説明

電動工具

【課題】冷却ファンが生成する冷却風によってモータ制御基板を効率的に冷却することができるとともに、工具の全長を短縮することができる電動工具を提供する。
【解決手段】ハウジング11は、モータ15及び冷却ファン17を収容する出力部12と、出力部12に直交するように接続されてトリガスイッチ21を収容するグリップ部13と、を備える。モータ制御基板30を、前記出力部12と前記グリップ部13との接続位置において、表面が前記モータ15に臨むように前記モータ15と前記トリガスイッチ21との間の空間に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータを有する電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスDCモータなどのモータを備えた電動工具が知られている。こうした電動工具においてモータを精密に回転制御し、例えば、バッテリ出力が下がってきた場合でも回転数を一定に保ち続けるためには、ブラシレスDCモータを駆動するFETなどのスイッチング素子を頻繁にON/OFFさせる必要がある。
【0003】
しかしながら、スイッチング素子を頻繁にON/OFFさせると、スイッチング損失により大きな発熱を伴うこととなる。このため、精密な回転制御を行うことでユーザの細かな使い勝手に応えようとすると、スイッチング素子を実装したモータ制御基板を効率的に冷却する必要がある。
【0004】
モータ制御基板を効率的に冷却する方法としては、冷却ファンが生成する冷却風によって冷却する方法が知られている。冷却ファンは、モータや制御基板を冷却するための冷却風を生成するものであり、ハウジングに設けられた吸気孔から外部の冷たい空気を吸い込み、この冷たい空気でモータや制御基板を冷却したのち、冷却に使用した空気をハウジングに設けられた排気孔より排気するためのものである。
【0005】
例えば特許文献1には、冷却ファン及びモータ制御基板をモータと同軸上に配置し、冷却ファンが生成する冷却風によってモータ制御基板及びモータを冷却するようにした電動工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−142801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した特許文献1記載の電動工具のように、モータ制御基板をモータと同軸上に配置すると、モータ制御基板を効率的に冷却することはできるが、モータの軸方向に工具が大きくなってしまい、工具全長短縮を妨げるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、冷却ファンが生成する冷却風によってモータ制御基板を効率的に冷却することができるとともに、工具の全長を短縮することができる電動工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0010】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の電動工具は、ハウジングと、前記ハウジングに収容されるモータと、前記モータと同軸上に配置された冷却ファンと、前記モータを作動させるためのトリガスイッチと、前記モータを駆動するスイッチング素子を実装した薄板状のモータ制御基板と、を備え、前記ハウジングは、前記モータ及び前記冷却ファンを収容する出力部と、前記出力部に直交するように接続されて前記トリガスイッチを収容するグリップ部と、を備え、前記モータ制御基板は、前記出力部と前記グリップ部との接続位置において、表面が前記モータに臨むように前記モータと前記トリガスイッチとの間の空間に配置されていることを特徴とする。
【0012】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、前記モータは3相交流モータであり、前記モータ制御基板には、U相、V相、W相のそれぞれについて、2つのスイッチング素子とモータ接続端子とが実装されており、前記スイッチング素子と前記モータ接続端子とは、各相ごとに集約して配置されていることを特徴とする。
【0014】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、前記ハウジングには、前記モータ制御基板の側部に開口するように吸気孔が設けられており、前記冷却ファンを作動させたときに前記吸気孔から吸気を行えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、前記モータ制御基板は、前記出力部と前記グリップ部との接続位置において、表面が前記モータに臨むように前記モータと前記トリガスイッチとの間の空間に配置されているので、冷却ファンが生成する冷却風によってモータとモータ制御基板とを効率的に冷却することができる。このため、モータ制御基板が精密な回転制御を行うことにより発熱が大きくなった場合でも対応できるので、ユーザの細かな使い勝手に応えることができる。
【0017】
また、モータ制御基板がモータと同軸上に配置されていないので、工具全長を短縮することができ、電動工具を小型化することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記スイッチング素子と前記モータ接続端子とは、各相ごとに集約して配置されているので、モータ制御基板の面積を最小化できる。これにより、モータ制御基板を配置するための空間が小さい場合でも、モータ制御基板を小型化して収容することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記ハウジングには、前記モータ制御基板の側部に開口するように吸気孔が設けられており、前記冷却ファンを作動させたときに前記吸気孔から吸気を行えるようにしている。このため、モータ制御基板に確実に冷却風が当たるので、モータ制御基板を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電動工具の外観図である。
【図2】電動工具の内部構造を示す図である。
【図3】モータ制御基板の回路の概略図である。
【図4】モータ制御基板の外観図である。
【図5】第1の変形例に係るモータ制御基板の外観図である。
【図6】第2の変形例に係るモータ制御基板の外観図である。
【図7】第3の変形例に係るモータ制御基板の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態に係る電動工具10は、モータ15を搭載したインパクトドライバであり、図2に示すように、ハウジング11の内部にモータ15などを内蔵したものとなっている。
【0023】
ハウジング11は、図1に示すように、筒状の出力部12と、この出力部12の下部に出力部12と略直交する方向に延びるグリップ部13と、グリップ部13の下部に設けられた電池パック取付部14と、を備えている。
【0024】
出力部12には、図2に示すように、モータ15が内蔵されており、このモータ15の回転軸と同軸上に、冷却ファン17、スピンドル、打撃機構、アンビルが直列に設けられている。また、モータ15の下部には、モータ15を制御するためのモータ制御基板30が配置されている。詳しくは、モータ制御基板30は、出力部12とグリップ部13との接続位置において、表面がモータ15に臨むようにモータ15とトリガスイッチ21との間の空間に配置されている。このモータ制御基板30は、電線等を介して後述するトリガスイッチ21や操作基板、バッテリと接続されている。
【0025】
アンビルの先端部には出力軸16が形成されており、図示しないドライバビット(先端工具)が装着可能となっている。この出力軸16にドライバビットを取り付けた状態でモータ15を回転させると、モータ15の駆動力によりドライバビットが回転し、ネジ締めができるように形成されている。
【0026】
冷却ファン17は、出力部12の最後部に配置されており、モータ15が回転したときに同時に回転する。これにより、ハウジング11の側部に開口する吸気孔19(図1参照)から外部の空気を吸い込み、吸い込んだ空気をハウジング11の側部に開口する排気孔20(図1参照)から外部へと排出する。
【0027】
なお、吸気孔19はモータ制御基板30の側部に設けられており、排気孔20は冷却ファン17の側部に設けられている。これにより、冷却ファン17を作動させたときに、冷却ファン17によって吸気孔19から吸い込まれた冷却風は、モータ制御基板30付近からモータ15の内部を経由し、排気孔20を通って外部へと排気され、モータ制御基板30とモータ15のコイルとを効率的に冷却するように形成されている。
【0028】
この出力部12の下部に設けられたグリップ部13は、電動工具10を把持するための部位である。このグリップ部13の出力部12との境目付近には、図1に示すように、前方にトリガスイッチ21が配置されている。
【0029】
このトリガスイッチ21は、モータ15を作動させるためのものであり、図2に示すように、スイッチの接点を収容した箱状のスイッチ本体22と、このスイッチ本体22に対して押し込み操作可能なトリガ部23と、を備えている。このトリガスイッチ21は、グリップ部13の内部に収容されているものの、トリガ部23がハウジング11の外部に突出しており、操作可能となっている。このトリガ部23を引き操作することで、モータ15が回転を始め、電動工具10が作動を開始するようになっている。このトリガ部23は、グリップ部13を握ったときにちょうど人差し指がかかる位置に配設されている。
【0030】
上記したグリップ部13の更に下部に設けられた電池パック取付部14は、図示しない電池パックを下面に着脱させる部位である。この電池パック取付部14の上面側には、図1に示すように、操作パネル18が設けられている。この操作パネル18には、回転モードを変更するためのモード設定ボタンなどが設けられている。
【0031】
この操作パネル18の裏側に位置する電池パック取付部14の内部には、操作パネル18の各ボタンやランプが接続された操作基板が内蔵されている。
【0032】
ところで、上記したモータ15は、3相交流のブラシレスDCモータであり、FETなどのスイッチング素子31〜36をON/OFFすることで駆動される。このスイッチング素子31〜36は、前記したモータ制御基板30に実装されている。
【0033】
このモータ制御基板30は、図4に示すように、方形の薄板状であり、その表面に、モータ15のU相、V相、W相のそれぞれへの通電を切り替えるべく、6つのスイッチング素子31〜36が実装されている。
【0034】
このうちの3つのスイッチング素子31〜33は、ドレインDがバッテリのプラス極側に接続されており、ソースSが他の3つのスイッチング素子34〜36のドレインDに接続されている(図3参照)。具体的には、スイッチング素子31のソースSがスイッチング素子34のドレインDに、スイッチング素子32のソースSがスイッチング素子35のドレインDに、スイッチング素子33のソースSがスイッチング素子36のドレインDに接続されている。そして、スイッチング素子34〜36のソースSは、バッテリのマイナス極側に接続されている。
【0035】
なお、6個のスイッチング素子31〜36の各ゲートGは、モータ制御基板30に搭載される制御信号出力回路(図示せず)に接続され、通電が制御される。
【0036】
また、モータ制御基板30は、モータ15のU相のコイルに接続されるモータ接続端子37と、モータ15のV相のコイルに接続されるモータ接続端子38と、モータ15のW相のコイルに接続されるモータ接続端子39と、の3つのモータ接続端子37〜39を有している。
【0037】
そして、スイッチング素子31とスイッチング素子34との接続点は、モータ接続端子37に接続されている。これにより、スイッチング素子31、スイッチング素子34、モータ接続端子37がU相に割り当てられている。
【0038】
また、スイッチング素子32とスイッチング素子35との接続点は、モータ接続端子38に接続されている。これにより、スイッチング素子32、スイッチング素子35、モータ接続端子38がV相に割り当てられている。
【0039】
また、スイッチング素子33とスイッチング素子36との接続点は、モータ接続端子39に接続されている。これにより、スイッチング素子33、スイッチング素子36、モータ接続端子39がW相に割り当てられている。
【0040】
本実施形態においては、各相に割り当てられたスイッチング素子31〜36とモータ接続端子37〜39とを各相ごとに集約して配置することで、基板上の通電路の距離を短くし、モータ制御基板30の表面積を小さくしている。
【0041】
各相ごとに集約して配置する具体的な方法としては、以下のようにすればよい。
【0042】
すなわち、ある相(例えばU相)に割り当てられたモータ接続端子37とプラス極側に接続された3つのスイッチング素子31〜33との位置関係を見たときに、当該相(U相)に割り当てられたスイッチング素子31が他のスイッチング素子32,33よりも当該モータ接続端子37に近い位置に配置されていればよい。
【0043】
同様に、ある相(例えばU相)のモータ接続端子37とマイナス極側に接続された3つのスイッチング素子34〜36との位置関係は、当該相(U相)のスイッチング素子34が他のスイッチング素子35,36よりも当該モータ接続端子37に近い位置に配置されていればよい。
【0044】
具体的には、図4に示すように、方形のモータ制御基板30の一辺を形成する縁部に3つのモータ接続端子37〜39を並べて形成し、U相に割り当てられたモータ接続端子37と連続するようにU相に割り当てられた2つのスイッチング素子31,34を並べ、V相に割り当てられたモータ接続端子38と連続するようにV相に割り当てられた2つのスイッチング素子32,35を並べ、W相に割り当てられたモータ接続端子39と連続するようにW相に割り当てられた2つのスイッチング素子33,36を並べるように配置してもよい。このとき、U相、V相、W相の各相に割り当てられた2個1組のスイッチング素子を段違いに配置することで、スイッチング素子同士を接続する通電路パターンを最短距離としてもよい。
【0045】
また、図4に示す態様に限らず、例えば図5〜7に示すような配置を採用してもよい。
【0046】
すなわち、図5に示すように、モータ接続端子37〜39をモータ制御基板30の一辺に形成するのではなく、モータ制御基板30の表面に形成してもよい。具体的には、U相に割り当てられた2つのスイッチング素子31,34の間にU相に割り当てられたモータ接続端子37を配置し、V相に割り当てられた2つのスイッチング素子32,35の間にV相に割り当てられたモータ接続端子38を配置し、W相に割り当てられた2つのスイッチング素子33,36の間にW相に割り当てられたモータ接続端子39を配置してもよい。このとき、U相、V相、W相の各相に割り当てられた2個1組のスイッチング素子を段違いに配置することで、スイッチング素子同士を接続する通電路パターンを最短距離としてもよい。
【0047】
また、図6に示すように、方形のモータ制御基板30の一辺を形成する縁部に3つのモータ接続端子37〜39を並べて形成し、U相に割り当てられたモータ接続端子37と連続するようにU相に割り当てられた2つのスイッチング素子31,34を並べ、V相に割り当てられたモータ接続端子38と連続するようにV相に割り当てられた2つのスイッチング素子32,35を並べ、W相に割り当てられたモータ接続端子39と連続するようにW相に割り当てられた2つのスイッチング素子33,36を並べるように配置するとともに、U相、V相、W相の各相に割り当てられた2個1組のスイッチング素子を段違いに配置せず、平行に配置してもよい。
【0048】
また、図7に示すように、U相に割り当てられた2つのスイッチング素子31,34の間にU相に割り当てられたモータ接続端子37を配置し、V相に割り当てられた2つのスイッチング素子32,35の間にV相に割り当てられたモータ接続端子38を配置し、W相に割り当てられた2つのスイッチング素子33,36の間にW相に割り当てられたモータ接続端子39を配置するとともに、U相、V相、W相の各相に割り当てられた2個1組のスイッチング素子を段違いに配置せず、平行に配置してもよい。
【0049】
本実施形態は上記の通りであり、モータ制御基板30は、出力部12とグリップ部13との接続位置において、表面がモータ15に臨むようにモータ15とトリガスイッチ21との間の空間にのみ配置されているので、冷却ファン17が生成する冷却風によってモータ15とモータ制御基板30とを効率的に冷却することができる。このため、モータ制御基板30が精密な回転制御を行うことにより発熱が大きくなった場合でも対応できるので、ユーザの細かな使い勝手に応えることができる。
【0050】
また、モータ制御基板30がモータ15と同軸上に配置されていない(モータ制御基板30がモータ15とトリガスイッチ21との間の空間にのみ配置されており、モータ15の軸方向に投影したときにモータ制御基板30とモータ15とが重ならないように配置されている)ので、工具全長を短縮することができ、電動工具10を小型化することができる。
【0051】
また、スイッチング素子31〜36とモータ接続端子37〜39とは、各相ごとに集約して配置されているので、モータ制御基板30の面積を最小化できる。これにより、モータ制御基板30を配置するための空間が小さい場合でも、モータ制御基板30を小型化して収容することができる。
【0052】
また、ハウジング11には、モータ制御基板30の側部に開口するように吸気孔19が設けられており、冷却ファン17を作動させたときに吸気孔19から吸気を行えるようにしている。このため、モータ制御基板30に実装されたスイッチング素子31〜36に確実に冷却風が当たって流通するので、モータ制御基板30を効率的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 電動工具
11 ハウジング
12 出力部
13 グリップ部
14 電池パック取付部
15 モータ
16 出力軸
17 冷却ファン
18 操作パネル
19 吸気孔
20 排気孔
21 トリガスイッチ
22 スイッチ本体
23 トリガ部
30 モータ制御基板
31〜36 スイッチング素子
37〜39 モータ接続端子
S ソース
D ドレイン
G ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記モータと同軸上に配置された冷却ファンと、
前記モータを作動させるためのトリガスイッチと、
前記モータを駆動するスイッチング素子を実装した薄板状のモータ制御基板と、
を備え、
前記ハウジングは、前記モータ及び前記冷却ファンを収容する出力部と、前記出力部に直交するように接続されて前記トリガスイッチを収容するグリップ部と、を備え、
前記モータ制御基板は、前記出力部と前記グリップ部との接続位置において、表面が前記モータに臨むように前記モータと前記トリガスイッチとの間の空間に配置されていることを特徴とする、電動工具。
【請求項2】
前記モータは3相交流モータであり、
前記モータ制御基板には、U相、V相、W相のそれぞれについて、2つのスイッチング素子とモータ接続端子とが実装されており、
前記スイッチング素子と前記モータ接続端子とは、各相ごとに集約して配置されていることを特徴とする、請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記モータ制御基板の側部に開口するように吸気孔が設けられており、
前記冷却ファンを作動させたときに前記吸気孔から吸気を行えるようにしたことを特徴とする、請求項1又は2記載の電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107183(P2013−107183A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256019(P2011−256019)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】