説明

電動式自動車におけるバキュームポンプ及び電装装置の配置構造

【課題】車両設計上の制約を最小限に抑制しつつ、車両前後方向への衝撃による他部材との衝突、及びバキュームポンプ等の作動に伴う熱の影響による他部材の不具合等を防止可能な電動式自動車におけるバキュームポンプ及び電装機器の配置構造の提供を目的とした。
【解決手段】車両のリアサイドフレーム18は、車両後方に向けて上り勾配になるように形成されたキックアップ部18bを有する。インバータ14及びバキュームポンプ22は、車両後方側において前後方向に並べて配置されている。インバータ14に対して後方に配置されたバキュームポンプ22は、リアサイドフレーム18に対して下方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式自動車に搭載されるバキュームポンプ及び電装装置の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動式自動車では、下記特許文献1に開示されているように、インバータ等の電力による駆動に寄与する電装装置やバキュームポンプ等の機器類を車両後方側に配置した構造とされている。従来技術の電動式自動車においては、リアサイドフレームにおいて車両後方側に向けて上り勾配とされた傾斜部よりもさらに後方であって、リアサイドフレームの下方にインバータ等の電装装置が設置されている。また、バキュームポンプは、リアサイドフレームに対して上方に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−143871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようにインバータ等の電装装置やバキュームポンプをリアサイドフレームの上方に固定するためには、車両のフロア面と電装装置やバキュームポンプとの間に設置用のスペースを十分に確保せねばならない。また、電装装置やバキュームポンプのメンテナンス等を考慮すると、車両のフロア面に孔等を形成せねばならない。このように、従来技術の配置構造では、電装装置やバキュームポンプを配置することに起因して、車両設計上の制約が生じる。
【0005】
また、上述したような配置構造とすると、バキュームポンプ等の作動に伴う熱をスムーズに排出させることができない。そのため、バキュームポンプ等において発生した熱の影響により、近傍に配置された他部材の故障等の原因となる可能性がある。さらに、従来技術の配置構造を採用した車両において、バキュームポンプ等に対して車両前方側に電池等の他部材を配置した場合、衝突等により後方から前方への衝撃が作用すると、この衝撃の影響によりバキュームポンプが前方に配置された他部材に対して玉突き状態で衝突してしまう可能性がある。従って、従来の配置構造を採用した場合には、バキュームポンプ等の近傍に前述したような他部材との衝突を回避するためのスペースを設ける必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、車両設計上の制約を最小限に抑制しつつ、車両に対する前後方向への衝撃を受けても他部材との衝突を回避することが可能であり、バキュームポンプ等の作動に伴う熱の影響により他部材に悪影響が及ぶことを防止可能な電動式自動車におけるバキュームポンプ及びインバータ等の電装装置の配置構造の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、電力を駆動エネルギーの一部又は全部として駆動する自動車の車両後方側に位置するリアサイドフレームに対するバキュームポンプ、及び電力による駆動に寄与する電装装置の配置構造である。本発明の電動式自動車におけるバキュームポンプ及び電装装置の配置構造は、前記リアサイドフレームが、車両後方に向けて上り勾配になるように形成されたキックアップ部を有し、前記バキュームポンプ及び前記電装装置が、前記リアサイドフレームにおいて前後方向に並べて配置されており、前記バキュームポンプ及び前記電装装置のうち前方に配置されるものが、前記リアサイドフレームに対して上方に配置され、前記バキュームポンプ及び前記電装装置のうち後方に配置されるものが、前記リアサイドフレームに対して下方に配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、バキュームポンプ及び電装装置が、リアサイドフレームのキックアップ部を介して上下に分かれて配置されている。そのため、バキュームポンプ及び電装装置のうち一方を配置するためのスペースをリアサイドフレームの上方に設ける必要がなく、その分だけ電力を駆動エネルギーの一部又は全部として駆動する自動車(以下、「電動式自動車」とも称す)の後方部分におけるスペースを有効利用できる。従って、本発明によれば、例えば車両の後方部に設けられる荷室や居室のスペースを大きく取る等、電動式自動車の車両設計上の制約を最小限に抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の配置構造を採用した場合、バキュームポンプ及び電装装置のうち、リアサイドフレームのキックアップ部の下方に配置される機材(下方側機材)の着脱作業を車両の下方側から行うことが可能となる。これにより、下方側機材のメンテナンス等を容易に実施可能となる。また、下方側機材の着脱用としてフロア面に孔を設ける等する必要がなくなり、車両設計の自由度が向上する。
【0010】
また、本発明においては、バキュームポンプ及び電装装置が前後方向に並べて配置されているが、バキュームポンプ及び電装装置の一方の機材がリアサイドフレームのキックアップ部よりも下方に配置され、他方の機材がキックアップ部よりも上方に配置されており、同一の高さ位置に存在していない。そのため、車両に対する前後方向への衝撃を受けたとしても、後方側に配置された機材が前方に配置された機材に対して玉突き状態となって衝突することがない。
【0011】
上述したように、本発明においては、バキュームポンプ及び電装装置のうち一方がリアサイドフレームのキックアップ部よりも下方に配置されているため、車両の低重心化を図ることが可能となる。これにより、車両の走行安定性を向上させることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の配置構造を採用すれば、バキュームポンプ及び電装装置が上下方向に離れた位置関係になるため、これらの機器類を前後方向に流れる空気流により効率よく冷却させることが可能となる。これにより、バキュームポンプ等の作動に伴う熱の影響により他部材に悪影響が及ぶことを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動式自動車におけるバキュームポンプ及び電装装置の配置構造によれば、車両設計上の制約や製造コストを最小限に抑制しつつ、車両に対する前後方向への衝撃を受けても他部材との衝突を回避することが可能となる。また、本発明によれば、バキュームポンプ等の作動に伴う熱の影響により他部材に悪影響が及ぶことを防止することができる。さらに、本発明によれば、車両を低重心化させ、走行安定性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るバキュームポンプ及び電装装置の配置構造を示す平面図である。
【図2】図1に示す配置構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、本発明の一実施形態に係る車両におけるバキュームポンプ及び電装装置の配置構造10(以下、「配置構造10」とも称す)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図において一部の構成については、図示の都合により省略する場合がある。
【0016】
本実施形態において例示する車両は、電力を駆動エネルギーの一部又は全部として駆動する電動式自動車である。具体的には、本実施形態に係る車両は、電気エネルギーのみを用いて駆動する電気自動車、あるいはエンジンにおいて発生したエネルギーと電気エネルギーとを併用して駆動するハイブリッド型の自動車である。本実施形態の車両は、電池パック12に蓄積された電気エネルギーを、インバータ14(電装装置)を介してモータ16に供給することにより駆動可能な電動式自動車とされている。すなわち、本実施形態において例示する車両は、電池パック12、インバータ14、あるいはこれらに付随する充電器等の他の電装装置(図示せず)を電力による駆動に寄与する電装装置として備えている。
【0017】
インバータ14は、電池パック12から出力される直流電流を交流電流に変換してモータ16に供給することができる。また、インバータ14は、車両の減速時等にモータ16において発生した交流電流を直流電流に変換し、電池パック12に対して供給することができる。
【0018】
車両の後方側には、上述した電池パック12に加え、種々の機器類が設置されている。具体的には、車両の後方側であって、電池パック12よりも後方の位置においては、リアサイドフレーム18に対して駆動用のモータ16、減速機20、インバータ14、及びバキュームポンプ22が設置されている。図示状態において、車両の右方(図1中上側)であって、リアサイドフレーム18の下方には、モータ16及び減速機20が設置されている。また、インバータ14及びバキュームポンプ22は、車両の左方(図1中下側)において、リアサイドフレーム18を介して上下に分かれて配置されている。
【0019】
ここで、図2に示すように、リアサイドフレーム18は、側面視した状態において、車両の前方側及び後方側において略水平な前方水平部18a及び後方水平部18cを有する。また、前方水平部18a及び後方水平部18cの間には、車両の後方に向かうに連れて上り勾配になるように形成されたキックアップ部18b(傾斜部)が設けられている。また、リアサイドフレーム18は、車両のフロア面Fの下方において、上下方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0020】
上述したインバータ14及びバキュームポンプ22は、車両の前後方向に並べて配置されている。その一方で、インバータ14及びバキュームポンプ22は、リアサイドフレーム18に対して上下に分かれて配置されている。具体的には、インバータ14がリアサイドフレーム18において前方水平部18a側の位置に設置されている。これに対し、バキュームポンプ22は、インバータ14よりも車両の後方側において、リアサイドフレーム18のキックアップ部18bに吊り下げた状態で取り付けられている。従って、インバータ14及びバキュームポンプ22は、前後方向に同一軸線上に存在しているものの、上下方向に外れた位置関係にある。
【0021】
上述したように、本実施形態の配置構造10においては、インバータ14及びバキュームポンプ22が、リアサイドフレーム18のキックアップ部18bを介して上下に分かれた配置とされている。具体的には、バキュームポンプ22をインバータ14と同様にリアサイドフレーム18上に配置するのではなく、キックアップ部18bの下方に配置することとしている。これにより、バキュームポンプ22の設置スペースをリアサイドフレーム18上に設ける必要がない。従って、上述した配置構造10によれば、キックアップ部18b及び後方水平部18cの上方におけるスペースの有効利用が可能となり、例えば荷室や居室のスペースを大きく取る等することが可能となる。
【0022】
上述したように、バキュームポンプ22をリアサイドフレーム18のキックアップ部18bに吊り下げた構造とした場合、バキュームポンプ22の着脱作業を車両の下方側から行うことができる。これにより、バキュームポンプ22のメンテナンス等を容易に実施可能となる。また、バキュームポンプ22の着脱用としてフロア面Fに孔を設ける等する必要がなくなる。
【0023】
また、配置構造10においては、インバータ14及びバキュームポンプ22が前後方向に並べて配置されているものの、バキュームポンプ22がリアサイドフレーム18のキックアップ部18bよりも下方に配置され、インバータ14がキックアップ部18bよりも上方に配置されている。すなわち、インバータ14とバキュームポンプ22は、同一の高さ位置に存在しておらず、両者の間に高低差がある。そのため、車両に対して後方から他の車両が衝突する等して、車両が前後方向への衝撃を受けたとしても、後方側に配置されたバキュームポンプ22がインバータ14に対して玉突き状態となって衝突することがない。
【0024】
上述したように、本実施形態においては、重量物であるインバータ14及びバキュームポンプ22のうち一方がリアサイドフレーム18のキックアップ部18bよりも下方に配置されている。そのため、車両を低重心化し、走行安定性を向上させることが可能となる。
【0025】
さらに、本実施形態の配置構造10を採用すれば、インバータ14及びバキュームポンプ22が上下方向に離れた位置関係にあり、同一高さにおいて前後方向に機器類が配置されることを回避できる。従って、配置構造10を採用すれば、フロア面Fの下方において前後方向に流れる空気流によりバキュームポンプ22を効率よく冷却させることが可能となる。また、バキュームポンプ22等の作動に伴う熱の影響により、他部材に悪影響が及ぶことを防止しうる。
【0026】
本実施形態においては、バキュームポンプ22をインバータ14に対して後方かつ下方に配置した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、両者の位置関係が入れ替わっていても良い。具体的には、バキュームポンプ22をリアサイドフレーム18の前方水平部18a側の位置において上方に設置し、インバータ14をキックアップ部18bの下方に吊り下げる等して設置することにより、インバータ14がバキュームポンプ22に対して後方かつ下方に配置された状態になるようにしても良い。
【0027】
本実施形態においては、電力による駆動に寄与する電装装置たるインバータ14と、バキュームポンプ22の配置について例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施形態におけるインバータ14に代えて、あるいはインバータ14に加えて電池パック12、あるいは充電器等の他の電装装置(図示せず)を、バキュームポンプ22との関係において上述した位置関係になるように設置することとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のバキュームポンプ及び電装機器の配置構造は、電気エネルギーのみを用いて駆動する電気自動車、あるいはエンジンにおいて発生したエネルギーと電気エネルギーとを併用して駆動するハイブリッド型の自動車のように、バキュームポンプ及び電装機器を搭載し、電力を駆動エネルギーの一部又は全部として駆動する電動式自動車全般において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 配置構造
14 インバータ
18 リアサイドフレーム
18b キックアップ部
22 バキュームポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を駆動エネルギーの一部又は全部として駆動する電動式自動車の車両後方側に位置するリアサイドフレームに対するバキュームポンプ、及び電力による駆動に寄与する電装装置の配置構造であって、
前記リアサイドフレームが、車両後方に向けて上り勾配になるように形成されたキックアップ部を有し、
前記バキュームポンプ及び前記電装装置が、前記リアサイドフレームにおいて前後方向に並べて配置されており、
前記バキュームポンプ及び前記電装装置のうち前方に配置されるものが、前記リアサイドフレームに対して上方に配置され、前記バキュームポンプ及び前記電装装置のうち後方に配置されるものが、前記リアサイドフレームに対して下方に配置されていることを特徴とする電動式自動車におけるバキュームポンプ及び電装装置の配置構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−112239(P2013−112239A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261267(P2011−261267)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】