説明

電力需給状況推定方法

【課題】容易な手法で、需要家の電力需給状況を都度正確に把握することができる電力需給状況推定方法を提供する。
【解決手段】電力需給状況推定装置20は、電力系統の基本波の非整数倍で異なる2つの次数の次数間高調波電流を変電所高圧母線13を通じて系統に注入し、高圧配電線14a,14bを通じての需要家A,B毎の電力系統の電圧及び電流の検出から、注入された各次数高調波電流を含む需要家A,B毎の電力系統のアドミタンスをそれぞれ算出する。次いで、算出した需要家A,B毎の電力系統の各次数成分のアドミタンスから需要家A,B毎の電力系統の誘導性要素(誘導性サセプタンス)を算出する。そして、算出した需要家A,B毎の電力系統の誘導性要素を用い、需要家A,Bの電力需要を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家の電力需要や発電出力の状況を推定する電力需給状況推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への影響が極めて小さいクリーンエネルギーとして注目の太陽光発電の導入が進みつつあり、多くの太陽光発電設備が電力系統に接続されるようになってきた。このような状況では、太陽光発電により電力系統側から見た電力需要の減少分が正確に把握できないため、系統事故によりその電力系統に接続された太陽光発電設備が単独運転防止等の機能で一斉に解列した場合に、復旧が必要な電力需要を正確に把握できず、早期の事故復旧に影響を及ぼす虞があった。そのため、太陽光発電出力を把握する技術の開発が望まれている。
【0003】
その1つに、例えば特許文献1に開示の技術がある。特許文献1の技術は、太陽光発電設備が設置された地域の日射量データを取得し、取得した日射量データからその太陽光発電設備の出力を推定するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3734344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、設置地域の日射量データから太陽光発電出力を推定するため、発電出力の把握は比較的容易であるものの、刻々と変化する太陽光発電出力をその都度正確に把握することは難しかった。
【0006】
また近年では、所謂スマートメーターと言われる需要家との間で双方向の通信機能を有する電力メータを用いて需要家の電力需給状況を都度把握可能にすることが検討されている。スマートメーターを用いることで、需要家の太陽光発電出力をその都度正確に把握することは可能である。
【0007】
しかしながら、スマートメーターの導入には、その技術の標準化や通信インフラの整備、運用の制度化等の課題が多く、普及には時間を要する。つまり、導入の容易な短期的な対応策ではない。
【0008】
そもそも上記した太陽光発電出力の推定等においては、各需要家の電力需要を正確に把握する必要があるが、上記したスマートメーターを頼らず容易に、需要家の電力需給状況を都度正確に把握することが望まれている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、容易な手法で、需要家の電力需給状況を都度正確に把握することができる電力需給状況推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電力系統に接続された各需要家の電力需給状況を推定する電力需給状況推定方法であって、前記電力系統の基本波の非整数倍でかつ異なる2つの次数の次数間高調波電流をその電力系統に注入し、前記需要家毎の電力系統の電圧及び電流を検出し、前記注入した各次数高調波電流を含む前記需要家毎の電力系統の電流電圧比をそれぞれ算出し、前記算出した前記需要家毎の電力系統の各次数成分の電流電圧比から前記需要家毎の電力系統の誘導性要素を算出し、前記算出した前記需要家毎の電力系統の誘導性要素を用い、前記需要家の電力需要を推定する、ことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、電力系統の基本波の非整数倍で異なる2つの次数の次数間高調波電流が系統に注入され、需要家毎の電力系統の電圧及び電流の検出から、注入された各次数高調波電流を含む需要家毎の電力系統の電流電圧比(アドミタンス又はインピーダンス)がそれぞれ算出される。次いで、算出された需要家毎の電力系統の各次数成分の電流電圧比から需要家毎の電力系統の誘導性要素(誘導性サセプタンス又は誘導性リアクタンス)が算出される。そして、算出された需要家毎の電力系統の誘導性要素が用いられ、需要家の電力需要が推定される。つまり、異なる2つの次数間高調波電流を電力系統に注入し、これに伴う需要家毎の電力系統の各次数成分の電流電圧比(アドミタンス又はインピーダンス)の連立方程式を解くことで、需要家の電力需要の推定に用いるその誘導性要素の算出が可能となり、需要家の電力需要の推定が可能となる。これにより、刻々と変化する需要家の電力需要をその都度正確にしかも容易に推定できるようになる。また、電力系統では定常的に基本波の非整数倍の次数高調波成分の存在は極めて小さいため、推定時の非整数倍の次数間高調波電流の注入は僅かであっても十分な効果が得られる。また、電気事業者のみで対応(一元化)できるため、この意味でも電力需要の推定が容易である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力需給状況推定方法において、前記需要家毎の電力系統の有効電力を算出し、算出した有効電力と前記推定した電力需要とから前記需要家の太陽光発電出力を推定する、ことをその要旨とする。
【0013】
この発明では、需要家毎の電力系統の有効電力が算出され、算出された有効電力と推定した電力需要とから需要家の太陽光発電出力が推定される。これにより、刻々と変化する太陽光発電出力においてもその都度正確にしかも容易に推定できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易な手法で、需要家の電力需給状況を都度正確に把握することができる電力需給状況推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の電力系統を示す系統図である。
【図2】系統電圧の高調波歪みを説明するための特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態の電力系統では、系統電源11と変電所変圧器12を介して接続される変電所高圧母線13には、複数の高圧配電線14a,14bがそれぞれ遮断器15a,15bを介して接続されている。各高圧配電線14a,14bには、各需要家A,Bの負荷(需要家負荷)16a,16bがそれぞれ接続されている。変電所変圧器12を介して電圧変換された系統電源11からの交流電力は、変電所高圧母線13及び各高圧配電線14a,14bを介して各需要家負荷16a,16bに供給される。需要家負荷16a,16bの消費による各需要家A,Bの電力需要は、定期又は所望時に動作する電力需給状況推定装置20にてその推定が可能である。
【0017】
また、高圧配電線14bには、需要家Bにて設置した太陽光発電設備17が接続されている。太陽光発電設備17は、電力系統と連系して発電動作を行い、その発電電力は需要家負荷16bにて消費されるとともに、余剰電力は高圧配電線14bを通じて系統側に逆潮流として出力される。太陽光発電設備17の出力は、電力需給状況推定装置20にて先の電力需要推定とともにその推定が可能である。
【0018】
電力需給状況推定装置20は、計器用変圧器21、計器用変流器22a,22b及び推定演算器23に加え、次数間高調波注入器24を備えている。計器用変圧器21は、変電所高圧母線13上に設置され、計器用変流器22a,22bは、各需要家A,Bの高圧配電線14a,14b上にそれぞれ設置される。次数間高調波注入器24は、変電所高圧母線13に接続される。
【0019】
計器用変圧器21は、変電所高圧母線13の電圧(高圧母線電圧)を検出すべく、それに相当する2次電圧を検出し、検出値は推定演算器23に入力される。
計器用変流器22a,22bは、各高圧配電線14a,14bに流れる電流(高圧配電線電流)を検出すべく、それに相当する2次電流をそれぞれ検出し、各検出値は推定演算器23に入力される。
【0020】
推定演算器23は、入力された2次電圧、2次電流から高圧母線電圧及び各高圧配電線電流を算出し、これらから各高圧配電線14a,14bの系統での有効電力の算出を行う。また、推定演算器23は、次数間高調波注入器24を用い、各需要家A,Bの電力需要と太陽光発電出力の推定とを行う。
【0021】
次数間高調波注入器24は、定期又は所望時に行われる各需要家A,Bの電力需要推定と太陽光発電設備17の出力推定に際し、次数間高調波電流(非整数倍の次数高調波電流)を変電所高圧母線13を通じて系統上に注入する。従って、注入後においては、注入した所定次数の高調波成分が系統上に重畳し、計器用変圧器21及び計器用変流器22a,22bを通じて検出される高圧母線電圧及び高圧配電線電流に含まれるようになる。
【0022】
ここで、図2において、系統電圧の周波数分布、即ち系統電圧に存在する高調波歪みを示すように、系統の交流電圧は50又は60Hzであり、同周波数の基本波(1次数)に重畳する他の次数高調波成分が定常的に存在している。系統電圧では、基本波の整数倍、特に奇数倍の次数高調波成分が大きく、逆に整数倍でない(非整数倍)の次数高調波成分は非常に小さいものとなっている。
【0023】
これを踏まえ、次数間高調波注入器24にて注入する高調波電流の次数は、基本波に定常的に重畳している次数高調波成分と明確に区別するために、基本波の非整数倍の次数に設定されている。つまり、小さな次数間高調波電流の注入であっても、その次数高調波成分が定常的に略存在しない系統上で明確に反映されるようにしている。
【0024】
また本実施形態では、電力需要と太陽光発電出力の推定に2つ(n1,n2)の次数成分の高調波電流の注入が行われる。本実施形態では、例えば2.2次成分(n1=2.2)と、2.4次成分(n2=2.4)といった2つの次数間高調波電流が系統上に注入される。そして、このような2つ(n1,n2)の次数間高調波電流の系統への注入にて、推定演算器23では以下のようにして電力需要と太陽光発電出力の推定が行われる。
【0025】
先ず、次数間高調波注入器24から系統へのn1,n2次高調波電流の注入所定時間後に、計器用変圧器21及び計器用変流器22a,22bを通じて取得した高圧母線電圧及び各高圧配電線電流に含まれるn1,n2次高調波成分の電圧・電流が算出される。次いで、算出されたn1,n2次高調波成分の電圧・電流から各高圧配電線14a,14bの系統の同次数成分のアドミタンスが算出される。n1,n2次高調波成分のアドミタンスYn1,Yn2は、次式(a)(b)に示すように、

Yn1=Gn1−jBn1=Gn1−j(BLn1−BCn1) ・・・(a)
Yn2=Gn2−jBn2=Gn2−j(BLn2−BCn2) ・・・(b)

となる。但し、Gn1:次数n1のコンダクタンス、Bn1:次数n1のサセプタンス、BLn1:次数n1の誘導性サセプタンス、BCn1:次数n1の容量性サセプタンス、Gn2:次数n2のコンダクタンス、Bn2:次数n2のサセプタンス、BLn2:次数n2の誘導性サセプタンス、BCn2:次数n2の容量性サセプタンス、である。
【0026】
次いで、算出された各高圧配電線14a,14bの系統のn1,n2次高調波成分におけるアドミタンスからコンダクタンスとサセプタンスが算出され、基本波のコンダクタンスとサセプタンスに換算される。ここで、基本波のアドミタンスは、次式(c)に示すように、

Y=G−jB=G−j(BL−BC) ・・・(c)

である。但し、G:基本波のコンダクタンス、B:基本波のサセプタンス、BL:基本波の誘導性サセプタンス、BC:基本波の容量性サセプタンス、である。
【0027】
BL=1/jωL、BC=jωC(ω:基本波角周波数)であることから、BLn1、BCn1、BLn2、BCn2はそれぞれ、

BLn1=1/jn1ωL=1/n1・1/jωL=1/n1・BL
BCn1=jn1ωC=n1・jωC=n1・BC
BLn2=1/jn2ωL=1/n2・1/jωL=1/n2・BL
BCn2=jn2ωC=n2・jωC=n2・BC

となる。G=Gn1=Gn2=1/Rであり、上記式(a)(b)から、

Bn1=BLn1−BCn1=1/n1・BL−n1・BC ・・・(d)
Bn2=BLn2−BCn2=1/n2・BL−n2・BC ・・・(e)

となる。
【0028】
式(d)より、

BC=(1/n1・BL−Bn1)/n1=1/n1^2・BL−1/n1・Bn1 ・・・(f)

となる。「^2」は2乗を表す。式(f)を上記式(e)に代入すると、

Bn2=1/n2・BL−n2・(1/n1^2・BL−1/n1・Bn1)
=1/n2・BL−n2/n1^2・BL−n2/n1・Bn1 ・・・(g)

となる。式(g)を変形すると、

n2/n1^2・BL−1/n2・BL=n2/n1・Bn1−Bn2
(n2/n1^2−1/n2)・BL=n2/n1・Bn1−Bn2

となり、基本波の誘導性サセプタンスBLは、

BL=(n2/n1・Bn1−Bn2)/(n2/n1^2−1/n2) ・・・(h)

となる。
【0029】
次いで、式(h)から算出された基本波の誘導性サセプタンスBLと、上記において算出の高圧母線電圧を用い、次式(i)にて高圧配電線14a,14bの系統毎(需要家A,B毎)の電力需要が算出(推定)される。高圧母線電圧をV、電力需要をPloadとすると、

Pload=(G+|BL|・X)・V^2 ・・・(i)

となる。|BL|は、誘導性サセプタンスBLの絶対値である。この電力需要Ploadの内、電灯需要はG・V^2、モータ需要は|BL|・X・V^2である。因みに、「X」はモータ負荷の拘束リアクタンスであり、一般的に0.2程度の数値である。
【0030】
また、需要家Bにおいては、算出された電力需要Ploadと、上記において算出の高圧配電線14bの系統の有効電力を用い、次式(j)にて太陽光発電出力が算出(推定)される。有効電力をP、太陽光発電出力をPpvとすると、有効電力Pは、電力需要Ploadから太陽光発電出力Ppvを差し引いたものであるから、結果、太陽光発電出力Ppvは、

Ppv=Pload−P ・・・(j)

から算出される。
【0031】
このように本実施形態においては、2つの次数の高調波電流を系統に注入し、2つの次数の高調波成分のアドミタンスの連立方程式を系統毎に解くことにより、式(i)で用いる基本波の誘導性サセプタンスBLの取得が可能である。これに対し、単一次数の高調波成分のアドミタンスからは、サセプタンスが誘導性と容量性の合成でしか得られないため、誘導性サセプタンスBLの取得はできない。つまり、本実施形態のように誘導性サセプタンスBLの取得が可能となったことで、各需要家A,Bの電力需要Ploadのその都度の正確な推定(算出)ができ、また太陽光発電設備17を有する需要家Bの太陽光発電出力Ppvのその都度の正確な推定(算出)ができる。こうして本実施形態では、電力需要Ploadと太陽光発電出力Ppvとを含む各需要家A,Bの電力需給状況を容易に都度正確に把握することができるようになっている。
【0032】
因みに、上記式(d)を変形すると、

BL=n1^2・BC+n1・Bn1 ・・・(k)

となる。式(k)を上記式(e)に代入すると、

Bn2=1/n2・(n1^2・BC+n1・Bn1)−n2・BC
=n1^2/n2・BC+n1/n2・Bn1−n2・BC ・・・(l)

となる。式(l)を変形すると、

n2・BC−n1^2/n2・BC=n1/n2・Bn1−Bn2
(n2−n1^2/n2)・BC=n1/n2・Bn1−Bn2

となり、基本波の容量性サセプタンスBCは、

BC=(n1/n2・Bn1−Bn2)/(n2−n1^2/n2) ・・・(m)

となる。そして、式(m)で得られる容量性サセプタンスBCを用い、次式(n)、

SC=|BC|・V^2 ・・・(n)

の演算(|BC|は、容量性サセプタンスBCの絶対値)により、力率改善用コンデンサ容量SCを算出することもできる。
【0033】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)電力系統の基本波の非整数倍で異なる2つの次数の次数間高調波電流が変電所高圧母線13を通じて系統に注入され、高圧配電線14a,14bを通じての需要家A,B毎の電力系統の電圧及び電流の検出から、注入された各次数高調波電流を含む需要家A,B毎の電力系統のアドミタンスがそれぞれ算出される。次いで、算出された需要家A,B毎の電力系統の各次数成分のアドミタンスから需要家A,B毎の電力系統の誘導性要素(誘導性サセプタンスBL)が算出される。そして、算出された需要家A,B毎の電力系統の誘導性要素(誘導性サセプタンスBL)が用いられ、需要家A,Bの電力需要Ploadが推定される。つまり、異なる2つの次数間高調波電流を電力系統に注入し、これに伴う需要家A,B毎の電力系統の各次数成分のアドミタンスの連立方程式を解くことで、需要家A,Bの電力需要の推定に用いるその誘導性要素の算出が可能となり、需要家A,Bの電力需要の推定が可能となる。これにより、刻々と変化する需要家A,Bの電力需要をその都度正確にしかも容易に推定することができる。また、電力系統では定常的に基本波の非整数倍の次数高調波成分の存在は極めて小さいため、推定時の非整数倍(本実施形態では、2.2次と2.4次)の次数間高調波電流の注入は僅かであっても十分な効果を得ることができる。また、電気事業者のみで対応(一元化)できるため、この意味でも電力需要の推定を容易に行うことができる。
【0034】
(2)需要家Bの電力系統で算出した有効電力Pと推定した電力需要Ploadとから需要家Bの太陽光発電出力Ppvが推定される。これにより、刻々と変化する太陽光発電出力Ppvにおいてもその都度正確にしかも容易に推定することができる。
【0035】
(3)需要家A,B毎の電力系統の容量性要素(容量性サセプタンスBC)の算出から、力率改善用コンデンサ容量SCを容易かつ正確に推定することができる。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0036】
・上記実施形態では特に言及しなかったが、次数間高調波注入器24は、電力需給状況推定装置20と一体、若しくは別体で備えてもよい。また、太陽光発電の余剰電力対策として設置される電力貯蔵装置等と一体に組み込んでもよい。
【0037】
・上記実施形態では、需要家A,B毎の電力系統の電流電圧比としてアドミタンス(コンダクタンス,サセプタンス)を用いたが、インピーダンス(レジスタンス,リアクタンス)を用いてもよい。
【0038】
・上記実施形態では、系統に注入する異なる2つの次数(n1,n2)の高調波電流として2.2次と2.4次の高調波電流を用いたが、これ以外の次数の高調波電流を用いてもよい。また、異なる2つの次数の高調波電流を系統に注入したが、異なる3以上の次数の高調波電流を注入し、少なくとも2つの系統毎のアドミタンスで連立方程式を解いて、各種の算出を行うようにしてもよい。
【0039】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 請求項1又は2に記載の電力需給状況推定方法において、
前記需要家毎の電力系統の容量性要素を算出し、その算出した容量性要素を用いて力率改善用コンデンサ容量を推定する、ことを特徴とする電力需給状況推定方法。
【0040】
このようにすれば、需要家毎の電力系統の容量性要素の算出から、力率改善用コンデンサ容量を容易かつ正確に推定することができる。
(ロ) 電力系統に接続された各需要家の電力需給状況を推定する電力需給状況推定装置であって、
前記電力系統の基本波の非整数倍でかつ異なる2つの次数の次数間高調波電流をその電力系統に注入する次数間高調波電流注入手段と、
前記需要家毎の電力系統の電圧及び電流を検出し、前記注入した各次数高調波電流を含む前記需要家毎の電力系統の電流電圧比をそれぞれ算出する電流電圧比算出手段と、
前記算出した前記需要家毎の電力系統の各次数成分の電流電圧比から前記需要家毎の電力系統の誘導性要素を算出する誘導性要素算出手段と、
前記算出した前記需要家毎の電力系統の誘導性要素を用い、前記需要家の電力需要を推定する電力需要推定手段と、
を備えたことを特徴とする電力需給状況推定装置。
【0041】
このようにすれば、請求項1と同様な作用効果を得ることができる。
(ハ) 上記(ロ)に記載の電力需給状況推定装置において、
前記需要家毎の電力系統の有効電力を算出し、算出した有効電力と前記推定した電力需要とから前記需要家の太陽光発電出力を推定する太陽光発電出力推定手段を備えたことを特徴とする電力需給状況推定装置。
【0042】
このようにすれば、請求項2と同様な作用効果を得ることができる。
(二) 上記(ロ)(ハ)に記載の電力需給状況推定装置において、
前記需要家毎の電力系統の容量性要素を算出する容量性要素算出手段と、
前記算出した前記容量性要素を用いて力率改善用コンデンサ容量を推定する力率改善用コンデンサ容量推定手段と、
を備えたことを特徴とする電力需給状況推定装置。
【0043】
このようにすれば、上記(イ)と同様な作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
13…変電所高圧母線(電力系統)、14a,14b…高圧配電線(電力系統)、20…電力需給状況推定装置、A,B…需要家、P…有効電力、Ppv…太陽光発電出力、Pload…電力需要、Yn1,Yn2…アドミタンス(電流電圧比)、n1,n2…次数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続された各需要家の電力需給状況を推定する電力需給状況推定方法であって、
前記電力系統の基本波の非整数倍でかつ異なる2つの次数の次数間高調波電流をその電力系統に注入し、
前記需要家毎の電力系統の電圧及び電流を検出し、前記注入した各次数高調波電流を含む前記需要家毎の電力系統の電流電圧比をそれぞれ算出し、
前記算出した前記需要家毎の電力系統の各次数成分の電流電圧比から前記需要家毎の電力系統の誘導性要素を算出し、
前記算出した前記需要家毎の電力系統の誘導性要素を用い、前記需要家の電力需要を推定する、
ことを特徴とする電力需給状況推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力需給状況推定方法において、
前記需要家毎の電力系統の有効電力を算出し、算出した有効電力と前記推定した電力需要とから前記需要家の太陽光発電出力を推定する、
ことを特徴とする電力需給状況推定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−228089(P2012−228089A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94307(P2011−94307)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】