説明

電力授受システム、電力貯蔵装置、及び、鉄道車両

【課題】自車両で発生した回生電力を貯蔵して自車両の走行に用いる鉄道車両において、降坂中に発生した回生電力を有効に利用できる電力授受システム、電力貯蔵装置、及び、鉄道車両を提供すること。
【解決手段】ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、途中駅Eにおいて、電力貯蔵装置51に貯蔵できるので、バッテリ9において、回生電力を貯蔵するための空き容量を増やせる。よって、引き続き、ハイブリッド車両1が坂路Ra2を降坂する場合に、回生電力が失効することを抑制できる。ハイブリッド車両1が坂路Raを登坂する場合、途中駅Eにおいて、電力貯蔵装置51に貯蔵されている電力を、バッテリ9に充電できる。よって、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、坂路Ra1を登坂する場合にその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両で発生した回生電力を貯蔵して自車両の走行に用いる鉄道車両において、降坂中に発生した回生電力を有効に利用できる電力授受システム、電力貯蔵装置、及び、鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、回生ブレーキにより発生する回生電力で自車両のバッテリを充電し、そのバッテリの電力を自車両の走行などに利用することで、回生電力を有効利用する鉄道車両が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「FOCUS NEDO 第27号」、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、1998年発行、p.10〜11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バッテリに貯蔵できる回生電力の容量には上限がある。そのため、例えば、回生ブレーキを使用しながら、長い下り坂を走行する場合に、その途中でバッテリが満充電状態になると、それ以上は回生電力を貯蔵できなくなる。よって、残りの下り坂を走行する場合に発生する回生電力については、鉄道車両の走行に利用できず、失効するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、自車両で発生した回生電力を貯蔵して自車両の走行に用いる鉄道車両において、降坂中に発生した回生電力を有効に利用できる電力授受システム、電力貯蔵装置、及び、鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の電力授受システムによれば、鉄道車両が一の方向へ走行する場合に登坂しその一の方向とは逆の方向へ走行する場合に降坂する坂路の途中に、電力を貯蔵する装置蓄電手段を有する電力貯蔵装置が設けられている。鉄道車両が坂路を降坂する場合に、鉄道車両において回生ブレーキが用いられると、回生電力が発生し、その回生電力が鉄道車両の車両蓄電手段に回生充電手段によって充電される。そして、接続手段によって、電力貯蔵装置の装置蓄電手段と鉄道車両の車両蓄電手段とが電力の授受可能に接続されると、坂路を降坂する鉄道車両であって回生充電手段による充電がなされた鉄道車両の車両蓄電手段の電力が、装置充電手段によって電力貯蔵装置の装置蓄電手段に充電される。よって、鉄道車両が坂路を降坂する場合には、回生電力が充電された車両蓄電手段の電力を鉄道車両から電力貯蔵装置に移動して、鉄道車両の車両蓄電手段における回生電力を貯蔵する空き容量を増やせるので、鉄道車両が引き続き坂路を降坂する場合に、回生電力の失効を抑制できる。
【0007】
また、坂路を登坂する鉄道車両に対しては、接続手段を介して、装置充電手段により充電され電力貯蔵装置の装置蓄電手段に貯蔵された電力が、車両充電手段によって鉄道車両の車両蓄電手段に充電される。よって、鉄道車両が坂路を登坂する場合には、電力貯蔵装置に貯蔵されている電力を電力貯蔵装置から鉄道車両に移動して、その電力を鉄道車両の登坂に利用できる。従って、降坂中に鉄道車両において発生する回生電力の失効を抑制できると共に、その回生電力を鉄道車両の走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できるという効果がある。
【0008】
請求項2記載の電力授受システムによれば、請求項1の効果に加え、次の効果を奏する。即ち、坂路を降坂してきた鉄道車両が、その坂路の途中に設置された電力貯蔵装置と接続手段によって電力を授受可能に接続され、且つ、装置充電手段によって、鉄道車両の車両蓄電手段の電力が電力貯蔵装置の装置蓄電手段に充電されている場合において、第1判定手段によって、鉄道車両の車両蓄電手段の電力量が、その鉄道車両の走行開始に必要な電力量より大きい第1閾値以下になったと判定されると、第1充電制御手段によって、装置充電手段による電力貯蔵装置への充電が止められる。よって、鉄道車両の走行開始に必要な電力量を、鉄道車両の車両蓄電手段に残して、鉄道車両から電力貯蔵装置への充電を終了できる。従って、電力貯蔵装置への充電後、車両蓄電手段に残された電力で鉄道車両を走行開始できる。また鉄道車両の走行開始後は、坂路を降坂する際に生じる回生電力を鉄道車両の車両蓄電手段に充電して、回生電力を有効に利用できるという効果がある。
【0009】
請求項3記載の電力授受システムによれば、請求項1又は2の効果に加え、次の効果を奏する。即ち、坂路を登坂してきた鉄道車両が、その坂路の途中に設置された電力貯蔵装置と接続手段によって電力を授受可能に接続され、且つ、車両充電手段によって、電力貯蔵装置の装置蓄電手段の電力が鉄道車両の車両蓄電手段に充電されている場合において、第2判定手段によって、鉄道車両の車両蓄電手段の電力量が、その鉄道車両の走行開始に必要な電力量より大きい第1閾値より大きく且つ鉄道車両の車両蓄電手段の満充電未満である所定の電力量を示す第2閾値以上になったと判定されると、第2充電制御手段によって、車両充電手段による鉄道車両への充電が止められる。よって、鉄道車両の車両蓄電手段を充電する場合に、車両蓄電手段が満充電状態になることや過充電されることを防止して、車両蓄電手段の劣化を抑制できるという効果がある。
【0010】
請求項4記載の電力貯蔵装置によれば、その電力貯蔵装置を電力授受システムに用いることにより、請求項1から3に対応する効果を奏する。
【0011】
請求項5記載の電力貯蔵装置によれば、請求項4の効果に加え、装置充電手段および車両充電手段の少なくとも一方を電力貯蔵装置に設けているので、それらの手段の少なくとも一方を鉄道車両に設ける必要がなく、鉄道車両を軽量化できる。よって、鉄道車両が走行中に受ける負荷を小さくして、鉄道車両の消費電力を小さくできるという効果がある。
【0012】
請求項6記載の鉄道車両によれば、その鉄道車両を電力授受システムに用いることにより、請求項1から3に対応する効果を奏する。また、これに加え、装置充電手段および車両充電手段の一方を鉄道車両に設けているので、装置充電手段および車両充電手段を共に鉄道車両に設ける場合と比較して、鉄道車両を軽量化できる。よって、鉄道車両が走行において受ける負荷を小さくして、鉄道車両の消費電力を小さくできる。従って、鉄道車両の車両蓄電手段に貯蔵される回生電力を効率良く利用できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の電力授受システムの一例を示す模式図であり、(b)は、電力授受システムにおいて電力の授受が行われる途中駅の拡大図である。
【図2】(a)は、ハイブリッド車両の電気的構成を示すブロック図であり、(b)は、電力貯蔵装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】(a)は、ハイブリッド車両が坂路を降坂する場合に、ハイブリッド車両および電力貯蔵装置の間で行われる電力の授受を示す模式図であり、(b)は、ハイブリッド車両が坂路を登坂する場合に、ハイブリッド車両および電力貯蔵装置の間で行われる電力の授受を示す模式図である。
【図4】ハイブリッド車両の制御装置で実行される指示実行処理を示すフローチャートである。
【図5】電力貯蔵装置の制御装置で実行される充放電制御処理を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、第2実施形態におけるハイブリッド車両の電気的構成を示すブロック図であり、(b)は、第2実施形態における電力貯蔵装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態における指示実行処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態における充放電制御処理を示すフローチャートである。
【図9】電力授受システムの変形例を示す電気ブロック図である。
【図10】電力授受システムの変形例を示す電気ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい第1実施形態について、図1から図5までの添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態である電力授受システムDSの一例を示す模式図である。図1(b)は、電力授受システムDSにおいて電力の授受が行われる途中駅Eの拡大図である。
【0015】
電力授受システムDSは、自車両のバッテリ9に貯蔵された電力やディーゼルエンジン発電機7で発電される電力で走行する鉄道車両であって、回生ブレーキにより発生する回生電力をバッテリ9に貯蔵して自車両の走行に用いるハイブリッド車両1と、そのハイブリッド車両1のバッテリ9に貯蔵された電力を充電し貯蔵する一方、その貯蔵した電力によりハイブリッド車両1のバッテリ9を充電することで、ハイブリッド車両1との間で電力の授受を行う電力貯蔵装置51とにより構成されている。
【0016】
尚、以下の説明では、ハイブリッド車両1から電力貯蔵装置51へ電力が移動する場合と、電力貯蔵装置51からハイブリッド車両1へ電力が移動する場合との両方の概念を含む場合に、電力の授受を行うと記載し、ハイブリッド車両1および電力貯蔵装置51の一方から他方へ電力が移動する場合には、充電を行うと記載する。
【0017】
電力授受システムDSは、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1において回生ブレーキが使用された場合に、その回生ブレーキの回生電力を失効させることなく有効に回収すると共に、一のハイブリッド車両1が坂路Raの降坂では使用しない余剰な電力を、一のハイブリッド車両1や別のハイブリッド車両1が坂路Raを登坂する場合に利用できるようにするものである。
【0018】
図1(a)に示すように、電力貯蔵装置51は、ハイブリッド車両1が登坂または降坂する坂路Raの途中にある駅(以後「途中駅」と称す)Eに設置される。尚、説明の便宜上、途中駅Eを境目として坂路Raを2つの区間に分け、途中駅Eよりも標高が高くなる方を坂路Ra1と記載し、途中駅Eよりも標高が低くなる方を坂路Ra2と記載する。また、本実施形態では、説明を判り易くするために、起伏のない坂路Raを例に挙げて説明するが、実際の坂路Raには、途中に起伏が含まれる。但し、坂路Raの登坂に伴って、ハイブリッド車両1がより標高の高い場所へ移動し、坂路Raの降坂に伴って、ハイブリッド車両1がより標高の低い場所へ移動する。
【0019】
詳細については後述するが、第1実施形態の電力授受システムDSでは、電力貯蔵装置51が主導となって電力の授受が行われる。より具体的には、ハイブリッド車両1が途中駅Eに到着した場合、ハイブリッド車両1は、電力貯蔵装置51との間で電力の授受が開始できるように、各装置を制御する。一方、電力貯蔵装置51は、ハイブリッド車両1が坂路Raを登坂するのか、降坂するのかに応じて、ハイブリッド車両1に貯蔵されている電力を電力貯蔵装置51に充電したり、電力貯蔵装置51に貯蔵されている電力をハイブリッド車両1に充電するように、各装置を制御する。
【0020】
まず、図1(b)および図2(a)を参照して、ハイブリッド車両1の構成と、その電気的構成について説明する。図2(a)は、ハイブリッド車両1の電気的構成を示すブロック図である。尚、図2(a),(b)に示す太い矢印は、各装置間の電力の流れを示している。
【0021】
図1(b)に示すように、ハイブリッド車両1は、ディーゼルエンジン発電機7と、電動モータ8と、バッテリ9と、電力供給制御装置10と、パンタグラフ11と、充電状況監視センサ12と、充放電開始終了スイッチ13と、制御装置30とを有している。
【0022】
バッテリ9は、ハイブリッド車両1を走行させる動力源となる電力を貯蔵する蓄電池であり、リチウムイオンバッテリで構成されている。電動モータ8や、制御装置30など、ハイブリッド車両1の各装置は、バッテリ9に貯蔵されている電力により動作する。
【0023】
ディーゼルエンジン発電機7は、ディーゼルエンジンにより発電機を駆動して発電を行う装置である。ディーゼルエンジン発電機7により発電される電力は、バッテリ9の充電や、ハイブリッド車両1の走行に用いられる。ディーゼルエンジン発電機7の始動および停止は、制御装置30によって制御される。
【0024】
電動モータ8は、車輪が連結された車軸に回転駆動力を付与し、車輪を前転または後転させ、ハイブリッド車両1を走行させるものである。電動モータ8には、バッテリ9に貯蔵された電力や、ディーゼルエンジン発電機7により発電される電力が、電力供給制御装置10によって供給される。電動モータ8は、その電力により駆動力を発生させ、ハイブリッド車両1を走行させる。
【0025】
また、電動モータ8は、車輪を駆動するだけでなく、発電機として動作させることで、走行中のハイブリッド車両1に制動をかける回生ブレーキとしても使用される。回生ブレーキにより発生する回生電力は、バッテリ9へ電力供給制御装置10により充電され、電動モータ8等を動作させるために用いられる。尚、電動モータ8を駆動用として動作させるか、又は、回生ブレーキとして動作させるかは、制御装置30によって制御される。
【0026】
電力供給制御装置10は、ハイブリッド車両1における各装置間の電力の流れを、制御装置30からの指示に応じて制御するものである。また、バッテリ9およびパンタグラフ11を電気的に接続したり、その接続解除の制御も行う。尚、接続解除とは、電気的な接続が遮断されることを意味する。
【0027】
具体的には、電力供給制御装置10は、制御装置30からの指示に応じて、バッテリ9に貯蔵されている電力を電動モータ8へ供給したり、電動モータ8が回生ブレーキとして使用された場合に発生する回生電力をバッテリ9へ充電する。また、バッテリ9とパンタグラフ11とを電気的に接続、又は、その接続を解除する。また、ディーゼルエンジン発電機7により発電された電力を電動モータ8へ供給したり、その発電された電力をバッテリ9へ充電する。
【0028】
充放電開始終了スイッチ13は、バッテリ9の電力を電力貯蔵装置51に、又は、電力貯蔵装置51の電力をバッテリ9に充電開始させる指示や、その充電終了の指示を、運転者等が行うためのスイッチである。充放電開始終了スイッチ13は、充電開始または充電終了の指示を制御装置30へ出力する。尚、充放電開始終了スイッチ13は、ハイブリッド車両1の前後方向にある各運転室に、それぞれ設けられている。
【0029】
パンタグラフ11は、電力貯蔵装置51との間で電力の授受を行う電路を形成する装置である。電力授受システムDSでは、パンタグラフ11と、後述する電力貯蔵装置51の架線78とを物理的に接触させることで、ハイブリッド車両1と電力貯蔵装置51とを電気的に接続し、電力の授受を行う電路を形成している。
【0030】
パンタグラフ11は、ハイブリッド車両1の屋根に設置されており、制御装置30からの指示に応じて、伸張した状態、または、折り畳まれた状態に切り替え可能に構成されている。パンタグラフ11は、伸張した状態へ切り替えるよう指示されると、途中駅Eに設けられた架線78に接触する部分であるスライダーを上昇させる。スライダーと架線78とが物理的に接触すると、パンタグラフ11と電力貯蔵装置51とが電気的に接続される。一方、折り畳まれた状態へ切り替えるよう指示されると、スライダーを下降させる。
【0031】
充電状況監視センサ12は、ハイブリッド車両1のバッテリ9が電力貯蔵装置51に貯蔵されている電力で充電中であるか、又は、電力貯蔵装置51がバッテリ9に貯蔵されている電力で充電中であるかを、制御装置30が監視するためのセンサである。
【0032】
充電状況監視センサ12は、電力供給制御装置10およびパンタグラフ11間に電流が流れているか否かを、制御装置30へ出力する。ハイブリッド車両1や電力貯蔵装置51のバッテリ9,76が充電される場合には、電力供給制御装置10およびパンタグラフ11間に電流が流れる。一方、バッテリ9,76の充電が終了した場合には、電流の流れが止まる。そこで、充電状況監視センサ12により電流が検出されている間は、制御装置30では、充電中であると判定し、検出されていた電流が検出されなくなった場合に、制御装置30では、充電が終了したと判定する。
【0033】
制御装置30は、ハイブリッド車両1の各装置を制御して、ハイブリッド車両1の走行や、ハイブリッド車両1における電力の流れを制御する装置である。また、電力貯蔵装置51との間の電力の授受や、回生ブレーキにより発生した回生電力のバッテリ9への充電などの制御も行う。
【0034】
図2(a)に示すように、制御装置30は、CPU31、フラッシュメモリ32、及び、RAM33を備え、これらがバスライン34を介して入出力ポート35にそれぞれ接続されている。入出力ポート35には、ディーゼルエンジン発電機7と、電動モータ8と、電力供給制御装置10と、パンタグラフ11と、充電状況監視センサ12と、充放電開始終了スイッチ13とが接続されている。また、電力供給制御装置10には、ディーゼルエンジン発電機7と、電動モータ8と、バッテリ9と、パンタグラフ11とが接続されている。
【0035】
CPU31は、バスライン34により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュメモリ32は、CPU31により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリである。尚、後述する図4のフローチャートに示す指示実行処理を実行するプログラムは、フラッシュメモリ32に格納されている。RAM33は、CPU31がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0036】
次に、図1(b)および図2(b)を参照して、電力貯蔵装置51の構成と、その電気的構成について説明する。図2(b)は、電力貯蔵装置51の電気的構成を示すブロック図である。図1(b)に示すように、電力貯蔵装置51は、バッテリ76と、充電装置77と、架線78と、充電状況監視センサ79と、車両用バッテリ残量検出センサ80と、車両進行方向検出センサ81と、制御装置70とを有している。
【0037】
バッテリ76は、ハイブリッド車両1のバッテリ9に貯蔵されている電力のうち、余剰な電力を貯蔵するための蓄電池であり、リチウムイオンバッテリで構成されている。バッテリ76は、ハイブリッド車両1のバッテリ9と比較して、蓄電容量が十分に大きい(例えば、5倍以上)ものを使用している。
【0038】
架線78は、ハイブリッド車両1との間で電力の授受を行う電路を形成する装置である。本実施形態では、架線78は、ハイブリッド車両1との間で電力の授受が行われる途中駅Eの構内にだけ設けられている。架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラグ11とが物理的に接触すると、電力貯蔵装置51は、架線78を介して、ハイブリッド車両1と電気的に接続される。
【0039】
車両進行方向検出センサ81は、途中駅Eへ進入してくるハイブリッド車両1の進行方向を検出するためのセンサである。車両進行方向検出センサ81は、複数の近接センサ(図示せず)により構成されている。近接センサとは、センサの検出方向に、対象物が存在するか否かを検出するものである。各近接センサは、その検出方向を下に向けて、架線78と同様の高さに、ハイブリッド車両1の走行経路に沿って一列に設置されている。即ち、ハイブリッド車両1が近接センサの下方を通過した場合に、その通過方向を検出できるように設置されている。
【0040】
仮に、ハイブリッド車両1が一方向から途中駅Eへ進入してくると、各近接センサでは、所定の順序でハイブリッド車両1が検出されていく。一方、ハイブリッド車両1が、前記一方向の反対方向から途中駅Eへ進入してくると、各近接センサでは、前記所定の順序とは逆の順序で、ハイブリッド車両1が検出されていく。
【0041】
よって、各近接センサがハイブリッド車両1を検出する順序に着目することで、途中駅Eにおけるハイブリッド車両1の進入方向を判定できる。途中駅Eと、坂路Raとの位置関係は予め決まっているので、途中駅Eにおけるハイブリッド車両1の進入方向が判れば、ハイブリッド車両1が坂路Raを登坂するのか、降坂するのかを判定できる。車両進行方向検出センサ81は、一列に並ぶ各近接センサについてハイブリッド車両1の検出順を、検出結果として制御装置70へ出力する。制御装置70では、その検出結果がRAM73に記憶され、ハイブリッド車両1が坂路Raを登坂するのか、降坂するのかを判定するために用いられる。
【0042】
車両用バッテリ残量検出センサ80は、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電圧値を、そのバッテリ9の残量(残存している電力量)として検出し、その検出結果を制御装置70へ出力するセンサである。尚、バッテリの電圧値と、バッテリの残量との関係(例えば、放電特性グラフ)は、製造元などからバッテリの仕様として公表されているので、バッテリの電圧値が決まれば、バッテリの残量が決まる。制御装置70では、車両用バッテリ残量検出センサ80により検出される残量に基づいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が、そのバッテリ9の全容量の何%であるかが算出される。
【0043】
また、車両用バッテリ残量検出センサ80の検出結果は、架線78にハイブリッド車両1のバッテリ9が接続されたか否かを、制御装置70が確認するためにも用いられる。詳細については後述するが、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが接続される場合、ハイブリッド車両1では、パンタグラフ11とバッテリ9とが電気的に接続されるため、架線78には、バッテリ9の電圧が印加される。一方、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが接続されていない場合には、架線78には、電圧が印加されない(即ち、電圧は0V)。そこで、架線78に電圧が印加されていない状態から、架線78にバッテリ9の電圧が印加された状態へと変化した場合は、制御装置70では、架線78とハイブリッド車両1のバッテリ9とが接続されたと判定する。
【0044】
制御装置70は、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11が架線78に接触した場合に充電装置77を動作させ、ハイブリッド車両1のバッテリ9に貯蔵されている電力が電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電されるように、又は、バッテリ76に貯蔵されている電力がバッテリ9に充電されるように制御するための装置である。
【0045】
図2(b)に示すように、制御装置70は、CPU71、フラッシュメモリ72、及び、RAM73を備え、これらがバスライン74を介して入出力ポート75にそれぞれ接続されている。入出力ポート75には、充電装置77と、充電状況監視センサ79と、車両用バッテリ残量検出センサ80と、車両進行方向検出センサ81とが接続されている。
【0046】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュメモリ72は、CPU71により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリである。尚、後述する図5のフローチャートに示す充放電制御処理を実行するプログラムは、フラッシュメモリ72に格納されている。RAM73は、CPU71がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0047】
充電装置77は、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する充電器である電力貯蔵装置用充電器77aと、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する充電器である車両用充電器77bとにより構成されており、各充電器77a,77bの始動および停止は、制御装置70によって制御される。電力貯蔵装置用充電器77aの入力部は、架線78と接続されており、電力貯蔵装置用充電器77aの出力部は、バッテリ76と接続されている。また、車両用充電器77bの入力部は、バッテリ76と接続されており、車両用充電器77bの出力部は、架線78と接続されている。
【0048】
電力貯蔵装置用充電器77aは、架線78を介して接続されるハイブリッド車両1のバッテリ9の電力で、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する。一方、車両用充電器77bは、電力貯蔵装置51のバッテリ76の電力で、架線78を介して接続されるハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する。
【0049】
充電状況監視センサ79は、ハイブリッド車両1のバッテリ9が電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力で充電中であるか、又は、電力貯蔵装置51のバッテリ76がハイブリッド車両1のバッテリ9に貯蔵されている電力で充電中であるかを、制御装置80が監視するためのセンサである。
【0050】
充電状況監視センサ79は、架線78および電力貯蔵装置用充電器77a間に電流が流れているか否かと、架線78および車両用充電器77b間に電流が流れているか否かとを、それぞれ個別に制御装置70へ出力する。
【0051】
電力貯蔵装置用充電器77aまたは車両用充電器77bによる充電中は、充電状況監視センサ79により電流が検出されるが、仮に、パンタグラフ11と架線78との接続が解除されると、検出されていた電流の流れが止まる。そこで、電力貯蔵装置用充電器77aまたは車両用充電器77bの作動中に、検出されていた電流が検出されなくなった場合は、制御装置70では、パンタグラフ11と架線78との接続が解除されたと判定する。
【0052】
次に、図3を参照して、ハイブリッド車両1および電力貯蔵装置51の間で行われる電力の授受について説明する。図3(a)は、ハイブリッド車両1が坂路Ra(Ra1,Ra2)を降坂する場合に、ハイブリッド車両1および電力貯蔵装置51の間で行われる電力の授受を示す模式図である。図3(b)は、ハイブリッド車両1が坂路Raを登坂する場合に、ハイブリッド車両1および電力貯蔵装置51の間で行われる電力の授受を示す模式図である。尚、図3(a),(b)に示す太い矢印は、各装置間の電力の流れを示している。
【0053】
まず、図3(a)を参照して、ハイブリッド車両1が坂路Raを降坂する場合について説明する。ハイブリッド車両1が坂路Raを降坂する場合は、自重により降坂し続けるため、何もせずに走行し続けると、徐々に走行速度が上昇し、最終的には制限速度を超えてしまう。そのため、ハイブリッド車両1では、坂路Raを降坂する場合、電動モータ8を回生ブレーキとして用い、連続的または断続的に制動をかける。
【0054】
つまり、坂路Ra1,Ra2を降坂する間は、電動モータ8の駆動はあまり行わず、電動モータ8を回生ブレーキとして動作するよう制御し、回生ブレーキにより発生する回生電力をバッテリ9に充電する。よって、バッテリ9では、消費される電力よりも充電される電力の方が多くなり、バッテリ9の残量が上昇していく。
【0055】
従って、ハイブリッド車両1が坂路Ra1,Ra2を降坂している場合に、その途中でバッテリ9が満充電状態になるおそれがあり、その場合は、回生ブレーキにより発生する回生電力をバッテリ9に充電できなくなり、回生電力を失効させてしまう。そこで、本実施形態では、ハイブリッド車両1が途中駅Eに到着した場合に、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、ハイブリッド車両1のバッテリ9から、電力貯蔵装置51のバッテリ76に移動させている。
【0056】
これにより、ハイブリッド車両1のバッテリ9において、回生電力を貯蔵するための空き容量を増やせるので、引き続き、ハイブリッド車両1が坂路Ra2を降坂する場合に、バッテリ9が満充電状態になって、バッテリ9を充電できなくなり、ハイブリッド車両1の回生電力が失効することを抑制できる。
【0057】
ハイブリッド車両1が途中駅Eに到着し、運転者等により充放電開始終了スイッチ13が操作され、充電開始が指示されると、ハイブリッド車両1の制御装置30は、パンタグラフ11に対して、伸張した状態へ切り替えるよう指示する。この指示により、パンタグラフ11が、スライダーを上昇させると、パンタグラフ11と架線78とが物理的に接触し、電気的に接続される。
【0058】
また、ハイブリッド車両1の制御装置30は、電力供給制御装置10に対して、バッテリ9とパンタグラフ11とを電気的に接続するよう指示する。この指示により、電力供給制御装置10が、バッテリ9とパンタグラフ11とを電気的に接続すると、バッテリ9と架線78とが電気的に接続される。
【0059】
電力貯蔵装置51の制御装置70は、架線78にパンタグラフ11を接続したハイブリッド車両1が、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1であると判定した場合、充電装置77の電力貯蔵装置用充電器77aを作動させ、架線78を介し、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力で、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する。
【0060】
その後、運転者等により充放電開始終了スイッチ13が操作され、充電終了が指示されると、ハイブリッド車両1の制御装置30は、電力供給制御装置10に対して、バッテリ9とパンタグラフ11との接続を解除するよう指示する。また、パンタグラフ11に対して、折り畳まれた状態へ切り替えるよう指示する。その結果、パンタグラフ11およびバッテリ9間の電気的な接続が解除され、パンタグラフ11が折り畳まれる。一方、電力貯蔵装置51の制御装置70は、架線78とパンタグラフ11との接続が解除されると、充電装置77の電力貯蔵装置用充電器77aを停止させる。
【0061】
次に、図3(b)を参照して、ハイブリッド車両1が坂路Raを登坂する場合について説明する。図3(b)に示すように、ハイブリッド車両1が坂路Ra1,Ra2を登坂する場合、バッテリ9の電力で電動モータ8を駆動して走行する。そのため、ハイブリッド車両1では、走行に伴ってバッテリ9の残量が低下していく。
【0062】
そこで、本実施形態では、ハイブリッド車両1が途中駅Eに到着した場合に、電力貯蔵装置51のバッテリ76の電力で、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電している。上述したように、電力貯蔵装置51のバッテリ76には、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力が貯蔵されている。本実施形態では、その余剰な電力として貯蔵された電力を、ハイブリッド車両1が坂路Ra1を登坂する場合にその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。
【0063】
ハイブリッド車両1が途中駅Eに到着し、運転者等により充放電開始終了スイッチ13が操作され、充電開始が指示されると、ハイブリッド車両1の制御装置30は、坂路Raを降坂する場合と同様な指示を、パンタグラフ11および電力供給制御装置10に対して指示する。
【0064】
電力貯蔵装置51の制御装置70は、架線78にパンタグラフ11を接続したハイブリッド車両1が、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1であると判定した場合、充電装置77の車両用充電器77bを作動させ、架線78を介し、電力貯蔵装置51のバッテリ76の電力で、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する。
【0065】
その後、運転者等により充放電開始終了スイッチ13が操作され、充電終了が指示されると、ハイブリッド車両1の制御装置30は、坂路Raを降坂する場合と同様な指示を、電力供給制御装置10およびパンタグラフ11に対して指示する。その結果、パンタグラフ11およびバッテリ9間の電気的な接続が解除され、パンタグラフ11が折り畳まれる。一方、電力貯蔵装置51の制御装置70は、架線78とパンタグラフ11との接続が解除されると、充電装置77の車両用充電器77bを停止させる。
【0066】
次に、図4を参照して、ハイブリッド車両1における制御装置30のCPU31により実行される指示実行処理について説明する。図4は、ハイブリッド車両1の指示実行処理を示すフローチャートである。
【0067】
この処理は、ハイブリッド車両1のバッテリ9や、電力貯蔵装置51のバッテリ76を、電力貯蔵装置51に設けた充電装置77により充電できるように、バッテリ9を電力貯蔵装置51の架線78に電気的に接続するための処理である。この処理は、運転者等により充放電開始終了スイッチ13が操作され、バッテリ9,バッテリ76の充電開始が指示された場合に実行される。
【0068】
指示実行処理では、CPU31は、まず、パンタグラフ11に対して伸張した状態へ切り替えるよう指示し、パンタグラフ11のスライダーを上昇させる(S1)。そして、パンタグラフ11と、ハイブリッド車両1のバッテリ9とが電気的に接続されるよう、電力供給制御装置10に対して指示する(S2)。これにより、ハイブリッド車両1のバッテリ9と、電力貯蔵装置51の架線78とが電気的に接続されるため、電力貯蔵装置51の充電装置77により、バッテリ9,76の充電を実行できる。
【0069】
次に、CPU31は、運転者等により充放電開始終了スイッチ13が操作され、バッテリ9,76の充電終了が指示されたかを判定する(S3)。S3の処理において、充電終了が指示された場合(S3:Yes)、電力貯蔵装置51との電力の授受を終了するために、CPU31は、S5の処理へ移行する。一方、充電終了が指示されていない場合は(S3:No)、充電状況監視センサ12による電流の検出状態から、電力貯蔵装置51によるバッテリ9,76の充電が終了したかを判定する(S4)。尚、本処理を開始してから充電状況監視センサ12により電流が検出されるまでの間は、電力貯蔵装置51によるバッテリ9,76の充電は終了していないと判定する。
【0070】
本実施形態では、運転者などの指示に基づいて、電力貯蔵装置51によりバッテリ9,76の充電が実行される他、運転者などの指示に関係なく、電力貯蔵装置51において充電が終了される場合がある。この終了を判定するために、S4の処理を行っている。
【0071】
S4の処理において、電力貯蔵装置51によるバッテリ9,76の充電が終了していない場合(S4:No)、CPU31は、S3の処理に戻る。一方、電力貯蔵装置51によるバッテリ9,76の充電が終了した場合は(S4:Yes)、S5の処理へ移行する。S5の処理では、CPU31は、パンタグラフ11と、ハイブリッド車両1のバッテリ9との電気的な接続が解除されるよう、電力供給制御装置10を制御する(S5)。
【0072】
次に、CPU31は、パンタグラフ11に対して折り畳まれた状態へ切り替えるよう指示を出力し、パンタグラフ11のスライダーを下降させて折り畳まれた状態に戻す(S6)。そして、本処理を終了する。
【0073】
次に、図5を参照して、電力貯蔵装置51における制御装置70のCPU71により実行される充放電制御処理について説明する。図5は、電力貯蔵装置51の充放電制御処理を示すフローチャートである。
【0074】
この処理は、電力貯蔵装置51の充電装置77により、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1のバッテリ9の電力を電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電する、また、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1のバッテリ9に充電するための処理である。
【0075】
この処理は、架線78と、ハイブリッド車両1のバッテリ9とが電気的に接続された場合に実行される。上述したように、架線78と、ハイブリッド車両1のバッテリ9とが電気的に接続されたか否かは、車両用バッテリ残量検出センサ80の検出結果に基づいて判定する。
【0076】
充放電制御処理では、CPU71は、まず、RAM73から、車両進行方向検出センサ81による検出結果(ハイブリッド車両1の進入方向)を取得する(S11)。そして、その検出結果に基づいて、架線78にパンタグラフ11を接続したハイブリッド車両1が、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1であるか、又は、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1であるかを特定する(S12)。
【0077】
次に、CPU71は、S12の処理による特定の結果、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1であると特定されたかを判定する(S13)。S13の処理において、S12の処理による特定の結果、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1であると特定された場合(S13:Yes)、CPU71は、車両用バッテリ残量検出センサ80の検出結果に基づいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が50%以上であるかを判定する(S14)。
【0078】
S14の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が50%未満である場合(S14:No)、CPU71は、バッテリ9の電力で電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電せずに、本処理を終了する。一方、S14の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が50%以上である場合(S14:Yes)、バッテリ9の電力で電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電するために、S15の処理へ移行する。
【0079】
詳細については、後述するS17の処理で説明するが、本処理では、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力で電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する場合、バッテリ9の残量が40%以下になれば、その充電を終了させている。そのため、そもそも、バッテリ9の残量が40%を下回っている場合や、40%と殆ど変わらない場合には、充電開始しても直ぐに充電が終了してしまい、充電する意味がない。そこで、このような場合には、充電しないようにする。一方、バッテリ9の残量が50%以上あり、バッテリ9の電力で電力貯蔵装置51のバッテリ76を問題なく充電できる場合には、充電を開始する。
【0080】
S15の処理では、CPU71は、電力貯蔵装置用充電器77aを作動させ、ハイブリッド車両1のバッテリ9に貯蔵されている電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電する(S15)。これにより、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電できる。
【0081】
そして、CPU71は、充電状況監視センサ79による電流の検出状態から、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11との接続が解除されたかを判定する(S16)。本実施形態では、運転者などにより、充電終了が指示された場合、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11と、架線78との接続が解除される。この指示がなされたかを判定するために、S16の処理を行っている。
【0082】
S16の処理において、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11との接続が解除された場合は(S16:Yes)、これ以上、バッテリ76の充電を継続できない。そのため、この場合、バッテリ76の充電作業を終了させるために、CPU71は、S18の処理へ移行する。一方、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが接続されている場合は(S16:No)、車両用バッテリ残量検出センサ80の検出結果に基づいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が40%以下になったかを判定する(S17)。
【0083】
S17の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が40%を超えている場合(S17:No)、CPU71は、S16の処理に戻って、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電を継続する。一方、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が40%以下になった場合は(S17:Yes)、S18の処理へ移行する。S18の処理では、CPU71は、電力貯蔵装置用充電器77aを停止させる(S18)。そして、本処理を終了する。
【0084】
このように本実施形態では、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が40%以下になった場合に、電力貯蔵装置用充電器77aを停止させて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が低下し過ぎないように制御している。
【0085】
これは、ハイブリッド車両1が途中駅Eを出発する場合に、電動モータ8の始動に必要な電力を確保するためである。電動モータ8にかかる負荷は走行中よりも始動時の方が大きく、電動モータ8の始動時には、電動モータ8において大電力が消費される。仮に、電動モータ8へ供給される電力が不足する場合には、わざわざ、ディーゼルエンジン発電機7を作動させ発電を行うことになる。
【0086】
そこで、本実施形態では、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力を電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電する場合に、ハイブリッド車両1が問題無く走行開始できるように、電動モータ8の始動に必要な電力をバッテリ9に残すように制御している。例えば、本実施形態のハイブリッド車両1では、走行開始時に必要な電力はバッテリ9の残量30%に対応する電力である。S17の処理では、これにマージンを持たせて、バッテリ9の残量が40%以下となったところで、ハイブリッド車両1のバッテリ9から電力貯蔵装置51のバッテリ76への充電を停止させている。
【0087】
これにより、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力を電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電した結果、ハイブリッド車両1において走行開始に必要な電力が不足することを防止できる。よって、走行開始時に、わざわざ、ディーゼルエンジン発電機7を作動させて、電力を確保する必要がないので、余計な燃料の消費を抑制できる。
【0088】
S13の処理において、S12の処理による特定の結果、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1であると特定された場合(S13:No)、CPU71は、車両用充電器77bを動作させ、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、ハイブリッド車両1のバッテリ9に充電する(S19)。これにより、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力であって、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、坂路Ra1を登坂するハイブリッド車両1がその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。
【0089】
次に、CPU71は、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11との接続が解除されたかを判定する(S20)。S20の処理では、S16の処理と同様に判定を行う。S20の処理において、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11との接続が解除された場合は(S20:Yes)、これ以上、バッテリ9の充電を継続できない。そのため、この場合、バッテリ9の充電作業を終了させるために、CPU71は、S22の処理へ移行する。一方、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが接続されている場合は(S20:No)、車両用バッテリ残量検出センサ80の検出結果に基づいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が80%以上になったかを判定する(S21)。
【0090】
S21の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が80%未満の場合(S21:No)、CPU71は、S20の処理に戻り、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電を継続する。一方、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が80%以上になった場合は(S21:Yes)、S22の処理へ移行する。S22の処理では、車両用充電器77bを停止させ(S22)、本処理を終了する。
【0091】
このように本実施形態では、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電中に、そのバッテリ9の残量が80%以上になった場合は、車両用充電器77bを停止させて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が上昇し過ぎないように制御している。
【0092】
バッテリ9が満充電状態になったり、バッテリ9が過充電されると、バッテリ9の劣化がより早く進行する。そこで、本実施形態では、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電中に、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が80%以上になれば、バッテリ9の充電を終了するように制御している。よって、バッテリ9が満充電状態になることや、バッテリ9が過充電されることを防止できるので、ハイブリッド車両1のバッテリ9の劣化を抑制できる。
【0093】
以上説明したように、第1実施形態では、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、途中駅Eにおいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9から、電力貯蔵装置51のバッテリ76に移動させることができる。これにより、ハイブリッド車両1のバッテリ9において、回生電力を貯蔵するための空き容量を増やせるので、引き続き、ハイブリッド車両1が坂路Ra2を降坂する場合に、回生電力が失効することを抑制できる。
【0094】
そして、ハイブリッド車両1が坂路Raを登坂する場合、即ち、ハイブリッド車両1が電力を必要とする場合に、途中駅Eにおいて、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、ハイブリッド車両1のバッテリ9に移動させることができる。よって、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力であって、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、坂路Ra1を登坂するハイブリッド車両1がその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。また、複数台のハイブリッド車両1が坂路Raを走行している場合には、その余剰な電力を自車両1だけでなく、他のハイブリッド車両1においても坂路Ra1の登坂に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。
【0095】
また、電力貯蔵装置51側に、電力貯蔵装置用充電器77aと、車両用充電器77bとをそれぞれ設けている。よって、ハイブリッド車両1に電力貯蔵装置用充電器77aと、車両用充電器77bとを設ける必要がないため、ハイブリッド車両1を軽量化できる。従って、ハイブリッド車両1が走行において受ける負荷を軽減できるので、ハイブリッド車両1の消費電力を小さくできる。
【0096】
また、本実施形態では、ハイブリッド車両1と、電力貯蔵装置51との間で電力の授受を行う電路として、パンタグラフ11と、架線78とを利用している。このように、既存の設備を利用することで、ハイブリッド車両1と、電力貯蔵装置51との製造コストを抑制できる。
【0097】
次に、本発明の第2実施形態について、図6から図8までの添付図面を参照して説明する。尚、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同一の部分については同一の符号付してその説明を省略する。
【0098】
上述した第1実施形態は、電力貯蔵装置51側に、電力貯蔵装置用充電器77aと、車両用充電器77bとを共に設けるという形態であった。これに対して、第2実施形態は、ハイブリッド車両1側に電力貯蔵装置用充電器101を設け、電力貯蔵装置51側に車両用充電器105を設けるという形態である。即ち、ハイブリッド車両1により、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電し、電力貯蔵装置51により、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電するという形態である。
【0099】
まず、図6を参照し、第2実施形態のハイブリッド車両1の構成について説明する。図6(a)は、第2実施形態におけるハイブリッド車両1の電気的構成を示すブロック図である。尚、図6(a),(b)に示す太い矢印は、各装置間の電力の流れを示している。
【0100】
第2実施形態のハイブリッド車両1は、第1実施形態のハイブリッド車両1の構成に加え、電力貯蔵装置用充電器101と、バッテリ残量検出センサ102とを有している。また、第1実施形態の電力供給制御装置10に代えて、電力供給制御装置100が設けられている。
【0101】
また、第1実施形態の充放電開始終了スイッチ13に代えて、電力貯蔵装置充電スイッチ103と、車両充電スイッチ104とが設けられている。尚、電力貯蔵装置充電スイッチ103と、車両充電スイッチ104とは、ハイブリッド車両1の前後方向にある各運転室にそれぞれ設けられている。
【0102】
ハイブリッド車両1における制御装置30の入出力ポート35には、上述したディーゼルエンジン発電機7と、電動モータ8と、パンタグラフ11と、充電状況監視センサ12とに加え、電力供給制御装置100と、電力貯蔵装置用充電器101と、バッテリ残量検出センサ102と、電力貯蔵装置充電スイッチ103と、車両充電スイッチ104とが接続されている。また、フラッシュメモリ32には、図4に示す指示実行処理に代えて、後述する図7のフローチャートに示す指示実行処理を実行するプログラムが格納されている。
【0103】
電力貯蔵装置用充電器101は、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する充電器であり、制御装置30からの指示に応じて、作動および停止が制御される。電力貯蔵装置用充電器101は、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力で、パンタグラフ11を介して接続される電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する。電力貯蔵装置用充電器101の入力部は、電力供給制御装置100と接続されており、電力貯蔵装置用充電器101の出力部は、パンタグラフ11と接続されている。

電力供給制御装置100は、第1実施形態の電力供給制御装置10と同様に、制御装置30からの指示に応じて、各装置間の電力の流れを制御したり、バッテリ9およびパンタグラフ11間の接続や、その接続解除の制御を行う。電力供給制御装置100には、上述したディーゼルエンジン発電機7と、電動モータ8と、バッテリ9と、パンタグラフ11とに加え、電力貯蔵装置用充電器101が接続されている。
【0104】
電力供給制御装置100は、制御装置30からの指示に応じて、バッテリ9と電力貯蔵装置用充電器101の入力部とを電気的に接続、又は、その接続を解除する。
【0105】
バッテリ残量検出センサ102は、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電圧値を、バッテリ9の残量(残存している電力量)として検出し、その検出結果を制御装置30へ出力するセンサである。バッテリ残量検出センサ102は、第1実施形態のバッテリ残量検出センサ80(図2(b)参照)と同様に構成されているため、その説明は省略する。
【0106】
電力貯蔵装置充電スイッチ103は、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始や、その終了を運転者等が指示するためのスイッチである。電力貯蔵装置充電スイッチ103は、運転者等により入力された指示を制御装置30へ出力する。車両充電スイッチ104は、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電開始や、その終了を運転者等が指示するためのスイッチである。車両充電スイッチ104は、運転者等により入力された指示を制御装置30へ出力する。
【0107】
次に、図6(b)を参照して、第2実施形態の電力貯蔵装置51の構成について説明する。図6(b)は、第2実施形態における電力貯蔵装置51の電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態の電力貯蔵装置51は、第1実施形態の電力貯蔵装置51の構成に加え、車両用充電器105と、電磁開閉器106とを有している。一方、第1実施形態の充電装置77と、車両進行方向検出センサ81とは除かれている。
【0108】
電力貯蔵装置51における制御装置70の入出力ポート75には、車両用充電器105と、電磁開閉器106と、充電状況監視センサ79と、車両用バッテリ残量検出センサ80とが接続されている。また、フラッシュメモリ72には、図5に示す充放電制御処理に代えて、後述する図8のフローチャートに示す充放電制御処理を実行するプログラムが格納されている。
【0109】
車両用充電器105は、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する充電器であり、制御装置70からの指示に応じて、作動および停止が制御される。車両用充電器105は、電力貯蔵装置51のバッテリ76の電力で、架線78を介して接続されるハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する。車両用充電器105の入力部は、バッテリ76と接続されており、車両用充電器105の出力部は、架線78と接続されている。
【0110】
電磁開閉器106は、架線78とバッテリ76とを電気的に接続、又は、電気的に遮断するものであり、制御装置70からの指示に応じて、接続や遮断が制御される。電磁開閉器106の一端は、架線78と接続されており、電磁開閉器106の他端は、バッテリ76と接続されている。
【0111】
車両用バッテリ残量検出センサ80は、第1実施形態の場合と同様に、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量(残存している電力量)を検出するためと、架線78に印加される電圧を確認するためとに用いられる。
【0112】
ハイブリッド車両1の電力貯蔵装置用充電器101により、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が開始される場合には、ハイブリッド車両1において電力貯蔵装置用充電器101が作動する。そのため、バッテリ76を充電するための電圧、即ち、電力貯蔵装置用充電器101の出力電圧が、パンタグラフ11を介して架線78に印加される。一方、電力貯蔵装置51の車両用充電器105により、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する場合には、ハイブリッド車両1においてバッテリ9とパンタグラフ11とが接続される。そのため、バッテリ9の電圧が、パンタグラフ11を介して架線78に印加される。
【0113】
バッテリを充電するためには、そのバッテリの公称電圧よりも数ボルト高い電圧で充電を行わなければならないが、充電が終了しても、バッテリの電圧は、公称電圧と同様か、それよりも低い電圧となってしまう。そのため、ハイブリッド車両1のバッテリ9の公称電圧と、電力貯蔵装置51のバッテリ76の公称電圧とが同一になるように構成した場合、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電圧は、電力貯蔵装置用充電器101の出力電圧よりも低い電圧となる。
【0114】
従って、この場合、制御装置70では、架線78に印加される電圧に着目することで、ハイブリッド車両1の電力貯蔵装置用充電器101により、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が開始されるか否かを判定できる。なお、ハイブリッド車両1のバッテリ9と、電力貯蔵装置51のバッテリ76との公称電圧が異なる場合には、例えば、電力貯蔵装置用充電器101の出力電圧を調整して、バッテリ9の電圧値と区別できるように構成する。
【0115】
充電状況監視センサ79は、第2実施形態では、架線78および車両用充電器105間に電流が流れているか否かと、架線78および電磁開閉器106間に電流が流れているか否かとを、それぞれ個別に制御装置70へ出力する。
【0116】
車両用充電器105によりハイブリッド車両1のバッテリ9を充電している間は、充電状況監視センサ79により電流が検出されるが、仮に、パンタグラフ11と架線78との接続が解除されると、電流の流れが止まる。よって、このような状況で、検出されていた電流が検出されなくなった場合は、制御装置70では、パンタグラフ11と架線78との接続が解除されたと判定する。
【0117】
また、ハイブリッド車両1の電力貯蔵装置用充電器101により電力貯蔵装置51のバッテリ76が充電されている間は、充電状況監視センサ79により電流が検出されるが、その充電が終了した場合や、パンタグラフ11と架線78との接続が解除された場合には、電流の流れが止まる。よって、このような状況で、検出されていた電流が検出されなくなった場合は、制御装置70では、ハイブリッド車両1によるバッテリ76の充電が終了した、又は、パンタグラフ11と架線78との接続が解除されたと判定する。
【0118】
次に、図7を参照して、第2実施形態におけるハイブリッド車両1の制御装置30により実行される指示実行処理について説明する。図7は、第2実施形態におけるハイブリッド車両1の指示実行処理を示すフローチャートである。尚、第2実施形態では、第1実施形態と同一の処理を実行するステップについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0119】
第2実施形態の指示実行処理は、バッテリ9については電力貯蔵装置51に設けた車両用充電器105により充電できるように、バッテリ76についてはハイブリッド車両1に設けた電力貯蔵装置用充電器101により充電できるように、バッテリ9をパンタグラフ11や電力貯蔵装置用充電器101の入力部に電気的に接続したり、電力貯蔵装置用充電器101を作動させるための処理である。
【0120】
この処理は、運転者等により電力貯蔵装置充電スイッチ103が操作されて、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始が指示された場合と、運転者等により車両充電スイッチ104が操作されて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電開始が指示された場合とに実行される。
【0121】
指示実行処理では、CPU31は、まず、パンタグラフ11に対して伸張した状態へ切り替えるよう指示し、パンタグラフ11のスライダーを上昇させる(S1)。次に、電力貯蔵装置充電スイッチ103が操作されて、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始が指示されたかを判定する(S31)。S31の処理において、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始が指示された場合(S31:Yes)、CPU31は、バッテリ残量検出センサ102の検出結果に基づいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が50%以上であるかを判定する(S32)。
【0122】
S32の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が50%未満である場合は(S32:No)、バッテリ9の電力で電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電せず、S6の処理を実行してパンタグラフ11のスライダーを下降させ、本処理を終了する。一方、S32の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が50%以上である場合は(S32:Yes)、バッテリ9の電力で電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電するために、S33の処理へ移行する。
【0123】
S32の処理を行うことで、第1実施形態におけるS14の処理の場合と同様に、バッテリ9の残量が40%を下回っていたり、40%と殆ど変わらず、充電開始しても直ぐに充電が終了してしまい、充電する意味がない場合に、充電しないようにできる。一方、バッテリ9の残量が50%以上あり、バッテリ9の電力で電力貯蔵装置51のバッテリ76を問題なく充電できる場合に、充電を開始できる。
【0124】
S33の処理では、CPU31は、電力貯蔵装置用充電器101の入力部と、ハイブリッド車両1のバッテリ9とが電気的に接続されるよう、電力供給制御装置100を制御する(S33)。次に、CPU31は、電力貯蔵装置用充電器101を作動させ、ハイブリッド車両1のバッテリ9に貯蔵されている電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電する(S34)。
【0125】
詳細については、後述する図8で説明するが、電力貯蔵装置用充電器101により、電力貯蔵装置51のバッテリ76が充電される場合、電力貯蔵装置51側では、架線78と、バッテリ76とが電気的に接続される。よって、S33およびS34の処理を実行することで、パンタグラフ11を介して、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電できる。従って、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電できる。
【0126】
そして、CPU31は、電力貯蔵装置充電スイッチ103が操作されて、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電終了が指示されたかを判定する(S35)。S35の処理において、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電終了が指示された場合は(S35:Yes)、バッテリ76の充電作業を終了させるために、CPU31は、S37の処理へ移行する。一方、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電終了が指示されていない場合は(S35:No)、バッテリ残量検出センサ102の検出結果に基づいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が40%以下になったかを判定する(S36)。
【0127】
S36の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が40%を超えている場合(S36:No)、CPU31は、S35の処理に戻り、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電を継続する。一方、ハイブリッド車両1のバッテリ9の残量が40%以下になった場合は(S36:Yes)、S37の処理へ移行する。S37の処理では、CPU31は、電力貯蔵装置用充電器101を停止させる(S37)。
【0128】
これにより、第1実施形態の場合と同様に、ハイブリッド車両1の走行開始時に、バッテリ9に貯蔵されている回生電力を含む電力を利用できる。また、ハイブリッド車両1において走行開始に必要な電力が不足することを抑制できるので、走行開始時に、わざわざ、ディーゼルエンジン発電機7を作動させて、電力を確保する必要がなく、余計な燃料の消費を抑制できる。
【0129】
そして、S37の処理を実行したら、次に、CPU31は、電力貯蔵装置用充電器101と、ハイブリッド車両1のバッテリ9との電気的な接続が解除されるよう、電力供給制御装置100を制御する(S38)。そして、CPU31は、S6の処理を実行して、パンタグラフ11のスライダーを下降させ、本処理を終了する。
【0130】
S31の処理において、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始が指示されていない場合は(S31:No)、運転者等により車両充電スイッチ104が操作されて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電開始が指示されたということである。そこで、この場合、CPU31は、パンタグラフ11と、ハイブリッド車両1のバッテリ9とが電気的に接続されるよう、電力供給制御装置100に対して指示する(S2)。これにより、バッテリ9と架線78とが電気的に接続されるので、電力貯蔵装置51の車両用充電器105により、架線78を介して、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電できる。
【0131】
次に、車両充電スイッチ104が操作されて、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電終了が指示されたかを判定する(S39)。S39の処理において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電終了が指示された場合(S39:Yes)、CPU31は、S5およびS6の処理を実行して、パンタグラフ11とバッテリ9とを接続解除し、パンタグラフ11のスライダーを下降させ、本処理を終了する。
【0132】
一方、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電終了が指示されていない場合は(S39:No)、充電状況監視センサ12による電流の検出状態から、電力貯蔵装置51によるハイブリッド車両1のバッテリ9の充電が終了したかを判定する(S40)。
【0133】
S40の処理において、電力貯蔵装置51によるハイブリッド車両1のバッテリ9の充電が終了していない場合(S40:No)、CPU31は、S39の処理に戻る。一方、電力貯蔵装置51によるハイブリッド車両1のバッテリ9の充電が終了した場合は(S40:Yes)、S5およびS6の処理を実行して、パンタグラフ11とバッテリ9とを接続解除し、パンタグラフ11のスライダーを下降させ、本処理を終了する。
【0134】
以上の図7に示す指示実行処理によれば、途中駅Eにおいて、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1のバッテリ9に貯蔵されている電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に移動させることができる。これにより、ハイブリッド車両1のバッテリ9において、回生電力を貯蔵するための空き容量を増やせるので、引き続き、ハイブリッド車両1が坂路Ra2を降坂する場合に、回生電力が失効することを抑制できる。
【0135】
次に、図8を参照して、第2実施形態における電力貯蔵装置51の制御装置70により実行される充放電制御処理について説明する。図8は、第2実施形態における電力貯蔵装置51の充放電制御処理を示すフローチャートである。
【0136】
第2実施形態の指示実行処理は、バッテリ9については電力貯蔵装置51に設けた車両用充電器105により充電できるように、バッテリ76についてはハイブリッド車両1に設けた電力貯蔵装置用充電器101により充電できるように、バッテリ76を架線78に電気的に接続したり、車両用充電器105を作動させるための処理である。
【0137】
また、この処理は、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが電気的に接続された場合に実行される。尚、上述したように、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが電気的に接続されたか否かは、車両用バッテリ残量検出センサ80の検出結果に基づいて判定する。
【0138】
充放電制御処理では、CPU71は、まず、所定時間待機し(S51)、車両用バッテリ残量検出センサ80の検出結果に基づいて、ハイブリッド車両1によって電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が開始されるかを判定する(S52)。
【0139】
S52の処理において、ハイブリッド車両1によって電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が開始される場合(S52:Yes)、CPU71は、架線78と、電力貯蔵装置51のバッテリ76とが電気的に接続されるよう、電磁開閉器106を制御する(S53)。これにより、ハイブリッド車両1の電力貯蔵装置用充電器101により、パンタグラフ11を介して、バッテリ76の充電を実行できる。よって、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電できる。
【0140】
そして、充電状況監視センサ79による電流の検出状態から、ハイブリッド車両1による電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が終了したかを判定する(S54)。S54の処理において、ハイブリッド車両1による電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が終了していない場合(S54:No)、CPU71は、その充電が終了されるまで待機する。
【0141】
一方、ハイブリッド車両1による電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が終了した場合は(S54:Yes)、架線78と、電力貯蔵装置51のバッテリ76との電気的な接続が解除されるよう、電磁開閉器106を制御して(S55)、バッテリ9の充電作業を終了する。そして、本処理を終了する。
【0142】
S52の処理において、ハイブリッド車両1によって電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電が開始されない場合は(S52:No)、電力貯蔵装置51がハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する場合である。この場合、CPU71は、第1実施形態の図5に示す充放電制御処理と同様に、S19〜S22の各処理を実行して、本処理を終了する。
【0143】
S19〜S22の処理を実行することにより、第1実施形態の場合と同様に、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力であって、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、坂路Ra1を登坂するハイブリッド車両1のバッテリ9に移動させることができる。よって、その余剰な電力を、ハイブリッド車両1が坂路Ra1を登坂する場合にその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。また、バッテリ9が満充電状態になることや、バッテリ9が過充電されることを防止できるので、ハイブリッド車両1のバッテリ9の劣化を抑制できる。
【0144】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、ハイブリッド車両1が坂路Ra1を登坂する場合にその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。また、複数台のハイブリッド車両1が坂路Raを走行している場合には、その余剰な電力を自車両1だけでなく、他のハイブリッド車両1においても坂路Ra1の登坂に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。
【0145】
また、第2実施形態では、ハイブリッド車両1側に電力貯蔵装置用充電器101を設け、電力貯蔵装置51側に車両用充電器105を設けている。よって、ハイブリッド車両1側に車両用充電器105を設ける必要がないため、ハイブリッド車両1の重量を抑制できる。従って、ハイブリッド車両1が走行において受ける負荷を軽減できるので、ハイブリッド車両1において消費される電力を小さくでき、ハイブリッド車両1において発生する回生電力をより有効に利用できる。
【0146】
また、第1実施形態と同様に、ハイブリッド車両1と、電力貯蔵装置51との間で電力の授受を行う電路として、パンタグラフ11と、架線78とを利用しているので、ハイブリッド車両1と、電力貯蔵装置51との製造コストを抑制できる。
【0147】
尚、上記実施形態に記載の「(バッテリ9の残量)40%」が、請求項に記載の「第1閾値」に対応し、上記実施形態に記載の「(バッテリ9の残量)80%」が、請求項に記載の「第2閾値」に対応する。
【0148】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0149】
例えば、上記の第1実施形態では、電力貯蔵装置51側に、電力貯蔵装置用充電器77aと、車両用充電器77bとをそれぞれ設け、ハイブリッド車両1側には各充電器77a,77bを設けない構成としている。これに対し、図9(a)に示すように、ハイブリッド車両1側に、電力貯蔵装置用充電器77aと、車両用充電器77bとをそれぞれ設け、図9(b)に示すように、電力貯蔵装置51側には各充電器77a,77bを設けないように構成しても良い。このように構成すれば、仮に、一のハイブリッド車両1において電力貯蔵装置用充電器77aや、車両用充電器77bが故障したとしても、その一のハイブリッド車両1においてバッテリ9やバッテリ76の充電が行えなくなるだけである。つまり、他のハイブリッド車両1では、バッテリ9やバッテリ76の充電を問題なく行えるので、ハイブリッド車両1による回生電力の利用率が低下することを抑制できる。尚、このように構成する場合、電力貯蔵装置51には、バッテリ76と架線78とが有れば良く、そのバッテリ76と架線78とを電気的に接続しておく。一方、ハイブリッド車両1には、充放電開始終了スイッチ13に代えて、電力貯蔵装置充電スイッチ103と、車両充電スイッチ104とを設けておく。また、電力貯蔵装置用充電器77aの出力部とパンタグラフ11とを接続しておき、電力貯蔵装置用充電器77aの入力部とバッテリ9とが、電力供給制御装置10を介して接続されるように構成する。更に、車両用充電器77bの入力部とパンタグラフ11と接続しておき、車両用充電器77bの出力部とバッテリ9とが、電力供給制御装置10を介して接続されるように構成する。そして、ハイブリッド車両1では、電力貯蔵装置充電スイッチ103により、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始が指示された場合に、ハイブリッド車両1の電力貯蔵装置用充電器77aを作動させて、パンタグラフ11を介し、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力で、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する。これにより、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電できる。一方、車両充電スイッチ104により、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電開始が指示された場合に、ハイブリッド車両1の車両用充電器77bを作動させて、パンタグラフ11を介し、電力貯蔵装置51のバッテリ76の電力で、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する。これにより、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力であって、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、坂路Ra1を登坂するハイブリッド車両1がその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。
【0150】
また、上記の第2実施形態では、ハイブリッド車両1側に、電力貯蔵装置用充電器101を設け、電力貯蔵装置51側に、車両用充電器105を設ける構成としている。これに対し、図10(a)に示すように、ハイブリッド車両1側に、車両用充電器105を設け、図10(b)に示すように、電力貯蔵装置51側に、電力貯蔵装置用充電器101を設けるように構成しても良い。このように構成すれば、ハイブリッド車両1側に電力貯蔵装置用充電器101を設ける必要がないため、ハイブリッド車両1の重量を抑制できる。従って、ハイブリッド車両1が走行において受ける負荷を軽減できるので、ハイブリッド車両1において消費される電力を小さくでき、ハイブリッド車両1において発生する回生電力をより有効に利用できる。尚、このように構成する場合、電力貯蔵装置51には、車両用充電器105に代えて、電力貯蔵装置用充電器101を設け、電力貯蔵装置用充電器101の入力部と架線78とを接続し、電力貯蔵装置用充電器105の出力部とバッテリ76とを接続しておく。一方、ハイブリッド車両1には、電力貯蔵装置用充電器101に代えて、車両用充電器105を設け、車両用充電器105の入力部とパンタグラフ11とを接続しておき、車両用充電器105の出力部とバッテリ9とが、電力供給制御装置100を介して接続されるように構成する。そして、ハイブリッド車両1では、電力貯蔵装置充電スイッチ103により、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始が指示された場合に、バッテリ9と架線78とを接続する。一方、電力貯蔵装置51では、架線78とパンタグラフ11とが接続された場合に、架線78にハイブリッド車両1のバッテリ9の電圧が印加されていれば、電力貯蔵装置用充電器101を作動させて、架線78を介し、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力で、電力貯蔵装置51のバッテリ76を充電する。これにより、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力を、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電できる。また、ハイブリッド車両1では、車両充電スイッチ104により、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電開始が指示された場合に、ハイブリッド車両1の車両用充電器105を作動させて、パンタグラフ11を介し、電力貯蔵装置51のバッテリ76の電力で、ハイブリッド車両1のバッテリ9を充電する。一方、電力貯蔵装置51では、架線78とパンタグラフ11とが接続された場合に、架線78にハイブリッド車両1のバッテリ9の電圧が印加されていなければ、架線78とバッテリ76とが電気的に接続されるように、電磁開閉器104を制御する。これにより、ハイブリッド車両1が坂路Ra2の降坂では使用しない余剰な電力であって、電力貯蔵装置51のバッテリ76に貯蔵されている電力を、坂路Ra1を登坂するハイブリッド車両1がその走行に利用できるので、回生電力を有効に利用できる。尚、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが電気的に接続されたか否かは、例えば、電力貯蔵装置51において架線78の静電容量の変化を検出して判定しても良いし、電力貯蔵装置51およびハイブリッド車両1にそれぞれ無線通信装置を設けておき、ハイブリッド車両1においてパンタグラフ11のスライダーを上昇させた場合に、その旨をハイブリッド車両1から電力貯蔵装置51へ通知するようにしても良い。
【0151】
また、上記実施形態では、ハイブリッド車両1と、電力貯蔵装置51との間で、電力の授受を行っているが、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1と、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1とが、途中駅Eにそれぞれ停車している場合には、それらのハイブリッド車両1同士で、電力の授受を行うように構成しても良い。このように構成すれば、一のハイブリッド車両1で利用されない回生電力を、電力貯蔵装置51を介さずに、他のハイブリッド車両1に直接充電できる(移動させることができる)。従って、一のハイブリッド車両1の回生電力が、他のハイブリッド車両1に充電されるまでに行われる充電回数や、電力の授受の回数を少なくできるので、充電や電力の授受による回生電力の損失を抑制できる。故に、ハイブリッド車両1の回生電力をより有効に利用できる。尚、このように構成する場合には、ハイブリッド車両1側に、車両用充電器105を少なくとも設けておく。そして、途中駅Eでは、坂路Raを降坂してくるハイブリッド車両1の停車位置と、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1の停車位置とのそれぞれに架線78を設置し、各ハイブリッド車両1が共にパンタグラフ11を伸張した場合に、各ハイブリッド車両1同士が電気的に接続されるようにする。そして、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1において、車両用充電器105を作動させ、坂路Raを降坂するハイブリッド車両1では、車両用充電器105を作動しないように制御する。
【0152】
また、上記実施形態では、坂路Raを降坂してくるハイブリッド車両1と、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1とが、途中駅Eにおいて同一の停車位置に停車する場合について説明した。しかしながら、途中駅にEおいて、坂路Raを降坂してくるハイブリッド車両1の停車位置と、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1の停車位置とが、それぞれ異なる場合でも、本発明を適用できる。例えば、途中駅において、坂路Raを降坂してくるハイブリッド車両1用の停車位置と、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1用の停車位置とが、それぞれ別に設けられているとする。この場合、坂路Raを降坂してくるハイブリッド車両1用の停車位置に、ハイブリッド車両1が停車した場合には、ハイブリッド車両1のバッテリ9の電力が、電力貯蔵装置51のバッテリ76に充電されるようにする。一方、坂路Raを登坂するハイブリッド車両1用の停車位置に、ハイブリッド車両1が停車した場合については、電力貯蔵装置51のバッテリ76の電力が、ハイブリッド車両1のバッテリ9に充電されるようにする。このように構成すれば、ハイブリッド車両1の停車位置に応じて、ハイブリッド車両1および電力貯蔵装置51間における電力の移動方向が一意に決まるので、運転者等による電力貯蔵装置充電スイッチ103または車両充電スイッチ104の操作ミスにより、誤ってバッテリ9,76が充電されることを防止できる。また車両進行方向検出センサ81も不要になる。尚、ハイブリッド車両1が所定の停車位置に停車しているか否かの検出については、例えば、近接センサなどにより検出すれば良い。
【0153】
また、上記実施形態では、ハイブリッド車両1と、電力貯蔵装置51との間で電力の授受を行う電路として、パンタグラフ11と、架線78とを利用しているが、別の装置を利用しても良い。例えば、ハイブリッド車両1では、パンタグラフ11に代えて集電用のブラシを設け、電力貯蔵装置51では、架線78に代えて給電用レール(第三軌条)を、途中駅Eのみに設けておく。そして、途中駅Eにおいて、集電用のブラシと、給電用レールとを接触させて、電力の授受を行っても良い。また、例えば、途中駅Eにおいて、ハイブリッド車両1と、電力貯蔵装置51とを、ケーブルにより接続して、電力の授受を行っても良い。例えば、ハイブリッド車両1では、パンタグラフ11に代えて、プラグ(メス)を設けておき、電力貯蔵装置51では、プラグ(オス)付きのケーブルを設けておく。尚、プラグ同士の接続は、自動でも良いし、手動でも良い。また、例えば、ハイブリッド車両1のバッテリ9と、電力貯蔵装置51のバッテリ78とを、同一品種のバッテリで構成しておき、途中駅Eにおいて、ハイブリッド車両1のバッテリ9と、電力貯蔵装置51のバッテリ76とを互いに取り外して交換し、電力の授受を行っても良い。
【0154】
また、上記実施形態では、ハイブリッド車両1および電力貯蔵装置51のバッテリ9,76を、リチウムイオンバッテリで構成しているが、バッテリの種類は、これに限らず、鉛バッテリや、ニッケル水素バッテリや、ニッケルカドミウムバッテリなど、他の種類のバッテリでも良い。また、バッテリ9,76に代えて、キャパシタ(コンデンサ)を用いても良い。
【0155】
また、上記実施形態で挙げた具体的数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記実施形態では、バッテリ9の残量が40%以下になったかや、80%以上になったかを基準値としているが、これらの基準値は、バッテリ9の特性等に基づいて適宜決めれば良い。また、途中駅E周辺の立地条件に応じて、適宜決めても良い。例えば、ハイブリッド車両1が坂路Ra2を降坂する場合に、途中駅Eを出発した後、しばらく平坦な走行区間がある場合には、バッテリ9の残量をより多く(例えば、50%)残すようにしても良い。また、途中駅Eにおいてハイブリッド車両1の走行経路が傾斜している場合など、ハイブリッド車両1が電動モータ8を駆動せずに途中駅Eを出発できる場合には、バッテリ9の残量をより少なく(例えば、30%)残すようにしても良い。
【0156】
また、上記実施形態では、バッテリ9の残量を%に換算して取り扱ったが、%に限らず、残量に相当する数値であれば、その数値を残量として取り扱っても良い。例えば、車両用バッテリ残量検出センサ80や、バッテリ残量検出センサ102の検出結果などの数値を、そのままバッテリ11の残量として取り扱っても良い。
【0157】
また、上記実施形態では、バッテリ9の残量(残存している電力量)に着目して、バッテリ9やバッテリ76の充電を中止しているが、バッテリ9の消耗量(満充電状態から消費された電力量)に着目して、充電を中止しても良い。尚、バッテリの電圧値と、バッテリの残量との関係(例えば、放電特性グラフ)は、製造元などからバッテリの仕様として公表されているので、バッテリの電圧値が決まれば、バッテリの消耗量が決まる。
【0158】
また、上記実施形態では、架線78と、ハイブリッド車両1のパンタグラフ11とが電気的に接続されたか否かを、架線78に印加される電圧値を検出して、その電圧値に基づいて判定しているが、架線78の静電容量の変化を検出して判定しても良いし、電力貯蔵装置51およびハイブリッド車両1にそれぞれ無線通信装置を設けておき、ハイブリッド車両1においてパンタグラフ11のスライダーを上昇させた場合に、その旨をハイブリッド車両1から電力貯蔵装置51へ通知するようにして、判定しても良い。
【0159】
また、上記実施形態では、坂路Raの途中にある途中駅Eに電力貯蔵装置51を設置しているが、途中駅Eに限らず、待避所や、待機所に設置しても良い。また、架線が敷設されている走行路線上に、電力貯蔵装置51を設置しても良い。尚、この場合は、走行路線上に敷設されている架線とは別に、電力授受システムDS用の架線78を設ける。
【0160】
また、上記実施形態では、ハイブリッド車両1において、ハイブリッド車両1のバッテリ9の充電開始および終了、電力貯蔵装置51のバッテリ76の充電開始および終了を指示できるように構成しているが、途中駅Eの駅員などが途中駅Eから指示できるように構成しても良い。
【0161】
また、上記実施形態は、本発明をハイブリッド車両1に適用した形態について説明したが、ハイブリッド車両1に限らず、架線に供給される電力を用いて走行する鉄道車両など、他の鉄道車両にも適用できる。
【符号の説明】
【0162】
1 ハイブリッド車両(鉄道車両)
8 電動モータ(回生ブレーキ)
9 バッテリ(車両蓄電手段)
10、100 電力供給制御装置(回生充電手段)
11 パンタグラフ(接続手段の一部)
51 電力貯蔵装置
76 バッテリ(装置蓄電手段)
77a、101 電力貯蔵装置用充電器(装置充電手段)
77b、105 車両用充電器(車両充電手段)
78 架線(接続手段の一部)
80 車両用バッテリ残量検出センサ
102 バッテリ残量検出センサ
DS 電力授受システム
Ra 坂路
S17、S36 第1判定手段
S17:Yes,S18、S36:Yes,S37 第1充電制御手段
S21 第2判定手段
S21:Yes,S22 第2充電制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の動力源となる電力を貯蔵する車両蓄電手段と、回生ブレーキにより発生する回生電力を前記車両蓄電手段に充電する回生充電手段とを有する鉄道車両と、
その鉄道車両が一の方向へ走行する場合に登坂しその一の方向とは逆の方向へ走行する場合に降坂する坂路の途中に設置され、且つ、電力を貯蔵するための装置蓄電手段を有する電力貯蔵装置と、
その電力貯蔵装置の装置蓄電手段と前記鉄道車両の車両蓄電手段とを電力の授受可能に接続する接続手段と、
前記坂路を降坂する鉄道車両であって前記回生充電手段による充電がなされた鉄道車両の車両蓄電手段の電力を、前記接続手段を介して前記電力貯蔵装置の装置蓄電手段に充電する装置充電手段と、
その装置充電手段により充電され前記電力貯蔵装置の装置蓄電手段に貯蔵された電力を前記坂路を登坂する鉄道車両の車両蓄電手段に前記接続手段を介して充電する車両充電手段とを備えていることを特徴とする電力授受システム。
【請求項2】
前記坂路を降坂してきた鉄道車両が、その坂路の途中に設置された電力貯蔵装置と前記接続手段によって電力を授受可能に接続され、前記装置充電手段によって、前記鉄道車両の車両蓄電手段の電力が前記電力貯蔵装置の装置蓄電手段に充電されている場合に、
前記鉄道車両の車両蓄電手段の電力量が、その鉄道車両の走行開始に必要な電力量より大きい第1閾値以下になったかを判定する第1判定手段と、
その第1判定手段により前記車両蓄電手段の電力量が前記第1閾値以下になったと判定された場合に、前記装置充電手段による前記電力貯蔵装置への充電を止める第1充電制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の電力授受システム。
【請求項3】
前記坂路を登坂してきた鉄道車両が、その坂路の途中に設置された電力貯蔵装置と前記接続手段によって電力を授受可能に接続され、前記車両充電手段によって、前記電力貯蔵装置の装置蓄電手段の電力が前記鉄道車両の車両蓄電手段に充電されている場合に、
前記鉄道車両の車両蓄電手段の電力量が、その鉄道車両の走行開始に必要な電力量より大きい第1閾値より大きく且つ前記鉄道車両の車両蓄電手段の満充電未満である所定の電力量を示す第2閾値以上になったかを判定する第2判定手段と、
その第2判定手段により前記鉄道車両の車両蓄電手段の電力量が前記第2閾値以上になったと判定された場合に、前記車両充電手段による前記鉄道車両への充電を止める第2充電制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の電力授受システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の電力授受システムで用いられる電力貯蔵装置。
【請求項5】
前記装置充電手段および車両充電手段の少なくとも一つを備えていることを特徴とする請求項4記載の電力貯蔵装置。
【請求項6】
請求項1から3の何れかに記載の電力授受システムで用いられる鉄道車両であって、
前記装置充電手段および車両充電手段の一方を備えていることを特徴とする鉄道車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−103546(P2013−103546A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247331(P2011−247331)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】