説明

電動工具

【課題】操作性が良く、工具を取り換える際にも取り換え作業を阻害することのない手回し機構付の電動工具を提供する。
【解決手段】この電動工具10は、工具21の駆動源となるモータ31と、モータ31を収納するハウジング11aと、ハウジング11aから突出するように取り付けられる工具21と、を備えており、モータ31の有するモータ軸32が縦方向を向くように配置されるものである。そして、この電動工具10では、工具21の微調整を行うための手回し機構40が、モータ軸32の上方の軸端部、又はモータ軸32の上方とハウジング11aとの間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に係り、特に、工具の微調整を行うための手回し機構を備える電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工具の微調整を行うための手回し機構を備えた電動工具が知られている。例えば、下記特許文献1には、工具であるブレードに対して異物等が噛み込んでロックした場合に、異物等を除去するために手動でブレードを動かすための手回し機構が設けられた刈込機が開示されている。この刈込機は、ハウジング内に設けられ、且つ偏心回転する一対の偏心カムを少なくとも具備する回転駆動部材と、該回転駆動部材の回転により互いに対向して往復運動する一対のブレードとを備えるものであって、回転駆動部材の端面に、回転駆動部材を回転させるために用いられる手動操作部材が嵌合し得る嵌合部が設けられた構成を備えるものである。そして、特許文献1に記載の技術によれば、装置の分解等の作業を全く行うことなく工具であるブレードの微調整を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−243779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上掲した特許文献1に記載の刈込機は、回転駆動部材を回転させるために用いられる手動操作部材が嵌合し得る嵌合部が、装置本体の底面側に設けられているものなので、作業性が悪いという問題を有していた。また、特許文献1に記載の刈込機では、嵌合部を含む手回し機構が、回転駆動部材であるカムやギヤ等の潤滑油やグリス等が塗布された部材に近い位置である装置本体の底面側に設けられていることから、手動操作部材を嵌合部に対して嵌合させて操作する際に、手動操作部材を挿入するための穴やその他の隙間から潤滑油やグリス等が漏れ出す虞があり、かかる点も作業性を悪化させる要因となっていた。さらに、特許文献1に記載の刈込機では、嵌合部を含む手回し機構がブレードの近傍に設置されていたことから、ブレードの取り換え作業が煩わしいという問題も有していた。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、操作性が良く、工具を取り換える際にも取り換え作業を阻害することのない手回し機構付の電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
本発明に係る電動工具(10)は、工具(21)の駆動源となるモータ(31)と、前記モータ(31)を収納するハウジング(11a)と、前記ハウジング(11a)から突出するように取り付けられる工具(21)と、を備え、前記モータ(31)の有するモータ軸(32)が縦方向を向くように配置される電動工具(10)であって、前記工具(21)の微調整を行うための手回し機構(40)を、前記モータ軸(32)の上方の軸端部、又は前記モータ軸(32)の上方と前記ハウジング(11a)との間に設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電動工具(10)において、前記手回し機構(40)は、前記モータ軸(32)の上方の軸端部に形成された被係合部(32b)と、下面に前記被係合部(32b)と係合可能な係合部(42b)を有するとともに、上面に手工具による操作を受けるための手工具嵌合部(42a)を有する係合部材(42)と、前記モータ軸(32)と前記係合部材(42)との間に設置され、前記係合部材(42)が前記モータ軸(32)から離れる方向に弾性力を及ぼす弾性部材(44)と、を有しており、前記係合部材(42)が外力を受けないときには、前記弾性部材(44)の弾性力によって、前記モータ軸(32)の前記被係合部(32b)と前記係合部材(42)の前記係合部(42b)とが離隔しており、前記係合部材(42)が有する前記手工具嵌合部(42a)が手工具から下方への押し込み回転力を受けたときには、前記モータ軸(32)の前記被係合部(32b)と前記係合部材(42)の前記係合部(42b)とが係合して前記モータ軸(32)を回転し、前記工具(21)の微調整を行うこととすることができる。
【0009】
さらに、本発明に係る電動工具(10)は、前記係合部材(42)が外力を受けないときには、前記係合部材(42)の上面と前記ハウジング(11a)とが当接状態にあることとすることができる。
【0010】
また、本発明に係る電動工具(10)において、前記手回し機構(40)は、前記モータ軸(32)の上方の軸端部に形成された、手工具による操作を受けるための手工具嵌合部であることとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作性が良く、工具を取り換える際にも取り換え作業を阻害することのない手回し機構付の電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るヘッジトリマの上面を示す外観図である。
【図2】本実施形態に係るヘッジトリマを右側面側から見た場合の外観図である。
【図3】本実施形態に係るヘッジトリマの縦断面右側面のうちの要部を拡大した図である。
【図4】半割構造で構成されるハウジング(モータハウジング11a及びハンドルハウジング11b)のうちの右側面側の半割体を取り外した状態での本実施形態に係るヘッジトリマの右側面のうちの要部を拡大した図である。
【図5】図4中のA部を拡大した図である。
【図6】図5中のB−B断面を示す図である。
【図7】本発明が取り得る多様な変形例の一つを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、以下で説明する実施形態では、本発明に係る電動工具がヘッジトリマとして構成される場合を例示して説明するが、本発明は、ヘッジトリマ以外の従来公知の各種電動工具に対しても適用可能である。
【0014】
まず、図1〜図3を用いて、本実施形態に係る電動工具としてのヘッジトリマ10の構成を説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るヘッジトリマの上面を示す外観図であり、図2は、本実施形態に係るヘッジトリマを右側面側から見た場合の外観図である。また、図3は、本実施形態に係るヘッジトリマの縦断面右側面のうちの要部を拡大した図である。
【0015】
なお、本明細書では、説明の便宜のために、図1及び図2で示すように、ヘッジトリマ10の方向を「正面・背面・右側面・左側面・上面・底面」と定義して説明を行うこととする。すなわち、図1における紙面右側を「正面」とするとともに、紙面左側を「背面」とし、紙面上側を「左側面」とし、紙面下側を「右側面」としている。また、図2における紙面右側を「正面」とするとともに、紙面左側を「背面」とし、紙面上側を「上面」とし、紙面下側を「底面」としている。
【0016】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係るヘッジトリマ10は、ハウジング11と、ハウジング11の正面側に突出して取り付けられた工具としての刈刃部21と、を有して構成されている。
【0017】
ハウジング11は、刈刃部21の駆動源となるモータ31を収納するモータハウジング11aと、このモータハウジング11aとは別体で構成されるとともにユーザからの把持を受けるハンドル部12を有するハンドルハウジング11bとが、組み合わされることによって構成されている。モータハウジング11aとハンドルハウジング11bとは、ハンドルハウジング11bがモータハウジング11aの背面側の一部を覆うようにして接続される関係にあり、また、その接続部には、不図示の防振部材が設置されているので、振動源となるモータ31や刈刃部21を備えるモータハウジング11aからの振動が、ユーザからの把持を受けるハンドル部12を有するハンドルハウジング11bに対して伝わることを極力防止できる構造が採られている。
【0018】
モータハウジング11aの内部に設置されたモータ31は縦向きに配置されているので、このモータ31が備えるモータ軸32についても、縦方向を向くように配置されている。また、縦方向を向くモータ軸32の回転を、刈刃部21での水平方向の往復直線運動に変換するために、モータ31の下方位置には、伝動部33が設置されている。
【0019】
伝動部33は、モータ31が有するモータ軸32に切られたピニオン歯面32aに噛み合う歯車33aと、この歯車33aの回転を刈刃部21の往復直線運動に変換するカム装置とを有する。
【0020】
歯車33aは、ピニオン歯面32aよりも歯数の多い大歯車であり、その軸穴にはカム装置のカム軸33bがブッシュ33cを介して挿入されている。この歯車33aとピニオン歯面32aは減速装置として機能し、歯車33aはモータ31のモータ軸32よりも低速で回転する。
【0021】
カム装置のカム33d,33dは、カム軸33bに遊嵌した状態で歯車33aの底面に止めピン34で固定され、歯車33aと一体で回転する。このカム33d,33dは、具体的には円盤カムであり、その中心軸がカム軸33bから偏るように歯車33aに固定されている。カム33d,33dは、後述する二枚の可動ブレード21a,21bに各々対応するように設けられ、互いに180度位相がずれるように配置される。また、カム33d,33dは、可動ブレード21a,21bの枚数に応じて設けられ、例えば可動ブレードが一枚の場合は一枚のカムのみ設けられる。
【0022】
カム装置のカム軸33bは、歯車33aを上方に貫通し、モータ31のモータ軸32と平行に並んで配置されている。この平行に並んだ箇所において、カム軸33bは、モータ31のモータ軸32とともに軸受部材35を介してモータハウジング11aのリブ等の所定箇所に支持される。
【0023】
軸受部材35は、カム軸33bとモータ31との間に掛け渡される固定部材であり、二つ割りのモータハウジング11aにより挟持されることにより、モータハウジング11a内に固定される。軸受部材35は、一般にアルミニウム合金等の金属で形成されるが、合成樹脂等で形成することもできる。軸受部材35には、カム軸33bが圧入される軸穴35aと、モータ軸32を軸支するボールベアリング36と関係する押さえ部35bとが形成されている。このように、モータ軸32とカム軸33bは、軸受部材35を介してモータハウジング11a内で一定間隔を保って平行に保持されるので、モータ軸32のトルクはカム33d,33dに対して滑らかに伝達されることとなる。
【0024】
一方、刈刃部21は、ブレード固定板22と可動ブレード21a,21bとブレード押え23とが重なり合った状態で、モータハウジング11aの底部から前方に向かって突出するように設置されている。
【0025】
ブレード固定板22は、モータハウジング11aの底部に固定されており、このブレード固定板22の上側にスペーサ24及び固定ネジ25を介してブレード押え23が固定される。可動ブレード21a,21bは、ブレード固定板22とブレード押え23との間に挿入され、スペーサ24に刈刃部21の長さ方向に伸びる長孔を介して接する。可動ブレード21a,21bの後端には、各ブレードの幅方向に伸びる長孔24a,24bが穿設され、各長孔24a,24bにカム装置の各カム33d,33dが挿入される。カム33d,33dがカム軸33bを中心にして回転すると、カム33d,33dと長孔24a,24bとの摺接作用により可動ブレード21a,21bは相互に逆向きの往復直線運動を行う。この往復直線運動をする可動ブレード21a,21bにより、例えば、生け垣の植木等がトリミング可能となる。
【0026】
なお、刈刃部21の交換は、モータハウジング11aの底部に固定されたブレード固定板22をモータハウジング11aから取り外し、刈刃部21全体を交換することで行われる。
【0027】
さらに、本実施形態に係るハンドルハウジング11bには、上述したように、ユーザからの把持を受けるハンドル部12が形成されているが、このハンドル部12には、ユーザからの押圧操作を受けることでモータ31の回転駆動を操作可能なスイッチであるトリガースイッチ13が設置されている。
【0028】
このトリガースイッチ13は、モータ31への電力のオン/オフを行うためのスイッチ装置14に接続されている。したがって、トリガースイッチ13がユーザからの押圧操作を受けると、トリガースイッチ13がハンドルハウジング11b内に押し込まれてスイッチ装置14がオン状態となり、駆動源であるモータ31への電力供給が行われることとなる。また、押圧操作を中止するとトリガースイッチ13は元の位置に戻りスイッチ装置14はオフ状態となり、駆動源であるモータ31への電力供給が停止されることとなる。なお、スイッチ装置14には、ロックオンボタン(不図示)が装備されており、トリガースイッチ13がハンドルハウジング11b内に押し込まれた状態でユーザがこのロックオンボタンを操作することで、ユーザによるトリガースイッチ13の押圧操作を中止してもトリガースイッチ13は元の位置に戻らずスイッチ装置14のオン状態が維持されるようになっている。なお、ロックオンボタンの操作によりオン状態が維持されている場合は、ユーザが再びトリガースイッチ13の押圧操作をすると、ロックオンボタンによるオン状態の維持が解除され、さらに押圧操作を中止するとトリガースイッチ13は元の位置に戻りスイッチ装置14はオフ状態になるようになっている。
【0029】
さて、上述した本実施形態に係るヘッジトリマ10では、刈刃部21が有する可動ブレード21a,21bの位置の微調整を行うための手回し機構40が、モータ軸32の上方とモータハウジング11aの内周面との間に設けられている。そこで次に、本実施形態に係るヘッジトリマ10が備える手回し機構40について、図4〜図6を参照図面に加えて詳細に説明することとする。ここで、図4は、半割構造で構成されるハウジング(モータハウジング11a及びハンドルハウジング11b)のうちの右側面側の半割体を取り外した状態での本実施形態に係るヘッジトリマの右側面のうちの要部を拡大した図である。また、図5は、図4中のA部を拡大した図であり、図6は、図5中のB−B断面を示す図である。
【0030】
本実施形態に係る手回し機構40は、モータ軸32の上方の軸端部に形成された被係合部32bと、下面に被係合部32bと係合可能な係合部42bを有するとともに、上面に手工具による操作を受けるための手工具嵌合部42aを有する係合部材42と、モータ軸32と係合部材42との間に設置され、係合部材42がモータ軸32から離れる方向に弾性力を及ぼす弾性部材44と、を有している。
【0031】
モータ軸32の上方の軸端部に形成された被係合部32bは、横断面形状が略小判形をした形状にて形成された軸状の部材である。一方、係合部材42が有する係合部42bは、モータ軸32に形成された横断面略小判型をした被係合部32bをちょうど嵌め込むことができるような穴形状として形成されており、穴として形成される係合部42bの内周面の形状が、横断面で見たときに、被係合部32bよりも僅かに内周寸法が大きい略小判型をした穴として形成されている。したがって、係合部材42が有する係合部42bに対してモータ軸32の被係合部32bが嵌り込むと、係合部材42とモータ軸32は、モータ軸32の軸中心線を回転中心とした回転方向で、両部材が固定されることとなる。つまり、両部材が嵌め合い状態の場合に回転方向の力が加わると、係合部材42とモータ軸32とは一体となって回転運動を行うように構成されている。
【0032】
また、係合部材42の上面には、例えばドライバや六角レンチなどといった手工具による操作を受けるための手工具嵌合部42aが形成されている。この手工具嵌合部42aは、ドライバの先端が嵌り込むための穴であったり、六角レンチの先端が嵌り込むための六角形をした穴として構成されたりする部位である。
【0033】
さらに、モータ軸32と係合部材42との間に設置される弾性部材44は、コイルばねとして構成される部材であり、常に両部材を引き離す方向に弾性力を及ぼしている。
【0034】
したがって、係合部材42が外力を受けていない初期状態のときには、弾性部材44の弾性力が作用することで、モータ軸32の被係合部32bと係合部材42の係合部42bとは、離隔した状態を維持することとなる。またこのとき、弾性部材44の弾性力を受けた係合部材42は、上面がモータハウジング11aの内周面に対して押し付けられた状態となっている。さらに、係合部材42がモータハウジング11aの内周面に対して押し付けられたとき、係合部材42に形成された手工具嵌合部42aの位置に対応するモータハウジング11aの位置には、手工具によって係合部材42の操作を行うための開口孔11aが形成されている。
【0035】
一方、係合部材42が下向きの外力を受けた場合には、弾性部材44の弾性力に抗して係合部材42が下方に移動し、係合部材42が有する係合部42bとモータ軸32の被係合部32bとの嵌め合い状態が実現することとなる。より具体的な操作例を説明すると、例えば、ドライバの先端を、開口孔11aを導通させて手工具嵌合部42aに差し込み、係合部材42に対してドライバから下向きの押し込み回転力を及ぼすとする。すると、係合部材42が有する係合部42bとモータ軸32の被係合部32bとが嵌め合い状態となるとともに、この状態からドライバによる回転力が加わるので、係合部材42とモータ軸32とは、一体となって回転運動を行うこととなる。
【0036】
上述のように手回し機構40が動作すると、モータ軸32が回転運動を行うこととなるが、モータ軸32が回転運動すると、上述した伝動部33が有するカム33d,33d等の作用によって、刈刃部21が有する可動ブレード21a,21bが移動するので、可動ブレード21a,21bの位置の微調整を行うことが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るヘッジトリマ10では、刈刃部21が有する可動ブレード21a,21bの位置の微調整を行うための手回し機構40が、モータ軸32の上方とモータハウジング11aの内周面との間に設けられている。すなわち、本実施形態の手回し機構40は、ヘッジトリマ10の上面側から操作することが可能となっている。したがって、本実施形態に係るヘッジトリマ10は、操作性の非常に高い構成を有している。
【0038】
また、本実施形態に係る手回し機構40は、モータハウジング11aの内部にコンパクトに収納された構成を有しているので、ヘッジトリマ10の操作性や持ち運び性等を阻害することが無い。
【0039】
また、本実施形態に係る手回し機構40では、係合部材42を介してモータ軸32を直接回転させることで、刈刃部21が有する可動ブレード21a,21bの位置の微調整を行う構成が採用されている。かかる構成は、伝動部33が有するギヤ比の効果を得ることができるので、スムーズに可動ブレード21a,21bの位置の微調整を行うことができる点で優れている。
【0040】
また、上述したように、刈刃部21の交換は、モータハウジング11aの底部に固定されたブレード固定板22をモータハウジング11aから取り外し、刈刃部21全体を交換することで行われることとなるが、本実施形態では、手回し機構40がヘッジトリマ10の上面側から操作できるので、手回し機構40を操作しながら可動ブレード21a,21bの位置を容易に確認できる。したがって、ユーザは、刈刃部21の交換に際して最も適する位置に可動ブレード21a,21bを位置調整し、その位置で刈刃部21を交換すればよいので、本実施形態に係るヘッジトリマ10は、従来は非常に困難を伴った刈刃部21の交換作業を容易に行うことができるという利点を有している。
【0041】
なお、本発明構成の用途については、刈刃部21の交換に用いるのに好適なだけではなく、例えば、可動ブレード21a,21bの使用につれて刃が鈍ったときに、砥石等を用いて可動ブレード21a,21bの刃を研ぎたい場合がある。この場合にも、本実施形態の手回し機構40を用いることで可動ブレード21a,21bの位置を容易に調整することができるので、ユーザが研ぎ易い位置に可動ブレード21a,21bの位置を調整することが容易にできる。このように、本発明は、ユーザに対して様々なメリットをもたらすことが可能である。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0043】
すなわち、上述した本実施形態の係合部材42は、弾性部材44からの弾性力を受けることによって、その上面が通常状態においてモータハウジング11aの内周面に対して押し付けられた状態となっていた。かかる状態によって、モータハウジング11aと係合部材42との間には隙間が生じないので、一般的には、モータハウジング11aの開口孔11aを通じて外部の塵芥等がモータハウジング11aの内部に侵入することはほとんどない。しかしながら、例えば、粉塵等が多い使用環境や、水の飛散が多い使用環境等といった、悪環境の場所でヘッジトリマ10を使用する場合には、例えば、係合部材42の上面におけるモータハウジング11aとの当接箇所に、シール部材を設置することが好ましい。シール部材の設置によって、モータハウジング11aの密閉度を高めることができるので、外部環境中に存在する塵芥等がモータハウジング11aの内部に対して侵入することを好適に防止することが可能となる。
【0044】
また、モータハウジング11a内部への塵芥等の侵入を好適に防止する構成については、例えば、図7で示すように、モータハウジング11aに対して、手回し機構40の設置位置近傍を覆うカバー部材71を設けることができる。ここで、図7は、本発明が取り得る多様な変形例の一つを示した図であり、モータハウジング11aに対してカバー部材71を設けた場合の形態を例示したものである。図7で例示するようなカバー部材71の設置によっても、モータハウジング11aの密閉度を高めることができるので、モータハウジング11a内部への塵芥等の侵入を好適に防止することが可能となる。
【0045】
なお、図7で示すように、係合部材42の上部につまみ72を設けることで、係合部材42の操作が容易化する。このようなつまみ72を設ける場合には、モータハウジング11aの外部に向かってつまみ72がむき出しの状態で突出することを避けるため、上述したカバー部材71と組み合わせて用いることが好適である。
【0046】
さらに、上述した実施形態に係る手回し機構40は、駆動源であり回転体となるモータ軸32を直接操作する構成であるので、例えば、手回し機構40の操作状態を検知するセンサー部を設けておき、このセンサー部が手回し機構40の操作状態に応じて指令信号を発することで、モータ31のオン/オフ制御を行う様にすることも好適である。かかる構成を採用することで、本実施形態に係るヘッジトリマ10の安全度を高めることができる。なお、センサー部については、例えば、係合部材42が有する係合部42bとモータ軸32の被係合部32bとの嵌め合い状態の有無を判断できるセンサー類を設置したり、上で例示したカバー部材71の開閉状態を判断できるセンサー類を設置したりすることで対応することが可能である。
【0047】
またさらに、上述した実施形態では、モータ軸32の上方の軸端部に形成された被係合部32bは、横断面形状が略小判形をした形状にて形成された軸状の部材であり、一方、係合部材42が有する係合部42bは、モータ軸32に形成された横断面略小判型をした被係合部32bをちょうど嵌め込むことができるような穴形状として形成されていた。しかしながら、係合部材42が有する係合部の形状と、モータ軸32に形成された被係合部の形状については、本実施形態で例示した形状のものには限られない。係合部材42が有する係合部に対してモータ軸32の被係合部が嵌り込んだ場合に、係合部材42とモータ軸32とが、モータ軸32の軸中心線を回転中心とした回転方向で確実に固定できる形状であれば、どの様な形状を採用しても構わない。
【0048】
さらにまた、上述した実施形態では、弾性部材44としてコイルばねが採用されていたが、本発明に係る弾性部材については、本実施形態で示したコイルばねと同様の作用効果を発揮できるものであれば、どの様な弾性部材を採用してもよい。
【0049】
また、本発明に係る手回し機構については、上述した実施形態の他に、モータ軸32の上方の軸端部に直接形成された、手工具による操作を受けるための手工具嵌合部(例えば、ドライバや六角レンチなどといった手工具からの操作を受けるための穴)とすることができる。かかる構成は、モータ軸32をダイレクトに操作する非常にシンプルな構成であり、部品点数が少なく済むという利点を有している。
【0050】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0051】
10 ヘッジトリマ、11 ハウジング、11a モータハウジング、11a 開口孔、11b ハンドルハウジング、12 ハンドル部、13 トリガースイッチ、14 スイッチ装置、21 刈刃部、21a,21b 可動ブレード、22 ブレード固定板、23 ブレード押え、24 スペーサ、24a,24b 長孔、25 固定ネジ、31 モータ、32 モータ軸、32a ピニオン歯面、32b 被係合部、33 伝動部、33a 歯車、33b カム軸、33c ブッシュ、33d,33d カム、34 止めピン、35 軸受部材、35a 軸穴、35b 押さえ部、36 ボールベアリング、40 手回し機構、42 係合部材、42a 手工具嵌合部、42b 係合部、44 弾性部材、71 カバー部材、72 つまみ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具の駆動源となるモータと、
前記モータを収納するハウジングと、
前記ハウジングから突出するように取り付けられる工具と、
を備え、
前記モータの有するモータ軸が縦方向を向くように配置される電動工具において、
前記工具の微調整を行うための手回し機構を、前記モータ軸の上方の軸端部、又は前記モータ軸の上方と前記ハウジングとの間に設けたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具において、
前記手回し機構は、
前記モータ軸の上方の軸端部に形成された被係合部と、
下面に前記被係合部と係合可能な係合部を有するとともに、上面に手工具による操作を受けるための手工具嵌合部を有する係合部材と、
前記モータ軸と前記係合部材との間に設置され、前記係合部材が前記モータ軸から離れる方向に弾性力を及ぼす弾性部材と、
を有しており、
前記係合部材が外力を受けないときには、前記弾性部材の弾性力によって、前記モータ軸の前記被係合部と前記係合部材の前記係合部とが離隔しており、
前記係合部材が有する前記手工具嵌合部が手工具から下方への押し込み回転力を受けたときには、前記モータ軸の前記被係合部と前記係合部材の前記係合部とが係合して前記モータ軸を回転し、前記工具の微調整を行うことを特徴とする電動工具。
【請求項3】
請求項2に記載の電動工具において、
前記係合部材が外力を受けないときには、前記係合部材の上面と前記ハウジングとが当接状態にあることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
請求項1に記載の電動工具において、
前記手回し機構は、前記モータ軸の上方の軸端部に形成された、手工具による操作を受けるための手工具嵌合部であることを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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