説明

防虫ネットを装備したハウスの換気方法

【課題】 従来のハウス用換気装置で、屋根部の棟に凹溝を形成し、凹溝の両側壁部に換気口とファンを設け、何れの方向から風が吹いても、風下側の換気口を介して空気がハウス内に侵入するとともに、風上側の換気口においては減圧作用によってハウス内の空気を換気し、屋根裏の上部空間の熱気の排除と水滴の付着防止等の発生回避を意図する。しかし、凹溝に開閉シートを付設し、かつ換気扇を付設する構造であり、工事、保守管理の困難性がある。

【解決手段】 本発明は、第三の防虫ネット、第五の防虫ネット、第一・第二の防虫ネットを張装し、この第一〜第三・第五の防虫ネットで防虫ネット通路を構成し、ハウスの妻面に第一の換気扇を、他方の妻面に第二の換気扇を配置した換気方法で、防虫ネット通路に筒状の低圧送風域を形成し、低圧送風域に向かって、ハウスの開放口から、外気をハウス内に誘引する防虫ネットを装備したハウスの換気方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気扇の空気の流れにより発生する、ハウス内に低圧送風域を利用し、外気を、ハウス内に誘引することを意図する防虫ネットを装備したハウスの換気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウスにおいて、高温障害、炭酸同化作用、その他作物の生育にとっては必要条件を確保し、かつ健全な生育と、収穫の拡充及び/又は品質の向上、さらには各人が所望する作物の効率的かつ簡易な栽培等を図るための条件として、例えば、ハウスの換気方法、又は換気装置が提案されている。そして、また、この換気を効率的、かつ低コストで、しかも、省エネルギーによる換気方法、又は換気装置が要望される状況である。
【0003】
そして、昨今、特に要望されていることは、ハウス内の送風(空気の流れ)において、このハウスの長手方向に略水平方向の空気の流れと、広域的な空気の流れを確保する構成とすることで、例えば、送風領域の拡充と、効率的な送風を確保し、送風量の低量化と、ファンの低容量化等による経済的な効果及び/又は省資源化の達成と、ランニングコストの低廉化等にある。
【0004】
以上の状況から、その改良と、要望に応え得る研究と、これらに関する文献も種々散見される。以下、これらに関する文献を先行技術として列挙する。
【0005】
文献(1)は、特開2004−222510の「ハウス用換気装置」がある。この発明は、[0005]に記載の如く、「ハウス用換気装置においては、ハウスの屋根部の棟に沿って凹溝を形成し、凹溝の両側壁部に換気口を設け、換気口を介してハウスの内部と外気とを連通させたため、風が吹いたときに、換気口に侵入する風がある限り、何れの方向から風が吹いても、風下側の換気口を介して空気がハウス内に侵入するとともに、風上側の換気口においては減圧作用によってハウス内の空気を排出させ、この結果、ハウス内の換気ができる」ことで、屋根裏の上部空間に溜まる熱気の排除と、水滴の付着防止と、水滴落下による萎凋化、カビ等の発生回避を意図する。
【0006】
しかし、この発明は、屋根裏と、ハウス内の横断的な換気を意図するものであり、この種のハウスの長手方向における広域的な換気と、低圧の流れを確保する構造でなく、換気の効率的と、低コスト化、並びに省エネルギー化を達成するには問題がある。また、凹溝に開閉シートを付設し、かつ換気扇を付設する構造であり、工事及び/又は保守管理の困難性が考えられる。
【0007】
また、文献(2)は、特開2008−5823の「植物栽培用害虫侵入防止ハウス」がある。この発明は、要約に記載の如く、4mmピッチ前後の目の粗い防鳥ネットを具備した窓部付き植物栽培用ハウス、又は1mmピッチ程度の防虫ネットを具備した窓部付き植物栽培用ハウスにおいて、このハウスの壁面(境界部)に設置された、吸気用換気扇の1個〜複数個の運転と、その風量の調整により、ハウス内外の気圧差を作り、内圧を、正圧化するか、或いは、吸気用換気扇と排気用換気扇の複数個の同時運転による風量バランスの調整により、内圧を、正圧化することで、植物栽培用害虫侵入防止と、ハウス内の換気と、並びにハウス内の気温を、略外気温とし、高温生涯回避すること等を意図する。
【0008】
しかし、この発明は、ハウス内の気圧を正圧化することで、ハウス内の換気を意図するものであり、この種のハウスの長手方向における広域的な換気と、低圧の流れを確保する構造でなく、換気の効率的と、低コスト化、並びに省エネルギー化を達成するには問題がある。また、壁面に換気扇を幾重にも設ける構造であり、工事及び/又は保守管理の困難性、或いはエネルギーロス等の問題が考えられる。
【0009】
【特許文献1】特開2004−222510
【特許文献2】特開2008−5823
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に鑑み、本発明は、ハウス内の長手方向に筒状の低圧送風域を形成し、換気の効率的と、低コスト化、並びに省エネルギー化を達成すること、又は換気空気量の拡充・ハウス内への外気の吸込み量の拡充を図ること、等を意図する。
【0011】
そして、また、本発明は、防虫ネットの張装箇所を特定することで、ハウスの長手方向の側面から外気を、積極的に、誘引して吸込み、この吸込んだ外気を、筒状の低圧送風域に導く構造とし、ハウス内の大きな空気の流れを確保することを意図する。
【0012】
さらに、外気の温度に対応し、吸込み兼排気用の換気扇と、対応する防虫ネットの開閉と、また、シャッターの開閉とを利用し、効率的で、かつ確実な換気と、温度(湿度)調整を図ることを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、ハウス内の長手方向に筒状の低圧送風域を形成し、換気の効率的と、低コスト化、並びに省エネルギー化を達成すること、又は換気空気量の拡充・ハウス内への外気の吸込み量の拡充を図ること、等を意図する。
【0014】
また、請求項1の発明は、防虫ネットの張装箇所を特定することで、ハウスの長手方向の側面から外気を、積極的に、誘引して吸込み、この吸込んだ外気を、筒状の低圧送風域に導く構造とし、ハウス内の大きな空気の流れを確保することを意図する。
【0015】
さらに、請求項1の発明は、換気扇と、電動シャッターの組合せを利用し、内気排気と、外気導入とを介して、換気効率と、吸込み量の増大を図ることを意図する。
【0016】
請求項1は、ハウスの一方の妻面に間隔を持って第三の防虫ネットと、他方の妻面に設けた第四の防虫ネットを、また、天井の下側に第五の防虫ネットを、さらに、ハウスの長手方向の左右側面に第一・第二の防虫ネットを、それぞれ張装し、この少なくとも、第一〜第五の防虫ネットで囲繞された防虫ネット通路を構成し、このハウスの一方の妻面に第一の換気扇を、また、その他方の妻面に第二の換気扇を配置し、このハウスの略全体に防虫ネットを張装したハウスの換気方法であって、
前記第一の換気扇を駆動し、前記一方の妻面より吸込んだ外気を、前記防虫ネット通路に導くとともに、他方の妻面に設けた第二の換気扇に向かって押込むか、又は強制吸引し、この防虫ネット通路において、このハウス内の長手方向に筒状の低圧送風域に形成し、この低圧送風域に向かって、このハウスの天井換気口、及び左右側面換気口の開放から、外気を、ハウス内に誘引する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の意図を達成すること、この意図を達成するために、第一〜第三の防虫ネットを張装するに最適で、かつ取付けの容易な構造を提供することを意図する。
【0018】
請求項2は、請求項1に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記ハウスの屋根の谷部、又は棟部に天井換気口を設け、この天井換気口の下部に第六の防虫ネットを張装し、この第三の防虫ネットと、前記第一・第二の防虫ネットとの協働で、前記筒状の低圧送風域を拡充する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1の意図を達成すること、この意図を達成するために、第一の換気扇として機能し、かつ優れた吸込み、又は排気ができる吸込み兼排気用の換気扇を提供することを意図する。また、請求項3の発明は、防虫ネット通路(ハウス1)内に低圧送風域を形成できる第一の換気扇と、第二の換気扇の提供を意図する。
【0020】
請求項3は、請求項1に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記第一の換気扇は、吸込み兼排気用の換気扇、又は吸込み用の換気扇とし、第二の換気扇は、電動シャッター、又は排気用の換気扇とする構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0021】
請求項4の発明は、請求項2、又は請求項3の意図を達成すること、この意図を達成するために、吸込み兼排気用の換気扇と、天井換気口、並びに電動シャッターの稼動の最適化を図ることを意図する。
【0022】
請求項4は、請求項2、又は請求項3に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記吸込み兼排気用の換気扇を、設定値25℃を基準としてON、OFFし、また、前記天井換気口を、設定値23℃を基準として開閉し、さらに、前記電動シャッターを、吸込み兼排気用の換気扇と協働する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0023】
請求項5の発明は、請求項2、又は請求項3の意図を達成すること、この意図を達成するために、吸込み兼排気用の設定値と、天井換気口の設定値の最適化を図ることを意図する。
【0024】
請求項5は、請求項2、又は請求項3に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記吸込み兼排気用の換気扇を、設定値25℃を基準としてON、OFFし、また、前記天井換気口を、設定値23℃を基準として開閉し、この設定値が、前記吸込み兼排気用の換気扇の設定値>前記天井換気口の設定値とする構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明は、ハウスの一方の妻面に間隔を持って第三の防虫ネットと、他方の妻面に設けた第四の防虫ネットを、また、天井の下側に第五の防虫ネットを、さらに、ハウスの長手方向の左右側面に第一・第二の防虫ネットを、それぞれ張装し、少なくとも、第一〜第五の防虫ネットで囲繞された防虫ネット通路を構成し、ハウスの一方の妻面に第一の換気扇を、また、他方の妻面に第二の換気扇を配置し、ハウスの略全体に防虫ネットを張装したハウスの換気方法であって、
第一の換気扇を駆動し、一方の妻面より吸込んだ外気を、防虫ネット通路に導くとともに、他方の妻面に設けた第二の換気扇に向かって押込むか、又は強制吸引し、防虫ネット通路において、ハウス内の長手方向に筒状の低圧送風域に形成し、低圧送風域に向かって、ハウスの天井換気口、及び左右側面換気口の開放から、外気を、ハウス内に誘引する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0026】
従って、請求項1は、ハウス内の長手方向に筒状の低圧送風域を形成し、換気の効率的と、低コスト化、並びに省エネルギー化を達成すること、又は換気空気量の拡充・ハウス内への外気の吸込み量の拡充が図れること、等の特徴を有する。
【0027】
また、請求項1は、防虫ネットの張装箇所を特定することで、ハウスの長手方向の側面から外気を、積極的に、誘引して吸込み、この吸込んだ外気を、筒状の低圧送風域に導く構造とし、ハウス内の大きな空気の流れを確保できる利点がある。
【0028】
さらに、請求項1の発明は、換気扇と、電動シャッターの組合せを利用し、内気排気と、外気導入とを介して、換気効率と、吸込み量の増大が図れる実益がある。
【0029】
請求項2の発明は、請求項1に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
ハウスの屋根の谷部、又は棟部に天井換気口を設け、天井換気口の下部に第六の防虫ネットを張装し、第三の防虫ネットと、第一・第二の防虫ネットとの協働で、筒状の低圧送風域を拡充する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0030】
従って、請求項2は、請求項1の意図を達成できること、この意図を達成するために、第一〜第三の防虫ネットを張装するに最適で、かつ取付けの容易な構造を提供できること等の特徴を有する。
【0031】
請求項3の発明は、請求項1に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
第一の換気扇は、吸込み兼排気用の換気扇、又は吸込み用の換気扇とし、第二の換気扇は、電動シャッター、又は排気用の換気扇とする構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0032】
従って、請求項3は、請求項1の意図を達成できること、この意図を達成するために、第一の換気扇として機能し、かつ優れた吸込み、又は排気ができる吸込み兼排気用の換気扇を提供できること等の特徴を有する。また、請求項3は、防虫ネット通路(ハウス1)内に低圧送風域を形成できる第一の換気扇と、第二の換気扇を提供できる実益がある。
【0033】
請求項4の発明は、請求項2、又は請求項3に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
吸込み兼排気用の換気扇を、設定値25℃を基準としてON、OFFし、また、天井換気口を、設定値23℃を基準として開閉し、さらに、電動シャッターを、吸込み兼排気用の換気扇と協働する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0034】
従って、請求項4は、請求項2、又は請求項3の意図を達成できること、この意図を達成するために、吸込み兼排気用の換気扇と、天井換気口、並びに電動シャッターの稼動の最適化が図れること等の特徴を有する。
【0035】
請求項5の発明は、請求項2、又は請求項3に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
吸込み兼排気用の換気扇を、設定値25℃を基準としてON、OFFし、また、天井換気口を、設定値23℃を基準として開閉し、設定値が、吸込み兼排気用の換気扇の設定値>天井換気口の設定値とする構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法である。
【0036】
従って、請求項5は、請求項2、又は請求項3の意図を達成できること、この意図を達成するために、吸込み兼排気用の設定値と、天井換気口の設定値の最適化が図れること等の特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ハウス全体を示しており、天井換気口と側面のビニールフィルムを閉塞した俯瞰摸式図
【図2】ハウス全体を示しており、天井換気口と側面のビニールフィルムを開放した俯瞰摸式図
【図3】図2の拡大断面摸式図
【図4】図2の妻面の第一防虫ネットと、第一の換気扇との関係を示した俯瞰摸式図
【図5−1】吸込み兼排気用の換気扇を吸込み用として採用する一例を示した拡大側面図
【図5−2】吸込み兼排気用の換気扇を排気用として採用する一例を示した拡大側面図
【図6−1】電動シャッターの一例を示した拡大正面図
【図6−2】電動シャッターの一例を示した拡大背面図
【図7】吸込み用の換気扇の一例を示した拡大側面図
【図8】排気用の換気扇の一例を示した拡大側面図
【図9】ハウスに設置した吸込み兼排気用の換気扇と、天井換気口、並びに電動シャッター等の動作と、外気との関係の一例を示した図表
【発明を実施するための形態】
【0038】
一棟(一連)、又は多棟(多連)構造のハウス1は、長手方向Xの左右側面1a、1b(対であり、一方で説明する。他の対も同じ)には、開閉自在の側面のビニールフィルム2、3が設けられている。そして、この左右側面1a、1bには、第一・第二の防虫ネット5、6が張装されており、例えば、側面のビニールフィルム2、3が巻き上げられた時に、この第一・第二の防虫ネット5、6より外気を吸込む(外気が導入される)構造である。そして、この第一・第二の防虫ネット5、6で、虫の侵入防止を図る。また、この第一・第二の防虫ネット5、6を張装することで、通常は、外気の吸込みの阻害要因となり、例えば、吸込みスピードが弱められる。しかし、本発明では、この吸込みスピードは、外気が、後述する低圧送風域Qで強制誘引されることで、原則として、開放状態(第一・第二の防虫ネット5、6を張装しない状態)と、略同等の吸込みスピードが保証される特徴がある。
【0039】
また、図1〜図6の例では、ハウス1の一方の妻面1c(ハウス1の短手方向Y)には、吸込み兼換気用の換気扇7が、また、他方の妻面1dには、電動シャッター8が設けられており、この吸込み兼換気用の換気扇7側は、例えば、一方の妻面1cに間隔Hを持って、第三の防虫ネット10で、ハウス1を横断するように張装されている。また、図示しないが、電動シャッター8の外面にシャッター用の防虫ネットが張装されている。尚、図7、図8の例では、ハウス1の一方の妻面1cには、吸込み用の換気扇11が、また、他方の妻面1dには、排気用の換気扇12か、又は電動シャッター8が設けられており、この吸込み用の換気扇11側は、間隔Hを持って、第三の防虫ネット10で、ハウス1を横断するように張装されている。その他は、前述の例に準ずる。そして、他方の妻面1dには、その裾部に第四の防虫ネット14を張装する。この第四の防虫ネット14を設けることで、後述する低圧送風域の失速をカバーし、他方の妻面1dの内側で、上昇させることが可能となる。この状況は、実績であり、かつ発明者が、実施において、経験した事実である。まのた、図示しないが、この他方の妻面1dには裏面換気口102を備えている。
【0040】
尚、ハウス1の谷部1f(図示しないが棟部等)に天井換気口15(開閉窓)を設け、この天井換気口15の下側で、所謂、ハウス1の天井1eに第五の防虫ネット16に張装するか、又はこの各天井換気口15(通常、谷換気口とするが、屋根換気口もあり得る)の直下に第六の防虫ネット17を張装する。
【0041】
そして、前述したハウス1の一方の妻面1cに第三の防虫ネット10、また、天井換気口15の下側に第五の防虫ネット16と、第六の防虫ネット17を、さらに、ハウスの長手方向Xの左右側面に第一・第二の防虫ネット5、6を、それぞれ張装し、この第一〜第五の防虫ネット5、6、10、14、16(場合により、第六の防虫ネット17を含む)で囲繞するか、又はシャッター用の防虫ネットを含めて囲繞し、防虫ネット通路Pを構成する。尚、この第六の防虫ネット17は、簡便性と、施工の簡易性等を考慮して、第五の防虫ネット16で代替することも可能である。
【0042】
図中20をビニールフィルム巻上げ用の巻上げ手段を示す。この巻上げ手段20を利用して、前記側面のビニールフィルム2、3と、天井換気口15の天井1eのビニールフィルム18を開閉する。
【0043】
そして、側面換気口100、101(側面窓)と、裏面換気口102(裏面窓)の裾部と、長手方向Xの棟、又は短手方向Yの妻面端部には、嵌め殺し用(業界用語である)と称されるビニールフィルム30がそれぞれ設けられている。
【0044】
続いて、この吸込み兼換気用の換気扇7と、電動シャッター8の動きと、防虫ネット通路Pの構造により、この防虫ネット通路P(ハウス1)内(一部の長手方向Xにおいて)に筒状の低圧送風域Qが形成される状況を、図9に示した図表で、順に説明する。このハウス1内の温度が上昇し、例えば、設定値の23℃を超えた場合には(温度の表示は、以上を含む)、例えば、谷部1fの天井1eのビニールフィルム18が巻上げられ、天井換気口15が開き、開閉部1500は開放される。しかし、この開放部1500は、張装した第五の防虫ネット16で閉塞されている。また、同時か、僅かな時間差で、側面のビニールフィルム2、3が巻上げられ、左右の側面1a、1bの側面換気口100、101が開き、側面開放部1000、1001は開放される。しかし、この側面換気口100、101と、他方の妻面1dの裏面換気口は、張装した第一・第二の防虫ネット5、6と、第四の防虫ネット14で閉塞されている。また、開放された天井換気口15は、張装した第六の防虫ネット17で閉塞されている。従って、この天井換気口15と、側面換気口100、101と、裏面換気口が共に開放されているときは、自然換気による、ハウス1内の温度(湿度)調整である。
【0045】
そして、時間の経過とともに、ハウス1内の温度が上昇すると、例えば、設定値の25℃を超えた場合には、吸込み兼換気用の換気扇7が可動し、電動シャッター8が開放される。この吸込み兼換気用の換気扇7の可動で、一方の妻面1cから、外気を吸込み、この外気は、防虫ネット通路Pに導かれるとともに、前記の動きと、その構造により、この防虫ネット通路P内に筒状の低圧送風域Qが形成される。
【0046】
この防虫ネット通路P内に低圧送風域Qが形成されることで、開放された、天井換気口15と、側面換気口100、101から、第五の防虫ネット16(場合により、第六の防虫ネット17)と、第一・第二の防虫ネット5、6とより外気が、誘引され、積極的な外気の吸込が図れる。また、前記の如く、第四の防虫ネット14により低圧送風域Qの失速をカバーし、他方の妻面1dの内側で、上昇させることが可能となる。これにより、本出願人の実験例では、略5割増しの吸込み量が確認されている。換言すると、例えば、通常の換気による排気量を、100とした場合に、略150の数値が確認されている。
【0047】
そして、時間の経過とともに、このハウス1内の温度が降下し、例えば、設定値の25℃を超えた場合には、吸込み兼換気用の換気扇7が停止し、電動シャッター8を閉塞する。その後、さらに、このハウス1内の温度が降下し、例えば、設定値の23℃を下回った場合には、例えば、谷部1fの天井1eのビニールフィルム18が巻戻し、天井換気口15等を閉め、開閉部1500は閉塞する。
【0048】
以上の各構造の動作と、結果であり、このようなハウス1の換気と、その制御が行われることで、このハウス1内の作物に最適な、生育環境が確保され、かつ省エネルギー、低コストのハウス栽培ができる。
【0049】
また、この吸込み兼換気用の換気扇7と、電動シャッター8に代えて、吸込み・排気用の換気扇11、12の構造も、同じである。しかし、この吸込み・排気用の換気扇11、12の構造は、低圧送風域Qの確実な形成が可能である。
【0050】
尚、前記吸込み兼換気用の換気扇7と、電動シャッター8の動作、又はこの天井換気口15と、側面換気口100、101の動作等は、タイマー、手動による場合と、このタイマー等と前記制御との組合せも可能である。この例では、さらに細かな制御、及び/又は、省エネルギー、低コストと、当事者の経験等を活用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 ハウス
1a 側面
1b 側面
1c 一方の妻面
1d 他方の妻面
1e 天井
1f 谷部
100 側面換気口
101 側面換気口
102 裏面換気口
1000 側面開放部
1001 側面開放部
2 側面のビニールフィルム
3 側面のビニールフィルム
5 第一の防虫ネット
6 第二の防虫ネット
7 吸込み兼換気用の換気扇
8 電動シャッター
10 第三の防虫ネット
11 吸込み用の換気扇
12 排気用の換気扇
14 第四の防虫ネット
15 天井換気口
1500 開放部
16 第五の防虫ネット
17 第六の防虫ネット
18 ビニールフィルム
20 捲上げ手段
30 ビニールフィルム
H 間隔
P 防虫ネット通路
Q 低圧送風域
X 長手方向
Y 短手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウスの一方の妻面に間隔を持って第三の防虫ネットと、他方の妻面に設けた第四の防虫ネットを、また、天井の下側に第五の防虫ネットを、さらに、ハウスの長手方向の左右側面に第一・第二の防虫ネットを、それぞれ張装し、この少なくとも、第一〜第五の防虫ネットで囲繞された防虫ネット通路を構成し、このハウスの一方の妻面に第一の換気扇を、また、その他方の妻面に第二の換気扇を配置し、このハウスの略全体に防虫ネットを張装したハウスの換気方法であって、
前記第一の換気扇を駆動し、前記一方の妻面より吸込んだ外気を、前記防虫ネット通路に導くとともに、他方の妻面に設けた第二の換気扇に向かって押込むか、又は強制吸引し、この防虫ネット通路において、このハウス内の長手方向に筒状の低圧送風域に形成し、この低圧送風域に向かって、このハウスの天井換気口、及び左右側面換気口の開放から、外気を、ハウス内に誘引する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法。
【請求項2】
請求項1に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記ハウスの屋根の谷部、又は棟部に天井換気口を設け、この天井換気口の下部に第六の防虫ネットを張装し、この第三の防虫ネットと、前記第一・第二の防虫ネットとの協働で、前記筒状の低圧送風域を拡充する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法。
【請求項3】
請求項1に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記第一の換気扇は、吸込み兼排気用の換気扇、又は吸込み用の換気扇とし、第二の換気扇は、電動シャッター、又は排気用の換気扇とする構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法。
【請求項4】
請求項2、又は請求項3に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記吸込み兼排気用の換気扇を、設定値25℃を基準としてON、OFFし、また、前記天井換気口を、設定値23℃を基準として開閉し、さらに、前記電動シャッターを、吸込み兼排気用の換気扇と協働する構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法。
【請求項5】
請求項2、又は請求項3に記載の防虫ネット装備したハウスの換気方法であって、
前記吸込み兼排気用の換気扇を、設定値25℃を基準としてON、OFFし、また、前記天井換気口を、設定値23℃を基準として開閉し、この設定値が、前記吸込み兼排気用の換気扇の設定値>前記天井換気口の設定値とする構成とした防虫ネットを装備したハウスの換気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−30493(P2011−30493A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179638(P2009−179638)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(391008294)フルタ電機株式会社 (176)
【Fターム(参考)】