電動刃物研ぎ機
【課題】 薄刃包丁などのように刃の両面を研磨する必要のある刃物を研磨する際に、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく円滑に刃を研磨できる電動刃物研ぎ機を提供することを目的とする
【解決手段】 研磨砥石8の研磨面19は円錐面に形成され、回転用駆動装置はハウジング5の中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を前記研磨面19のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機1であって、刃物の刃の先端を母線23の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面19のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面19に宛がうことを可能にする手段を有する。
【解決手段】 研磨砥石8の研磨面19は円錐面に形成され、回転用駆動装置はハウジング5の中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を前記研磨面19のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機1であって、刃物の刃の先端を母線23の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面19のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面19に宛がうことを可能にする手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動源により研磨砥石を回転させて刃物を研ぐ電動刃物研ぎ機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電動刃物研ぎ機の研磨砥石は円板状に形成されている。そして、その円板状研磨砥石の周面又は端面が研磨面として使用される。円板状研磨砥石は比較的厚みが小さいので、周面を研磨面としたときは研磨面の幅が小さくなり、例えば包丁のように刃渡りの長い刃物には不向きである。また、研磨砥石の端面を研磨面としたときは、包丁の刃が円形の研磨面を横切るように刃を宛がうので、研磨面が刃に向かうように回転する研磨と、研磨面が刃から遠ざかるように回転する研磨の異なる2つの研磨が同時に行われる。この結果、刃の半分が研磨面に押され刃の他の半分が研磨面に引っ張られるので、刃を押す力と引く力が刃に同じ回転方向の力を与えて包丁を回転させる作用をなす。このために、包丁が安定せず研磨しづらいのである。
【0003】
このような円板状の研磨砥石の欠点である研磨面の幅を広くして刃を効率的に研磨するための砥石が特許文献1に開示されている円錐面を研磨面とした研磨砥石である。円板の周面を円錐面とすることで研磨面の幅が広がり、円錐面の母線に沿って刃を当てることにより、研磨面が刃に対してすべて一方向に回転するので刃のすべてに統一した研磨が行われる。また、母線の長さで研磨が行われるので刃渡りの長い包丁に対応することができる。特許文献1の研ぎ機は、円錐面を研磨面とする研ぎ機であって、研磨面の幅が広く包丁のような刃渡りの長い包丁を効率的に研磨できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の研ぎ機は薄刃包丁のように刃の両面を研磨する必要がある包丁については大きな欠点を有している。それは、薄刃包丁の一方の刃面を研磨するときは支障がないが、他方の刃面を研磨するときに支障が生じる。その欠点を特許文献1の研ぎ機で薄刃包丁を研磨する場合について説明する。薄刃包丁の一方の刃面を研磨するときは、まず包丁の柄を右手で握り一方の刃面を円錐面である研磨面の母線に沿って宛がうことによって、砥石は刃から遠ざかる方向に回転し何ら支障なく研磨することができる。次に、他方の刃面を研磨するのであるが、右手に持っている包丁を裏返して右手で持ったままで研磨すると、刃に対する砥石の回転方向が逆になるのである。前述したように、一方の刃面を研磨する場合は砥石が刃面から遠ざかる方向に回転するから研磨について支障はない。しかし、裏返した包丁を右手に持って他方の刃面を研磨する場合は、砥石が刃面に向かって回転するので刃先縁に研磨面が衝突し、研磨中に包丁が踊ってしまうので円滑に研磨しづらい。そこで、包丁を左手に持ち替えて包丁の柄が体の左側にくるように包丁の刃の先端と柄を反転させ、包丁を裏返して他方の刃面を研磨すれば一方の刃面を同じように砥石が刃面から遠ざかる方向に回転する。しかし、包丁の柄が左側にあると、研磨中に包丁を移動するときに手や包丁の柄が特許文献1における支持案内板(1)と干渉して包丁の移動が阻害され研磨作業を実質的に行うことができないのである。したがって、包丁を右手に持って裏返しにして研磨するしかない。これが、特許文献1の欠点である。さらなる特許文献1の欠点は、包丁を右手に持って研磨するときにあいている左手を刃に添えると包丁が安定するので好ましいが、特許文献1の研ぎ機の場合、研磨中の包丁の刃にあいている左手を添えようとしても、支持案内板(1)が邪魔になって添えることができない点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭52−154790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薄刃包丁などのように刃の両面を研磨する必要のある刃物を研磨する際に、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく円滑に刃を研磨できる電動刃物研ぎ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、研磨砥石の研磨面は円錐面に形成され、回転研磨部材で構成される円形平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定され、前記回転用駆動装置はハウジングの中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を前記研磨面のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機であって、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面に宛がうことを可能にする手段を有している構成である。
【0008】
請求項2は、研ぎ機が、研磨中の刃物を研磨面のほぼ母線方向に移動させるためのガイドを有する構成である。
【0009】
請求項3は、研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延び、刃物の刃を前記母線の上方に位置させて研磨を行う構成である。
【0010】
請求項4は、ハウジングは鉛直線に対して所定の角度で斜め方向に立ち上がるように形成され、前記所定の角度は研磨砥石の研磨面である円錐面の傾斜角度と同じ角度であり、且つ回転軸もハウジングと同じ角度で斜め方向に延びることにより研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延びている構成である。
【0011】
請求項5は、ハウジングの上面と外周面が直角に交わり、回転軸はハウジングが立ち上がる方向と同方向に延びている構成である。
【0012】
請求項6は、所定の場所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の研磨面に自動的に供給する手段を有している構成である。
【0013】
請求項7は、外付けの排水容器がハウジングに着脱可能に取り付けられ、ハウジングは上面部を有し、該上面部よりも上方に回転研磨部材が取り付けられ、カバーが回転研磨部材を覆っており、カバーの内面を伝ってハウジングの上面部に溜まる研ぎ水を排水として前記排水容器に排出する通路が設けられている構成である。
【0014】
請求項8は、使用中に飛散する研ぎ水のハウジング内への侵入を防止する上面部をハウジングは有し、回転研磨部材は前記上面部の上側に位置し、回転研磨部材を覆うカバーがハウジングに着脱可能に取り付けられ、研磨面の一部がカバーの一部から覗いており、その覗いている研磨面により研磨がなされる構成である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、研磨砥石の研磨面は円錐面に形成され、回転研磨部材で構成される円形平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定され、回転用駆動装置はハウジングの中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を研磨面のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機であって、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面に宛がうことを可能にする手段を有している。したがって、一方の手に持った刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせて刃の一方の刃面を研磨面に宛がったとき及び刃物の刃の先端と柄を反転させて他方の手に持ち替え刃物を裏返しにして刃の他方の刃面を研磨面に宛がったときのいずれの場合も、刃物及びその刃物を持つ手が研ぎ機の各部材から干渉を受けない手段を有しているから、各部材が邪魔にならず円滑に研磨作業をすることができる。
【0016】
請求項2は、刃物を研磨面のほぼ母線の方向に位置させて研磨を行うためのガイドを有する。したがって、ガイドにより安定した研磨を行うことができる。
【0017】
請求項3は、研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延び、刃物の刃を前記母線の上方に位置させて研磨を行う。したがって、刃物を水平にして研磨することができるから作業が安定する。
【0018】
請求項4は、ハウジングは鉛直線に対して所定の角度で斜め方向に立ち上がるように形成され、前記所定の角度は研磨砥石の研磨面である円錐面の傾斜角度と同じ角度であり、且つ回転軸もハウジングと同じ角度で斜め方向に延びることにより研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延びている。したがって、請求項3と同様に刃物を水平にして研磨することができるから作業が安定する。また、特許文献1の研ぎ機は、ハウジングは垂直に立ち上がっているのに対し、回転軸は斜め方向に延びている。したがって、回転軸をモータに直結させたときはモータが横方向にはみ出すので、研ぎ機をハウジングで囲うためにはハウジングの内径を大きくしなければならない。そうすると、特許文献1の図面で示された水平状態の研磨面とハウジングの外周とが離れて、研磨面がハウジングの外周よりもずっと内側に存在することになるから、研磨しようとする包丁の柄やその柄を握っている手がハウジングの外周面に干渉され、刃の刃元付近の大部分が研磨できないのである。これに対して請求項4は、ハウジングの立ち上がる方向と回転軸の延びる方向が同じである。したがって、モータをハウジングで囲っても特許文献1のように研磨面とハウジングの外周が離れてしまうということがなく、研磨しようとする包丁の柄やその柄を握っている手がハウジングの外周面に干渉されることなく、刃物の刃のほぼ全長に亘って研磨することができる。
【0019】
請求項5は、ハウジングの上面と外周面が直角に交わり、回転軸はハウジングが立ち上がる方向と同方向に延びている。したがって、円錐面に形成された研磨面の母線は、ハウジングの上面と平行ではなくハウジングの外周面の立ち上がる方向とも平行でない。このため、母線方向に延びる刃物の柄と、ハウジング又はハウジングにカバーが装着されたときのそのカバーの上面又は外周面との間に空間が生じるので、研磨時に手や刃物の柄がハウジングの外周面に干渉されず、また、刃物の刃の先端と柄を反転させ刃物を裏返しにして刃の他方の刃面を研磨面に宛がったときにも、同じように刃物の柄と、ハウジング又はハウジングにカバーが装着されたときのそのカバーの上面又は外周面との間に空間が生じるので、研磨時に手や刃物の柄が研ぎ機の各部材に干渉されず邪魔にならないから円滑に研磨作業をすることができる。
【0020】
請求項6は、所定の場所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の研磨面に自動的に供給する手段を有している。したがって、研磨作業中頻繁に作業を止めて研ぎ水を研磨面に供給する必要がなく効率的な研磨ができる。
【0021】
請求項7は、外付けの排水容器がハウジングに着脱可能に取り付けられ、ハウジングは上面部を有し、該上面部よりも上方に回転研磨部材が取り付けられ、カバーが回転研磨部材を覆っており、カバーの内面を伝ってハウジングの上面部に溜まる研ぎ水を排水として前記排水容器に排出する通路が設けられている。排水容器が外付けなので、排水容器をハウジングから容易に取り外すことができ、排水を流し出す作業が容易である。
【0022】
ところで、特許文献1の研ぎ機はモータが露出しており、作業中に危険性が感じられ使用時の騒音が大きくなるので一般家庭で使用できるものではなく、一般大衆には受け入れられない研ぎ機である。また、モータが露出している研ぎ機はデザイン的にも家庭向きではなく、一般大衆向けに売り出すためには少なくともモータをハウジングで覆うことが必要である。さらに、仮に研ぎ水を必要とする砥石を使用すると研ぎ水がモータに降りかかるので、この研ぎ機は研ぎ水を必要とする砥石に使用することができない。したがって、この研ぎ機に研ぎ水を必要とする砥石を取り付けるときも、モータなどをハウジングで覆う必要がある。
【0023】
請求項8は、使用中に飛散する研ぎ水のハウジング内への侵入を防止する上面部をハウジングは有し、回転研磨部材は前記上面部の上側に位置し、回転研磨部材を覆うカバーがハウジングに着脱可能に取り付けられ、研磨面の一部がカバーの一部から覗いており、その覗いている研磨面により研磨がなされる。前述したように、円錐面に形成された研磨面の母線は、研ぎ機の上面と平行ではなくハウジングの外周面の立ち上がる方向とも平行でない。このために、研磨されている刃の、現に研磨面と接触している刃よりも前方の刃は、カバーの上面から徐々に離れるようにカバーに対し傾斜するので、刃を移動させるためのガイドとしてのガイド溝をカバーの直径の全長に亘って設けることが不要である。すなわち、研磨面の母線の長さと同じだけの長さのガイド溝を設ければよいので、研磨砥石のガイド溝からの露出量を小さくすることができるから、研ぎ水の外部への飛散を効率的に防止することができる。また、ガイド溝の長さが短いのでカバーの強度は弱くならない。これに対して、一般大衆向きに特許文献1の研ぎ機をハウジングで覆いカバーを取り付けたときは、研磨面と研ぎ機の上面が共に水平であるから、カバーにガイド溝を設けた場合はカバーの直径の全長に亘って設けなければならない。この結果、ガイド溝が長くなるので研磨中の研ぎ水のガイド溝からの飛散量が多くなるので好ましくない。さらに、ガイド溝はカバーの周壁の下部まで延びるので、その部分の周壁の強度が弱くなり破損する虞が大きい。請求項8記載の発明はそのような虞がないのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の正面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の右側面図である。
【図3】本発明の平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】研磨砥石の斜視図である。
【図6】研磨砥石の中央断面図である。
【図7】カバーの斜視図である。
【図8】カバーに取り付けられる刃支持台の斜視図である。
【図9】刃支持台を下側から見た斜視図である。
【図10】研ぎ機本体に設けられたカバーとの係合構造を示す斜視図である。
【図11】カバーに設けられた研ぎ機本体との係合構造を示す斜視図である。
【図12】刃の一方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【図13】刃の他方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
研ぎ機1は、研ぎ機本体2と、カバー3と、排水容器4とから成る。図4に示すように、研ぎ機本体2はハウジング5を有し、このハウジング5の中にモータ6を備えている。モータ6の回転軸7には研磨砥石8を有する回転研磨部材9が一体回転可能に取り付けられている。ハウジング5はその底面10に対して所定の角度で斜めに立ち上がるように形成され、回転軸7も同じ所定の角度で傾斜している。鉛直線に対する傾斜角度は約35度であるがこの数値に限定されるものではない。ハウジング5は上面部11を有し、回転研磨部材9はこの上面部11の上方で回転する。上面部11は、研ぎ水がハウジング5の内部に侵入することを防止する。上面部11には排水口12が設けられ、この排水口12に排水パイプ13が取り付けられ、上面部11で受けた排水をハウジング5の外部に排出する。排出された排水を溜めるための排水容器4がハウジング5の外面に着脱可能に取り付けられている。この排水容器4は側面に開口15を有し、この開口15に排水パイプ13が挿入されている。研ぎ機本体2の排水容器4と接する外面に容器掛け止め用の突起(図示せず。)が設けられ、排水容器4にはこの突起に係合する孔部(図示せず。)が設けられ、突起と孔部の係合によって排水容器4が研ぎ機本体2に取り付けられる。排水容器4もその底面16からハウジング5と同じ角度で傾斜するように立ち上がっている。排水容器4は着脱自在の蓋17が取り付けられている。刃物の研磨は刃をカバー3のガイド溝38に挿し入れて行うが、排水容器4はそのガイド溝38の設けられた側と反対側に取り付けられる。これにより、研磨中に排水容器4が研磨作業の邪魔にならない。なお、符号14は電気コードの一部である。
【0026】
図5や図6に示すように、回転研磨部材9は円形の基板18の表面に環状の研磨砥石8が接着剤により固着されており、その研磨面19は円錐面に形成されている。基板18は金属で形成され、研磨砥石8は水の浸透性を有する材料が使用されている。水の浸透性を有する材料として砥粒がアルミナ系砥粒であるホワイトアランダムの番手320番が用いられているが、他の材料でもよく例えば天然の水砥石でもよい。研磨砥石8の最大直径は約135mmであり、最大厚みは約24mmである。なお、研磨砥石8の固着方法は接着剤に限定されるものでなく、他の方法、例えばボルトなどの金具による結合でもよい。
【0027】
図6に示すように、回転研磨部材9はその内部に研ぎ水を溜めるための空所20を有する。空所20はその周囲が内面21で囲われている。内面21は内側に傾斜する傾斜面に形成されており、空所20は裾広がりの円錐台形をなす。研磨砥石8の上部中央に研ぎ水の注入口22が形成されている。この注入口22から空所20に研ぎ水が注入される。内面21が内側に傾斜しているので、当然のことであるが注入口22の内径は空所20の底の内径よりも小さい。注入口22の内径は約54mmであり空所20の底の内径は約88mmであるがこれらの数値に限定されるものではない。図6の状態において、研磨砥石8の研磨面19である円錐面の傾斜角度、すなわち回転研磨部材9の水平面である基板18に対する研磨面19の傾斜角度は約35度である。また、図4に示すようにハウジング5は鉛直線に対して約35度斜め方向に立ち上がっているので、ハウジング5と同じ角度で斜めに延びている回転軸7の傾斜角度も約35度である。この結果、研磨面19の最も高い位置にある母線23は水平をなす。この母線23付近で刃を研磨すれば、刃物全体を水平に保ちながら研磨することができるので作業がしやすい。
【0028】
研ぎ機1は、研磨面19から飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止するための手段を備える。その手段の一つは、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25である。上部周壁25は主に水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。他の手段は、カバー3である。カバー3は主に上方及び水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。
【0029】
カバー3はハウジング5の上部周壁25に着脱可能に取り付けることができる。カバー3の周壁26を前記上部周壁25の外側に嵌合することにより、カバー3はハウジング5に取り付けられる。カバー3がハウジング5から脱離することを防止するための手段がカバー3とハウジング5に設けられている。図11に示すように、カバー3の周壁26の内面に離脱防止のための係合凸部27が設けられている。この係合凸部27には係止溝28が設けられている。また、図10に示すように、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25の表面に離脱防止のための凹部29が設けられている。この凹部29は、カバー3の係合凸部27を導入するための導入口30と、係合凸部27を係合するための係合凹部31を有する。係合凹部31には係止突起32が設けられている。符号33は出没可能な安全スイッチであり、図10のように突出しているときは駆動スイッチ34を押してもモータ6は回転しない。カバー3をハウジング5に取り付けるときは、カバー3の係合凸部27をハウジング5の導入口30から凹部29に導入し、次いでカバー3を係合凹部31方向に回転させる。一杯に回転させると、安全スイッチ33が没入して駆動スイッチ34を押せばモータ6は回転する。また、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止して、カバー3が容易に逆回転することを防止する。なお、図10における符号35と図11における符号36は位置合わせ突起であり、双方の位置合わせ突起35,36が完全に重なることにより、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止したことを確認することができる。この係合構造は反対側の外周部分にも設けられているが、安全スイッチ33と位置合わせ突起35,36は設けられていない。
【0030】
カバー3は、その外周の一部が円錐面37に形成されている。この円錐面37の傾斜角度は、研磨砥石8の研磨面19の傾斜角度とほぼ等しい。その円錐面37にガイド溝38が形成されている。ガイド溝38はその溝内のその一方の面であるガイド溝内面40,41と他方の面である上面部42により構成される。ガイド溝38の両端に形成されているガイド溝内面40,41の一方のガイド溝内面41は、ハウジング5の上部周壁25により構成されている。ガイド溝38から研磨砥石8の研磨面19が覗いているので、ガイド溝38の刃挿し入れ口39から刃を挿し入れることにより刃を研磨することができる。挿し入れ口39の上下幅は約7mmであり指が入らない大きさになっている。図3に示すように、ガイド溝38はカバー3の円錐面37の母線方向に延びているので、図12又は図13に示すように、包丁51をその母線方向に沿って移動させながら刃52を研磨する。カバー3の全体又はガイド溝38の上面部42を透明とすることにより、研磨状態を目視することができる。
【0031】
刃挿し入れ口39に隣接する円錐面37に、刃支持台43が着脱可能に取り付けられている。図8に示すように、刃支持台43は所定の傾斜角度を有する刃支持面44を有する。図9に示すように、刃支持台43はほぼ半円形の嵌合部45を有している。図7に示すように、カバー3の円錐面37に刃支持台43を取り付けるための刃支持台受け46が形成されている。この刃支持台受け46には、ほぼ半円形の凹部47が形成されており、この凹部47に刃支持台43の嵌合部45を嵌合することにより、刃支持台43をカバー3に取り付けることができる。刃支持台43がカバー3に取り付けられたときに、傾斜している刃支持面44の下向きの傾斜方向の延長線がガイド溝38の刃挿し入れ口39に延びている。刃を刃支持面44の表面に宛がいつつ刃挿し入れ口39から刃をガイド溝38内に挿し入れると、刃は刃支持面44の傾斜角度と同じ研磨角度で研磨面19に宛がわれ研磨される。刃支持面44の研磨面19に対する傾斜角度は約16度であって研磨角度も約16度となるが、この角度は例えば家庭で調理に使用される薄刃包丁に好ましい。薄刃包丁は刃の両面を研磨するので、研磨角度16度で両面を研磨すると包丁の刃先縁の断面の角度である切刃角度は32度となる。刃支持面44の傾斜角度の異なる複数の刃支持台43を、刃物に合わせて交換することにより好ましい研磨を得ることができる。例えば、刃支持面44の傾斜角度が22度のものを用意すれば、出刃包丁の好ましい研磨角度を得ることができる。出刃包丁は刃の片面のみ研磨するので、研磨角度22度で研磨すると切刃角度も22度になる。刃支持面44の傾斜角度はこれらの数値に限定されないことは勿論であり、これら以外の数値に設定することにより用途に応じた最適の切刃角度を得ることができる。また、最初に刃を比較的小さな鋭角の研磨角度で研磨し、次いで刃支持台43を交換して比較的大きな鋭角の研磨角度で研磨することにより、刃先縁付近の切刃角度が変わり二段刃付けが可能となる。
【0032】
カバー3の中央部には研ぎ水を回転研磨部材9の空所20に注入するための注入孔48が設けられている。注入孔48には、ホイール状のリブ49が設けられている。研磨中に研ぎ水が注入孔48から飛散することを最小限に食い止めるためのものである。図4に示すように、注入孔48から注入された研ぎ水は、回転研磨部材9の注入口22を介して空所20に注入される。カバー3はその周壁26の内側に内壁50が設けられている。これは、飛散する研ぎ水を内壁50に付着させれば、使用後にカバー3を取り外して容易に洗い流すことができるからである。
【0033】
回転研磨部材9の空所20に溜められた研ぎ水は、回転研磨部材9が傾斜しているので空所20の低い場所に集まる。この状態で回転研磨部材9を高速回転させると、研ぎ水に遠心力が加わり、研ぎ水と接する空所20の内面21が高速で回転しているので、研ぎ水は内面21に張り付いた状態で回転する。研磨砥石8は水の浸透性を有するから、内面21から浸透した研ぎ水は遠心力によって研磨砥石8の内部を通過して研磨面19に滲出する。研ぎ水は研磨砥石8の内部を通過しているときに、研磨砥石8の回転と同じ回転の慣性を与えられるので、研磨面19に滲出した研ぎ水は研磨砥石8と同じ回転で回転しながら、遠心力により徐々に研磨面19の外周方向に移動する。ただし、研ぎ水が外周方向へ移動しても、すぐに刃の刃先縁が接触するので、研ぎ水の外周方向への移動量はわずかである。したがって、研ぎ水が研磨面の外周から飛散することはほとんどなく研磨に必要な研ぎ水が効率よく供給される。
【0034】
次に本発明の使用方法の一例について図12及び図13を参照して説明する。これらの図は、料理用の薄刃包丁の研磨方法を示している。薄刃包丁は刃の両面を研ぐ必要があるからそれらについて説明する。図12は刃の一方の面を研磨する場合を示している。研ぎ機1を使用するときは、ガイド溝38の刃挿し入れ口39が作業者の方向を向くように研ぎ機1を置く。次に、研ぎ水をカバー3の注入孔48に注入し、回転研磨部材9の空所20に適当量溜める。次いで、包丁51の柄55を右手で握り、駆動スイッチ34を押してオンにする。研磨砥石8は毎分約500回転で回転するが、その回転数に限定されるものではない。また、回転数を可変式にしてもよい。研磨砥石8の回転に伴い研ぎ水が研磨面9に滲出するので刃52の刃元部53をその刃先縁54からガイド溝38の中に挿し入れる。そのときに、刃52を刃支持台43の刃支持面44に宛がって研磨角度を決め、包丁51を矢印方向に引きながら刃先縁54の部分の表面を研磨面9で研磨する。研磨するときにあいている左手を刃52に添えると包丁が安定する。包丁51をゆっくり引きながら研磨すれば包丁を一回引いただけで刃を良好な状態にすることができる。包丁51を数往復させて研磨してもよいことは勿論である。刃52の一方の面の研磨を終了したときは、図13に示すように包丁51を左手に持ち替えて前述した方法と同じようにして、矢印方向に包丁51を引きながら刃52の他方の面を研磨する。その際、駆動スイッチ34はオンのままで持ち替えてもよく、駆動スイッチ34を一度オフにしてから再度オンにしてもよい。
【0035】
前述した研ぎ機1の使用方法では、図2に示すように刃挿し入れ口39が作業者の方向を向いている。図2から明らかなように、置かれている研ぎ機1において、刃挿し入れ口39や刃支持台43は最も高い領域に設けられており、そこからカバー3の上面56は右下がりに傾斜し、ハウジング5の左側の外周面57は左下がりに傾斜している。包丁51の研磨時に包丁51は水平に保たれるから、図12に示すように包丁51を右手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とカバー3の上面55との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る右手がカバー3の上面56に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に左手を添えることが好ましいが、添えた左手はハウジング5の左側の外周面57に干渉されない。また、図13に示すように包丁51を左手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とハウジング5の左側の外周面57との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る左手がハウジング5の左側の外周面57に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に右手を添えることが好ましいが、添えた右手はカバー3の上面56に干渉されない。すなわち、包丁51を左右いずれの手に持って研磨してもハウジング5やカバー3が手や柄55に干渉しないので円滑に研磨作業をすることができる。
【0036】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、実施形態では両刃の薄刃包丁を例にとって説明したが、出刃包丁のような片刃の包丁でもよい。また、他の刃物例えばナイフや片刃の刃物である鋏であってもよい。本発明は、片刃の刃物でも意義がある。例えば出刃包丁は通常右利き用の片刃であるので、その刃を研磨するときは特許文献1の研ぎ機でも支障はない。しかし、左利き用の出刃包丁は右利き用と反対側の刃面に刃先縁に沿う傾斜面が形成されている。したがって、この左利き用の出刃包丁を研磨するときは、右利き用の出刃包丁の刃の先端と柄を反転させて包丁を裏返した状態と同じ状態で研磨することになるので、特許文献1の研ぎ機では包丁の柄及びその包丁を持つ手が研ぎ機から干渉を受けるのである。本発明はそのような干渉を受けることがない。鋏も左利き用の鋏があり、そのような鋏の研磨も出刃包丁と同じように鋏身を反転させて研磨するが、干渉を受けない。薄刃包丁とは異なる刃物を研磨するときは、それに対応する刃支持台43を用意する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
薄刃包丁などのように刃の両面を研磨する必要のある包丁を研磨する際に、包丁の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、包丁の柄及びその包丁を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、円滑に刃を研磨できる電動包丁研ぎ機を提供することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 研ぎ機、 2 研ぎ機本体、 3 カバー、 4 排水容器、 5 ハウジング、 6 モータ、 7 回転軸、 8 研磨砥石、 9 回転研磨部材、 10 ハウジングの底面、 11 ハウジングの上面部、 12 排水口、 13 排水パイプ、 14 電気コードの一部、 15 開口、 16 排水容器の底面、 17 蓋、 18 基板、 19 研磨面、 20 空所、 21 内面、 22 注入口、 23 母線、 24 孔、 25 上部周壁、 26 周壁、 27 係合凸部、 28 係止溝、 29 凹部、 30 導入口、 31 係合凹部、 32 係止突起、 33 安全スイッチ、 34 駆動スイッチ、 35 位置合わせ突起、 36 位置合わせ突起、 37 円錐面、 38 ガイド溝、 39 刃挿し入れ口、 40 ガイド溝内面、 41 ガイド溝内面、 42 ガイド溝の上面部、 43 刃支持台、 44 刃支持面、 45 嵌合部、 46 刃支持台受け、 47 凹部、 48 注入孔、 48 リブ、 50 カバーの内壁、 51 包丁、 52 包丁の刃、 53 刃元部、 54 刃先縁、 55 包丁の柄、 56 カバーの上面、 57 ハウジングの左側の外周面
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動源により研磨砥石を回転させて刃物を研ぐ電動刃物研ぎ機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電動刃物研ぎ機の研磨砥石は円板状に形成されている。そして、その円板状研磨砥石の周面又は端面が研磨面として使用される。円板状研磨砥石は比較的厚みが小さいので、周面を研磨面としたときは研磨面の幅が小さくなり、例えば包丁のように刃渡りの長い刃物には不向きである。また、研磨砥石の端面を研磨面としたときは、包丁の刃が円形の研磨面を横切るように刃を宛がうので、研磨面が刃に向かうように回転する研磨と、研磨面が刃から遠ざかるように回転する研磨の異なる2つの研磨が同時に行われる。この結果、刃の半分が研磨面に押され刃の他の半分が研磨面に引っ張られるので、刃を押す力と引く力が刃に同じ回転方向の力を与えて包丁を回転させる作用をなす。このために、包丁が安定せず研磨しづらいのである。
【0003】
このような円板状の研磨砥石の欠点である研磨面の幅を広くして刃を効率的に研磨するための砥石が特許文献1に開示されている円錐面を研磨面とした研磨砥石である。円板の周面を円錐面とすることで研磨面の幅が広がり、円錐面の母線に沿って刃を当てることにより、研磨面が刃に対してすべて一方向に回転するので刃のすべてに統一した研磨が行われる。また、母線の長さで研磨が行われるので刃渡りの長い包丁に対応することができる。特許文献1の研ぎ機は、円錐面を研磨面とする研ぎ機であって、研磨面の幅が広く包丁のような刃渡りの長い包丁を効率的に研磨できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の研ぎ機は薄刃包丁のように刃の両面を研磨する必要がある包丁については大きな欠点を有している。それは、薄刃包丁の一方の刃面を研磨するときは支障がないが、他方の刃面を研磨するときに支障が生じる。その欠点を特許文献1の研ぎ機で薄刃包丁を研磨する場合について説明する。薄刃包丁の一方の刃面を研磨するときは、まず包丁の柄を右手で握り一方の刃面を円錐面である研磨面の母線に沿って宛がうことによって、砥石は刃から遠ざかる方向に回転し何ら支障なく研磨することができる。次に、他方の刃面を研磨するのであるが、右手に持っている包丁を裏返して右手で持ったままで研磨すると、刃に対する砥石の回転方向が逆になるのである。前述したように、一方の刃面を研磨する場合は砥石が刃面から遠ざかる方向に回転するから研磨について支障はない。しかし、裏返した包丁を右手に持って他方の刃面を研磨する場合は、砥石が刃面に向かって回転するので刃先縁に研磨面が衝突し、研磨中に包丁が踊ってしまうので円滑に研磨しづらい。そこで、包丁を左手に持ち替えて包丁の柄が体の左側にくるように包丁の刃の先端と柄を反転させ、包丁を裏返して他方の刃面を研磨すれば一方の刃面を同じように砥石が刃面から遠ざかる方向に回転する。しかし、包丁の柄が左側にあると、研磨中に包丁を移動するときに手や包丁の柄が特許文献1における支持案内板(1)と干渉して包丁の移動が阻害され研磨作業を実質的に行うことができないのである。したがって、包丁を右手に持って裏返しにして研磨するしかない。これが、特許文献1の欠点である。さらなる特許文献1の欠点は、包丁を右手に持って研磨するときにあいている左手を刃に添えると包丁が安定するので好ましいが、特許文献1の研ぎ機の場合、研磨中の包丁の刃にあいている左手を添えようとしても、支持案内板(1)が邪魔になって添えることができない点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭52−154790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薄刃包丁などのように刃の両面を研磨する必要のある刃物を研磨する際に、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく円滑に刃を研磨できる電動刃物研ぎ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、研磨砥石の研磨面は円錐面に形成され、回転研磨部材で構成される円形平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定され、前記回転用駆動装置はハウジングの中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を前記研磨面のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機であって、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面に宛がうことを可能にする手段を有している構成である。
【0008】
請求項2は、研ぎ機が、研磨中の刃物を研磨面のほぼ母線方向に移動させるためのガイドを有する構成である。
【0009】
請求項3は、研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延び、刃物の刃を前記母線の上方に位置させて研磨を行う構成である。
【0010】
請求項4は、ハウジングは鉛直線に対して所定の角度で斜め方向に立ち上がるように形成され、前記所定の角度は研磨砥石の研磨面である円錐面の傾斜角度と同じ角度であり、且つ回転軸もハウジングと同じ角度で斜め方向に延びることにより研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延びている構成である。
【0011】
請求項5は、ハウジングの上面と外周面が直角に交わり、回転軸はハウジングが立ち上がる方向と同方向に延びている構成である。
【0012】
請求項6は、所定の場所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の研磨面に自動的に供給する手段を有している構成である。
【0013】
請求項7は、外付けの排水容器がハウジングに着脱可能に取り付けられ、ハウジングは上面部を有し、該上面部よりも上方に回転研磨部材が取り付けられ、カバーが回転研磨部材を覆っており、カバーの内面を伝ってハウジングの上面部に溜まる研ぎ水を排水として前記排水容器に排出する通路が設けられている構成である。
【0014】
請求項8は、使用中に飛散する研ぎ水のハウジング内への侵入を防止する上面部をハウジングは有し、回転研磨部材は前記上面部の上側に位置し、回転研磨部材を覆うカバーがハウジングに着脱可能に取り付けられ、研磨面の一部がカバーの一部から覗いており、その覗いている研磨面により研磨がなされる構成である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1は、研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、研磨砥石の研磨面は円錐面に形成され、回転研磨部材で構成される円形平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定され、回転用駆動装置はハウジングの中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を研磨面のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機であって、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面に宛がうことを可能にする手段を有している。したがって、一方の手に持った刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせて刃の一方の刃面を研磨面に宛がったとき及び刃物の刃の先端と柄を反転させて他方の手に持ち替え刃物を裏返しにして刃の他方の刃面を研磨面に宛がったときのいずれの場合も、刃物及びその刃物を持つ手が研ぎ機の各部材から干渉を受けない手段を有しているから、各部材が邪魔にならず円滑に研磨作業をすることができる。
【0016】
請求項2は、刃物を研磨面のほぼ母線の方向に位置させて研磨を行うためのガイドを有する。したがって、ガイドにより安定した研磨を行うことができる。
【0017】
請求項3は、研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延び、刃物の刃を前記母線の上方に位置させて研磨を行う。したがって、刃物を水平にして研磨することができるから作業が安定する。
【0018】
請求項4は、ハウジングは鉛直線に対して所定の角度で斜め方向に立ち上がるように形成され、前記所定の角度は研磨砥石の研磨面である円錐面の傾斜角度と同じ角度であり、且つ回転軸もハウジングと同じ角度で斜め方向に延びることにより研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延びている。したがって、請求項3と同様に刃物を水平にして研磨することができるから作業が安定する。また、特許文献1の研ぎ機は、ハウジングは垂直に立ち上がっているのに対し、回転軸は斜め方向に延びている。したがって、回転軸をモータに直結させたときはモータが横方向にはみ出すので、研ぎ機をハウジングで囲うためにはハウジングの内径を大きくしなければならない。そうすると、特許文献1の図面で示された水平状態の研磨面とハウジングの外周とが離れて、研磨面がハウジングの外周よりもずっと内側に存在することになるから、研磨しようとする包丁の柄やその柄を握っている手がハウジングの外周面に干渉され、刃の刃元付近の大部分が研磨できないのである。これに対して請求項4は、ハウジングの立ち上がる方向と回転軸の延びる方向が同じである。したがって、モータをハウジングで囲っても特許文献1のように研磨面とハウジングの外周が離れてしまうということがなく、研磨しようとする包丁の柄やその柄を握っている手がハウジングの外周面に干渉されることなく、刃物の刃のほぼ全長に亘って研磨することができる。
【0019】
請求項5は、ハウジングの上面と外周面が直角に交わり、回転軸はハウジングが立ち上がる方向と同方向に延びている。したがって、円錐面に形成された研磨面の母線は、ハウジングの上面と平行ではなくハウジングの外周面の立ち上がる方向とも平行でない。このため、母線方向に延びる刃物の柄と、ハウジング又はハウジングにカバーが装着されたときのそのカバーの上面又は外周面との間に空間が生じるので、研磨時に手や刃物の柄がハウジングの外周面に干渉されず、また、刃物の刃の先端と柄を反転させ刃物を裏返しにして刃の他方の刃面を研磨面に宛がったときにも、同じように刃物の柄と、ハウジング又はハウジングにカバーが装着されたときのそのカバーの上面又は外周面との間に空間が生じるので、研磨時に手や刃物の柄が研ぎ機の各部材に干渉されず邪魔にならないから円滑に研磨作業をすることができる。
【0020】
請求項6は、所定の場所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の研磨面に自動的に供給する手段を有している。したがって、研磨作業中頻繁に作業を止めて研ぎ水を研磨面に供給する必要がなく効率的な研磨ができる。
【0021】
請求項7は、外付けの排水容器がハウジングに着脱可能に取り付けられ、ハウジングは上面部を有し、該上面部よりも上方に回転研磨部材が取り付けられ、カバーが回転研磨部材を覆っており、カバーの内面を伝ってハウジングの上面部に溜まる研ぎ水を排水として前記排水容器に排出する通路が設けられている。排水容器が外付けなので、排水容器をハウジングから容易に取り外すことができ、排水を流し出す作業が容易である。
【0022】
ところで、特許文献1の研ぎ機はモータが露出しており、作業中に危険性が感じられ使用時の騒音が大きくなるので一般家庭で使用できるものではなく、一般大衆には受け入れられない研ぎ機である。また、モータが露出している研ぎ機はデザイン的にも家庭向きではなく、一般大衆向けに売り出すためには少なくともモータをハウジングで覆うことが必要である。さらに、仮に研ぎ水を必要とする砥石を使用すると研ぎ水がモータに降りかかるので、この研ぎ機は研ぎ水を必要とする砥石に使用することができない。したがって、この研ぎ機に研ぎ水を必要とする砥石を取り付けるときも、モータなどをハウジングで覆う必要がある。
【0023】
請求項8は、使用中に飛散する研ぎ水のハウジング内への侵入を防止する上面部をハウジングは有し、回転研磨部材は前記上面部の上側に位置し、回転研磨部材を覆うカバーがハウジングに着脱可能に取り付けられ、研磨面の一部がカバーの一部から覗いており、その覗いている研磨面により研磨がなされる。前述したように、円錐面に形成された研磨面の母線は、研ぎ機の上面と平行ではなくハウジングの外周面の立ち上がる方向とも平行でない。このために、研磨されている刃の、現に研磨面と接触している刃よりも前方の刃は、カバーの上面から徐々に離れるようにカバーに対し傾斜するので、刃を移動させるためのガイドとしてのガイド溝をカバーの直径の全長に亘って設けることが不要である。すなわち、研磨面の母線の長さと同じだけの長さのガイド溝を設ければよいので、研磨砥石のガイド溝からの露出量を小さくすることができるから、研ぎ水の外部への飛散を効率的に防止することができる。また、ガイド溝の長さが短いのでカバーの強度は弱くならない。これに対して、一般大衆向きに特許文献1の研ぎ機をハウジングで覆いカバーを取り付けたときは、研磨面と研ぎ機の上面が共に水平であるから、カバーにガイド溝を設けた場合はカバーの直径の全長に亘って設けなければならない。この結果、ガイド溝が長くなるので研磨中の研ぎ水のガイド溝からの飛散量が多くなるので好ましくない。さらに、ガイド溝はカバーの周壁の下部まで延びるので、その部分の周壁の強度が弱くなり破損する虞が大きい。請求項8記載の発明はそのような虞がないのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の正面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の右側面図である。
【図3】本発明の平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】研磨砥石の斜視図である。
【図6】研磨砥石の中央断面図である。
【図7】カバーの斜視図である。
【図8】カバーに取り付けられる刃支持台の斜視図である。
【図9】刃支持台を下側から見た斜視図である。
【図10】研ぎ機本体に設けられたカバーとの係合構造を示す斜視図である。
【図11】カバーに設けられた研ぎ機本体との係合構造を示す斜視図である。
【図12】刃の一方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【図13】刃の他方の面を研磨する状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
研ぎ機1は、研ぎ機本体2と、カバー3と、排水容器4とから成る。図4に示すように、研ぎ機本体2はハウジング5を有し、このハウジング5の中にモータ6を備えている。モータ6の回転軸7には研磨砥石8を有する回転研磨部材9が一体回転可能に取り付けられている。ハウジング5はその底面10に対して所定の角度で斜めに立ち上がるように形成され、回転軸7も同じ所定の角度で傾斜している。鉛直線に対する傾斜角度は約35度であるがこの数値に限定されるものではない。ハウジング5は上面部11を有し、回転研磨部材9はこの上面部11の上方で回転する。上面部11は、研ぎ水がハウジング5の内部に侵入することを防止する。上面部11には排水口12が設けられ、この排水口12に排水パイプ13が取り付けられ、上面部11で受けた排水をハウジング5の外部に排出する。排出された排水を溜めるための排水容器4がハウジング5の外面に着脱可能に取り付けられている。この排水容器4は側面に開口15を有し、この開口15に排水パイプ13が挿入されている。研ぎ機本体2の排水容器4と接する外面に容器掛け止め用の突起(図示せず。)が設けられ、排水容器4にはこの突起に係合する孔部(図示せず。)が設けられ、突起と孔部の係合によって排水容器4が研ぎ機本体2に取り付けられる。排水容器4もその底面16からハウジング5と同じ角度で傾斜するように立ち上がっている。排水容器4は着脱自在の蓋17が取り付けられている。刃物の研磨は刃をカバー3のガイド溝38に挿し入れて行うが、排水容器4はそのガイド溝38の設けられた側と反対側に取り付けられる。これにより、研磨中に排水容器4が研磨作業の邪魔にならない。なお、符号14は電気コードの一部である。
【0026】
図5や図6に示すように、回転研磨部材9は円形の基板18の表面に環状の研磨砥石8が接着剤により固着されており、その研磨面19は円錐面に形成されている。基板18は金属で形成され、研磨砥石8は水の浸透性を有する材料が使用されている。水の浸透性を有する材料として砥粒がアルミナ系砥粒であるホワイトアランダムの番手320番が用いられているが、他の材料でもよく例えば天然の水砥石でもよい。研磨砥石8の最大直径は約135mmであり、最大厚みは約24mmである。なお、研磨砥石8の固着方法は接着剤に限定されるものでなく、他の方法、例えばボルトなどの金具による結合でもよい。
【0027】
図6に示すように、回転研磨部材9はその内部に研ぎ水を溜めるための空所20を有する。空所20はその周囲が内面21で囲われている。内面21は内側に傾斜する傾斜面に形成されており、空所20は裾広がりの円錐台形をなす。研磨砥石8の上部中央に研ぎ水の注入口22が形成されている。この注入口22から空所20に研ぎ水が注入される。内面21が内側に傾斜しているので、当然のことであるが注入口22の内径は空所20の底の内径よりも小さい。注入口22の内径は約54mmであり空所20の底の内径は約88mmであるがこれらの数値に限定されるものではない。図6の状態において、研磨砥石8の研磨面19である円錐面の傾斜角度、すなわち回転研磨部材9の水平面である基板18に対する研磨面19の傾斜角度は約35度である。また、図4に示すようにハウジング5は鉛直線に対して約35度斜め方向に立ち上がっているので、ハウジング5と同じ角度で斜めに延びている回転軸7の傾斜角度も約35度である。この結果、研磨面19の最も高い位置にある母線23は水平をなす。この母線23付近で刃を研磨すれば、刃物全体を水平に保ちながら研磨することができるので作業がしやすい。
【0028】
研ぎ機1は、研磨面19から飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止するための手段を備える。その手段の一つは、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25である。上部周壁25は主に水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。他の手段は、カバー3である。カバー3は主に上方及び水平方向に飛散する研ぎ水が外部に飛散することを防止する。
【0029】
カバー3はハウジング5の上部周壁25に着脱可能に取り付けることができる。カバー3の周壁26を前記上部周壁25の外側に嵌合することにより、カバー3はハウジング5に取り付けられる。カバー3がハウジング5から脱離することを防止するための手段がカバー3とハウジング5に設けられている。図11に示すように、カバー3の周壁26の内面に離脱防止のための係合凸部27が設けられている。この係合凸部27には係止溝28が設けられている。また、図10に示すように、ハウジング5の上面部11に円周状に延びる上部周壁25の表面に離脱防止のための凹部29が設けられている。この凹部29は、カバー3の係合凸部27を導入するための導入口30と、係合凸部27を係合するための係合凹部31を有する。係合凹部31には係止突起32が設けられている。符号33は出没可能な安全スイッチであり、図10のように突出しているときは駆動スイッチ34を押してもモータ6は回転しない。カバー3をハウジング5に取り付けるときは、カバー3の係合凸部27をハウジング5の導入口30から凹部29に導入し、次いでカバー3を係合凹部31方向に回転させる。一杯に回転させると、安全スイッチ33が没入して駆動スイッチ34を押せばモータ6は回転する。また、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止して、カバー3が容易に逆回転することを防止する。なお、図10における符号35と図11における符号36は位置合わせ突起であり、双方の位置合わせ突起35,36が完全に重なることにより、カバー3の係止溝28にハウジング5の係止突起32が係止したことを確認することができる。この係合構造は反対側の外周部分にも設けられているが、安全スイッチ33と位置合わせ突起35,36は設けられていない。
【0030】
カバー3は、その外周の一部が円錐面37に形成されている。この円錐面37の傾斜角度は、研磨砥石8の研磨面19の傾斜角度とほぼ等しい。その円錐面37にガイド溝38が形成されている。ガイド溝38はその溝内のその一方の面であるガイド溝内面40,41と他方の面である上面部42により構成される。ガイド溝38の両端に形成されているガイド溝内面40,41の一方のガイド溝内面41は、ハウジング5の上部周壁25により構成されている。ガイド溝38から研磨砥石8の研磨面19が覗いているので、ガイド溝38の刃挿し入れ口39から刃を挿し入れることにより刃を研磨することができる。挿し入れ口39の上下幅は約7mmであり指が入らない大きさになっている。図3に示すように、ガイド溝38はカバー3の円錐面37の母線方向に延びているので、図12又は図13に示すように、包丁51をその母線方向に沿って移動させながら刃52を研磨する。カバー3の全体又はガイド溝38の上面部42を透明とすることにより、研磨状態を目視することができる。
【0031】
刃挿し入れ口39に隣接する円錐面37に、刃支持台43が着脱可能に取り付けられている。図8に示すように、刃支持台43は所定の傾斜角度を有する刃支持面44を有する。図9に示すように、刃支持台43はほぼ半円形の嵌合部45を有している。図7に示すように、カバー3の円錐面37に刃支持台43を取り付けるための刃支持台受け46が形成されている。この刃支持台受け46には、ほぼ半円形の凹部47が形成されており、この凹部47に刃支持台43の嵌合部45を嵌合することにより、刃支持台43をカバー3に取り付けることができる。刃支持台43がカバー3に取り付けられたときに、傾斜している刃支持面44の下向きの傾斜方向の延長線がガイド溝38の刃挿し入れ口39に延びている。刃を刃支持面44の表面に宛がいつつ刃挿し入れ口39から刃をガイド溝38内に挿し入れると、刃は刃支持面44の傾斜角度と同じ研磨角度で研磨面19に宛がわれ研磨される。刃支持面44の研磨面19に対する傾斜角度は約16度であって研磨角度も約16度となるが、この角度は例えば家庭で調理に使用される薄刃包丁に好ましい。薄刃包丁は刃の両面を研磨するので、研磨角度16度で両面を研磨すると包丁の刃先縁の断面の角度である切刃角度は32度となる。刃支持面44の傾斜角度の異なる複数の刃支持台43を、刃物に合わせて交換することにより好ましい研磨を得ることができる。例えば、刃支持面44の傾斜角度が22度のものを用意すれば、出刃包丁の好ましい研磨角度を得ることができる。出刃包丁は刃の片面のみ研磨するので、研磨角度22度で研磨すると切刃角度も22度になる。刃支持面44の傾斜角度はこれらの数値に限定されないことは勿論であり、これら以外の数値に設定することにより用途に応じた最適の切刃角度を得ることができる。また、最初に刃を比較的小さな鋭角の研磨角度で研磨し、次いで刃支持台43を交換して比較的大きな鋭角の研磨角度で研磨することにより、刃先縁付近の切刃角度が変わり二段刃付けが可能となる。
【0032】
カバー3の中央部には研ぎ水を回転研磨部材9の空所20に注入するための注入孔48が設けられている。注入孔48には、ホイール状のリブ49が設けられている。研磨中に研ぎ水が注入孔48から飛散することを最小限に食い止めるためのものである。図4に示すように、注入孔48から注入された研ぎ水は、回転研磨部材9の注入口22を介して空所20に注入される。カバー3はその周壁26の内側に内壁50が設けられている。これは、飛散する研ぎ水を内壁50に付着させれば、使用後にカバー3を取り外して容易に洗い流すことができるからである。
【0033】
回転研磨部材9の空所20に溜められた研ぎ水は、回転研磨部材9が傾斜しているので空所20の低い場所に集まる。この状態で回転研磨部材9を高速回転させると、研ぎ水に遠心力が加わり、研ぎ水と接する空所20の内面21が高速で回転しているので、研ぎ水は内面21に張り付いた状態で回転する。研磨砥石8は水の浸透性を有するから、内面21から浸透した研ぎ水は遠心力によって研磨砥石8の内部を通過して研磨面19に滲出する。研ぎ水は研磨砥石8の内部を通過しているときに、研磨砥石8の回転と同じ回転の慣性を与えられるので、研磨面19に滲出した研ぎ水は研磨砥石8と同じ回転で回転しながら、遠心力により徐々に研磨面19の外周方向に移動する。ただし、研ぎ水が外周方向へ移動しても、すぐに刃の刃先縁が接触するので、研ぎ水の外周方向への移動量はわずかである。したがって、研ぎ水が研磨面の外周から飛散することはほとんどなく研磨に必要な研ぎ水が効率よく供給される。
【0034】
次に本発明の使用方法の一例について図12及び図13を参照して説明する。これらの図は、料理用の薄刃包丁の研磨方法を示している。薄刃包丁は刃の両面を研ぐ必要があるからそれらについて説明する。図12は刃の一方の面を研磨する場合を示している。研ぎ機1を使用するときは、ガイド溝38の刃挿し入れ口39が作業者の方向を向くように研ぎ機1を置く。次に、研ぎ水をカバー3の注入孔48に注入し、回転研磨部材9の空所20に適当量溜める。次いで、包丁51の柄55を右手で握り、駆動スイッチ34を押してオンにする。研磨砥石8は毎分約500回転で回転するが、その回転数に限定されるものではない。また、回転数を可変式にしてもよい。研磨砥石8の回転に伴い研ぎ水が研磨面9に滲出するので刃52の刃元部53をその刃先縁54からガイド溝38の中に挿し入れる。そのときに、刃52を刃支持台43の刃支持面44に宛がって研磨角度を決め、包丁51を矢印方向に引きながら刃先縁54の部分の表面を研磨面9で研磨する。研磨するときにあいている左手を刃52に添えると包丁が安定する。包丁51をゆっくり引きながら研磨すれば包丁を一回引いただけで刃を良好な状態にすることができる。包丁51を数往復させて研磨してもよいことは勿論である。刃52の一方の面の研磨を終了したときは、図13に示すように包丁51を左手に持ち替えて前述した方法と同じようにして、矢印方向に包丁51を引きながら刃52の他方の面を研磨する。その際、駆動スイッチ34はオンのままで持ち替えてもよく、駆動スイッチ34を一度オフにしてから再度オンにしてもよい。
【0035】
前述した研ぎ機1の使用方法では、図2に示すように刃挿し入れ口39が作業者の方向を向いている。図2から明らかなように、置かれている研ぎ機1において、刃挿し入れ口39や刃支持台43は最も高い領域に設けられており、そこからカバー3の上面56は右下がりに傾斜し、ハウジング5の左側の外周面57は左下がりに傾斜している。包丁51の研磨時に包丁51は水平に保たれるから、図12に示すように包丁51を右手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とカバー3の上面55との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る右手がカバー3の上面56に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に左手を添えることが好ましいが、添えた左手はハウジング5の左側の外周面57に干渉されない。また、図13に示すように包丁51を左手に持って研磨するときは、水平な包丁51の柄55とハウジング5の左側の外周面57との間に図2で見て三角形の空間が生じるので、研磨時に包丁51を握る左手がハウジング5の左側の外周面57に干渉されず使い易い。そのときに、包丁51を安定させるため刃52に右手を添えることが好ましいが、添えた右手はカバー3の上面56に干渉されない。すなわち、包丁51を左右いずれの手に持って研磨してもハウジング5やカバー3が手や柄55に干渉しないので円滑に研磨作業をすることができる。
【0036】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、実施形態では両刃の薄刃包丁を例にとって説明したが、出刃包丁のような片刃の包丁でもよい。また、他の刃物例えばナイフや片刃の刃物である鋏であってもよい。本発明は、片刃の刃物でも意義がある。例えば出刃包丁は通常右利き用の片刃であるので、その刃を研磨するときは特許文献1の研ぎ機でも支障はない。しかし、左利き用の出刃包丁は右利き用と反対側の刃面に刃先縁に沿う傾斜面が形成されている。したがって、この左利き用の出刃包丁を研磨するときは、右利き用の出刃包丁の刃の先端と柄を反転させて包丁を裏返した状態と同じ状態で研磨することになるので、特許文献1の研ぎ機では包丁の柄及びその包丁を持つ手が研ぎ機から干渉を受けるのである。本発明はそのような干渉を受けることがない。鋏も左利き用の鋏があり、そのような鋏の研磨も出刃包丁と同じように鋏身を反転させて研磨するが、干渉を受けない。薄刃包丁とは異なる刃物を研磨するときは、それに対応する刃支持台43を用意する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
薄刃包丁などのように刃の両面を研磨する必要のある包丁を研磨する際に、包丁の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、包丁の柄及びその包丁を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、円滑に刃を研磨できる電動包丁研ぎ機を提供することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 研ぎ機、 2 研ぎ機本体、 3 カバー、 4 排水容器、 5 ハウジング、 6 モータ、 7 回転軸、 8 研磨砥石、 9 回転研磨部材、 10 ハウジングの底面、 11 ハウジングの上面部、 12 排水口、 13 排水パイプ、 14 電気コードの一部、 15 開口、 16 排水容器の底面、 17 蓋、 18 基板、 19 研磨面、 20 空所、 21 内面、 22 注入口、 23 母線、 24 孔、 25 上部周壁、 26 周壁、 27 係合凸部、 28 係止溝、 29 凹部、 30 導入口、 31 係合凹部、 32 係止突起、 33 安全スイッチ、 34 駆動スイッチ、 35 位置合わせ突起、 36 位置合わせ突起、 37 円錐面、 38 ガイド溝、 39 刃挿し入れ口、 40 ガイド溝内面、 41 ガイド溝内面、 42 ガイド溝の上面部、 43 刃支持台、 44 刃支持面、 45 嵌合部、 46 刃支持台受け、 47 凹部、 48 注入孔、 48 リブ、 50 カバーの内壁、 51 包丁、 52 包丁の刃、 53 刃元部、 54 刃先縁、 55 包丁の柄、 56 カバーの上面、 57 ハウジングの左側の外周面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、研磨砥石の研磨面は円錐面に形成され、回転研磨部材で構成される円形平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定され、前記回転用駆動装置はハウジングの中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を前記研磨面のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機であって、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面に宛がうことを可能にする手段を有していることを特徴とする電動刃物研ぎ機。
【請求項2】
研磨中の刃物を研磨面のほぼ母線方向に移動させるためのガイドを有する請求項1記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項3】
研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延び、刃物の刃を前記母線の上方に位置させて研磨を行う請求項1又は請求項2記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項4】
ハウジングは鉛直線に対して所定の角度で斜め方向に立ち上がるように形成され、前記所定の角度は研磨砥石の研磨面である円錐面の傾斜角度と同じ角度であり、且つ回転軸もハウジングと同じ角度で斜め方向に延びることにより研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延びている請求項3記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項5】
ハウジングの上面と外周面が直角に交わり、回転軸はハウジングが立ち上がる方向と同方向に延びている請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項6】
所定の場所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の研磨面に自動的に供給する手段を有している請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項7】
外付けの排水容器がハウジングに着脱可能に取り付けられ、ハウジングは上面部を有し、該上面部よりも上方に回転研磨部材が取り付けられ、カバーが回転研磨部材を覆っており、カバーの内面を伝ってハウジングの上面部に溜まる研ぎ水を排水として前記排水容器に排出する通路が設けられている請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項8】
使用中に飛散する研ぎ水のハウジング内への侵入を防止する上面部をハウジングは有し、回転研磨部材は前記上面部の上側に位置し、回転研磨部材を覆うカバーがハウジングに着脱可能に取り付けられ、研磨面の一部がカバーの一部から覗いており、その覗いている研磨面により研磨がなされる請求項3乃至請求項7のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項1】
研磨砥石を有する回転研磨部材が、回転用駆動装置により回転される回転軸に一体回転可能に固定され、研磨砥石の研磨面は円錐面に形成され、回転研磨部材で構成される円形平面が回転軸と直角をなすように回転研磨部材が回転軸に固定され、前記回転用駆動装置はハウジングの中に取り付けられており、刃物の刃の研磨はその刃物の長さ方向を前記研磨面のほぼ母線方向に合わせて行う電動刃物研ぎ機であって、刃物の刃の先端を母線の両端いずれの延長方向に向けて刃を研磨する場合であっても、刃物の柄及びその刃物を持つ手が研ぎ機から干渉を受けることなく、刃物を研磨面のほぼ母線方向に合わせると共に刃を研磨面に宛がうことを可能にする手段を有していることを特徴とする電動刃物研ぎ機。
【請求項2】
研磨中の刃物を研磨面のほぼ母線方向に移動させるためのガイドを有する請求項1記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項3】
研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延び、刃物の刃を前記母線の上方に位置させて研磨を行う請求項1又は請求項2記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項4】
ハウジングは鉛直線に対して所定の角度で斜め方向に立ち上がるように形成され、前記所定の角度は研磨砥石の研磨面である円錐面の傾斜角度と同じ角度であり、且つ回転軸もハウジングと同じ角度で斜め方向に延びることにより研磨面の最も高い位置にある母線が水平に延びている請求項3記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項5】
ハウジングの上面と外周面が直角に交わり、回転軸はハウジングが立ち上がる方向と同方向に延びている請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項6】
所定の場所に溜められた研ぎ水を研磨砥石の研磨面に自動的に供給する手段を有している請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項7】
外付けの排水容器がハウジングに着脱可能に取り付けられ、ハウジングは上面部を有し、該上面部よりも上方に回転研磨部材が取り付けられ、カバーが回転研磨部材を覆っており、カバーの内面を伝ってハウジングの上面部に溜まる研ぎ水を排水として前記排水容器に排出する通路が設けられている請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【請求項8】
使用中に飛散する研ぎ水のハウジング内への侵入を防止する上面部をハウジングは有し、回転研磨部材は前記上面部の上側に位置し、回転研磨部材を覆うカバーがハウジングに着脱可能に取り付けられ、研磨面の一部がカバーの一部から覗いており、その覗いている研磨面により研磨がなされる請求項3乃至請求項7のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−228749(P2012−228749A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98252(P2011−98252)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]