説明

除糞システム

【課題】除糞スクレーパの位置を除去位置及び離間位置の間の調整位置にセットし、除糞ベルト及びスクレーパ片の隙間を確認し調整を図り、除糞ベルト等の破損を防止することが可能な除寸システムの提供を課題とするものである。
【解決手段】除糞システム1は、帯環状の除糞ベルト7と、除糞ベルト7を支持する複数の回転ローラ13を有するベルト支持部8と、回転ローラ13を回転させるベルト回転部と、除糞ベルト7のベルト外表面7aに付着した鶏糞6を除去する除糞スクレーパ2と、除糞スクレーパ2を離間位置DP、除去位置、及び、離間位置DP及び除去位置の間に設定され、除去位置にセットされる前の除糞スクレーパ10の調整を行う調整位置に操作レバー4のレバー位置に応じてそれぞれ変位させるスクレーパ変位機構部12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除糞システムに関するものであり、特に多数羽の鶏を飼育する鶏舎の家禽ケージに付設され、鶏が排泄した鶏糞を除糞スクレーパを利用して回収する除糞システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数羽の鶏を鶏舎内に多段に積重して立設した家禽ケージ(または、養鶏用多段家禽ケージ)に収容し、鶏肉用の鶏の飼育や鶏卵の生産等が行われている。ここで、家禽ケージは、一般に金属製のフレーム部材を縦横に組合わせることによって構築され、全体として略直方体の枠形状を呈している。家禽ケージ内の鶏は、前後方向、左右方向、及び上下方向の動きが一定範囲に規制されている。そして、収容された鶏に対して餌や水、栄養剤等を所定の時間間隔で自動的に供給する給餌・給水システム、鶏が産卵した鶏卵を自動的に回収する集卵システム、及び鶏が排泄した鶏糞を回収する除糞システム等の各種システムが当該家禽ケージに付設され、これらのシステムを鶏舎全体で一元的に管理することで、鶏舎作業に要する作業人員を必要最低限に抑え、鶏舎内を常に清潔な状態に保ち、鶏の飼育や鶏卵の生産を安定させることができるようになっている。これにより、新鮮で安全な鶏肉や鶏卵を市場に安定供給することが可能となっている。
【0003】
上述した除糞システムについて詳述すると、除糞システムは、家禽ケージに収容された鶏の下方に当該家禽ケージの長手方向に沿って設置された除糞ベルトを有し、家禽ケージ内の鶏から排泄された鶏糞を落下させ、下方に位置する除糞ベルトのベルト外表面でこれを受け止めるものである。除糞ベルトは、家禽ケージに回転可能に軸支された複数の回転ローラによって支持されており、回転ローラと接続したモータ等のベルト回転部を稼動させることにより、除糞ベルトを所定の方向に回転させることができる。なお、除糞ベルトは可撓性素材を帯環状に構成したものであり、上述のベルト回転部の稼動によって一方のベルト端部に到達すると、ベルト外表面の回転方向(鶏糞の搬送方向)が180°転換され、逆方向に切換えられる。さらに、他方のベルト端部に到達すると、同様に回転方向が180°転換される。これにより、除糞ベルトの回転往復軌道が継続される。係る運動によって、ベルト外表面で受止めた鶏糞は、一方のベルト端部に向かって搬送される。そして、ベルト端部に到達した鶏糞は、自重によって除糞ベルトから落下し、ベルト端部の下方に設けられた回収容器またはベルトコンベア等によって回収される。回収された鶏糞は、肥料や各種燃料等として再利用されている。
【0004】
上述した除糞システムは、除糞ベルトを常に回転させるものではなく、予め規定された一定の間隔で除糞ベルトの回転及び停止を繰り返すように制御されている。したがって、鶏糞が家禽ケージから落下しベルト外表面でこれを受けとめてから、除糞ベルトの回転が開始されるまでにある程度の時間を要することがある。ここで、鶏糞は水分を多く含み、落下した鶏糞が上記時間を経ることによって乾燥し、ベルト外表面に固着することがある。そのため、係る状態で除糞ベルトを回転させても、ベルト端部に到着した鶏糞は上記固着によって自重による落下がスムーズに行われないことがある。ベルト外表面に固着したままの鶏糞は、逆方向の回転に沿って除糞ベルトの裏側を移動し、回収容器の設置されていない場所で落下したり、ベルト外表面に固着したままの状態で回転が継続されることがある。その結果、鶏舎内全体の衛生状態を悪化させる要因ともなっていた。
【0005】
そこで、ベルト外表面に薄板状のスクレーパ片をベルト幅方向に沿って当接させる除糞スクレーパが設置されている。これにより、スクレーパ片が除糞ベルトのベルト外表面に対して一定の押圧力によって隙間なく当接されているため、ベルト外表面に固着した鶏糞を当該スクレーパ片によって掻き取り(掻き落とし)することができ、除糞ベルトから確実に除去することができる。これにより、上述した鶏舎内の衛生状態を悪化させることがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の除糞システムにおいて、下記に掲げる問題点を生じることがあった。すなわち、除糞ベルトのベルト幅方向に沿って当接される除糞スクレーパのスクレーパ片の当接状態、換言すれば、除糞ベルトに対するスクレーパ片の押圧量の適正な調整を図ることが困難であった。ここで、除糞システムが停止している場合(除糞ベルトの回転が停止している場合)、除糞スクレーパは、除糞ベルトのベルト外表面から離れた位置(離間位置)にセットされ、除糞ベルトを回転させるときにベルト外表面に対して一定の押圧力で押圧されるようにして当接させる位置(除去位置)にセットされていた。すなわち、除糞スクレーパは、離間位置及び除去位置の二つの位置にセット可能に形成されていた。
【0007】
ところが、ベルト外表面と除糞スクレーパのスクレーパ片との当接状態が強い場合、すなわち、ベルト外表面に対し除糞スクレーパのスクレーパ片が必要以上に強く押付けられている場合、除糞ベルト及びスクレーパ片の間の摩擦力が大となり、除糞ベルトのスムーズな回転を阻害することがあった。さらに、スクレーパ片によって除糞ベルトの一部を削ったり、スクレーパ片及び除糞ベルトの双方が激しく磨耗する可能性が強かった。そのため、それぞれについての交換が必要となり、交換作業或いは確認のためのメンテナンス作業の頻度が増えることがあった。
【0008】
一方、ベルト外表面と除糞スクレーパのスクレーパ片との当接状態が弱い場合、すなわち、ベルト外表面に対し除糞スクレーパのスクレーパ片の押付けが弱く、或いはベルト外表面とスクレーパ片の間に隙間が形成されている場合、除糞ベルト及びスクレーパ片の間の摩擦力は小さくなるものの、スクレーパ片による鶏糞の掻取り作業が十分に行われず、完全に除去することができないことがあった。その結果、除糞ベルトに固着した鶏糞が残存し、鶏舎内の衛生状態が悪化することがあった。
【0009】
ここで、除糞スクレーパを除糞ベルトに当接させる除去位置、及び除糞ベルトから離間させた離間位置に変位させるスクレーパ変位機構部は、複数のリンクアームを有するリンク部及び操作レバー等を組合わせて構築され、例えば、操作レバーの上下方向のレバー操作によって上記除去位置及び離間位置にそれぞれ除糞スクレーパを変位させることが可能であった。しかしながら、従来の除糞システムでは、係る除糞スクレーパの変位を除去位置及び離間位置の二つの位置にしかセットすることができなかった。除糞スクレーパの除糞ベルトとの当接は、周囲環境か各種条件等に応じて一定なものでなく、除糞ベルトの各回転毎に微妙に異なることがあった。そのため、除糞スクレーパの押付条件を一定にすることが困難なことがあった。特に、上述した二つの位置(除去位置及び離間位置)にしかセットすることのできない除糞スクレーパの場合、係る調整作業が困難になることがあった。
【0010】
一般に離間位置に待避した除糞スクレーパに対し、除糞ベルトのベルト幅方向のベルト外表面とスクレーパ片の間の距離が一定になるように調整し、その後操作レバーを処置位置に回動させることにより、スクレーパ片の押付けを行っていた。すなわち、離間位置で予め除去位置における除糞スクレーパの押付状態を経験的に予測し、除糞スクレーパ及び除糞ベルトの間の間隔を調整する作業が必要となった。係る調整作業は、煩雑であり、調整時間が多く必要となることがあった。また、不適正な調整により、除糞スクレーパや除糞ベルトを破損したり、或いは不十分な除去によって衛生状態を悪化させる等の問題も生じていた。
【0011】
そこで、本発明は上記実情を鑑み、除糞ベルトのベルト端部に配設される除糞スクレーパの除糞ベルトとの相対的位置関係を多段階的に保持し、除糞ベルトに対する除糞スクレーパの押付量を予め調整可能な除糞システムの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の除糞システムは、「帯環状の除糞ベルトと、家禽ケージに回転可能に軸支され、前記除糞ベルトを前記家禽ケージの長手方向に沿って断面長円形状に支持する複数の回転ローラを有するベルト支持部と、前記ベルト支持部と連結し、前記回転ローラに支持された前記除糞ベルトを所定方向に回転させるベルト回転部と、前記除糞ベルトの一方のベルト端部に前記除糞ベルトのベルト幅方向に沿って配された薄板状のスクレーパ片、前記スクレーパ片を支持するスクレーパ基部、及び前記スクレーパ基部を前記家禽ケージに所定範囲で回動自在に軸支するスクレーパ軸を有する除糞スクレーパと、前記除糞スクレーパと連結したリンク部、前記リンク部と接続し前記家禽ケージに回動自在に軸支されたレバー軸、前記レバー軸から延設されレバー位置に応じて前記スクレーパ片を前記除糞ベルトのベルト外表面に当接させる除去位置、前記ベルト外表面から離間させる離間位置、及び前記除去位置と前記離間位置の間の調整位置に前記除糞ベルトをそれぞれ変位させる操作レバー、及び、前記除去位置、前記離間位置、前記調整位置に前記除糞スクレーパをそれぞれ変位させる位置に前記操作レバーを保持するレバー位置保持部を有するスクレーパ変位機構部と」を具備するものであっても構わない。
【0013】
ここで、除糞ベルトとは、例えば、ポリプロピレン樹脂等を幅広のシート状に形成したシート部材から構成され、所定のベルト幅にカットされた帯状のシート部材の互いのシート端部同士を連結することで、帯環状を呈するように構成されている。なお、除糞ベルトを構成するシート部材は可撓性を有し応力によって変形可能な素材である。そのため、ベルト支持部の複数の回転ローラによって支持されることにより、さらに具体的に説明すると回転ローラのローラ面と帯環状の除糞ベルトのベルト内表面とを当接するように支持することで、断面長円形状にして除糞ベルトを支持することができる。このとき、除糞ベルトの長手方向は、家禽ケージの長手方向に一致している。これにより、ベルト支持部の一部の回転ローラと駆動伝達機構を介して連結されたベルト回転部により、回転ローラを回転駆動させることで、ベルトコンベアのベルト部材のように除糞ベルトを一定方向に回転させることが可能となる。このとき、ベルト外表面で受止められた鶏糞は、上記回転に従って一方のベルト端部に向かった搬送される。ここで、ベルト支持部及びベルト回転部の構成は周知の技術を利用するものであるため、ここでは説明を省略する。
【0014】
一方、除糞スクレーパとは、上述の除糞ベルトのベルト外表面とスクレーパ片とを当接させ、ベルト外表面に付着した鶏糞を掻き取って除去するものであり、帯環状の除糞ベルトのベルト幅に沿うようにして薄板状のスクレーパ片を当接可能に、除糞ベルトの一方のベルト端部に変位可能に設けられているものである。さらに、スクレーパ変位機構部とは、除糞スクレーパとリンク機構部を介して連結され、操作レバーのレバー位置に応じて、除糞スクレーパを除去位置と前記離間位置の間の調整位置、離間位置、及び調整位置にそれぞれ変位させるものであり、各位置での保持は、レバー位置保持部によって規制されている。
【0015】
したがって、本発明の除糞システムによれば、レバー位置保持部によって操作レバーの可動範囲が三段階に規制され、これに基づいて除糞スクレーパを除去位置と離間位置の間に設置され前記スクレーパ片と前記ベルト外表面とが接した調整位置、調整位置、及び離間位置にそれぞれセットすることが可能となる。ここで、調整位置は除糞スクレーパのスクレーパ片とベルト外表面との間に僅かな隙間が形成された位置であり、係る位置でベルト幅方向の隙間の偏り等を調整を図ることができる。係る調整位置で調整した後、操作レバーを操作し除去位置になるように除糞スクレーパを変位させることで除去位置における除糞スクレーパの押付け状態が安定する。これにより、除糞ベルトに対する除糞スクレーパの押付けが適正状態となり、ベルト外表面の鶏糞を確実に除去し、かつ不必要な摩擦を生じることがない。
【0016】
さらに、本発明の除糞システムは、上記構成に加え、「前記操作レバーは、前記家禽ケージのケージ側面に沿って設けられ、前記レバー位置保持部は、平板状を呈し、前記操作レバーを貫通可能な刳抜孔部を有して前記家禽ケージのケージ端に取設され、前記刳抜孔部は、前記除糞スクレーパを前記除去位置に変位させる除去部、前記調整位置に変位させる調整部、及び前記離間位置に変位させる離間部が上下方向に並設され、前記除去部、前記調整部、及び前記調整部を接続し、前記操作レバーを上下方向に回動させる接続部をさらに有して構成される」ものであっても構わない。
【0017】
したがって、本発明の除糞システムによれば、レバー位置保持部が平板状を呈し、操作レバーを貫通可能な刳抜孔部を有し、刳抜孔部の形状によって操作レバーを所定位置に保持することが可能となる。すなわち、各孔部にセットされた操作レバーは、長片形状の操作レバーのレバー底面の一部が各孔部の孔壁と接することにより、当該位置を保持することができる。これにより、操作レバーのレバー位置を保持し、操作レバーと連結したレバー軸及びリンク機構部を介して除糞スクレーパの位置を決定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、除糞スクレーパを除去位置、離間位置、及び調整位置にそれぞれ変位して保持することができ、特に調整装置で除糞ベルトと除糞ベルトとの隙間を予め確認し、その後除去位置に変位させることで、除糞スクレーパの押付力(当接状態)を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の除糞システムの除糞スクレーパを離間位置に保持した状態の概略構成を示す側方から視た模式断面図である。
【図2】レバー位置保持部の構成を示す説明図である。
【図3】除糞スクレーパを調整位置に保持した状態の概略構成を示す側方から視た模式断面図である。
【図4】除糞スクレーパを除去位置に保持した状態の概略構成を示す側方から視た模式断面図である。
【図5】操作レバー及びレバー位置保持部の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態である除糞システム1について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の除糞システム1の除糞スクレーパ2を離間位置DPに保持した状態の概略構成を示す側方から視た模式断面図であり、図2はレバー位置保持部3の構成を示す説明図であり、図3は除糞スクレーパ2を調整位置CPに保持した状態の概略構成を示す側方から視た模式断面図であり、図4は除糞スクレーパ2を除去位置SPに保持した状態の概略構成を示す側方から視た模式断面図であり、図5は操作レバー4及びレバー位置保持部3の構成を示す斜視図である。ここで、本実施形態の除糞システム1は、鶏(図示しない)の収容された家禽ケージ5に付設されるものであり、鶏糞6を家禽ケージ5の下方で受け止め、長手方向に沿って一方のケージ端5aまで搬送し、肥料等に再利用可能に鶏糞6を回収するものについて例示する。
【0021】
本実施形態の除糞システム1は、図1乃至図5に示すように、帯環状の除糞ベルト7と、除糞ベルト7を架設して支持するベルト支持部8と、ベルト支持部8に支持された除糞ベルト7を所定方向に回転させるベルト回転部(図示しない)と、除糞ベルト7のベルト外表面7aに付着した鶏糞6を除糞ベルト7のベルト端部7bで掻落として除去する除糞スクレーパ2と、除糞スクレーパ2を除去位置SP、離間位置DP、及び調整位置CPにそれぞれ変位してセットするスクレーパ変位機構部12とを具備して主に構成されている。
【0022】
さらに具体的に説明すると、除糞ベルト7は、ポリプロピレン樹脂からなる広幅の樹脂シートから構成され、帯環状に形成することで無端のベルト状部材として構築されている。ポリプロピレン樹脂は可撓性素材であるため、応力に応じて自在に変形することができ、後述のベルト支持部8に支持されることによって断面長円形状に構成することができる。一方、ベルト支持部8は、家禽ケージ5の長手方向に直交する方向に沿って回転軸方向を一致させ、家禽ケージ5のケージ側面に回転可能に軸支された複数の回転ローラ13を有して構成されている。ここで、回転ローラ13のローラ面13aに除糞ベルトのベルト内表面7cを当接させ、所定の張力を与えて除糞ベルト7が支持されている。これにより、家禽ケージ5の下方での回転ローラ13に従った除糞ベルト7の回転が可能となる。
【0023】
一方、ベルト回転部は、モータ等の駆動回転力を発生させる回転駆動部、及び、発生させた駆動回転力を上述の回転ローラ13に伝達する駆動伝達部(いずれも図示しない)を有して構成されている。なお、駆動伝達部(例えば、ギアチェーン等)と連結される回転ローラ13は、複数の回転ローラ13の中の一部であっても構わない。これにより、回転ローラ13に支持された除糞ベルト7は、回転ローラ13の回転(図4における矢印A参照)に連動し、上側の除糞ベルト7がベルト端部7bに向かって回転することになる(図4における矢印B参照)。ここで、ベルト支持部8に支持された除糞ベルト7のベルト端部7bと、家禽ケージ5のケージ端5aとは略一致している。そして、当該ベルト端部7bにおいて、除糞ベルト7の回転方向が上から下へと180°転換される。これにより、当初上側に位置していた除糞ベルト7が下側に位置し、逆方向に向かって移動することになる。これにより、無端状の除糞ベルトは往復回転運動を繰り返し継続することができる。なお、除糞ベルト7を回転させるベルト回転部は、周知の構成を利用することができ、ここでは詳細な説明は省略する。
【0024】
本実施形態の除糞システム1における除糞スクレーパ2は、除糞ベルト7のベルト幅方向(図1等における紙面手前から奥行方向に相当)に沿って設けられ、一方のベルト端部7bによって180°曲折された除糞ベルト7のベルト外表面7aとベルト端部7bの斜め下方で当接可能な薄板状のスクレーパ片11と、スクレーパ片を支持するスクレーパ基部14と、スクレーパ基部14を家禽ケージ5に対して回動可能に軸支するスクレーパ軸15とを具備して主に構成されている。
【0025】
一方、スクレーパ変位機構部12は、除糞ベルト7に対する除糞スクレーパ2の相対的位置関係を変位させることが可能なものであり、前述の除糞スクレーパ2のスクレーパ軸15と連結した第一アーム19、一端が当該第一アーム19のアーム端とリンク軸20を介して連結され、他端が後述のレバー軸23と連結された第二アーム21を有するリンク部22と、第二アーム21の他端と連結し家禽ケージ5のケージ側面5bから軸端23aを突設させ、家禽ケージ5に対して上下方向に回動自在に軸支されたレバー軸23と、当該レバー軸23の軸端23aと一端が連結され、ケージ端5a方向に延設された長片状の操作レバー4と、当該操作レバー4のレバー軸23に従う回動を所定の範囲に規制し、かつ操作レバー4を所定の位置に段階的に保持するレバー位置保持部3とを具備している。ここで、レバー軸23と連結された操作レバー4の一端は、レバー軸23を挟んで分離した一対の分離片16a,16bが形成され、かつ分離片16a,16bを貫通する調整ボルト17が設けられている。分離片16a,16bの相対する位置には調整ボルト17と螺合可能なボルト溝(図示しない)が形成されている。これにより、調整ボルト17を締結方向に回転させることにより、螺合推進力によって分離片16a,16b同士を近接させようとする力が作用し、操作レバー4及びレバー軸23が強固に連結される。一方、調整ボルト17を締結解除方向に回転させることにより、一対の分離片16a,16bが離間し、操作レバー4及びレバー軸23の連結が解除される。係る状態で後述する除糞ベルト7と除糞スクレーパ2との相対的位置関係の調整を図ることができる。
【0026】
ここで、レバー位置保持部3は、図2及び図5等に主に示されるように、家禽ケージ5のケージ端5aからケージ側面5b方向(図1等における紙面手前方向、或いは図5における紙面左方向に相当)に延設された平板状の金属製部材であり、操作レバー4を貫通可能に刳抜かれた貫通孔部26を有している。ここで、貫通孔部26の形状は、除糞スクレーパ2を離間位置DP、調整位置CP、及び除去位置SPにそれぞれ段階的に変位させるための孔状の離間部29、調整部28、及び除去部27からなる位置決定孔がそれぞれ縦方向に配設され、調整部28及び離間部29、及び、除去部27及び調整部28の縦方向に隣接したそれぞれの位置決定孔同士を連結する二つの縦長孔形状の移動部30を有している。さらに、家禽ケージ5のケージ端5aにネジ固定されるためのネジ固定孔31が一方の側方に上下二箇所に設けられている。また、貫通孔部26の最下位置の除去部27には、操作レバー4の水平方向の移動を規制する規制突部32が移動部30及び除去部27の間の上方の一部に設けられている。
【0027】
縦長孔形状の移動部30の横幅は、操作レバー4のレバー幅に対して僅かに広くなるように形成されている。これにより、移動部30を移動する操作レバー4は、水平方向の動きが規制され、上下方向にのみ移動することができる。一方、除去部27、調整部28、及び離間部29は、操作レバー4のレバー幅よりも広く形成されている。そのため、除去部27等に到達した操作レバー4を水平方向に僅かに移動させることにより、例えば、除去部27の孔底面27aと操作レバー4のレバー底面4aとを当接させた状態することができ、操作レバー4のレバー位置を固定することができる。これにより、操作レバー4のレバー位置に連動して変位する除糞スクレーパ2の除糞ベルト7に対する相対的位置を任意の位置にセットすることができる。
【0028】
次に、本実施形態の除糞システム1における除糞スクレーパ2の動きの一例について絶命する。本実施形態の除糞システム1において、除糞ベルト7の稼動を停止している場合、すなわち、除糞ベルト7の回転駆動がなされず、除糞ベルト7と除糞スクレーパ2との相対的位置関係が変化していない場合、図1等に示すように、操作レバー4はレバー位置保持部13の上方側の離間部29にセットされている。係る操作レバー4のレバー位置に保持されると、操作レバー4と接続したレバー軸23、スクレーパ変位機構部12のリンク部22、及びスクレーパ軸15の連動リンク作用によって、除糞スクレーパ2のスクレーパ片11が除糞ベルト7から離間した位置(離間位置DP)に除糞スクレーパ2が位置することになる。この状態で除糞ベルト7の回転が開始されるまで待機する。このとき、家禽ケージ5に収容された多数羽の鶏によって鶏糞が排泄され、家禽ケージ5の下方に設置された除糞システム1の除糞ベルト7のベルト外表面7aで一定量の鶏糞6が受止められる。
【0029】
その後、予め規制された稼動タイミング(例えば、1週間に1〜2回の頻度)で本実施形態の除糞システム1による除糞ベルト7の回転を開始する。このとき、除糞ベルト7の回転の開始前に除糞スクレーパ2の調整が行われる。始めに、離間部29から調整部28に操作レバー4のレバー位置を移動させる。具体的には、離間部29に位置する操作レバー4を少し持ち上げながら左方向(図5における紙面左方向に相当)にずらし、移動部30に位置させる。そして、当該移動部30で操作レバー4を下方向にゆっくりと水平方向の移動を規制した状態で移動させ、レバー位置保持部3の中央に設けられた調整部28の位置に変位させる。このとき、移動部30から調整部28の移動は、上記と逆の操作によって操作レバー4を少し持ち上げながら右方向(図5における紙面右方向に相当)にずらし、操作レバー4から手を離すことによって行われる。なお、操作レバー4は自重によって下方に回動するように付勢されている。これにより、操作レバー4が調整部28にセットされる(図3参照)。
【0030】
このとき、操作レバー4の先端に設けられた調整ボルト7を締結解除方向に回転させて、一対の分離片16a,16bによるレバー軸23と操作レバー4との連結を僅かに緩める。そして、図3に示すように、除糞ベルト7のベルト外表面7aと除糞スクレーパ2のスクレーパ片11の片端部11aとが当接させた状態にセットし、この状態で調整ボルト7を締結方向に回転させる。これにより、一対の分離片16a,16bが近接し、再び操作レバー4及びレバー軸23の連結が強固なものとなる。これより、操作レバー4のレバー操作に連動してスクレーパ変位機構部12を動かすことが可能となる。
【0031】
調整位置CPにおける上記調整を行った後、操作レバー4をレバー位置保持部3の除去部27まで移動させる。なお、レバー操作の詳細については既に説明したため、ここでは省略する。これにより、図4に示されるように、除糞スクレーパ2のスクレーパ片11の片端部11aが除糞ベルト7のベルト外表面7aと所定の押圧力で当接した状態となる。このとき、調整位置CPにおいて除糞スクレーパ2と除糞ベルト7との距離の調整が完了しているため、操作レバー4のレバー位置を調整部28から除去部27にセットするだけで、適切な押圧力で除糞スクレーパ2を除糞ベルト7に当接させることができる。すなわち、リンク機構を有するスクレーパ変位機構部12によって変位する除糞スクレーパ2を予め調整位置CPにセットし、当該位置でスクレーパ片11の微調整を行った後に除去位置SPにセットすることにより当接状態の安定(押圧力の安定)を図ることができる。特に、調整位置CPから除去位置SPへの変位量は僅かであり、操作レバー4による変位量も一定にすることができるため、調整作業を容易にすることができる。
【0032】
係る状態でベルト回転部を稼動させ、ベルト支持部8の回転ローラ13を回転させる(図4における矢印A参照)。その結果、回転ローラ13の回転に連動し、支持された除糞ベルト7が所定方向(図4における矢印B参照)に回転する。これにより、ベルト外表面7に載置された鶏糞6が除糞ベルト7の一方のベルト端部7bに向かって搬送され、当該ベルト端部7bで大部分が自重に従って落下し、下方に設置された回収用のベルトコンベアによって鶏舎外に搬送される。このとき、ベルト外表面7aに固着した一部の鶏糞6aは、除去位置SPにセットされた除糞スクレーパ2のスクレーパ片11及び除糞ベルト7のベルト外表面7aの間に隙間なく、押圧された状態によって掻き取られ、除去される。その結果、除糞スクレーパ2を通過後のベルト外表面7aには、鶏糞6が残存することがない。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の除糞システム1によれば、操作レバー4を操作し、除糞スクレーパ2の除糞ベルト7に対する相対的位置を除去位置SP、離間位置DP、及び調整位置CPにセットすることができ、除去位置SPにセットする前に予め調整位置CPでスクレーパ片11等の調整を図ることができる。これにより、除去位置SPにセットした際の除糞スクレーパ2及び除糞ベルト7の当接状態を良好なものとすることができ、適正な押圧力で除糞ベルト7にスクレーパ片11を当接させることができる。その結果、ベルト幅方向の偏りを解消し、かつ除糞スクレーパ2等の破損や磨耗等を防ぎ、鶏糞6を完全に掻き取って除去することができる。
【0034】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0035】
すなわち、本実施形態の除糞システム1において、操作レバー4の先端に設けられた調整ボルト17によって、操作レバー4及びレバー軸23の連結を緩めて除糞スクレーパ2の除糞ベルト7に対する相対的位置を調整するものを示したが、これに限定されるものではなく、調整位置CPにおいてその他の構成によって調整可能な機能を有するものであれば構わない。例えば、リンク部22と連結したレバー軸23或いは除糞スクレーパ2のスクレーパ軸15の位置を可変可能に形成し、適正な当接状態を可能とするものであっても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 除糞システム
2 除糞スクレーパ
3 レバー位置保持部
4 操作レバー
5 家禽ケージ
5a ケージ端
6,6a 鶏糞
7 除糞ベルト
7a ベルト外表面
7b ベルト端部
7c ベルト内表面
8 ベルト支持部
11 スクレーパ片
11a 片端部
12 スクレーパ変位機構部
13 回転ローラ
13a ローラ面
22 リンク部
26 貫通孔部
27 除去部
28 調整部
29 離間部
CP 調整位置
DP 離間位置
SP 除去位置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯環状の除糞ベルトと、
家禽ケージに回転可能に軸支され、前記除糞ベルトを前記家禽ケージの長手方向に沿って断面長円形状に支持する複数の回転ローラを有するベルト支持部と、
前記ベルト支持部と連結し、前記回転ローラに支持された前記除糞ベルトを所定方向に回転させるベルト回転部と、
前記除糞ベルトの一方のベルト端部に前記除糞ベルトのベルト幅方向に沿って配された薄板状のスクレーパ片、前記スクレーパ片を支持するスクレーパ基部、及び前記スクレーパ基部を前記家禽ケージに所定範囲で回動自在に軸支するスクレーパ軸を有する除糞スクレーパと、
前記除糞スクレーパと連結したリンク部、前記リンク部と接続し前記家禽ケージに回動自在に軸支されたレバー軸、前記レバー軸から延設されレバー位置に応じて前記スクレーパ片を前記除糞ベルトのベルト外表面に当接させる除去位置、前記ベルト外表面から離間させる離間位置、及び前記除去位置と前記離間位置の間の調整位置に前記除糞ベルトをそれぞれ変位させる操作レバー、及び、前記除去位置、前記離間位置、前記調整位置に前記除糞スクレーパをそれぞれ変位させる位置に前記操作レバーを保持するレバー位置保持部を有するスクレーパ変位機構部と
を具備することを特徴とする除糞システム。
【請求項2】
前記操作レバーは、
前記家禽ケージのケージ側面に沿って取設され、
前記レバー位置保持部は、
平板状を呈し、前記操作レバーを貫通可能に刳抜かれ、前記除糞スクレーパを前記除去位置に変位させる除去部、前記調整位置に変位させる調整部、及び前記離間位置に変位させる離間部が縦方向に並設され、前記除去部及び前記調整部、前記調整部及び前記離間部の間をそれぞれ連結し、前記操作レバーの移動を可能にする移動部を有する貫通孔部を具備することを特徴とする請求項1に記載の除糞システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−48579(P2013−48579A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188252(P2011−188252)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390030661)株式会社ハイテム (22)
【Fターム(参考)】