電動機
【課題】スロット内に巻線絶縁部材を容易に挿入することができる技術を提供する。
【解決手段】ヨーク11とティース12を有する固定子コア10の軸方向両側には、端部絶縁部材20が配置される。端部絶縁部材20は、ティース先端部14に対向する位置に配置され、周方向に沿って延びている第1の部材30と、ヨーク11に対向する位置に配置される第2の部材40と、ティース基部13に対向する位置に配置され、第1の部材30と第2の部材40を連結する連結部50を有している。端部絶縁部材20の少なくとも一方には、第1の部材30の周方向両端部に段差部31と切欠部32(案内部)が形成されている。第1の巻線絶縁部材70は、切欠部32により案内されてスロット15内に挿入され、段差部31によってスロット15内に固定される。
【解決手段】ヨーク11とティース12を有する固定子コア10の軸方向両側には、端部絶縁部材20が配置される。端部絶縁部材20は、ティース先端部14に対向する位置に配置され、周方向に沿って延びている第1の部材30と、ヨーク11に対向する位置に配置される第2の部材40と、ティース基部13に対向する位置に配置され、第1の部材30と第2の部材40を連結する連結部50を有している。端部絶縁部材20の少なくとも一方には、第1の部材30の周方向両端部に段差部31と切欠部32(案内部)が形成されている。第1の巻線絶縁部材70は、切欠部32により案内されてスロット15内に挿入され、段差部31によってスロット15内に固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、特に、電動機の固定子のスロットに巻線絶縁部材を挿入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固定子巻線を固定子に巻く巻線方式として、固定子巻線を固定子の固定子コアのティースに直接巻き付ける集中巻き方式が知られている。集中巻き方式を用いて固定子巻線を固定子に巻いた電動機は、例えば、特許文献1(特開2002−112488号公報)に示されている。
このような集中巻き方式の電動機では、スロット開口部からの固定子巻線の飛び出しやスロット内での隣接する固定子巻線間の絶縁不良の発生を防止するために、巻線絶縁部材がスロット内に挿入される。例えば、断面がV字状を有する巻線絶縁部材がスロット内に挿入される(図10参照)。この巻線絶縁部材は、V字状の開口部がスロット開口部に対向するように(巻線絶縁部材によってスロット開口部が覆われるように)スロット内に挿入される。これにより、スロット開口部からの固定子巻線の飛び出しが防止される。また、隣接する固定子巻線間に巻線絶縁部材が配置されるようにスロット内に挿入される。これにより、スロット内での固定子巻線間の絶縁不良の発生が防止される。このV字状の巻線絶縁部材は、「相間絶縁部材」と呼ばれる。あるいは、断面が直線状に形成された巻線絶縁部材がスロット内に挿入される(図27参照)。直線状の巻線絶縁部材は、スロット開口部が巻線絶縁部材によって覆われるようにスロット内に挿入される。この直線状の巻線絶縁部材は、「楔絶縁部材」と呼ばれる。なお、巻線絶縁部材の周方向両端部は、スロット内に配置された固定子巻線とティースとの間に挟持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−112488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、巻線絶縁部材(V字状の巻線絶縁部材や直線状の巻線絶縁部材)としては、薄いシート状(フィルム状)の絶縁部材が用いられる。このため、巻線絶縁部材の周方向両端部が、スロット内に配置された固定子巻線とティースとの間に挟持されるように、巻線絶縁部材をスロット内に挿入するのが困難である。特に、スロット内に多くの固定子巻線が配置されている場合には、巻線絶縁部材が折れ曲がるのを防止しながら、巻線絶縁部材の周方向両端部を固定子巻線とティースとの間に位置決めし、挿入することは困難を極めている。
本願発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、巻線絶縁部材をスロット内に容易に挿入することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電動機は、冷蔵庫やエアコン等に設けられている圧縮機の駆動用電動機、車両の駆動用電動機、車載機器の駆動用電動機等として用いることができる。
本発明の電動機は、固定子と回転子を備えている。固定子は、固定子コア、スロット絶縁部材、固定子巻線、巻線絶縁部材および端部絶縁部材を有している。なお、本発明の電動機は、回転子が固定子の内側に回転可能に支持されている電動機(内転型電動機)あるいは回転子が固定子の外周側に回転可能に支持されている電動機(外転型電動機)として構成することができる。
固定子コアは、ヨークと複数のティースを有している。固定子コアは、板状部材、典型的には薄板状の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される。「軸方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の回転軸の方向、すなわち、回転中心線の方向を示す。ヨークは、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って延びている。「周方向」は、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線を中心とする円周方向を示す。ヨークは、典型的には、環状(略環状を含む)に形成される。各ティースは、軸方向に直角な断面でみて、ヨークから径方向に沿って延びているティース基部と、ティース基部の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているとともに、ヨークと反対側にティース先端面が形成されているティース先端部を有している。「径方向」は、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線に直角な方向を示す。ティースは、内転型電動機の場合には、ヨークから径方向内側へ延び、外転型電動機の場合には、ヨークから径方向外側に延びる。回転子は、ティース先端面との間に空隙を有するように回転可能に支持される。ティースが延びる方向は電動機の型式に応じて適宜選択される。例えば、回転子が固定子の内側に回転可能に支持される内転型電動機では径方向内側に延び、回転子が固定子の外側に回転可能に支持される外転型電動機では径方向外側に延びる。
複数のティースのうち周方向に隣接する2つのティースとヨークによってスロットが形成される。スロットは、2つのティースのティース先端部の間が開口している。各スロット内には、スロット絶縁部材を介して固定子巻線が配置される。スロット絶縁部材としては、典型的には、弾性を有するシート状(フィルム状)の絶縁部材が用いられる。固定子巻線の巻線方式としては、集中巻き方式が用いられる。
巻線絶縁部材は、少なくともスロットの開口を塞ぐように、周方向両端部がスロット内に配置されている固定子巻線とティースとの間に挟持された状態でスロット内に挿入される。巻線絶縁部材は、スロット絶縁部材と固定子巻線との間に配置してもよいし、スロット絶縁部材とティース先端部との間に配置してもよい。巻線絶縁部材としては、典型的には、弾性を有するシート状(フィルム状)の絶縁部材が用いられる。また、スロットの開口を塞ぐことができる種々の形状の巻線絶縁部材を用いることができる。
端部絶縁部材は、固定子コアの軸方向両側に配置される。端部絶縁部材としては、例えば、樹脂製の絶縁部材が用いられる。端部絶縁部材は、ティースのティース先端部に対向する位置に配置される、周方向に沿って延びている第1の部材と、ヨークに対向する位置に配置される第2の部材と、ティースのティース基部に対向する位置に配置され、第1の部材と第2の部材を連結する連結部材を有している。固定子巻線は、端部絶縁部材が固定子コアの軸方向両側に配置されている状態で、ティースおよびティース基部に対向する位置に配置されている連結部に直接巻き付けられる。なお、好適には、端部絶縁部材を固定子コアの軸方向両側に配置した時に、第1の部材の回転子側の面がティース先端面より回転子側に飛び出ないように構成される。
また、端部絶縁部材の少なくとも一方には、第1の部材の周方向両端部に段差部と案内部が設けられる。段差部は、固定子コアの軸方向端面と対向する部分が、スロットの開口側から周方向に沿って切り欠かれた形状を有している。好適には、段差部は、固定子コアの軸方向端面と平行(略平行を含む)な面を含む面によって形成される。段差部は、好適には、径方向に貫通する形状を有するが、径方向の一方側が切り欠かれた形状を有していてもよい。案内部は、段差部に連通するように、軸方向に沿って形成される。案内部は、段差部に連通していればよい。すなわち、案内部は、第1の部材の周方向端部の軸方向に沿った少なくとも一部に形成されていてもよいし、第1の部材の周方向端部を軸方向に沿って貫通して形成されていてもよい。
巻線絶縁部材は、周方向両端部が第1の部材の案内部により案内されてスロット内に挿入され、また、軸方向端部が第1の部材の段差部に係止することよってスロット内に固定される。好適には、巻線絶縁部材は、外力の印加によって周方向両端部の間隔が短くなるように弾性変形した状態でスロット内に挿入され、スロット内では、外力が低下し、弾性復元力によって周方向両端部の間隔が長くなり、軸方向端部が段差部に係止する。
本発明では、端部絶縁部材の第1の部材の案内部を利用して巻線絶縁部材をスロット内に挿入することができる。これにより、巻線絶縁部材の周方向両端部を、スロット内に配置されている固定子巻線とスロットとの間に容易に位置決めすることができる。また、スロット内に挿入した巻線絶縁部材を、端部巻線部材の第1の部材の段差部によって固定することができる。これにより、巻線絶縁部材をスロット内に確実に固定することができる。
【0006】
本発明の異なる形態では、スロット絶縁部材は、固定子コアの軸方向端面から飛び出ている。好適には、スロット絶縁部材が固定子コアの軸方向端面から飛び出ている長さは、端部絶縁部材の第1の部材の段差部の軸方向の長さ以下に設定される。
本形態では、端部絶縁部材と固定子コアの軸方向端面との境界での絶縁不良の発生を防止することができる。
【0007】
本発明の他の異なる形態では、巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、V字状(略V字状を含む)に折り曲げられている。そして、巻線絶縁部材は、V字状の開口部がスロットの開口に対向するようにスロット内に挿入されている。この時、V字状の開口部を形成する部分(本体部)は、スロット内で隣接する固定子巻線の間に配置される。好適には、V字状の巻線絶縁部材は、外力の印加によってV字状の開口部の間隔が短くなるように弾性変形した状態でスロット内に挿入され、スロット内では、外力が低下し、弾性復元力によってV字状の開口部の間隔が長くなり、軸方向端部が段差部に係止する。
本形態では、スロットの開口から回転子側への固定子巻線の飛び出しやスロット内での隣接する固定子巻線間の絶縁不良の発生を防止することができる。
【0008】
V字状の巻線絶縁部材を用いる場合、好適には、周方向両端部がV字状の開口部と反対側に折り曲げられて折り曲げ部が形成される。この場合、折り曲げ部が、端部絶縁部材の第1の部材の案内部によって案内され、また、スロット内に配置されている固定子巻線とティースとの間に挟持される。これにより、V字状の巻線絶縁部材を容易にスロット内に挿入することができる。
【0009】
本発明の他の異なる形態では、巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、直線状(略直線状を含む)に形成されている。そして、巻線絶縁部材は、スロットの開口を塞ぐようにスロット内に挿入されている。
本形態では、スロットの開口から回転子側への固定子巻線の飛び出しを防止するための巻線絶縁部材をスロット内に容易に挿入することができる。
【0010】
本発明の他の異なる形態では、案内部は、第1の部材の周方向両端部の、回転子側の部分が、軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部により構成されている。
本形態では、第1の部材の周方向両端部の、回転子側に形成された切欠部を通して、巻線絶縁部材を挿入する箇所を容易に目視することができる。これにより、巻線絶縁部材をスロット内に挿入する作業の効率が向上する。
【0011】
案内部を、第1の部材の周方向両端部の、回転子側の部分が切り欠かれた形状を有する切欠部により構成する場合、ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅Aと、第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と第1の部材の周方向端部の、回転子側の面との間の径方向の幅Bが、[A≦B]を満足するように設定するのが好ましい。「第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、第1の部材の周方向端部の、回転子側の面との間の径方向の幅」は、「ティース先端面と、切欠部を形成する面上の最も周方向先端側且つ最も固定子コアの軸方向端面側の箇所Qとの間の径方向の幅」が対応する。
【0012】
本発明の他の異なる形態では、案内部は、第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が、軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部により構成されている。
本形態では、第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が切り欠かれているため、案内部に巻線絶縁部材を容易に挿入することができる。これにより、巻線絶縁部材をスロット内に挿入する作業の効率が向上する。
【0013】
案内部を、第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が切り欠かれた切欠部により構成する場合、ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅Aと、第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側の面との間の径方向の幅Cが、[A≦C]を満足するように設定するのが好ましい。「第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側の面との間の径方向の幅」は、「ティース先端面と、切欠部を形成する面上の最も周方向先端側且つ最も固定子コアの軸方向端面側の箇所Qとの間の径方向の幅」が対応する。
【0014】
本発明の他の異なる形態では、案内部は、第1の部材の周方向端部に軸方向に沿って形成された溝により構成されている。この溝は、回転子側の面と回転子と反対側の面によって形成される。
本形態では、案内部が溝によって構成されているため、巻線絶縁部材を、溝を形成する回転子側の面と回転子と反対側の面によって案内することができる。これにより、巻線部材をスロット内に挿入する作業の効率が向上する。
【0015】
案内部を、第1の部材の周方向端部に形成された溝により構成する場合、ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅Aと、第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、溝を形成する面のうち回転子側の面との間の径方向の幅Dが、[A≦D]を満足するように設定するのが好ましい。「第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、溝を形成する面のうち回転子側の面との間の径方向の幅」は、「ティース先端面と、溝を形成する回転子側の面上の周方向先端側且つ固定子コアの軸方向端面側の箇所Qとの間の径方向の幅」幅が対応する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電動機では、巻線絶縁部材をスロット内に容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態の電動機の固定子の斜視図である。
【図2】図1のIIの部分拡大図である。
【図3】図1のIIIの部分拡大図である。
【図4】第1の実施の形態の電動機の固定子の部分平面図である
【図5】第1の巻線絶縁部材の斜視図である。
【図6】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する動作を説明する図である。
【図7】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する前の状態を示す部分拡大図である。
【図8】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入している状態を示す部分拡大図である。
【図9】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す部分拡大図である。
【図10】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図12】第3の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図13】第4の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図14】第5の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図15】第6の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図16】第7の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図17】第8の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図18】第9の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図19】第10の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図20】第10の実施の形態の電動機の固定子の部分平面図である。
【図21】第11の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図22】第2の巻線絶縁部材の斜視図である。
【図23】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する動作を説明する図である。
【図24】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する前の状態を示す部分拡大図である。
【図25】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入している状態を示す部分拡大図である。
【図26】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す部分拡大図である。
【図27】第2の絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す断面図である。
【図28】第12の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図29】第12の実施の形態の電動機の固定子の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の電動機の実施の形態を、図面を用いて説明する。
以下で説明する各実施の形態の電動機は、固定子と、固定子に対して回転可能に支持される回転子を備えている。固定子として、スロット数が9で3相6極の固定子が構成されている。また、固定子巻線の巻線方式として、固定子巻線をティースに直接巻き付ける集中巻き方式が用いられている。
なお、本明細書では、「軸方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の回転軸の方向、すなわち、回転中心線の方向を示す。また、「周方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線を中心とする円周方向を示す。また、「径方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線に直角な方向を示す。
また、以下では、回転子が固定子の径方向内側に回転可能に支持される内転型電動機について説明する。
【0019】
本発明の第1の実施の形態の電動機を説明する。図1に、第1の実施の形態の電動機の固定子1が示されている。なお、図2は、図1のII部の部分拡大図であり、図3は、図1のIII部の部分拡大図であり、図4は、固定子1の部分平面図である。
図1には回転子が図示されていないが、回転子としては、公知の回転子が用いられる。例えば、磁石収容孔と、磁石収容孔に収容されている永久磁石を有する回転子が用いられる。回転子は、固定子1に対して回転可能に支持される。この時、回転子、すなわち、回転子の回転軸は、回転中心線Pを中心に回転する。
固定子1は、固定子コア10、固定子巻線17、端部絶縁部材20、スロット絶縁部材60、巻線絶縁部材を有している。なお、本実施の形態では、端部絶縁部材20の構成を分かりやすくするために固定子巻線17が図示されていない。固定子巻線17は、図10および図27に示されている。巻線絶縁部材については後述する。
【0020】
固定子コア10は、薄板状の電磁鋼板を軸方向に積層し、オートクランプ等で一体化することによって構成されている。
固定子コア10は、図10および図27に示されているように、ヨーク11と複数のティース12を有している。ヨーク11は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って延びている。本実施の形態では、ヨーク11は、環状(略環状を含む)に形成されている。ティース12は、軸方向に直角な断面でみて、ヨークから径方向内側に延びているティース基部13と、ティース基部13の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているティース先端部14を有している。
ティース先端部14には、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)にティース先端面12aが形成されている。本実施の形態では、ティース先端面12aは、軸方向に直角な断面でみて、回転子中心を中心とする円弧形状に形成されている。そして、回転子は、ティース先端面12aによって形成される回転子収容空間16内に、回転子の外周面とティース先端面12aとの間に空隙を有するように回転可能に支持される。
また、ヨーク11と、複数のティース12のうち周方向に隣接する2つのティース12とによってスロット15が形成されている。スロット15は、隣接する2つのティース12のティース先端部14の間(ティース先端部14の周方向端面14aの間)にスロット開口部15aを有している。
なお、固定子コア10は、軸方向両側に軸方向端面10a(図2参照)を有している。
【0021】
スロット15内には、スロット絶縁部材60が設けられている。本実施の形態では、弾性を有し、シート状(フィルム状)に形成されたスロット絶縁部材60がスロット15内に配置されている。スロット絶縁部材60は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等により形成される。そして、スロット絶縁部材60がスロット15内に設けられている状態で、固定子巻線17が集中巻き方式によって巻かれている。すなわち、固定子巻線17は、スロット絶縁部材60を介してスロット15内に配置される。本実施の形態では、同じスロット15内に、隣接する固定子巻線17が配置される。本実施の形態では、シート状のスロット絶縁部材60を用いているため、スロット15の軸方向に直角な断面の面積を大きくすることができ、多くの固定子巻線を巻くことができる。
【0022】
端部絶縁部材20は、固定子コア10の軸方向両側(軸方向端面10aに対向する位置)に設けられる。本実施の形態では、端部絶縁部材20は、例えば、ポリエチレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)等により形成される。
端部絶縁部材20は、ティース12のティース先端部14に対向する位置に配置される第1の部材30、ヨーク11に対向する位置に配置される第2の部材40、ティース12のティース基部13に対向する位置に配置され、第1の部材30と第2の部材40を連結する連結部材50を有している。本実施の形態では、第1の部材30は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って(端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、ティース先端部14に沿うように)延びている。また、第2の部材40は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って(端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、固定子コア10のヨーク11に沿うように)延びている。また、連結部材50は、軸方向に直角な断面でみて、径方向に沿って(端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、ティース基部13に沿うように)延びている。また、第1の部材30および第2の部材40は、軸方向に沿って延びている。なお、端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、第1の部材30の回転子側の面(本実施の形態では、径方向内側の面(内周面))30aがティース先端面12aより回転子側(本実施の形態は、径方向内側)に飛び出ないように構成するのが好ましい。端部絶縁部材20の連結部50は、固定子巻線17を集中巻き方式で巻く際に用いられる。
【0023】
また、端部絶縁部材20の少なくとも一方には、第1の部材30に、巻線絶縁部材をスロット15内に挿入する作業を容易にするための案内部と、巻線絶縁部材(詳細は後述する)がスロット15内から軸方向に抜け出るのを防止するための段差部31が設けられている。本実施の形態では、案内部として、第1の部材の周方向端部の回転子側の部分(本実施の形態では、径方向内側の部分)を切り欠いた形状を有する切欠部32が用いられている。なお、巻線絶縁部材がスロット15から脱落し易い方向が分かっている場合には、巻線絶縁部材が脱落し難い方向に配置される端部絶縁部材20に段差部31および切欠部(案内部)32を設け、この端部絶縁部材20に設けた切欠部(案内部)32を用いて巻線絶縁部材をスロット15内に挿入するのが好ましい。勿論、段差部31および切欠部(案内部)32は、固定子コア10の軸方向両側に配置される端部絶縁部材20に設けてもよい。
【0024】
本実施の形態の段差部31および切欠部(案内部)32を、図2および図3の部分拡大図を参照して説明する。
第1の部材30は、周方向に沿って、周方向中央部30Aと、周方向中央部30Aの周方向両側の周方向端部30Bに区分される。
段差部31は、第1の部材30の周方向端部30Bの、固定子コア10の軸方向端面10aと対向する部分を、スロット開口部15a側(周方向に隣接する第1の部材30と対向する側)から周方向に沿って切り欠いた形状を有している。すなわち、段差部31は、径方向内側および外側と、スロット開口部15a側が開口している。段差部31は、段差部形成面31aと31bによって形成されている。段差部形成面31aは、スロット開口部15a側を向いており、段差部形成面31bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている。後述するように、スロット15内に挿入された巻線絶縁部材は、スロット15からの飛び出しを防止するために、軸方向端部が段差部形成面31bに係止される。このため、段差部形成面31bは、固定子コア10の軸方向端面10aと平行(略平行を含む)に形成するのが好ましい。
案内部として作用する切欠部32は、第1の部材の周方向端部30Bの回転子側の部分(本実施の形態では、径方向内側の部分)を、段差部31に連通するように、周方向端部30Bを軸方向に沿って貫通して切り欠いた形状を有している。すなわち、切欠部32は、径方向内側(回転子側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口している。切欠部32は、切欠部形成面32aと32bによって形成されている。切欠部形成面32aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面32bは、径方向内側(回転子側)を向いている。
【0025】
第2の部材40には、固定子巻線17の端部を係り止めし、あるいは、引出線を引き出すために、凸部41と凹部42が形成されている。すなわち、ティース12および端部絶縁部材20の連結部50に直接巻き付けた固定子巻線17の端部である引出線は、凹部42から第2の部材40の外周側に引き出され、凸部41に係り止めされる。これにより、引出線同士が接触して絶縁不良が発生するのを防止することができる。
【0026】
さらに、本実施の形態では、固定子コア10と端部絶縁部材20との境界部で絶縁不良が発生するのを防止するために、スロット絶縁部材60は、固定子コア10の軸方向端面10aから軸方向に飛び出ている。スロット絶縁部材60の飛び出し長さは、固定子巻線17と固定子コア10との絶縁距離を考慮して、2mm〜4mmの範囲内に設定されている。
また、後述するように、本実施の形態では、スロット15内に挿入された巻線絶縁部材は、スロット15からの飛び出しを防止するために、軸方向端部が段差部形成面31bに係止される。このため、段差部31の軸方向の長さ(段差部形成面31aの軸方向の長さ)は、スロット絶縁部材60の軸方向端面10aからの飛び出し長さより若干長く設定されている。本実施の形態では、段差部31の軸方向の長さは、スロット絶縁部材60の飛び出し長さより約0mm〜0.5mm程度長く設定されている。これにより、スロット絶縁部材60が軸方向に動いた場合でも、固定子巻線17と固定子コア10を確実に絶縁することができる。
【0027】
次に、スロット15内に挿入する巻線絶縁部材を説明する。
図5に、第1の巻線絶縁部材70が示されている。第1の巻線絶縁部材70としては、弾性を有し、シート状(フィルム状)に形成された絶縁部材が用いられている。第1の巻線絶縁部材70は、軸方向に直角な断面でみて、V字状(略V字状を含む)を有するように本体部71aと71bが折り曲げられている。また、周方向両端部72a、72bがV字状の開口部と反対側に折り曲げられている。すなわち、第1の巻線絶縁部材70は、軸方向に直角な断面でみて、V字状(略V字状を含む)に折り曲げられた本体部71a、71bと、本体部71a、71bbから外側に折り曲げられた折り曲げ部72a、72bを有している。
【0028】
第1の巻線絶縁部材70を固定子コア10のスロット15内に挿入する動作を図6〜図9を参照して説明する。図6は、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する動作を示す斜視図である。また、図7〜図9は、それぞれ第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する前の状態、挿入している状態、挿入した状態を示す部分拡大図である。
第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する際には、外力を加え、周方向両端部の間の間隔が短くなるように弾性変形させる。例えば、軸方向に直角な断面の形状をT字状にする。次に、図7に示されているように、周方向両端側の折り返し部72a、72bを切欠部(案内部)32の位置に配置し、本体部71a、71bを、連結部50を用いて隣接するティース12にそれぞれ直接巻き付けた固定子巻線17の間に配置する。そして、この状態で、第1の巻線絶縁部材70を軸方向に移動させる。この時、第1の部材30の切欠部32に沿って(切欠部32を形成する切欠部形成面32a、32bに沿って)移動させる。また、本体部71a、71bの間の間隔(周方向両端部の間の間隔)は、周方向に隣接する第1の部材30の周方向端部の間隔、あるいは、第1の部材30の切欠部形成面32の間隔によって制限されている。
第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の折り返し部72a、72bは、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置されている固定子巻線17との間に挿入してもよいし、スロット絶縁部材60とティース先端部14との間に挿入してもよい。本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の折り返し部72a、72bは、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置された固定子巻線17との間に挿入されている。
ここで、本実施の形態では、スロット絶縁部材60が、固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出ているため、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部(周方向端部)72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に容易に位置決めすることができる。
第1の巻線絶縁部材70がスロット15内に挿入されると(第1の巻線絶縁部材70が切欠部32を通過すると)、第1の部材30の周方向端部あるいは切欠部形成面32aによる制限が解除され、弾性復元力によって第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の間の間隔が広がる(軸方向に直角な断面の形状がV字状に戻る)。そして、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部73aが、第1の部材30の段差部31を形成する段差部形成面31bに係止される。なお、第1の巻線絶縁部材70の軸方向の長さは、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部が固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出るように、固定子コア10の軸方向長さより長く設定されている。
図10に、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内に挿入された状態の部分断面図が示されている。
【0029】
第1の巻線部材70がスロット15内に挿入されると、V字状の開口がスロット開口部15aに対向するように配置される。これにより、スロット開口部15aが第1の巻線絶縁部材70によって塞がれるため、スロット15内に配置されている固定子巻線17がスロット開口部15aから回転子側(本実施の形態では、径方向内側)に飛び出るのを防止することができる。また、本体部71a、71bが、スロット15内で隣接する固定子巻線17の間に配置される。これにより、スロット15内で隣接する固定子巻線17間の絶縁不良の発生を防止することができる。
本実施の形態では、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、軸方向に形成された切欠部32が案内部として設けられている。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に容易に挿入することができる。本実施の形態では、第1の部材30の周方向端部の回転子側(本実施の形態では、径方向内側)の部分を切り欠いた切欠部32を形成しているため、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材20が配置されている側および回転子側(本実施の形態では、径方向内側)から、切欠部32を通して容易に目視することができる。
また、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、固定子コア10の軸方向端面10a側の部分を周方向に沿ってスロット開口部15a側から切り欠いた形状を有する段差部が設けられている。これにより、スロット15内に挿入されている第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部73aが段差部31(段差部形成面31b)に係止されるため、第1の巻線絶縁部材70が軸方向に抜けるのを防止することができる。
【0030】
なお、第1の巻線絶縁部材70のスロット15内への挿入を容易にするためには、図3および図4に示されている幅A、Bを以下のように設定するのが好ましい。
ここで、幅Aは、ティース先端部14の周方向先端箇所における径方向の幅である。また、幅Bは、第1の部材30の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所における、ティース先端面12aと第1の部材30の周方向端部の回転子側の面(本実施の形態では、径方向内側の面)(図3では、切欠部形成面32b)との間の径方向の幅である。そして、[A≦B]を満足するように設定するのが好ましい。より好ましくは、[(A+スロット絶縁部材60の厚さ)≦B]を満足するように設定する。
このように構成した場合、第1の巻線部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面32bに沿って移動させることにより、薄くて折れ曲がり易い第1の巻線絶縁部材70でも、折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17の間に容易に挿入することができる。
【0031】
本実施の形態は、
「段差部31は、第1および第2の段差部形成面(31aおよび31b)により形成され、
第1の段差部形成面31aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の段差部形成面31bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いており、
案内部32は、第1の部材30の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面32aおよび32b)により形成され、
第1の案内部形成面32aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面32bは、回転子側を向いている」
電動機として構成することができる。
【0032】
固定子コア10の軸方向両側に配置する端部絶縁部材は、図1〜図3に示した構成に限定されない。以下に、第2〜第9の実施の形態の電動機を説明する。第2〜第9の実施の形態の電動機は、端部絶縁部材の第1の部材の切欠部の構成が第1の実施の形態の電動機と異なっている。
【0033】
図11には、第2の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材130の段差部131は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面131aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面131bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部132は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材130の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部132は、切欠部形成面132aと132bによって形成されている。切欠部形成面132aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面132bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。さらに、切欠部形成面132aは、周方向先端側で固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所にテーパー面133が形成されている。
スロット15内に配置されている固定子巻線17が損傷した場合、固定子巻線17はスロット15から取り出される。この時、固定子巻線17が第1の部材130の段差部131(段差部131を形成する段差部形成面131b)のスロット開口部15a側の角部に引っ掛かると、固定子巻線17の取り外し作業に支障をきたす。本実施の形態では、切欠部形成面132bの周方向先端側で、固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所にテーパー面133が形成されているため、固定子巻線17をスロット15から取り出す際に、固定子巻線17が第1の部材130の段差部131に引っ掛かって損傷するのを防止することができる。これにより、第1の実施の形態の効果を有しているとともに、固定子巻線17をスロット15から容易に取り外すことができる。
【0034】
本実施の形態は、
「案内部132は、第1の部材130の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面132aおよび132b)により形成され、
第1の案内部形成面132aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面132bは、回転子側を向いているとともに、周方向先端側で固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所にテーパー面133が形成されている」
電動機として構成することができる。
【0035】
図12には、第3の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材230の段差部231は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面231aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面231bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部232は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材230の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部232は、切欠部形成面232a、232bと232cによって形成されている。切欠部形成面232aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面232bと232cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。さらに、切欠部形成面232cは、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が切欠部形成面232b側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材が配置されている側からだけでなく回転子側(本実施の形態では、径方向内側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内により確実に挿入することができる。また、第1の部材230の切欠部形成面のうち固定子コア10の軸方向端面10a側の切欠部形成面232cが傾斜しているため、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面232cに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17の間により確実に挿入することができる。
【0036】
本実施の形態は、
「案内部232は、第1の部材230の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面232a、232bおよび232c)により形成され、
第1の案内部形成面232aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面232bは、回転子側を向き、
第3の案内部形成面232cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面232bより固定子コア10の軸方向端面10a側に配置されており、また、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が、固定子コア10の軸方向端面10aと反対側(第2の切欠部形成面232b側)より、回転子と反対側に位置するように傾斜している」
電動機として構成することができる。
【0037】
図13には、第4の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材330の段差部331は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面331aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面331bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部332は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材330の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部332は、切欠部形成面332a、332b、332cと332dによって形成されている。切欠部形成面332aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面332bと332dは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いており、切欠部形成面332cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面332dは切欠部形成面332bより、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置している。
本実施の形態では、切欠部形成面332bと332dを段差状に配置するための切欠部形成面332cが設けられている。すなわち、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部は、段差部331の段差部形成面331bだけでなく、切欠部332の切欠部形成面332cにも係止可能である。これにより、第1の実施の形態の効果を有しているとともに、電動機の振動が激しい場合でも、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内から抜け出るのを防止することができる。なお、第1の巻線絶縁部材70を、スロット絶縁部材60と切欠部形成面332dの間に挟み込むこともできる。
【0038】
本実施の形態は、
「案内部332は、第1の部材330の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2、第3および第4の案内部形成面(切欠部形成面332a、332b、332cおよび332d)により形成され、
第1の案内部形成面332aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面332bは、回転子側を向き、
第4の案内部形成面332dは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面332bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置されており、
第3の案内部形成面332cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いているとともに、第2の案内部形成面332bと第4の案内部形成面332dの間に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0039】
図14には、第5の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材430の段差部431は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面431aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面431bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部432は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材430の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部432は、切欠部形成面432a、432bと432cによって形成されている。切欠部形成面432aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面432bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いており、切欠部形成面432cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている。本実施の形態では、切欠部形成面432bの軸方向の長さが、切欠部形成面432aの軸方向の長さより短い。
本実施の形態では、第1の実施の形態の効果を有しているとともに、切欠部形成面432bの軸方向の長さが切欠部形成面432aの軸方向の長さより短いため、固定子巻線17をスロット15から取り出す際に、固定子巻線17が第1の部材430の段差部431に引っ掛かって損傷するのを防止することができる。また、スロット絶縁部材60の軸方向端部と切欠部形成面432cの間の隙間が広く開くため、第1の巻線絶縁部材70をより容易に挿入することができる。
【0040】
本実施の形態は、
「案内部432は、第1の部材430の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面432a、432bおよび432c)により形成され、
第1の案内部形成面432aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面432bは、回転子側を向いているとともに、軸方向の長さが第1の案内部形成面432aの軸方向の長さより短く設定され、
第3の案内部形成面432cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いているとともに、第2の案内部形成面432bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、段差部431(段差部431を形成する段差部形成面431b)より固定子コア10の軸方向端面10aと反対側に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0041】
図15には、第6の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材530の段差部531は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面531aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面531bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部532は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材530の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部532は、切欠部形成面532aと532bによって形成されている。切欠部形成面532aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面532bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面532bは、固定子コア10の軸方向端面10a側が、軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材が配置されている軸方向側からだけでなく回転子側(本実施の形態では、径方向内側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に、より確実に挿入することができる。また、第1の部材530の第2の切欠部形成面532bの、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。これにより、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72b(周方向端部)を第2の切欠部形成面532bに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に、より確実に挿入することができる。
【0042】
本実施の形態は、
「案内部532は、第1の部材530の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面532aおよび532b)により形成され、
第1の案内部形成面532aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面532bは、回転子側を向いているとともに、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側に位置するように傾斜している」
電動機として構成することができる。
【0043】
図16には、第7の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材630の段差部631は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面631aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面631bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部632は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材630の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部632は、切欠部形成面632a、632bと632cによって形成されている。切欠部形成面632aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面632bと632cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面632bは、固定子コア10の軸方向端面10a側(切欠部形成面632c側)が軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、切欠部形成面のうち固定子コア10の軸方向端面10aと反対側の切欠部形成面632bの、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。これにより、第6の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に、より確実に挿入することができる。
【0044】
本実施の形態は、
「案内部632は、第1の部材630の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面632a、632bおよび632c)により形成され、
第1の案内部形成面632aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面632bは、回転子側を向いているとともに、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側に位置するように傾斜しており、
第3の案内部形成面632cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面632bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0045】
図17には、第8の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材730の段差部731は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面731aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面731bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部732は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材730の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。切欠部732は、切欠部形成面732a、732bと732cによって形成されている。切欠部形成面732aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面732bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いており、切欠部形成面732cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、切欠部732は、第1の部材730の周方向端部の軸方向に沿った一部(固定子コア10の軸方向端面10a側の一部)に形成されている。
本実施の形態では、切欠部732(切欠部形成面732a、732bおよび732c)が第1の部材730の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。すなわち、切欠部形成面には、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている切欠部形成面732bが含まれている。これにより、第4の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部は、段差部731の段差部形成面731bだけでなく、切欠部732の切欠部形成面732bにも係止可能である。したがって、電動機の振動が激しい場合でも、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内から抜け出るのを防止することができる。なお、第1の巻線絶縁部材70を、スロット絶縁部材60と切欠部形成面732cの間に挟み込むこともできる。
【0046】
本実施の形態は、
「案内部732は、第1の部材730の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って一部切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面732a、732bおよび732c)により形成され、
第1の案内部形成面732aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面732bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向き、
第3の案内部形成面732cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面732bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0047】
図18には、第9の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材830の段差部831は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面831aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面831bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部832は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材830の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。切欠部832は、切欠部形成面832a、832bと832cによって形成されている。切欠部形成面832aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面832bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いており、切欠部形成面832cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面832cは、固定子コア10の軸方向端面10a側が軸方向端面10aと反対側(切欠部形成面832b側)より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、切欠部832(切欠部形成面832a、832bおよび832c)が第1の部材830の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。すなわち、切欠部形成面には、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている切欠部形成面832bが含まれている。これにより、第4の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部は、段差部831の段差部形成面831bだけでなく、切欠部832の切欠部形成面832bにも係止可能である。したがって、電動機の振動が激しい場合でも、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内から抜け出るのを防止することができる。また、切欠部形成面832cが、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。これにより、第6の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に、より確実に挿入することができる。
【0048】
本実施の形態は、
「案内部832は、第1の部材830の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って一部切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面832a、832bおよび832c)により形成され、
第1の案内部形成面832aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面832bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向き、
第3の案内部形成面832cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面832bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置され、また、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側に位置するように傾斜している」
電動機として構成することができる。
【0049】
第1〜第9の実施の形態の電動機では、案内部として作用する切欠部は、端部絶縁部材の第1の部材の回転子側の部分が切り欠かれた形状を有しているが、第1の部材の回転子と反対側の部分が切り欠かかれた形状を有していてもよい。
図19には、第10の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。本実施の形態では、第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)の部分を切り欠いた形状の切欠部を有している。
本実施の形態の電動機では、第1の部材930の段差部931は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面931aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面931bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部933は、第1の部材930の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)の部分を、段差部931に連通するように軸方向に沿って切り欠いた形状を有している。すなわち、切欠部933は、、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材930の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部933は、切欠部形成面933aと933bによって形成されている。切欠部形成面933aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面933bは、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を向いている。
【0050】
なお、巻線絶縁部材のスロット15内への挿入を容易にするためには、図19および図20に示されている幅A、幅Cを以下のように設定するのが好ましい。
ここで、幅Aは、ティース先端部14の周方向先端箇所における径方向の幅である。また、幅Cは、第1の部材930の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所における、ティース先端面12aと第1の部材930の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)の面(図19では、切欠部形成面933b)との間の径方向の幅である。そして、[A≦C]を満足するように設定するのが好ましい。より好ましくは、[(A+スロット絶縁部材60の厚さ)≦C]を満足するように設定する。
本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面933bに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に容易に挿入することができる。また、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材930が配置されている側からだけでなく、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内により容易に挿入することができる。また、切欠部933を、第1の部材930の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を切り欠いた形状に形成しているため、スロット15内に多くの固定子巻線17を配置することができる。
【0051】
本実施の形態は、
「案内部は、第1の部材932の周方向端部の、回転子と反対側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面933aおよび933b)により形成され、
第1の案内部形成面933aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面933bは、回転子と反対側を向いている」
電動機として構成される。
【0052】
図21には、第11の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材1030の段差部1031は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面1031aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面1031bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部1033は、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材1030の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部1033は、切欠部形成面1033aと1033bによって形成されている。切欠部形成面1033aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面1033bは、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面1033bは、固定子コア10の軸方向端面10a側が軸方向端面10aと反対側より、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面1033bに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に容易に挿入することができる。特に、本実施の形態では、切欠部形成面1033bが、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子側に配置されるように傾斜しているため、第1の巻線絶縁部材70をより容易にスロット15内に挿入することができる。また、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材が配置されている側からだけでなく、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内により確実に挿入することができる。また、切欠部1033を、第1の部材1030の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を切り欠いた形状に形成しているため、スロット15内に多くの固定子巻線17を配置することができる。
【0053】
本実施の形態は、
「案内部1033は、第1の部材1030の周方向端部の、回転子と反対側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面1033aおよび1033b)により形成され、
第1の案内部形成面1033aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面1033bは、回転子と反対側を向いているとともに、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子側に位置するように傾斜している」
電動機として構成される。
なお、第10および第11の実施の形態の切欠部としては、軸方向に沿って一部に形成してもよい。また、前記した形状の切欠部を用いることもできる。
【0054】
次に、第2の巻線絶縁部材80を説明する。図22に、第2の巻線絶縁部材80が示されている。第2の巻線絶縁部材80としては、第1の巻線絶縁部材70と同様に、弾性を有し、シート状(フィルム状)に形成された絶縁部材が用いられている。第2の巻線絶縁部材80は、軸方向に直角な断面でみて、直線状(略直線状を含む)を有している。
【0055】
第2の巻線絶縁部材80を、図1〜図3に示されている第1の実施の形態の端部絶縁部材20が軸方向両側に配置されている固定子コア10のスロット15内に挿入する動作を図23〜図26を参照して説明する。なお、図23は、第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に挿入する動作を示す斜視図である。また、図24〜図26は、それぞれ第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に挿入する前の状態、挿入している状態、挿入した状態を示す部分拡大図である。
第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に挿入する際には、図24に示されているように、周方向端部81a、81bを切欠部32の位置に配置する。そして、この状態で、第2の巻線絶縁部材80を軸方向に移動させる。この時、第1の部材30の切欠部32に沿って(切欠部32を形成する切欠部形成面32a、32bに沿って)移動させる。
第2の巻線絶縁部材80は、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置されている固定子巻線17の間に挿入してもよいし、スロット絶縁部材60とティース先端部14の間に挿入してもよい。本実施の形態では、第2の巻線絶縁部材80は、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置された固定子巻線17の間に挿入されている。
本実施の形態では、前述したように、スロット絶縁部材60が、固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出ているため、第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82aをスロット絶縁部材60と固定子巻線17の間に容易に位置決めすることができる。
第2の巻線絶縁部材80がスロット15内に挿入されると(第2の巻線絶縁部材80が切欠部32を通過すると)、第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82aが、第1の部材30の段差部31を形成する段差部形成面31bに係止される。なお、第2の巻線絶縁部材80の軸方向の長さは、第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82aが固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出るように、固定子コア10の軸方向長さより長く設定されている。
図27に、第2の巻線絶縁部材80がスロット15内に挿入された状態の部分断面図が示されている。
【0056】
第2の巻線絶縁部材80がスロット15内に挿入されると、第2の巻線絶縁部材80がスロット開口部15aに対向するように配置される。これにより、スロット開口部15aが第2の巻線絶縁部材80によって塞がれるため、スロット15内に配置されている固定子巻線17がスロット開口部15aから回転子側(本実施の形態では、径方向内側)に飛び出るのを防止することができる。
本実施の形態では、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、軸方向に形成された切欠部32が案内部として設けられている。これにより、第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に容易に挿入することができる。本実施の形態では、第1の部材30の周方向端部の回転子側(本実施の形態では、径方向内側)の部分を切り欠いた形状の切欠部32を有しているため、スロット15内の第2の巻線絶縁部材80の挿入位置を、切欠部32を通して端部絶縁部材20が配置されている側からだけでなく、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)からも容易に目視することができる。
また、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、固定子コア10の軸方向端面10a側の部分を周方向に沿ってスロット開口部15a側から切り欠いた形状の段差部を有している。これにより、スロット15内に挿入されている第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部が段差部に係止されるため、第2の巻線絶縁部材80が軸方向に抜けるのを防止することができる。
なお、第2の巻線絶縁部材80は、第2〜第11の実施の形態の電動機の巻線絶縁部材として用いることもできる。この場合、第1の巻線絶縁部材70と第2の巻線絶縁部材80の形状の差に起因する効果を除いては、前述した効果を有する。
【0057】
第1〜第11の実施の形態では、端部絶縁部材の第1の部材の周方向端部の径方向の一方側の部分(回転子側の部分あるいは回転子と反対側の部分)を切り欠いた形状の切欠部を案内部として用いたが、端部絶縁部材の第1の部材に形成した溝を案内部として用いることもできる。
案内部として溝を用いた第12の実施の形態の固定子の部分断面図が図28に示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材1130の段差部1131は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面1131aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面1131bによって形成されている。
また、案内部として作用する溝1134は、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材1130の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。溝1134は、溝形成面1134a、1134bと1134cによって形成されている。溝形成面1134aは、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を向いており、溝形成面1134bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いており、溝形成面1134cは、スロット開口部15a側を向いている。
【0058】
なお、巻線絶縁部材(第1の巻線絶縁部材70、第2の巻線絶縁部材80)のスロット15内への挿入を容易にするためには、図28および図29に示されている幅A、幅Dを以下のように設定するのが好ましい。
ここで、幅Aは、ティース先端部14の周方向先端箇所における径方向の幅である。また、幅Dは、第1の部材1130の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所における、ティース先端面12aと溝1134を形成する面のうち、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)の面1134aとの間の径方向の幅である。そして、[A≦D]を満足するように設定するのが好ましい。より好ましくは、[(A+スロット絶縁部材60の厚さ)≦D]を満足するように設定する。
このように構成した場合、巻線絶縁部材の周方向端部を溝1134(溝を形成する溝形成面1134a、1134b)に沿って移動させることにより、薄くて折れ曲がり易い巻線絶縁部材を、溝1134(溝形成面1134a、1134b)を案内部としてスロット15内に容易に挿入することができ、また、スロット絶縁部材60と固定子巻線17の間に容易に位置決めすることができる。
【0059】
本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の周方向端部である折り曲げ部72a、72b(第2の巻線絶縁部材80の周方向端部81a、81b)を第1の部材1130の溝1134に挿入した状態で、溝1134(溝1134を形成する溝形成面1134a、134b)に沿って第1の巻線絶縁部材70(第2の巻線絶縁部材80)を移動させる。第1の巻線絶縁部材70(第2の巻線絶縁部材80)がスロット15内に挿入されると(周方向端部が溝1134を通過すると)、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部73a(第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82a)が第1の部材1130の段差部1131(段差部1131を形成する段差部形成面1131b)に係止される。
なお、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する際、第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の間の間隔が短くなるように(V字状の開口部が閉じるように)弾性変形させてもよい。
溝1134は、周方向に直角な断面でみて、軸方向に平行(略平行を含む)であってもよいし、軸方向に対して傾斜していてもよい、例えば、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が、固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜していていもよい。
【0060】
本実施の形態は、
「案内部1134は、第1の部材1130の周方向端部に形成された、軸方向に沿って貫通している溝であり、第1、第2および第3の案内部形成面(溝形成面1134a、1134bおよび1134c)により形成され、
第1の案内部形成面1134aは、回転子と反対側を向き、
第2の案内部形成面1134bは、回転子側を向き、
第3の案内部形成面1134cは、スロットの開口15a側を向いているととともに、第1の案内部形成面1134aと第2の案内部形成面1134bの間に配置されている」
電動機として構成される。
【0061】
以上のように本発明の電動機では、作業性を大幅に改善し、また、絶縁不良の発生を防止することができる。
【0062】
なお、以上の実施の形態で説明した各構成は、回転子が固定子の径方向内側に回転可能に支持される内転型電動機に限定されず、回転子が固定子の径方向外側に回転可能に支持される外転型電動機に用いることもできる。
外転型電動機では、ティースは、ヨークから径方向外側に延びているティース基部と、ティース基部の先端部に設けられ、周方向に沿って延びているとともに、回転子側(この場合、径方向外側)にティース先端面が形成されているティース先端部を有している。ティース先端面は、軸方向に直角な断面でみて、回転子中心を中心とする円弧形状に形成されている。また、回転子は、回転子の内周面とティース先端面との間に空隙を有するように、固定子の径方向外側に回転可能に支持される。また、外転型電動機では、「回転子側」は「径方向外側」が対応し、「回転子と反対側」は「径方向内側」が対応する。
【0063】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
例えば、各実施の形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
また、巻線絶縁部材をスロット内に挿入する際、周方向両端部の長さが短くなるように弾性変形させた状態で挿入してもよいし、そのままの形状で挿入してもよい。
スロット絶縁部材の軸方向の長さを固定子コアの軸方向の長さより長く設定したが、同じ(略同じを含む)長さに設定してもよい。
また、第3の実施の形態(図12)の切欠部形成面232c、第6の実施の形態(図15)の切欠部形成面532b、第7の実施の形態(図16)の切欠部形成面632b、第9の実施の形態(図18)の切欠部形成面832c、第11の実施の形態(図21)の切欠部形成面1033bは、平面形状に形成することもできるし、曲面形状に形成することもできる。
また、径方向に貫通する形状を有する段差部を用いたが、径方向の一方側の部分が切り欠かれた形状を有する段差部を用いることもできる。例えば、回転子側(内転型電動機では径方向内側、外転型電動機では径方向外側)の部分あるいは回転子と反対側(内転型電動機では径方向外側、外転型電動機では径方向内側)の部分を周方向に沿って切り欠いた形状を有する段差部を用いることができる。
また、端部絶縁部材は、実施の形態で説明した構成に限定されない。
【符号の説明】
【0064】
1…固定子
10…固定子コア
10a…軸方向端面
11…ヨーク
12…ティース
12a…ティース先端面
13…ティース基部
14…ティース先端部
14a…周方向端面
15…スロット
15a…スロット開口部
16…回転子収容空間
17…固定子巻線
20…端部絶縁部材
30、130、230、330、430、530、630、730、830、930、1030、1130…第1の部材
30A…中央部
30B…周方向端部
30a…内周面
30b…外周面
31、131、231、331、431、531、631、731、831、931、1031、1131…段差部
31a、31b、131a、131b、231a、231b、331a、331b、431a、431b、531a、531b、631a、631b、731a、731b、831a、831b、931a、931b、1031a、1031b、1131a、1131b…段差部形成面
32、132、232、332、432、532、632、732、832、933、1033…切欠部(案内部)
32a、32b、132a、132b、232a、232b、232c、332a、332b、332c、332d、432a、432b、432c、532a、532b、632a、632b、632c、732a、732b、732c、832a、832b、832c、933a、933b、1033a、1033b…切欠部形成面(案内部形成面)
40…第2の部材
41…凸部
42…凹部
50…連結部材
60…スロット絶縁部材
70…第1の巻線絶縁部材
71a、71b…本体部
72a、72b…折り曲げ部
73a…軸方向端部
80…第2の巻線絶縁部材
81a、81b…周方向端部
82a…軸方向端部
133…テーパー面
1134…溝(案内部)
1134a、1134b、1134c…溝形成面(案内部形成面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、特に、電動機の固定子のスロットに巻線絶縁部材を挿入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固定子巻線を固定子に巻く巻線方式として、固定子巻線を固定子の固定子コアのティースに直接巻き付ける集中巻き方式が知られている。集中巻き方式を用いて固定子巻線を固定子に巻いた電動機は、例えば、特許文献1(特開2002−112488号公報)に示されている。
このような集中巻き方式の電動機では、スロット開口部からの固定子巻線の飛び出しやスロット内での隣接する固定子巻線間の絶縁不良の発生を防止するために、巻線絶縁部材がスロット内に挿入される。例えば、断面がV字状を有する巻線絶縁部材がスロット内に挿入される(図10参照)。この巻線絶縁部材は、V字状の開口部がスロット開口部に対向するように(巻線絶縁部材によってスロット開口部が覆われるように)スロット内に挿入される。これにより、スロット開口部からの固定子巻線の飛び出しが防止される。また、隣接する固定子巻線間に巻線絶縁部材が配置されるようにスロット内に挿入される。これにより、スロット内での固定子巻線間の絶縁不良の発生が防止される。このV字状の巻線絶縁部材は、「相間絶縁部材」と呼ばれる。あるいは、断面が直線状に形成された巻線絶縁部材がスロット内に挿入される(図27参照)。直線状の巻線絶縁部材は、スロット開口部が巻線絶縁部材によって覆われるようにスロット内に挿入される。この直線状の巻線絶縁部材は、「楔絶縁部材」と呼ばれる。なお、巻線絶縁部材の周方向両端部は、スロット内に配置された固定子巻線とティースとの間に挟持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−112488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、巻線絶縁部材(V字状の巻線絶縁部材や直線状の巻線絶縁部材)としては、薄いシート状(フィルム状)の絶縁部材が用いられる。このため、巻線絶縁部材の周方向両端部が、スロット内に配置された固定子巻線とティースとの間に挟持されるように、巻線絶縁部材をスロット内に挿入するのが困難である。特に、スロット内に多くの固定子巻線が配置されている場合には、巻線絶縁部材が折れ曲がるのを防止しながら、巻線絶縁部材の周方向両端部を固定子巻線とティースとの間に位置決めし、挿入することは困難を極めている。
本願発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、巻線絶縁部材をスロット内に容易に挿入することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電動機は、冷蔵庫やエアコン等に設けられている圧縮機の駆動用電動機、車両の駆動用電動機、車載機器の駆動用電動機等として用いることができる。
本発明の電動機は、固定子と回転子を備えている。固定子は、固定子コア、スロット絶縁部材、固定子巻線、巻線絶縁部材および端部絶縁部材を有している。なお、本発明の電動機は、回転子が固定子の内側に回転可能に支持されている電動機(内転型電動機)あるいは回転子が固定子の外周側に回転可能に支持されている電動機(外転型電動機)として構成することができる。
固定子コアは、ヨークと複数のティースを有している。固定子コアは、板状部材、典型的には薄板状の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される。「軸方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の回転軸の方向、すなわち、回転中心線の方向を示す。ヨークは、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って延びている。「周方向」は、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線を中心とする円周方向を示す。ヨークは、典型的には、環状(略環状を含む)に形成される。各ティースは、軸方向に直角な断面でみて、ヨークから径方向に沿って延びているティース基部と、ティース基部の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているとともに、ヨークと反対側にティース先端面が形成されているティース先端部を有している。「径方向」は、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線に直角な方向を示す。ティースは、内転型電動機の場合には、ヨークから径方向内側へ延び、外転型電動機の場合には、ヨークから径方向外側に延びる。回転子は、ティース先端面との間に空隙を有するように回転可能に支持される。ティースが延びる方向は電動機の型式に応じて適宜選択される。例えば、回転子が固定子の内側に回転可能に支持される内転型電動機では径方向内側に延び、回転子が固定子の外側に回転可能に支持される外転型電動機では径方向外側に延びる。
複数のティースのうち周方向に隣接する2つのティースとヨークによってスロットが形成される。スロットは、2つのティースのティース先端部の間が開口している。各スロット内には、スロット絶縁部材を介して固定子巻線が配置される。スロット絶縁部材としては、典型的には、弾性を有するシート状(フィルム状)の絶縁部材が用いられる。固定子巻線の巻線方式としては、集中巻き方式が用いられる。
巻線絶縁部材は、少なくともスロットの開口を塞ぐように、周方向両端部がスロット内に配置されている固定子巻線とティースとの間に挟持された状態でスロット内に挿入される。巻線絶縁部材は、スロット絶縁部材と固定子巻線との間に配置してもよいし、スロット絶縁部材とティース先端部との間に配置してもよい。巻線絶縁部材としては、典型的には、弾性を有するシート状(フィルム状)の絶縁部材が用いられる。また、スロットの開口を塞ぐことができる種々の形状の巻線絶縁部材を用いることができる。
端部絶縁部材は、固定子コアの軸方向両側に配置される。端部絶縁部材としては、例えば、樹脂製の絶縁部材が用いられる。端部絶縁部材は、ティースのティース先端部に対向する位置に配置される、周方向に沿って延びている第1の部材と、ヨークに対向する位置に配置される第2の部材と、ティースのティース基部に対向する位置に配置され、第1の部材と第2の部材を連結する連結部材を有している。固定子巻線は、端部絶縁部材が固定子コアの軸方向両側に配置されている状態で、ティースおよびティース基部に対向する位置に配置されている連結部に直接巻き付けられる。なお、好適には、端部絶縁部材を固定子コアの軸方向両側に配置した時に、第1の部材の回転子側の面がティース先端面より回転子側に飛び出ないように構成される。
また、端部絶縁部材の少なくとも一方には、第1の部材の周方向両端部に段差部と案内部が設けられる。段差部は、固定子コアの軸方向端面と対向する部分が、スロットの開口側から周方向に沿って切り欠かれた形状を有している。好適には、段差部は、固定子コアの軸方向端面と平行(略平行を含む)な面を含む面によって形成される。段差部は、好適には、径方向に貫通する形状を有するが、径方向の一方側が切り欠かれた形状を有していてもよい。案内部は、段差部に連通するように、軸方向に沿って形成される。案内部は、段差部に連通していればよい。すなわち、案内部は、第1の部材の周方向端部の軸方向に沿った少なくとも一部に形成されていてもよいし、第1の部材の周方向端部を軸方向に沿って貫通して形成されていてもよい。
巻線絶縁部材は、周方向両端部が第1の部材の案内部により案内されてスロット内に挿入され、また、軸方向端部が第1の部材の段差部に係止することよってスロット内に固定される。好適には、巻線絶縁部材は、外力の印加によって周方向両端部の間隔が短くなるように弾性変形した状態でスロット内に挿入され、スロット内では、外力が低下し、弾性復元力によって周方向両端部の間隔が長くなり、軸方向端部が段差部に係止する。
本発明では、端部絶縁部材の第1の部材の案内部を利用して巻線絶縁部材をスロット内に挿入することができる。これにより、巻線絶縁部材の周方向両端部を、スロット内に配置されている固定子巻線とスロットとの間に容易に位置決めすることができる。また、スロット内に挿入した巻線絶縁部材を、端部巻線部材の第1の部材の段差部によって固定することができる。これにより、巻線絶縁部材をスロット内に確実に固定することができる。
【0006】
本発明の異なる形態では、スロット絶縁部材は、固定子コアの軸方向端面から飛び出ている。好適には、スロット絶縁部材が固定子コアの軸方向端面から飛び出ている長さは、端部絶縁部材の第1の部材の段差部の軸方向の長さ以下に設定される。
本形態では、端部絶縁部材と固定子コアの軸方向端面との境界での絶縁不良の発生を防止することができる。
【0007】
本発明の他の異なる形態では、巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、V字状(略V字状を含む)に折り曲げられている。そして、巻線絶縁部材は、V字状の開口部がスロットの開口に対向するようにスロット内に挿入されている。この時、V字状の開口部を形成する部分(本体部)は、スロット内で隣接する固定子巻線の間に配置される。好適には、V字状の巻線絶縁部材は、外力の印加によってV字状の開口部の間隔が短くなるように弾性変形した状態でスロット内に挿入され、スロット内では、外力が低下し、弾性復元力によってV字状の開口部の間隔が長くなり、軸方向端部が段差部に係止する。
本形態では、スロットの開口から回転子側への固定子巻線の飛び出しやスロット内での隣接する固定子巻線間の絶縁不良の発生を防止することができる。
【0008】
V字状の巻線絶縁部材を用いる場合、好適には、周方向両端部がV字状の開口部と反対側に折り曲げられて折り曲げ部が形成される。この場合、折り曲げ部が、端部絶縁部材の第1の部材の案内部によって案内され、また、スロット内に配置されている固定子巻線とティースとの間に挟持される。これにより、V字状の巻線絶縁部材を容易にスロット内に挿入することができる。
【0009】
本発明の他の異なる形態では、巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、直線状(略直線状を含む)に形成されている。そして、巻線絶縁部材は、スロットの開口を塞ぐようにスロット内に挿入されている。
本形態では、スロットの開口から回転子側への固定子巻線の飛び出しを防止するための巻線絶縁部材をスロット内に容易に挿入することができる。
【0010】
本発明の他の異なる形態では、案内部は、第1の部材の周方向両端部の、回転子側の部分が、軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部により構成されている。
本形態では、第1の部材の周方向両端部の、回転子側に形成された切欠部を通して、巻線絶縁部材を挿入する箇所を容易に目視することができる。これにより、巻線絶縁部材をスロット内に挿入する作業の効率が向上する。
【0011】
案内部を、第1の部材の周方向両端部の、回転子側の部分が切り欠かれた形状を有する切欠部により構成する場合、ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅Aと、第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と第1の部材の周方向端部の、回転子側の面との間の径方向の幅Bが、[A≦B]を満足するように設定するのが好ましい。「第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、第1の部材の周方向端部の、回転子側の面との間の径方向の幅」は、「ティース先端面と、切欠部を形成する面上の最も周方向先端側且つ最も固定子コアの軸方向端面側の箇所Qとの間の径方向の幅」が対応する。
【0012】
本発明の他の異なる形態では、案内部は、第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が、軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部により構成されている。
本形態では、第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が切り欠かれているため、案内部に巻線絶縁部材を容易に挿入することができる。これにより、巻線絶縁部材をスロット内に挿入する作業の効率が向上する。
【0013】
案内部を、第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が切り欠かれた切欠部により構成する場合、ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅Aと、第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側の面との間の径方向の幅Cが、[A≦C]を満足するように設定するのが好ましい。「第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側の面との間の径方向の幅」は、「ティース先端面と、切欠部を形成する面上の最も周方向先端側且つ最も固定子コアの軸方向端面側の箇所Qとの間の径方向の幅」が対応する。
【0014】
本発明の他の異なる形態では、案内部は、第1の部材の周方向端部に軸方向に沿って形成された溝により構成されている。この溝は、回転子側の面と回転子と反対側の面によって形成される。
本形態では、案内部が溝によって構成されているため、巻線絶縁部材を、溝を形成する回転子側の面と回転子と反対側の面によって案内することができる。これにより、巻線部材をスロット内に挿入する作業の効率が向上する。
【0015】
案内部を、第1の部材の周方向端部に形成された溝により構成する場合、ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅Aと、第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、溝を形成する面のうち回転子側の面との間の径方向の幅Dが、[A≦D]を満足するように設定するのが好ましい。「第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コアの軸方向端面側の箇所における、ティース先端面と、溝を形成する面のうち回転子側の面との間の径方向の幅」は、「ティース先端面と、溝を形成する回転子側の面上の周方向先端側且つ固定子コアの軸方向端面側の箇所Qとの間の径方向の幅」幅が対応する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電動機では、巻線絶縁部材をスロット内に容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態の電動機の固定子の斜視図である。
【図2】図1のIIの部分拡大図である。
【図3】図1のIIIの部分拡大図である。
【図4】第1の実施の形態の電動機の固定子の部分平面図である
【図5】第1の巻線絶縁部材の斜視図である。
【図6】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する動作を説明する図である。
【図7】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する前の状態を示す部分拡大図である。
【図8】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入している状態を示す部分拡大図である。
【図9】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す部分拡大図である。
【図10】第1の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図12】第3の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図13】第4の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図14】第5の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図15】第6の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図16】第7の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図17】第8の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図18】第9の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図19】第10の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図20】第10の実施の形態の電動機の固定子の部分平面図である。
【図21】第11の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図22】第2の巻線絶縁部材の斜視図である。
【図23】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する動作を説明する図である。
【図24】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入する前の状態を示す部分拡大図である。
【図25】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入している状態を示す部分拡大図である。
【図26】第2の巻線絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す部分拡大図である。
【図27】第2の絶縁部材を第1の実施の形態の電動機の固定子のスロットに挿入した状態を示す断面図である。
【図28】第12の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図である。
【図29】第12の実施の形態の電動機の固定子の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の電動機の実施の形態を、図面を用いて説明する。
以下で説明する各実施の形態の電動機は、固定子と、固定子に対して回転可能に支持される回転子を備えている。固定子として、スロット数が9で3相6極の固定子が構成されている。また、固定子巻線の巻線方式として、固定子巻線をティースに直接巻き付ける集中巻き方式が用いられている。
なお、本明細書では、「軸方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の回転軸の方向、すなわち、回転中心線の方向を示す。また、「周方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線を中心とする円周方向を示す。また、「径方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心線に直角な方向を示す。
また、以下では、回転子が固定子の径方向内側に回転可能に支持される内転型電動機について説明する。
【0019】
本発明の第1の実施の形態の電動機を説明する。図1に、第1の実施の形態の電動機の固定子1が示されている。なお、図2は、図1のII部の部分拡大図であり、図3は、図1のIII部の部分拡大図であり、図4は、固定子1の部分平面図である。
図1には回転子が図示されていないが、回転子としては、公知の回転子が用いられる。例えば、磁石収容孔と、磁石収容孔に収容されている永久磁石を有する回転子が用いられる。回転子は、固定子1に対して回転可能に支持される。この時、回転子、すなわち、回転子の回転軸は、回転中心線Pを中心に回転する。
固定子1は、固定子コア10、固定子巻線17、端部絶縁部材20、スロット絶縁部材60、巻線絶縁部材を有している。なお、本実施の形態では、端部絶縁部材20の構成を分かりやすくするために固定子巻線17が図示されていない。固定子巻線17は、図10および図27に示されている。巻線絶縁部材については後述する。
【0020】
固定子コア10は、薄板状の電磁鋼板を軸方向に積層し、オートクランプ等で一体化することによって構成されている。
固定子コア10は、図10および図27に示されているように、ヨーク11と複数のティース12を有している。ヨーク11は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って延びている。本実施の形態では、ヨーク11は、環状(略環状を含む)に形成されている。ティース12は、軸方向に直角な断面でみて、ヨークから径方向内側に延びているティース基部13と、ティース基部13の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているティース先端部14を有している。
ティース先端部14には、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)にティース先端面12aが形成されている。本実施の形態では、ティース先端面12aは、軸方向に直角な断面でみて、回転子中心を中心とする円弧形状に形成されている。そして、回転子は、ティース先端面12aによって形成される回転子収容空間16内に、回転子の外周面とティース先端面12aとの間に空隙を有するように回転可能に支持される。
また、ヨーク11と、複数のティース12のうち周方向に隣接する2つのティース12とによってスロット15が形成されている。スロット15は、隣接する2つのティース12のティース先端部14の間(ティース先端部14の周方向端面14aの間)にスロット開口部15aを有している。
なお、固定子コア10は、軸方向両側に軸方向端面10a(図2参照)を有している。
【0021】
スロット15内には、スロット絶縁部材60が設けられている。本実施の形態では、弾性を有し、シート状(フィルム状)に形成されたスロット絶縁部材60がスロット15内に配置されている。スロット絶縁部材60は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等により形成される。そして、スロット絶縁部材60がスロット15内に設けられている状態で、固定子巻線17が集中巻き方式によって巻かれている。すなわち、固定子巻線17は、スロット絶縁部材60を介してスロット15内に配置される。本実施の形態では、同じスロット15内に、隣接する固定子巻線17が配置される。本実施の形態では、シート状のスロット絶縁部材60を用いているため、スロット15の軸方向に直角な断面の面積を大きくすることができ、多くの固定子巻線を巻くことができる。
【0022】
端部絶縁部材20は、固定子コア10の軸方向両側(軸方向端面10aに対向する位置)に設けられる。本実施の形態では、端部絶縁部材20は、例えば、ポリエチレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)等により形成される。
端部絶縁部材20は、ティース12のティース先端部14に対向する位置に配置される第1の部材30、ヨーク11に対向する位置に配置される第2の部材40、ティース12のティース基部13に対向する位置に配置され、第1の部材30と第2の部材40を連結する連結部材50を有している。本実施の形態では、第1の部材30は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って(端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、ティース先端部14に沿うように)延びている。また、第2の部材40は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って(端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、固定子コア10のヨーク11に沿うように)延びている。また、連結部材50は、軸方向に直角な断面でみて、径方向に沿って(端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、ティース基部13に沿うように)延びている。また、第1の部材30および第2の部材40は、軸方向に沿って延びている。なお、端部絶縁部材20が固定子コア10の軸方向端面10aに対向するように配置された状態において、第1の部材30の回転子側の面(本実施の形態では、径方向内側の面(内周面))30aがティース先端面12aより回転子側(本実施の形態は、径方向内側)に飛び出ないように構成するのが好ましい。端部絶縁部材20の連結部50は、固定子巻線17を集中巻き方式で巻く際に用いられる。
【0023】
また、端部絶縁部材20の少なくとも一方には、第1の部材30に、巻線絶縁部材をスロット15内に挿入する作業を容易にするための案内部と、巻線絶縁部材(詳細は後述する)がスロット15内から軸方向に抜け出るのを防止するための段差部31が設けられている。本実施の形態では、案内部として、第1の部材の周方向端部の回転子側の部分(本実施の形態では、径方向内側の部分)を切り欠いた形状を有する切欠部32が用いられている。なお、巻線絶縁部材がスロット15から脱落し易い方向が分かっている場合には、巻線絶縁部材が脱落し難い方向に配置される端部絶縁部材20に段差部31および切欠部(案内部)32を設け、この端部絶縁部材20に設けた切欠部(案内部)32を用いて巻線絶縁部材をスロット15内に挿入するのが好ましい。勿論、段差部31および切欠部(案内部)32は、固定子コア10の軸方向両側に配置される端部絶縁部材20に設けてもよい。
【0024】
本実施の形態の段差部31および切欠部(案内部)32を、図2および図3の部分拡大図を参照して説明する。
第1の部材30は、周方向に沿って、周方向中央部30Aと、周方向中央部30Aの周方向両側の周方向端部30Bに区分される。
段差部31は、第1の部材30の周方向端部30Bの、固定子コア10の軸方向端面10aと対向する部分を、スロット開口部15a側(周方向に隣接する第1の部材30と対向する側)から周方向に沿って切り欠いた形状を有している。すなわち、段差部31は、径方向内側および外側と、スロット開口部15a側が開口している。段差部31は、段差部形成面31aと31bによって形成されている。段差部形成面31aは、スロット開口部15a側を向いており、段差部形成面31bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている。後述するように、スロット15内に挿入された巻線絶縁部材は、スロット15からの飛び出しを防止するために、軸方向端部が段差部形成面31bに係止される。このため、段差部形成面31bは、固定子コア10の軸方向端面10aと平行(略平行を含む)に形成するのが好ましい。
案内部として作用する切欠部32は、第1の部材の周方向端部30Bの回転子側の部分(本実施の形態では、径方向内側の部分)を、段差部31に連通するように、周方向端部30Bを軸方向に沿って貫通して切り欠いた形状を有している。すなわち、切欠部32は、径方向内側(回転子側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口している。切欠部32は、切欠部形成面32aと32bによって形成されている。切欠部形成面32aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面32bは、径方向内側(回転子側)を向いている。
【0025】
第2の部材40には、固定子巻線17の端部を係り止めし、あるいは、引出線を引き出すために、凸部41と凹部42が形成されている。すなわち、ティース12および端部絶縁部材20の連結部50に直接巻き付けた固定子巻線17の端部である引出線は、凹部42から第2の部材40の外周側に引き出され、凸部41に係り止めされる。これにより、引出線同士が接触して絶縁不良が発生するのを防止することができる。
【0026】
さらに、本実施の形態では、固定子コア10と端部絶縁部材20との境界部で絶縁不良が発生するのを防止するために、スロット絶縁部材60は、固定子コア10の軸方向端面10aから軸方向に飛び出ている。スロット絶縁部材60の飛び出し長さは、固定子巻線17と固定子コア10との絶縁距離を考慮して、2mm〜4mmの範囲内に設定されている。
また、後述するように、本実施の形態では、スロット15内に挿入された巻線絶縁部材は、スロット15からの飛び出しを防止するために、軸方向端部が段差部形成面31bに係止される。このため、段差部31の軸方向の長さ(段差部形成面31aの軸方向の長さ)は、スロット絶縁部材60の軸方向端面10aからの飛び出し長さより若干長く設定されている。本実施の形態では、段差部31の軸方向の長さは、スロット絶縁部材60の飛び出し長さより約0mm〜0.5mm程度長く設定されている。これにより、スロット絶縁部材60が軸方向に動いた場合でも、固定子巻線17と固定子コア10を確実に絶縁することができる。
【0027】
次に、スロット15内に挿入する巻線絶縁部材を説明する。
図5に、第1の巻線絶縁部材70が示されている。第1の巻線絶縁部材70としては、弾性を有し、シート状(フィルム状)に形成された絶縁部材が用いられている。第1の巻線絶縁部材70は、軸方向に直角な断面でみて、V字状(略V字状を含む)を有するように本体部71aと71bが折り曲げられている。また、周方向両端部72a、72bがV字状の開口部と反対側に折り曲げられている。すなわち、第1の巻線絶縁部材70は、軸方向に直角な断面でみて、V字状(略V字状を含む)に折り曲げられた本体部71a、71bと、本体部71a、71bbから外側に折り曲げられた折り曲げ部72a、72bを有している。
【0028】
第1の巻線絶縁部材70を固定子コア10のスロット15内に挿入する動作を図6〜図9を参照して説明する。図6は、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する動作を示す斜視図である。また、図7〜図9は、それぞれ第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する前の状態、挿入している状態、挿入した状態を示す部分拡大図である。
第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する際には、外力を加え、周方向両端部の間の間隔が短くなるように弾性変形させる。例えば、軸方向に直角な断面の形状をT字状にする。次に、図7に示されているように、周方向両端側の折り返し部72a、72bを切欠部(案内部)32の位置に配置し、本体部71a、71bを、連結部50を用いて隣接するティース12にそれぞれ直接巻き付けた固定子巻線17の間に配置する。そして、この状態で、第1の巻線絶縁部材70を軸方向に移動させる。この時、第1の部材30の切欠部32に沿って(切欠部32を形成する切欠部形成面32a、32bに沿って)移動させる。また、本体部71a、71bの間の間隔(周方向両端部の間の間隔)は、周方向に隣接する第1の部材30の周方向端部の間隔、あるいは、第1の部材30の切欠部形成面32の間隔によって制限されている。
第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の折り返し部72a、72bは、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置されている固定子巻線17との間に挿入してもよいし、スロット絶縁部材60とティース先端部14との間に挿入してもよい。本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の折り返し部72a、72bは、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置された固定子巻線17との間に挿入されている。
ここで、本実施の形態では、スロット絶縁部材60が、固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出ているため、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部(周方向端部)72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に容易に位置決めすることができる。
第1の巻線絶縁部材70がスロット15内に挿入されると(第1の巻線絶縁部材70が切欠部32を通過すると)、第1の部材30の周方向端部あるいは切欠部形成面32aによる制限が解除され、弾性復元力によって第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の間の間隔が広がる(軸方向に直角な断面の形状がV字状に戻る)。そして、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部73aが、第1の部材30の段差部31を形成する段差部形成面31bに係止される。なお、第1の巻線絶縁部材70の軸方向の長さは、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部が固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出るように、固定子コア10の軸方向長さより長く設定されている。
図10に、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内に挿入された状態の部分断面図が示されている。
【0029】
第1の巻線部材70がスロット15内に挿入されると、V字状の開口がスロット開口部15aに対向するように配置される。これにより、スロット開口部15aが第1の巻線絶縁部材70によって塞がれるため、スロット15内に配置されている固定子巻線17がスロット開口部15aから回転子側(本実施の形態では、径方向内側)に飛び出るのを防止することができる。また、本体部71a、71bが、スロット15内で隣接する固定子巻線17の間に配置される。これにより、スロット15内で隣接する固定子巻線17間の絶縁不良の発生を防止することができる。
本実施の形態では、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、軸方向に形成された切欠部32が案内部として設けられている。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に容易に挿入することができる。本実施の形態では、第1の部材30の周方向端部の回転子側(本実施の形態では、径方向内側)の部分を切り欠いた切欠部32を形成しているため、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材20が配置されている側および回転子側(本実施の形態では、径方向内側)から、切欠部32を通して容易に目視することができる。
また、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、固定子コア10の軸方向端面10a側の部分を周方向に沿ってスロット開口部15a側から切り欠いた形状を有する段差部が設けられている。これにより、スロット15内に挿入されている第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部73aが段差部31(段差部形成面31b)に係止されるため、第1の巻線絶縁部材70が軸方向に抜けるのを防止することができる。
【0030】
なお、第1の巻線絶縁部材70のスロット15内への挿入を容易にするためには、図3および図4に示されている幅A、Bを以下のように設定するのが好ましい。
ここで、幅Aは、ティース先端部14の周方向先端箇所における径方向の幅である。また、幅Bは、第1の部材30の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所における、ティース先端面12aと第1の部材30の周方向端部の回転子側の面(本実施の形態では、径方向内側の面)(図3では、切欠部形成面32b)との間の径方向の幅である。そして、[A≦B]を満足するように設定するのが好ましい。より好ましくは、[(A+スロット絶縁部材60の厚さ)≦B]を満足するように設定する。
このように構成した場合、第1の巻線部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面32bに沿って移動させることにより、薄くて折れ曲がり易い第1の巻線絶縁部材70でも、折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17の間に容易に挿入することができる。
【0031】
本実施の形態は、
「段差部31は、第1および第2の段差部形成面(31aおよび31b)により形成され、
第1の段差部形成面31aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の段差部形成面31bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いており、
案内部32は、第1の部材30の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面32aおよび32b)により形成され、
第1の案内部形成面32aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面32bは、回転子側を向いている」
電動機として構成することができる。
【0032】
固定子コア10の軸方向両側に配置する端部絶縁部材は、図1〜図3に示した構成に限定されない。以下に、第2〜第9の実施の形態の電動機を説明する。第2〜第9の実施の形態の電動機は、端部絶縁部材の第1の部材の切欠部の構成が第1の実施の形態の電動機と異なっている。
【0033】
図11には、第2の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材130の段差部131は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面131aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面131bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部132は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材130の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部132は、切欠部形成面132aと132bによって形成されている。切欠部形成面132aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面132bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。さらに、切欠部形成面132aは、周方向先端側で固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所にテーパー面133が形成されている。
スロット15内に配置されている固定子巻線17が損傷した場合、固定子巻線17はスロット15から取り出される。この時、固定子巻線17が第1の部材130の段差部131(段差部131を形成する段差部形成面131b)のスロット開口部15a側の角部に引っ掛かると、固定子巻線17の取り外し作業に支障をきたす。本実施の形態では、切欠部形成面132bの周方向先端側で、固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所にテーパー面133が形成されているため、固定子巻線17をスロット15から取り出す際に、固定子巻線17が第1の部材130の段差部131に引っ掛かって損傷するのを防止することができる。これにより、第1の実施の形態の効果を有しているとともに、固定子巻線17をスロット15から容易に取り外すことができる。
【0034】
本実施の形態は、
「案内部132は、第1の部材130の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面132aおよび132b)により形成され、
第1の案内部形成面132aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面132bは、回転子側を向いているとともに、周方向先端側で固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所にテーパー面133が形成されている」
電動機として構成することができる。
【0035】
図12には、第3の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材230の段差部231は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面231aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面231bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部232は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材230の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部232は、切欠部形成面232a、232bと232cによって形成されている。切欠部形成面232aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面232bと232cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。さらに、切欠部形成面232cは、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が切欠部形成面232b側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材が配置されている側からだけでなく回転子側(本実施の形態では、径方向内側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内により確実に挿入することができる。また、第1の部材230の切欠部形成面のうち固定子コア10の軸方向端面10a側の切欠部形成面232cが傾斜しているため、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面232cに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17の間により確実に挿入することができる。
【0036】
本実施の形態は、
「案内部232は、第1の部材230の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面232a、232bおよび232c)により形成され、
第1の案内部形成面232aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面232bは、回転子側を向き、
第3の案内部形成面232cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面232bより固定子コア10の軸方向端面10a側に配置されており、また、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が、固定子コア10の軸方向端面10aと反対側(第2の切欠部形成面232b側)より、回転子と反対側に位置するように傾斜している」
電動機として構成することができる。
【0037】
図13には、第4の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材330の段差部331は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面331aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面331bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部332は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材330の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部332は、切欠部形成面332a、332b、332cと332dによって形成されている。切欠部形成面332aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面332bと332dは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いており、切欠部形成面332cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面332dは切欠部形成面332bより、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置している。
本実施の形態では、切欠部形成面332bと332dを段差状に配置するための切欠部形成面332cが設けられている。すなわち、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部は、段差部331の段差部形成面331bだけでなく、切欠部332の切欠部形成面332cにも係止可能である。これにより、第1の実施の形態の効果を有しているとともに、電動機の振動が激しい場合でも、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内から抜け出るのを防止することができる。なお、第1の巻線絶縁部材70を、スロット絶縁部材60と切欠部形成面332dの間に挟み込むこともできる。
【0038】
本実施の形態は、
「案内部332は、第1の部材330の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2、第3および第4の案内部形成面(切欠部形成面332a、332b、332cおよび332d)により形成され、
第1の案内部形成面332aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面332bは、回転子側を向き、
第4の案内部形成面332dは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面332bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置されており、
第3の案内部形成面332cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いているとともに、第2の案内部形成面332bと第4の案内部形成面332dの間に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0039】
図14には、第5の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材430の段差部431は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面431aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面431bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部432は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材430の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部432は、切欠部形成面432a、432bと432cによって形成されている。切欠部形成面432aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面432bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いており、切欠部形成面432cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている。本実施の形態では、切欠部形成面432bの軸方向の長さが、切欠部形成面432aの軸方向の長さより短い。
本実施の形態では、第1の実施の形態の効果を有しているとともに、切欠部形成面432bの軸方向の長さが切欠部形成面432aの軸方向の長さより短いため、固定子巻線17をスロット15から取り出す際に、固定子巻線17が第1の部材430の段差部431に引っ掛かって損傷するのを防止することができる。また、スロット絶縁部材60の軸方向端部と切欠部形成面432cの間の隙間が広く開くため、第1の巻線絶縁部材70をより容易に挿入することができる。
【0040】
本実施の形態は、
「案内部432は、第1の部材430の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面432a、432bおよび432c)により形成され、
第1の案内部形成面432aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面432bは、回転子側を向いているとともに、軸方向の長さが第1の案内部形成面432aの軸方向の長さより短く設定され、
第3の案内部形成面432cは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いているとともに、第2の案内部形成面432bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、段差部431(段差部431を形成する段差部形成面431b)より固定子コア10の軸方向端面10aと反対側に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0041】
図15には、第6の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材530の段差部531は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面531aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面531bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部532は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材530の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部532は、切欠部形成面532aと532bによって形成されている。切欠部形成面532aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面532bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面532bは、固定子コア10の軸方向端面10a側が、軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材が配置されている軸方向側からだけでなく回転子側(本実施の形態では、径方向内側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に、より確実に挿入することができる。また、第1の部材530の第2の切欠部形成面532bの、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。これにより、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72b(周方向端部)を第2の切欠部形成面532bに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に、より確実に挿入することができる。
【0042】
本実施の形態は、
「案内部532は、第1の部材530の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面532aおよび532b)により形成され、
第1の案内部形成面532aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面532bは、回転子側を向いているとともに、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側に位置するように傾斜している」
電動機として構成することができる。
【0043】
図16には、第7の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材630の段差部631は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面631aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面631bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部632は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材630の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部632は、切欠部形成面632a、632bと632cによって形成されている。切欠部形成面632aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面632bと632cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面632bは、固定子コア10の軸方向端面10a側(切欠部形成面632c側)が軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、切欠部形成面のうち固定子コア10の軸方向端面10aと反対側の切欠部形成面632bの、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。これにより、第6の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に、より確実に挿入することができる。
【0044】
本実施の形態は、
「案内部632は、第1の部材630の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面632a、632bおよび632c)により形成され、
第1の案内部形成面632aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面632bは、回転子側を向いているとともに、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側に位置するように傾斜しており、
第3の案内部形成面632cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面632bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0045】
図17には、第8の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材730の段差部731は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面731aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面731bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部732は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材730の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。切欠部732は、切欠部形成面732a、732bと732cによって形成されている。切欠部形成面732aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面732bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いており、切欠部形成面732cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、切欠部732は、第1の部材730の周方向端部の軸方向に沿った一部(固定子コア10の軸方向端面10a側の一部)に形成されている。
本実施の形態では、切欠部732(切欠部形成面732a、732bおよび732c)が第1の部材730の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。すなわち、切欠部形成面には、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている切欠部形成面732bが含まれている。これにより、第4の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部は、段差部731の段差部形成面731bだけでなく、切欠部732の切欠部形成面732bにも係止可能である。したがって、電動機の振動が激しい場合でも、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内から抜け出るのを防止することができる。なお、第1の巻線絶縁部材70を、スロット絶縁部材60と切欠部形成面732cの間に挟み込むこともできる。
【0046】
本実施の形態は、
「案内部732は、第1の部材730の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って一部切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面732a、732bおよび732c)により形成され、
第1の案内部形成面732aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面732bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向き、
第3の案内部形成面732cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面732bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置されている」
電動機として構成することができる。
【0047】
図18には、第9の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材830の段差部831は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面831aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面831bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部832は、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材830の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。切欠部832は、切欠部形成面832a、832bと832cによって形成されている。切欠部形成面832aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面832bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いており、切欠部形成面832cは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面832cは、固定子コア10の軸方向端面10a側が軸方向端面10aと反対側(切欠部形成面832b側)より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、切欠部832(切欠部形成面832a、832bおよび832c)が第1の部材830の周方向端部の軸方向に沿った一部に形成されている。すなわち、切欠部形成面には、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている切欠部形成面832bが含まれている。これにより、第4の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部は、段差部831の段差部形成面831bだけでなく、切欠部832の切欠部形成面832bにも係止可能である。したがって、電動機の振動が激しい場合でも、第1の巻線絶縁部材70がスロット15内から抜け出るのを防止することができる。また、切欠部形成面832cが、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜している。これにより、第6の実施の形態と同様に、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bをスロット絶縁部材60と固定子巻線17との間に、より確実に挿入することができる。
【0048】
本実施の形態は、
「案内部832は、第1の部材830の周方向端部の回転子側の部分が、軸方向に沿って一部切り欠かれた形状を有しているとともに、第1、第2および第3の案内部形成面(切欠部形成面832a、832bおよび832c)により形成され、
第1の案内部形成面832aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面832bは、固定子コア10の軸方向端面10a側を向き、
第3の案内部形成面832cは、回転子側を向いているとともに、第2の案内部形成面832bより、固定子コア10の軸方向端面10a側で、回転子と反対側に配置され、また、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側に位置するように傾斜している」
電動機として構成することができる。
【0049】
第1〜第9の実施の形態の電動機では、案内部として作用する切欠部は、端部絶縁部材の第1の部材の回転子側の部分が切り欠かれた形状を有しているが、第1の部材の回転子と反対側の部分が切り欠かかれた形状を有していてもよい。
図19には、第10の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。本実施の形態では、第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)の部分を切り欠いた形状の切欠部を有している。
本実施の形態の電動機では、第1の部材930の段差部931は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面931aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面931bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部933は、第1の部材930の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)の部分を、段差部931に連通するように軸方向に沿って切り欠いた形状を有している。すなわち、切欠部933は、、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)と、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材930の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部933は、切欠部形成面933aと933bによって形成されている。切欠部形成面933aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面933bは、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を向いている。
【0050】
なお、巻線絶縁部材のスロット15内への挿入を容易にするためには、図19および図20に示されている幅A、幅Cを以下のように設定するのが好ましい。
ここで、幅Aは、ティース先端部14の周方向先端箇所における径方向の幅である。また、幅Cは、第1の部材930の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所における、ティース先端面12aと第1の部材930の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)の面(図19では、切欠部形成面933b)との間の径方向の幅である。そして、[A≦C]を満足するように設定するのが好ましい。より好ましくは、[(A+スロット絶縁部材60の厚さ)≦C]を満足するように設定する。
本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面933bに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に容易に挿入することができる。また、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材930が配置されている側からだけでなく、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内により容易に挿入することができる。また、切欠部933を、第1の部材930の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を切り欠いた形状に形成しているため、スロット15内に多くの固定子巻線17を配置することができる。
【0051】
本実施の形態は、
「案内部は、第1の部材932の周方向端部の、回転子と反対側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面933aおよび933b)により形成され、
第1の案内部形成面933aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面933bは、回転子と反対側を向いている」
電動機として構成される。
【0052】
図21には、第11の実施の形態の電動機の固定子の部分拡大図が示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材1030の段差部1031は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面1031aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面1031bによって形成されている。
また、案内部として作用する切欠部1033は、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)と、固定子コア10の軸方向端面10a側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材1030の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。切欠部1033は、切欠部形成面1033aと1033bによって形成されている。切欠部形成面1033aは、スロット開口部15a側を向いており、切欠部形成面1033bは、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を向いている。本実施の形態では、周方向に直角な断面でみて、切欠部形成面1033bは、固定子コア10の軸方向端面10a側が軸方向端面10aと反対側より、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)に位置するように傾斜している。
本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の折り曲げ部72a、72bを切欠部形成面1033bに沿って移動させることにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に容易に挿入することができる。特に、本実施の形態では、切欠部形成面1033bが、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子側に配置されるように傾斜しているため、第1の巻線絶縁部材70をより容易にスロット15内に挿入することができる。また、スロット15内の第1の巻線絶縁部材70の挿入位置を、端部絶縁部材が配置されている側からだけでなく、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)からも目視することができる。これにより、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内により確実に挿入することができる。また、切欠部1033を、第1の部材1030の周方向端部の、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を切り欠いた形状に形成しているため、スロット15内に多くの固定子巻線17を配置することができる。
【0053】
本実施の形態は、
「案内部1033は、第1の部材1030の周方向端部の、回転子と反対側の部分が、軸方向に沿って貫通するように切り欠かれた形状を有しているとともに、第1および第2の案内部形成面(切欠部形成面1033aおよび1033b)により形成され、
第1の案内部形成面1033aは、スロットの開口15a側を向き、
第2の案内部形成面1033bは、回転子と反対側を向いているとともに、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子側に位置するように傾斜している」
電動機として構成される。
なお、第10および第11の実施の形態の切欠部としては、軸方向に沿って一部に形成してもよい。また、前記した形状の切欠部を用いることもできる。
【0054】
次に、第2の巻線絶縁部材80を説明する。図22に、第2の巻線絶縁部材80が示されている。第2の巻線絶縁部材80としては、第1の巻線絶縁部材70と同様に、弾性を有し、シート状(フィルム状)に形成された絶縁部材が用いられている。第2の巻線絶縁部材80は、軸方向に直角な断面でみて、直線状(略直線状を含む)を有している。
【0055】
第2の巻線絶縁部材80を、図1〜図3に示されている第1の実施の形態の端部絶縁部材20が軸方向両側に配置されている固定子コア10のスロット15内に挿入する動作を図23〜図26を参照して説明する。なお、図23は、第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に挿入する動作を示す斜視図である。また、図24〜図26は、それぞれ第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に挿入する前の状態、挿入している状態、挿入した状態を示す部分拡大図である。
第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に挿入する際には、図24に示されているように、周方向端部81a、81bを切欠部32の位置に配置する。そして、この状態で、第2の巻線絶縁部材80を軸方向に移動させる。この時、第1の部材30の切欠部32に沿って(切欠部32を形成する切欠部形成面32a、32bに沿って)移動させる。
第2の巻線絶縁部材80は、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置されている固定子巻線17の間に挿入してもよいし、スロット絶縁部材60とティース先端部14の間に挿入してもよい。本実施の形態では、第2の巻線絶縁部材80は、スロット絶縁部材60とスロット15内に配置された固定子巻線17の間に挿入されている。
本実施の形態では、前述したように、スロット絶縁部材60が、固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出ているため、第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82aをスロット絶縁部材60と固定子巻線17の間に容易に位置決めすることができる。
第2の巻線絶縁部材80がスロット15内に挿入されると(第2の巻線絶縁部材80が切欠部32を通過すると)、第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82aが、第1の部材30の段差部31を形成する段差部形成面31bに係止される。なお、第2の巻線絶縁部材80の軸方向の長さは、第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82aが固定子コア10の軸方向端面10aより軸方向に飛び出るように、固定子コア10の軸方向長さより長く設定されている。
図27に、第2の巻線絶縁部材80がスロット15内に挿入された状態の部分断面図が示されている。
【0056】
第2の巻線絶縁部材80がスロット15内に挿入されると、第2の巻線絶縁部材80がスロット開口部15aに対向するように配置される。これにより、スロット開口部15aが第2の巻線絶縁部材80によって塞がれるため、スロット15内に配置されている固定子巻線17がスロット開口部15aから回転子側(本実施の形態では、径方向内側)に飛び出るのを防止することができる。
本実施の形態では、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、軸方向に形成された切欠部32が案内部として設けられている。これにより、第2の巻線絶縁部材80をスロット15内に容易に挿入することができる。本実施の形態では、第1の部材30の周方向端部の回転子側(本実施の形態では、径方向内側)の部分を切り欠いた形状の切欠部32を有しているため、スロット15内の第2の巻線絶縁部材80の挿入位置を、切欠部32を通して端部絶縁部材20が配置されている側からだけでなく、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)からも容易に目視することができる。
また、端部絶縁部材20の第1の部材30の周方向端部に、固定子コア10の軸方向端面10a側の部分を周方向に沿ってスロット開口部15a側から切り欠いた形状の段差部を有している。これにより、スロット15内に挿入されている第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部が段差部に係止されるため、第2の巻線絶縁部材80が軸方向に抜けるのを防止することができる。
なお、第2の巻線絶縁部材80は、第2〜第11の実施の形態の電動機の巻線絶縁部材として用いることもできる。この場合、第1の巻線絶縁部材70と第2の巻線絶縁部材80の形状の差に起因する効果を除いては、前述した効果を有する。
【0057】
第1〜第11の実施の形態では、端部絶縁部材の第1の部材の周方向端部の径方向の一方側の部分(回転子側の部分あるいは回転子と反対側の部分)を切り欠いた形状の切欠部を案内部として用いたが、端部絶縁部材の第1の部材に形成した溝を案内部として用いることもできる。
案内部として溝を用いた第12の実施の形態の固定子の部分断面図が図28に示されている。
本実施の形態の電動機では、第1の部材1130の段差部1131は、第1の実施の形態の段差部31と同様に、スロット開口部15a側を向いている段差部形成面1131aと、固定子コア10の軸方向端面10a側を向いている段差部形成面1131bによって形成されている。
また、案内部として作用する溝1134は、軸方向両側と、スロット開口部15a側が開口し、第1の部材1130の周方向端部を軸方向に沿って貫通している。溝1134は、溝形成面1134a、1134bと1134cによって形成されている。溝形成面1134aは、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)を向いており、溝形成面1134bは、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)を向いており、溝形成面1134cは、スロット開口部15a側を向いている。
【0058】
なお、巻線絶縁部材(第1の巻線絶縁部材70、第2の巻線絶縁部材80)のスロット15内への挿入を容易にするためには、図28および図29に示されている幅A、幅Dを以下のように設定するのが好ましい。
ここで、幅Aは、ティース先端部14の周方向先端箇所における径方向の幅である。また、幅Dは、第1の部材1130の周方向端部の周方向先端箇所であって固定子コア10の軸方向端面10a側の箇所における、ティース先端面12aと溝1134を形成する面のうち、回転子側(本実施の形態では、径方向内側)の面1134aとの間の径方向の幅である。そして、[A≦D]を満足するように設定するのが好ましい。より好ましくは、[(A+スロット絶縁部材60の厚さ)≦D]を満足するように設定する。
このように構成した場合、巻線絶縁部材の周方向端部を溝1134(溝を形成する溝形成面1134a、1134b)に沿って移動させることにより、薄くて折れ曲がり易い巻線絶縁部材を、溝1134(溝形成面1134a、1134b)を案内部としてスロット15内に容易に挿入することができ、また、スロット絶縁部材60と固定子巻線17の間に容易に位置決めすることができる。
【0059】
本実施の形態では、第1の巻線絶縁部材70の周方向端部である折り曲げ部72a、72b(第2の巻線絶縁部材80の周方向端部81a、81b)を第1の部材1130の溝1134に挿入した状態で、溝1134(溝1134を形成する溝形成面1134a、134b)に沿って第1の巻線絶縁部材70(第2の巻線絶縁部材80)を移動させる。第1の巻線絶縁部材70(第2の巻線絶縁部材80)がスロット15内に挿入されると(周方向端部が溝1134を通過すると)、第1の巻線絶縁部材70の軸方向端部73a(第2の巻線絶縁部材80の軸方向端部82a)が第1の部材1130の段差部1131(段差部1131を形成する段差部形成面1131b)に係止される。
なお、第1の巻線絶縁部材70をスロット15内に挿入する際、第1の巻線絶縁部材70の周方向両端部の間の間隔が短くなるように(V字状の開口部が閉じるように)弾性変形させてもよい。
溝1134は、周方向に直角な断面でみて、軸方向に平行(略平行を含む)であってもよいし、軸方向に対して傾斜していてもよい、例えば、周方向に直角な断面でみて、固定子コア10の軸方向端面10a側が、固定子コア10の軸方向端面10aと反対側より、回転子と反対側(本実施の形態では、径方向外側)に位置するように傾斜していていもよい。
【0060】
本実施の形態は、
「案内部1134は、第1の部材1130の周方向端部に形成された、軸方向に沿って貫通している溝であり、第1、第2および第3の案内部形成面(溝形成面1134a、1134bおよび1134c)により形成され、
第1の案内部形成面1134aは、回転子と反対側を向き、
第2の案内部形成面1134bは、回転子側を向き、
第3の案内部形成面1134cは、スロットの開口15a側を向いているととともに、第1の案内部形成面1134aと第2の案内部形成面1134bの間に配置されている」
電動機として構成される。
【0061】
以上のように本発明の電動機では、作業性を大幅に改善し、また、絶縁不良の発生を防止することができる。
【0062】
なお、以上の実施の形態で説明した各構成は、回転子が固定子の径方向内側に回転可能に支持される内転型電動機に限定されず、回転子が固定子の径方向外側に回転可能に支持される外転型電動機に用いることもできる。
外転型電動機では、ティースは、ヨークから径方向外側に延びているティース基部と、ティース基部の先端部に設けられ、周方向に沿って延びているとともに、回転子側(この場合、径方向外側)にティース先端面が形成されているティース先端部を有している。ティース先端面は、軸方向に直角な断面でみて、回転子中心を中心とする円弧形状に形成されている。また、回転子は、回転子の内周面とティース先端面との間に空隙を有するように、固定子の径方向外側に回転可能に支持される。また、外転型電動機では、「回転子側」は「径方向外側」が対応し、「回転子と反対側」は「径方向内側」が対応する。
【0063】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
例えば、各実施の形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
また、巻線絶縁部材をスロット内に挿入する際、周方向両端部の長さが短くなるように弾性変形させた状態で挿入してもよいし、そのままの形状で挿入してもよい。
スロット絶縁部材の軸方向の長さを固定子コアの軸方向の長さより長く設定したが、同じ(略同じを含む)長さに設定してもよい。
また、第3の実施の形態(図12)の切欠部形成面232c、第6の実施の形態(図15)の切欠部形成面532b、第7の実施の形態(図16)の切欠部形成面632b、第9の実施の形態(図18)の切欠部形成面832c、第11の実施の形態(図21)の切欠部形成面1033bは、平面形状に形成することもできるし、曲面形状に形成することもできる。
また、径方向に貫通する形状を有する段差部を用いたが、径方向の一方側の部分が切り欠かれた形状を有する段差部を用いることもできる。例えば、回転子側(内転型電動機では径方向内側、外転型電動機では径方向外側)の部分あるいは回転子と反対側(内転型電動機では径方向外側、外転型電動機では径方向内側)の部分を周方向に沿って切り欠いた形状を有する段差部を用いることができる。
また、端部絶縁部材は、実施の形態で説明した構成に限定されない。
【符号の説明】
【0064】
1…固定子
10…固定子コア
10a…軸方向端面
11…ヨーク
12…ティース
12a…ティース先端面
13…ティース基部
14…ティース先端部
14a…周方向端面
15…スロット
15a…スロット開口部
16…回転子収容空間
17…固定子巻線
20…端部絶縁部材
30、130、230、330、430、530、630、730、830、930、1030、1130…第1の部材
30A…中央部
30B…周方向端部
30a…内周面
30b…外周面
31、131、231、331、431、531、631、731、831、931、1031、1131…段差部
31a、31b、131a、131b、231a、231b、331a、331b、431a、431b、531a、531b、631a、631b、731a、731b、831a、831b、931a、931b、1031a、1031b、1131a、1131b…段差部形成面
32、132、232、332、432、532、632、732、832、933、1033…切欠部(案内部)
32a、32b、132a、132b、232a、232b、232c、332a、332b、332c、332d、432a、432b、432c、532a、532b、632a、632b、632c、732a、732b、732c、832a、832b、832c、933a、933b、1033a、1033b…切欠部形成面(案内部形成面)
40…第2の部材
41…凸部
42…凹部
50…連結部材
60…スロット絶縁部材
70…第1の巻線絶縁部材
71a、71b…本体部
72a、72b…折り曲げ部
73a…軸方向端部
80…第2の巻線絶縁部材
81a、81b…周方向端部
82a…軸方向端部
133…テーパー面
1134…溝(案内部)
1134a、1134b、1134c…溝形成面(案内部形成面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、回転子を備える電動機であって、
前記固定子は、固定子コアと、スロット絶縁部材と、固定子巻線と、巻線絶縁部材と、端部絶縁部材を有しており、
前記固定子コアは、軸方向に直角な断面で見て、
周方向に沿って延びているヨークと、
前記ヨークから径方向に沿って延びているティース基部と、前記ティース基部の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているとともに前記ヨークと反対側にティース先端面が形成されているティース先端部を有する複数のティースと、
前記ヨークと前記複数のティースのうち周方向に隣接する2つのティースによって形成され、当該2つのティースのティース先端部の間が開口しているスロットを有しており、
前記回転子は、前記ティース先端面との間に空隙を有するように回転可能に支持されており、
前記固定子巻線は、前記スロット絶縁部材を介して前記スロット内に配置されており、
前記巻線絶縁部材は、少なくとも前記スロットの開口を塞ぐように、周方向両端部が前記スロット内に配置された固定子巻線と前記ティースとの間に挟持された状態で前記スロット内に挿入されており、
前記端部絶縁部材は、前記固定子コアの軸方向両側に設けられており、
前記端部絶縁部材それぞれは、前記ティースのティース先端部に対向する位置に配置される、周方向に沿って延びている第1の部材と、前記ヨークに対向する位置に配置される第2の部材と、前記ティースのティース基部に対向する位置に配置され、前記第1の部材と前記第2の部材を連結する連結部材を有しており、
また、前記端部絶縁部材の少なくとも一方には、前記第1の部材の周方向両端部に、前記固定子コアの軸方向端面と対向する部分が、前記スロットの開口側から周方向に沿って切り欠かれた段差部と、前記段差部に連通するように軸方向に沿って形成された案内部が設けられており、
前記巻線絶縁部材は、前記第1の部材の案内部により案内されて前記スロット内に挿入され、また、前記第1の部材の段差部によって前記スロット内に固定されることを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記スロット絶縁部材は、前記固定子コアの軸方向端面から飛び出ていることを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、V字状に折り曲げられており、V字状の開口部が前記スロットの開口に対向するように前記スロット内に挿入されていることを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動機であって、
前記巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、周方向両端部がV字状の開口部と反対側に折り曲げられていることを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、直線状に形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動機であって、
前記案内部は、前記第1の部材の周方向両端部の、回転子側の部分が軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部であることを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項6に記載の電動機であって、
前記ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅をA、前記第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって前記固定子コアの軸方向端面側の箇所における、前記ティース先端面と、前記第1の部材の周方向端部の、回転子側の面との間の径方向の幅をBとした場合、[A≦B]を満足するように構成されていることを特徴とする電動機。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動機であって、
前記案内部は、前記第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部であることを特徴とする電動機。
【請求項9】
請求項8に記載の電動機であって、
前記ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅をA、前記第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって前記固定子コアの軸方向端面側の箇所における、前記ティース先端面と、前記第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側の面との間の径方向の幅をCとした場合、[A≦C]を満足するように構成されていることを特徴とする電動機。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動機であって、
前記案内部は、前記第1の部材の周方向端部に軸方向に沿って形成された溝であることを特徴とする電動機。
【請求項11】
請求項10に記載の電動機であって、
前記ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅をA、前記第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって前記固定子コアの軸方向端面側の箇所における、前記ティース先端面と、前記溝を形成する面のうち回転子側の面との間の径方向の幅をDとした場合、[A≦D]を満足するように構成されていることを特徴とする電動機。
【請求項1】
固定子と、回転子を備える電動機であって、
前記固定子は、固定子コアと、スロット絶縁部材と、固定子巻線と、巻線絶縁部材と、端部絶縁部材を有しており、
前記固定子コアは、軸方向に直角な断面で見て、
周方向に沿って延びているヨークと、
前記ヨークから径方向に沿って延びているティース基部と、前記ティース基部の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているとともに前記ヨークと反対側にティース先端面が形成されているティース先端部を有する複数のティースと、
前記ヨークと前記複数のティースのうち周方向に隣接する2つのティースによって形成され、当該2つのティースのティース先端部の間が開口しているスロットを有しており、
前記回転子は、前記ティース先端面との間に空隙を有するように回転可能に支持されており、
前記固定子巻線は、前記スロット絶縁部材を介して前記スロット内に配置されており、
前記巻線絶縁部材は、少なくとも前記スロットの開口を塞ぐように、周方向両端部が前記スロット内に配置された固定子巻線と前記ティースとの間に挟持された状態で前記スロット内に挿入されており、
前記端部絶縁部材は、前記固定子コアの軸方向両側に設けられており、
前記端部絶縁部材それぞれは、前記ティースのティース先端部に対向する位置に配置される、周方向に沿って延びている第1の部材と、前記ヨークに対向する位置に配置される第2の部材と、前記ティースのティース基部に対向する位置に配置され、前記第1の部材と前記第2の部材を連結する連結部材を有しており、
また、前記端部絶縁部材の少なくとも一方には、前記第1の部材の周方向両端部に、前記固定子コアの軸方向端面と対向する部分が、前記スロットの開口側から周方向に沿って切り欠かれた段差部と、前記段差部に連通するように軸方向に沿って形成された案内部が設けられており、
前記巻線絶縁部材は、前記第1の部材の案内部により案内されて前記スロット内に挿入され、また、前記第1の部材の段差部によって前記スロット内に固定されることを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記スロット絶縁部材は、前記固定子コアの軸方向端面から飛び出ていることを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、V字状に折り曲げられており、V字状の開口部が前記スロットの開口に対向するように前記スロット内に挿入されていることを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動機であって、
前記巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、周方向両端部がV字状の開口部と反対側に折り曲げられていることを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記巻線絶縁部材は、軸方向に直角な断面でみて、直線状に形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動機であって、
前記案内部は、前記第1の部材の周方向両端部の、回転子側の部分が軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部であることを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項6に記載の電動機であって、
前記ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅をA、前記第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって前記固定子コアの軸方向端面側の箇所における、前記ティース先端面と、前記第1の部材の周方向端部の、回転子側の面との間の径方向の幅をBとした場合、[A≦B]を満足するように構成されていることを特徴とする電動機。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動機であって、
前記案内部は、前記第1の部材の周方向両端部の、回転子と反対側の部分が軸方向に沿って少なくとも一部切り欠かれた形状を有する切欠部であることを特徴とする電動機。
【請求項9】
請求項8に記載の電動機であって、
前記ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅をA、前記第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって前記固定子コアの軸方向端面側の箇所における、前記ティース先端面と、前記第1の部材の周方向端部の、回転子と反対側の面との間の径方向の幅をCとした場合、[A≦C]を満足するように構成されていることを特徴とする電動機。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動機であって、
前記案内部は、前記第1の部材の周方向端部に軸方向に沿って形成された溝であることを特徴とする電動機。
【請求項11】
請求項10に記載の電動機であって、
前記ティース先端部の周方向先端箇所における径方向の幅をA、前記第1の部材の周方向端部の周方向先端箇所であって前記固定子コアの軸方向端面側の箇所における、前記ティース先端面と、前記溝を形成する面のうち回転子側の面との間の径方向の幅をDとした場合、[A≦D]を満足するように構成されていることを特徴とする電動機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−55098(P2012−55098A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196166(P2010−196166)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
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