説明

陽極酸化処理装置

【課題】 マスキング材料を使用せずに被処理物の目的とする表面部分に陽極酸化処理を施すことができる陽極酸化処理装置を提供することである。
【解決手段】
ピストンWのピストンリング溝W1を陽極酸化処理するものである。より正確にはピストンWの頂部の外周面にある頂部よりスカート部にかけて形成された3個のピストンリング溝W1、W2及びW3の内、頂部側のピストンリング溝W1を含む側周面Wfを主として陽極酸化処理するものである。前記陽極酸化処理装置1は保持手段2(第1電極部)と、電極部3(第2電極部)と、羽根車部4(電解液排出手段)と、電解液供給手段5と、通電手段6と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極酸化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に陽極酸化処理は、通電を確保するため酸化処理電解液(以下電解液と呼ぶ)の液面下で行う。被処理物表面の一部に陽極酸化処理を行う場合は、陽極酸化処理を行わない非処理部に電解液が接触しないようにする必要がある。例えば、アルミニウム基金属製被処理物表面の一部に陽極酸化処理を施す場合には、被処理物表面に弾性体のマスキング材料を取り付けて電解液と接触しないようにカバーする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、マスキングを行わずに被処理物表面の一部に陽極酸化処理を施す方法として、例えば陽極酸化処理部と非処理部との境界を電解液の液面で分離して確保する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−336050号公報
【特許文献2】特開平11−12781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1のマスキング方法では、マスキング材料が必要となる一方、被処理物の表面にマスキング材料を取り付けたり、外したりするための工程、作業、時間が必要となる。このため、陽極酸化処理の生産性が悪くなり、コスト高になる問題がある。
【0006】
また、特許文献2の液面で境界を確保する方法は、電解液を攪拌したり、補充したりする際に発生する液面の変動によって陽極酸化処理部と非処理部との境界が不安定になり、確実な境界が確保できない問題がある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、マスキング材料を使用せずに被処理物の目的とする表面部分に陽極酸化処理を施すことができる陽極酸化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の課題解決手段は、側周面にリング状の溝部を有する金属製の被処理物に接触し電流を通電する第1電極部と、前記被処理物と対向する電解液吐出孔と、前記吐出孔から吐出し前記被処理物の表面と接触した状態にある電解液を貯留する貯留部と、前記電解液吐出孔に電解液を供給する電解液通路と、を有する第2電極部と、前記貯留部から過剰となった電解液を排出する電解液排出手段と、前記電解液通路へ電解液を供給する電解液供給手段と、前記第1電極部と前記第2電極部とに電圧を印加する通電手段と、を備える構成である。
【0009】
本発明の第2の課題解決手段は、前記電解液排出手段は、電解液を取り入れる取入口と、電解液を流す流路と、を有する構成である。
【0010】
本発明の第3の課題解決手段は、前記電解液排出手段は、前記電解液排出手段の回転中心から放射状の誘導板を配置し前記流路を設ける構成である。
【0011】
本発明の第4の課題解決手段は、前記電解液排出手段は、前記被処理物と一体に回転する構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の陽極酸化装置では、陽極酸化処理のために被処理物を第1電極部と接触させ、被処理物と対向している第2電極部の電解液吐出孔から電解液供給手段で電解液を吐出させ、被処理物の表面と電解液を接触した状態で通電手段により第1電極部と第2電極部との間に電圧を印加すると、第1電極部と接触した被処理物と第2電極部の間に電解液を介して電流が流れ、被処理物の表面は電解液に接触した部分に陽極酸化処理を施すことができる。また、吐出孔から吐出した電解液は被処理物と接触した状態で貯留部に貯まり、この際に電解液排出手段により貯留部から過剰となった電解液が排出され、所定の高さ以上は被処理物の表面と電解液が接触せず陽極酸化処理が施されない。以上のことから、本発明の陽極酸化装置ではマスキング材料を使用せずに被処理物の表面の目的とした部分に陽極酸化処理を施すことができる。
【0013】
また、貯留部に貯留した電解液が過剰となると、過剰となった電解液は取入口から取り入れられ、取り入れられた電解液は流路を流れて移動することができるので、過剰となった電解液を次々と排出することができる。
【0014】
また、電解液排出手段を回転させると、前記電解液排出手段が備える放射状の板が取り入れた電解液を回転方向に押し出し、押し出された電解液には遠心力が働くので放射状の誘導板に沿って回転中心から外へ流れて移動し、さらに電解液を排出することができる。
【0015】
また、被処理物の表面と電解液の接触状態が違っていても被処理物を回転させることにより被処理物の表面と電解液の接触状態を一定にすることで、被処理物の表面に一定の陽極酸化処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る陽極酸化処理装置の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電極部の部分拡大図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電極部の平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る基盤の部分拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係る基盤の平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る中板の部分拡大図である。
【図7】本発明の実施形態に係る中板の平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電極本体の部分拡大図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電極本体の平面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る羽根車部の部分拡大図である。
【図11】本発明の実施形態に係る羽根車部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る陽極酸化処理装置1の説明図である。本実施形態の陽極酸化処理装置1は、アルミニウム合金製のピストンWのピストンリング溝W1を陽極酸化処理するものである。より正確にはピストンWの頂部の外周面にある頂部よりスカート部にかけて形成された3個のピストンリング溝W1、W2及びW3の内、頂部側のピストンリング溝W1を含む側周面Wfを主として陽極酸化処理するものである。前記陽極酸化処理装置1は、保持手段2(第1電極部)と、電極部3(第2電極部)と、羽根車部4(電解液排出手段)と、電解液供給手段5と、通電手段6と、電解槽7と、貯留部8と、を有する。
【0019】
保持手段2は、フレーム(図示せず)の上端に固定された昇降装置(図示せず)の昇降部に固定された減速モータ21と、この減速モータ21の出力軸に固定された保持軸22と、保持軸22の下端に設けられたピストンWの内周面に着脱自在に係止する係止爪(図示せず)と、からなる。保持軸22の軸方向中程には羽根車部4を着脱自在に固定することができる円筒状の支持具23が取り付けてあり、この支持具23は保持軸22の上下方向に自由に位置を変えることができる。前記係止爪は、その下端側からピストンWの内腔が覆い被さるように軸方向に挿入され、保持軸22とピストンW及び羽根車部4は同軸となる。
【0020】
また、保持軸22の支持具23より上方に、通電手段6を構成する集電リング61が固定され、この集電リング61と前記係止爪とは電気的に通電し、かつ前記係止爪を介してピストンWに通電している。集電リング61と、保持軸22と、ピストンWとにより陽極が構成される。
【0021】
電解液供給手段5は、電解槽7から回収された電解液を所定の温度に冷却するための冷却槽51と、電解液を送り出す駆動手段であるポンプ52と、電解液の流量を制御する流量計53と、ポンプ52から圧送される電解液を通すパイプ54から構成される。さらに冷却槽51には、電解液を貯留するサブタンク511と、回収された電解液を冷却する冷凍機512及び熱交換器513と、電解液の温度を制御する制御手段を構成する温度センサ514が設けられている。なお、パイプ54は、本発明の流入路を構成するものである。
【0022】
電解槽7は、上端開口する容器状のものであり、電解槽7の底に受け溜まった電解液を電解液供給手段5に回収させる回収口71が設けられている。さらに、電解槽7の上端開口部は、電解液の飛散を防止するための円環状の鍔72が設けられている。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係る電極部3の部分拡大図であって、図3は、本発明の実施形態に係る電極部3の平面図である。電極部3は、電極部3の土台となる方形状の基板31と、基板31の上方に設けられる円盤状の中板32と、中板32の上方に設けられるリング状の電極本体33と、電極本体33に接した状態で中板32に組み込まれ右方向に延出し通電手段6と接続される導体34と、から構成され、陽極酸化処理装置1の陰極を構成するものである。また、中板32と電極本体33と導体34は、内側部分に電解液を貯留する貯留部8を形成する。
【0024】
図4は、本発明の実施形態に係る基盤31の部分拡大図であって、図5は、本発明の実施形態に係る基盤31の平面図であるある。基板31は、4隅を丸く形成された方形の板状で、その上面に浅い円形の第1円形凹部311と、その第1円形凹部311の中央に一端が開口し他端が側面に開口するトンネル状の通路312と、を備える。
【0025】
図6は、本発明の実施形態に係る中板32の部分拡大図であって、図7は、本発明の実施形態に係る中板32の平面図である。中板32は、円盤状でその下面側には中央部に浅い円形の第2円形凹部321を形成する突条322と、上面側の中央部に浅い円形の第1円形溝323と、これと同軸の浅い円形の第2円形溝324を形成する段付突条325を備える。さらに下面側の第2円形凹部321と上面側の第2円形溝324とに両端が開口する通孔326が形成されている。通孔326は、等間隔のリング状に8個設けられている。さらに中板32には、その外周面から第1円形溝323に表出する導体34が組み込まれている。
【0026】
図8は、本発明の実施形態に係る電極本体33の部分拡大図であって、図9は、本発明の実施形態に係る電極本体33の平面図である。電極本体33は、外周部が2段となる段付き円筒状であり、リング状の下面331に開口する8個の流入孔333と流入孔333に連通し電極本体33の内周面332に開口する8個の吐出孔334を持つ。流入孔333は中板32に設けられた8個の通孔326と対応する位置にあり、中板32の通孔326と電極本体33の流入孔333及び吐出孔334とは連通するようになり電解液通路となる。流入孔333の内周面332側の開口は電解液の吐出孔334となり、いずれも電極本体33の軸心に向かってオフセットして開口している。このため電解液は、水平方向に軸心に向かってオフセットして吐出する。また、電極本体33の内周面332と中板32の上面側の第1円形溝323は貯留部8を構成するものであり、吐出孔334から吐出した電解液はこの貯留部8に溜めることができる。電極本体33は、中板32と嵌合する際、中板に組み込まれた導体24を介して通電する。
【0027】
図10は、本発明の実施形態に係る羽根車部4の部分拡大図であって、図11は、本発明の実施形態に係る羽根車部4の平面図である。羽根車部4は、羽根板41と、羽根板41の上部に設けられるリング状の上部案内板42と、羽根板42の下部に設けられるリング状の下部案内板43と、からなる。上部案内板42と下部案内板43は、中心軸を同じにして下部案内板43は電極本体33の上面と平行に、上部案内板42は下部案内板43との距離が内径部から外径部に向かって広くなるように設けられている。また、下部案内板43の内径を上部案内板42の内径より大きくして環状開口部44が設けられており、この環状開口部44から電解液が取り入れられる。羽根板41は、上部案内板42と下部案内板43の間に前記中心軸から放射状に等間隔に配置されて上部案内板42と下部案内板43を接合している。また、羽根板41と上部案内板42と下部案内板43とから電解液を流す流路45が構成されている。羽根車部4は、上部案内板42の上面に結合し保持手段2に固定される円筒状の支持具23を介して、保持軸22に固定され、一体に回転する。
【0028】
また、本実施形態では、電解液が吐出孔334からピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面に吐出される際、電極本体33の内周面332と被処理面を構成するピストンリング溝W1との距離は陽極酸化処理の効果に影響する。すなわちピストンリング溝W1を含む側周面Wfが、陰極となる電極本体33の内周面332に近すぎるとショートする恐れが生じる。逆にピストンリング溝W1を含む側周面Wfと電極本体33の内周面332間の距離が離れすぎると電解液が有効にピストンリング溝W1を含む側周面Wfまで到達されず、陽極酸化処理が不十分となる。従って、陽極に接続されているピストンリング溝W1を含む側周面Wfから電極本体33の吐出孔334間の距離が2.0〜15.0mmであることが好ましい。
【0029】
ピストンWの回転は、アルマイト皮膜を均一に形成する作用を持つが、必要以上に回転を上げると電解液が飛散防止用の円環状の鍔72を超えて飛散するため、回転数を10〜800rpmに設定することが好ましい。
【0030】
電解液として硫酸濃度が150g/ルットル〜600g/リットルである硫酸水溶液を利用し、電解液の流量は1リットル/分〜6リットル/分で、さらに、電流密度は1A/dm2〜100A/dm2で、電圧は15V〜90Vである。
【0031】
保持手段2の材質は、通電性を必要とするため、通電性のよい金属材料が好ましい。
【0032】
電解槽7の材質は、電解液に接触するため耐酸性が必要とされ、塩化ビニル製またはSUS316製が好ましい。
【0033】
基板31の材質は、電解液と接触するため耐腐食性のある材料が好ましく、更に言えば電解液は強酸を用いる場合が多いため耐酸性のある、例えばSUS316製が使用できる。
【0034】
中板32の材質は、電気を漏電させないための絶縁性と電解液に接触するための耐酸性が必要とされ耐腐食性のある高分子材料が好ましく、例えば塩化ビニル製が使用できる。
【0035】
電極本体33と導体34の材質は、電気を通すための通電性と電解液に接触するための耐酸性が必要とされ、例えばSUS316製が使用できる。
【0036】
羽根車部4の材質は陽極酸化機能を阻害しないよう保持手段2や電極部3と絶縁されていることが好ましく、さらに、電解液に接触し電解液の流動による力に耐え得る必要から、耐酸性のある高強度の高分子材料が好ましく、例えばガラス繊維入りの四フッ化エチレン樹脂製が使用できる。
【0037】
本発明の実施形態の動作について説明する。電解液供給手段5に組み込まれている冷却槽51で冷却された電解液は、流量計53により流量が制御され、ポンプ52により電極部3に送られる。電解液は、電極部3にある基板31のトンネル状の通路312から、基板31の上面側の第1円形凹部311と中板32の下部の第2円形凹部321間からなる空間を通り、中板32の通孔326と電極本体33の通孔333を通過し、吐出孔334からピストンリング溝W1を含む側周面Wfに吐出される。さらに、電解液は、吐出孔334から吐出され、陽極酸化処理が行われた後、電極本体33の内周面332と、中板32の第1円形溝323と、から構成される貯留部8に溜まり満たしていく。貯留部8から過剰となった電解液は、回転する羽根車部4の環状開口部44から羽根車部4内に入り上部案内板42と下部案内板43と羽根板41とから構成される流路45を通って羽根車部4の外径部から流出し、電解槽7の底の回収穴71を通じて、電解液供給手段5の冷却槽51に回収される。そして、回収された電解液は、電解液供給手段5が保有する熱交換器513により冷却され、再び電極部3に送られる。
【0038】
羽根車部4は、保持軸22に結合されて保持軸22と一体に回転している。羽根車部4を回転させると、貯留部8から過剰となった電解液は、環状開口部44に取り入れられ、羽根車部4の外径部に押し流されて移動する。この移動により環状開口部44から新たな電解液が吸い込まれ、移動した電解液は電解槽7に放出される。このように羽根車部4を回転させると電解液を吸い込んで放出するポンプの役目をするので所定の高さ以上にある電解液を排出して一定の液面Hを確保している。
【0039】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0040】
本発明の陽極酸化装置1では、陽極酸化処理のためにピストンWを保持手段2と接触させ、ピストンリング溝W1を含む側周面Wfと対向している電極部3の吐出孔334から電解液供給手段5で電解液を吐出させ、ピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面と電解液を接触した状態で通電手段6により保持手段2と電極部3との間に電圧を印加すると、保持手段2と接触したピストンリング溝W1を含む側周面Wfと電極部3の間に電解液を介して電流が流れ、ピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面の電解液に接触した部分に陽極酸化処理を施すことができる。また、吐出孔334から吐出した電解液は、ピストンリング溝W1を含む側周面Wfと接触した状態で貯留部8に貯まり、この際に羽根車部4により貯留部8から過剰となった電解液が排出され、所定の高さの液面H以上は、ピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面と電解液が接触せず陽極酸化処理が施されない。以上のことから、本発明の陽極酸化装置1ではマスキング材料を使用せずにピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面の目的とした部分に陽極酸化処理を施すことができる。
【0041】
また、貯留部8に貯留した電解液が過剰となると、過剰となった電解液は、環状開口部44から取り入れられ、取り入れられた電解液は流路45を流れて移動することができるので、過剰となった電解液を次々と排出することができる。
【0042】
また、羽根車部4を回転させると、羽根車部4が備える放射状の羽根板41が取り入れた電解液を回転方向に押し出し、押し出された電解液には遠心力が働くので放射状の羽根板41に沿って回転中心から外へ流れて移動し、さらに電解液を排出することができる。
【0043】
また、ピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面と電解液の接触状態が違っていてもピストンリング溝W1を含む側周面Wfを回転させることによりピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面と電解液の接触状態を一定にすることでピストンリング溝W1を含む側周面Wfの表面に一定の陽極酸化処理を施すことができる。
【0044】
さらに、電解液が吐出される際、吐出孔334に対向して面する箇所が強く吐出され、陽極酸化処理により形成されたアルマイト皮膜は不均一である問題に対して、ピストンWを保持する保持手段2を回転させる減速モータ21が装備されているため、ピストンWを回転させながら電解液を吐出させることによってアルマイト皮膜を均一に形成することができる。
【0045】
さらに、吐出孔334は、電極本体33の軸心に向かってオフセットして開口しており、電極本体33の軸心とピストンWの回転中心を同じに配置しているためピストンWの回転中心に対して電解液は吐出孔334からオフセットして吐出される。そのため吐出孔334に対向して面する箇所への電解液の当たり方が軽減され、より効率的にアルマイト皮膜を均一に形成することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下に示す態様に変更しても良い。
【0047】
また、本発明の実施形態では集電リング61と、保持軸22と、ピストンWとで陽極を構成しているが、ピストンWに通電できるものであるならば保持手段を組み込まない構成も可能である。
【0048】
また、本実施例では電解液の流量を制御する流量計53、電解液を所定の温度に冷却する冷凍機512及び熱交換器513を組み入れた構成となっているが、実際に陽極酸化処理が行われる際、場合によっては組み入れない構成も可能である。
【0049】
また、本実施例では電極本体33の吐出孔334から電解液が吐出される際、吐出孔334の形状及びサイズは陽極酸化処理の効果に影響することから、円形として形成されたが、実際に陽極酸化処理が行われる際、場合によっては吐出孔334を楕円形、または方形形状にすることも可能である。さらに、電極本体33の吐出孔334の均等性が保障される限り、吐出孔334は電極本体33の内周面に複数段列配置ができる。
【0050】
また、本実施例では羽根板41は渦巻き曲線の一部を成す形状をしているが他の曲線形状、または直線形状にすることも可能である。
【0051】
通電手段6は、電極部3の導体34と保持手段2との間に電圧を印加する手段であり、直流電源(図示せず)、電流計、電圧計、整流器(図示せず)集電リング61で構成され、従来公知のものを利用できる。なお、電流密度を制御できるものであれば本実施例の構成に限定するものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 :陽極酸化処理装置
2 :保持手段(第1電極部)
3 :電極部(第2電極部)
4 :羽根車部(電解液排出手段)
5 :電解液供給手段
6 :通電手段
7 :電解槽
8 :貯留部
41 :羽根板(誘導板)
45 :流路
311:第1円形凹部(電解液通路)
312:通路(電解液通路)
321:第2円形凹部(電解液通路)
326:通孔(電解液通路)
333:流入孔(電解液通路)
334:吐出孔(電解液吐出孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側周面にリング状の溝部を有する金属製の被処理物に接触し電流を通電する第1電極部と、
前記被処理物と対向する電解液吐出孔と、前記吐出孔から吐出し前記被処理物の表面と接触した状態にある電解液を貯留する貯留部と、前記電解液吐出孔に電解液を供給する電解液通路と、を有する第2電極部と、
前記貯留部から過剰となった電解液を排出する電解液排出手段と、
前記電解液通路へ電解液を供給する電解液供給手段と、
前記第1電極部と前記第2電極部とに電圧を印加する通電手段と、を備える陽極酸化処理装置。
【請求項2】
前記電解液排出手段は、電解液を取り入れる取入口と、電解液を流す流路と、を有することを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化処理装置。
【請求項3】
前記電解液排出手段は、前記電解液排出手段の回転中心から放射状に誘導板を備えて前記流路を設けることを特徴とする請求項2に記載の陽極酸化処理装置。
【請求項4】
前記電解液排出手段は、前記被処理物と一体に回転することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の陽極酸化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−95925(P2013−95925A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236722(P2011−236722)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】