、圧力センサ、超音波センサ等が挙げられ、これらは渦による熱変化、揚力変化等を検出することが可能なものになっている。渦流量計は、被測定流体の物性に影響されずに流量を測定できる簡易な流量計であって、気体や流体の流量計測に広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
熱式流量計は、感温センサ(流体温度検出センサ)と加熱感温センサ(加熱側温度センサ)とを備えて構成されており、温度センサと加熱センサの機能を有する加熱感温センサ(流速センサ(ヒータ))の温度が感温センサで計測される温度に対して一定の温度差になるように制御されている。これは、被測定流体を流した時にヒータから奪われる熱量が質量流量と相関があるからであって、ヒータに対する加熱電力量から質量流量が算出されるようになっている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
下記特許文献3には、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えたマルチ渦流量計の技術が開示されている。マルチ渦流量計は、微少流量から大流量まで精度よく計測することができ、この点が特に他の流量計よりも優れている。
【特許文献1】特許第2869054号公報 (第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−12220号公報 (第6頁、第4図)
【特許文献3】特開2006−29966号公報 (第4−8頁、第1−5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に開示されたマルチ渦流量計にあっては、感温センサ及び加熱感温センサの各金属管体が流量変換器まで直接のびる構造であり、また、この構造から分かるように渦検出器のセンサのリード線が感温センサ及び加熱感温センサの各リード線とは別に配線される構造であることから、防爆取得が容易でないという問題点を有している。さらに、Oリングを用いてシール性を確保する構造であることから、高温対応が困難であるという問題点を有している。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、防爆高温対応形とすることが可能なマルチ渦流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の防爆高温対応形マルチ渦流量計は、流管の流路に設けられて被測定流体を通過させる測定管と、前記被測定流体の流れに対向するように前記測定管に設けられる渦発生体と、該渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器とを有する渦式検出手段を備えるとともに、前記流路に突出する感温センサ及び加熱感温センサを有する熱式検出手段を備えるマルチ渦流量計において、前記感温センサ及び前記加熱感温センサの各金属管体を前記渦検出器の金属容器に対し挿通状態で液密に溶接固定し、この溶接固定した前記感温センサ及び前記加熱感温センサの各リード線と前記渦検出器のセンサのリード線とを前記金属容器の内部で纏め、さらに、この纏めたリード線群を前記金属容器に取り付けた金属パイプを介して流量変換器側へ引き出すことを特徴としている。
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、各リード線が金属容器内で纏められて金属パイプを介し流量変換器側へ引き出される。センサと流量変換器との取り合い部分が一つになり、このような構造によって防爆取得が容易になる。また、本発明によれば、感温センサ及び加熱感温センサの各金属管体が金属容器に液密に溶接固定される。Oリングを用いずにシール性の確保がなされる構造であることから、高温対応が可能になる。
【0010】
請求項2記載の本発明の防爆高温対応形マルチ渦流量計は、請求項1に記載の防爆高温対応形マルチ渦流量計において、前記渦発生体に鍔部を設け、前記感温センサ及び前記加熱感温センサの前記各金属管体の端部を前記鍔部にて支持することを特徴としている。
【0011】
このような特徴を有する本発明によれば、感温センサ及び加熱感温センサが渦発生体によって支持される。具体的な配置及び支持の例としては、感温センサ及び加熱感温センサの各金属管体が渦発生体に対して平行となるように配置される。また、感温センサ及び加熱感温センサの各金属管体の端部が渦発生体に形成された鍔部に支持される。
【0012】
尚、後述の最良の形態の欄では、支持位置として金属管体の端部(自由端部)を挙げているが、金属管体の基端部(被測定流体が流れる測定管から突出する部分の基端部)に生じる集中応力が緩和できるような位置であればこの限りではないものとする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された本発明によれば、防爆高温対応形とすることができるという効果を奏する。また、請求項2に記載された本発明によれば、大流量時における感温センサ及び加熱感温センサに生じる集中応力を緩和することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の防爆高温対応形マルチ渦流量計の一実施の形態を示す断面図である。
【0015】
図1において、引用符号1は本発明のマルチ渦流量計を示している。このマルチ渦流量計1は、渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを兼ね備えるように構成されている。また、マルチ渦流量計1は、防爆及び高温対応形となる構造を有するように構成されている。マルチ渦流量計1は、測定管2、渦発生体3、及び渦検出器4を有する渦式検出手段5と、熱式検出手段6と、渦式検出手段5及び熱式検出手段6からの出力信号に基づいて被測定流体(図示省略)の流速又は流量を算出する流量変換器(図示省略)とを備えて構成されている。以下、各構成について説明する。
【0016】
渦式検出手段5を構成する測定管2は、管断面が例えば円形状となる筒状に形成されている。測定管2は、被測定流体が流れる方向に沿って伸びるように形成されている。渦式検出手段5を構成する渦発生体3は、測定管2の内部に渦を発生させるための部分であって、被測定流体の流れに対向するように、この形状が形成されている。
【0017】
渦発生体3は、本形態において、三角柱形状に形成されている(形状は一例であるものとする。特許文献1の特許第2869054号公報には幾つかの例が開示されている)。渦発生体3には、一端が開口した計測室7が形成されている。計測室7は、渦発生体3の軸方向に形成されている。このような計測室7には、被測定流体の流れに対して直交方向に貫通する導圧孔8が形成されている。導圧孔8は、渦(カルマン渦)による変動圧を計測室7に導入するために形成されている。
【0018】
渦式検出手段5を構成する渦検出器4は、ステンレス鋼製の振動管9及びカバー10と、渦検出センサ11とを備えて構成されている。このような構成の渦検出器4には、熱式検出手段6が一体化されている。振動管9は、計測室7に差し込まれる可動管部12と、可動管部12の一端に連成される受圧板13と、可動管部12の他端に連成されて測定管2の固定部に固定される振動部取り付けフランジ14と、この振動部取り付けフランジ14に連成される振動管頭部15と、振動管頭部15から可動管部12の上記一端近傍にかけて形成される空洞部16とを有している。
【0019】
可動管部12は、計測室7の内周面に対して僅かな隙間があくような形状に形成されている。受圧板13は、導圧孔8の位置に合うように配置形成されている。振動部取り付けフランジ14には、ボルト穴17が形成されている。振動管頭部15には、カバー10を固定するための固定部18が形成されている。空洞部16には、渦検出センサ11が僅かな隙間をあけて差し込まれるようになっている。空洞部16の外側には、振動管頭部15を貫通するような管体挿通穴19、20が形成されている。管体挿通穴19、20は、熱式検出手段6の後述する感温センサ21、加熱感温センサ22の固定のために形成されている。
【0020】
渦検出センサ11は、振動管9が受けるカルマン渦による圧力変動を忠実に受けて電気信号に変換して流量変換器(図示省略)へ出力することができるように構成されている。具体的には、弾性母材23と、圧電素子板24と、電極板25と、端子26と、リード線27と、バネ板28とを備えて構成されている。
【0021】
弾性母材23は、異径の金属柱であって、上端部29と支持円柱部30とバネ取り付け部31とを有している。上端部29には、圧電素子板24が貼り付けによって取り付けられている。支持円柱部30は、可動管部12に差し込まれる部分であって、空洞部16に対して僅かな隙間があくような形状に形成されている。支持円柱部30の上端には、上端部29が、また、支持円柱部30の下端には、バネ取り付け部31が連成されている。バネ取り付け部31は、支持円柱部30よりも小径であって、バネ板28が溶接等により連成されている。
【0022】
バネ板28は、空洞部16の端部に形成される係止凹部32に挿入され、そして、バネ作用によって支持可能となる部分であって、放射状のスリット(図示省略)が複数形成されている。バネ板28は、係止凹部32の径よりも若干大きな径となるように形成されている。
【0023】
圧電素子板24は、上端部29に形成された二つの面取り部に各々金ペースト等の導電性接着剤を用いて貼着された圧電素子であって、非貼着面には、各々、例えば多孔板からなる電極板25が貼着されている。圧電素子板24は、端子26を介してリード線27に接続されている。
【0024】
カバー10は、渦検出センサ11を密封するために備えられている。カバー10には、可動管部12の固定部18に面接触してこの部分に固定される固定部33が形成されている。カバー10の上部中央には、金属パイプ34が気密に取り付けられている。金属パイプ34は、リード線引き出し用の挿通管であって、図示しない流量変換器側へとのびるように形成されている。カバー10は、可動管部12と共に金属容器を構成するものであって、カバー10が固定部33を介して可動管部12の固定部18に固定されると、内部空間35が形成されるようになっている。尚、固定部18、33同士の固定に関しては、本形態において電子ビーム溶接が採用されるものとする(一例であるものとする)。
【0025】
熱式検出手段6は、感温センサ21と加熱感温センサ22とを備えて構成されている。感温センサ21及び加熱感温センサ22は、共に既知のものが用いられている。本形態の感温センサ21は棒状の温度センサであり、同じく棒状の加熱感温センサ22は、温度センサと加熱センサの機能を有する流速センサ(ヒータ)であるものとする。感温センサ21、加熱感温センサ22は、それぞれ金属管体36、37を有している。感温センサ21、加熱感温センサ22は、この金属管体36、37が渦検出器4の管体挿通穴19、20に挿通された状態で溶接により液密に固定されている(本形態においては真空ブレージングが採用されるものとする(一例であるものとする)。Oリングを用いずにシール性の確保がなされている。従って、高温対応が可能になるものとする)。溶接は、例えば引用符号38の位置でなされている。
【0026】
感温センサ21及び加熱感温センサ22の各感温部分39は、流管2の流路40に突出している。感温センサ21及び加熱感温センサ22の最先端部分は、渦発生体3に形成された鍔部41、41によって支持されている(集中応力の緩和がなされるような構造になっている)。感温センサ21及び加熱感温センサ22は、渦発生体3に対して平行に配置されている。感温センサ21及び加熱感温センサ22は、渦検出に影響を来さないように配置されている。
【0027】
感温センサ21及び加熱感温センサ22の各リード線42及び43は、内部空間35において渦検出センサ11のリード線27と共に纏められている。そして、この纏められたリード線27、42、43は、金属パイプ34を介して図示しない流量変換器側へ引き出されている。
【0028】
各リード線27、42、43は、内部空間35で纏められて金属パイプ34を介し流量変換器側へ引き出される構造であることから、センサと流量変換器との取り合い部分が一つになるようになっている。このような構造によって防爆取得が従来よりも容易なものになっている。
【0029】
図示しない流量変換器の機能は、本明細書の背景技術の欄の特許文献3が参考になるものとする。
【0030】
本発明のマルチ渦流量計1は、流管2の流路40を流れる被測定流体の流れの状況に応じて渦流量計の機能と熱式流量計の機能とを使い分けることができるようになっている(すなわち、微少流量域や低流量域では、熱式流量計の機能によって計測がなされ、高流量域では、渦流量計の機能によって計測がなされるようになっている)。
【0031】
本発明のマルチ渦流量計1は、以上の説明からも分かるように防爆及び高温対応形となる構造になっている。
【0032】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の防爆高温対応形マルチ渦流量計の一実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 マルチ渦流量計
2 測定管
3 渦発生体
4 渦検出器
5 渦式検出手段
6 熱式検出手段
9 振動管
10 カバー
11 渦検出センサ
12 可動管部
13 受圧板
19、20 管体挿通穴
21 感温センサ
22 加熱感温センサ
23 弾性母材
24 圧電素子板
27 リード線
28 バネ板
35 内部空間
36、37 金属管体
41 鍔部
42、43 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流管の流路に設けられて被測定流体を通過させる測定管と、前記被測定流体の流れに対向するように前記測定管に設けられる渦発生体と、該渦発生体により生じるカルマン渦に基づく変化を検出する渦検出器とを有する渦式検出手段を備えるとともに、前記流路に突出する感温センサ及び加熱感温センサを有する熱式検出手段を備えるマルチ渦流量計において、
前記感温センサ及び前記加熱感温センサの各金属管体を前記渦検出器の金属容器に対し挿通状態で液密に溶接固定し、この溶接固定した前記感温センサ及び前記加熱感温センサの各リード線と前記渦検出器のセンサのリード線とを前記金属容器の内部で纏め、さらに、この纏めたリード線群を前記金属容器に取り付けた金属パイプを介して流量変換器側へ引き出す
ことを特徴とする防爆高温対応形マルチ渦流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の防爆高温対応形マルチ渦流量計において、
前記渦発生体に鍔部を設け、前記感温センサ及び前記加熱感温センサの前記各金属管体の端部を前記鍔部にて支持する
ことを特徴とする防爆高温対応形マルチ渦流量計。

【図1】
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