説明

電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具および挿入方法

【課題】絶縁体を電力ケーブルに挿入する際に、電力ケーブルが曲がったり軸方向に沿って座屈するのを防止してスムーズに絶縁体を電力ケーブルに装着することができ、絶縁体の装着作業の効率を上げることができる電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具および電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法を提供する。
【解決手段】電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1は、電力ケーブル100のケーブル導体102と、ケーブル導体102から離れた位置にある固定部位17との間を連結して、電力ケーブル100に対して張力付加方向Tに沿って張力をかける張力付加部21と、張力付加方向Tとは反対方向の引っ張り方向Sに沿って絶縁体2を引っ張ることで、電力ケーブル100の絶縁被覆101の外周面に対して絶縁体2を挿入するための絶縁体挿入部80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具および電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法に関し、特に電力ケーブルの外周部に円筒状の絶縁体を挿入するための電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具および電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルの絶縁被覆の外周面には、円筒状のプレモールド絶縁体を挿入する作業がある。プレモールド絶縁体が電力ケーブルの絶縁被覆の外周面に挿入される場合には、プレモールド絶縁体の穴の内径に比べて電力ケーブルの絶縁被覆の外径が大きい。このため、作業者が人力により電力ケーブルの絶縁被覆の外周面に対してプレモールド絶縁体を挿入することが困難である。
【0003】
電力ケーブルに関連して、電力ケーブルに対してストレスコーンを装着することが特許文献1〜特許文献4に開示されている。特許文献1では、ストレスコーンが導体引出棒を有する電力ケーブルに対して装着されることが開示されている。特許文献2では、電力ケーブルに対してストレスコーンを挿入することが開示されている。特許文献3では、電力ケーブルに対してストレスコーンを装着する装着具が開示されている。特許文献4では、ウインチ装置によりワイヤを牽引して、台車部材をケーブルに向けて接近させながら、ゴムコーン部材の内部にケーブルを挿入することが開示されている。
【特許文献1】特開平5−219625号公報
【特許文献2】特開2003−92814号公報
【特許文献3】特開平5−328563号公報
【特許文献4】特開平7−43412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、ストレスコーンが導体引出棒を有する電力ケーブルに装着されるだけである。特許文献2に開示されている装置を用いて、プレモールド絶縁体を電力ケーブルの外周部に挿入しようとすると、プレモールド絶縁体の穴の径に比べて電力ケーブルの絶縁被覆の外径が大きいので、電力ケーブルが曲がったりあるいは軸方向に沿って座屈してしまうおそれがある。
【0005】
特許文献3に開示されている装置を用いてプレモールド絶縁体を電力ケーブルの外周部に挿入しようとすると、プレモールド絶縁体の先端に加える張力のバランスが崩れると、電力ケーブルが曲がったりあるいは軸方向に沿って座屈してしまうおそれがある。特許文献4に開示されている装置を用いると、ウインチ装置と台車部材が必要になり大がかりな装置となり、コスト高になる。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、絶縁体を電力ケーブルに挿入する際に、電力ケーブルが曲がったり軸方向に沿って座屈するのを防止してスムーズに絶縁体を電力ケーブルに装着することができ、絶縁体の装着作業の効率を上げることができる電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具および電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解消するために、本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具は、電力ケーブルの絶縁被覆の外周面に対して円筒状の絶縁体を挿入する電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具であって、
前記電力ケーブルのケーブル導体と、前記ケーブル導体から離れた位置にある固定部位との間を連結して、前記電力ケーブルに対して張力付加方向に沿って張力をかける張力付加部と、
前記張力付加方向とは反対方向の引っ張り方向に沿って前記ケーブル導体を引っ張ることで、前記電力ケーブルの前記絶縁被覆の外周面に対して前記絶縁体を挿入するための絶縁体挿入部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具は、好ましくは前記張力付加部は、
前記ケーブル導体に固定された導体引出部材と、
前記導体引出部材と前記固定部位を接続する連結部材と、
前記導体引出部材を覆って前記絶縁体挿入部を案内するガイド治具と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具は、好ましくは前記張力付加部は、
前記ケーブル導体に固定されたガイド用部材と、
前記ガイド用部材と前記固定部位を接続する連結部材と、を備えることを特徴とする。
本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具は、好ましくは前記張力付加部は、
前記ケーブル導体に固定された導体接続管と、
前記導体接続管と前記固定部位を接続する連結部材と、
前記導体接続管を覆って前記絶縁体挿入部を案内するガイド治具と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具は、好ましくは前記絶縁体挿入部は、
前記絶縁体に突き当てられる挿入治具と、
前記挿入治具を前記引っ張り方向に沿って引っ張る線状部材と、
を備えることを特徴とする。
本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具は、好ましくは前記張力付加部の前記連結部材は、
牽引ボルトと、
前記牽引ボルトと前記固定部位との間を接続するチェーンとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法は、電力ケーブルの絶縁被覆の外周面に対して円筒状の絶縁体を挿入する電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法であって、
前記電力ケーブルのケーブル導体と、前記ケーブル導体から離れた位置にある固定部位との間を連結して、前記電力ケーブルに対して張力付加方向に沿って張力をかける張力付加工程と、
前記張力付加方向とは反対方向の引っ張り方向に沿って前記ケーブル導体を引っ張ることで、前記電力ケーブルの前記絶縁被覆の外周面に対して前記絶縁体を挿入するための絶縁体挿入工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁体を電力ケーブルに挿入する際に、電力ケーブルが曲がったり軸方向に沿って座屈するのを防止してスムーズに絶縁体を電力ケーブルに装着することができ、絶縁体の装着作業の効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具の好ましい第1実施形態と、絶縁体の挿入対象である電力ケーブルを示している。
図1に示す絶縁体の挿入工具1は、電力ケーブル100の絶縁被覆101の外周面に対して、例えばプレモールド絶縁体2を挿入するための工具である。図1に示す電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1は、主に電力ケーブルの終端接続箱に適用される。終端接続箱の場合には、電力ケーブル100は垂直方向に配置される。
【0014】
まず、絶縁体の挿入工具1を説明する前に、電力ケーブル100とプレモールド絶縁体2の形状について説明する。
電力ケーブル100は、ケーブル導体102と、このケーブル導体102の周囲を覆っている絶縁被覆101等を有しており、ケーブル導体102の先端部が絶縁被覆101から所定長さ分だけ露出されている。
【0015】
図2は、図1に示すプレモールド絶縁体2を示す斜視図である。
図1と図2に示すように、プレモールド絶縁体2は、ほぼ円筒状の電気絶縁性を有する部材であり、例えばシリコンゴムにより形成されている。プレモールド絶縁体2は、大径部2Dと小径部2Sを有している。プレモールド絶縁体2は、貫通孔2Hを有しており、この貫通孔2Hの内径D1は、図1に示す電力ケーブル100の絶縁被覆101の外径D2に比べて小さい。
【0016】
次に、図1を参照して、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1の構造を説明する。
絶縁体の挿入工具1は、絶縁体の挿入治具とも呼ぶことができ、張力付加部21と、絶縁体挿入部80とを有している、
図1に示すように、張力付加部21は、電力ケーブル100のケーブル導体102と、ケーブル導体102から離れた位置にある固定部位17との間を連結して、電力ケーブル100に対して張力付加方向Tに沿って張力をかける。
【0017】
絶縁体挿入部80は、張力付加方向Tとは反対方向の引っ張り方向(挿入方向とも言う)Sに沿ってプレモールド絶縁体2を引っ張ることで、電力ケーブル100の絶縁被覆101の外周面に対して機械力を用いてプレモールド絶縁体2を挿入する。
張力付加部21は、導体引出部材3と、牽引ボルトであるアイボルト12と、チェーン10と、チェーンブロック7と、そしてガイド治具14を有している。また、絶縁体挿入部80は、チェーン8,9と、プレモールド絶縁体挿入治具11と、当て部材30と、そしてクリート4を有している。
【0018】
まず、図1に示す張力付加部21について説明する。
張力付加部21の導体引出部材3は、棒状部材であり、導体引出部材3の先端部3Bには雌ねじ部3Cが形成されている。アイボルト12の雄ねじ部13は、雌ねじ部3Cにねじ込まれることで固定されている。導体引出部材3の内端部3Dには断面円形状の穴部3Fが形成されており、この穴部3Fにはケーブル導体102を圧縮して固定している。
【0019】
ガイド治具14は、ほぼ円筒状の部材であり、このガイド治具14は導体引出部材3の中間部分3Gと内端部3Dと絶縁被覆101の一部を覆うようにして配置されている。ガイド治具14のテーパー部分14Bは、導体引出部材3の中間部分3Gの外周面に密着されている。このテーパー部分14Bは、プレモールド絶縁体挿入治具11を通す際のガイド部材の役割を果たす。ガイド治具14の外径は絶縁被覆101の外径と同じである。
【0020】
チェーン10は、その途中にチェーンブロック7を有しており、このチェーン10の一端部15は、リング部材16を有している。このリング部材16は、架台や建物等に支持したパイプ等の固定部位17に固定しておくための部材である。
なお、リング部材16がこのようなパイプ等の固定部位17に固定するのが困難な場合には、このリング部材16は、クレーン車等で吊っておくこともできる。
【0021】
チェーン10の他端部18は、リング部材19を有している。このリング部材19は、アイボルト12のリング部材20に対して連結されている。
なお、張力付加部21は、導体引出部材3の引き留めるための引き留め機構部とも呼ぶことができる。
【0022】
次に、図1に示す絶縁体挿入部80を説明する。
図1に示す絶縁体挿入部80のチェーン8の途中にはチェーンブロック5が設けられており、チェーン8の一端部22は、リング部材23を有しており、他端部24は、リング部材25を有している。同様にして、チェーン9の途中にはチェーンブロック6が設けられており、チェーン9の一端部26は、リング部材27を有しており、他端部28は、リング部材29を有している。チェーン8,9は、線状部材の一例である。
【0023】
プレモールド絶縁体挿入治具11は、金属製の板状の部材であり、その内面側に例えばゴム製の当て部材30を有している。プレモールド絶縁体挿入治具11と当て部材30は、円形の開口部31を有しており、この開口部31の内径は、ガイド治具14の外径よりも大きく、プレモールド絶縁体2の貫通孔2Hの内径より大きい。しかも、開口部31の内径は、プレモールド絶縁体2の外径よりも小さい。これにより、当て部材30はプレモールド絶縁体2の突き当て面2Kに対して突き当てることができる。プレモールド絶縁体挿入治具11はリング部材33,34を有している。
一方、金属製のクリート4は、ネジによりケーブルシース103に対して着脱可能に固定されている。クリート4の突出部4B、4Cには、それぞれリング部材35,36を有している。
【0024】
チェーン8のリング部材23は、プレモールド絶縁体挿入治具11のリング部材33に連結されており、チェーン8のリング部材25は、クリート4のリング部材35に連結されている。同様にして、チェーン9のリング部材27は、プレモールド絶縁体挿入治具11のリング部材34に連結されており、チェーン9のリング部材29は、クリート4のリング部材36に連結されている。
【0025】
チェーン8,9,10は、長手方向Lに沿って平行である。チェーン10と、アイボルト12と、導体引出部材3と、プレモールド絶縁体挿入治具11と、電力ケーブル100は、軸方向CLに沿って配置されている。チェーン10とアイボルト12は、連結部材の一例である。
【0026】
次に、図1を参照して、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1を用いて、プレモールド絶縁体2を、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する挿入方法を説明する。終端接続箱の場合には、電力ケーブル100は垂直方向に配置される。
図1に示す導体引出部材3を用意して、導体引出部材3の内端部3Dの穴部3F内にはケーブル導体102を挿入して、内端部3Dを圧縮することで導体引出部材3の内端部3Dに対してケーブル導体102を固定する。
【0027】
次に、ガイド治具14が、好ましくは導体引出部材3とケーブル導体102の外周部分に取り付けられる。プレモールド絶縁体2とプレモールド絶縁体挿入治具11が導体引出部材3の先端部3Bとテーパー部分14を介して挿入される。その後、導体引出部材3の先端部3Bの雌ねじ部3Cに対してアイボルト12の雄ねじ部13をねじ込むことで、導体引出部材3に対してアイボルト12を固定する。
【0028】
図1に示す引っ張り方向Sは、プレモールド絶縁体2を、電力ケーブル100の絶縁被覆101の外周面に対して挿入する方向を示している。張力付加方向Tは、引っ張り方向Sとは反対方向に沿って張力を予めかけておく方向である。
導体引出部材3は、チェーン10とアイボルト12を介して固定部材17に連結され、導体引出部材3は、張力付加方向Tに沿って予め張力をかけておく。そして、挿入治具11が、当て部材30を介してプレモールド絶縁体2の突き当て部2Kに突き当てられ、チェーンブロック5,6を機械力で引っ張り方向Sに沿って引っ張りながら、挿入治具11がプレモールド絶縁体2を電力ケーブル100の絶縁被覆101の外周面に対して引っ張り方向Sに沿って挿入していく。
【0029】
このようにすることで、たとえプレモールド絶縁体2の内径が絶縁被覆101の外径よりも小さく設定されていても、プレモールド絶縁体2は、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して機械力を用いてスムーズに挿入できる。すなわち、導体引出部材3と電力ケーブル100は、張力付加方向Tに沿って予め張力を掛けておき、チェーンブロック5,6を用いて引っ張り方向Sに沿って引っ張りながらプレモールド絶縁体2を電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する際には、電力ケーブル100は引っ張り方向Sに移動することはない。従って、電力ケーブル100が曲がったり軸方向CLに沿って座屈するのを防止して、プレモールド絶縁体2をスムーズに電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して装着することができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具の好ましい第2実施形態を説明する。
図3は、本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具の好ましい第2実施形態と、電力ケーブルを示している。
図3に示す電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1Bは、図1に示す絶縁体の挿入工具1と比べると、張力付加部21Bの構造と、絶縁体挿入部80Bの構造が少し異なる。
【0031】
図3に示す張力付加部21Bでは、図1に示す導体引出部材3とガイド治具14を用いるのに代えて、図3のガイド用部材50が用いられる。図3の絶縁体挿入部80Bには、図1のクリート4を用いない点が異なる。しかし、図3の絶縁体の挿入工具1Bのその他の構成要素は、図1の絶縁体の挿入工具1のその他の構成要素と実質的に同じであるので、同じ記号を付けて説明を用いる。
【0032】
図3に示す電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1Bは、電力ケーブルの終端接続箱あるいは中間接続箱に適用できる。終端接続箱の場合には、電力ケーブル100は垂直方向に配置される。中間接続箱の場合には、電力ケーブル100は水平に配置される。
【0033】
図3に示すように、張力付加部21Bのガイド用部材50がケーブル導体102に対して固定される。ガイド用部材50は、ほぼ円柱状の部材であり、テーパー部51を有している。内端部52の内部には穴部53と、円周上に少なくとも2箇所の雌ねじ部55が形成されている。ガイド用部材50のテーパー部51は雌ねじ部54を有しており、この雌ねじ部54には、アイボルト12の雄ねじ部13がねじ込まれる。また、雌ねじ部55に止めねじ56がねじ込まれる。
【0034】
また、絶縁体挿入部80Bのリング部材35,36は、架台等の構造物60に取り付けられており、リング部材35,36はチェーン8,9のリング部材25,29にそれぞれ連結されている。
上述したチェーン10と、アイボルト12は、連結部材の一例であり、ガイド用部材50の引き留め機構部21Bを構成している。
【0035】
次に、図3を参照して、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1Bを用いて、プレモールド絶縁体2を、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する挿入方法を説明する。
図3に示すガイド用部材50を用意して、ガイド用部材50の内端部52の穴部53内にはケーブル導体102を挿入して、止めねじ56をねじ込み、ケーブル導体102を押し付けることにより、ガイド用部材50の内端部52に対してケーブル導体102を固定する。なお、止めねじ56の頭は、ガイド用部材50の外周より凹になるように設計されている。
【0036】
次に、プレモールド絶縁体2とプレモールド絶縁体挿入治具11が、ガイド用部材50のテーパー部54により案内されながら挿入される。その後、ガイド用部材50の先端部51の雌ねじ部54に対してアイボルト12の雄ねじ部13をねじ込むことで、ガイド用部材50に対してアイボルト12を固定する。
【0037】
図3に示す引っ張り方向Sは、プレモールド絶縁体2を、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する方向を示している。張力付加方向Tは、引っ張り方向Sとは反対方向に沿って張力をかけておく方向である。
【0038】
ガイド用部材50は、チェーン10とアイボルト12を介して固定部位17に連結され、ガイド用部材50は、張力付加方向Tに沿って張力をかけておく。そして、挿入治具11は、当て部材30を介してプレモールド絶縁体2の突き当て部2Kに突き当てられ、チェーンブロック5,6を機械力により引っ張り方向Sに沿って引っ張ることにより、挿入治具11はプレモールド絶縁体2を電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して引っ張り方向Sに沿って挿入していく。
【0039】
このようにすることで、たとえプレモールド絶縁体2の内径が絶縁被覆101の外径よりも小さく設定されていても、プレモールド絶縁体2は、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対してスムーズに挿入できる。すなわち、ガイド用部材50と電力ケーブル100は、張力付加方向Tに沿って予め張力を掛けておくので、チェーンブロック5,6を用いて引っ張り方向Sに沿って引っ張りながらプレモールド絶縁体2を電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する際に、電力ケーブル100は引っ張り方向Sに移動することはない。従って、電力ケーブル100が曲がったり軸方向CLに沿って座屈するのを防止して、プレモールド絶縁体2をスムーズに電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して装着することができる。また、絶縁被覆101の装着後、止めねじ56を緩めて、ガイド用部材50を外して、ケーブル導体102を取り出すことができる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具の好ましい第3実施形態を説明する。
図4は、本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具の好ましい第3実施形態と、電力ケーブルを示している。
【0041】
図4に示す電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1Cは、図1に示す絶縁体の挿入工具1と比べると、図1に示す導体引出部材3とガイド治具14を用いるのに代えて、図4に示す張力付加部21Cの導体接続管70とガイド治具71が用いられている点が異なる。しかし、図4の絶縁体の挿入工具1Cのその他の構成要素は、図1の絶縁体の挿入工具1のその他の構成要素と実質的に同じであるので、同じ記号を付けて説明を用いる。図4に示す電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1Cは、主に電力ケーブルの中間接続箱に適用できる。中間接続箱の場合には、電力ケーブル100は水平に配置される。
【0042】
図4に示すように、導体接続管70は、円筒状の部材であり、先端部73側の穴部74と内端部75側の穴部76と中央の壁部77を有している。壁部77には雌ねじ部が形成されており、この雌ねじ部にはアイボルト12の雄ねじ部13がねじ込まれている。内端部75側の穴部76内には、ケーブル導体102がはめ込まれて圧縮されることで、導体接続管70とケーブル導体102が固定されている。
ガイド治具71は、好ましくは導体接続管70とケーブル導体102の外周部を覆っており、テーパー部71Tを有している。ガイド治具71の外径と絶縁被覆101の外形は同じである。
上述したチェーン10と、アイボルト12は、導体接続管70の引き留め機構部21Cを構成している。
【0043】
次に、図4を参照して、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具1Cを用いて、プレモールド絶縁体2を、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する挿入方法を説明する。
図4に示す導体接続管70を用意して、導体接続管70の穴部76内にはケーブル導体102を挿入して、内端部75を圧縮することで導体接続管70の内端部75に対してケーブル導体102を固定する。
【0044】
次に、ガイド治具71が、好ましくは導体接続管70とケーブル導体102に外周部分に取り付けられる。プレモールド絶縁体2とプレモールド絶縁体挿入治具11をガイド治具71の先端部側に挿入する。その後、導体接続管70の壁部77の雌ねじ部に対してアイボルト12の雄ねじ部13をねじ込むことで、導体接続管70に対してアイボルト12を固定する。
【0045】
図1に示す引っ張り方向Sは、プレモールド絶縁体2を、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する方向を示している。張力付加方向Tは、引っ張り方向Sとは反対方向に沿って張力をかけておく方向である。
【0046】
導体接続管70は、チェーン10とアイボルト12を介して固定部材17に連結されており、導体接続管70は、張力付加方向Tに沿って張力をかけておく。そして、挿入治具11は、当て部材30を介してプレモールド絶縁体2の突き当て部2Kに突き当てられ、チェーンブロック5,6を機械力を用いて引っ張り方向Sに沿って引っ張りながら、挿入治具11がプレモールド絶縁体2を電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して引っ張り方向Sに沿って挿入していく。
【0047】
このようにすることで、たとえプレモールド絶縁体2の内径が絶縁被覆101の外径よりも小さく設定されていても、プレモールド絶縁体2は、電力ケーブル100の絶縁被覆101に対してスムーズに挿入できる。すなわち、導体接続管70と電力ケーブル100は、張力付加方向Tに沿って予め張力を掛けておくので、チェーンブロック5,6を用いて引っ張り方向Sに沿って引っ張りながらプレモールド絶縁体2を電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入する際に、電力ケーブル100は引っ張り方向Sに移動することはない。従って、電力ケーブル100が曲がったり軸方向CLに沿って座屈するのを防止して、プレモールド絶縁体2をスムーズに電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して装着することができる。
【0048】
本発明の実施形態では、先端側であるケーブル導体は、架台に固定したパイプや天井等の固定部位17に対して固定する必要があり、プレモールド絶縁体2を電力ケーブル100の絶縁被覆101に対して挿入するためには、チェーンブロック5,6またはウインチは挿入方向に固定しておく必要がある。先端側であるケーブル導体は、張力をかけるためにウインチを使用するが、電力ケーブル100は張力付加方向Tと引っ張り方向Sのいずれにも移動させることはないので、電力ケーブルは固定され、電力ケーブル側に台車等の用意は不要である。
【0049】
本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具は、電力ケーブルのケーブル導体と、ケーブル導体から離れた位置にある固定部位との間を連結して、電力ケーブルに対して張力付加方向に沿って張力をかける張力付加部と、張力付加方向とは反対方向の引っ張り方向に沿って前記絶縁体を引っ張ることで、電力ケーブルの前記絶縁被覆の外周面に対して絶縁体を挿入するための絶縁体挿入部と、を備える。これにより、絶縁体を電力ケーブルに挿入する際に、電力ケーブルが曲がったり軸方向に沿って座屈するのを防止してスムーズに絶縁体を電力ケーブルに装着することができ、絶縁体の装着作業の効率を上げることができる。
【0050】
張力付加部は、ケーブル導体に固定された導体引出部材と、導体引出部材と固定部位を接続する連結部材と、導体引出部材を覆って絶縁体挿入部を案内するガイド治具と、を備える。これにより、ケーブル導体を介して電力ケーブルに張力を確実に与えることで電力ケーブルが軸方向に移動するのを防ぎ、ガイド治具は、絶縁体挿入部を確実に案内することができるので、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入作業が効率良く行える。
【0051】
張力付加部は、ケーブル導体に固定されたガイド用部材と、ガイド用部材と固定部位を接続する連結部材と、を備える。これにより、ケーブル導体を介して電力ケーブルに張力を確実に与えることで電力ケーブルが軸方向に移動するのを防ぐので、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入作業が効率良く行える
【0052】
張力付加部は、ケーブル導体に固定された導体接続管と、導体接続管と固定部位を接続する連結部材と、導体接続管を覆って絶縁体挿入部を案内するガイド治具と、を備える。これにより、ケーブル導体を介して電力ケーブルに張力を確実に与えることで電力ケーブルが軸方向に移動するのを防ぎ、ガイド治具は、絶縁体挿入部を確実に案内することができるので、電力ケーブルにおける絶縁体の挿入作業が効率良く行える。
【0053】
絶縁体挿入部は、絶縁体に突き当てられる挿入治具と、挿入治具を引っ張り方向に沿って引っ張る線状部材と、を備えることを特徴とする。これにより、挿入治具は絶縁体に突き当てられるので、絶縁体は挿入方向に確実に挿入できる。
張力付加部の連結部材は、アイボルトと、アイボルトと前記固定部位との間を接続するチェーンとを有することを特徴とする。これにより、簡単な構造の連結部材が用意できる。
本発明では、大きなサイズの電力ケーブルだけでなく、小さなサイズの電力ケーブルに対しても絶縁体を装着できる。
【0054】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、図示例では、絶縁体挿入部は2本のチェーン8,9を用いているが、3本以上のチェーンを用いることもできる。線状部材として金属チェーン8,9,10を用いているが、これ代えて金属製のワイヤを用いることができる。線状部材としては、引っ張り力が加わっても伸びの少ない材質のものを使用するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具の好ましい第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示すプレモールド絶縁体の例を示す斜視図である。
【図3】本発明の好ましい第2実施形態を示す図である。
【図4】本発明の好ましい第3実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1,1B、1C 絶縁体の挿入工具
2 プレモールド絶縁体(絶縁体の一例)
3 導体引出部材
4 クリート
・ チェーン(線状部材の一例)
10 チェーン(連結部材の一例)
11 プレモールド絶縁体挿入治具
12 アイボルト(連結部材の一例)
14 ガイド治具
17 固定部位
21,21B、21C 張力付加部
50 ガイド用部材
70 導体接続管
80,80B 絶縁体挿入部
100 電力ケーブル
101 絶縁被覆
102 ケーブル導体
T 張力付加方向
S 引っ張り方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの絶縁被覆の外周面に対して円筒状の絶縁体を挿入する電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具であって、
前記電力ケーブルのケーブル導体と、前記ケーブル導体から離れた位置にある固定部位との間を連結して、前記電力ケーブルに対して張力付加方向に沿って張力をかける張力付加部と、
前記張力付加方向とは反対方向の引っ張り方向に沿って前記ケーブル導体を引っ張ることで、前記電力ケーブルの前記絶縁被覆の外周面に対して前記絶縁体を挿入するための絶縁体挿入部と、
を備えることを特徴とする電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具。
【請求項2】
前記張力付加部は、
前記ケーブル導体に固定された導体引出部材と、
前記導体引出部材と前記固定部位を接続する連結部材と、
前記導体引出部材を覆って前記絶縁体挿入部を案内するガイド治具と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具。
【請求項3】
前記張力付加部は、
前記ケーブル導体に固定されたガイド用部材と、
前記ガイド用部材と前記固定部位を接続する連結部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具。
【請求項4】
前記張力付加部は、
前記ケーブル導体に固定された導体接続管と、
前記導体接続管と前記固定部位を接続する連結部材と、
前記導体接続管を覆って前記絶縁体挿入部を案内するガイド治具と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具。
【請求項5】
前記絶縁体挿入部は、
前記絶縁体に突き当てられる挿入治具と、
前記挿入治具を前記引っ張り方向に沿って引っ張る線状部材と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具。
【請求項6】
前記張力付加部の前記連結部材は、
牽引ボルトと、
前記牽引ボルトと前記固定部位との間を接続するチェーンとを有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の電力ケーブルにおける絶縁体の挿入工具。
【請求項7】
電力ケーブルの絶縁被覆の外周面に対して円筒状の絶縁体を挿入する電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法であって、
前記電力ケーブルのケーブル導体と、前記ケーブル導体から離れた位置にある固定部位との間を連結して、前記電力ケーブルに対して張力付加方向に沿って張力をかける張力付加工程と、
前記張力付加方向とは反対方向の引っ張り方向に沿って前記ケーブル導体を引っ張ることで、前記電力ケーブルの前記絶縁被覆の外周面に対して前記絶縁体を挿入するための絶縁体挿入工程と、
を含むことを特徴とする電力ケーブルにおける絶縁体の挿入方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−232572(P2009−232572A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74514(P2008−74514)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】