説明

電動操作装置

【課題】 電動操作装置を構成する部品の中で不具合発生程度が最も多い部品であったクラッチ機構を不要にして製品品質を向上させること
【解決手段】 断路器用接地装置の起伏ブレードに対して起伏動作させるための電動操作装置26であり、駆動モータユニット40は、交流用モータであるトルクモータを備えたモータ部43と、減速機部44を一体化して構成される。トルクモータの回転数に対するトルク特性は、低速回転領域で最大トルクが出力されるとともに、その最大トルクは、前記断路器または前記断路器用接地装置に損傷を与えない大きさに設定されるため、クラッチ機構を不要にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動操作装置に関するもので、断路器の接点の開閉や断路器用接地装置の駆動源として使用される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
断路器に併設される接地装置は、断路器の本体側に取り付けられた固定接触部と、その固定接触部に接触・離反するブレードと、そのブレードを移動させる電動操作装置等を備えている。ブレードは、下端を回転中心として90度の角度範囲(起立姿勢と倒れた姿勢をとる)内で回転する起伏ブレードと、その起伏ブレードの上端に接続され軸方向に伸縮する伸縮ブレードを備える。本発明が対象とする電動操作装置は、起伏ブレードを回転(起伏)させるものである。
【0003】
断路器は、無電圧状態で開閉されることから遮断器等と相違して比較的ゆっくりと開閉することができる。同様に、接地装置の投入/開放動作も比較的ゆっくりと行われる。上述した起伏ブレードの回転動作は年に数回程度行われることも相まって、その駆動源は、従来コンプレッサーが用いられていたが、その後、モータを駆動源として使用することに変わってきている。そして、例えば550kV変電所では、作業員が常駐であることからAC電源があるので、モータは交流モータが用いられる。これにより、別途直流電源を設置する必要がない。
【0004】
図8は、従来の電動操作装置の要部を示している。この電動操作装置は、駆動モータ1の出力軸1aに駆動歯車2を連結し、その駆動歯車2に対して複数の歯車3からなる減速機4を連携させ、減速機4の出力が操作軸6となる。さらに減速機4の中間に、クラッチ機構5を介在させている。そして、この操作軸6を所定のリンク機構を介して起伏ブレードに連携する。駆動モータ1は、正逆回転可能なモータである。この駆動モータ1が正逆回転することで操作軸6が所定の角度範囲で正逆回転し、起伏ブレードが起立/転倒する。この種の電動操作装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
さらに、この駆動モータ1は、交流の普通かご形誘導モータを用いている。この普通かご形誘導モータの回転数に対するトルク特性は、図9中、点線で示すようになっている。図示するように、回転数が増加するにつれて出力トルクは徐々に減少した後、反転して上昇し定格の2.5倍以上という非常に大きな最大トルクとなった後、出力0に向けて減少する。そして、低速回転時は出力トルクが低くなることから、当該低速回転領域のときにも一定のトルクが得られるようにモータを構成すると、高速回転領域のときに必要以上に大きなトルクが出力される領域が発生する。そのため、かかる高速回転領域での出力トルクをそのまま起伏ブレードのリンク機構を含めた動力伝達系に動力を与えると、装置が破損するおそれがある。従って、かかる破損の発生を防止するため、従来の電動操作装置は、上述したようにクラッチ機構5を配置して不要なトルク領域(図9中ハッチングで示す領域)をカットするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭64−18553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の普通かご形誘導モータを用いた電動操作装置は、クラッチ機構の使用が必須であった。そのため、以下に示す各種の問題を生じる。まずクラッチ機構は、その組み立てが難しいとともに、設置後の調整・保守が煩雑となる。さらに、クラッチ機構は、電動操作装置を構成する部品の中で不具合発生程度が最も多い部品であり、そのクラッチ機構の存在が製品品質保持にとってネックとなっている。
【0008】
さらに、クラッチ機構5に対して保守管理する必要から、クラッチ機構5に対しては外部から作業しやすいようにしている。すなわち、クラッチ機構5は、駆動モータ1と別体に構成して配置して露出させている。さらに、複数の歯車3から構成される減速機4の途中にクラッチ機構5が配置されることから、歯車3も外部に露出状態にする必要がある。歯車2,3は、その噛み合いする歯部にグリスを注入するが、歯車2,3が外部に露出していることからグリスの乾燥も速いとともにゴミの付着もあり頻繁にグリスを再注入したり清掃したりする必要が生じるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)断路器または断路器用接地装置に用いられる電動操作装置であって、交流用モータであるトルクモータと、そのトルクモータの出力に連携される減速機とを備え、前記トルクモータの回転数に対するトルク特性は、低速回転領域で最大トルクが出力されるとともに、その最大トルクは、前記断路器または前記断路器用接地装置に損傷を与えない大きさに設定されることとした。
【0010】
トルクモータの最大トルクは、そのトルクモータひいては電動操作装置の出力が連携される断路器または断路器用接地装置に損傷を与えない大きさに設定されているので、従来の装置のようにトルクをカットするためのクラッチ機構が不要となり、トルクモータの出力を減速機で減速した状態のものを断路器・断路器用接地装置に与えることができる。よって、機構がシンプルとなり、電動操作装置を構成する部品の中で不具合発生程度が最も多い部品であったクラッチ機構がなくなるため、製品品質が向上する。さらにストール特性が良好で低速回転領域で最大トルクが出力されるので、モータの回転数が落ちてきても問題なく所望のトルクを出力し続けてモータ失速を抑えることができる。
【0011】
トルクモータは、交流用モータであるので、AC電源を用いて動作する。よって、例えば550kV変電所のように、従来交流の普通かご形誘導モータにより動作する電動操作装置が設置されている箇所においては、当該既設の電動操作装置を本発明の電動操作装置に取り替えることが簡単にできる。もちろん、新設の変電所等に対して適用できるのは言うまでもない。
【0012】
(2)前記トルクモータと前記減速機は、同一のケース内に収納されるようにするとよい。このようにすると、トルクモータ及び減速機が1つの部品となり、電動操作装置内への組み付けが容易に行える。さらに、減速機を構成する歯車がケース内に収納されて保護されるので、歯車間等に注入するグリスが乾いたり、ゴミが付着したりするのを可及的に抑制でき、点検・メンテナンスをするサイクルを長くすることができる。
【0013】
(3)前記トルク特性は、前記低速回転領域では回転数の増加に対して出力トルクが一定或いは徐々に低下し、高速回転領域では前記回転数の増加に対する前記出力トルクの低下する変化率が、前記低速回転領域における変化率よりも大きい設定とするとよい。このようにすると低速回転領域では、最大トルクに近い出力を維持できるので、安定した動作をすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、電動操作装置を構成する部品の中で不具合発生程度が最も多い部品であったクラッチ機構が不要となるので、製品品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電動操作装置が実装される断路器の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る電動操作装置の好適な一実施形態を示す正面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】その側面図である。
【図5】駆動モータを示す斜視図である。
【図6】作用を説明する図である。
【図7】作用を説明する図である。
【図8】従来例を示す図である。
【図9】本発明品並びに従来品の駆動モータの回転数に対するトルク特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の好適な一実施形態である電動操作装置が実装される550kV変電所に設置される断路器10の一例を示している。断路器10の導電部は、地上に設置された架台11の上に起立された碍子装置12の頂上に設置される。碍子装置12は、複数本の碍子12aを直列に連結して形成される3本の脚部を塔のように組み付けて構成される。
【0017】
この碍子装置12の頂上に設置される断路器10の導電部は、その頂点で回転するヒンジ部13と、ヒンジ部13に連結された水平方向に延びるバット側ブレード14と、そのバット側ブレード14の先端に取り付けられた上下に延びる円柱状の主接触部(バット)15,シールドリング16を備える。これらバット側ブレード14,主接触部15及びシールドリング16は、ヒンジ部13の回転に伴い一体となって回転する。ヒンジ部13は、コンプレッサー等の駆動源からの力を受けて正逆回転する。
【0018】
図1では、一相分の系統の上流側或いは下流側の一方のみ示しており、図示する断路器の構成が反対側にも配置されて1相分が形成される。さらにそれらが3相分設置される。なお、対を構成する相手側の主接触部は二股状となり、その二股状の主接触部(フィンガ)内に棒状の主接触部15が入り込んで両者が導通する。そして、ヒンジ部13が正逆回転することにより、対となる主接触部15同士が接続されて断路器の接点が入り状態となったり、離反して切り状態になったりする。この断路器の導電部の部分の基本構成は、従来と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0019】
断路器10に併設して接地装置20が配置される。この接地装置20は、切り状態となった断路器10のヒンジ部13・ブレード14・主接触部15及び端子台に接続された架線を接地するものである。つまり、切り状態となったヒンジ部13・ブレード14・主接触部15及び端子台に接続された架線は、空中に浮いた状態となっている。そこで、接地装置20にて接地することで回路的に安定させる。なお、実際には主接触部15に直接触するのではなく、ヒンジ部13にある端子台等に導通させるようにしている。
【0020】
接地装置20は、断路器10のヒンジ部13側に取り付けられた固定接触部23と、その固定接触部23に接触・離反する金属製(導電性)のブレードと、そのブレードを移動させる電動操作装置等を備えている。ブレードは、下端を回転中心として90度の角度範囲(起立姿勢と倒れた姿勢をとる)内で回転する起伏ブレード21と、その起伏ブレード21の上端に接続され軸方向に伸縮する伸縮ブレード22を備える。起伏ブレード21は、図示省略するリード線等により地面に直接或いは接地導体に接続されてアースがとられる。図示するように、起伏ブレード21が起立するとともに、伸縮ブレード22が延びた状態では、伸縮ブレード22の先端が固定接触部23と接続して導通する。よって、固定接触部23は、ヒンジ部13ひいては断路器10の主接触部15に導通しているため、主接触部15は伸縮ブレード22,起伏ブレード21を介して接地される。一方、図中2点鎖線で示すように、伸縮ブレード22が収縮するとともに起伏ブレード21が転倒した状態では、伸縮ブレード22の先端と固定接触部23とが離反する。よって、断路器10の接地状態が解除される。
【0021】
本発明が対象とする電動操作装置26は、起伏ブレード21を垂直平面内で回転(起伏)させるものである。すなわち、電動操作装置26の出力である操作軸26aに連結ロッド25を連結し、その連結ロッド25の上端にリンク機構24を連結し、そのリンク機構24を介して起伏ブレード21に電動操作装置26の出力を伝達する。これにより、起伏ブレード21が下端を回転中心として正逆回転する。なお、伸縮ブレード22の伸縮動作も別途設けた駆動モータ27の動力により行う。なおまた係るブレード(起伏ブレード21,伸縮ブレード22)の動作は後述する。
【0022】
図2〜図4は、電動操作装置26の一実施形態を示している。この電動操作装置26は、矩形状の機構箱30の前面が開放され、その前面に正面扉31が取り付けられる。本実施形態では、このように一面のみが開放する構造としているので、当該前面側に保守管理する際の作業空間が確保されればよい。機構箱30の天面所定位置に、操作軸26aが外部に突出状態で配置される。
【0023】
機構箱30の前面のみが開放されるため、リレー類を実装した電装品パネル32や、端子台33などは、機構箱30の内部の前方側に配置される。電装品パネル32は、主要リレー類を単一パネルに集約して構成されている。よって、部品交換が容易になる。また、本発明の要部となる駆動モータユニット40は、機構箱30の内壁面に連結したフレーム41に固定され、機構箱30内の所定位置に配置される。
【0024】
駆動モータユニット40は、図5に示すようにモータ部43と、減速機部44とが一体となって1つのケース内に収納された構成を採る。モータ部43は、定格動作電圧がAC400Vの特殊かご形誘導モータ(トルクモータ)を用いた。そして、このトルクモータの回転数に対するトルク特性は、図9中実線で示すようなものとした。すなわち、トルク特性は、低速回転領域ではほぼ一定の値を取りつつ徐々にトルク値が減少し、一定の回転数を超えるとトルク値は大きく減少し0に至るようにしている。
【0025】
このように本実施形態のトルクモータは、ストール特性が良好で低速回転領域で最大トルクが出力されるので、モータの回転数が落ちてきても問題なく所望のトルクを出力し続けて起伏ブレード31側に与えることができるので、モータ失速を抑えることができる。
【0026】
さらに、従来の普通かご形誘導モータと相違し、低速回転領域で最大トルク(最高出力)となり、係る最大トルクが従来のクラッチ機構でカットしていたトルク領域以下に収まる設定としている。これにより、クラッチ機構を設ける必要がなくなるため、本実施形態の駆動モータユニット40は、モータ部43と減速機部44(クラッチ機構無し)から構成した。このように、電動操作装置を構成する部品の中で不具合発生程度が最も多い部品であったクラッチ機構がなくなるため、製品品質保持が向上し、しかも、減速機部44は、所定枚数の歯車の組み合わせであるのでいずれも故障しづらく、設置後に保守修理する頻度も低いため、図5に示すようにトルクモータと減速機を構成する歯車を1つのケース内に収納し、駆動モータユニット40の出力軸をそのまま電動操作装置26の操作軸26aとして使用する。よって、1軸機構となり機構部がシンプルになる。さらに、減速機部44を構成する各歯車がケース内部に収納されることになったため、歯車管に注入するグリスの乾燥やゴミの付着も抑えられ、長期にわたり保守・メンテナンスが不要となる。
【0027】
断路器用の接地装置20は、電動操作装置26や伸縮用モータ27の動作を制御し、図6に二点鎖線で示す伸縮ブレード22が収縮して起伏ブレード21が倒れた状態と、同図中実線で示す伸縮ブレード22が延びるとともに起伏ブレード21が起立した状態との間を切り換える。具体的には、まず通常の断路器が入りの時は、図7(a)に示すように、起伏伸縮ブレード22が収縮した状態でブレード21が伏せた状態となる。このとき、固定接触部23と伸縮ブレード22が非接触であるため、接地装置20は完全開放となっている。
【0028】
この状態から投入動作(遠方にある制御盤からの指令)を受けると、電動操作装置26内の制御部は、駆動モータユニット40のトルクモータが所定の方向に回転動作を開始する。そのトルクモータの回転出力は、減速機に伝わり、トルクモータの出力が回転すると操作軸26aが所定角度回転する。そして、操作軸26aの回転力は、連結ロッド25ひいてはリンク機構24を介して起伏ブレード21に伝わり、起伏ブレード21が下方を中心に回転して起立する(図7(b))。制御部は、起伏ブレード21が起立した状態でトルクモータを停止する。つまり操作軸26aは、所定角度(例えば196度)回転して停止する。本実施形態では、トルクモータは、8秒間動作して回転停止する。よって電動操作装置26の操作軸26aは8秒間掛けて196度回転し、それを受けて起伏ブレード21は8秒間掛けて90度回転動作する。
【0029】
次に、伸縮用モータ27を動作させ、伸縮ブレード22の先端を上昇移動させる。伸縮用モータ27が所定時間動作すると、それに対応する長さだけ伸縮ブレード22が伸びて、先端が固定接触部23に接触する(図7(c)→図7(d))。これにより、接地装置20は、完全投入状態となる。
【0030】
一方、図7(d)に示す完全投入状態から図7(a)に示す完全開放状態に遷移する場合、上記と逆の手順に従って行う。すなわち、まず伸縮用モータ27を上記と逆方向に回転させる。これにより、伸縮ブレード22は収縮し、図7(d)の状態から図7(c)の状態に遷移する。次いで、電動操作装置26の駆動モータユニット40のトルクモータを上記と逆方向に回転させる。これにより、起伏ブレード21は、起立状態から90度回転して倒れるので、図7(b)の状態から図7(a)の状態に遷移する。
【0031】
[その他の利用]
上述した実施形態では、550kV変電所の断路器に敷設される接地装置の電動操作装置26に適用する例を示したが、本発明はこれに限ることはなく、断路器の入り切りの動作用の駆動源に用いても良い。また、550kV変電所に限ることはなく、交流電源がある場所であれば適用できる。
【符号の説明】
【0032】
10 断路器
20 接地装置
21 起伏ブレード
22 伸縮ブレード
23 固定接触部
26 電動操作装置
26a 操作軸
40 駆動モータユニット
43 モータ部
44 減速機部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断路器または断路器用接地装置に用いられる電動操作装置であって、
交流用モータであるトルクモータと、そのトルクモータの出力に連携される減速機とを備え、
前記トルクモータの回転数に対するトルク特性は、低速回転領域で最大トルクが出力されるとともに、その最大トルクは、前記断路器または前記断路器用接地装置に損傷を与えない大きさに設定されることを特徴とする電動操作装置。
【請求項2】
前記トルクモータと前記減速機は、同一のケース内に収納されることを特徴とする請求項1に記載の電動操作装置。
【請求項3】
前記トルク特性は、前記低速回転領域では回転数の増加に対して出力トルクが一定或いは徐々に低下し、高速回転領域では前記回転数の増加に対する前記出力トルクの低下する変化率が、前記低速回転領域における変化率よりも大きい設定であることを特徴とする請求項1または2に記載の電動操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−209060(P2012−209060A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72550(P2011−72550)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】