説明

除塵装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は海水や河川水から塵芥を除去する除塵装置に係り,特に一時的に大量に流れ込む塵芥によって生じる除塵装置前後の異常水位差の発生を防止する除塵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,一般に使用される除塵装置においては,工業用水の用水路または発電所などの冷却水を取水するための水路に広く使用され,最もよく知られているものとしては,水路の両側にリンクチエンを設け,このリンクチエンの各リンク毎にバースクリーンあるいは金網よりなるスクリーンを流れ方向に対し垂直またはほぼ垂直に立設し,これを回動することによってスクリーンに引掛かった塵芥を水路外に除去する構造のものがある。
【0003】図3〜図5は従来の除塵装置の1実施例を示し,図3は全体概要図,図4,図5はバケット部を有するスクリーン枠の詳細縦断面図と正面図である。
【0004】図3において,1は上部スプロケットホイル,2は下部スプロケットホイル,3は両スプロケットホイル1,2に無端状に装架されたリンクチエン,4はリンクチエン3に取付けられ下部に捕捉した塵芥を収納するバケット部を有するスクリーン枠,5は伝動チエン6と鎖車7を介して上部スプロケットホイル1に動力を伝達する動力装置,8は上部スプロケットホイル1の軸,9はトラフ10に塵芥を誘導させる案内板,11は除塵装置のハウジング,12は流水路,F矢印は流水の方向を示す。
【0005】スクリーン枠4は図4に示すように,リンクチエン3の1ピッチ毎に取付けられ,14はスクリーン本体で,金網または鋤状に多数配設した棒材よりなり,かつ流水中の塵芥などを阻止するとともに,これをすくいあげる部材である。
【0006】15は前記スクリーン本体14の上端部に設けられた上部ビームで,この上部ビーム15は水路の幅に応じて好適な直径を有するパイプからなり,その中心がリンクチエン3のローラ3b部の中心に位置するように設けられ,かつその下部に突設された取付板16を介し前記スクリーン本体14を一体的に固定している。17は前記スクリーン本体14の下端部に設けられた断面コ字状の下部ビームで,この下部ビーム17はその下部に隣設するスクリーン枠4の上部ビーム15の上方部を回動自在に覆うように設けられ,その上部に突設された取付板18を介し,前記スクリーン本体14を一体的に固定している。
【0007】19はスクリーン本体14をその側部から保持する側板で,この側板19は図5に示すようにリンクチエン3のリンク幅より広い幅を備え,かつ上部ビーム15と下部ビーム17の左右端面にそれぞれ一体的に固定されている。換言すれば,この側板19と前記上部ビーム15および下部ビーム17とによりスクリーン本体14を保持する枠体(スクリーン枠4)を形成している。そして,この枠体はその側板19をボルト20によりリンク3aの側面に固定することによりリンクチエン3に固定される。21は前記下部ビーム17に突設された塵芥バケットで,この塵芥バケット21はスクリーン本体14の下部前方を斜めに覆うように設けられており,その左右端部は支持板22を介して側板19に一体的に固着されている。なお,23は下降するスクリーン13の背部に設けたスプレイパイプで,鎖線で示すようにスプレイ水をスクリーン13の背面に噴射することにより,スクリーン本体14に付着している塵芥を離脱させるためのものである。したがって,流れ中に浮遊する塵芥などは,まずスクリーン本体14によって阻止され,リンクチエン3の上昇にともなって,塵芥バケット21によってすくい上げられ,塵芥を収納した塵芥バケット21はさらに上昇し,上部スプロケット1の頂部で水平となり,次いで反転して降下する。
【0008】そして,塵芥バケット21内に存する塵芥はその重力により落下し,下部スクリーンの塵芥バケット21の外面とガイドプレート9に案内されて水路10内に排出される。一方,スクリーン本体14に付着している塵芥などは,スプレイ水によって離脱され前記同様下部スクリーンの塵芥バケット21の外面とガイドプレート9を介してトラフ10に排出される。
【0009】以上のように構成されたスクリーン枠4を接合した無端のリンクチエン3は通常おおよそ6歯の上部スプロケットホイル1により駆動されていた。なお,L矢印はリンクチエン駆動方向を示す。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】近年,取水量の増大に伴い水路幅も広くなる一方,水路に浮遊する塵芥が増加する傾向にあり,かつ,流入塵芥の急激な増加も頻発している。特に,夏期に大量に発生する水母等の塵芥が一時的に集中して流れ込む場合にはスクリーン面をほぼ全面的に被覆しつくして流水の通過ができなくなり,このため除塵装置の前後に生じる水位差は1500mmを超え,ひどいときには2000mmに達することもあり,このためスクリーン枠やリンクチエンに大きな力が加わり,リンクチエンの寿命を低下させたり,リンクチエンの破損等重大な事故を起こして操業中止に至る等の問題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】以上述べた課題を解決するために,本発明の除塵装置は無端状のリンクチエンに塵芥捕集用の網型スクリーンを備えたスクリーン枠を接合し,前記リンクチエンを上下一対のスプロケットホイルを介して駆動する除塵装置において,スクリーン枠内に開口を設けるとともに,開口の後面側に開口を被覆し開口に対向する面に網型スクリーンを貼設した可動枠の上端をスクリーン枠にピン接合し,かつ,可動枠の下端を圧縮コイルばねを介してスクリーン枠に付勢してなる構成とした。
【0012】
【作用】本発明の除塵装置は,塵芥の急激な増加により装置前後の水位差がある程度以上になると,スクリーン枠の開口を被覆している可動枠が上端のピン支点回りに後方下流側に圧縮コイルばねの付勢力に打ち克って回動し,回動した結果開いた間隙より流水が下流に流れる。したがって,水位差の異常増加が防止され,塵芥の流入の減少によって可動枠は再び開口に密着し元の状態に復帰する。
【0013】
【実施例】以下,本発明の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図2は本発明に係る除塵装置の実施例を示し,図1はスクリーン枠の要部縦断面図,図2はスクリーン枠の背面正面図である。図において,スクリーン枠40は上部枠41,下部枠42,左右一対の側板43,43で形成され,中間高さに設けた中間枠44を挾んで上下に開口45,46が設けられる。そして,開口45,46の背面側(流水の下流側)にはこの開口45,46を被覆する大きさを有する矩形の可動枠50が配設される。可動枠50は開口45,46に対向する面に網型スクリーン51を貼設され,上端を上部枠41にピンジョイント52を介して回動自在にピン接合され,下端では保護管60に収納された圧縮コイルばね61を貫通するフォークエンド54とピン53によってピン接合され,フォークエンド54の他端はスライドプレート62を挿通して圧縮コイルばね61を圧縮状態に保ったうえナット55と螺合される。したがって,可動枠50は通常スクリーン枠40の背面側に密着し,流水は開口45,46を経由し網型スクリーン51を通過する。本発明の実施例では,図2に示すように,スクリーン枠40の幅方向に3個の可動枠50が配設される。このような可動枠50を装備したスクリーン枠を,除塵装置1台の全数(50枠)としてもよいが,通常は全数50枠中10枠程度間欠的に装備する。この場合他の40枠は図4,5に示す従来タイプのものを連結する。
【0014】以上のように構成された可動枠50を有するスクリーン枠40においては,運転中一時的に大量の塵芥が流れ込んで,網型スクリーン51の全面を塵芥が覆いつくして通水障害を起こしたときには可動枠50が下流側に押圧され,圧縮コイルばね61の付勢力に打ち克って可動枠50がピンジョイント52回りに回動する結果,流水の通過が確保される。したがって,装置前後の水位差が極端に増加することなく安全に操業されるため機器の損傷が防止される。
【0015】
【発明の効果】以上述べたように,本発明の除塵装置においては,急激な塵芥の増加に伴う通水障害が生じても,自動的に可動枠が後方側に傾動して流水の通過が確保されるので,水位差の増大を抑制し,機器の損傷を防止し,連続安定運転が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る除塵装置のスクリーン枠の要部縦断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る除塵装置のスクリーン枠の背面正面図である。
【図3】従来の除塵装置の全体縦断面図である。
【図4】従来の除塵装置のスクリーン枠の縦断面図である。
【図5】従来の除塵装置のスクリーン枠の正面図である。
【符号の説明】
1 上部スプロケットホイル
2 下部スプロケットホイル
3 リンクチエン
3a リンクチエン
3b ローラ
4 スクリーン枠
5 動力装置
6 伝動チエン
7 鎖車
8 上部スプロケットホイルの軸
9 ガイドプレート
10 トラフ
14 スクリーン本体
15 上部ビーム
16 取付板
16a ボルトナット
17 下部ビーム
18 取付板
19 側板
20 ボルトナット
21 塵芥バケット
40 スクリーン枠
41 上部枠
42 下部枠
43 側板
44 中間枠
45 開口
46 開口
50 可動枠
51 網型スクリーン
52 ピンジョイント
53 ピン
54 フォークエンド
55 ナット
60 保護管
61 圧縮コイルばね
62 スライドプレート
L リンクチエンの移動方向
F 流水の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】 無端状のリンクチエンに塵芥捕集用の網型スクリーンを備えたスクリーン枠を接合し,前記リンクチエンを上下一対のスプロケットホイルを介して駆動する除塵装置において,該スクリーン枠内に開口を設けるとともに,該開口の後面側に該開口を被覆し該開口に対向する面に網型スクリーンを貼設した可動枠の上端を前記スクリーン枠にピン接合し,かつ,該可動枠の下端を圧縮コイルばねを介して前記スクリーン枠に付勢してなる除塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【特許番号】第2655031号
【登録日】平成9年(1997)5月30日
【発行日】平成9年(1997)9月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−243721
【出願日】平成4年(1992)9月11日
【公開番号】特開平6−93610
【公開日】平成6年(1994)4月5日
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)