説明

除湿装置

【課題】除湿装置において省エネルギー性を高め、また除湿により選択的に分離された水分による弊害を抑制する。
【解決手段】系内の気体に含まれる水分を吸着する分離膜を備え当該水分を選択的に分離可能な分離媒体10と、その分離された水分を吸引可能な循環型アスピレーターポンプ20と、を用いる。分離媒体10には、中空管状の多孔質支持体11aの外周面にゼオライト膜11bを被覆して成る分離膜11を、分離媒体容器12内に収納したものを適用する。アスピレーターポンプ20には、循環管路21内で循環水を循環させるためのポンプ22と、その循環水を貯留する貯留タンク23と、循環管路21の少なくとも一部の外周側に対し減圧効果により負圧を生じさせる減圧部24と、その減圧部24に接続され気体や水分等を吸引する吸引部25と、を有するものを適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜を備えた分離媒体を有する除湿装置に関するものであって、種々の環境空間における気体に含まれる水分を選択分離して当該気体を除湿するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の環境空間系内の気体に含まれた水分を選択的に分離する一般的な除湿(脱湿)技術としては、例えば気体に含まれた水分を吸着剤により吸着して分離する吸着除湿式や、気体を冷却し当該気体に含まれた水分を結露させて分離する冷却除湿式などが挙げられる。
【0003】
吸着除湿式の場合、例えば吸着剤に水分が吸着すると吸着熱が発生し、系内の温度が上昇してしまうことがあり、さらに吸着剤を再生(吸着された水分を脱離)するためには当該吸着剤を加熱する必要がある。一方、冷却除湿式の場合には、冷却して除湿された気体を系内の温度(例えば常温)に戻すために、加熱機器等を利用して温度を上昇させる必要がある。
【0004】
前記のように各除湿技術においては、除湿の際に系内の温度調整が必要であったり、除湿性能を維持するために大きなエネルギーを要することがあり、省エネルギー性が低くいものと言える。また、気体に含まれた水分を、分離膜を備えた分離媒体により選択的に分離する技術(例えば、特許文献1,2)もあるが、分離された水分については、例えば真空ポンプ等を介して捕集し、除湿装置のドレイン口等から環境空間系外(屋外等)に排出したり、タンク等に貯留してから作業員等による定期的な排水作業など、何らかの処分が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−146319号公報
【特許文献2】実開平3−19530号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、前記のような背景技術等に伴って、除湿装置においては以下に示す課題があることに着目した。すなわち、除湿装置において省エネルギー性を高め、また除湿により選択的に分離された水分による弊害(処分するための手間等の弊害)を抑制することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る除湿装置は、前記の課題を解決すべく本願発明者の鋭意研究の末になされた技術的思想による創作である。
【0008】
具体的に、この発明の除湿装置の一態様は、気体に含まれる水分を吸着する分離膜を備えた分離媒体と、循環管路に循環水を循環させて当該循環管路の外周側に負圧を発生させる減圧部を備えた循環型アスピレーターポンプと、を有し、循環型アスピレーターポンプにより、分離膜に吸着した水分を吸引し循環管路に循環させることを特徴とする。前記分離膜は、例えば、中空管状の多孔質支持体の外周面にゼオライト膜を被覆して成ることを特徴とするものでも良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る除湿装置によれば、省エネルギー性を高め、また除湿により選択的に分離された水分による弊害(処分するための手間等の弊害)を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の除湿装置の概略説明図。
【図2】本実施形態のゼオライト膜の概略説明図。
【図3】実施例による時間経過に対する相対湿度変化特性図。
【図4】実施例によるゼオライト膜本数に対する除湿速度変化特性図。
【図5】実施例による気体G供給量に対する除湿速度変化特性図。
【図6】実施例による経過時間に対する相対湿度変化および温度変化特性図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る除湿装置は、種々の環境空間系内の気体に含まれる水分を、分離膜を備えた分離媒体によって選択的に分離し、その分離された水分を循環型アスピレーターポンプで吸引するものであり、その吸引された水分はポンプの循環管路内を循環(循環水として利用)する。
【0012】
分離膜に吸着した水分を真空ポンプ等で吸引(水分が分離膜を透過するのに必要なドライビングフォースを発生させて吸引)して捕集するという技術的思想(例えば特許文献1,2)は従来から存在するものの、本実施形態のように真空ポンプの替わりに循環型アスピレーターポンプを適用し、吸引した水分を単に処分するのではなく有効利用するという技術的思想は、全く無かった。
【0013】
すなわち、従来技術では、真空ポンプ等を単に水分を吸引して捕集するためだけに利用されるものであり、その捕集された水分は処分が必要であるのに対し、本実施形態の場合、除湿によって捕集された水分は、水循環型アスピレーターポンプで利用できる限り処分不要であって、当該水分による弊害を抑制できることとなる。
【0014】
〔除湿装置の一例〕
本実施形態の除湿装置は、例えば図1の符号1に示すように、系内の気体に含まれる水分を吸着する分離膜を備え当該水分を選択的に分離可能な分離媒体10と、その分離された水分を吸引可能な循環型アスピレーターポンプ20と、を有する構成によって実現することができる。
【0015】
分離媒体10は、前記のように水分を吸着して選択分離できるものであれば種々の形態のものを適用可能であるが、例えば図2に示すように、中空管状の多孔質支持体(セラミックス支持体等)11aの外周面にゼオライト膜11bを被覆して成る分離膜11を、分離媒体容器12内に収納したものが挙げられる。このような分離媒体10に対して系内の気体を接触(必要に応じてブロワ,送風ポンプ等を用いて供給して接触)させることにより、気体に含まれる水分が分離膜11の外周側に付着することとなる。
【0016】
循環型アスピレーターポンプ20は、一般的に知られている種々の形態のものを適用可能であるが、例えば循環管路21内で循環水を循環させるためのポンプ22と、その循環水を貯留(例えば一時的に貯留)する貯留タンク23と、前記の循環管路21の少なくとも一部の外周側に対し減圧効果(水流によるベンチュリ効果)により負圧を生じさせる減圧部24と、その減圧部24に接続され気体や水分等を吸引する吸引部25と、を有するものが挙げられる。
【0017】
前記のような循環型アスピレーターポンプ20の減圧部24と分離媒体10とを接続し、分離膜11の内周側を負圧に保持することにより、分離膜11の外周側に付着した水分が、当該分離膜11の外周側から内周側へ透過(圧力差によって透過)して循環型アスピレーターポンプ内に吸引され、貯留タンク23に貯留または循環管路21内を循環することとなる。
【0018】
〔実施例〕
本実施形態に基づいて分離媒体,除湿装置を作製し、それぞれの除湿性能を調べた。まず、それぞれ同一の中空管状の分離膜を複数個(15個または31個)束ねて分離媒体容器内に収納して分離媒体の試料S15,S31を作製した。そして、初期相対湿度95%の環境空間系内における気体Gを、それぞれ試料S15,S31に供給(2〜15リットル/分で供給)することにより、経過時間に対する相対湿度変化特性を調べた。その結果、図3に示すように、時間経過と共に相対湿度が低下して所望の値に収束(約30%台に収束)し、分離膜が十分高い除湿性能を有することを確認できた。
【0019】
次に、前記の分離膜の個数を種々設定(1〜35個)して分離媒体の試料SNを作製し、その試料SNに対して気体Gを15リットル/分で供給することにより、分離膜個数に対する除湿速度変化特性を調べた。その結果、図4に示すように、分離膜の個数が増加するに連れて除湿速度が直線的に上昇していく傾向を有することが確認できた。すなわち、分離膜の個数の増加(膜面積が増加)に伴って気体Gに含まれる水分との接触面積も増加することから、除湿速度が上昇したものと読み取れる。なお、図4に示すとおり、ある一定の個数を超えると除湿速度の上昇率が降下する傾向があり、その上昇率が下がり始める境界点における分離膜の個数(図4では約30個)は、試料Sにおける最適膜個数とみなすことができる。
【0020】
次に、試料S31に対して気体Gを2〜15リットル/分で供給することにより、その供給量に対する除湿速度変化特性を調べた。その結果、図5に示すように、気体Gの供給量の増加に連れて除湿速度も増加する傾向があることを確認できた。
【0021】
そこで、試料S31に対し循環型アスピレーターポンプを図1に示すように接続して除湿装置を作製し、試料S31に対して気体Gを2〜15リットル/分で供給することにより、気体Gに含まれる水分を試料S31の分離膜に吸着させ、その吸着された水分を循環型アスピレーターポンプで吸引しながら、経過時間に対する系内の温度・湿度の変化特性と、系外の湿度の変化特性を調べた。その結果、図6に示すように、系内においては時間経過と共に湿度が低下し一定の値に収束しているのに対し、その系内の温度は略一定のままであることを確認できた。これは、前記の除湿装置によって気体Gを除湿しても系内に対する温度変化の影響が無いことが読み取れる。また、前記の除湿装置は、気体Gを除湿するために、当該気体Gを分離媒体に供給するためのポンプ等や循環型アスピレーターポンプ等の機器を用いているが、系内の温度調整や除湿性能維持のためのエネルギーは不要であり、従来の除湿装置のように系内の温度調整等が必要な場合と比較して、電力消費量を抑制(例えば約1/4に抑制)できることを確認できた。
【0022】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。例えば、気体に水分以外が混入されている場合、その混入物による影響を受けない分離媒体,循環型アスピレーターポンプを適用したり、フィルター等を介して混入物を予め除去することが考えられる。
【符号の説明】
【0023】
1…除湿装置
10…分離媒体
11…分離膜
11a…多孔質支持体
11b…ゼオライト膜
12…分離媒体容器
20…循環型アスピレーターポンプ
21…循環管路
22…ポンプ
23…貯留タンク
24…減圧部
25…吸引部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる水分を吸着する分離膜を備えた分離媒体と、循環管路に循環水を循環させて当該循環管路の外周側に負圧を発生させる減圧部を備えた循環型アスピレーターポンプと、を有し、
循環型アスピレーターポンプにより、分離膜に吸着した水分を吸引し循環管路に循環させることを特徴とする除湿装置。
【請求項2】
前記分離膜は、中空管状の多孔質支持体の外周面にゼオライト膜を被覆して成ることを特徴とする請求項1記載の除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111546(P2013−111546A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261459(P2011−261459)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】