説明

除振台装置

【課題】 鉛直方向および水平方向に軟らかいバネ特性を備え、しかも、位置決め等の安定性に優れる除振台装置を提供する。
【解決手段】 除振対象物に直接または間接的に接する天井板と、この天井板の周縁から垂下する垂下板と、これらの天井板と垂下板に被される基台部とを備え、天井板の内側面と基台部との間には、基台部から天井板の内側面に向けて鉛直方向流体バネと流体ベアリングが順次設けられており、少なくとも1つの垂下板の内側面と基台部との間には、水平方向流体バネが設けられており、鉛直方向流体バネによって天井板と垂下板を浮上させて水準出しを行なった後に、流体ベアリングによって、天井板を非接触で浮上させることで水平方向に摩擦ほぼ零という非常に柔らかい状態で操作が行なえるような構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除振台装置に関し、特に、除振対象物に直接または間接的に敷設され、除振対象物の除振を行う除振台装置に関する。より詳しくは、精密機器等において床からの微振動や装置本体から起こる自励振動を抑制するための除振台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、半導体製造装置においてメモリ、ICを作る場合、ウエハ基板の上に回路を写真技術を応用した焼き付け装置を備えるステッパーが用いられる。実際のステッパーの使用に際しては、生産効率を上げるためにウエハ基板や焼き付け装置を所定位置に俊敏かつ精度よく動かして位置決めする必要がある。
【0003】
しかしながら、俊敏な移動および停止を行なおうとすればする程、ステッパーには振動の発生という問題が必然的に生じる。特に、ICの高い集積度が求められている今日の仕様では、たとえ微振動であっても、これを完全に除去しないと、回路の線が二重になったりショートしたりする(回路のダブリの発生)という問題が生じる。このような問題を解決するために従来よりステッパーの微振動を除去する除振台装置の提案が種々なされている。
【0004】
例えば、精密機器における床からの微振動を除去し、一定位置を保つために、除振台装置には、除振機能を発揮させるために、従来から種々の流体バネユニット(主に空気バネ)の使用が提案されている。より具体的にはダイヤフラム型、ベローズ型の流体バネを使用した除振装置が用いられている。
【0005】
しかしながらダイヤフラム型流体バネを鉛直方向のバネとして使用した場合、鉛直方向には軟らかいバネとなる反面、水平方向には硬いバネとなるという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、いわゆるジンバルピストンのような振り子式を用いたり、さらに球面体で荷重を支持することによって水平方向に軟らかいバネとする試みがなされている。
【0007】
しかしながら、これらの球面体等の介在媒体によって接触面における接触部位で「窪み」や「傷」などができ、初期作動における所望の特性が得られなくなってしまうというおそれがある。
【0008】
この一方で、ベローズ型の流体バネは、水平方向および鉛直方向に比較的軟らかいバネ特性を有するものの、近年要求されているデリケートな特性(特に水平方向に柔らかいバネ特性)に対しては、このもののみでは十分に満足のいく対応をとることが困難となっている。すなわち、水平方向に格段と軟らかいバネとするために、膜剛性を低くしたり、膜部を大きくした場合には、安定性に欠け位置決めが出来なくなってしまうという不都合が生じている。
【0009】
なお、本願と類似する技術として、特開平5−321979号公報に開示の技術が存在する。しかしながら、このものは、水平方向のステップ外力の作用に対して水平並進振動のみを維持し、鉛直方向を拘束することを目的として提案された構造であり、鉛直方向の軟らかいバネ特性が要求される本願発明とは異なるものである。
【特許文献1】特開平5−321979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような実情のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、鉛直方向および水平方向に軟らかいバネ特性を備え、しかも、位置決め等の安定性に優れる除振台装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、除振対象物に直接または間接的に敷設され、除振対象物の除振を行う除振台装置であって、該除振台装置は、除振対象物に直接または間接的に接する天井板と、この天井板の周縁から垂下する垂下板と、これらの天井板と垂下板に被される基台部とを備え、前記天井板の内側面と基台部との間には、基台部から天井板の内側面に向けて鉛直方向流体バネと流体ベアリングが順次設けられており、前記少なくとも1つの垂下板の内側面と基台部との間には、水平方向流体バネが設けられており、前記鉛直方向流体バネによって天井板と垂下板を浮上させて水準出しを行なった後に、前記流体ベアリングによって、天井板を非接触で浮上させる操作が行なえるように構成される。
【0012】
また、本発明の好ましい態様として、前記流体ベアリングは、内部に中空部を備える略円柱形状をなし、天井板の内側面と接することのある一方の略円形平面は多孔質焼結面から構成されており、この一方の略円形平面と反対側に位置する他方の略円形平面は鉛直方向流体バネと実質的に当接しており、前記中空部には外部から流体ベアリング用の圧力流体が注入されるように構成される。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、前記鉛直方向流体バネは、ローリング作動膜構造を有するダイヤフラム、又はベローズから構成される。
【0014】
また、本発明の好ましい態様として、前記天井板の内側面と基台部との間に介在される鉛直方向流体バネと流体ベアリングは、鉛直方向の荷重を支えるように配置され、前記垂下板の内側面と基台部との間に介在される水平方向流体バネは、主として水平方向の位置決めを目的とするように配置される。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記天井板と前記垂下板は一体化され浮遊部としての機能を有し、前記基台部は固定部としての機能を有してなるように構成される。
【0016】
また、本発明の好ましい態様として、前記鉛直方向流体バネは、ローリング作動膜構造を有するダイヤフラムであり、前記基台部は、流体室が形成されたベース本体と、このベース本体の上に流体室と連通した状態で被着されるフランジ部材と、このフランジ部材の周縁部と固着一体化されるシリンダ構成部材とを有し、前記フランジ部材とシリンダ構成部材の組み合わせによって、ダイヤフラムの周縁フランジ部が固着されるとともにローリング作動膜のシリンダ部が形成され、前記流体ベアリングがローリング作動膜のピストン部として形成されてなるように構成される。
【0017】
また、本発明の好ましい態様として、前記ベース本体に形成された流体室には外部から流体バネ用の圧力流体が注入されるように構成されており、圧力流体の注入によりローリング作動膜がローリング移動して流体ベアリングが上下動するように構成される。
【0018】
また、本発明の好ましい態様として、前記鉛直方向流体バネは、ベローズであり、該ベローズは、相対向する一対のリング状の対向面部と、対向面の各外周縁部を相互に連結するように設けられた側面部を備え、前記基台部は、流体室が形成されたベース本体を有し、このベース本体の上に流体室と連通した状態で前記ベローズの一方のリング状の対向面部が固定されており、他方のリング状の対向面部が前記流体ベアリングと実質的に固定されてなるように構成される。
【0019】
また、本発明の好ましい態様として、前記ベース本体に形成された流体室には外部から流体バネ用の圧力流体が注入されるように構成されており、圧力流体の注入によりベローズが軸方向に拡張し流体ベアリングが上下動するように構成される。
【0020】
また、本発明の好ましい態様として、前記少なくとも1つの垂下板の内側面と基台部との間に形成されている水平方向流体バネは、ローリング作動膜構造を有するダイヤフラム、ベローズ、又はピストン構造体から構成される。
【0021】
また、本発明の好ましい態様として、前記少なくとも1つの垂下板の内側面と基台部との間には、基台部から垂下板の内側面に向けて水平方向流体バネおよび流体ベアリングが順次設けられており、前記流体ベアリングによって、垂下板との非接触状態が形成されてなるように構成される。
【発明の効果】
【0022】
鉛直方向および水平方向に軟らかいバネ特性を備え、しかも、位置決め等の安定性に優れる除振台装置を提供するができる。
【0023】
すなわち、鉛直方向流体バネで荷重を浮上、水準だしが行なえ、さらに流体ベアリングにより荷重を非接触で浮上させ、水平方向の摩擦ほぼ零の状態となる。これにより水平方向のバネ定数は、水平方向のアクチュエータ(水平方向流体バネ)のみを考慮すればよいため、水平方向のバネ定数は低いものとなる。
【0024】
さらに、水平方向のアクチュエータ側にも流体ベアリングを設けることによって、さらに鉛直方向のバネ定数を下げることもできる。
【0025】
また、鉛直方向および水平方向共に流体バネを用いているために、内容積を増やすことで鉛直方向のバネ定数も低いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、本発明の除振台装置1の好適な第1実施形態を説明するための半片断面図が示される。図2には図1の概略平面図が示される(ただし、内部の構造が理解し易いように、後述する天井板を除去して描いてある)。図3および図4には、本発明の除振台装置1の動作を説明するための半片断面図が示される。図5(a)および(b)はそれぞれ、本発明の除振台装置1の使用状況の一例を示す正面図および平面図である。
【0027】
本発明の除振台装置1は、図5(a),(b)に示されるように除振対象物である例えば、ステッパー3が載置された板状のステッパー支持台4の下に直接または間接的に敷設され、ステッパー3(除振対象物)により発生された振動を除去するように、また、床からの振動をステッパー3に伝えないように用いられる。
【0028】
除振台装置1は、通常、載置の安定性を考慮して3つ以上用いられ、荷重を支えるべく好適な位置に適宜、配置される。
【0029】
〔本発明の除振台装置の好適な実施形態の説明〕
図1に示されるように除振台装置1は、除振対象物に直接または間接的に接する例えば略四角形状の天井板10と、この天井板10の周縁から垂下する垂下板20と、これらの天井板10と垂下板20に被される基台部30とを備えている。
【0030】
天井板10と垂下板20とは、通常、一体化されており、除振台装置1の中で浮遊状態で使用されるいわゆる振動除去のための『浮遊部』としての機能を果たしている。また、基台部30は除振台装置1の中で床上に固定状態で使用されるいわゆる『固定部』としての機能を果たしている。
【0031】
本発明における除振台装置1は、図1に示されるように天井板10の内側面10aと基台部30の上部との間に、基台部30から天井板10の内側面10aに向けて鉛直方向流体バネ40(通常、空気バネ)と流体ベアリング60(通常、空気ベアリング)が順次設けられている。天井板10内側面10aと基台部30の上部との間に介在される鉛直方向流体バネ40は、主として鉛直方向の荷重を支えるように配置されている。
【0032】
また、図示のごとく少なくとも1つの垂下板20の内側面20aと基台部30の側面との間には、水平方向流体バネ80(通常、空気バネ)が設けられており、この水平方向流体バネ80は、主として本体の位置決め制御を目的として配置されている。水平方向流体バネ80は、図5に示されるように除振台装置1の全体的レイアウトに応じて除振制御がし易いように適宜、設ければよい。従って、図1に示される基台部30の周囲をすべて囲むように水平方向流体バネ80を設ける必要はない。
【0033】
このような除振台装置1は、鉛直方向流体バネ40によって天井板10と垂下板20を浮上させて水準出しを行なった後に、流体ベアリング60によって、天井板10を非接触で浮上させる操作が行なえるようになっている。この動作説明は後に詳述する。
【0034】
鉛直方向流体バネ40は、ダイヤフラム、すなわち布入りゴム製のローリング作動膜構造を有するダイヤフラム、又は布入りゴム製ベローズであることが望ましい。金属ベローズも使用可能である。図1には鉛直方向流体バネ40の好適例としてダイヤフラム40が例示してある。
【0035】
図1に示される実施形態において、基台部30は、その内部に流体室31が形成された四角柱形状のベース本体33を有しており、このベース本体33の上側には流体室31と連通した状態で略リング状の凹状フランジ部材34が被着されている。さらに、このフランジ部材34の周縁部には、略リング状のシリンダ構成部材35が固着され、これらフランジ部材34とシリンダ構成部材35の組み合わせによって、ダイヤフラム40の周縁フランジ部41が挟持固着されるとともにローリング作動膜が機能するシリンダ部が形成されるようになっている。この一方で、ダイヤフラム40に当接するとともに載置された状態にある流体ベアリング60がローリング作動膜のピストン部として機能するようになっている。
【0036】
つまり、ダイヤフラム40のローリング作用によりダイアフラム40に載置されている流体ベアリング60が上下動するように構成されている。すなわち、前記ベース本体33に形成された流体室31には外部から流体バネ用の圧力流体が注入されるように構成されており(図面の下部中央にある注入口39)、圧力流体の注入によりダイアフラム40のローリング作動膜がローリング移動して流体ベアリング60が持ち上がるように構成されている。
【0037】
ダイアフラム40について詳述すると、ダイアフラム40の作動膜(ローリング作動膜)は、シリンダ部とピストン部との摺動によりローリング移動できるようになっており、このものによって鉛直方向の実質的な荷重が支えられている。ローリング作動膜は、いわゆる『ダイヤフラム』と呼ばれる有底の略円筒形状のものであって、押し返し装着により、長いストロークと深い折り返し部(convolution)を持ち、作動中にその有効受圧面積が一定不変に保たれる略円筒形のダイアフラムである。すなわち、作動膜は折り返し部を備え、ローリング作動膜面に圧力が働くと膜面の大部分はシリンダ部とピストン部の作動膜面に押し付けられ、残りの折り返し底部が圧力による引張り応力により圧力バランスが保たれるようになっている。
【0038】
なお、本発明の実施の形態において、前述したようにローリング作動膜の周縁フランジ41は、フランジ部材34とシリンダ構成部材35の組み合わせによって固定されており、さらにローリング作動膜の底部は、リテーナプレート37によってピストン部の頂部(流体ベアリング60のピストンヘッド65に相当する箇所)に固定されている。
【0039】
例えば、布入りゴム製のローリング作動膜は、極めて薄く設計され、構成的には、強力なポリエステル(テトロン)布等の上にゴムを被覆して作製される。
【0040】
基台部30の流体室31には、前述したように外部から流体が注入口39を介して供給できるようになっており、この流体室31は、前記ゴム製の作動膜がローリング移動できるようにシリンダ部とピストン部との間で形成される作動空間へと連通される。このような流体室31を設けることによって、実質的な内容積を大きくすることができ、鉛直方向のバネ定数を小さくすることができる。
【0041】
流体ベアリング60は、内部に中空部を備える略円柱形状をしており、一対の略円形平面のうち、天井板10の内側面10aと接することのある一方の略円形平面61は多孔質焼結面から構成されており、この略円形平面61と反対側に位置する他方の略円形平面65は、ピストンヘッド65を構成しており、鉛直方向流体バネであるダイヤフラム40と当接した状態(乗った状態)にある。流体ベアリング60の中空部には注入口67を介して外部から流体ベアリング用の圧力流体が注入されるように構成されている。そして、流体ベアリング用の圧力流体が注入されることにより、多孔質焼結面から構成されている略円形平面61側のポーラス面から、圧力流体が噴出され、非接触で天井板10を浮上させる操作が行えるようになっている。
【0042】
ところで、前述したように本発明の除振台装置1において、少なくとも1つの垂下板20の内側面20aと基台部30の側面との間には、水平方向流体バネ80が介在されている。本実施の形態における水平方向流体バネ80として、ローリング作動膜構造を有するダイヤフラム80が好適例として図1に示されている。
【0043】
すなわち、基台部30の側面には円筒状の凹部構造を備えるシリンダ構成部材71が固着され、さらに、このシリンダ構成部材71の周縁部には、フランジ部材75が固着され、これらフランジ部材75とシリンダ構成部材71の組み合わせによって、ダイヤフラム80の周縁フランジ部81が挟持固着されるとともにローリング作動膜が機能するシリンダ部が形成されるようになっている。この一方でピストン部材78が垂下板20の内側面20aに固着されており、ピストン部材78のピストンヘッド部78aはダイヤフラム80に覆われた形態となっている。
【0044】
また、水平方向流体バネ80として、ダイヤフラム80に変えて、ベローズ又はピストン構造体(流体シリンダ構造のもの)を用いることもできる。ベローズは布入りゴム製のものや、金属ベローズが用いられる。
【0045】
さらに、垂下板20の内側面20aと基台部30の側面との間に、基台部30の側面から垂下板20の内側面20aに向けて水平方向流体バネ80および流体ベアリング(図示していない)を順次設けるような構成とし、流体ベアリングによって、垂下板との非接触状態を形成するようにして、摩擦ほぼ零の状態にしてもよい。この場合には、さらに鉛直方向のバネ定数を下げることができる。このような流体ベアリングを採用した構造としては、例えば、図1のピストン部材78を流体ベアリングに置換させ、なおかつ垂下板20の内側面20aからの固定を解除してフリーの状態にした図面を想定すればよい。流体ベアリングの流体噴出側が内側面20aの箇所となる。
【0046】
〔図1に示される除振台装置1の動作説明〕
図1に示される状態においては、鉛直方向流体バネ40および流体ベアリング60は作動していない。
【0047】
次いで図3に示されるように、外部から注入口39を介してベース本体33に形成された流体室31に流体バネ用の圧力流体が注入される。この圧力流体の注入によりダイアフラム40のローリング作動膜がローリング移動して流体ベアリング60を持上げるように作用する。流体ベアリング60の押し上げにより、天井板10を含む浮遊部も持ち上がる。この時の載置基準位置からの浮遊距離は図3において、『α』で表示されている。
【0048】
次いで、流体ベアリング60の中空部に、注入口67を介して外部から流体ベアリング用の圧力流体が注入される。この流体ベアリング用の圧力流体が注入されることにより、多孔質焼結面から構成されている略円形平面61側のポーラス面から、圧力流体が噴出され、非接触で天井板10が距離『β』ほど浮上する(図4)。
【0049】
すなわち、天井板10を非接触で浮上させる操作が行なわれる。この時の載置基準位置からの浮遊距離は、『α+β』となる(図4)。なお、図面上は、浮上の状態が分かり易くなるように距離を誇張して現しているが、実際の浮上距離は、『α』が数ミリ程度、『β』が数ミクロン程度であり、固定されているピストン部材78に被着した状態にある水平方向流体バネ80への軸方向への影響はほとんどない。
【0050】
〔本発明の除振台装置の変形構成例の説明〕
鉛直方向流体バネ40として、図1に示されるダイアフラム40に変えて、図6に示されるような1段以上のベローズ90(例えば図示のごとく3段ベローズ)を用いてもよい。この場合、ベローズ90は、相対向する一対のリング状の対向面部91,95と、対向面部91,95の各外周縁部を相互に連結するように設けられた側面部93(例えば、蛇腹状壁面部93)を備えている。例えば、布入りゴム製のベローズという形態であれば、ベローズ90は、対向面部91,95および蛇腹状壁面部93に連続した布が埋め込まれている。
【0051】
好適な変形例構造の基本的な考え方は、図1におけるダイヤフラム80を布入りゴム製ベローズ90(図6)に置換して、しかも同様な作用を発現させることである。すなわち、図1に示されるベース本体33の上に流体室31と連通した状態で、ベローズ90の一方のリング状の対向面部95を実質的に固定し、他方のリング状の対向面部91を流体ベアリング60の下面部と実質的に固定するようにすればよい。実質的という文言は、直接な固定方法に限定されることなく、例えば、新たな固定部材を付加し、この固定部材を介してベローズを間接的に固定してもよいという意味である。対向面部91,95はそのままの状態では、固定するのに安定性に欠けるからである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の除振台装置は、精密機器等において床からの微振動や装置本体から起こる自励振動を抑制するための除振台装置であり、各種の精密機器駆動装置を使用しつつ除振が必要となる産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の除振台装置1の好適な第1実施形態を説明するための半片断面図である。
【図2】図2は、図1の平面図である。
【図3】本発明の除振台装置の動作を説明するための半片断面図である。
【図4】本発明の除振台装置の動作を説明するための半片断面図である。
【図5】図5(a)は、除振対象物であるステッパーが載置された板状のステッパー支持台の下に、直接または間接的に除振台装置が敷設された状態を示す正面図であり、図5(b)は(a)の平面図である。
【図6】図6は、ベローズの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1…除振台装置
10…天井板
20…垂下板
30…基台部
40…鉛直方向流体バネ
60…流体ベアリング
80…水平方向流体バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除振対象物に直接または間接的に敷設され、除振対象物の除振を行う除振台装置であって、
該除振台装置は、除振対象物に直接または間接的に接する天井板と、この天井板の周縁から垂下する垂下板と、これらの天井板と垂下板に被される基台部とを備え、
前記天井板の内側面と基台部との間には、基台部から天井板の内側面に向けて鉛直方向流体バネと流体ベアリングが順次設けられており、
前記少なくとも1つの垂下板の内側面と基台部との間には、水平方向流体バネが設けられており、
前記鉛直方向流体バネによって天井板と垂下板を浮上させて水準出しを行なった後に、前記流体ベアリングによって、天井板を非接触で浮上させる操作が行なえるようになっていることを特徴とする除振台装置。
【請求項2】
前記流体ベアリングは、内部に中空部を備える略円柱形状をなし、天井板の内側面と接することのある一方の略円形平面は多孔質焼結面から構成されており、この一方の略円形平面と反対側に位置する他方の略円形平面は鉛直方向流体バネと実質的に当接しており、前記中空部には外部から流体ベアリング用の圧力流体が注入されるように構成されてなる請求項1に記載の除振台装置。
【請求項3】
前記鉛直方向流体バネは、ローリング作動膜構造を有するダイヤフラム、又はベローズである請求項1または請求項2に記載の除振台装置。
【請求項4】
前記天井板の内側面と基台部との間に介在される鉛直方向流体バネと流体ベアリングは、鉛直方向の荷重を支えるように配置され、前記垂下板の内側面と基台部との間に介在される水平方向流体バネは、主として水平方向の位置決めを目的とするように配置されてなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の除振台装置。
【請求項5】
前記天井板と前記垂下板は一体化され浮遊部としての機能を有し、前記基台部は固定部としての機能を有してなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の除振台装置。
【請求項6】
前記鉛直方向流体バネは、ローリング作動膜構造を有するダイヤフラムであり、
前記基台部は、流体室が形成されたベース本体と、このベース本体の上に流体室と連通した状態で被着されるフランジ部材と、このフランジ部材の周縁部と固着一体化されるシリンダ構成部材とを有し、
前記フランジ部材とシリンダ構成部材の組み合わせによって、ダイヤフラムの周縁フランジ部が固着されるとともにローリング作動膜のシリンダ部が形成され、
前記流体ベアリングがローリング作動膜のピストン部として形成されてなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の除振台装置。
【請求項7】
前記ベース本体に形成された流体室には外部から流体バネ用の圧力流体が注入されるように構成されており、圧力流体の注入によりローリング作動膜がローリング移動して流体ベアリングが上下動するように構成されてなる請求項6に記載の除振台装置。
【請求項8】
前記鉛直方向流体バネは、ベローズであり、
該ベローズは、相対向する一対のリング状の対向面部と、対向面の各外周縁部を相互に連結するように設けられた側面部を備え、
前記基台部は、流体室が形成されたベース本体を有し、このベース本体の上に流体室と連通した状態で前記ベローズの一方のリング状の対向面部が固定されており、
他方のリング状の対向面部が前記流体ベアリングと実質的に固定されてなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の除振台装置。
【請求項9】
前記ベース本体に形成された流体室には外部から流体バネ用の圧力流体が注入されるように構成されており、圧力流体の注入によりベローズが軸方向に拡張し流体ベアリングが上下動するように構成されてなる請求項8に記載の除振台装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの垂下板の内側面と基台部との間に形成されている水平方向流体バネは、ローリング作動膜構造を有するダイヤフラム、ベローズ、又はピストン構造体である請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の除振台装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの垂下板の内側面と基台部との間には、基台部から垂下板の内側面に向けて水平方向流体バネおよび流体ベアリングが順次設けられており、前記流体ベアリングによって、垂下板との非接触状態が形成されてなる請求項10に記載の除振台装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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