説明

電動灯油ポンプ

【課題】
電動灯油ポンプのスイッチが、簡単な構造で、電池ケースのロック機構となると共に、スイッチOFF状態では閉回路とはならず、電池の自己放電を防止できるものとすること。

【解決手段】
電動灯油ポンプに次の手段を採用する。
第1に、吸入管と、吐出ホースと、連結部材と、ポンプモータと、スイッチ付の電池ケースとでなる。
第2に、電池ケースが、ケース本体と、蓋体とでなる。
第3に、スイッチを、操作部と、蓋体内に進入する挿入板と、挿入板の挿入による押圧で電池と接触してポンプモータを動作させる板状端子とで構成する。
第4に、板状端子を、挿入板が挿入可能な隙間を確保して弾性力で蓋体と離れることができるよう配置し、操作部のスライドにより、挿入板が隙間に進入し、板状端子を電池と接触させ、電源ONとすると共に、蓋体の開放防止を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を電源とする電動灯油ポンプの改良に関するものであって、スイッチによる端子の接離構造及び油戻し構造に主眼をおいて開発されたものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池を電源とする電動灯油ポンプは存在した。この電源電池は、ロック機構を有する電池ケースに入れられ、通常電池ケースやその近傍に設けられたスイッチでポンプに電源を供給するようにされていた。このように電池ケースにロック機構とスイッチを別個に設けた電動灯油ポンプは、機構上複雑化し、製作コストも高価なものとなってしまう問題点を有していた。
【0003】
更に、電源用の電池は、単1電池が使用されることが多い。しかし、単1電池では、設置スペースの関係で、背の高いものとなったり、大型化するため、特許文献1に示されるような単3電池を利用した電動灯油ポンプが本特許出願人より提案された。
【0004】
しかし、単3電池のような容量の小さい電池を利用する場合、交換の面倒さを無くすため複数の電池を並列接続とすることが必要となってくる。電池を並列接続すると、長時間電池を入れたままでは、部分的に閉回路があるため、電池同士で自己放電を起こしてしまうことになる。
【0005】
更に、並列の電池群を閉回路を用いずに配置するには、電池群毎に個々のスイッチを設けたり、それを連動させる必要があり、複雑で大がかりなものとなり、高価な電動灯油ポンプにならざるをえず実用的ではなかった。
【0006】
また灯油ポンプにおいては、油戻し構造を採用する必要があり、吸入管に飛散防止用カバーを設けたり、特許文献2に示すような空気取り入れ口と繋がる溝を吸入管に形成したりしたものが存在したが、飛散防止用カバーのみでは確実性がなく、特許文献2のように別途空気取り入れ口と繋がる溝を形成するのは加工の手間が発生し、より簡単な構造で確実な油戻し構造の開発が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開2006−250138号公開特許公報
【特許文献2】特開2001−165084号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするもので次の目的を有している。
第1に、簡単なスイッチ構造で、電池ケースのロック機構を提供できるとともに、スイッチOFF状態では閉回路とはならず、電池の自己放電を防ぐことができるスイッチにおける端子の接離構造とする。
第2に、外筒で覆われた部分の吸入管の外周部に凸部を形成し、該凸部により吸入管外周部と外筒内壁面との間に灯油戻し路を形成し、確実に油漏れ現象を無くすことを可能とする電動灯油ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、上記課題を解決するため、灯油タンクから灯油を吸い上げる吸入管と、灯油を灯油タンク外部に供給する吐出ホースと、該吸入管と吐出ホースの連結部材と、吸い上げ力を発揮させるポンプモータと、該ポンプモータの電源部となるスイッチ付の電池ケースとを有する電動灯油ポンプに次の手段を採用する。
【0010】
第1に、上記電動灯油ポンプの上記電池ケースを、電池挿入側が開口されているケース本体と、電池挿入側の開口部を塞ぐ蓋体とで構成する。
第2に、上記スイッチは、上記蓋体の外部に設けられた該スイッチの操作部と、該操作部と連動して閉められた蓋体内に進入可能な挿入板と、該挿入板の挿入により電源ONとなり上記ポンプモータを動作させる板状端子とを備えたものとする。
【0011】
第3に、板状端子は、電源OFF時には少なくとも接点の一部が電池と非接触となって電源回路を閉回路とせず、上記挿入板の挿入により上記非接触の接点が電池と接触して電源ONとなるよう蓋体内に設けられる。
【0012】
第4に、板状端子を、上記挿入板の挿入側では該挿入板が挿入可能な隙間を確保して弾性で該蓋体と離れることができるように、上記挿入板の挿入側と反対方向で上記蓋体に固定される。
【0013】
第5に、上記操作部のスライドにより、挿入板が上記隙間に進入し、板状端子の非接触の接点を電池と接触させ、電源ONとすると共に、蓋体の開放防止を可能としたことを特徴とする電動灯油ポンプとする。
【0014】
第2の発明は、第1の発明に、前記連結部材に、前記吸入管を覆う外筒を、外筒下端が利用する灯油タンク内に隠れる長さにして装着し、前記覆われた部分の吸入管の外周部に凸部を形成し、該凸部により吸入管外周部と外筒内壁面との間に灯油戻し路を形成したことを付加した電動灯油ポンプである。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、スイッチの構造の改良を図ったことにより、簡単な構造でスイッチ機構を提供できるだけでなく、電源ON時の蓋体の不用意な開放を防止できる確実なロック機構を提供できる電動灯油ポンプとなった。
【0016】
更に、電池ケース内の回路が、前記スイッチの操作部をスライドさせていないOFFの状態で、閉回路とならないため、閉回路による電池の自己放電を防止することができる電動灯油ポンプとなった。
【0017】
更に、第2の発明の効果ではあるが、外筒内壁と吸入管の外周部に形成した凸部とにより灯油戻し路を形成することにより簡単な構造で油漏れを防止できる電動灯油ポンプとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に従って、実施例と共に本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る電動灯油ポンプの1実施例を示す説明図であり、本実施例に係る電動灯油ポンプは、灯油タンクから灯油を吸い上げる吸入管1と、灯油を灯油タンク外部に供給する吐出ホース2と、該吸入管1と吐出ホース2の連結部材3と、吸い上げ力を発揮させるポンプモータ4と、該ポンプモータ4の電源部となるスライドスイッチ5付の電池ケース6とを有する。これらの基本的構成部材の種類は従来の公知例と変わることはない。
【0019】
本発明の特徴の第1は、電動灯油ポンプの電池ケース6部分にある。電池ケース6は、図3に示されるように、電池7が挿入される側に開口部8が形成されたケース本体9と、電池7の挿入される側の開口部8を塞ぐ蓋体10とで構成される。尚、実施例での電池7は単3電池4本が用いられている。
【0020】
電池ケース6のケース本体9は、図2に示されるように連結部材3と一体でその外側に設けられている。蓋体10は、開閉のためケース本体9の軸20に回動自在に装着されており、先端部に形成された係止フック21でケース本体9と簡便に係止可能とされている。尚、蓋体10には、後述する挿入板12の進入可能な挿入空部が形成されている。
【0021】
図3に示されるように電池ケース6の蓋体10に隣接する側方にはスライドスイッチ5が、スライド自在ではあるが、電池ケース6から離脱することのないように装着されている。スライドスイッチ5は、蓋体10の外部に配置される該スライドスイッチ5の操作部11と、該操作部11と連動して蓋体10内に進入する挿入板12と、蓋体10内部に配置される板状端子13とで構成される。尚、実施例では操作部11と挿入板12は、図5に示されるように一体に形成されている。
【0022】
板状端子13は、電源OFF時には少なくとも接点15,25の一部が電池と非接触となって電源回路を閉回路とせず、上記挿入板の挿入により上記非接触の接点25が電池と接触して電源ONとなるよう蓋体10内に設けられる。
更に、板状端子13は、図6及び図7に示されるように、挿入板12の挿入側と反対方向で蓋体10の内壁に固定され、挿入板12の挿入側では該挿入板12が挿入可能な隙間14を確保した状態で、板状端子13自体の弾性力で蓋体10と離れることができるよう配置されている。
【0023】
尚、図6のように挿入板12が板状端子13と蓋体10との間に挿入されていない状態では、板状端子13の一部の接点15は電池7と接触しているが、一部の接点25は電池7とは接触していない。従って、電池ケース6内の電源回路は、スライドスイッチ5の操作部11を蓋体10側へとスライドさせていない状態、すなわちOFFの状態では、図8に示すように開かれた回路とされており、閉回路とされていない。
【0024】
図7に示されるように、スライドスイッチ5の操作部11を蓋体10方向へスライドさせることにより、挿入板12が上記隙間14に進入し、板状端子13を電池7側へ押し出し、板状端子13の電池7とは非接触であった接点25を電池7に接触させ、電源ONとする。これによりポンプモータ4が動作し、給油を行うのである。
【0025】
電源ON状態、すなわち図7に示される状態で、挿入板12は、ケース本体9より離脱しないよう装着されており、板状端子13は、蓋体10に固定されており、挿入板12が、固定されている板状端子13と蓋体10の隙間に入り込んでいるため、蓋体10は、挿入板12によりケース本体9から開放不能な状態とされ、不用意な開放を防止することが可能とされている。
【0026】
蓋体10のケース本体9からの不用意な離脱や開放を防止するには、上記手段でも十分であるが、実施例では、更に、挿入板12が挿入可能な隙間を形成した脱落防止部材16を蓋体10内部に形成され、挿入板12が蓋体10内に挿入され、電源ON状態になった場合に、挿入板12は、脱落防止部材16と蓋体10で形成された隙間に挿入され、確実にロックされるようになっている。
【0027】
本発明におけるスイッチとして、実施例では操作部11をスライドさせる方式のスライドスイッチ5を用いているが、スイッチにおいて重要なのは挿入板12が動作であるので、操作部11がスライド方式ではなく、回転方式であっても、プッシュ方式等であっても、挿入板12が同様の動作をするものであればよく、実施例のスライドスイッチ5に限定されるものではない。
【0028】
本発明の第2の特徴は、給油の際や給油直後に生じる油漏れ防止のための油戻し構造にある。油戻し構造は、吸入管1を外筒17で覆うことが基本である。該外筒17は、連結部材3の下端に装着される。前記吸入管1を覆う外筒17は、利用する灯油タンクに隠れる長さとされる。
【0029】
更に、外筒17に覆われた部分の吸入管1の外周部に凸部18を形成する。実施例で凸部18は、外筒17で覆われた部分の下端部付近の吸入管1の長さ方向に形成されている。該凸部18により吸入管1外周部と外筒17内壁面との間に隙間を作り、該隙間を灯油戻し路19としている。尚、図10中符号22の点線部分は、空気の流れを示している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る電動灯油ポンプの1実施例を示す説明図
【図2】連結部の拡大説明図
【図3】電池ケース廻りの説明斜視図
【図4】蓋体の断面説明図
【図5】操作部と挿入板を示す斜視説明図
【図6】スライドスイッチOFF状態の説明図
【図7】スライドスイッチON状態の説明図
【図8】電源回路の説明図
【図9】蓋体内側の説明図
【図10】油戻し構造の説明図
【符号の説明】
【0031】
1・・・・・吸入管
2・・・・・吐出ホース
3・・・・・連結部材
4・・・・・ポンプモータ
5・・・・・スライドスイッチ
6・・・・・電池ケース
7・・・・・電池
8・・・・・開口部
9・・・・・ケース本体
10・・・・蓋体
11・・・・操作部
12・・・・挿入板
13・・・・板状端子
14・・・・隙間
15・・・・接点
16・・・・脱落防止部材
17・・・・外筒
18・・・・凸部
19・・・・灯油戻し路
20・・・・軸
21・・・・係止フック
22・・・・空気の流れ
25・・・・接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯油タンクから灯油を吸い上げる吸入管と、灯油を灯油タンク外部に供給する吐出ホースと、前記吸入管と該吐出ホースの連結部材と、灯油の吸い上げ力を発揮させるポンプモータと、該ポンプモータの電源部となるスイッチ付の電池ケースとを有する電動灯油ポンプにおいて、
上記電池ケースは、電池挿入側が開口されているケース本体と、電池挿入側の開口部を塞ぐ蓋体とを備え、
上記スイッチは、上記蓋体の外部に設けられたスイッチの操作部と、該操作部と連動して閉められた蓋体内に進入可能な挿入板と、該挿入板の挿入により電源ONとなり上記ポンプモータを動作させる板状端子とを備え、
上記板状端子は、電源OFF時には少なくとも接点の一部が電池と非接触となって電源回路を閉回路とせず、上記挿入板の挿入により上記非接触の接点が電池と接触して電源ONとなるよう蓋体内に設けられると共に、
上記板状端子は、上記挿入板の挿入側では該挿入板が挿入可能な隙間を有した状態で、弾性により上記蓋体と離れることができるように上記挿入板の挿入側と反対方向で上記蓋体内部に固定され、
上記操作部のスライドにより、上記挿入板が上記隙間に進入し、上記板状端子の上記非接触の接点を電池と接触させ、電源ONとすると共に、上記蓋体の開放防止を可能としたことを特徴とする電動灯油ポンプ。
【請求項2】
前記連結部材に、前記吸入管を覆う外筒を、外筒下端が利用する灯油タンク内に隠れる長さにして装着し、該覆われた部分の吸入管の外周部に凸部を形成し、該凸部により吸入管外周部と外筒内壁面との間に灯油戻し路を形成したことを特徴とする請求項1記載の電動灯油ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−19081(P2010−19081A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177692(P2008−177692)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【特許番号】特許第4253776号(P4253776)
【特許公報発行日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(591124097)センタック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】