説明

難燃性エポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂を必須成分とする組成物、硬化物

【課題】本発明では、電子回路基板に用いられるプリプレグ、銅張り積層板や電子部品に用いられるフィルム材・封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、粉体塗料などに適し、コストを低減しつつ高品質な難燃性リン含有エポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15面積%〜60面積%であり、数平均分子量が350〜700である分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(A)と一般式(1)で示されるリン化合物を必須成分として反応せしめて成るリン含有エポキシ樹脂を用いることにより上記課題を解決した。
【化1】


(式中、R1、R2は水素原子または炭化水素基であり、同一であっても異なっていても良く、リン原子とR1、R2が環状構造をとっても良い。nは0または1を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板に用いられるプリプレグ、銅張り積層板や電子部品に用いられるフィルム材・封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、粉体塗料などに適したリン含有エポキシ樹脂及び組成物、硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性、成形性に優れていることから電子部品、電気機器、自動車部品、FRP、スポーツ用品など広範囲に使用されており、これらのうち電子部品、電気機器に使用される銅張り積層板や封止材には火災の防止・遅延など安全性の理由から臭素化エポキシ樹脂が使用されていた。
【0003】
臭素に代表されるハロゲンをエポキシ樹脂に導入することにより難燃性が付与され、エポキシ基の高反応性により優れた硬化物が得られている。しかし、燃焼した際にハロゲン化合物などの有害な物質を生成する可能性がありハロゲンを使用しない難燃性付与エポキシ樹脂の要求が高まっている。
【0004】
これに対して、特許文献1ではエポキシ樹脂骨格にリン原子を導入することにより難燃性を付与する方法が開示されている。しかし、この方法では硬化反応に寄与するエポキシ基をリン化合物と反応していることから、硬化した際の架橋密度が低下し、硬化物物性は満足できるものではなかった。このことから特許文献2ではリン化合物とキノン化合物を反応することによってフェノール基を2個持つリン含有化合物とし、エポキシ樹脂との反応によりエポキシ樹脂骨格に導入する方法を開示している。この方法では硬化物物性は飛躍的に向上し、高い品質の銅張り積層板が得られるが、リン化合物とキノン化合物の反応工程を必要とすることから反応時間が長くなり、生産性においては劣っていた。特許文献3には、核体数3〜8に関するノボラック型エポキシ樹脂については記載があるものの、耐熱性と含浸性に関するものであり、難燃性については何らの開示も示唆もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−166035号公報
【特許文献2】エラー! ハイパーリンクの参照に誤りがあります。公報
【特許文献3】特開昭62−064821号公報
【特許文献4】特開2002−194041号公報
【特許文献5】特開2007−126683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、リン含有エポキシ樹脂について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成したものであり、特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂と特定のリン化合物を反応したリン含有エポキシ樹脂により難燃性を飛躍的に向上することに成功し、且つ、高価なリン化合物の量を低減すると共に特許文献1の利点である生産性を維持しつつ特許文献2に迫る硬化物物性を実現したものである。ノボラック型エポキシ樹脂を構成する二核体成分である二官能エポキシ樹脂は、リン化合物と反応した際にエポキシ基を持たない反応成分を生成するが、本発明で用いるノボラック型エポキシ樹脂は、二核体成分の含有率を低減することでエポキシ基を持たない反応成分の低減が出来、難燃性と物性の向上が可能となったものと考えられる。また、本発明で用いるノボラック型エポキシ樹脂は4核体以上の高分子量成分についても含有率を低減する事ができ、得られるリン含有エポキシ樹脂の難燃性と物性が更に向上するものと考えられる。これは、ノボラック型エポキシ樹脂に含有される4核体以上の高分子量成分にリン化合物が部分的に反応した際には、構造的に嵩高い部分を含むリン含有エポキシ樹脂となり、エポキシ基と硬化剤との反応においては立体障害により著しく硬化反応性を悪化させることが原因となっているのではないかと推測される。本発明は電子回路基板に用いられるプリプレグ、銅張り積層板や電子部品に用いられるフィルム材・封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、粉体塗料などに適し、コストを低減しつつ高品質な難燃性リン含有エポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15面積%〜60面積%であり、数平均分子量が350〜700である分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(A)と一般式(1)で示されるリン化合物を必須成分として反応せしめて成るリン含有エポキシ樹脂、
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定条件)
東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1ml/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。標準ポリスチレンによる検量線により数平均分子量を測定する。
【0008】
【化1】

(式中、R1、R2は水素原子または炭化水素基であり、同一であっても異なっていても良く、リン原子とR1、R2が環状構造をとっても良い。nは0または1を示す。)
(2)上記(1)記載のリン含有エポキシ樹脂と硬化剤をエポキシ基1個に対して活性基0.3〜1.5個の範囲となるように配合してなるリン含有エポキシ樹脂組成物、
(3)上記(2)記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなるプリプレグ、(4)上記(2)記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物、
(5)上記(2)記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなる積層板、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の、特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂と特定のリン化合物を反応したリン含有エポキシ樹脂は、従来型の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を用いて得られたものと比較して難燃性が飛躍的に向上し、高価なリン含有化合物を低減することが出来、その結果、硬化物物性の向上が可能であり、用いるノボラック型エポキシ樹脂の分子量分布を制御することにより特定の分子量分布とするものであり、良好な難燃性と優れた硬化物物性の両立を図ることが出来たものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来型の分子量分布を持つフェノールノボラック型エポキシ樹脂YDPN−638のGPCチャートを示す。横軸に溶出時間を示し、左縦軸に検出強度を示す。右縦軸に数平均分子量Mをlog(常用対数)で示す。用いた標準物質の数平均分子量の測定値を黒丸でプロットしており検量線としている。Aで示すピークが二核体、Bで示すピークが三核体である。
【図2】合成例4のGPCチャートを示す。Aで示すピークが二核体、Bで示すピークが三核体である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について詳細に述べる。
ノボラック型エポキシ樹脂とはフェノール類とアルデヒド類の反応生成物であるノボラック樹脂とエピハロヒドリンとを反応して得られる多官能のノボラック型エポキシ樹脂である。使用されるフェノール類としてはフェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、スチレン化フェノール、クミルフェノール、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ナフタレンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられ、アルデヒド類としてはホルマリン、ホルムアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。また、アルデヒド類の代わりにキシリレンジメタノール、キシリレンジクロライド、ビスクロロメチルナフタレン、ビスクロロメチルビフェニルなどを用いたアラルキルフェノール樹脂も本発明ではノボラック型フェノール樹脂に含む。これらのノボラック型フェノール樹脂にエピハロヒドリンを用いてエポキシ化することでノボラック型エポキシ樹脂が得られる。
【0012】
ノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、エポトートYDPN−638(新日鐵化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エピコート152、エピコート154(三菱化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775(DIC株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートYDCN−700シリーズ(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−695(DIC株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(日本化薬株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1071T、ZX−1270、ZX−1342(新日鐵化学株式会社製 アルキルノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1247、GK−5855(新日鐵化学株式会社製 スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1142L(新日鐵化学株式会社製 ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、ESN−155、ESN−185V、ESN−175(新日鐵化学株式会社製 βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−300シリーズのESN−355、ESN−375(新日鐵化学株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−400シリーズのESN−475V、ESN−485(新日鐵化学株式会社製 αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらのエポキシ樹脂は本発明における特定の分子量分布を持っていない。
【0013】
本発明で用いる特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を得るには、フェノール類とアルデヒド類のモル比を調整することにより得られた粗フェノールノボラック樹脂から低分子量成分を除去することによって得たフェノールノボラック樹脂、または特許文献4、特許文献5に示すような製造方法により得られたフェノールノボラック樹脂をエポキシ化しても良い。
【0014】
フェノール類とアルデヒド類のモル比はアルデヒド類1モルに対するフェノール類のモル比で示され1以上の比率で製造されるが、モル比が大きい場合は二核体、三核体が多く生成され、モル比が小さい場合は高分子量体が多く生成し、二核体、三核体は少なくなる。
【0015】
本発明で用いる特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂は、得られた粗フェノールノボラック樹脂類から二核体成分及び/又は四核体成分を各種溶媒の溶解性差を利用して除去する方法、アルカリ水溶液に二核体を溶解して除去する方法などによって得ることが出来きるが、その他の公知の分離方法によっても良い。
【0016】
分子量を制御したフェノール樹脂に公知のエポキシ化の手法を用いて特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を得ることが出来る。あるいは市販のノボラック型エポキシ樹脂から二核体エポキシ樹脂成分を各種方法により除去することによっても特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を得ることが出来る。その他公知の分離方法によっても良い。
【0017】
本発明の特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂は、二核体含有率が15面積%以下、好ましくは5面積%〜12面積%が好ましい。少量の二核体が含有することで、接着力などの物性を向上することが出来る。三核体含有率は15面積%〜60面積%であり、好ましくは20面積%〜50面積%が好ましい。数平均分子量は350〜700、好ましくは380〜600が好ましい。分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜2.8のものが使用することができ、好ましい範囲は1.2〜2.5、より好ましくは1.2〜2.3であり、1.1未満では接着性などの物性に劣り、2.8を超える場合は難燃性や耐熱性などが低下する恐れがある。
【0018】
一般式(1)で示されるリン化合物の具体例としてはジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA 三光化学株式会社製)、ジメチルホスフィンオキサイド、ジエチルホスフィンオキサイド、ジブチルホスフィンオキサイド、ジフェニルホスフィンオキサイド、1,4−シクロオクチレンホスフィンオキサイド、1,5−シクロオクチレンホスフィンオキサイド(CPHO 日本化学工業株式会社製)が挙げられる。これらのリン化合物は単独でも2種類以上混合して使用しても良く、これらに限定されるものではない。
【0019】
一般式(1)で示されるリン化合物と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を反応させる方法としては公知の方法で行うことが可能である。反応温度として100℃〜200℃、より好ましくは120℃〜180℃で攪拌下、反応を行う。一般式(1)で示されるリン化合物のリン原子に直結した活性水素と、エポキシ樹脂のエポキシ基が反応する。反応終点はエポキシ当量の追跡により理論エポキシ当量の99%以上の値になったことで確認する。又は、エポキシ樹脂の酸価として一般式(1)で示されるリン化合物の残存量を追跡し、反応終点を確認する方法や液体クロマトグラフィ−等で代表される機器分析により残存する一般式(1)で示されるリン化合物を追跡する方法などがある。いずれの方法をとっても良いが、エポキシ樹脂と一般式(1)で示されるリン化合物を十分に反応させることが必要である。反応速度を考慮して必要に応じて触媒を使用する。具体的にはベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2−メチルイミダゾール、2−エチル4メチルイミダゾール等のイミダゾール類等各種触媒が使用できる。
【0020】
一般式(1)で示されるリン化合物と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を反応する際に、必要に応じて本発明の特性を損なわない程度で各種エポキシ樹脂変性剤を併用しても良い。変性剤としてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブチルビスフェノールA、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂、臭素化フェノールノボラック樹脂などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂や、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシフェニルエーテル、ビスアミノフェノキシビフェニル、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン、ジアミノナフタレン等のアミン化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではなく2種類以上併用しても良い。
【0021】
一般式(1)で示されるリン化合物と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を反応する際に、必要に応じて各種エポキシ樹脂を本発明の特性を損なわない程度に使用することもできる。具体的にはエポトート YDC−1312、ZX−1027(新日鐵化学株式会社製 ハイドロキノン型エポキシ樹脂)、YX−4000(三菱化学株式会社製)ZX−1251(新日鐵化学株式会社製 ビフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート YD−127、エポトート YD−128、エポトート YD−8125、エポトート YD−825GS、エポトート YD−011、エポトート YD−900、エポトート YD−901(新日鐵化学株式会社製 BPA型エポキシ樹脂)、エポトート YDF−170、エポトート YDF−8170、エポトート YDF−870GS、エポトート YDF−2001(新日鐵化学株式会社製 BPF型エポキシ樹脂)、エポトート YDPN−638(新日鐵化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート YDCN−701(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ZX−1201(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、NC−3000(日本化薬株式会社製 ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、EPPN−501H、EPPN−502H(日本化薬株式会社製 多官能エポキシ樹脂)ZX−1355(新日鐵化学株式会社製 ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、ESN−155、ESN−185V、ESN−175(新日鐵化学株式会社製 βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−355、ESN−375(新日鐵化学株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−475V、ESN−485(新日鐵化学株式会社製 αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)等の多価フェノール樹脂等のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、エポトート YH−434、エポトート YH−434GS(新日鐵化学株式会社製 ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルエーテル)等のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、YD−171(新日鐵化学株式会社製 ダイマー酸型エポキシ樹脂)等のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく2種類以上併用しても良い。
【0022】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を用いたリン含有エポキシ樹脂を必須成分とし、硬化剤としては、各種フェノール樹脂類や酸無水物類、アミン類、ヒドラジッド類、酸性ポリエステル類等の通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、これらの硬化剤は1種類だけ使用しても2種類以上使用しても良い。
【0023】
前述の硬化剤としてのフェノール樹脂類の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール類、また、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ−tert−ブチルハイドロキノン、ジ−tert−ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等ヒドロキシナフタレン類、フェノールノボラック樹脂、DC−5(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック樹脂)、ナフトールノボラック樹脂などのフェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類との縮合物、SN−160、SN−395、SN−485(新日鐵化学株式会社製)等のフェノール類及び/又はナフトール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類及び/又はナフトール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類及び/又はナフトール類とビフェニル系縮合剤との縮合物等のフェノール化合物等が例示される。
【0024】
上記の、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられ、ナフトール類としては、1−ナフトール、2−ナフトール等が挙げられる。
【0025】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が例示される。ビフェニル系縮合剤としてビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が例示される。
【0026】
硬化剤としての酸無水物類の具体例としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類等が例示される。
【0027】
硬化剤としてのアミン類の具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミド、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の特性を損なわない範囲で本発明のリン含有エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を配合しても良く、具体的にはエポトート YD−128、エポトート YD−8125(新日鐵化学株式会社製 BPA型エポキシ樹脂)、エポトート YDF−170、エポトート YDF−8170(新日鐵化学株式会社製 BPF型エポキシ樹脂)、YSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製 テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂)、エポトート YDC−1312(ヒドロキノン型エポキシ樹脂)、jER YX4000H(三菱化学株式会社製 ビフェニル型エポキシ樹脂)、エポトート YDPN―638(新日鐵株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート YDCN−701(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート ZX−1201(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、TX−0710(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、エピクロン EXA−1515(大日本化学工業株式会社製 ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、NC−3000(日本化薬株式会社製 ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート ZX−1355、エポトート ZX−1711(新日鐵化学株式会社製 ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、エポトート ESN−155(新日鐵化学株式会社製 β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトート ESN−355、エポトート ESN−375(新日鐵化学株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、エポトート ESN475V,エポトート ESN−485(新日鐵化学株式会社製 α−ナルトールアラルキル型エポキシ樹脂)、EPPN−501H(日本化薬株式会社製 トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)、スミエポキシ TMH−574(住友化学株式会社製 トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)等の多価フェノール樹脂のフェノール化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、エポトート YH−434、(新日鐵化学株式会社製 ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン)等のアミン化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、jER 630(三菱化学株式会社製 アミノフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート FX−289B、エポトート FX−305、TX−0932A(新日鐵化学株式会社製 リン含有エポキシ樹脂)等のエポキシ樹脂をリン含有フェノール化合物等の変性剤と反応して得られるリン含有エポキシ樹脂、YSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製 ビスチオエーテル型エポキシ樹脂)、エポトート ZX−1684(新日鐵化学株式会社製 レゾルシノール型エポキシ樹脂)、デナコール EX−201(ナガセケムテックス株式会社製 レゾルシノール型エポキシ樹脂)、エピクロン HP−7200H(DIC株式会社製 ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、TX−0929、TX−0934(新日鐵化学株式会社製 アルキレングリコール型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物のリン含有率は0.8%〜7%、好ましくは1%〜6%、より好ましくは1.5%〜4%の範囲であることが望ましい。0.8%よりも少ないと難燃性が得られず、7%よりも多いと耐熱性が低くなり、吸湿性が高くなるなど物性が悪くなる。
【0030】
本発明組成物には必要に応じて第3級アミン、第4級アンモニウム塩、ホスフィン類、イミダゾール類等の公知公用のエポキシ樹脂硬化促進剤を配合することができる。具体的にはトリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びそれらとトリメリット酸、イソシアヌル酸、硼素等との塩であるイミダゾール塩類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類、トリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類、ジアザビシクロ化合物及びそれらとフェノール類、フェノールノボラック樹脂類等との塩類、3フッ化硼素とアミン類、エーテル化合物等との錯化合物、芳香族ホスホニウム又はヨードニウム塩などが例示できる。これら硬化剤は、単独でも良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0031】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶剤も用いることができる。用いることが出来る有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらの溶剤のうちの一又は複数種を混合したものを、エポキシ樹脂濃度として30〜80重量%の範囲で配合することができる。
【0032】
また、必要に応じて水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、ベーマイト、酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーン等の無機充填剤や微粒子ゴム、熱可塑性エラストマーなどの有機充填材、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材、ガラスクロス・アラミドクロス、カーボンファイバーなどの補強材、顔料等を用いることが出来る。
【0033】
エポキシ樹脂組成物の積層板評価を行った結果、エポキシ樹脂として特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂と一般式(1)で示されるリン化合物を反応して得られるリン含有エポキシ樹脂は生産性を維持したままリン含有率を低減しても難燃性が得られ、硬化物物性を向上することが出来、電子回路基板に用いられる銅張積層板のみならず電子部品に用いられる封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材などに好適に用いることができるものである。
【実施例】
【0034】
次に実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は重量部を表し、「%」は重量%を表す。測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
エポキシ当量:JIS K7236に準じた。
二核体含有率、三核体含有率、数平均分子量、重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて分子量分布を測定し、二核体含有率、三核体含有率はピークの面積%から、数平均分子量および重量平均分子量は標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製 A−500,A−1000,A−2500,A−5000,F−1,F−2,F−4,F−10,F−20,F−40)より求めた検量線より換算した。具体的には、本体(東ソー株式会社製 HLC−8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1ml/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。
リン含有量:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予めリン酸二水素カリウムを用いて作成した検量線により、求めたリン原子含有量を重量%で表した。積層板のリン含有量は、積層板の樹脂成分に対する含有量として表した。
銅箔剥離強さ及び層間接着力:JIS C6481に準じて測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。
燃焼性:UL94(Underwriters Laboratories Inc.の安全認証規格)に準じた。5本の試験片について試験を行い、1回目と2回目の接炎(5本それぞれ2回ずつで計10回の接炎)後の有炎燃焼持続時間の合計時間を秒で表した。
ガラス転移温度DSC:示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR6000 DSC6200)にて10℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC外挿値の温度で表した。
ガラス転移温度TMA:熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR6000 TMA/SS120U)にて5℃/分の昇温条件で測定を行った時のTMA外挿値の温度で表した。
使用したエポキシ樹脂として:――
YDF−170C(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率81.9面積%、三核体含有率5.3面積%、数平均分子量254、重量平均分子量285、分散度1.12、エポキシ当量169g/eq)
YDPN−638(新日鐵化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率22.1面積%、三核体含有率10.7面積%、数平均分子量463、重量平均分子量1003、分散度2.17、エポキシ当量176g/eq)
YDCN−700−2(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率10.5面積%、三核体含有率10.9面積%、数平均分子量633、重量平均分子量1187、分散度1.88、エポキシ当量200g/eq)
【0035】
合成例1
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、フェノール 2500部、シュウ酸二水和物 7.5部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、加熱を行って昇温した。37.4%ホルマリン 474.1部を80℃で滴下を開始し、30分で滴下を終了した。更に反応温度を92℃に保ち3時間反応を行った。昇温を行い反応生成水を系外に除去しながら110℃まで昇温した。残存フェノールを160℃にて減圧下回収を行い、フェノールノボラック樹脂を得た。更に温度を上げて二核体の一部を回収した。得られたフェノールノボラック樹脂の二核体含有率はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で10面積%であった。
【0036】
合成例2
合成例1で得られたフェノールノボラック樹脂をMIBKに溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液で水洗分液を行なった。残存する水酸化ナトリウムを水洗で除去した後、MIBKを減圧回収した。得られたフェノールノボラック樹脂の二核体含有率はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で6面積%であった。
【0037】
合成例3
合成例1の37.4%ホルマリンを711.1部とした以外は合成例1と同様な操作を行った。得られたフェノールノボラック樹脂の二核体含有率はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で10面積%であった。
【0038】
合成例4
合成例1と同様な装置に、合成例1のフェノールノボラック樹脂 665.8部、エピクロロヒドリン 2110.8部、水 17部を仕込み、攪拌しながら50℃まで昇温した。49%水酸化ナトリウム水溶液 14.2部を仕込み3時間反応を行った。64℃まで昇温し、水の還流が起きる程度に減圧を引き、49%水酸化ナトリウム水溶液 457.7部を3時間かけて滴下し反応をおこなった。温度を70℃まで上げ脱水を行い、温度を135℃として残存するエピクロロヒドリンを回収した。常圧に戻し、MIBK 1232部を加えて溶解した。イオン交換水1200部を加え、攪拌静置して副生した食塩を水に溶解して除去した。次に49%水酸化ナトリウム水溶液 37.4部を仕込み80℃で90分間攪拌反応して精製反応を行った。MIBKを追加、水洗を数回行いイオン性不純物を除去した。溶剤を回収し、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率9面積%、三核体含有率37.0面積%、数平均分子量440、重量平均分子量605、分散度1.38、エポキシ当量176g/eqであった。
【0039】
合成例5
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりに合成例2のフェノールノボラック樹脂を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率5.5面積%、三核体含有率34.6面積%、数平均分子量485、重量平均分子量684、分散度1.41、エポキシ当量176g/eqであった。
【0040】
合成例6
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりに合成例3のフェノールノボラック樹脂を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率9.1面積%、三核体含有率24.2面積%、数平均分子量593、重量平均分子量954、分散度1.61、エポキシ当量177g/eqであった。
【0041】
合成例7
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりにLV−70S(群栄化学工業株式会社製 フェノールノボラック樹脂、二核体成分2%、三核体成分75%)を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率1.4面積%、三核体含有率56.1面積%、数平均分子量486、重量平均分子量617、分散度1.27、エポキシ当量176g/eqであった。
【0042】
合成例8
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりにTRI−002(昭和電工株式会社製 トリフェニルメタン型ノボラック樹脂、二核体成分4.6%、三核体成分29.7%)を2326.5部、4,4−メチレンビスクレゾール173.6部用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率9.2面積%、三核体含有率21.8面積%、数平均分子量640、重量平均分子量1109、分散度1.80、エポキシ当量177g/eqであった。
【0043】
合成例9
合成例4で使用した合成例1のフェノールノボラック樹脂の代わりにBRG−558(群栄化学株式会社製 フェノールノボラック樹脂、二核体成分12.0%、三核体成分10.0%)を用いた以外は合成例4と同様な操作を行い、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率10.4面積%、三核体含有率5.8面積%、数平均分子量818、重量平均分子量2436、分散度2.98、エポキシ当量177g/eqであった。
【0044】
実施例1
合成例1と同様な装置に合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部、HCA(三光株式会社製 9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド リン含有率14.2重量%)176部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、加熱を行って昇温した。130℃にてトリフェニルホスフィンを触媒として0.18部を添加して160℃で3時間反応を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は266g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0045】
実施例2
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 838部、HCA 162部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は256g/eq、リン含有率は2.3%であった。結果を表1にまとめる。
【0046】
実施例3
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 880部、HCA 120部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は226g/eq、リン含有率は1.7%であった。結果を表1にまとめる。
【0047】
実施例4
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例5のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部、HCA 176部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は264g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0048】
実施例5
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例6のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部、HCA 176部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は256g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0049】
実施例6
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例7のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 711.9部、とYDF−170C 112.1部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。使用したエポキシ樹脂の二核体含有率は11.9面積%、三核体含有率は49.0面積%だった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は257g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0050】
実施例7
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 804部、ビスフェノールF(本州化学製)55部を仕込み、120℃に加熱した。トリフェニルホスフィン0.06部を添加し、150℃で2.5時間反応した。更にHCA 141部追加し、トリフェニルホスフィン0.14部を添加して160℃で3時間反応を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は301g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表1にまとめる。
【0051】
実施例8
実施例7の合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 799部、ビスフェノールFの代わりにビスフェノールAを 60部とした以外は実施例7と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は295g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表1にまとめる。
【0052】
実施例9
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例8のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は260g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0053】
【表1】

【0054】
比較例1
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN−638 810部、HCA 190部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は271g/eq、リン含有率は2.7%であった。結果を表2にまとめる。
【0055】
比較例2
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN−638 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は251g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表2にまとめる。
【0056】
比較例3
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN−638 838部、HCA 162部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は255g/eq、リン含有率は2.3%であった。結果を表2にまとめる。
【0057】
比較例4
実施例7の合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の変わりにYDPN−638 804部とした以外は実施例7と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は306g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表2にまとめる。
【0058】
比較例5
実施例8の合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の変わりにYDPN−638 799部とした以外は実施例7と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は308g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表2にまとめる。
【0059】
比較例6
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりに合成例9のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は256g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表2にまとめる。
【0060】
比較例7
合成例4のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDCN−700−2 824部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は303g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表2にまとめる。
【0061】
比較例8
実施例1と同様な装置にHCA 141部とトルエン 330部を仕込み、加熱して溶解した。その後、1,4−ナフトキノン 87.5部を反応熱による昇温に注意しながら分割投入した。このとき1,4−ナフトキノンとHCAのモル比は1,4−ナフトキノン/HCA=0.85であった。85℃で30分保持した後、昇温して還流温度で2時間反応を継続した。更に温度を上げ、トルエンを200部回収し、YDPN−638 771.5部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、120℃まで加熱を行った。トリフェニルホスフィンを0.23重量部添加して165℃で4時間反応した。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は327g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表2にまとめる。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例10〜実施例18
実施例1〜実施例9のリン含有エポキシ樹脂と硬化剤としてジシアンジアミド(日本カーバイト株式会社製)を使用してエポキシ樹脂組成物を作成した。固形分での配合処方を表3に示す。配合の際にエポキシ樹脂はメチルエチルケトンに溶解して用いた。DICYはメトキシプロパノール、DMFに溶解して使用した。2E4MZはメトキシプロパノールに溶解して使用した。配合後、メチルエチルケトン、メトキシプロパノールにて不揮発分50%となるように調整して、均一溶液とした。
【0064】
【表3】

【0065】
得られた樹脂ワニスをガラスクロスWEA 7628 XS13(日東紡績株式会社製 0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環炉で8分間乾燥を行い、プリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚を重ね、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製 3EC)を重ね、130℃×15分及び170℃×20kg/cm2 ×70分間加熱、加圧を行い積層板を得た。得られた積層板の物性を表3に示す。
【0066】
比較例9〜比較例16
実施例10〜実施例18と同様に比較例1〜比較例8のリン含有エポキシ樹脂を用いて積層板を作成した。配合処方及び積層板の物性を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
特定の分子量分布を持つフェノールノボラックエポキシ樹脂と特定のリン化合物を反応して得られるリン含有エポキシ樹脂は、リン含有率が1.7%でも難燃性が得られており(実施例12)、リン含有率を2.3%、2.5%と上げた場合(実施例10,11)残炎時間が短くなることから難燃性は良好である。一方従来型のフェノールノボラックエポキシ樹脂と特定のリン化合物を反応して得られるリン含有エポキシ樹脂は、リン含有率2.6%(比較例1)としないと難燃性が得られず、硬化物物性も悪くなっている。リン含有率2.5%,2.3%とした比較例2、比較例3では硬化物物性は改良されるものの難燃性が得られていない。実施例6、実施例7、実施例8においてその他のエポキシ樹脂やエポキシ樹脂変性剤を用い接着性を改良することが出来るが、従来型のフェノールノボラックエポキシ樹脂を用いた比較例4、比較例5ではエポキシ樹脂変性剤を用いたところ、難燃性が非常に悪い結果であった。
【0069】
また、リン含有エポキシ樹脂の反応時間は3時間から5時間であるが、難燃性及び硬化物物性の良好な比較例8では9時間必要であり、生産性においても良好である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のリン含有エポキシ樹脂は原料であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂の分子量分布を制御することによって、高価なリン化合物の使用量を低減しつつ難燃性を向上し、生産性を高めながら硬化物物性を向上することが出来、電子回路基板に用いられるプリプレグ、銅張り積層板や電子部品に用いられるフィルム材・封止材・成形材・注型材・接着剤・電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、粉体塗料などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15面積%〜60面積%であり、数平均分子量が350〜700である分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(A)と一般式(1)で示されるリン化合物を必須成分として反応せしめて成るリン含有エポキシ樹脂。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定条件)
東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXLを直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1ml/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。サンプル0.1gを10mlのTHFに溶解した。標準ポリスチレンによる検量線により数平均分子量を測定する。
【化1】

(式中、R1、R2は水素原子または炭化水素基であり、同一であっても異なっていても良く、リン原子とR1、R2が環状構造をとっても良い。nは0または1を示す。)
【請求項2】
請求項1記載のリン含有エポキシ樹脂と硬化剤を必須成分とし、リン含有エポキシ樹脂のエポキシ基1個に対して硬化剤の活性基0.3〜1.5個の範囲となるように配合してなるリン含有エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなるプリプレグ。
【請求項4】
請求項2記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項5】
請求項2記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなる積層板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−103974(P2013−103974A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247987(P2011−247987)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006644)新日鉄住金化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】