説明

雨水ます用バケットの表示札およびこの表示札を備えた雨水ます

【課題】バケットがます本体に装着された状態でも上方から容易に視認することができ、バケットに容易に着脱できる表示札を提供する。
【解決手段】雨水ます用のバケット20の持ち手21に取り付けられる表示札1である。表示札1は、平板状部材からなっている。表示札1には、持ち手21を貫通させる第1貫通孔11および第2貫通孔12と、第1貫通孔11と第2貫通孔12とを結ぶスリット孔13とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水ます用バケットの表示札およびこの表示札を備えた雨水ますに関する。
【背景技術】
【0002】
雨水を排出する管路には雨水だけでなく、雨水に混じった泥や異物も流れる。そこで従来から、雨水ますの内部にバケットを着脱自在に装着することが行われている。バケットを備えた雨水ますでは、雨水に混じった泥等はバケットに回収される。そのため、バケットをます本体から取り外し、バケット内の泥等を外部に排出した後、バケットをます本体に再び装着することによって、雨水ますに泥が堆積することを容易に防止することができる。
【0003】
ところで、バケットはます本体に着脱自在ではあるが、装着時には、ます本体内の雨水によって浮き上がってしまわないようにしっかりと装着する必要がある。そこで従来から、作業者に注意を喚起するために、装着時の注意などを記した表示札をバケットに付けておくことが多い。
【0004】
図8に示すように、従来は、汎用的な吊り下げ式の表示札100が用いられていた。具体的には、従来の表示札100は、表示部101と、表示部101の上側に設けられた固定部102とを備え、固定部102がバケット110の持ち手111に固定されることによって、バケット110に取り付けられていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記表示札100は、バケット110がます本体に装着された状態では、上方から視認することができなかった。すなわち、雨水ますの施工後に、地上から雨水ますを覗き込んだ人が表示札100の注意書きを見ることができないという課題があった。また、表示札100をバケット110の持ち手111に固定する作業が面倒であった。また、表示札100をバケット110の持ち手111に一旦取り付けると、簡単には取り外すことができなかった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バケットがます本体に装着された状態でも上方から容易に視認することができ、バケットに容易に着脱できる表示札を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示札は、雨水ます用バケットの持ち手に取り付けられる表示札であって、平板状部材からなり、前記持ち手を貫通させる第1および第2の貫通孔と、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを結ぶスリット孔とが形成されたものである。
【0008】
上記表示札は、第1および第2の貫通孔に持ち手を貫通させることによって、持ち手に取り付けられる。そのため、上記表示札は持ち手に取り付けられた状態において、上方から視認することができる。したがって、上記表示札によれば、バケットがます本体に装着された状態でも、上方から容易に視認することができる。また、第1および第2の貫通孔に持ち手を挿通させるだけの簡単な作業により、表示札をバケットに容易に取り付けることができる。また、第1および第2の貫通孔から持ち手を引き抜くだけの簡単な作業により、表示札をバケットから容易に取り外すことができる。したがって、上記表示札によれば、バケットに対し容易に着脱することができる。
【0009】
前記表示札は可撓性を有する材料からなり、前記スリット孔は、前記第1の貫通孔の中心と前記第2の貫通孔の中心とを結ぶ線を跨ぐように形成されていることが好ましい。
【0010】
これにより、表示札が持ち手から外れにくくなる。そのため、万が一、ます本体内に大量の雨水が溜まり、表示札が雨水に漬かってしまった場合であっても、表示札が持ち手から外れてしまうことを防止することができる。なお、スリット孔は第1の貫通孔の中心と第2の貫通孔の中心とを結ぶ線を跨ぐように形成されているが、表示札は可撓性を有する材料から構成されているので、表示札を変形させることによって持ち手に容易に取り付けることができる。
【0011】
前記持ち手は、上側に行くほど互いに近づくように傾斜した一対の傾斜部を有し、前記表示札は、前記傾斜部が前記第1および第2の貫通孔を貫通することによって、前記持ち手に支持されることが好ましい。
【0012】
このことにより、表示札は持ち手の上下方向の中途部分に支持されることになる。そのため、作業者が注意深く表示札の位置決めを行わなくても、表示札を持ち手に対して上方から嵌め込むだけで、表示札は所定の位置に自動的に位置決めされることになる。したがって、簡単な作業によって、表示札がバケットの上方を塞いでしまうことや、表示札が雨水ますの雨水の流れを妨げてしまうことを防止することができる。
【0013】
前記表示札は、前記持ち手に取り付けられた状態で前記雨水ます用バケットの内部が上方から視認できるように、少なくとも一部が透明であることが好ましい。
【0014】
このことにより、表示札を通して、バケット内に泥等が溜まったか否かを容易に視認することができる。
【0015】
本発明に係る雨水ますは、前記表示札が取り付けられた雨水ます用バケットと、前記雨水ます用バケットを収容したます本体と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、バケットがます本体に装着された状態でも上方から容易に視認することができ、バケットに容易に着脱できる表示札を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】表示札が取り付けられた状態のバケットの斜視図である。
【図2】表示札の平面図である。
【図3】表示札を取り付ける前のバケットの斜視図である。
【図4】表示札が取り付けられた状態のバケットの平面図である。
【図5】雨水ますの断面図である。
【図6】変形例に係る表示札の平面図である。
【図7】他の変形例に係る表示札の平面図である。
【図8】従来の表示札が取り付けられたバケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る表示札1は、雨水ます用のバケット20の持ち手21に取り付けられるものである。表示札1は薄肉の平板状部材からなっている。本実施形態では、表示札1は円板状に形成されている。ただし、表示札1の形状は円板状に限らず、例えば矩形板状等の他の形状であってもよい。また、表示札1は可撓性を有する材料からなっており、例えば樹脂材料からなっている。さらにまた、表示札1は透明な材料からなっている。表示札1の一部のみが透明であってもよいが、本実施形態では表示札1の全体が透明となっている。具体的には、本実施形態に係る表示札1は、厚さ0.2〜0.3mmの透明なポリプロピレン樹脂製の円板からなっている。なお、本明細書でいう「透明」には、無色透明の他、有色の透明も含まれる。また、本明細書でいう「透明」には、いわゆる半透明も含まれる。上方から表示札1を通してバケット20の内部が視認できる限り、その表示札1は透明であると見なすことができる。
【0019】
図2に示すように、表示札1には、第1貫通孔11と、第2貫通孔12と、スリット孔13とが形成されている。スリット孔13は第1貫通孔11と第2貫通孔12とを結んでいる。図2に示す二点鎖線14は、第1貫通孔11の中心と第2貫通孔12の中心とを結ぶ線である。スリット孔13は線14を跨ぐように形成されている。言い換えると、スリット孔13は線14と交差するように延びている。詳しくは、スリット孔13は、線14を境として一方側(図2の上側)に位置する第1スリット部13aと、他方側(図2の下側)に位置する第2スリット部13bとからなっている。なお、スリット孔13は、表示札1の中心に関して点対称に形成されている。
【0020】
図1に示すように、第1貫通孔11および第2貫通孔12には、持ち手21が貫通される。第1貫通孔11および第2貫通孔12の内径は、持ち手21(より詳しくは、後述する傾斜部21b)の外径とほぼ等しくなっている。スリット孔13の幅は、第1貫通孔11および第2貫通孔12の内径よりも小さいことが好ましい。ただし、スリット孔13の幅は、第1貫通孔11および第2貫通孔12の内径と等しくてもよく、大きくてもよい。スリット孔13の幅は零であってもよい。
【0021】
図示は省略するが、表示札1の上面には、例えば文字または絵等からなる所定の注意書きが記載されている。
【0022】
バケット20は、有底円筒状の樹脂製のバケット本体22を有している。持ち手21はステンレス製であり、バケット本体22の上部から上方に延びている。持ち手21は、鉛直方向に延びる一対の鉛直部21aと、各鉛直部21aの上端から傾斜した傾斜部21bと、両傾斜部21bの上端をつなぐ水平部21cとを有している。一対の傾斜部21bは、上側に行くほど互いに近づくように傾斜している。言い換えると、傾斜部21bは、上側に行くほどバケット20の中央側に向かうように鉛直方向から傾斜している。なお、両傾斜部21bの上端同士の距離は、第1貫通孔11と第2貫通孔12との間の距離よりも短く、両傾斜部21bの下端同士の距離は、第1貫通孔11と第2貫通孔12との間の距離よりも長くなっている。
【0023】
表示札1はバケット20に対して着脱自在である。次に、表示札1をバケット20に取り付ける方法およびバケット20から取り外す方法について説明する。
【0024】
表示札1をバケット20に取り付ける際には、図3に示すように、第1貫通孔11および第2貫通孔12を持ち手21の傾斜部21bの上方に位置付け、表示札1を下方に向かって持ち手21に嵌め込む。この際、表示札1は可撓性を有する材料によって形成されているので、表示札1のスリット孔13の両側部分は、持ち手21の水平部21cによって押し広げられる。これにより、傾斜部21bが第1貫通孔11および第2貫通孔12を貫通すると共に、水平部21cがスリット孔13を通過し、表示札1の上方に位置付けられる。図1に示すように、水平部21cがスリット孔13を通過した後は、スリット孔13は閉じられた状態となる。
【0025】
前述したように、両傾斜部21bの下端同士の距離は、第1貫通孔11と第2貫通孔12との間の距離よりも長い。そのため、単に表示札1を押し下げることにより、表示札1は傾斜部21bの中途部分に自動的に支持されることになる。このようにして、表示札1はバケット20に取り付けられる。なお、図1は表示札1がバケット20に取り付けられた状態の斜視図であり、図4は同状態の平面図である。
【0026】
表示札1をバケット20から取り外す際には、表示札1を上方に引き上げる。表示札1は変形容易であり、持ち手21の傾斜部21bに支持されているだけなので、表示札1を上方に引き上がるだけで、表示札1をバケット20から容易に取り外すことができる。
【0027】
図5は、バケット20を有する雨水ます30の断面図である。雨水ます30は、略有底円筒状のます本体31を備えている。ます本体31の上部には、点検筒34が接続されている。点検筒34の上部には、蓋35が嵌め込まれている。ます本体31の受口32には、雨水流入管41が接続され、受口33には雨水流出管42が接続されている。
【0028】
図5に示すように、表示札1は雨水ます30の流路中心38よりも高い位置に配置されている。言い換えると、表示札1は、雨水ます30の流路のいわゆる半管部分(下半分の部分)よりも高い位置に配置されている。また、表示札1は略水平に配置されており、雨水ます30の流路と平行となっている。
【0029】
本実施形態に係る表示札1は、バケット20の持ち手21に取り付けられた状態において、上方から視認することができる。そのため、雨水ます30の施工後に地上から雨水ます30を覗き込むことによって、表示札1を視認することが可能となる。また、表示札1は、第1貫通孔11および第2貫通孔12に持ち手21を挿通させるだけの簡単な作業によって、バケット20に取り付けることができる。また、第1貫通孔11および第2貫通孔12から持ち手21を抜くだけの簡単な作業によって、表示札1をバケット20から容易に取り外すことができる。本実施形態に係る表示札1は、バケット20に対する着脱が容易である。
【0030】
本実施形態に係る表示札1では、図2に示すように、スリット孔13は第1貫通孔11の中心と第2貫通孔12の中心とを結ぶ線14を跨ぐように形成されている。そのため、表示札1は持ち手21から外れにくくなっている。したがって、万が一、雨水ます30に大量の雨水が溜まり、表示札1が雨水に漬かってしまった場合であっても、表示札1が浮力を受けることによって持ち手21から外れてしまうことを防止することができる。
【0031】
また、表示札1は持ち手21の傾斜部21bに支持されるように構成されている。そのため、作業者が注意深く表示札1の取付位置の位置決めを行わなくても、表示札1を上方から持ち手21に嵌め込むだけで、表示札1は所定の位置(図5参照)に自動的に位置決めされることになる。したがって、表示札1が低い位置に配置されることによってバケット本体22の上方を塞いでしまうことや、表示札1が雨水ます30内の雨水の流れを妨げてしまうことを防止することができる。
【0032】
なお、図5に示すように、表示札1は雨水ます30の流路中心38よりも高い位置に配置されている。そのため、通常は、表示札1が雨水ます30内の雨水に漬かることはない。したがって、上述のように表示札1が自動的に位置決めされることによって、表示札1が浮力を受けて持ち手21から外れてしまうことも防止することができる。
【0033】
また、図5に示すように、表示札1は略水平に配置されており、雨水ます30の流路と平行となっている。そのため、万が一、雨水ます30に大量の雨水が溜まり、表示札1が雨水に漬かってしまった場合であっても、表示札1が雨水の流れを妨げてしまうことを抑制することができる。
【0034】
本実施形態に係る表示札1は透明である。そのため、地上から雨水ます30を覗き込むことによって、表示札1に記載された注意書きを視認できるだけでなく、表示札1を通じて、バケット20内の様子を視認することができる。したがって、わざわざバケット20を取り出さなくても、バケット20に溜まった泥の量を地上から把握することができる。よって、バケット20を清掃すべき時期を把握することが容易となる。すなわち、雨水ます30のメンテナンスが容易となる。
【0035】
なお、上記の実施形態は本発明の実施の一形態に過ぎず、本発明は他に種々の形態で実施することができる。図2に示すように、上記実施形態では、スリット孔13は屈曲線状に形成されている。しかし、スリット孔13の形状は屈曲線状に限定されず、例えば図6に示すように、湾曲線上に形成されていてもよい。
【0036】
また、上記実施形態のスリット孔13は、第1貫通孔11の中心と第2貫通孔12の中心とを結ぶ線14を跨ぐように形成されているが、スリット孔13が線14を跨ぐことは必ずしも必要ではない。例えば図7に示すように、スリット孔13は第1貫通孔11と第2貫通孔12とを結ぶ直線状に形成されていてもよい。
【0037】
表示札1の材料はポリプロピレン樹脂に限らず、他の種類の樹脂であってもよい。また、表示札1は樹脂以外の材料で形成されていてもよい。
【0038】
表示札1の厚みは一定でもよいが、一定でなくてもよい。本明細書でいう「平板状部材」は、厚みが一定の部材に限定される訳ではない。また、「平板状部材」は必ずしも単一の部材からなっていなくてもよく、複数の部材が組み合わせられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 表示札
11 第1貫通孔
12 第2貫通孔
13 スリット孔
14 第1貫通孔の中心と第2貫通孔の中心とを結ぶ線
20 バケット(雨水ます用バケット)
21 持ち手
21b 傾斜部
22 バケット本体
30 雨水ます
31 ます本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水ます用バケットの持ち手に取り付けられる表示札であって、
平板状部材からなり、前記持ち手を貫通させる第1および第2の貫通孔と、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを結ぶスリット孔とが形成された、雨水ます用バケットの表示札。
【請求項2】
可撓性を有する材料からなり、
前記スリット孔は、前記第1の貫通孔の中心と前記第2の貫通孔の中心とを結ぶ線を跨ぐように形成されている、請求項1に記載の雨水ます用バケットの表示札。
【請求項3】
前記持ち手は、上側に行くほど互いに近づくように傾斜した一対の傾斜部を有し、
前記傾斜部が前記第1および第2の貫通孔を貫通することによって、前記持ち手に支持される、請求項1または2に記載の雨水ます用バケットの表示札。
【請求項4】
前記持ち手に取り付けられた状態で前記雨水ます用バケットの内部が上方から視認できるように、少なくとも一部が透明である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の雨水ます用バケットの表示札。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の雨水ます用バケットの表示札が取り付けられた雨水ます用バケットと、前記雨水ます用バケットを収容したます本体と、を備えた雨水ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−202431(P2011−202431A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71478(P2010−71478)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】