説明

雨水排出システム

【課題】従来よりも施工時の労力が軽減され、また、ボウフラの発生が抑制される雨水排出システムを提供する。
【解決手段】雨水排出システム1は、雨水浸透槽10と、泥溜め部としてのバケット25を有するフィルターます20と、オリフィス部材33を有するオリフィスます30とを備えている。オリフィスます30の流入口31aは管53を介して雨水浸透槽10の排出口12に接続され、流出口31bは管路61を介して雨水本管50に接続されている。オリフィスます30には、流入口31aおよび流出口31bの底部よりも下方に延びる泥溜め部は形成されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を雨水本管に排出する雨水排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、集中豪雨時において、宅地内から宅地外の雨水本管へ大量の雨水が流出してしまうことを抑制するために、地中に埋設された雨水貯留槽または雨水浸透槽(なお、本明細書ではこれらを「雨水槽」と総称することとする。)を備えた雨水排出システムが利用されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
図7に、従来の雨水排出システムの一例を示す。この雨水排出システムは、地中に埋設された雨水浸透槽101と、雨水浸透槽101の上流側に設置されたます102と、雨水浸透槽101の下流側に設置されたます103とを備えている。ます102は、管151を介して雨水浸透槽101の導入口に接続されている。ます102の内部にはフィルター104が設けられている。ます103の流入口103aは、管152を介して雨水浸透槽101の排出口に接続されている。ます103の流出口103bは、管153等を介して雨水本管200に接続されている。雨水浸透槽101から雨水本管200に大量の雨水が急激に流れ込まないように、ます103の内部には、雨水の流れを絞るオリフィス部材105が設けられている。また、ます103にはオーバーフロー口111,112が形成されている。オーバーフロー口111は、管154を介して雨水浸透槽101の上部に接続されている。オーバーフロー口112は、管155を介して側溝300に接続されている。
【0004】
ところで一般に、雨水には泥や異物(例えば枯葉等)が含まれている。しかし、このような泥や異物が雨水と一緒に雨水本管に排出されることは好ましくない。そこで、雨水と共に流入してきた泥や異物を内部に溜めるように、ます102の底部には、流入口102aおよび流出口102bの底部よりも下方に延びた泥溜め部102cが設けられている。また、雨水浸透槽101の下流側に設置されたます103にも、流入口103aおよび流出口103bの底部よりも下方に延びた泥溜め部103cが設けられている。
【0005】
上記雨水排出システムは、例えば以下のようにして施工される。すなわち、始めに、雨水浸透槽101およびます102,103を設置すべき場所に、それらを収容できるだけの大きな穴120を掘削する。次に、その穴120の内部に雨水浸透槽101およびます102を設置する。次に、ます103を設置すべき場所に、泥溜め部103cが収まる程度の穴121を掘削すると共に、その周囲に砂基礎125を敷く。そして、穴121内に泥溜め部103cを挿入することにより、ます103を設置する。次に、砂基礎125の上に管152および管153を配置する。すなわち、管152を介して雨水浸透槽101とます103の流入口103aとを接続し、雨水本管200に接続された管153をます103の流出口103bに接続する。また、管154を介して雨水浸透槽101の上部とます103のオーバーフロー口111とを接続し、側溝300に接続された管155をオーバーフロー口112に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−150215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、上記雨水排出システムの施工にあたっては、雨水浸透槽101等を設置するための穴120に加えて、ます103を設置するための穴121を更に掘削する必要がある。すなわち、施工時に2段階に亘って穴を形成する必要がある。そのため、上記雨水排出システムでは、施工時の労力が大きかった。
【0008】
また、ます103の泥溜め部103cには、雨水が常に残留することとなる。その結果、側溝300等から蚊が侵入し、泥溜め部103cが蚊の幼虫、すなわちボウフラの格好の生息場所となってしまうという課題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来よりも施工時の労力が軽減され、また、ボウフラの発生が抑制される雨水排出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、鋭意研究の結果、泥溜め部を有するますを雨水槽の上流側に設置することとすれば、雨水槽の下流側に設置するますにはほとんど泥が溜まらず、当該ますの泥溜め部を省略したとしても、実用上差し支えないという知見を得るに至った。そして、その新たな知見に基づいて、下記の発明をなすに至った。
【0011】
本発明に係る雨水排出システムは、雨水を雨水本管に排出する雨水排出システムであって、雨水を導入する導入口および雨水を排出する排出口が形成され、地中に埋設される雨水槽と、雨水を導く第1の管路が接続された流入口と、第2の管路を介して前記雨水槽の前記導入口に接続された流出口と、前記流入口および前記流出口の底部よりも下方に延びる泥溜め部とを有する第1のますと、第3の管路を介して前記雨水槽の前記排出口に接続された流入口と、第4の管路を介して前記雨水本管に接続された流出口と、雨水の流れを絞るオリフィス部とを有し、地中に埋設される第2のますと、を備え、前記第2のますには、前記流入口および前記流出口の底部よりも下方に延びる泥溜め部が形成されていないものである。
【0012】
上記雨水排出システムによれば、雨水槽と雨水本管との間に介在する第2のますには、流入口および流出口の底部よりも下方に延びる泥溜め部が形成されていない。そのため、第2のますを設置する際に、泥溜め部を収容するための穴を別途掘削する必要はない。したがって、施工時に2段階に亘って穴を掘削する必要がなく、施工時の労力を軽減することができる。また、第2のますには泥溜め部がないので、第2のますにおけるボウフラの発生を抑制することができる。
【0013】
前記雨水排出システムにおいて、前記第1のますは、前記流入口および前記流出口の底部よりも下方に延びる有底円筒状の底部と、当該底部に着脱自在に挿入された前記泥溜め部としてのバケットとを備え、前記第2のますはバケットを備えていなくてもよい。
【0014】
このことにより、バケットを取り外すという簡単な作業によって、バケット内に溜まった泥や異物、すなわち第1のますに溜まった泥や異物を外部に容易に排出することができる。そのため、第1のますの泥溜め機能を良好に維持しやすくなるので、その分、第2のますに泥や異物が流れ込むことを抑制することができる。したがって、第2のますに泥溜め部が形成されていなくても、雨水本管に泥が流出することを抑制することができる。また、第2のますにはバケットが設けられていないので、第2のますにおいて、部品点数の削減による低コスト化を図ることができる。
【0015】
前記第2のますの底部は、前記流入口および前記流出口の底部と実質的に段差がないように連続していてもよい。
【0016】
このことにより、第2のますの底部に雨水がより一層残留しにくくなり、ボウフラの発生を更に抑制することができる。
【0017】
前記第2のますは、前記流入口および前記流出口が形成されたます本体と、前記オリフィス部として前記ます本体に着脱自在に取り付けられたオリフィス部材とを有していてもよい。
【0018】
このことにより、ます本体からオリフィス部材を容易に取り外すことができるので、オリフィス部材の清掃が容易となる。そのため、万が一、泥や異物が第2のますに流れ込んでオリフィス部材に付着したとしても、その泥や異物を容易に除去することができる。
【0019】
前記雨水排出システムは、前記第2のますの上部を塞ぐ孔が形成されていない蓋を備えていることが好ましい。
【0020】
このことにより、地上から第2のますに泥や異物が入り込むことを防止することができる。
【0021】
前記第2のますの前記流入口および前記流出口よりも高い位置に、第5の管路を介して側溝に接続されるオーバーフロー口が形成されていてもよい。
【0022】
このことにより、第2のますに大量の雨水が流入してきた場合に、その雨水の一部を第5の管路を介して側溝に排出することができる。そのため、第2のますにおいて、雨水が地上に溢れ出てしまうことを防止することができる。一方、第2のますは第5の管路を介して側溝と連通しているので、側溝から第2のますに蚊が侵入しやすくなる。しかし、前述の通り第2のますには泥溜め部が形成されていないので、側溝と連通しているにも拘わらず、ボウフラは発生しにくい。
【0023】
前記第1のますはフィルターを備えていてもよい。
【0024】
このことにより、雨水に含まれる異物は上記フィルターに捕捉され、雨水槽および第2のますに異物が流れ込むことが防止される。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、従来よりも施工時の労力が軽減され、また、ボウフラの発生が抑制された雨水排出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る雨水排出システムの構成図である。
【図2】オリフィスますのます本体およびオリフィス部材の断面図である。
【図3】オリフィス部材の斜視図である。
【図4】オリフィスますのます本体に対するオリフィス部材の着脱を説明する図である。
【図5】変形例に係るオリフィスますのます本体およびオリフィス部材の断面図である。
【図6】他の変形例に係るオリフィスますのます本体およびオリフィス部材の断面図である。
【図7】従来の雨水排出システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1に示す本実施形態に係る雨水排出システム1は、宅地内で集めた雨水を宅地外の雨水本管50に排出するものである。本実施形態の雨水排出システム1は、地中に埋設されている。雨水排出システム1は、雨水槽としての雨水浸透槽10と、雨水浸透槽10の上流側に設置されたフィルターます20と、雨水浸透槽10の下流側に設置されたオリフィスます30とを備えている。オリフィスます30は、雨水浸透槽10と雨水本管50との間に設置されている。
【0028】
雨水浸透槽10は、雨水を貯留すると共に、貯留した雨水の一部を地中に浸透させるものである。雨水浸透槽10の構造は何ら限定されない。雨水浸透槽10は、例えば、前後左右に配列されると共に上下に積層された複数の貯留材(例えば、多数の孔が形成されたブロック体等)と、それら貯留材の周囲を覆う透水シートとから構成されていてもよい。雨水浸透槽10は、雨水を導入する導入口11と、雨水を排出する排出口12と、オーバーフロー口13とを有している。導入口11は雨水浸透槽10の側面の上部に形成され、排出口12は雨水浸透槽10の側面の下部に形成されている。導入口11および排出口12の構造は何ら限定されない。例えば、上記透水シートに孔を形成し、それらの孔によって導入口11および排出口12を形成してもよい。
【0029】
フィルターます20は、流入口21aおよび流出口21bが形成されたます本体21と、ます本体21の上部に接続された立管22と、ます本体21の下部に接続された有底円筒状の底部23と、フィルター26とを備えている。流入口21aには、図示しない雨樋等に接続された管51が接続されている。流出口21bは、管52を介して、雨水浸透槽10の導入口11に接続されている。本実施形態では、流入口21aは2つ形成されている。ただし、流入口21aの個数は2つに限らず、1つでもよく、3つ以上であってもよい。また、流出口21bの個数も特に限定される訳ではない。立管22の上部には、蓋24が着脱自在に嵌め込まれている。
【0030】
フィルターます20の底部23は、流入口21aおよび流出口21bの底部よりも下方に延びている。底部23の内部には、有底円筒状のバケット25が挿入されている。バケット25は、フィルターます20に流入した泥や異物を溜める泥溜め部を形成している。バケット25は底部23に対して着脱自在となっている。そのため、立管22を通じてバケット25を出し入れすることにより、バケット25に溜まった泥を外部に容易に排出することができる。
【0031】
フィルター26は、ます本体21に着脱自在に取り付けられている。図示は省略するが、フィルター26は、網目状のフィルター本体と、フィルター本体を支持する支持体とを有している。支持体には突起が設けられ、ます本体21には縦溝が形成されている。上記突起を上記縦溝に挿入して上下にスライドさせることにより、フィルター26をます本体21に着脱することができる。ただし、フィルター26をます本体21に着脱自在に取り付けるための構造は、何ら限定されるものではない。本実施形態ではフィルター26はます本体21と別体であるが、フィルター26がます本体21と一体化されていてもよい。フィルター26は流出口21bの内側を覆っている。そのため、雨水に混じった異物は、ます本体21内にてフィルター26に捕捉され、バケット25に回収されることになる。
【0032】
オリフィスます30は、雨水浸透槽10から雨水本管50に向かって、雨水を緩やかに排出させるものである。すなわち、オリフィスます30は、雨水浸透槽10から雨水本管50に向かって雨水を流出させる一方、大量の雨水が雨水本管50に急激に流れ込まないように、雨水の流れを規制する役割を果たす。オリフィスます30は、流入口31aおよび流出口31bが形成されたます本体31と、ます本体31の上部に接続された立管32と、雨水の流れを絞るオリフィス部材33とを備えている。
【0033】
オリフィスます30の流入口31aは、管53を介して雨水浸透槽10の排出口12に接続されている。流出口31bには管54が接続されている。管54は、継手55と管56と継手57とを介して雨水本管50に接続されている。これらの管54、継手55、管56、および継手57は、オリフィスます30と雨水本管50とをつなぐ管路61を形成している。なお、本明細書において「管路」とは、1本の管または継手等を介して接続された複数本の管等からなる流路を言う。
【0034】
図2は、オリフィスます30のます本体31の縦断面図である。フィルターます20と異なり、オリフィスます30には泥溜め部が設けられていない。オリフィスます30は、流入口31aの底部31acおよび流出口31bの底部31bcよりも下方に凹んだ底部を有していないし、バケットも備えていない。ます本体31の底部31cは、流入口31aおよび流出口31bの底部31ac,31bcと実質的に段差がないように連続している。ここで、「実質的に段差がない」とは、実用上泥を溜める機能を果たすことができる程度に下方に凹んだ段差がないことを言う。例えば、ます本体31の成型上の理由から設けられた微小な段差や、ます本体31の剛性を確保するために形成された微小な段差などは、実質的に段差がないものと言うことができる。また、例えば、ます本体31の肉厚または管53,54の肉厚と同程度(例えば、それら肉厚の5倍以下)の段差は、実質的に段差がないものと見なすことができる。
【0035】
ます本体31の底部31cの下側には、下方に突出する円筒状の突起31dが設けられている。この突起31dは、オリフィスます30を設置面に対して安定して設置するための台座であるが、必ずしも必要なものではなく、省略することも可能である。突起31dは、ます本体31の全体に比べると非常に小さなものである。また、ます本体31の側部から底部31cに渡って、後述するオリフィス部材33のリブ33fが嵌め込まれる溝31eが形成されており、溝31eの外側の部分は下方に突出している。しかし、それらは十分に小さいため、実質的にます本体31には流入口31aおよび流出口31bの底部31ac,31bcよりも下方に延びる部分はないと言うことができる。
【0036】
次に、オリフィス部材33について説明する。オリフィス部材33は、ます本体31に着脱自在に装着されている。図3に示すように、オリフィス部材33は、フランジ部33aと、先端側に行くほど内径が小さくなる絞り部33bと、把手33cとを有している。フランジ部33aは、ます本体31の内側の形状に沿うように、平面視略円弧状に湾曲している。図2に示すように、オリフィス部材33がます本体31に装着された状態では、流出口31bはフランジ部33aによって覆われる。絞り部33bの先端には入口側の流通口33dが形成され、絞り部33bの根元には出口側の流通口33e(図2参照)が形成されている。出口側の流通口33eは流出口31bの内径と略同一であるが、入口側の流通口33dは出口側の流通口33eよりも小さくなっている。
【0037】
図3に示すように、フランジ部33aにはリブ33fが設けられている。リブ33fは、フランジ部33aの左側面、下面、および右側面に渡って延びている。図4に示すように、ます本体31には、リブ33fが嵌め込まれる溝31eが形成されている。リブ33fが溝31eに嵌め込まれることによって、オリフィス部材33はます本体31に取り付けられる(図2参照)。図3に示すように、フック5を把手33cに引っ掛け、フック5を上方に持ち上げることにより、オリフィス部材33をます本体31から容易に取り外すことができる。逆に、把手33cに引っ掛けたフック5を降ろすことにより、オリフィス部材33をます本体31に容易に取り付けることができる。
【0038】
図1に示すように、立管32の上部には、蓋34が嵌め込まれている。地上からオリフィスます30内に異物が落下しないように、蓋34には孔が形成されていない。蓋34はいわゆる密閉蓋である。
【0039】
立管32の側面の上部には、オーバーフロー口32aおよび32bが形成されている。オーバーフロー口32aには、雨水浸透槽10の上部に接続された管58が接続されている。オーバーフロー口32bは、管59を介して側溝60に接続されている。集中豪雨時などの際に雨水浸透槽10に大量の雨水が貯留されると、オリフィスます30の水位が上昇する。すると、雨水浸透槽10の雨水の一部は、管58およびオーバーフロー口32aを通じてオリフィスます30に流入し、オリフィスます30内の雨水の一部は、オーバーフロー口32bおよび管59を通じて側溝60に排出される。そのため、雨水浸透槽10に雨水を貯留することができなくなってフィルターます20から雨水が溢れ出したり、オリフィスます30から地上へ雨水が溢れ出すこと等は防止される。
【0040】
なお、図1に示すように、本実施形態に係る雨水排出システム1では、オリフィスます30には、雨水浸透槽10の底面10aよりも低い位置に配置される部分は存在しない。オリフィスます30の全体は、雨水浸透槽10の底面10aよりも高い位置に配置されている。オリフィスます30は、人が入ることができない程度の大きさに形成されている。
【0041】
次に、雨水排出システム1の施工方法について説明する。始めに、雨水浸透槽10、フィルターます20、およびオリフィスます30を設置するために必要な大きさの穴70(図1参照)を掘削する。
【0042】
次に、雨水浸透槽10を設置する。例えば、雨水浸透槽10が複数の貯留材と透水シートとから構成される場合、穴70の底面に透水シートを敷いた後、その透水シートの上に貯留材を配列する。所定数の貯留材を前後、左右、および上下に配列した後、それらを透水シートで覆う。これにより、雨水浸透槽10が形成される。次に、雨水浸透槽10の透水シートの所定箇所に孔を空け、導入口11、排出口12、およびオーバーフロー口13を形成する。
【0043】
次に、フィルターます20を設置し、フィルターます20の流出口21bと雨水浸透槽10の導入口11とを管52で接続する。
【0044】
次に、オリフィスます30を設置する。本実施形態では、オリフィスます30は流入口31aおよび流出口31bよりも下方に延びる底部が存在しないので、オリフィスます30の設置に際して、穴70の一部を更に深掘りする必要はない。したがってまず、穴70の一部を更に掘削することなく、オリフィスます30を設置する予定の箇所に砂基礎75を敷き、その砂基礎75の上にオリフィスます30を配置する。次に、オリフィスます30に各配管を接続する。すなわち、オリフィスます30の流入口31aと雨水浸透槽10の排出口12とを管53で接続し、管54等を介してオリフィスます30の流出口31bを雨水本管50に接続する。なお、通常、雨水浸透槽10等の設置に先だって、管56および継手55が予め設置されていることが多い。このような場合には、管54の一端を継手55に接続し、他端をオリフィスます30の流出口31bに接続することにより、オリフィスます30を雨水本管50に接続することができる。次に、管58を介してオーバーフロー口32aと雨水浸透槽10のオーバーフロー口13とを接続し、管59を介してオーバーフロー口32bと側溝60とを接続する。
【0045】
以上により、オリフィスます30の設置が完了する。その後、穴70を埋めることにより、雨水排出システム1の全体の施工が完了する。
【0046】
なお、上述の施工方法は、雨水排出システム1の施工方法の一例に過ぎず、施工の順番等は特に限定される訳ではない。例えば、オリフィスます30に対する管53,54,58,59の施工順序は上述の順序に限らず、適宜に変更することができる。また、上述の説明では、フィルターます20の設置後にオリフィスます30を設置することとしたが、フィルターます20の設置前にオリフィスます30を設置してもよく、フィルターます20とオリフィスます30とを同時に設置してもよい。また、フィルターます20またはオリフィスます30を雨水浸透槽10の設置前に設置することとしてもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る雨水排出システム1によれば、オリフィスます30は、流入口31aおよび流出口31bの底部31ac,31bcよりも下方に延びる泥溜め部を備えていない。そのため、オリフィスます30を設置する際に、穴70の他に、泥溜め部を収容するための穴を別途掘削する必要がない。したがって、従来よりも施工時の労力を軽減することができる。
【0048】
また、オリフィスます30にはオーバーフロー口32bが形成され、オーバーフロー口32bは管59を介して側溝60と接続されている。そのため、オリフィスます30に過剰な雨水が流れ込んだときに、その過剰な雨水を側溝60に排出することができる。したがって、雨水がオリフィスます30から地上へ溢れ出ることを防止することができる。一方、オリフィスます30が側溝60と連通していることから、側溝60からオリフィスます30に蚊が侵入しやすくなる。しかし、オリフィスます30は泥溜め部を備えていないので、オリフィスます30において、ボウフラの格好の生息場所となるような場所、すなわち、ボウフラの生息場所となる程度の量の雨水が常時残留するような場所は存在しない。特に本実施形態では、オリフィスます30の底部31cは、流入口31aおよび流出口31bの底部31ac,31bcと実質的に段差がないように連続している。よって、オリフィスます30において、雨水が常に残留するような場所は実質的に存在しない。したがって、雨水排出システム1によれば、ボウフラの発生を抑制することができる。
【0049】
フィルターます20には、着脱自在なバケット25が設けられている。そのため、バケット25を取り外し、バケット25内に溜まった泥等を外部に排出することによって、フィルターます20を容易にメンテナンスすることができる。したがって、フィルターます20の泥溜め機能を良好に維持しやすくなり、ひいては、オリフィスます30に泥が流れ込むことを十分に抑制することができる。一方、オリフィスます30には泥溜め部が形成されていないので、フィルターます20と異なり、オリフィスます30にはバケットが設けられていない。そのため、オリフィスます30において、部品点数の削減による低コスト化が図られる。
【0050】
本実施形態では、オリフィスます30のオリフィス部材33は、ます本体31に対して着脱自在に取り付けられている。そのため、オリフィス部材33をます本体31から容易に取り外すことができるので、オリフィス部材33の清掃が容易である。したがって、万が一、泥や異物がオリフィスます30に流れ込んでオリフィス部材33に付着したとしても、オリフィス部材33をます本体31から取り外して清掃することにより、泥や異物を容易に取り除くことができる。したがって、オリフィスます30の本来の機能を良好に維持することができる。
【0051】
本実施形態では、オリフィスます30の立管32は、孔が形成されていない蓋34によって塞がれている。仮に蓋34に孔が形成されているとすると、その孔を通じて地上からオリフィスます30の内部に泥や異物が浸入するおそれがある。ところが本実施形態によれば、蓋34には孔が形成されていないので、地上からオリフィスます30の内部に泥や異物が浸入するおそれがない。
【0052】
なお、本実施形態では、雨水浸透槽10の上流側に設置されたますは、フィルター26を備えたフィルターます20である。しかし、雨水浸透槽10の上流側に設置されるますは、フィルターます20に限定される訳ではなく、フィルターを備えていないますであってもよい。ただし、雨水浸透槽10の上流側に設置されるますがフィルターます20であれば、雨水に含まれる異物(例えば、枯葉等)はフィルターます20のフィルター26に捕捉され、雨水浸透槽10ひいてはオリフィスます30に流れ込むことが防止される。したがって、雨水浸透槽10の上流側に設置されるますは、フィルターます20であることが好ましい。
【0053】
前記実施形態では、オリフィス部材33は流入口31aと流出口31bとの間に配置されていた(図2参照)。しかし、オリフィス部材33の位置は何ら限定されない。例えば図5に示すように、オリフィス部材33は、その一部が流出口31bの外側に位置するように配置されていてもよい。図5に示す変形例では、オリフィス部材33は、筒状体35と、筒状体35の内部に固定された絞り部33bとを備えている。絞り部33bの構成は前記実施形態と同様であるので、その説明は省略する。筒状体35の外径は管54の内径と略等しい。筒状体35は、流出口31bおよび管54の内部に嵌め込まれている。筒状体35の一端には、半径方向の外側に向かって広がったフランジ部35aが形成されている。フランジ部35aが流出口31bの内側端に当接することにより、オリフィス部材33が雨水と共に下流側に流れていくことが防止されている。
【0054】
本変形例では、ます本体31の底部31cと流入口31aの底部31acとの間には段差S1が形成され、ます本体31の底部31cと流出口31bの底部(厳密には、筒状体35の底部)との間には段差S2が形成されている。しかし、図5から明らかなように、これら段差S1,S2は、ます本体31の肉厚や管53,54の肉厚と同程度(厳密には、それら肉厚の2〜3倍程度)の段差に過ぎない。したがって、それらの段差S1,S2が存在することによって、施工の際にオリフィスます30の底部を収容するための穴を別途掘削する必要が生じたり、あるいは、ボウフラの格好の生息場所となるような泥溜め部が形成される訳ではない。
【0055】
したがって、本変形例においても、従来よりも施工時の労力を軽減することができ、また、ボウフラの発生を抑制することができる。なお、図5では、立管32の蓋の図示は省略しているが、本変形例においても、立管32には孔が形成されていない蓋34(図1参照)が着脱自在に嵌め込まれる。
【0056】
図6に示すように、オリフィス部材33を流入口31a側に配置することも可能である。オリフィス部材33の構成は上述の通りであるので、その説明は省略する。図6に示す変形例においても、従来よりも施工時の労力を軽減することができ、また、ボウフラの発生を抑制することができる。
【0057】
前記実施形態では、雨水槽は、貯留した雨水の一部を地中に浸透させる雨水浸透槽10であった。しかし、雨水槽は雨水浸透槽10に限定されず、雨水を地中に浸透させずに貯留する雨水貯留槽であってもよい。
【0058】
前記実施形態では、雨水浸透槽10およびオリフィスます30にオーバーフロー口13,32aが形成され、それらが管58を介して接続されていた。また、オリフィスます30には他のオーバーフロー口32bが形成され、オーバーフロー口32bは管59を介して側溝60に接続されていた。しかし、オーバーフロー口13,32a,32bは必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 雨水排出システム
10 雨水浸透槽(雨水槽)
11 導入口
12 排出口
20 フィルターます(第1のます)
21a 流入口
21b 流出口
25 バケット(泥溜め部)
30 オリフィスます(第2のます)
31a 流入口
31b 流出口
31c 底部
32b オーバーフロー口
33 オリフィス部材
34 蓋
50 雨水本管
51 管(第1の管路)
52 管(第2の管路)
53 管(第3の管路)
59 管(第5の管路)
60 側溝
61 管路(第4の管路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を雨水本管に排出する雨水排出システムであって、
雨水を導入する導入口および雨水を排出する排出口が形成され、地中に埋設される雨水槽と、
雨水を導く第1の管路が接続された流入口と、第2の管路を介して前記雨水槽の前記導入口に接続された流出口と、前記流入口および前記流出口の底部よりも下方に延びる泥溜め部とを有する第1のますと、
第3の管路を介して前記雨水槽の前記排出口に接続された流入口と、第4の管路を介して前記雨水本管に接続された流出口と、雨水の流れを絞るオリフィス部とを有し、地中に埋設される第2のますと、を備え、
前記第2のますには、前記流入口および前記流出口の底部よりも下方に延びる泥溜め部が形成されていない、雨水排出システム。
【請求項2】
前記第1のますは、前記流入口および前記流出口の底部よりも下方に延びる有底円筒状の底部と、当該底部に着脱自在に挿入された前記泥溜め部としてのバケットとを備え、
前記第2のますはバケットを備えていない、請求項1に記載の雨水排出システム。
【請求項3】
前記第2のますの底部は、前記流入口および前記流出口の底部と実質的に段差がないように連続している、請求項1または2に記載の雨水排出システム。
【請求項4】
前記第2のますは、前記流入口および前記流出口が形成されたます本体と、前記オリフィス部として前記ます本体に着脱自在に取り付けられたオリフィス部材とを有している、請求項1〜3のいずれか一つに記載の雨水排出システム。
【請求項5】
前記第2のますの上部を塞ぐ孔が形成されていない蓋を備えている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の雨水排出システム。
【請求項6】
前記第2のますの前記流入口および前記流出口よりも高い位置に、第5の管路を介して側溝に接続されるオーバーフロー口が形成されている、請求項1〜5のいずれか一つに記載の雨水排出システム。
【請求項7】
前記第1のますはフィルターを備えている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の雨水排出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−236699(P2011−236699A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111055(P2010−111055)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】