説明

電動間仕切装置

【課題】 間仕切パネルを吊支レールに吊支した状態のままで、モーターや駆動輪の点検や交換が容易に行える電動間仕切装置を提供すること。
【解決手段】 本装置でモーター5や駆動輪7の点検や交換を行う必要が生じた場合、メンテナンスを行うランナー4が、吊支レール2の側面に切設された開口窓21のところにくるように、間仕切パネル1を移動させ、間仕切パネル1を持上げる等の方法で吊支レール2の走行面から駆動輪7をわずかに浮かせた状態で、開口窓21から少なくともモーター5と駆動輪7からなるモーターユニットとランナー4の基体6との止着を解き、次いでモーターユニットを開口窓21より引出した後、モーターユニットを点検、修理、または新しいものと交換し、再び開口窓21より挿入し、ランナー4の基体と止着すればよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ランナーのメンテナンスを容易とした電動間仕切装置にに関する。
【0002】
【従来の技術】天井に固着した吊支レールに間仕切パネルを吊支するとともに、車輪を有する自走式のランナーを走行自在に嵌合し、該ランナーに走行用の車輪を駆動するモーターを設け、モーターにより駆動される駆動輪を、ランナーの一側部に配設した電動間仕切装置が、本出願人により出願された特開平6−2463号公報として開示されている。
【0003】図5には、この種の電動間仕切装置の一例が示されており、図中のパネル01は、天井02に固設された吊支レール03内を走行可能な2つのランナー04に吊軸05を介して吊支されている。この電動間仕切装置において、例えばランナー04の駆動輪を駆動するモーターの故障や、駆動輪の摩耗等によりメンテナンスの必要が生じた場合、パネル01を吊支レール03の開口部06等より取外し、図6に示されるように床面に載置してからモーター及び駆動輪等の点検や交換を行い、作業完了後、再びパネル01を吊支レール03に取付けていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述のようにメンテナンスを行う場合にあっては、特にパネル01が大きい時には取外しだけで大変な労力と時間がかかるばかりか、パネル01を床面に載置する際においてランナー04等の破損や作業者の危険等を回避するため、慎重な作業が必要であった。
【0005】本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、間仕切パネルを吊支レールに吊支した状態のままで、モーターや駆動輪の点検や交換が容易に行える電動間仕切装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の電動間仕切装置は、天井に固着した吊支レールに、間仕切パネルを吊支するとともに、車輪を有する自走式のランナーを走行自在に嵌合し、該ランナーに、走行用の車輪を駆動するモーターを設け、モーターにより駆動される駆動輪を、ランナーの一側部に配設した電動式間仕切装置において、前記ランナーの基部に、少なくともモーターと駆動輪からなるモーターユニットを、駆動輪側より取り外し可能に止着するとともに、前記吊支レールの駆動輪と対向する側面所定箇所に、前記モーターユニットが取り外し可能な開口窓を切設したことを特徴としている。この特徴によれば、本装置でモーターや駆動輪の点検や交換を行う必要が生じた場合、メンテナンスを行うランナーが、吊支レールの側面に切設された開口窓のところにくるように、間仕切パネルを移動させ、間仕切パネルを持上げる等の方法で吊支レールの走行面から駆動輪をわずかに浮かせた状態で、開口窓から少なくともモーターと駆動輪からなるモーターユニットとランナーの基部との止着を解き、次いでモーターユニットを開口窓より引出した後、モーターユニットを点検、修理、または新しいものと交換し、再び開口窓より挿入し、ランナーの基部と止着すればよい。また、モーターや駆動輪の点検や交換が、間仕切パネルを吊支レールに吊支した状態のままで簡単に行え、間仕切パネルを吊支レールから取外す必要がないため、安全に、かつ容易にメンテナンスが行える。
【0007】本発明の電動間仕切装置は、前記モーターユニットがランナーの基部に対して所定の止着手段で取外し可能に固定されており、前記止着手段は、前記開口窓から見て、前記開口窓の内側であり、かつ前記駆動輪外周の外側に位置していることが好ましい。このようにすることで、モーターユニットとランナーの基部との止着を解く場合は、開口窓からドライバー等で、雄ネジ等の止着手段を取外すことにより、モーターユニットを開口窓より引出すことができる。この際、止着手段が駆動輪の外側にあるため、雄ネジの取外しにあたって、駆動輪が邪魔になることがない。
【0008】本発明の電動間仕切装置は、ランナーの基部に駆動輪とは別体の補助輪もしくは従動輪が併設され、前記補助輪もしくは従動輪が乗り上げることにより、駆動輪を吊り支レールの走行面から離間させる踏み台が設置可能になっていることが好ましい。このようにすることで、ジャッキ等を用いなくてもランナーの自走力によってモーターユニットの取外し状態を容易に得ることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、まず図1には本発明の電動間仕切装置が示されている。1は間仕切パネルであり、天井3に固着された吊支レール2内を走行可能に嵌合されたランナー4により、吊軸13を介して吊支されている。前記吊支レール2は、その下面中央に図2に示されるように案内溝20が長手方向に切設されており、また後述する前記ランナー4の駆動輪に対向する側面部2aの下方所定箇所には、開口窓21が切設されている。
【0010】次に5は、ランナー4の基体6内に装着された減速モーターであり、該減速モーター5に固着された取付板5aに形成されたネジ孔にボルト8が挿通され、このボルト8が前記基体6の側面を構成する左側板6aに形成されたネジ孔に螺合されることで基体6に対して減速モーター5を容易に固設できるようになっている。また、この減速モーター5より図の左方に突出された出力軸には駆動輪7が固着されている。
【0011】前記ボルト8により連結される取付板5aと側板6aとの間の両端側には、図2及び図3に示される2つの保持板9が挾持されており、これら下方からは軸が駆動輪7方向に突出しており、この軸には、補助輪10が固着されている。
【0012】基体6の右側板6b下方には、前後方向の中心位置に軸が設けられ、この軸に2つの従動輪11が回転自在に設けられている。そしてこの従動輪11の下端は、駆動輪7の下端と同じ高さになるように設定されている。さらに基体6の下方部の前後両端近くに左右方向をなす一対の軸が架設され、それぞれ補助輪12が装着されている(図2、3参照)。この補助輪12の下端は前述の補助輪10の下端と同高さになるように設定されており、かつこれら補助輪10、12の下端はそれぞれ駆動輪7及び従動輪11の下端よりやや上方に位置するように設定されている。
【0013】基体6下面中心からは、パネルを吊支する吊軸13が垂設されており、また、この前後には、案内溝20に沿って転動するようにした1対のガイドローラー14が装着されている。
【0014】基体6の上面には、前後1対の支軸が立設され、それぞれの上端部に各1個のガイドローラー18が回転可能に装着されている。一方、吊支レール2における上辺の内面には、ランナー4の走行方向を決定する案内ガイド19が垂設され、ガイドーローラー18がこれに沿って転動するようになっている。
【0015】さらに、基体6の上面には、減速モーター5を制御するための制御部17が設置され、制御部17の上方には、ガイドローラー18を有する1対の前記支軸を利用して集電ブラシ15が突設され、吊支レール2の側壁内面に張設された給電線16に摺接して、減速モーター5に給電を行えるようになっている。
【0016】このように構成されたランナー4の減速モーター5及び駆動輪7、補助輪12をメンテナンスする場合、まずランナー4が吊支レール2内の開口窓21以外の場所に位置している時に、図2、3に示される踏み板22を開口窓21の切設されている吊支レール2の走行面上の少なくとも駆動輪7以外の従動輪11もしくは補助輪10、12の走行面(この実施例では補助輪12の走行面)に載置しておく。
【0017】この踏み板22は、少なくともランナー4の駆動輪7及び従動輪11が吊支レール2の走行面に当接している状態の時に、補助輪10、12の下端と吊支レール2の走行面との間に形成される隙間よりも若干厚く形成されており、また、この両端部にはランナー4の補助輪12が乗り上げ易くなるようにテーパ面22aが形成されている。
【0018】そして前述のように踏み台22を載置した後に、ランナー4をその前後の両補助輪12が前記踏み台22上面に乗り上がるまで移動する。すると、駆動輪7が上昇し、下端が吊支レール2の走行面より隙間t(図2参照)分だけ離間することになる。よって駆動輪7がフリーな状態となるので、ボルト8を緩め、駆動輪7及び減速モーター5等を全て一体的に容易に取外すことが出来る。
【0019】この時、ボルト8は図3に示されるように駆動輪7外部に位置しているため、駆動輪7を先に取り外すことなく、開口窓21より容易に緩めることが出来る。
【0020】また、駆動輪7及び減速モーター5、補助輪10は、図2中二点鎖線で示されるように、ランナー4の基体6より左方、即ち開口窓21方向に取外せるとともに、開口窓21も少なくとも駆動輪7より大きく形成されているため、これらの取外し作業は全て吊支レール2外部より開口窓21を介して容易に行うことが可能となる。
【0021】そして、前述のように取外した各装置は、別箇所において点検、補修又は必要に応じて交換され、再びランナー4の基体6に装着される。尚、他のランナー4も前述と同様にメンテナンスすればよい。そしてこれら全てのメンテナンス作業が終了した後、開口窓21より踏み板22を回収すれば、ランナー4は通常に走行できるようになる。
【0022】尚、前記踏み板22は、特に図示しないが、予め開口窓21の切設された箇所の吊支レール2の走行面に埋設しておき、自動または手動でその上面が吊支レール2の走行面に対して進退可能に移動し、かつ固定できるようにしておいてもよい。
【0023】図4には、本発明の他の実施例が示されており、これはランナー4の駆動輪7の下端を上昇させる手段として、踏み板を使わずにランナー4をパネル1ごと上昇させるようにしたものである。そして本実施例においては、図中に示されるように適宜ランナー4が開口窓21位置にある時、ジャッキ23等の適宜上昇機能を有する装置を用いてパネル1下端を上方に押上げることで、駆動輪7が上昇されるようになっている。この例の場合も前実施例と同様に駆動輪7、減速モーター5等を一体に容易に取外すことが出来る。
【0024】以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0025】例えば、ランナー4の上昇手段はこれら実施例のものに限られるものではなく、どのような上昇手段により行ってもよい。
【0026】また、開口窓21の形状及び切設位置は、種々のランナーの駆動輪等に応じて変形可能であるとともに、開口窓21に適宜開閉可能な扉を設けておくことも自由である。
【0027】
【発明の効果】本発明は次の効果を奏する。
【0028】(a)請求項1の発明によれば、本装置でモーターや駆動輪の点検や交換を行う必要が生じた場合、メンテナンスを行うランナーが、吊支レールの側面に切設された開口窓のところにくるように、間仕切パネルを移動させ、間仕切パネルを持上げる等の方法で吊支レールの走行面から駆動輪をわずかに浮かせた状態で、開口窓から少なくともモーターと駆動輪からなるモーターユニットとランナーの基部との止着を解き、次いでモーターユニットを開口窓より引出した後、モーターユニットを点検、修理、または新しいものと交換し、再び開口窓より挿入し、ランナーの基部と止着すればよい。
【0029】モーターや駆動輪の点検や交換が、間仕切パネルを吊支レールに吊支した状態のままで簡単に行え、間仕切パネルを吊支レールから取外す必要がないため、安全に、かつ容易にメンテナンスが行える。
【0030】(b)請求項2の発明によれば、モーターユニットとランナーの基部との止着を解く場合は、開口窓からドライバー等で、雄ネジ等の止着手段を取外すことにより、モーターユニットを開口窓より引出すことができる。この際、止着手段が駆動輪の外側にあるため、雄ネジの取外しにあたって、駆動輪が邪魔になることがない。
【0031】(c)請求項3の発明によれば、ジャッキ等を用いなくてもランナーの自走力によってモーターユニットの取外し状態を容易に得ることができる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の電動間仕切装置を表わす正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】本発明の他の実施例の電動間仕切装置を表わす正面図である。
【図5】従来の電動間仕切装置を表わす正面図である。
【図6】図5の間仕切パネルを吊支レールから取外し、床面に載置した状態を表わす斜視図である。
【符号の説明】
1 パネル
2 吊支レール
2a 側面部
3 天井
4 ランナー
5 減速モーター
5a 取付板
6 基体
6a、6b 側板
7 駆動輪
8 ボルト(止着手段)
9 保持板
10 補助輪
11 従動輪
12 補助輪
13 吊軸
14 ガイドローラー
15 集電ブラシ
16 給電線
17 制御部
18 ガイドローラー
19 案内ガイド
20 案内溝
21 開口窓
22 踏み台
22a テーパ面
23 ジャッキ(上昇手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 天井に固着した吊支レールに、間仕切パネルを吊支するとともに、車輪を有する自走式のランナーを走行自在に嵌合し、該ランナーに、走行用の車輪を駆動するモーターを設け、モーターにより駆動される駆動輪を、ランナーの一側部に配設した電動式間仕切装置において、前記ランナーの基部に、少なくともモーターと駆動輪からなるモーターユニットを、駆動輪側より取り外し可能に止着するとともに、前記吊支レールの駆動輪と対向する側面所定箇所に、前記モーターユニットが取り外し可能な開口窓を切設したことを特徴とする電動間仕切装置。
【請求項2】 前記モーターユニットがランナーの基部に対して所定の止着手段で取外し可能に固定されており、前記止着手段は、前記開口窓から見て、前記開口窓の内側であり、かつ前記駆動輪外周の外側に位置している請求項1に記載の電動間仕切装置。
【請求項3】 ランナーの基部に駆動輪とは別体の補助輪もしくは従動輪が併設され、前記補助輪もしくは従動輪が乗り上げることにより、駆動輪を吊り支レールの走行面から離間させる踏み台が設置可能になっている請求項1又は2に記載の電動間仕切装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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