説明

除塵装置

【課題】 スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げるレーキの爪先とスカート板の隙間を一定に安定に保ちつつレーキをガイドレールに沿って上昇させることができる除塵装置を提供する。
【解決手段】 水路内に上下に延びる多数のスクリーンバーを配列したスクリーン13と、該スクリーンの上部に配置されたスカート板14と、前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げるレーキ19とを備えた除塵装置において、前記レーキには複数のレーキ爪24,25を備え、 前記スカート板には少なくとも1本のスカートガイド15を備え、前記複数のレーキ爪の内、少なくとも1本のレーキ爪24が前記スカートガイド15と係合しつつ、前記レーキ19が前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路中に配置されたスクリーンにより水路中のごみ(し渣)を除去する除塵装置に係り、特に、スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げるレーキの爪先とスクリーン上部に配置されたスカート板との隙間を一定に保つことができる除塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、流水を取水するポンプ機場等では、流水中の粗大なごみ(し渣)を捕捉してポンプを保護する必要があり、そのため吸込水路等に上下方向に延びる多数のスクリーンバーからなるスクリーンと循環昇降式レーキとを備えた除塵装置を設け、スクリーンに流着したごみ(し渣)をレーキにより連続的に掻き上げて除去することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スクリーンに捕捉されたし渣をレーキで上方向に掻き上げて除去する際に、スクリーンはスラブ(床面)より下の部分に配置され、その上の部分ではスカート板と呼ばれる平板状の案内板に沿って、レーキとこれに保持されたし渣は上昇する(特許文献1の図5参照)。
【特許文献1】特開平10−237848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、除塵装置では、レーキは、レーキ両端にガイドローラを取付け、そのガイドローラがガイドレールに沿って上昇する。すなわち、レーキの爪先はガイドローラの位置により決定されてしまう構造となっている。スクリーンでし渣を掻き取ったレーキは、し渣を保持しつつ上昇し、水路から上では、スカート板の上面に沿ってし渣を保持しつつ上昇していく。
【0005】
このスカート板上面に沿って、レーキが上昇する時、レーキの爪先とスカート板との隙間を一定に保つ必要がある。この隙間が一定に保たれないと、レーキの爪先とスカート板にはさまれたし渣は、その隙間が大きくなると落下してしまうし、隙間が無くなるとレーキの爪先がスカート板の表面を擦り傷つけることになるからである。レーキは上述したように両端のガイドローラがガイドレールに規制されながら上昇してゆくが、スカート板の全幅にわたって、レーキの爪先とスカート板の隙間を一定に保ちつつ上昇していくことは難しいという課題があった。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げるレーキの爪先とスカート板の隙間を一定に安定に保ちつつレーキをガイドレールに沿って上昇させることができ、し渣の落下やレーキ爪先のスカート板への接触を防止できるようにした除塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の除塵装置は、水路内に上下に延びる多数のスクリーンバーを配列したスクリーンと、該スクリーンの上部に配置されたスカート板と、前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げるレーキとを備えた除塵装置において、前記レーキには複数のレーキ爪を備え、前記スカート板には少なくとも1本のスカートガイドを備え、前記複数のレーキ爪の内、少なくとも1本のレーキ爪が前記スカートガイドと係合しつつ、前記レーキが前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げることを特徴とするものである。
【0008】
スカート板には少なくとも1本のスカートガイドを備え、前記複数のレーキ爪の内、少なくとも1本のレーキ爪が前記スカートガイドとレーキの自重により接触しつつ、前記レーキが前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げることで、このスカート板上面に沿って、レーキが上昇する時、他のすべてのレーキ爪の先端とスカート板との隙間を一定に保つことができる。このように非常にシンプルで簡単な構造で、レーキ爪とスカート板との隙間を安定に一定に保つことができるので、途中でし渣が落下すること、及びレーキの爪先がスカート板と接触し、その表面を擦り傷つけることを防止できる。
【0009】
前記スカートガイドと係合するレーキ爪の長さが、前記スカートガイドと係合しないレーキ爪の長さよりも短くすることが好ましい。これにより、スカートガイドの厚さよりも内方に他のレーキ爪の爪先を位置させることができる。
【0010】
また、スカートガイドと係合するレーキ爪にローラを備え、該ローラが前記スカートガイドと接触しつつ、前記レーキが前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げるようにしても良い。これにより、レーキの重量が増加しても、スカートガイドの損耗という問題が生ぜず、レーキ爪とスカート板との隙間を安定に一定に保つことができる。
【0011】
前記レーキ爪は、ステンレス鋼からなり、前記スカートガイドは、耐摩耗性の高い高分子ポリエチレンからなることが好ましい。これにより、通常のサイズの除塵装置では、スカートガイドの損耗という問題が殆ど生ぜず、レーキ爪とスカート板との隙間を安定に一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スカート板の全幅にわたって、レーキの爪先とスカート板の隙間を常に一定に保つことができるので、安定した掻き上げ動作が可能な除塵装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、各図中、同一の作用または機能を有する部材または要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の除塵装置を示し、図2はその正面図である。この除塵装置は、水路中に流れるごみ(し渣)を捕捉する、水路内に上下に延びる多数のスクリーンバーからなるスクリーン13が、側壁12,12間の水路11に配置されている。スクリーン13は、多数の上下方向に延びるスクリーンバーが、水平方向に延びるスペーサ部材(支持部材)に固定・支持され、等間隔に配列されていて、スクリーンバーによりし渣を捕捉し、その間を水が通過するようになっている。
【0015】
なお、スクリーン13のスクリーンバーおよびその支持部材等の主要部材は、軽量で耐食性の高い樹脂材料によって形成することが好ましいが、帯鋼等の鋼材であってもよい。
【0016】
スクリーン13は、水路11の側壁12,12間に配置され、スラブ(床面)12Aより上の部分では、レーキ19の案内板の役割を果たす平板状のスカート板14が配置されている。このスカート板14には後に詳述するように2本のスカートガイド15,15が配置されている。そして、スカート板14の上端部近傍には図示しないワイパが備えられ、レーキ19によって搬送されたし渣をシュート23に移送して除去するようになっている。
【0017】
レーキ19にはスクリーン13の各スクリーンバーの間のスペースに突出する複数のレーキ爪が形成され、スクリーン13の前面に捕捉されたし渣を掻き上げるようになっている。レーキ19の両端は、スクリーン13の両端部に設けられたフレーム16,16に沿って走行するレーキチェーン18,18に接続され、ガイドレール17に沿って走行するようになっている。レーキチェーン18,18は、除塵装置の頂部に設置したスプロケット21,21によって駆動されて走行し、スプロケット21,21は駆動軸20の両端に取付けられている。駆動装置22は減速機とモータを有し、駆動軸20を回転駆動し、これにより、スプロケット21,21を介してチェーン18,18が回動され、チェーン18,18に取り付けられたレーキ19が循環走行するようになっている。
【0018】
なお、駆動軸20は上下にテークアップできる機構を有し、レーキチェーン18、18の張力を調節できるようになっている。また、駆動装置22は駆動軸端に直接駆動機を取付る方式を示しているが、軸端にはスプロケットを取付け、チェーンを介して別置きの駆動機で運転してもよい。
【0019】
スクリーン13とスカート板14に沿って上昇走行するレーキ19は、スクリーン13の前面において、該スクリーン13によって捕捉されたごみ(し渣)を掻き上げて、スカート板14の前面に沿って搬送し、スカート板上端部14A付近において図示しないワイパにより、し渣をシュート23に移送して除去するようになっている。すなわち、レーキ19にはスクリーン13のスクリーンバー間のスペースに挿入し、し渣を掻き上げる複数の爪を備え、レーキがスクリーン13に沿って上昇する時には、該爪の先端がスクリーンバー間のスペースを走行する。これによりスクリーン13にし渣が捕捉されているときは、し渣はレーキ19に保持されて上昇する。
【0020】
そして、スクリーン13の上端13Aにレーキ19が到達すると、レーキ19の爪の先端はスカート板14の前面に沿って、し渣を保持しつつ上昇する。このとき、後に詳述するように、レーキ19の爪の内の一部(この場合2本)がスカート板14の上面に設けられたスカートガイド15,15に、自重により押し付けられて走行する。このため、他の爪の爪先とスカート板14との間の隙間が全幅にわたって常に一定に保たれる。これにより、従来の除塵装置に見られたレーキの爪先とスカート板との隙間が開くことによるし渣の落下や、レーキの爪先がスカート板に接触することによるスカート板の損傷を防止できる。
【0021】
そして、レーキ19がスカート板14の上端14Aに到達すると、図示しないワイパによりレーキ19に保持されたし渣がシュート23に落とされ、レーキ19はからになる。からになったレーキ19は、レーキチェーン18の回動により一旦最高位置まで上昇し、次に反転して水路の上流側を最低位置まで下降し、反転してスクリーン下端部近傍より再びレーキ19の爪がスクリーンバー間のスペースに挿入され、レーキ19が上昇することによって、スクリーン13に捕捉されたし渣の掻き上げが行われる。
【0022】
図3(a)はレーキの上から見た全体的な構造を示し、(b)はその要部の拡大図である。レーキ19は、固定部19Aの両端部のアタッチメント19Eにレーキチェーン18,18が固定され、そのアタッチメント19Eにはガイドシューが設けられている。そして、レーキチェーン18,18の走行に伴い、フレーム16に設けられたガイドレール17に上記ガイドシューが案内されて、レーキ19が走行する。レーキの固定部19Aに対して、可動部19Bが固定部19Aに対して回動可能に固定されている。可動部19Bは、コイルスプリング19Cにより付勢され、回動した場合はストッパ19Dで規制される位置に戻るようになっている(図4参照)。
【0023】
スカート板14には、レーキ19に設けられたレーキ爪の一部が係合するスカートガイド15が左右に2本設けられている。そして、レーキ19の可動部19Bの先端には、スカートガイド15に係合(接触)する2本の爪24と、係合(接触)しない他の爪25を多数備えている。
【0024】
図4は、スカート板14に沿って走行するレーキ19を側面から見た図である。図4(a)に示すように、スカート板14にスカートガイド15が設けられているので、一部のレーキの爪24がレーキ19の自重によりスカートガイド15に押し付けられる。そして、チェーン18,18の走行に伴い、レーキ爪の先端がスカートガイド15に押し付けられた状態で、レーキ19はし渣を保持した状態で、ガイドシューがガイドレールに規制されつつ、スカート板14に沿って上昇する。
【0025】
このとき、図4(b)に示すように、他の爪25はすべて、スカート板14に対して一定の隙間(この場合、5mm)が確保される。このため、レーキ19に保持したし渣が、爪が開いて落下すること、及び爪がスカート板に接触して、その表面を擦り傷つけることを防止できる。
【0026】
ここで、レーキ爪24は、スカートガイド15に接触する爪であるが、他の爪25よりも短くなっている。この実施形態においては、図4(b)に示すように、スカート板14から突出するスカートガイド15の高さAは10mmであり、スカートガイド15に接触する爪24の長さは他の爪25の長さよりも寸法B(この場合、5mm)だけ短くなっている。従って、爪24がスカートガイド15に接触しつつレーキ19がスカート板14に沿って走行することで、すべての他の爪25の先端とスカート板14との隙間は、一定の距離C、ここでは、5mmに保たれる。
【0027】
これにより、スカートガイド15の接触面よりも内方に他の爪25の爪先を位置させることができる。従って、スカートガイド15としては加工或いは組立の容易な厚さを採用しつつ、他の爪25の爪先とスカート板14との隙間を任意の大きさに設定することができる。この実施形態においては、2本の爪24がスカートガイド15と接触することで、レーキ19の全幅にわたって他の爪25の爪先とスカート板14との隙間を5mmというし渣の落下を防止するのに好適な小さな寸法に保持することができる。
【0028】
レーキ19の主要部は耐食性に優れたステンレス鋼を用いることが好ましく、爪24,25も同様にステンレス鋼を用いることが好ましい。スカート板14は一般に樹脂板が用いられているが、上記レーキ爪と接触すると擦れが生じ、損傷を生じることは上述したとおりである。そこで、この実施形態の除塵装置では、スカートガイド15として、スカート板14に厚さ10mmのステンレス鋼に対して高い耐摩耗性を有する高分子量ポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。これにより、レーキ19の一部の爪を自重によりスカートガイド15に押し付けて、レーキ19をスカート板14に沿って走行させても、通常の水路幅の場合には、レーキ19の重量はそれ程大きくなく、スカートガイド15は十分な耐久性を発揮し、スカートガイド15が摩耗することは殆ど無い。
【0029】
なお、図4(c)に示すように、スカートガイドと係合する爪の先端にローラ26を取付け、スカート板14上ではローラ26がスカートガイド15に押し付けられて、レーキ19が走行するようにしてもよい。スカートガイドと係合しない他の爪25は、スカート板14に対して一定の隙間が確保されることは、上記の実施形態と同様である。このように、ローラで爪先をスカートガイドに係合することで、水路幅が広く、レーキの自重が大きい場合にも、スカートガイド15の損耗を摺動方式と比べて低減できる。このようにしても、レーキ19に保持したし渣が、爪が開いて落下すること、及び爪がスカート板に接触して、その表面を擦り傷つけることを防止できることは同様である。
【0030】
なお、上記の実施形態において、スカート板に左右2本のスカートガイドを設ける例について説明したが、少なくとも1本以上であれば、2本以外の本数であって良いことは勿論である。
【0031】
ここで、これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態の除塵装置を示す斜視図である。
【図2】上記除塵装置の正面図である。
【図3】上記除塵装置のレーキ部分とスカート板との関係を示す上面図である。
【図4】上記除塵装置のレーキ部分とスカート板との関係を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
11 水路
12 側壁
13 スクリーン
13A スクリーン上端部
14 スカート板
14A スカート板上端部
15 スカートガイド
16 フレーム
17 ガイドレール
18 レーキチェーン
19 レーキ
19A 固定部
19B 可動部
19C コイルスプリング
19D ストッパ
19E アタッチメント
20 駆動軸
21 スプロケット
22 駆動装置
23 シュート
24 スカートガイドと係合するレーキ爪
25 スカートガイドと係合しないレーキ爪
26 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路内に上下に延びる多数のスクリーンバーを配列したスクリーンと、該スクリーンの上部に配置されたスカート板と、前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げるレーキとを備えた除塵装置において、
前記レーキには複数のレーキ爪を備え、
前記スカート板には少なくとも1本のスカートガイドを備え、
前記複数のレーキ爪の内、少なくとも1本のレーキ爪が前記スカートガイドと係合しつつ、前記レーキが前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げることを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記スカートガイドと係合するレーキ爪の長さが、前記スカートガイドと係合しないレーキ爪の長さよりも短くしたことを特徴とする請求項1記載の除塵装置。
【請求項3】
スカートガイドと係合するレーキ爪にローラを備え、該ローラが前記スカートガイドと接触しつつ、前記レーキが前記スクリーンに捕捉されたし渣を掻き上げることを特徴とする請求項1記載の除塵装置。
【請求項4】
前記レーキ爪は、ステンレス鋼からなり、前記スカートガイドは、耐摩耗性の高い高分子ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1記載の除塵装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−316561(P2006−316561A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142120(P2005−142120)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(502084920)株式会社 タイヘイ機工 (3)