説明

電力調整装置

【課題】 基準信号に大きな位相誤差が生じている場合に、当該位相誤差を迅速に抑制することができる電力調整装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 正弦波からなる基準信号IREFを生成する基準信号生成部67と、基準信号IREFに基づいて、ソーラーパネル100から供給される直流電力を交流電力へ変換し、電力系統102へ出力するインバータ回路21と、系統電圧Voを検出する電圧検出器23と、系統電圧102に対する基準信号IREFの位相誤差φを求める位相誤差検出部6と、位相誤差φに基づいて、基準信号IREFの位相オフセットを制御する位相オフセット制御部66とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力調整装置に係り、さらに詳しくは、分散型電源を電力系統と連系させる電力調整装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽光発電装置、風力発電装置、蓄電池などの分散型電源(Distributed Generator)は、電力会社の系統電源から電力が供給される電力系統に対し、電力調整装置を介して接続される。電力調整装置は、分散型電源から入力される直流電力を電力系統と同期のとれた交流電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路を電力系統から遮断する保護回路とを備えている(例えば、特許文献1)。
【0003】
インバータ回路は、その出力電流Ioを系統電圧Voと同期させることにより、分散型電源を電力系統と連系させている。具体的には、位相同期回路を用いて、系統電圧Voに同期した基準信号IREFを生成し、この基準信号IREFに基づいてインバータ回路を駆動することにより、出力電流Ioの位相及び周波数を系統電圧Voの位相及び周波数と一致させている。
【0004】
また、保護回路は、瞬時電圧低下や瞬時停電などの電力系統の異常を検出した場合に分散型電源を系統電源から遮断することにより、分散型電源を保護している。つまり、系統電源の擾乱を検出して電流出力を停止し、分散電源を系統電源から解列させる。
【0005】
図12は、従来の電力調整装置の瞬時停電時における動作を示したタイミングチャートであり、0.3秒の瞬時停電が発生した場合が示されている。図中の(a)及び(b)は系統電圧Voの瞬時値及び実効値、(c)及び(d)は出力電流Ioの瞬時値及び実効値、(e)はゲートブロック信号GBである。ゲートブロック信号GBは、出力電流Ioを停止させるために用いられる電力調整装置内の制御信号である。
【0006】
系統電圧Voが低下し、電力系統が停電状態になれば、ゲートブロック信号GBが生成され、電流出力を停止する。その後、電力系統が通常状態へ復電すれば、電流出力が再開される。このとき、電力系統に悪影響を及ぼさないように、系統電圧Voに対する基準信号IREFの同期が完了してから電流出力を再開する必要がある。このため、復電時の出力電流IREFに大きな位相誤差φが生じていれば、同期完了までに長い時間が必要になり、従来の電力調整装置では、0.3秒の瞬時停電が発生した場合であっても、復電から電流出力が再開されるまでに10秒程度のタイムラグが生じる場合があった。
【0007】
図13は、従来の電力調整装置の瞬時低電圧時における動作を示したタイミングチャートであり、0.3秒の低電圧状態が発生した場合が示されている。系統電圧Voが低下し、電力系統が低電圧状態になれば、図12の瞬時停電時と全く同様にして、ゲートブロック信号GBが生成され、電流出力を停止する。その後、通常状態への復電を検出すれば、系統電圧Voに対する基準信号IREFの同期が完了してから電流出力を再開する。このため、0.3秒の瞬時低電圧が発生した場合であっても、復電から電流出力が再開されるまでに10秒程度のタイムラグが生じる場合があった。
【0008】
今後、太陽光発電装置などが普及することにより、総発電出力に占める分散電源装置の割合が高くなると考えられる。このような状況の下において、電力系統の擾乱により多数の分散型電源が一斉に電力系統から解列すれば、電力系統内の需給バランスが崩れ、広範囲の停電が生じるおそれがある。このような課題を解決するためには、系統電圧Voが低下した場合であっても、電力調整装置が、電力系統から解列することなく、運転を継続することが望ましい。また、電力系統から解列させる場合であっても、電力系統が復電すれば、電力調整装置の出力を迅速に復帰させることが望ましい。
【0009】
しかしながら、電力系統が低電圧状態である場合に電流出力を継続しようとすれば、出力電流Ioをどのように制御するのかが問題となる。また、電力系統の復電から基準信号IREFの同期が完了するまでの期間を短縮し、出力電流Ioを迅速に復帰させることは容易ではないという問題があった。
【0010】
一般に、電力調整装置を駆動するための位相同期回路は、基準信号IREFと系統電圧Voとの位相誤差を検出し、この位相誤差を最小化するように基準信号IREFの周波数を制御している(例えば、特許文献2)。このような位相同期回路の応答速度は、周波数のPI制御に用いられる比例ゲインと積分ゲインによって決定される。
【0011】
このため、これらのゲインを調整することにより、応答速度を向上させることも考えられるが、その場合、通常状態における動作の安定性を確保するのが難しくなるという問題がある。また、同期制御を継続している通常状態と比べ、復電時の基準信号IREFには大きな位相誤差φが生じている場合があり、PI制御のゲインを調整しても、同期調整の時間を短縮することは容易ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−122818号公報
【特許文献2】特開2008−177991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基準信号に大きな位相誤差が生じている場合に、当該位相誤差を迅速に抑制することができる電力調整装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、電力系統が、停電状態から通常状態へ復電した場合に、インバータ回路の出力の系統電圧に対する同期を迅速に完了することができる電力調整装置を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、電力系統が、低電圧状態又は停電状態から通常状態へ復電した場合に、インバータ回路の出力を迅速に復帰させることができる電力調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の本発明による電力調整装置は、分散型電源を電力系統に連系するための電力調整装置において、正弦波からなる基準信号を生成する基準信号生成手段と、上記基準信号に基づいて、上記分散型電源から供給される直流電力を交流電力へ変換し、上記電力系統へ出力するインバータ回路と、上記電力系統の系統電圧を検出する電圧検出手段と、上記系統電圧に対する上記基準信号の位相誤差を求める位相誤差検出手段と、上記位相誤差に基づいて、上記基準信号の位相オフセットを制御する位相オフセット制御手段とを備えて構成される。
【0017】
系統電圧に対する基準信号の位相誤差に基づいて、基準信号の位相オフセットを制御することにより、位相誤差を迅速かつ効果的に抑制することができる。特に、基準信号の周波数を制御対象にする場合に比べ、周波数誤差を抑制することはできないが、位相誤差をより迅速に抑制することができる。
【0018】
従って、このような基準信号に基づいてインバータ回路の出力を制御すれば、何等かの原因により、大きな位相誤差が発生した場合であっても、当該位相誤差を迅速に抑制することができる。一般に、系統電圧の周波数には大きな変動が生じないのに対し、系統電圧の位相は系統擾乱時に大きく変動する場合がある。このため、この様な構成を採用することにより、停電などの系統擾乱からの復帰時に、インバータ回路の出力の位相誤差を迅速に抑制することができる。
【0019】
第2の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、上記位相誤差に基づいて、上記基準信号の周波数を制御する周波数制御手段と、上記系統電圧を停電判定閾値と比較し、上記電力系統の停電状態を判別する停電判別手段と、停電時に上記インバータ回路の出力を停止させる出力停止手段とを備え、上記位相オフセット制御手段は、停電からの復電後の第1同期調整期間に、上記基準信号の位相オフセットを制御し、上記周波数制御手段は、第1同期調整期間の終了後の第2同期調整期間に、上記基準信号の周波数を制御するように構成される。
【0020】
このような構成により、復電後の第1同期調整期間には、基準信号の位相オフセットを制御対象にすることにより、復電時における位相誤差を迅速かつ効果的に抑制することができる。一方、第1同期調整期間の終了後の第2同期調整期間には、基準信号の周波数を制御対象にすることにより、周波数誤差及び位相誤差をともに抑制することができる。このため、位相オフセットを制御対象にする第1同期調整期間に比べ、より高い精度で基準信号を系統電圧に同期させることができる。従って、復電後における基準信号の同期を迅速に完了させることができる。
【0021】
第3の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、上記位相誤差を調整判定閾値と比較する比較手段を備え、上記位相オフセット制御手段が、上記比較手段の比較結果に基づいて、上記基準信号の位相オフセットを制御するように構成される。
【0022】
この様な構成により、停電からの復電直後の位相誤差の大きさに応じて、適切な同期制御の方法を選択することができる。つまり、復電時における基準信号の位相誤差が小さい場合には、位相オフセット制御に代えて、周波数制御が行われる。このため、位相誤差が小さいにもかかわらず、位相オフセットを制御することにより、周波数誤差の影響を受けて、位相誤差をかえって増大させてしまうのを防止することができる。
【0023】
第4の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、停電中及び第1同期調整期間における上記基準信号の周波数を固定し、停電前における上記基準信号の周波数と一致させるように構成される。
【0024】
停電中及び第1同期調整期間における基準信号の周波数を固定することにより、停電中のノイズなどの影響を受け、停電中及び第1同期調整期間に、基準信号の周波数誤差が増大するのを抑制することができる。このため、第1同期調整期間における基準信号及び系統電圧の周波数を略一致させ、第1同期調整期間における位相誤差の抑制を高い精度で行うことができる。
【0025】
第5の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、上記位相誤差検出手段が、上記基準信号を用いて、上記系統電圧を互いに直交する第1直交成分及び第2直交成分に分離する直交成分算出手段と、上記基準信号の1又は2以上の周期からなる積算期間について、第1直交成分の積算値を求める第1直交成分積算手段と、上記積算期間について、第2直交成分の積算値を求める第2直交成分積算手段と、第1直交成分及び第2直交成分の各積算値に基づいて、上記位相誤差を求める位相誤差算出手段とを有する。
【0026】
この様な構成により、系統電圧及び基準信号の周波数が一致していれば、系統電圧に対する基準信号の位相誤差を正確に求めることができる。通常、系統電源の周波数が大きく変動することはないため、この様な構成を採用することにより、位相誤差を精度よく求めることができる。
【0027】
第6の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、第1同期調整期間が、上記基準信号の1周期からなる。この様な構成により、復電直後における基準信号の1周期で求められた位相誤差に基づいて位相オフセットを制御し、その後の各周期で求められた位相誤差に基づいて周波数を制御することにより、位相誤差の大きさにかかわらず、基準信号を迅速かつ正確に同期させることができる。
【0028】
第7の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、上記系統電圧を上記停電判定閾値よりも大きい低電圧判定閾値と比較し、上記電力系統の通常状態及び低電圧状態を判別する低電圧状態判別手段と、上記分散型電源から供給され、上記インバータ回路へ入力される入力電圧を検出する入力電圧検出手段と、上記入力電圧に基づいて、上記インバータ回路の出力電流を制御する出力電流制御手段とを備え、上記出力電流制御手段は、上記電力系統が低電圧状態であれば、当該低電圧状態への移行前の通常状態における上記入力電圧に基づいて目標電流を求め、上記インバータ回路の定電流制御を行うように構成される。
【0029】
この様な構成により、電力系統が低電圧状態の場合、直前の通常状態における入力電圧に基づいて目標電流を求め、インバータ回路の定電流制御を行うことができる。このため、電力系統が低電圧状態の場合に、インバータ回路の出力を停止させる場合に比べ、低電圧状態からの通常状態への復電後に、インバータ回路の出力を迅速に復帰させることができる。
【0030】
第8の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、上記出力制御手段が、低電圧状態からの復電後の安定確認期間において、当該低電圧状態における目標電流を用いて、上記インバータ回路の定電流制御を行うように構成される。
【0031】
この様な構成により、低電圧状態からの復電の前後において、インバータ回路に対し同じ制御が行われる。このため、低電圧状態から通常状態への復帰後に、インバータ回路の出力を迅速に復帰させることができる。
【0032】
第9の本発明による電力調整装置は、上記構成に加えて、上記目標電圧が、上記低電圧状態への移行前の通常状態における上記出力電流よりも小さい値からなる。
【0033】
このような構成により、低電圧状態の期間中における目標電流を低電圧状態への移行前の通常状態における出力電流よりも小さくすることにより、分散型電源の出力変化に比べて、電力系統が低電圧状態となっている期間が十分に短ければ、低電圧状態の期間中も定電流制御を継続することできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明による電力調整装置は、系統電圧に対する基準信号の位相誤差に基づいて、基準信号の位相オフセットを制御している。このため、基準信号に大きな位相誤差が生じている場合であっても、当該位相誤差を迅速に抑制することができる。
【0035】
また、本発明による電力調整装置は、停電からの復電後の第1同期調整期間に、基準信号の位相オフセットを制御し、第1同期調整期間の終了後の第2同期調整期間に、基準信号の周波数を制御している。このため、停電からの復電後に、インバータ回路の出力の系統電圧に対する同期を迅速に完了することができる。
【0036】
また、本発明による電力調整装置は、停電中及び第1同期調整期間における基準信号の周波数を固定し、停電前における基準信号の周波数と一致させている。このため、停電からの復電後に、基準信号の同期を迅速に完了し、インバータ回路の出力を迅速に復帰させることができる。
【0037】
また、本発明による電力調整装置は、通常状態では、インバータ回路への入力電圧に基づいて、インバータ回路の出力電流を制御する一方、低電圧状態では、低電圧状態への移行前の通常状態におけるインバータ回路への入力電圧に基づいて目標電流を求め、インバータ回路の定電流制御を行っている。この様な構成により、低電圧状態からの復電後に、インバータ回路の出力を迅速に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態による電力調整装置101を含む系統連系システムSの一構成例を示したブロック図である。
【図2】瞬時電圧低下時における電力調整装置101の動作の一例を示したタイミングチャートである。
【図3】瞬時停電時における電力調整装置101の動作の一例を示したタイミングチャートである。
【図4】図1の電力調整装置101の一構成例を示した図である。
【図5】図4の電圧異常検出部3の一構成例を示した図である。
【図6】図4のチョッパ回路制御部13の一構成例を示した図である。
【図7】図4のインバータ回路制御部24の一構成例を示した図である。
【図8】図7の同期制御部43の一構成例を示したブロック図である。
【図9】図8の同期制御部43の動作の一例を示したタイミングチャートである。
【図10】図4の電力調整装置101の動作の一例を示したフローチャートである。
【図11】図4の電力調整装置101の動作の一例を示したフローチャートである。
【図12】従来の電力調整装置の瞬時停電時における動作を示したタイミングチャートである。
【図13】従来の電力調整装置の瞬時低電圧時における動作を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態による電力調整装置101を含む系統連系システムSの一構成例を示したブロック図である。この系統連系システムSは、ソーラーパネル100、電力調整装置101、電力系統102、分電盤103、系統電源104及び負荷105により構成される。
【0040】
ソーラーパネル100は、太陽光のエネルギーを電力に変換する太陽光発電装置であり、日射量に応じた直流電力を生成し、電力調整装置101を介して、電力系統102へ供給する。つまり、ソーラーパネル100は、電力系統102と連系する分散型電源として用いられている。
【0041】
電力調整装置101は、ソーラーパネル100から入力される直流電力を単相の交流電力に変換し、電力系統102へ供給する装置であり、パワーコンディショナー、PCS(Power Conditioner System)とも呼ばれる。電力調整装置101は、ソーラーパネル100からの入力電圧Vi及び入力電流Iiを制御し、ソーラーパネル100からの入力電力を最大化するMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行っている。
【0042】
また、電力調整装置101は、電力系統102の電圧である系統電圧Voに対し周波数及び位相が同期した出力電流Ioを生成し、電力系統102へ供給する。具体的には、電力調整装置101内において、系統電圧Voに同期した基準信号IREFを生成し、この基準信号IREFに基づいて出力電流Ioを生成している。このため、系統電圧Voに影響を与えることなく、電力系統102へ出力電力Poを供給することができる。また、系統電圧Voの周波数変動に対し出力電流Ioを高速追従させることができる。なお、出力電流Ioの実効値は、ソーラーパネル100から入力電力Piに応じた値となるように制御される。
【0043】
電力系統102は、電力会社の系統電源104から送電される系統電力を需要家の負荷105に供給するためのシステムであり、ここでは、需要家内に設置された分電盤103や、当該分電盤103に系統電力を供給する引き込み線を含む配線網を電力系統102と呼んでいる。分電盤103は、系統電源104から供給される系統電力を負荷105へ配電し、また、電力調整装置101を介して、ソーラーパネル100から供給される電力を系統電源104又は負荷105へ配電している。負荷105は、ソーラーパネル100又は系統電源104から供給される電力を消費する電力消費装置であり、例えば、住宅内に設置された1又は2以上の電気機器からなる。
【0044】
<瞬時電圧低下時の動作>
図2は、瞬時電圧低下時における電力調整装置101の動作の一例を示したタイミングチャートである。瞬時電圧低下は、系統電圧Voが定格電圧を下回っているが、停電には至らない短い期間の低電圧状態をいう。ここでは、系統電圧Voが定格電圧の20%になる低電圧状態が、1秒間継続する瞬時電圧低下が発生した場合の例が示されている。
【0045】
図中の(a)及び(b)は、系統電圧Voの瞬時値及び実効値、(c)は、電力調整装置101内の基準信号IREF、(d)及び(e)は、電力調整装置101の出力電流Ioの瞬時値及び実効値、(f)は、電力調整装置101の出力電力Poの実効値である。
【0046】
電力調整装置101は、系統電圧Voが低下し、電力系統102が低電圧状態になったことを検知すると、MPPT制御から定電流制御へ切り替える。電圧低下前の通常状態では、ソーラーパネル100からの入力電力Piを最大化するMPPT制御が行われており、電力調整装置101の出力電流Ioは、入力電力Piに応じた値となるように制御されている。一方、低電圧状態では、電圧低下の直前における出力電流Ioの90%を目標値とする定電流制御が行われる。短時間であれば、ソーラーパネル100からの入力に大きな変動は生じないことから、この例では、10%のマージンを有する定電流制御を行っている。
【0047】
なお、低電圧状態であっても、出力電流Ioの系統電圧Voに対する同期制御は、通常状態の場合と同様に行われている。つまり、系統電圧Voに同期した基準信号IREFを生成し、この基準信号IREFに基づいて出力電流Ioの周波数及び位相を制御している。
【0048】
その後、系統電圧Voが上昇し、電力系統102が通常状態へ復電すれば、電力調整装置101の出力電力Poは、電圧低下直前の出力電力Poの90%まで回復するが、復電後の安定確認期間TSTBが終了するまでは定電流制御を継続する。安定確認期間TSTBは、復電後の系統電圧Voが安定的に定格電圧に維持されていることを確認するための期間であり、系統電圧Voが定格電圧を下回ることなく、安定確認期間TSTBが経過すれば、電力調整装置101は、定電流制御からMPPT制御へ切り替える。つまり、ソーラーパネル100からの入力電力Piに変化がなければ、出力電流Io及び出力電力Poの実効値は、電圧低下直前の値にまで回復する。
【0049】
この様にして、電力調整装置101は、電力系統102が低電圧状態になっても、電流出力を停止させることなく、電圧低下直前の通常状態における出力電流Ioの90%を目標値とする定電流制御を行っている。また、電力系統102が低電圧状態になっても、系統電圧Voに対する出力電流Ioの同期制御を継続している。このため、低電圧状態において電流出力を停止する従来の電力調整装置に比べ、復電後に電力調整装置101の出力電流Ioを迅速に復帰させることができる。つまり、復電後に、出力電流Ioが系統電圧Voに同期し、かつ、出力電流Ioの実効値が電圧低下直前の90%となる状態へ早く到達することができる。
【0050】
なお、図2では、定電流制御の目標電流を電圧低下前における出力電流Ioの90%にする場合の例について説明したが、本発明は、このような場合に限定されない。すなわち、定電流制御の目標電流は、電圧低下前における出力電流Ioに基づいて決定される値であって、当該出力電流Ioよりも小さい値であればよく、例えば、電圧低下前の出力電流Ioの80%であってもよい。
【0051】
<瞬時停電時における動作>
図3は、瞬時停電時における電力調整装置101の動作の一例を示したタイミングチャートである。瞬時停電とは、電力系統102が系統電源104から遮断された短い期間の停電状態をいう。ここでは、系統電圧Voが定格電圧の0%になる停電状態が、1秒間継続する瞬時停電が発生した場合の例が示されている。
【0052】
図中の(a)及び(b)は、系統電圧Voの瞬時値及び実効値、(c)は、基準信号IREF、(d)は、電力調整装置101内のゲートブロック信号GB、(e)及び(f)は、出力電流Ioの瞬時値及び実効値、(g)は、出力電力Poの実効値である。また、図中の停電期間TOUTは、電力系統102が停電状態となる期間であり、第1同期調整期間TADJ1及び第2同期調整期間TADJ2は、復電時における基準信号IREFの同期外れを解消するための期間である。
【0053】
ゲートブロック信号GBは、電力調整装置101内の制御信号であり、電力調整装置101の電流出力を停止させるために用いられる。このゲートブロック信号GBは、電力系統102が停電状態であることが検知されると出力が開始される。また、通常状態への復電が検出され、さらに基準信号IREFの同期調整が完了すれば出力を終了する。つまり、電力調整装置101の電流出力は、停電期間TOUT中だけでなく、その後の同期調整期間TADJ1,TADJ2中にも停止している。
【0054】
基準信号IREFは、電力系統102が停電状態であれば、周波数が固定された自走状態になり、系統電圧Voに対する基準信号IREFの同期制御は行われない。また、その後に系統電圧Voが上昇し、電力系統102が通常状態に復電すれば、復電時における基準信号IREFの位相誤差を解消するための同期調整が開始され、基準信号IREFの位相誤差が所定の同期判定閾値以下になれば同期調整を終了する。この同期調整では、まず基準信号IREFの位相オフセットを制御対象とする第1の同期制御が行われ、その後に基準信号IREFの周波数を制御対象とする第2の同期制御が行われる。なお、同期が完了した後も、基準信号IREFの周波数を系統電圧Voの周波数変動に追従させる必要があるため、周波数を制御対象とする同期制御は継続して行われる。
【0055】
位相オフセット制御は、系統電圧Voに対する位相誤差に応じて、基準信号IREFの位相オフセットを調整する処理、つまり、基準信号IREFを時間軸方向へ不連続にシフトさせるポジション変更を行うことにより位相誤差を相殺する処理であり、同期調整を迅速に行うことができる。すなわち、周波数誤差を抑制することはできないが、位相誤差を迅速に抑制することができる。しかも、復電時における位相誤差の大きさにかかわらず、一定時間で位相誤差を抑制することができる。
【0056】
これに対し、周波数制御は、位相誤差に基づいて周波数を制御することにより、周波数誤差及び位相誤差をともに抑制することができ、位相オフセット制御に比べ、精度のよい同期制御を行うことができる。ただし、同期が完了するまでの時間が、位相誤差の大きさによって顕著に変動するという欠点がある。このため、本実施例のように、位相オフセットを制御対象とする同期制御と、周波数を制御対象とする同期制御とを順に行うことにより、復電後に基準信号IREFの同期を迅速に完了することができる。
【0057】
第1同期調整期間TADJ1は、復電時における基準信号IREFの同期外れを解消するために、基準信号IREFの位相オフセット制御を行う期間であり、復電の検知時に開始され、基準信号IREFの1又は2以上の周期に相当する期間からなる。ここでは、第1同期調整期間TADJ1が、基準信号IREFの1周期に相当する場合の例が示されている。
【0058】
第2同期調整期間TADJ2は、復電時における基準信号IREFの同期外れを解消するために、基準信号IREFの周波数制御を行う期間であり、第1同期調整期間TADJ1の終了時に開始され、基準信号IREFの同期完了により終了する。つまり、第1同期調整期間TADJ1において解消することができなかった周波数誤差及び位相誤差を同期判定閾値以下になるように抑制するための期間である。ここでは、第2同期調整期間TADJ2が、3.5周期で完了しているため、復電してから4.5周期で基準信号IREFの同期調整が完了している。例えば、系統電圧Voが50Hzであれば、復電後の0.09秒で、復電時の位相誤差を解消し、基準信号IREFの同期が完了することを意味する。
【0059】
同期調整期間は、第1同期調整期間TADJ1及び第2同期調整期間TADJ2からなり、第1同期調整期間TADJ1は一定時間からなる。また、第2同期調整期間TADJ2は、第1同期調整期間TADJ1において十分に抑制された位相誤差を更に精度よく抑制する期間であるため、復電から同期調整が完了するまでの同期調整期間は、ほぼ一定となり、復電時における位相誤差が大きくなるに従って、同期調整期間が長くなることはない。
【0060】
ソフトスタート期間TSFTは、ゲートブロック信号GBの終了後に、出力電流Ioを徐々に増大させる期間であり、出力電流Ioの実効値が停電直前の出力電流Ioの0%から90%へ単調増加するように、出力電流Ioの定電流制御が行われる。ここでは、ソフトスタート期間TSFTが、ゲートブロック信号GBの終了後における基準信号IREFの5.5周期に相当する期間からなり、例えば、系統電圧Voが50Hzであれば、ソフトスタート期間TSFTは0.11秒となる。つまり、復電の検知から0.2秒後には、系統電圧Voに同期し、かつ、実効値が停電前の90%となる出力電流Ioを出力することができる。ソフトスタート期間TSFTが終了し、出力電流Ioが電圧低下前における出力電流Ioの90%になれば、瞬時低電圧状態から復電した場合と同様、安定確認期間TSTBを経て、電圧低下前の状態に復帰する。
【0061】
<電力調整装置101の構成>
図4は、図1の電力調整装置101の一構成例を示した図である。この電力調整装置101は、ソーラーパネル100からの入力電圧Viを中間電圧Vmに昇圧するブーストレギュレータ1と、直流の中間電圧Vmを交流の系統電圧Voに変換するインバータユニット2と、電圧異常検出部3とにより構成される。
【0062】
<ブーストレギュレータ1>
ブーストレギュレータ1は、入力電圧Viを中間電圧Vmに昇圧するためのステップアップコンバータであり、入力電圧Viを検出する電圧検出器10と、平滑化用のコンデンサC1と、入力電流Iiを検出する電流検出器11と、チョッパ回路12と、チョッパ回路12を制御するチョッパ回路制御部13とを備えている。ソーラーパネル100からの入力電圧Viは、コンデンサC1により高周波成分が除去された後、電流検出器11を介して、チョッパ回路12に入力され、中間電圧Vmへ昇圧される。
【0063】
チョッパ回路12は、スイッチング動作によって入力電圧Viを昇圧し、中間電圧Vmを生成する昇圧回路であり、入力側のチョークコイルL1と、出力側のダイオードD1とを直列接続し、その接続点をトランジスタTr1及びダイオードD2の並列回路を介して接地電位に接続して構成される。トランジスタTr1は、ゲート駆動信号GD1に基づいて、チョークコイルL1及びダイオードD1の接続点を接地電位と導通させるスイッチング素子であり、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。ダイオードD1は、電流の逆流を防止する逆流阻止ダイオードであり、ダイオードD2は、チョークコイルL1に生じる起電力を放出する還流ダイオードである。
【0064】
チョッパ回路制御部13は、トランジスタTr1を駆動するためのゲート駆動信号GD1を生成し、チョッパ回路12の動作を制御している。ゲート駆動信号GD1は、入力電圧Vi、入力電流Ii及びゲートブロック信号GBに基づいて生成されるPWM(Pulse Width Modulation)信号であり、トランジスタTr1のゲート端子に入力される。具体的には、入力電圧Vi及び入力電流Iiに基づいて、ソーラーパネル100から効率的に電力を引き出すことができるゲート駆動信号GD1を生成する。また、電力系統102の停電を示すゲートブロック信号GBに基づいて、ゲート駆動信号GD1の出力を停止することにより、停電時におけるチョッパ回路12の動作を停止させている。
【0065】
<インバータユニット2>
インバータユニット2は、ブーストレギュレータ1から供給される直流電力を交流電力に変換し、系統電圧Voに同期した出力電流を得るための逆変換装置であり、中間電圧Vmを検出する電圧検出器20と、平滑化用のコンデンサC2,C3と、インバータ回路21と、出力電流Ioを検出する電流検出器22と、系統電圧Voを検出する電圧検出器23と、インバータ回路21を制御するインバータ回路制御部24とを備えている。ブーストレギュレータ1から入力される中間電圧Vmは、コンデンサC2により高周波成分が除去された後、インバータ回路21に入力され、交流電力に変換される。インバータ回路21の出力は、コンデンサC3により高周波成分が除去され、電力系統102へ出力される。
【0066】
インバータ回路21は、スイッチング動作によって直流の中間電圧Vmを交流電圧に変換する変換回路であり、入出力端子がチョークコイルL2を介して接続されるとともに、入力端子をトランジスタTr2及びダイオードD3の並列回路を介して接地電位に接続して構成される。トランジスタTr2は、ゲート駆動信号GD2に基づいてスイッチングを行うスイッチング素子であり、例えば、IGBTが用いられる。ダイオードD3は、チョークコイルL2に生じる起電力を放出する還流ダイオードである。
【0067】
インバータ回路制御部24は、トランジスタTr2を駆動するためのゲート駆動信号GD2を生成し、インバータ回路21の動作を制御している。ゲート駆動信号GD2は、入力電圧Vi、入力電流Ii、ゲートブロック信号GB、自走制御信号SR及び定電流制御信号CCに基づいて生成されるPWM信号であり、トランジスタTr2のゲート端子に入力される。具体的には、系統電圧Voに基づいて、出力電流Ioの周波数又は位相オフセットを制御することにより、出力電流Ioを系統電圧Voに同期させている。また、中間電圧Vm又は定電流制御信号CCに基づいて、出力電流Ioの実効値を制御している。さらに、電力系統102の停電を示すゲートブロック信号GBに基づいて、ゲート駆動信号GD2の出力を停止することにより、停電時におけるインバータ回路21のスイッチング動作を停止させ、ソーラーパネル100を電力系統102から解列させる。
【0068】
ブーストレギュレータ1及びインバータユニット2は、中間電圧Vmを用いることにより、特段の制御信号を用いることなく、互いに連携して動作する。つまり、インバータユニット2は、中間電圧Vmに基づいて出力電流Ioの実効値を決定し、中間電圧Vmを目標中間電圧VmREFに一致させるように動作する。また、ブーストレギュレータ1は、中間電圧Vmが目標中間電圧VmREFに維持されることにより、チョッパ回路12の入出力電圧比を制御することにより、入力電圧Viを制御することができる。
【0069】
<電圧異常検出部3>
電圧異常検出部3は、系統電圧Voに基づいて、ゲートブロック信号GB、自走制御信号SR及び定電流制御信号CCを出力する。ゲートブロック信号GBは、チョッパ回路12及びインバータ回路21のスイッチング動作を停止させるための制御信号である。自走制御信号SRは、インバータユニット2に対し、基準信号IREFの同期制御を停止させるための制御信号である。定電流制御信号CCは、インバータユニット2に対し、定電流制御を指示するための制御信号である。
【0070】
図5は、図4の電圧異常検出部3の一構成例を示した図である。この電圧異常検出部3は、第1比較部50、第2比較部51、ゲートブロック信号生成部52、自走制御信号生成部53及び定電流制御信号生成部54からなる。
【0071】
第1比較部50は、電圧検出器23が検出した系統電圧Voと、停電状態を判別するための停電判定閾値Vt1とを比較する比較手段である。停電判定閾値Vt1は、電力系統102の定格電圧よりも小さな値として予め定められており、系統電圧Voが停電判定閾値Vt1未満であれば、停電状態であると判別することができる。この例では、電力系統102の定格電圧の20%を停電判定閾値Vt1としている。
【0072】
第2比較部51は、電圧検出器23が検出した系統電圧Voと、低電圧状態を判別するための低電圧判定閾値Vt2とを比較する比較手段である。低電圧判定閾値Vt2は、電力系統102の定格電圧の下限値よりも小さく、停電判定閾値Vt1よりも大きい値として予め定められている。このため、系統電圧Voが、停電判定閾値Vt1以上、低電圧判定閾値Vt2未満であれば、低電圧状態であると判別することができ、また、低電圧判定閾値Vt2以上であれば、通常状態であると判別することができる。この例では、電力系統102の定格電圧の下限値を低電圧判定閾値Vt2にしている。つまり、定格電圧が101V±6Vであれば、低電圧判定閾値Vt2は95Vになる。
【0073】
ゲートブロック信号生成部52は、第1比較部50の比較結果に基づいて、ゲートブロック信号GBを生成する。ゲートブロック信号GBは、ブーストレギュレータ1の昇圧動作と、インバータユニット2の電流出力とを停止させる制御信号であり、停電期間TOUTと、その後の同期調整期間TADJ1,TADJ2に出力される。すなわち、第1比較部50の比較結果に基づいて、系統電圧Voが低下し、電力系統102が通常状態から停電状態へ遷移したと判断すれば、ゲートブロック信号GBの出力を開始する。一方、同期完了信号SCに基づいて、復電後に同期調整が完了したと判断すれば、ゲートブロック信号GBの出力を停止する。
【0074】
自走制御信号生成部53は、第1比較部50の比較結果に基づいて、自走制御信号SRを生成する。自走制御信号SRは、周波数及び位相オフセットを固定し、同期制御を行うことなく基準信号IREFを自走させるための制御信号であり、停電期間TOUTに出力される。すなわち、第1比較部50の比較結果に基づいて、停電が発生したと判断すれば、自走制御信号SRの出力を開始し、復電したと判断すれば、自走制御信号SRの出力を停止する。
【0075】
定電流制御信号生成部54は、第1比較部50及び第2比較部51の比較結果に基づいて、定電流制御信号CCを生成する。定電流制御信号CCは、系統電圧Voが低下し、電力系統102が低電圧状態又は停電状態になった場合に、電圧低下前における出力電流Ioの値に基づいて、出力電流Ioを制御することを指示する制御信号である。
【0076】
すなわち、第2比較部51の比較結果に基づいて、電力系統102が通常状態から低電圧状態へ遷移したと判断すれば、定電流制御信号CCの出力を開始する。その後、定電流状態から通常状態に復電し、さらに安定確認期間TSTBが経過すれば、定電流制御信号CCの出力を停止する。つまり、定電流制御信号CCは、低電圧期間TLOW及びその後の安定確認期間TSTBに出力される。
【0077】
また、第1比較部50の比較結果と、同期完了信号SCとに基づいて、停電状態からの復電後に同期調整が完了したと判断すれば、定電流制御信号CCの出力を開始する。その後、ソフトスタート期間TSFT及び安定確認期間TSTBが終了すれば、定電流制御信号CCの出力を停止する。つまり、定電流制御信号CCは、停電状態から復電した後のソフトスタート期間TSFT及び安定確認期間TSTBにおいて出力される。
【0078】
<チョッパ回路制御部13>
図6は、図4のチョッパ回路制御部13の一構成例を示した図である。チョッパ回路制御部13は、ゲート駆動信号GD1を生成し、チョッパ回路12におけるスイッチング動作を制御する制御手段であり、乗算器30、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御部31、減算器32、PWM制御部33及びゲートブロック部34からなる。
【0079】
乗算器30は、入力電圧Viと入力電流Iiとの乗算を行って、ソーラーパネル100からの入力電力Piを求める演算手段である。乗算器30で求められた入力電力PiはMPPT制御部31へ入力される。
【0080】
MPPT制御部31は、入力電圧Viを制御することにより、入力電力Piを最大化する周知の最大電力点追従処理を行っている。目標入力電圧ViREFは、MPPT制御部31が指定する入力電圧Viの目標値であり、MPPT制御部31は、目標入力電圧ViREFを変化させ、変化前後における入力電力Piを比較し、この比較結果に基づいて目標入力電圧ViREFを更に変化させることを繰り返すことにより、ソーラーパネル100の最大出力点、つまり、入力電力Piが最大となる目標入力電圧ViREFを探索している。この様な制御方法は「山登り法」として知られている。なお、日射量、環境温度などが変化し、ソーラーパネルのV−P特性が変化した場合であっても、同様の制御方法によりV−P特性の変化に追従することができる。
【0081】
減算器32は、目標入力電圧ViREFに対する入力電圧Viの誤差として、入力電圧誤差ViERRを求める演算手段である。減算器32で求められた入力電圧誤差ViERRは、PWM制御部33へ入力される。
【0082】
PWM制御部33は、入力電圧誤差ViERRに基づいて、パルス幅変調を行って、PWM信号からなるゲート駆動信号GD1を生成するパルス幅変調手段であり、入力電圧Viを目標入力電圧ViREFに近づけるようにパルス幅を調整している。例えば、三角波からなるキャリア信号と、入力電圧誤差ViERRに基づいて決定される閾値との比較結果として、ゲート駆動信号GD1を生成している。なお、迅速かつ高精度な制御を行うためには、キャリア信号の周期が、系統電圧Voの周期よりも十分に短く、かつ、入力電圧Vi及び入力電流Iiのサンプリング周期と一致していることが望ましい。
【0083】
ゲートブロック部34は、ゲートブロック信号GBに基づいて、ゲート駆動信号GD1を遮断し、ブーストレギュレータ1による昇圧動作を停止させる手段である。電圧異常検出部3からゲートブロック信号GBが出力されると、ゲートブロック部34が、ゲート駆動信号GD1の出力を停止させる。このため、チョッパ回路12のスイッチング動作が停止し、ブーストレギュレータ1による昇圧動作を停止させることができる。
【0084】
<インバータ回路制御部24>
図7は、図4のインバータ回路制御部24の一構成例を示した図である。インバータ回路制御部24は、ゲート駆動信号GD2を生成し、インバータ回路21におけるスイッチング動作を制御する制御手段であり、出力電流制御部4、同期制御部43、乗算器44、減算器45、PWM制御部46及びゲートブロック部47からなる。
【0085】
出力電流制御部4は、中間電圧Vm及び定電流制御信号CCに基づいて、出力電流Ioの目標実効値IeREFを求める手段であり、減算器40、定電流制御部41及び制御切替部42からなる。
【0086】
減算器40は、目標中間電圧VmREFに対する中間電圧Vmの誤差として、中間電圧誤差VmERRを求める演算手段である。目標中間電圧VmREFは予め定められた中間電圧Vmの目標値であり、電圧検出器10が検出した中間電圧Vmから目標中間電圧VmREFを減算することにより、中間電圧誤差VmERRが求められる。この中間電圧誤差VmERRは、出力電流Ioの目標実効値IeREFとして、乗算器44へ入力される。
【0087】
定電流制御部41は、系統電圧Voが低下した場合に、定電流制御信号CCに基づいて、定電流制御用の指定目標実効値IeCCを求める制御手段である。指定目標実効値IeCCは、定電流制御時における出力電流Ioの目標実効値IeREFであり、電圧低下前の中間電圧Vmに基づいて求められる。ここでは、定電流制御部41が、電圧低下直前に減算器40から出力された中間電圧誤差VmERRを記憶し、電圧低下後に定電流制御を行う場合、電圧低下直前の中間電圧誤差VmERRに基づいて、指定目標実効値IeCCを求めている。
【0088】
具体的には、電力系統102が低電圧状態になれば、低電圧期間TLOW及び安定確認期間TSTBにおける指定目標実効値IeCCとして、電圧低下直前における目標実効値IeREFの90%の値が出力される。
【0089】
また、電力系統102が停電状態になれば、復電後のソフトスタート期間TSFT内において時間経過に比例して増大するように、停電直前の目標実効値IeREFの0%〜90%の値が、指定目標実効値IeCCとして出力される。さらに、その後の安定確認期間TSTBにおける指定目標実効値IeCCとして、停電直前における目標実効値IeREFの90%の値が出力される。
【0090】
制御切替部42は、定電流制御信号CCに基づいて、中間電圧誤差VmERR及び指定目標実効値IeCCとのいずれか一方を選択することにより、MPPT制御及び定電流制御を切り替える出力制御の切替手段である。
【0091】
定電流制御信号CCが入力されていない場合、制御切替部42は、減算器40から出力される中間電圧誤差VmERRを選択し、出力電流Ioの目標実効値IeREFとして、乗算器44へ出力する。この場合、中間電圧誤差VmERRに基づいてゲート駆動信号GD2が生成され、中間電圧Vmを目標中間電圧VmREFに近づけるように、インバータ回路21を駆動することができる。
【0092】
一方、定電流制御信号CCが入力されている場合、制御切替部42は、定電流制御部41から出力される指定目標実効値IeCCを選択し、出力電流Ioの目標実効値IeREFとして、乗算器44へ出力する。この場合、出力電流Ioの実効値が、指定目標実効値IeCCと一致するように、インバータ回路21が駆動される。
【0093】
同期制御部43は、電圧検出器23で検出された系統電圧Voに対し、周波数及び位相が同期した基準信号IREFを生成する。基準信号IREFを用いてインバータ回路21を制御し、出力電流Ioを系統電圧Voに同期させることにより、インバータ回路21の動作が系統電圧Voに影響を与えるのを防止することができる。
【0094】
乗算器44は、基準信号IREF及び目標実効値IeREFに基づいて、目標出力電流IoREFを生成する演算手段である。すなわち、実効値が正規化された基準信号IREFと、目標実効値IeREFとの乗算を行うことにより、位相及び周波数が、基準信号IREFと一致し、実効値が目標実効値IeREFと一致する制御信号として、目標出力電流IoREFが求められる。
【0095】
減算器45は、目標出力電流IoREFに対する出力電流Ioの誤差として、出力電流誤差IoERRを求める演算手段である。乗算器44が求めた目標出力電流IoREFから、電流検出器22が検出した出力電流Ioを減算することにより、出力電流誤差IoERRが求められる。
【0096】
PWM制御部46は、出力電流誤差IoERRに基づいて、パルス幅変調を行って、PWM信号からなるゲート駆動信号GD2を生成するパルス幅変調手段であり、出力電流Ioを目標出力電流IoREFに近づけるようにパルス幅を調整している。例えば、三角波からなるキャリア信号と、出力電流誤差IoERRに基づいて決定される閾値との比較結果として、ゲート駆動信号GD2を生成している。なお、迅速かつ高精度な制御を行うためには、キャリア信号の周期が、系統電圧Vo及び出力電流Ioのサンプリング周期よりも十分に短く、かつ、系統電圧Vo及び出力電流Ioのサンプリング周期と一致していることが望ましい。
【0097】
ゲートブロック部47は、ゲートブロック信号GBに基づいて、ゲート駆動信号GD2を遮断し、インバータユニット2の電流出力を停止させる出力停止手段である。電圧異常検出部3からゲートブロック信号GBが出力されると、ゲートブロック部47は、ゲート駆動信号GD2の出力を停止させる。このため、インバータ回路21のスイッチング動作が停止し、インバータユニット2の電流出力を停止させることができる。
【0098】
<同期制御部43>
図8は、図7の同期制御部43の一構成例を示したブロック図である。この同期制御部43は、系統電圧Voに対し、周波数及び位相が同期した基準信号IREFを生成するPLL(Phased Lock Loop)であり、位相誤差検出部6、同期完了判定部64、周波数制御部65、位相オフセット制御部66及び基準信号生成部67からなる。
【0099】
位相誤差検出部6は、系統電圧Voに対する基準信号IREFの位相誤差φを検出する手段であり、直交成分算出部60、第1直交成分積算部61、第2直交成分積算部62及び位相誤差算出部63からなる。
【0100】
直交成分算出部60は、電圧検出器23で検出された系統電圧Voを互いに直交する第1直交成分VoD及び第2直交成分VoQに分離する手段であり、2つの乗算器601,602及びπ/2移相器603からなる。
【0101】
π/2移相器603は、基準信号IREF=cosωtの位相をπ/2シフトさせ、基準信号IREFと直交する直交信号IREF'=sinωt=cos(ωt−π/2)を生成する。乗算器601は、系統電圧Voと基準信号IREFとの積を求めることにより、基準信号IREFと同相の第1直交成分VoDを求める。一方、乗算器602は、系統電圧VoとIREF'との積を求めることにより、直交信号IREF'と同相の第2直交成分VoQを求める。系統電圧Voは位相誤差φを用いて、Vo=cos(ωt−φ)とあらわすことができる。このため、第1直交成分VoD及び第2直交成分VoQは、三角関数の積和公式を用いることにより、式(1),(2)のように表すことができる。
【数1】

【0102】
第1直交成分積算部61は、直交成分算出部60が求めた第1直交成分VoDを基準信号IREFの1周期にわたり積算し、積算値ΣVoDを求める。同様にして、第2直交成分積算部62は、直交成分算出部60が求めた第2直交成分VoQを1周期にわたり積算し、積算値ΣVoQを求める。積算値ΣVoD,ΣVoQは、いずれも基準信号IREFの1周期にわたる積算値であるが、最初の1周期が経過した後は、系統電圧Voのサンプリング周期ごとに求められる。この様にして求められる積算値ΣVoQ,ΣVoDは、式(1),(2)を用い、さらに三角関数の1周期にわたる積算値がゼロになることを利用すれば、次式(3),(4)のように表すことができる。
【数2】

【0103】
位相誤差算出部63は、これらの積算値の比の逆正接arctan(VoQ/VoD)を求めることにより、系統電圧Voに対する基準信号IREFの位相誤差φを求める。逆正接arctan(VoQ/VoD)が、位相誤差φに相当することは、次式(5)に示す通りである。
【数3】

【0104】
同期完了判定部64は、位相誤差φを同期判定閾値φthと比較し、この比較結果に基づいて同期完了信号SCを生成する。同期判定閾値φthは、同期完了時における位相誤差の許容値として、予め定められた値であり、位相誤差φが、同期判定閾値φth以下であれば、同期完了信号SCが出力される。
【0105】
周波数制御部65は、位相誤差φに基づいて、基準信号IREFの周波数を制御する。例えば、所定の比例ゲイン及び積分ゲインを用いたPI制御を行うことにより、位相誤差φに応じた基準信号IREFの周波数調整量△fを求め、基準信号生成部67へ出力する。このようなPI制御によって、位相誤差φを精度よく減少させることができるが、位相誤差φを安定的に抑圧するためには、PI制御のゲインをあまり大きくすることができず、応答速度の向上には限界がある。
【0106】
位相オフセット制御部66は、位相誤差φに基づいて、基準信号IREFの位相オフセットを制御する。例えば、位相誤差φを基準信号IREFのサンプリング数に換算し、位相オフセット調整量△φとして、基準信号生成部67へ出力する。この様な位相オフセット制御は、位相誤差φの大きさにかかわらず、位相誤差φを迅速に減少させることができる。特に、基準信号IREFに大きな位相誤差が発生している場合であっても、このような位相誤差の抑制を迅速に行うことができる。ただし、基準信号IREFの周波数誤差を抑制することはできない。また、基準信号IREFが周波数誤差を有する場合、位相誤差φを正確に求めることができないことから、位相オフセット制御により、精度の高い同期制御を行うことはできない。
【0107】
このため、位相オフセット制御部66は、位相誤差φの絶対値を調整判定閾値φth2と比較し、この比較結果に基づいて、基準信号IREFの位相オフセットを制御することが望ましい。調整判定閾値φth2は、位相オフセット制御が行われるべき位相誤差φの絶対値の下限値として予め定められた値である。位相誤差が−π〜πの範囲内であれば、例えば、π/2を調整判定閾値φth2とすることができる。位相誤差φの絶対値が調整判定閾値φth2以上であれば、位相オフセット制御を行う一方、調整判定閾値φth2未満であれば、位相オフセット制御を行わない。この様な構成を採用することにより、位相誤差φが小さい場合に位相オフセット制御を行うことにより、位相誤差φを拡大させてしまうのを防止することができる。
【0108】
基準信号生成部67は、自走制御信号SR、周波数調整量△f及び位相オフセット調整量△φに基づいて、基準信号IREFを生成する。基準信号IREFは、例えば正弦波からなる周期信号である。
【0109】
基準信号IREFの同期制御は、自走制御信号SRに基づいて行われる。すなわち、電圧異常検出部3から自走制御信号SRが入力されている場合には、同期制御を行わない自走状態となり、周波数及び位相オフセットをともに固定したままで基準信号IREFが生成される。一方、自走制御信号SRが入力されていない場合には、周波数又は位相オフセットを制御対象とする同期制御が行われる。周波数制御は、周波数制御部65からの周波数調整量△fに基づいて、基準信号IREFの周波数を変更する同期制御である。一方、位相オフセット制御は、位相オフセット制御部66からの位相オフセット調整量△φに基づいて、基準信号IREFの位相オフセットを変更する同期制御である。換言すれば、基準信号IREFを時間軸上で移動させるポジション変更を行って、基準信号IREFを不連続に変更する同期制御である。
【0110】
この実施例では、基準信号IREFが自走状態になるのは、位相誤差φを求めることができない停電期間TOUTのみであり、また、基準信号IREFの位相オフセット制御を行うのは、停電状態から復電した直後の第1同期調整期間TADJ1のみである。従って、これらの期間を除き、基準信号生成部67は、周波数調整量△fに基づいて、基準信号IREFの周波数制御を行っている。
【0111】
<同期制御部43の動作>
図9は、図8の同期制御部43の動作の一例を示したタイミングチャートであり、図3と同様の瞬時停電時における動作が示されている。電力系統102が通常状態の場合、基準信号生成部67は、基準信号IREFの位相誤差を減少させるように、周波数を制御対象とする同期制御を行っている。その後、系統電圧Voが低下し、電力系統102が停電状態になれば、電圧異常検出部3から自走制御信号SRが出力される。基準信号生成部67は、この自走制御信号SRに基づいて、基準信号IREFの同期制御を停止し、自走状態にする。
【0112】
そして、電力系統102が停電状態から復電すれば、電圧異常検出部3は自走制御信号SRの出力を終了する。このときの位相誤差φの絶対値が調整判定閾値φth2以上であれば、基準信号生成部67は、その後の第1同期調整期間TADJ1において、位相オフセット制御を行う。図中では、位相誤差φ=πであるため、第1同期調整期間TADJ1において位相オフセット制御が行われている。ここでは、基準信号IREFの1周期に相当する第1同期調整期間TADJ1において、復電直後の位相誤差φが求められ、第1同期調整期間TADJ1の最後にポジション変更が行われている。この様な位相オフセット制御により、位相誤差φを効果的に抑制することができる。
【0113】
第1同期調整期間TADJ1が終了すると、周波数制御のための第2同期調整期間TADJ2が開始される。第2同期調整期間TADJ2では、位相誤差φに基づいて周波数調整量△fが求められ、基準信号IREFの周波数が制御される。この様な周波数制御により、位相誤差φを更に精度よく抑制することができ、その結果、位相誤差φが同期判定閾値φth未満になれば、同期完了信号SCが生成され、第2同期調整期間TADJ2が終了する。
【0114】
<電力調整装置101のフローチャート>
図10のステップS101〜S106及び図11のステップS201〜S208は、図4の電力調整装置101の動作の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは、電圧検出器23が系統電圧Voの低下を検出した場合に開始する。まず、系統電圧Voを電圧閾値Vt1と比較し、停電状態であるか否かを判別する(ステップS101)。その結果、停電状態であると判別された場合には、瞬時停電用のステップS201へ進む。一方、停電状態でない場合、系統電圧Voを電圧閾値Vt2と比較し、低電圧状態であるか否かを判別する(ステップS102)。その結果、停電状態及び低電圧状態のいずれでもなければ、当該フローチャートの処理を終了する。
【0115】
ステップS102において低電圧状態であると判別された場合、定電流制御が開始される(ステップS103)。つまり、低電圧状態の移行後も、電流出力を停止せず、電圧低下前の出力電流Ioに基づいて目標電流を定めた定電流制御が開始される。例えば、出力電流Ioの目標実効値が、電圧低下直前における出力電流Ioの実効値の90%となるように制御される。
【0116】
その後、系統電圧Voが電圧閾値Vt2を越えれば、低電圧状態から通常状態へ復電したと判断する(ステップS104)。そして、復電後の安定確認期間TSTBの間、系統電圧Voが通常状態を維持していれば、定電流制御を終了し、MPPT制御を再開し、当該フローチャートの処理を終了する(ステップS105,S106)。なお、安定確認期間TSTB内に、系統電圧Voが電圧閾値Vt1以下となる停電状態に移行すれば、ステップS201へ進み、電圧閾値Vt2以下となる低電圧状態に移行すれば、安定確認期間TSTBを再スタートさせる。
【0117】
一方、ステップS101において停電状態であると判別された場合、電流出力を停止する(ステップS201)。また、基準信号IREFは、周波数及び位相オフセットが固定され、同期制御を行わない自走状態になる(ステップS202)。
【0118】
その後、系統電圧Voが電圧閾値Vt2を越えれば、通常状態へ復電したと判断する(ステップS203)。復電後の第1同期調整期間TADJ1では、復電時の位相誤差φを求め、調整判定閾値φth2と比較する(ステップS204)。その結果、位相誤差φが調整判定閾値φth2未満であれば、ステップS206に進む一方、位相誤差φが調整判定閾値φth2以上であれば、位相誤差φを相殺するように、基準信号IREFの位相オフセット制御が行われる(ステップS205)。
【0119】
位相オフセット制御が行われた後、第2同期調整期間TADJ2が開始され、基準信号IREFの周波数制御による同期制御が再開される(ステップS206)。その後、基準信号IREFの位相誤差φが、同期判定閾値φth以下になれば、同期調整が完了したと判断され、第2同期調整期間TADJ2を終了する(ステップS207)。
【0120】
第2同期調整期間TADJ2の終了後、ソフトスタート期間TSFTが開始され、定電流制御による電流出力が再開される。ソフトスタート期間TSFTにおける出力電流Ioは、電圧低下前の出力電流Ioに基づいて定められる。例えば、出力電流Ioの目標実効値が、電圧低下直前における出力電流Ioの実効値の0%から90%へ増大するように定められる。ソフトスタート期間TSFTの終了後は、ステップS105へ進み、安定確認期間TSTBを経て、MPPT制御が再開される。
【0121】
なお、本実施の形態では、停電状態から通常状態への復電後に、基準信号IREFの位相オフセットを制御する場合の例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。すなわち、系統電圧Voに対する同期が外れ、基準信号IREFに大きな位相誤差φが発生した場合であれば、同様にして、位相誤差φに基づいて、基準信号IREFの位相オフセットを制御することにより、当該位相誤差φを迅速かつ効果的に減少させることができる。
【0122】
また、本実施の形態では、安定確認期間TSTBが、予め定められた一定時間からなる場合の例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。すなわち、安定確認期間TSTBの長さや終了タイミングは、必要に応じて定めることができる。
【0123】
また、本実施の形態では、分散型電源がソーラーパネルからなる場合の例について説明したが、本発明は、このような場合のみに限定されない。例えば、蓄電池、化石燃料発電装置、風力発電装置などの分散型電源を電力系統に連系させるための電力調整装置にも本発明を適用することができる。従って、ブーストレギュレータ1を備え、MPPT制御を行う電力調整装置のみに限定されない。
【符号の説明】
【0124】
1 ブーストレギュレータ
10 電圧検出器
11 電流検出器
12 チョッパ回路
13 チョッパ回路制御部
2 インバータユニット
20,24 電圧検出器
21 インバータ回路
22 電流検出器
24 インバータ回路制御部
3 電圧異常検出部
30 乗算器
31 MPPT制御部
32 減算器
33 PWM制御部
34 ゲートブロック部
4 出力電流制御部
40,45 減算器
41 定電流制御部
42 制御切替部
43 同期制御部
44 乗算器
46 PWM制御部
47 ゲートブロック部
50 第1比較部
51 第2比較部
52 ゲートブロック信号生成部
53 自走制御信号生成部
54 定電流制御信号生成部
6 位相誤差検出部
60 直交成分算出部
61 第1直交成分積算部
62 第2直交成分積算部
63 位相誤差算出部
64 同期完了判定部
65 周波数制御部
66 位相オフセット制御部
67 基準信号生成部
100 ソーラーパネル
101 電力調整装置
102 電力系統
103 分電盤
104 系統電源
105 負荷
CC 定電流制御信号
GB ゲートブロック信号
GD1,GD2 ゲート駆動信号
IeCC 指定目標実効値
IeREF 目標実効値
Ii 入力電流
Io 出力電流
IoERR 出力電流誤差
IoREF 目標出力電流
REF 基準信号
S 系統連系システム
SC 同期完了信号
SR 自走制御信号
ADJ1 第1同期調整期間
ADJ2 第2同期調整期間
LOW 低電圧期間
OUT 停電期間
SFT ソフトスタート期間
STB 安定確認期間
Vi 入力電圧
ViERR 入力電圧誤差
ViREF 目標入力電圧
Vm 中間電圧
VmERR 中間電圧誤差
VmREF 目標中間電圧
Vo 系統電圧
VoD 第1直交成分
VoQ 第2直交成分
Vt1 停電判定閾値
Vt2 低電圧判定閾値
φ 位相誤差
φth 同期判定閾値
φth2 調整判定閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源を電力系統に連系するための電力調整装置において、
正弦波からなる基準信号を生成する基準信号生成手段と、
上記基準信号に基づいて、上記分散型電源から供給される直流電力を交流電力へ変換し、上記電力系統へ出力するインバータ回路と、
上記電力系統の系統電圧を検出する電圧検出手段と、
上記系統電圧に対する上記基準信号の位相誤差を求める位相誤差検出手段と、
上記位相誤差に基づいて、上記基準信号の位相オフセットを制御する位相オフセット制御手段とを備えたことを特徴とする電力調整装置。
【請求項2】
上記位相誤差に基づいて、上記基準信号の周波数を制御する周波数制御手段と、
上記系統電圧を停電判定閾値と比較し、上記電力系統の停電状態を判別する停電判別手段と、
停電時に上記インバータ回路の出力を停止させる出力停止手段とを備え、
上記位相オフセット制御手段は、停電からの復電後の第1同期調整期間に、上記基準信号の位相オフセットを制御し、
上記周波数制御手段は、第1同期調整期間の終了後の第2同期調整期間に、上記基準信号の周波数を制御することを特徴とする請求項1に記載の電力調整装置。
【請求項3】
上記位相誤差を調整判定閾値と比較する比較手段を備え、
上記位相オフセット制御手段は、上記比較手段の比較結果に基づいて、上記基準信号の位相オフセットを制御することを特徴とする請求項2に記載の電力調整装置。
【請求項4】
停電中及び第1同期調整期間における上記基準信号の周波数を固定し、停電前における上記基準信号の周波数と一致させることを特徴とする請求項3に記載の電力調整装置。
【請求項5】
上記位相誤差検出手段は、
上記基準信号を用いて、上記系統電圧を互いに直交する第1直交成分及び第2直交成分に分離する直交成分算出手段と、
上記基準信号の1又は2以上の周期からなる積算期間について、第1直交成分の積算値を求める第1直交成分積算手段と、
上記積算期間について、第2直交成分の積算値を求める第2直交成分積算手段と、
第1直交成分及び第2直交成分の各積算値に基づいて、上記位相誤差を求める位相誤差算出手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の電力調整装置。
【請求項6】
第1同期調整期間は、上記基準信号の1周期であることを特徴とする請求項5に記載の電力調整装置。
【請求項7】
上記系統電圧を上記停電判定閾値よりも大きい低電圧判定閾値と比較し、上記電力系統の通常状態及び低電圧状態を判別する低電圧状態判別手段と、
上記分散型電源から供給され、上記インバータ回路へ入力される入力電圧を検出する入力電圧検出手段と、
上記入力電圧に基づいて、上記インバータ回路の出力電流を制御する出力電流制御手段とを備え、
上記出力電流制御手段は、上記電力系統が低電圧状態であれば、当該低電圧状態への移行前の通常状態における上記入力電圧に基づいて目標電流を求め、上記インバータ回路の定電流制御を行うことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の電力調整装置。
【請求項8】
上記出力制御手段は、低電圧状態からの復電後の安定確認期間において、当該低電圧状態における目標電流を用いて、上記インバータ回路の定電流制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の電力調整装置。
【請求項9】
上記目標電圧は、上記低電圧状態への移行前の通常状態における上記出力電流よりも小さい値からなることを特徴とする請求項8に記載の電力調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−249368(P2012−249368A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117470(P2011−117470)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】