説明

電動式作業車両

【課題】 放電用の負荷抵抗を用いずに回生電力を消費可能で、その際でもアクチュエータによる危害のない安全な電動式作業車両を提供する。
【解決手段】 走行用の車輪に対して走行するための駆動力を付与するための走行用モータ30と、芝刈り用ブレード80を回転駆動するブレード用モータ70と、バッテリ(電池)50と、走行用モータに所要の電力を供給する走行用モータコントローラ(変換装置)60と、ブレード用モータに所要の電力を供給するブレード用モータコントローラ(変換装置)65と、これらを制御するCPU603又は653を備え、走行用モータコントローラ(変換装置)は回生運転が可能であり、かつ、走行用モータが回生運転状態である場合の回生電力を、バッテリの充電状態に応じて、ブレード用モータに給電して消費するようにブレード用モータコントローラを制御し、かつ、ブレードの停止時には、当該ブレード用モータを回転させずに回生電力を消費する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、芝刈り機や除雪車や刈取り機など、所定の作業を電動で行うと共に、電動で移動することが可能な電動式作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用のモータを利用して移動しながら、アクチュエータである、例えば、ブレードカッタを回転・駆動して芝刈り作業を行う作業機、又は、動力装置(即ち、芝刈り機)は、例えば、以下の特許文献1や特許文献2により、既に知られている。
【0003】
しかしならが、上述した従来技術になる芝刈り機では、走行用のモータだけではなく、更に、ブレードカッタの回転に加え、車載の発電機を回転駆動するための内燃機関(エンジン)を備えることにより、所謂、ハイブリッド方式の作業車を実現している。
【0004】
更に、以下の特許文献3によれば、エンジンに代えて、バッテリを動力源としてモータで駆動するものが開示されており、高精度の刈り込み精度を発揮する電動芝刈り機も、既に、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−275026号公報
【特許文献2】特表2006−507789号公報
【特許文献3】特開平5−30832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術になる作業車、特に、上記特許文献3に開示された電動芝刈り機では、動力源であるモータの回生については考慮されていなかった。
【0007】
これは、例えば、芝刈り機が坂道を下って移動する場合等には、モータをブレーキ力(回生ブレーキ)として利用することにより、当該モータを発電機として利用することが可能である。そして、その際に発電された電力をバッテリに充電することによれば、当該芝刈り機が稼働可能な時間を延長すると共に、無駄なエネルギー(電力)の消費を低減することにより、エネルギーの利用効率を向上することが可能となる。
【0008】
しかしながら、芝刈り機が坂道を下って移動する際、バッテリが十分に充電されている(フル充電)状態では、発電された電力をバッテリに戻す(充電)することは出来ず、一般には、これを放電用の負荷抵抗に流すことにより消費することが行われていた。又、特に鉛バッテリにおいて、鉛バッテリは内部抵抗が比較的大きい為、フル充電状態でなくても、回生電力の大きさによっては、過電圧の状態になってしまう恐れがあるが、回生電力を減らす事で、過電圧を回避しようとすると、車体のブレーキ力も減ってしまい、運転者にとって危険な場合もある。そこで、車体のブレーキ力を減らさずに、過電圧を回避し、バッテリ及びバッテリに接続された電気機器を過電圧による故障から保護する為に、バッテリの過電圧の状態でも放電用の回生抵抗で回生電力を消費させている事が行なわれていた。
【0009】
そのため、従来、大きな放熱にも耐えられる比較的大きな形状の抵抗器が必要となり、そのため、部品点数が増大することから、製造コストが上昇すると共に、製品コストも上昇してしまい、経済的にも不利であるという問題があった。
【0010】
更には、上述した放電用の負荷抵抗を利用することなく、作業車に設けられた他のモータに通電することにより、不要となった発電電力を消費することも考えられるが、しかしながら、その場合には、特に、当該他のモータがアクチュエータであるブレードカッタを回転した場合には、作業車により作業を行っている作業者に危害を及ぼすことも考えられることから、望ましくないことが、本発明者らにより知見された。
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、特に、上記に述べた発明者らによる知見に基づき、即ち、走行用だけではなく、作業用アクチュエータの駆動にもモータを利用した電動式作業車両であって、バッテリのフル充電状態においても、放電用の負荷抵抗を用いることなく回生電力を消費することが出来、かつ、その際にもアクチュエータにより作業を行っている者にも危害を加えることなく、安全な電動式作業車両を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、まず、車体と、前記車体に取り付けられた複数の車輪と、前記複数の車輪の少なくとも一つの車輪に対して走行するための駆動力を付与するための走行用電動機と、前記車体の一部に取り付けられて所定の作業を行うための手段と、当該作業手段によって所定の作業を実行させるための作業用電動機と、前記車体の一部に取り付けられ、前記走行用電動機及び作業用電動機に電力を供給するための電池と、前記電池からの電力を前記走行用電動機に対して所要電力に変換して供給するための第1の電力変換装置と、前記電池からの電力を前記作業用電動機に対して所要電力に変換して供給するための第2の電力変換装置と、少なくとも、前記第1の電力変換装置と前記第2の電力変換装置の電力変換動作を制御するための制御部とを備えた電動式作業車両であって、少なくとも、前記第1の電力変換装置は回生運転が可能であり、かつ、前記制御部は、前記第1の電力変換装置が回生運転状態である場合の回生電力を、前記電池の充電状態に応じて、前記作業用電動機に給電して消費するよう前記第2の電力変換装置を制御する電動式作業車両が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記に記載した電動式作業車両において、更に、前記制御部は、前記第2の電力変換装置から前記作業用電動機に給電される電力のトルク成分が当該作業手段を作動しない程度に抑制されるように、当該第2の電力変換装置を制御することが好ましい。又は、前記所定の作業を行うための手段は、芝刈り用のブレードであることが好ましく、その場合、前記制御部は、前記電池の充電状態と共に、更に、前記芝刈り用ブレードの運転状態に応じて、前記作業用電動機に給電して消費するよう、前記第2の電力変換装置を制御することが好ましく、更には、前記制御部は、前記芝刈り用ブレードの停止時においては、給電される電力のトルク成分がほぼ零(0)になるように、前記第2の電力変換装置を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によれば、走行用だけではなく、作業用アクチュエータの駆動にもモータを利用した電動式作業車両であって、バッテリのフル充電状態においても、放電用の負荷抵抗を用いることなく回生電力を消費することが出来るので、安価に車両として安定したブレーキ力を確保可能になるとともに、その際においても、当該アクチュエータにより作業を行っている作業者に危害を加えることのない、安全な電動式作業車両、特に、芝刈り機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態になる電動式作業車両の一例である電動式の芝刈り機の概略構造を示す図である。図である。
【図2】上記芝刈り機における電動部品を中心として示した回路構成図である。
【図3】上記芝刈り機における走行用モータとブレード用モータと共に、走行用モータコントローラとブレード用モータコントローラの詳細を示す回路構成図である。
【図4】上記ブレード用モータコントローラの更なる詳細を示す回路構成図である。
【図5】上記ブレード用モータコントローラのドライブ回路における回生電力の消費のための制御処理方法の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態になる電動式作業車両の一例として、走行用だけではなく、作業用アクチュエータの駆動にもモータを利用した電動式の芝刈り機について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0017】
まず、添付の図1には、本発明になる電動式作業車両の一例である電動式の芝刈り機の構成が、概略的に示されており、当該芝刈り機は、図にも示すように、一対の前輪10、11と共に、一対の後輪20、21を備えており、そして、前記前輪10、11は、それぞれ、キャスタ12、13により、図に破線100で示した車体の下面に対して回転自在に、他方、後輪20、21は、車体の下面に対して固定して取り付けられている。なお、前輪10、11には、駆動手段は設けられておらず、他方、後輪20、21には、走行用のモータ30が、減速機40、及び、それぞれの駆動軸22、23を介して、取り付けられている。
【0018】
なお、本例では、上記走行用のモータ30としては、その一例として、例えば、ブラシレスDCモータが採用されており、そして、当該モータには、車載のバッテリ(電池)50からの直流電力が、例えば、CPUやPWM方式のインバータを含む走行用モータコントローラ(変換装置)60により、所望の周波数の三相交流に変換されて供給されている。
【0019】
また、車載のバッテリ50には、作業(非走行)用、即ち、ブレード用のモータ70が、やはり、CPUやPWM方式のインバータを含むブレード用モータのコントローラ65(変換装置)を介して接続されており、当該ブレード用モータコントローラ65により所望の周波数の三相交流に変換され、ブレード用のモータ70に供給されている。なお、この作業用モータ70の回転出力軸75の下端には、芝を刈る作業を行うためのカッタとして回転式のブレード80が取り付けられている。
【0020】
即ち、上述した構成になる芝刈り機によれば、走行用のモータ30で発生した回転トルクは、上記減速機40を介して、左右の後輪20、21に伝達される。その際、当該減速機40の働きにより、モータの回転トルクを差動的に減速してそれぞれの駆動軸22、23に伝達することにより、左右の後輪20、21の回転トルク(回転数)を所望の比率で回転・駆動することが出来、もって、車両の走行方向を自在に制御することが可能となる。なお、このとき、前輪10、11は、キャスタ12、13の働きによって、後輪20、21で設定された進行方向に従動することとなる。他方、非走行用、即ち、ブレード用のモータ70で発生した回転トルクは、カッタブレード80を回転・駆動することによって芝を刈ることとなる。
【0021】
次に、添付の図2は、上記にもその概略構造を示した本発明になる芝刈り機において、特に、その電動部品を中心として示した回路構成図であり、ここでは、上記図1に示した構成要素は、同じ参照番号が付されて示されている。
【0022】
即ち、バッテリ50には、上述した走行用モータコントローラ60とブレード用モータコントローラ65が、電気的に、並列に接続されており、それぞれ、走行用のモータ30とブレード用のモータ70に対して駆動用の三相交流電力を供給する。そして、走行用モータコントローラ60には、ここでは図示しないセンサから、例えば、芝刈り機に設けられたブレーキが踏み込まれたことを示すブレーキ情報、アクセルの踏み込み量を示すアクセル情報、更には、車速情報などが入力されており、当該走行用モータコントローラ60は、これらの情報を基に、即ち、CPUの内部メモリ等に予め格納されたソフトウェアにより所定の演算を行うことにより、走行用モータ30から出力される回転トルク及び速度を制御する。他方、ブレード用モータコントローラ65も、芝刈り作業を行うか否か、即ち、ブレード用モータ70によりブレード80を回転するか否かを示す情報である、ブレード用モータのオン/オフ情報を基に所定の演算を行って、ブレード用モータ70の回転トルク及び速度を制御する。なお、これらの走行用モータ30とブレード用モータ70の一部には、それぞれ、例えば、その回転数(速度)を検出するためのセンサ31と71、ブレード用モータの駆動電流を検出するためのセンサ72が取り付けられており、その出力であるモータ情報は、それぞれのコントローラ60、65にフィードバックされている。
【0023】
続いて、添付の図3は、上述した走行用モータ30とブレード用モータ70と共に、当該走行用モータコントローラ60とブレード用モータコントローラ65の詳細を示しており、この図からも明らかなように、各モータコントローラ60又は65は、例えば、転流ダイオードを含むパワートランジスタ、FET、IGBT等の電力素子を、それぞれ、6組づつ備えたインバータ回路601又は651を備えている。また、各モータコントローラ60又は65は、それぞれ、当該インバータ回路の各電力素子の導通/遮断を制御するための制御信号を生成するためのドライブ回路602又は652、そして、当該ドライブ回路を制御するためのCPU603又は653を備えている。また、その他、上記と同じ参照番号が付された構成要素は、上記と同様であり、ここではその説明は省略する。
【0024】
この図では、上述した車載のバッテリ50と共に、商用電源により当該バッテリを充電するための充電回路(直流変換器)90が示されている。即ち、当該充電回路(直流変換器)90は、作業車両である電動式の芝刈り機の一部に搭載されてもよく、又は、別体として用意されていてもよく、例えば、家庭用の電源(コンセント)にプラグ91を差し込むもとにより、バッテリ50を充電することが出来る。
【0025】
加えて、本発明の作業車両である電動式の芝刈り機では、特に、その走行用モータ30は、そのモータコントローラ60を介して、通常、バッテリ50からの電力の供給により所要の回転動作を行う、所謂、「力行」運転と、そして、例えば、坂道を下る走行時において、そのブレーキ力を利用して発電を行う、「回生」運転とが選択的に行われる。なお、この時の上記バッテリ50からの電流を、図の矢印「力行」と「回生」で示す。即ち、この「回生」運転時には、回生電流が、走行用モータコントローラ60を構成するインバータ回路601を介して、バッテリ50へ流れ込む。しかしながら、その際、当該バッテリ50が、既に、その規定容量まで充電されている状態(以後、「フル充電状態」と言う)では、上記の回生電力をバッテリ50へ供給した場合、バッテリの過充電を生じてしまい、バッテリ保護の面から好ましくない。
【0026】
そこで、本発明では、「回生」運転時において、特に、バッテリ50が「フル充電状態」である場合には、インバータ回路601からの回生電流を、上記バッテリ50ではなく、芝刈り作業を行うブレード80を回転・駆動するブレード用モータ70へ供給する。このことによれば、バッテリの充電に利用されない「回生」電力をブレード用モータ70の運転に利用することにより、車載のバッテリ50の電力消耗を低減することが可能で、且つ安定した車両のブレーキ力の確保が可能となる。
【0027】
なお、その際、ブレード用モータ70が運転(回転・駆動)状態である場合には、「回生」電力をブレード用モータ70の運転に利用することは好ましい。しかしながら、特に、ブレード80の回転・駆動を停止している場合(例えば、芝刈り機を目的地に移動するだけで、芝刈り作業は行わない)には、「回生」電力のブレード用モータ70への供給は、芝刈り作業を行うブレード80の回転にも繋がってしまい、これに伴う不用意なブレードの回転は、例えば、芝刈り機を運転している作業員などに危害を加えてしまう恐れがある等、好ましくない。
【0028】
そこで、本発明では、かかる場合には、上述した「回生」電力をブレード用モータ70へ供給するが、しかしながら、以下にも詳細に述べるブレード用モータコントローラ65のドライブ回路652を制御することにより、当該ブレード80を不用意に回転させることなく、当該「回生」電力をブレード用モータ70により安全かつ確実に消費するものである。
【0029】
以下には、上述した「回生」電力をブレード用モータ70により消費するための上記ドライブ回路652の詳細な回路構成の一例と、そのための制御処理方法の一例について、添付の図4及び図5を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
まず、図4には、上記ドライブ回路652の詳細な回路構成が示されており、なお、この図においても、上記と同じ参照番号が付された構成要素は、上記と同様である。
【0031】
図において、モータ70の一部に取り付けた回転速度センサ71からの回転速度信号を速度検出部6526により検出し、モータ回転速度が求められる。
【0032】
一方、上記で求められた回転速度は、減算器6524で目標速度(例えば、図3のCPU653から入力される)と比較され、その結果、零トルク指令やバッテリ電圧と合わせて、電流指令演算部6527にて、トルク電流指令Iq、励磁電流指令Idが生成される。また、モータ70の一部に取り付けたセンサ72(本例では、例えば、U相とV相の電流を検出する2個の電流検出器)からのU相とV相の電流を電流検出部6521により検出し、3相/2相座標変換部6522により電流成分、トルク電流Iqと励磁電流Idが生成され、電流制御部2628に入力される。この電流制御部2628では、入力された電流指令及びフィードバック電流に基づいて、q軸電圧(Vq)とd軸電圧(Vd)を求め、そして、2相/3相座標変換部2629では、これらの電圧に基づいて、ブレード用モータ70に供給される三相の回転する固定子電流を供給するインバータ回路651の素子を制御信号、Vu、Vv、Vwを生成することは、従来と同様である。
【0033】
更に、本実施例では、例えば、外部からの「零トルク」指令に対応してトルク電流指令Iqを零にする事で、ブレード用モータ70により発生される回転トルクが抑えられ、そのため、ブレード80を不用意に回転させることはない。即ち、上述した「回生」電力は、ブレード用モータ70内において、回転トルクではなく、励磁電流として利用し、即ち、巻線の発熱として消費されることとなる。
【0034】
次に、「回生」電力をブレード用モータ70により消費するための制御処理について、図5のフローチャートに示す。図において、処理が開始すると、まず、走行用のモータ30が「回生」運転の状態であるか、又は、「力行」運転の状態であるかを判定する(ステップS51)。その結果、「力行」運転であると判定した場合には、その処理を終了する。なお、モータ30が「回生」運転であるか否かの判定は、例えば、上記図3にも示すように、走行用のモータ30へ電力を供給するインバータ回路601を制御する上記ドライブ回路602において、当該モータ30が回生運転状態となったことを判定し、その結果を、図の「回生信号」として外部へ出力するようにしてもよく、又は、これに代え、例えば、インバータ回路601とバッテリ50の間に流れる電流を検出し、その流れる方向により(インバータ回路→バッテリ)、「回生」状態を判定することも可能であろう。
【0035】
一方、モータ30が「回生」運転状態であると判定された場合には、更に、上記バッテリ50の充電状態を判定する。即ち、上記バッテリ50がフル充電状態(例えば、SOC 80〜100%)であるか否かを判定する(ステップS52)。その結果、バッテリ50がフル充電状態である(図の「YES」)場合には、更に、ブレード用モータ70が運転(オン)状態であるか否かを判定する(ステップS53)。これは、例えば、芝刈り運転の開始・終了を指示するためのスイッチや指令(例えば、図4のオン/オフ情報)を利用することによって判定すればよい。そして、上記ステップS53の判定の結果、ブレード用モータ70が運転(オン)状態である(図の「YES」)場合には、全ての回生電力を、ブレード用モータ70に供給し(ステップS55)、処理を終了する。この時、ブレードモータは回転したまま、全ての回生電力が消費される。他方、ブレード用モータ70が運転(オン)状態でない(図の「NO」)場合には、零トルク指令を発生した後(ステップS54)、運転(オン)状態である場合と同様に、ステップ55に移行し、全ての回生電力を、ブレード用モータ70に供給し、処理を終了する。但し、零トルク指令を発生しているので、ブレードモータは停止したまま、全ての回生電力が消費される。
【0036】
なお、上記のステップS52で、バッテリ50がフル充電状態でない(図の「NO」)と判定された場合には、更に、バッテリ電圧は過電圧であるか否かを判定する(ステップS56)。
【0037】
その結果、バッテリ電圧は過電圧である(図の「YES」)場合には、上記と同様に、更に、ブレード用モータ70が運転(オン)状態であるか否かを判定する(ステップS57)。ブレード用モータ70が運転(オン)状態である(図の「YES」)場合には、ブレード用モータへの供給電力を増やす(ステップS59)。次に、バッテリが過電圧かどうか判断し(ステップS60)、過電圧と判断したの場合、ステップS59に戻り、更にブレード用モータへの供給電力を増やす。バッテリの過電圧状態が解消されるまで、ブレード用モータへの供給電力を増やし続ける。バッテリが過電圧の状態でなくなると、処理を終了する。他方、ブレード用モータ70が運転(オン)状態でない(図の「NO」)場合には、零トルク指令を発生する(ステップS58)。その後は、やはりバッテリの過電圧状態が解消されるまで、ブレード用モータへの供給電力を増やし続ける。バッテリが過電圧の状態でなくなると、処理を終了する。
【0038】
他方、上記のステップS56で、バッテリ電圧は過電圧でない(図の「NO」)と判定された場合には、更に、既にブレード用モータで回生電力を吸収しているか否かを判定する(ステップS61)。その結果、既にブレード用モータで回生電力を吸収している(図の「YES」)と判定された場合には、加えて、バッテリが現状より回生電力を受け入れることが可能か否かを判定する(ステップS62)。バッテリが現状より回生電力を受け入れる事が可能か否かの判定は、例えば、バッテリ電圧が過電圧の閾値より少し低い電圧に閾値を設けて判定する。
【0039】
その結果、バッテリが現状より回生電力を受け入れることが可能である(図の「YES」)と判定された場合には、ブレード用モータへの供給電力を減らす(ステップS63)。次に、ブレード用モータへの供給電力が零か否か判定し(ステップS64)、零の場合、処理を終了する。零でない場合は、再びステップS62に戻り、バッテリが現状より回生電力を受け入れる事が可能か否か判定し、受け入れる事が可能である場合は、更にブレード用モータへの供給電力を減らす(ステップS63)。ステップS62で、現状よりバッテリが回生電力を受け入れる事が不可能と判断するか、ステップS64で、ブレードモータへの供給電力が零になった場合、処理を終了する。他方、ステップS61で、既にブレード用モータで回生電力を吸収していないと判定した場合、処理を終了する。
【0040】
なお、上記の説明においては、一例として、バッテリ50は4個の電池を直列に接続したものであり、そして、その電圧58〜64V(=14.5〜16V/1個×4)を、過電圧の判定基準(=V1、ステップS56を参照)とし、そして、バッテリが受け入れ不可能な電圧(ステップS61を参照)の基準として、56〜62V=V2が設定されている。なお、これにより、バッテリが受け入れ可能な電圧は、V2以下の56〜62Vとなる。
【0041】
上述した回生電力の充電制御によれば、回生電力をバッテリに戻しながら、ブレード用モータ70の運転を行う。即ち、これによれば、バッテリ50を不要な電力の消費から保護することが出来ることとなる。他方、判定の結果ブレード用モータ70が運転(オン)状態でない、即ち、停止状態である場合には、上記の図4にも示したように、「回生」電力をブレード用モータ70内において、回転トルクとしではなく、励磁電流として利用し、即ち、巻線の熱として消費する(ステップS55、S58)。より具体的に、本例では、上記ブレード用モータ70のドライブ回路652を構成する電流指令演算部6527に対して「零トルク」指令を出力する。即ち、トルク電流Iqを零に設定し、もって、ブレード用モータ70により発生される回転トルクを小さくする。そのため、ブレード80が不用意に回転することはなく、「回生」電力は、励磁電流として巻線の発熱として消費されることとなる。
【0042】
また、特に、鉛バッテリの場合、「フル充電状態」でなくても、その内部抵抗が大きいため、端子電圧が上昇してしまう状態があり(バッテリにとって良くないと思われる)、(少なくとも)コントローラ等の機器類を保護する為にも、端子電圧が一定以上になった場合、「フル充電状態」でなくても、それ以上、バッテリに回生することが出来ない。その場合、「フル充電状態」と同じように回生電力の一部(バッテリが吸収しきれない分のみ)を非走行モータに吸収させる(流す)ことが好ましい。具体的には、回生時において、「フル充電状態」でなくても、バッテリ電圧を監視し、その電圧がある閾値以上になりそうになったら、その電圧がその閾値以下になるまでブレード用(非走行)モータに流す電流を増やすことで対応する。即ち、「フル充電状態」でなくても、過電圧の状態になった時には、ブレード用モータで回生エネルギーを吸収する。
【0043】
なお、以上に述べた制御処理は、上記図4に示したブレード用モータ70のモータコントローラ65を構成するCPU653により、例えば、その内部メモリ内に格納したソフトウェアを実行することにより行われる。しかしながら、本発明は、上記の構成にのみ限定されることなく、例えば、上記のCPU653を、上記走行用モータ30のモータコントローラ60を構成するCPU603と共用することも可能である。更に、上述した実施例では、「回生」電力を、ブレード用モータ70内において、回転トルクではなく、励磁電流として消費するものとして説明したが、しかしながら、本発明はこれに限らず、ブレード用モータ70の不用意な回転を伴わないのであれば、その他の方法をも利用することが出来る。
【0044】
高分解能な位置センサを用い、且つ(電流)フィードバック制御を行なう方が、零トルクの精度が高くなり、安全性の面でより好ましいが、低分解能の位置センサやフィードフォワード制御でも構わない。
【符号の説明】
【0045】
100…車体、10、11…前輪、20、21…後輪、30…走行用モータ、40…減速機、50…車載のバッテリ、60…走行用モータコントローラ、65…ブレード用モータコントローラ、70…作業用(ブレード用)モータ、80…芝刈り用ブレード、603、653…CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられた複数の車輪と、
前記複数の車輪の少なくとも一つの車輪に対して走行するための駆動力を付与するための走行用電動機と、
前記車体の一部に取り付けられて所定の作業を行うための手段と、
当該作業手段によって所定の作業を実行させるための作業用電動機と、
前記車体の一部に取り付けられ、前記走行用電動機及び作業用電動機に電力を供給するための電池と、
前記電池からの電力を前記走行用電動機に対して所要電力に変換して供給するための第1の電力変換装置と、
前記電池からの電力を前記作業用電動機に対して所要電力に変換して供給するための第2の電力変換装置と、
少なくとも、前記第1の電力変換装置と前記第2の電力変換装置の電力変換動作を制御するための制御部とを備えた電動式作業車両であって、
少なくとも、前記第1の電力変換装置は回生運転が可能であり、かつ、
前記制御部は、前記第1の電力変換装置が回生運転状態である場合の回生電力を、前記電池の充電状態に応じて、前記作業用電動機に給電するよう前記第2の電力変換装置を制御することを特徴とする電動式作業車両。
【請求項2】
前記請求項1に記載した電動式作業車両において、更に、前記制御部は、前記第2の電力変換装置から前記作業用電動機に給電される電力のトルク成分が当該作業手段を作動しない程度に抑制されるように、当該第2の電力変換装置を制御することを特徴とする電動式作業車両。
【請求項3】
前記請求項1に記載した電動式作業車両において、前記所定の作業を行うための手段は、芝刈り用のブレードであることを特徴とする電動式作業車両。
【請求項4】
前記請求項3に記載した電動式作業車両において、前記制御部は、前記電池の充電状態と共に、更に、前記芝刈り用ブレードの運転状態に応じて、前記作業用電動機に給電して消費するよう、前記第2の電力変換装置を制御することを特徴とする電動式作業車両。
【請求項5】
前記請求項4に記載した電動式作業車両において、前記制御部は、前記芝刈り用ブレードの停止時においては、給電される電力のトルク成分がほぼ零(0)になるように、前記第2の電力変換装置を制御することを特徴とする電動式作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−48608(P2013−48608A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189613(P2011−189613)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】