説明

電動自転車、モータ内蔵型ハブ

【課題】ブレーキ部材で発生した摩擦熱によるモータの駆動効率の低下を抑制する。
【解決手段】車体に支持されるフロントフォークと、前記フロントフォークに回転可能に支持されたハブを有する前輪と、前記ハブにおける軸方向外側の外壁よりも軸方向内側で前記ハブの内部に収容され、前記前輪を回転駆動するモータと、前記ハブの前記外壁に対して取付部材によって取り付けられ、前記前輪の回転を制止するべく外部から摩擦抵抗を受けるブレーキ部材と、前記ハブの前記外壁と前記ブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車、モータ内蔵型ハブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の構成では、ディスクブレーキのブレーキロータは、前輪のハブに対して、取付部材としてのピンによって取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2009−27683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成のように、ブレーキ部材としてのブレーキロータを前輪のハブに取り付けると、ブレーキロータがパッドで挟持されることで発生する摩擦熱が、ブレーキロータからハブへ伝わり、さらに、ハブからモータへ伝わるおそれがある。ブレーキロータの摩擦熱がモータへ伝わって、モータの温度が上昇すると、モータの駆動効率が低下し、電動自転車におけるアシスト力が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ブレーキ部材で発生した摩擦熱によるモータの駆動効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の電動自転車は、車体に支持されるフロントフォークと、前記フロントフォークに回転可能に支持されたハブを有する前輪と、前記ハブにおける軸方向外側の外壁よりも軸方向内側で前記ハブの内部に収容され、前記前輪を回転駆動するモータと、前記ハブの前記外壁に対して取付部材によって取り付けられ、前記前輪の回転を制止するべく外部から摩擦抵抗を受けるブレーキ部材と、前記ハブの前記外壁と前記ブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、ハブの外壁とブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材によって、ハブの外壁とブレーキ部材とが直接接触する場合に比べ、ハブの外壁に伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ハブにおける軸方向外側の外壁よりも軸方向内側でハブの内部に収容されたモータへも伝わりにくい。これにより、モータの駆動効率の低下を抑制できる。
【0008】
請求項2に記載の電動自転車は、請求項1の構成において、前記第1の介装部材が、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい。
【0009】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱が、ハブの外壁に伝わることを、より効果的に抑制できる。このため、モータの駆動効率の低下もより効果的に抑制できる。
【0010】
請求項3に記載の電動自転車は、請求項1又は2の構成において、前記取付部材が、前記ブレーキ部材に形成された通し孔に通される軸部と、当該軸部からその径方向外側に張り出す頭部と、を有するネジであり、前記ネジの頭部と前記ブレーキ部材との間に介装された第2の介装部材を備えている。
【0011】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、ネジの頭部とブレーキ部材との間に介装された第2の介装部材によって、ネジの頭部とブレーキ部材とが直接接触する場合に比べ、ネジの頭部に伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ネジを介してハブへ伝わりにくく、ハブにおける軸方向外側の外壁よりも軸方向内側でハブの内部に収容されたモータへも伝わりにくい。これにより、モータの駆動効率の低下を抑制できる。
【0012】
請求項4に記載の電動自転車は、請求項3の構成において、前記第1の介装部材又は前記第2の介装部材が、さらに、前記ブレーキ部材の前記通し孔内で、前記ネジの軸部と前記ブレーキ部材との間に介装されている。
【0013】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、ネジの軸部とブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材又は第2の介装部材によって、ネジの軸部とブレーキ部材とが直接接触する場合に比べ、ネジの軸部に伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ネジを介してハブへ伝わりにくく、ハブにおける軸方向外側の外壁よりも軸方向内側でハブの内部に収容されたモータへも伝わりにくい。これにより、モータの駆動効率の低下を抑制できる。
【0014】
請求項5に記載の電動自転車は、請求項3又は4の構成において、前記第2の介装部材が、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい。
【0015】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱が、ネジに伝わることを、より効果的に抑制できる。このため、モータの駆動効率の低下もより効果的に抑制できる。
【0016】
請求項6に記載のモータ内蔵型ハブは、フロントフォークに回転可能に支持されるハブ本体と、前記ハブ本体における軸方向外側の外壁よりも軸方向内側で前記ハブ本体の内部に収容され、前記ハブ本体を回転駆動するモータと、前記ハブ本体の前記外壁に対して取付部材によって取り付けられ、前記ハブ本体の回転を制止するべく外部から摩擦抵抗を受けるブレーキ部材と、前記ハブ本体の前記外壁と前記ブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材と、を備えている。
【0017】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、ハブ本体の外壁とブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材によって、ハブ本体の外壁とブレーキ部材とが直接接触する場合に比べ、ハブ本体の外壁に伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ハブ本体における軸方向外側の外壁よりも軸方向内側でハブ本体の内部に収容されたモータへも伝わりにくい。これにより、モータの駆動効率の低下を抑制できる。
【0018】
請求項7に記載のモータ内蔵型ハブは、請求項6の構成において、前記第1の介装部材が、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい。
【0019】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱が、ハブ本体の外壁に伝わることを、より効果的に抑制できる。このため、モータの駆動効率の低下もより効果的に抑制できる。
【0020】
請求項8に記載のモータ内蔵型ハブは、請求項6又は7の構成において、前記取付部材が、前記ブレーキ部材に形成された通し孔に通される軸部と、当該軸部からその径方向外側に張り出す頭部と、を有するネジであり、前記ネジの頭部と前記ブレーキ部材との間に介装された第2の介装部材を備えている。
【0021】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、ネジの頭部とブレーキ部材との間に介装された第2の介装部材によって、ネジの頭部とブレーキ部材とが直接接触する場合に比べ、ネジの頭部に伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ネジを介してハブ本体へ伝わりにくく、ハブ本体における軸方向外側の外壁よりも軸方向内側でハブ本体の内部に収容されたモータへも伝わりにくい。これにより、モータの駆動効率の低下を抑制できる。
【0022】
請求項9に記載のモータ内蔵型ハブは、請求項8の構成において、前記第1の介装部材又は前記第2の介装部材が、さらに、前記ブレーキ部材の前記通し孔内で、前記ネジの軸部と前記ブレーキ部材との間に介装されている。
【0023】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、ネジの軸部とブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材又は第2の介装部材によって、ネジの軸部とブレーキ部材とが直接接触する場合に比べ、ネジの軸部に伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ネジを介してハブ本体へ伝わりにくく、ハブ本体における軸方向外側の外壁よりも軸方向内側でハブ本体の内部に収容されたモータへも伝わりにくい。これにより、モータの駆動効率の低下を抑制できる。
【0024】
請求項10に記載のモータ内蔵型ハブは、請求項8又は9の構成において、前記第2の介装部材が、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい。
【0025】
この構成によれば、ブレーキ部材が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱が、ネジに伝わることを、より効果的に抑制できる。このため、モータの駆動効率の低下もより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る電動自転車の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るモータ内蔵型ハブの側面断面図である。
【図3】図2に示されるモータ内蔵型ハブの分解斜視図である。
【図4】図3に示されるカバーアッセンブリの斜視図である。
【図5】図2に示されるモータ内蔵型ハブの斜視図である。
【図6】(A)は、図2に示されるモータ内蔵型ハブの一部を拡大した拡大図であり、(B)は、ネジ及び断熱部材の斜視図である。
【図7】図6に示されるモータ内蔵型ハブの変形例を示す拡大図及び斜視図である。
【図8】図6に示されるモータ内蔵型ハブの他の変形例を示す拡大図及び斜視図である。
【図9】図6に示されるモータ内蔵型ハブの他の変形例を示す拡大図及び斜視図である。
【図10】図1に示される電動自転車の変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0028】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る電動自転車101は、車体102と、車体102に支持されたフロントフォーク104と、フロントフォーク104に回転可能に支持されたモータ内蔵型ハブ10を有する前輪106と、を主要な構成として備えている。なお、前輪106は、さらに、スポーク107及びタイヤ105等を有して構成されている。
【0029】
本実施形態に係るモータ内蔵型ハブ10(以下、単にハブ10という)は、モータが内蔵されたハブであり、図2に示されるように、ハブ本体78と、一対の固定軸12,14と、ロータ16と、ステータ18と、モータハウジング20と、外歯歯車22と、キャリア24と、内歯歯車28とを主要な構成として備えている。なお、各図において、矢印A方向は、ハブ10の軸方向を示し、矢印A1方向は、ハブ10の軸方向外側を示す。具体的には、ハブ10の軸方向中央S(図2参照)を境界として、軸方向中央Sから離れる軸方向が軸方向外側である。また、各図において、矢印B方向は、ハブ10の径方向を示し、矢印B1方向は、ハブ10の径方向外側を示し、矢印B2方向は、ハブ10の径方向内側を示す。
【0030】
一対の固定軸12,14は、互いに同軸上に配置されている。この一対の固定軸12,14には、ネジ部12A,14Aがそれぞれ形成されており、このネジ部12A,14Aには、ナット(図示省略)がそれぞれ螺合されている。一対の固定軸12,14は、それぞれ、当該ナットによって、フロントフォーク104の両端部104A、104B(図1参照)のそれぞれに固定される。
【0031】
ロータ16は、後述するステータ18と共にブラシレスモータ17を構成している。このロータ16は、一対の固定軸12,14の間に、この一対の固定軸12,14と同軸上に配置された出力軸34を有している。この出力軸34における他方の固定軸14側には、偏芯軸36が偏芯状態で設けられている。この偏芯軸36は、セレーション結合部38により出力軸34と結合されており、出力軸34と軸方向の反対側に突出する軸部36Aを有している。この軸部36Aは、出力軸34と同軸上に形成されている。
【0032】
ステータ18は、環状に形成されており、ロータ16の径方向外側に設けられている。このロータ16及びステータ18を有して構成されたブラシレスモータでは、ステータ18に回転磁界が生じると、ロータ16及びステータ18間に吸引・反発力が作用し、ロータ16と共に出力軸34が回転される。
【0033】
本実施形態では、ロータ16及びステータ18で構成されるブラシレスモータ17は、ハブ本体78における軸方向外側の外壁78Aよりも軸方向内側でハブ本体78の内部に収容されている。なお、「外壁78Aよりも軸方向内側」とは、図2に示す矢印A2の方向であり、ハブ本体78の外壁78Aに対する軸方向中央S側の方向をいう。
【0034】
モータハウジング20は、一方の固定軸12側からステータ18に取り付けられた第一ハウジング40と、他方の固定軸14側からステータ18に取り付けられた第二ハウジング42とを有している。この第一ハウジング40、ステータ18、及び、第二ハウジング42は、ボルト44により固定されている。さらに、第一ハウジング40及びステータ18は、ボルト45により固定されている。
【0035】
また、第一ハウジング40は、一方の固定軸12側に底部を有する扁平容器状に形成されている。この第一ハウジング40の底部には、円盤状のスペーサ46がボルト48により固定されている。このスペーサ46の中央部には、筒状部50が形成されており、この筒状部50には、一方の固定軸12が圧入されて固定されている。
【0036】
一方、第二ハウジング42は、円盤状に形成されている。この第二ハウジング42は、対向壁部の一例であり、後述するキャリア24に形成されたキャリア本体68と出力軸34の軸方向に対向している。この第二ハウジング42には、収容凹部52が形成されている。この収容凹部52は、キャリア本体68側に開口する凹形状とされており、ステータ18の内側に挿入されている。
【0037】
また、この収容凹部52の底部の中央部には、円環状の軸受収容部54が形成されており、この軸受収容部54には、第一軸受の一例である軸受56が収容されている。同様に、上述の第一ハウジング40の底部の中央部には、軸受収容部58が形成されており、この軸受収容部58には、第一軸受の一例である軸受60が収容されている。この一対の軸受56,60は、出力軸34の軸方向両端部を回転可能に支持している。すなわち、ロータ16は、一対の軸受(ロータ支持部の一例)56,60によって、出力軸34の軸方向周りに回転自在に支持されている。
【0038】
外歯歯車22は、第二軸受の一例である軸受62を介して偏芯軸36に回転可能に支持されている。図3に示されるように、この外歯歯車22の外周面には、複数の外歯22Aが形成されている。また、この外歯歯車22には、回転方向に並んで複数の伝導孔64が形成されている。この外歯歯車22は、図2に示されるように、後述する内歯歯車28と共に、収容凹部52に収容されている。
【0039】
キャリア24は、図3に示されるように、複数の伝導孔64に偏芯状態で挿入される複数の内ピン66と、この複数の内ピン66を支持する円盤状のキャリア本体68とを一体に有している。キャリア本体68は、他方の固定軸14と一体に形成されている。このキャリア本体68と軸部36Aとの間には、図2に示されるように、軸受70が設けられている。また、このキャリア24には、図3に示されるように、複数の内ピン66のうちの幾つかの内ピン66と同軸上に、この内ピン66の軸方向に貫通する貫通孔72が形成されている。
【0040】
一方、このキャリア本体68と対向する上述の第二ハウジング42には、複数の内ピン66の夫々の先端部が圧入(軽圧入)される複数の圧入孔74が形成されている。この複数の圧入孔74のうち貫通孔72と同軸上に位置する圧入孔74には、ネジ孔部74A(図2参照)が形成されている。そして、このキャリア本体68及び第二ハウジング42は、貫通孔72にボルト76が挿通されると共に、このボルト76の先端部がネジ孔部74Aに螺入されることにより互いに固定されている。なお、貫通孔72は、複数の内ピン66のうち少なくともいずれかに形成されていれば良い。また、複数の圧入孔74の全てにネジ孔部74Aが形成されていても良い。
【0041】
また、このようにしてボルト76の先端部がネジ孔部74Aに螺入されることに伴って、複数の内ピン66の夫々の先端部が複数の圧入孔74に圧入され、これにより、複数の内ピン66の夫々の先端部が第二ハウジング42に固定されている。
【0042】
ハブ本体78は、概略筒状のケースで構成されており、ハブ本体78に形成された開口部のうち他方の固定軸14側に位置する開口部78Cには、当該開口部78Cを塞ぐカバー80が設けられている。ハブ本体78には、ロータ16、ステータ18、モータハウジング20、キャリア24、外歯歯車22、及び、内歯歯車28等が収容されている。また、このハブ本体78に形成された開口部のうち一方の固定軸12側に位置する開口部78Bには、軸受収容部82が形成されており、この軸受収容部82には、第三軸受の一例である軸受84が収容されている。この軸受84は、一方の固定軸12に一体回転可能に固定された上述のスペーサ46に対してハブ本体78を回転可能に支持している。
【0043】
一方、カバー80の中央部には、軸受収容部86が形成されており、この軸受収容部86には、第三軸受の一例である軸受88が収容されている。この軸受88は、他方の固定軸14に一体に形成されたキャリア24に対してカバー80を回転可能に支持している。また、このカバー80は、内歯歯車28よりも径方向外側に設けられた固定部90において内歯歯車28とボルト92により固定されている。さらに、このカバー80は、ボルト94によりハブ本体78に固定されている。
【0044】
内歯歯車28は、上述の外歯歯車22及びキャリア24と共に減速機構を構成しており、内周面に複数の内歯28A(図4参照)を有している。この内歯歯車28には、外歯歯車22が内接噛合されている。
【0045】
そして、このハブ10では、ロータ16と共に出力軸34が回転されると、偏芯軸36が回転され、これにより、内歯歯車28と外歯歯車22との噛み合い位置が変化することにより、内歯歯車28と共にハブ本体78及びカバー80が回転される。
【0046】
また、図2,図3に示されるように、このハブ10において、一方の固定軸12、第一軸受56,60(図2参照)、ロータ16、ステータ18、モータハウジング20、及び、スペーサ46(図2参照)は、互いに組み立てられてモータアッセンブリ96を構成している。また、偏芯軸36、軸受62、軸受70、及び、外歯歯車22は、互いに組み立てられてギアアッセンブリ98を構成している。さらに、図2,図4に示されるように、カバー80、軸受88、及び、内歯歯車28は、互いに組み立てられてカバーアッセンブリ100を構成している。
【0047】
そして、このハブ10は、例えば、次の要領で組み立てられている。すなわち、先ず、モータアッセンブリ96、ギアアッセンブリ98、及び、カバーアッセンブリ100がそれぞれ組み立てられる。
【0048】
続いて、貫通孔72にボルト76が挿通されると共に、ボルト76の先端部がネジ孔部74Aに螺入されることにより、キャリア本体68及び第二ハウジング42が互いに固定される。このとき、ボルト76の先端部がネジ孔部74Aに螺入されることに伴って、複数の内ピン66の夫々の先端部が複数の圧入孔74に圧入される。
【0049】
また、このキャリア本体68の第二ハウジング42への組み付けと前後して、軸受84が軸受収容部82に組み付けられると共に、ハブ本体78にモータアッセンブリ96が組み付けられる。そして、この状態で、カバー80がボルト94によりハブ本体78に固定される。以上の要領で、ハブ10は、組み立てられる。
【0050】
ここで、本実施形態では、図2に示されるように、前輪106(ハブ本体78)の回転を制止するべく外部から摩擦抵抗を受けるブレーキ部材としてのブレーキロータ(ブレーキディスク)110が、ハブ本体78における軸方向外側の外壁78Aに対して、取付部材としての複数のネジ112によって取り付けられている。
【0051】
ブレーキロータ110は、図5に示されるように、円盤状に形成されている。ブレーキロータ110の径方向中央部には、ハブ本体78における固定軸12側の開口部78Bの外周縁において軸方向外側に張り出した筒部78Eが挿入される挿入孔110Aが形成されている。
【0052】
ブレーキロータ110における挿入孔110Aの径方向外側には、ネジ112が通される通し孔110B(図6(A)参照)が、挿入孔110Aの周方向に沿って複数形成されている。さらに、ブレーキロータ110における通し孔110Bの径方向外側には、挿入孔110Aの周方向に沿って複数の開口110Cが形成されている。
【0053】
また、ブレーキロータ110は、図1に示されるように、ブレーキキャリパー116とによってディスクブレーキを構成している。当該ディスクブレーキでは、ブレーキキャリパー116に組み込まれたブレーキパッド(図示省略)をブレーキロータ110に押し付け、その摩擦抵抗によって、前輪106(ハブ本体78)の回転を制止するようになっている。
【0054】
図6(A)(B)に示されるように、各ネジ112は、ブレーキロータ110の通し孔110Bに通される軸部112Aと、軸部112Aからその径方向外側に張り出す頭部112Bと、を有している。この各ネジ112は、軸部112Aが、ブレーキロータ110の通し孔110Bに通されて、当該軸部112Aが、ハブ本体78における軸方向外側の外壁78Aがねじ込まれることで、ブレーキロータ110を当該外壁78Aに対して固定するようになっている。
【0055】
そして、本実施形態では、ハブ本体78の外壁78Aとブレーキロータ110との間には、第1の介装部材としての断熱部材120が介装されている。
【0056】
断熱部材120は、図6(B)に示されるように、円盤状に形成されている。断熱部材120の径方向中央部には、ネジ112が通される通し孔120Aが形成されている。断熱部材120は、各ネジ112に配置されており、図6(A)に示されるように、ネジ112の軸部112Aが、ブレーキロータ110の通し孔110Bに通された後に通し孔120Aに通されると共に、外壁78Aにねじ込まれることによって、ハブ本体78の外壁78Aとブレーキロータ110との間に介装されるようになっている。
【0057】
断熱部材120は、ブレーキロータ110よりも熱伝導率が小さい材料で構成されている。具体的には、ブレーキロータ110の材料として、例えば、炭素鋼(熱伝導率:50w/(m・k))が用いられるのに対して、断熱部材120としては、例えば、無機質断熱材(熱伝導率:0.3w/(m・k))が用いられる。なお、これらの材料は一例であり、ブレーキロータ110及び断熱部材120の材料としては、上記の材料に限られるものではない。
【0058】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係るハブ10によれば、ブレーキロータ110が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、断熱部材120によって、ハブ本体78の外壁78Aとブレーキロータ110とが直接接触する場合に比べ、ハブ本体78の外壁78Aに伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ハブ本体78の外壁78Aよりも軸方向内側でハブ本体78の内部に収容されたブラシレスモータ17へも伝わりにくい。これにより、駆動時に発熱するブラシレスモータ17の駆動効率の低下を抑制できる。
【0060】
また、本実施形態に係るハブ10によれば、ハブ本体78の外壁78Aに対してブレーキロータ110が取り付けられるため、ブレーキロータ110がハブ本体78の軸方向外側で固定軸12(車軸)に取り付けられる構成に比べ、固定軸12(車軸)の軸方向長さを短くでき、ハブ10の小型化が図れる。
【0061】
また、本実施形態では、モータが内蔵されたハブ10のハブ本体78にブレーキロータ110が取り付けられるため、モータ・ハブ・ブレーキロータが一体化されたものを、フロントフォーク104に対して組み付けることができる。したがって、モータ・ハブ・ブレーキロータのそれぞれをフロントフォーク104に対して組み付ける構成や、ブレーキロータ付きハブ・モータのそれぞれをフロントフォーク104に対して組み付ける構成などに比べ、取り付け作業が煩雑とならない。
【0062】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0063】
(第1変形例)
前述の構成では、ハブ本体78の外壁78Aとブレーキロータ110との間にのみ、断熱部材120が介装されていたが、これに加えて、図7(A)に示されるように、ネジ112の頭部112Bとブレーキロータ110との間に、第2の介装部材としての断熱部材130を介装する構成であってもよい。
【0064】
断熱部材130は、図7(B)に示されるように、円盤状に形成されている。断熱部材130の径方向中央部には、ネジ112が通される通し孔130Aが形成されている。断熱部材130は、各ネジ112に配置されており、ネジ112の軸部112Aが、通し孔130A・ブレーキロータ110の通し孔110B・断熱部材120の通し孔120Aの順で通されると共に、外壁78Aにねじ込まれることによって、ネジ112の頭部112Bとブレーキロータ110との間に介装されるようになっている。
【0065】
断熱部材130は、ブレーキロータ110よりも熱伝導率が小さい材料で構成されている。具体的には、前述のように、ブレーキロータ110の材料として、例えば、炭素鋼(熱伝導率:50w/(m・k))が用いられるのに対して、断熱部材130としては、例えば、無機質断熱材(熱伝導率:0.3w/(m・k))が用いられる。なお、これらの材料は一例であり、断熱部材130の材料としては、上記の材料に限られるものではない。
【0066】
第1変形例の構成によれば、ブレーキロータ110が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、断熱部材130によって、ネジ112の頭部112Bとブレーキロータ110とが直接接触する場合に比べ、ネジ112の頭部112Bに伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ネジ112を介してハブ本体78へ伝わりにくく、ハブ本体78の外壁78Aよりも軸方向内側でハブ本体78の内部に収容されたブラシレスモータ17へも伝わりにくい。これにより、駆動時に発熱するブラシレスモータ17の駆動効率の低下を抑制できる。
【0067】
(第2変形例)
さらに、断熱部材130は、図8(A)(B)に示されるように、ブレーキロータ110の通し孔110B内で、ネジ112の軸部112Aとブレーキロータ110との間に介装されている構成であってもよい。具体的には、断熱部材130は、通し孔130Aの縁部(外周部)の全周において、断熱部材120側へ張り出す筒部130Bを有している。これにより、ネジ112の軸部112Aの外周と、ブレーキロータ110の通し孔110Bの内壁との間に、軸部112A外周の全周において、断熱部材130の筒部130Bが介装される。
【0068】
また、断熱部材130の筒部130Bの先端と、断熱部材120の表面との間に隙間が形成されており、断熱部材130の筒部130Bと断熱部材120とは非接触となっている。これにより、ブレーキロータ110が断熱部材120と断熱部材130との間で浮きにくく、ブレーキロータ110のガタつきが抑制される。
【0069】
第2変形例の構成によれば、ブレーキロータ110が摩擦抵抗を受けることで発生した摩擦熱は、断熱部材130の筒部130Bによって、ネジ112の軸部112Aとブレーキロータ110とが直接接触する場合に比べ、ネジ112の軸部112Aに伝わりにくい。このため、摩擦熱は、ネジ112を介してハブ本体78へ伝わりにくく、ハブ本体78の外壁78Aよりも軸方向内側でハブ本体78の内部に収容されたブラシレスモータ17へも伝わりにくい。これにより、駆動時に発熱するブラシレスモータ17の駆動効率の低下を抑制できる。
【0070】
なお、図9(A)(B)に示されるように、断熱部材130ではなく、断熱部材120が、ブレーキロータ110の通し孔110B内で、ネジ112の軸部112Aとブレーキロータ110との間に介装されている構成であってもよい。具体的には、断熱部材120は、通し孔120Aの縁部(外周部)の全周において、断熱部材130側へ張り出す筒部120Bを有している。これにより、ネジ112の軸部112Aの外周と、ブレーキロータ110の通し孔110Bの内壁との間に、軸部112A外周の全周において、断熱部材120の筒部120Bが介装される。
【0071】
また、断熱部材120の筒部120Bの先端と、断熱部材130の表面との間に隙間が形成されており、断熱部材120の筒部120Bと断熱部材130とは非接触となっている。これにより、ブレーキロータ110が断熱部材120と断熱部材130との間で浮きにくく、ブレーキロータ110のガタつきが抑制される。
【0072】
さらに、図9(A)(B)に示される構成においては、断熱部材130が設けられずに、断熱部材120のみで断熱する構成であってもよい。
【0073】
(他の変形例)
本実施形態では、一対の固定軸12,14のそれぞれに対して、フロントフォーク104の両端部104A、104Bが固定された構成(両軸を保持する構成)であったが、図10に示されるように、ハブ10において、例えば、一対の固定軸12,14のうち、固定軸12のみが設けられ、当該固定軸12のみがフロントフォーク104の一端部104Aが固定された構成(片軸を保持する構成)であってもよい。
【0074】
また、ハブ本体78は、スペーサ46に軸受84を介して回転可能に支持されていたが、一方の固定軸12に軸受84を介して回転可能に支持されていても良い。
【0075】
同様に、カバー80は、キャリア24に軸受88を介して回転可能に支持されていたが、他方の固定軸14に軸受88を介して回転可能に支持されていても良い。
【0076】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0077】
10・・・モータ内蔵型ハブ、17・・・ブラシレスモータ(モータの一例)、78・・・ハブ本体、78A・・・外壁、101・・・電動自転車、102・・・車体、104・・・フロントフォーク、106・・・前輪、110・・・ブレーキロータ(ブレーキ部材の一例)、110B・・・通し孔、112・・・ネジ(取付部材の一例)、112A・・・軸部、112B・・・頭部、120・・・断熱部材(第1の介装部材の一例)、130・・・断熱部材(第2の介装部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に支持されるフロントフォークと、
前記フロントフォークに回転可能に支持されたハブを有する前輪と、
前記ハブにおける軸方向外側の外壁よりも軸方向内側で前記ハブの内部に収容され、前記前輪を回転駆動するモータと、
前記ハブの前記外壁に対して取付部材によって取り付けられ、前記前輪の回転を制止するべく外部から摩擦抵抗を受けるブレーキ部材と、
前記ハブの前記外壁と前記ブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材と、
を備えた電動自転車。
【請求項2】
前記第1の介装部材は、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい請求項1に記載の電動自転車。
【請求項3】
前記取付部材は、前記ブレーキ部材に形成された通し孔に通される軸部と、当該軸部からその径方向外側に張り出す頭部と、を有するネジであり、
前記ネジの頭部と前記ブレーキ部材との間に介装された第2の介装部材を備える請求項1又は2に記載の電動自転車。
【請求項4】
前記第1の介装部材又は前記第2の介装部材が、さらに、前記ブレーキ部材の前記通し孔内で、前記ネジの軸部と前記ブレーキ部材との間に介装されている請求項3に記載の電動自転車。
【請求項5】
前記第2の介装部材は、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい請求項3又は4に記載の電動自転車。
【請求項6】
フロントフォークに回転可能に支持されるハブ本体と、
前記ハブ本体における軸方向外側の外壁よりも軸方向内側で前記ハブ本体の内部に収容され、前記ハブ本体を回転駆動するモータと、
前記ハブ本体の前記外壁に対して取付部材によって取り付けられ、前記ハブ本体の回転を制止するべく外部から摩擦抵抗を受けるブレーキ部材と、
前記ハブ本体の前記外壁と前記ブレーキ部材との間に介装された第1の介装部材と、
を備えたモータ内臓型ハブ。
【請求項7】
前記第1の介装部材は、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい請求項6に記載のモータ内臓型ハブ。
【請求項8】
前記取付部材は、前記ブレーキ部材に形成された通し孔に通される軸部と、当該軸部からその径方向外側に張り出す頭部と、を有するネジであり、
前記ネジの頭部と前記ブレーキ部材との間に介装された第2の介装部材を備える請求項6又は7に記載のモータ内臓型ハブ。
【請求項9】
前記第1の介装部材又は前記第2の介装部材が、さらに、前記ブレーキ部材の前記通し孔内で、前記ネジの軸部と前記ブレーキ部材との間に介装されている請求項8に記載のモータ内臓型ハブ。
【請求項10】
前記第2の介装部材は、前記ブレーキ部材よりも熱伝導率が小さい請求項8又は9に記載のモータ内臓型ハブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−107500(P2013−107500A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254081(P2011−254081)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)