説明

電圧計

【課題】 継電器にかかる電圧測定に際して、聴覚での確認により人間の誤操作による事故を防止できる電圧計を提供する。
【解決手段】 電圧計は、継電器にかかる電圧の極性を判定する極性判定回路50と、その判定信号に応じて極性を報知する音声信号を生成する音信号生成回路78と、その出力信号に応じた音声を出力するスピーカ11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の電気機器(例えば、電力会社等の送電線路に設けた遮断器を作動させる継電器)にかかる電圧を測定するために用いられる電圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線路において落雷等の事故や故障があると、事故箇所を健全な設備から切り離すために保護継電器が作動し、遮断信号を遮断器に送って送電線路を「切」状態とするので、送電線路からの電力供給が停止する。この保護継電器が正確に動作するためには、保護継電器を定期的に点検する必要がある。点検作業は保護継電器を不動作状態にして行われ、その後営業運転に戻す際、不動作状態になっている保護継電器を動作可能な状態に復旧する。復旧の際、保護継電器から遮断器へ遮断信号が流れていると、遮断器は再度遮断動作を行ってしまうので、作業者は継電器にかかる電圧が適正値であることを確認する必要がある。具体的には、継電器にかかっている電圧を電圧計で確認しなければならない。
【0003】
通常、この確認作業は誤りを防ぐため二人で行うが、実際の作業は薄暗く狭い現場で行うことが多いので、一人でしか確認作業ができない場合もある。電圧計での確認は人間の目視による判断のため、電圧計の接続端子の極性(+,−)を間違えて接続したり、或いは測定箇所の継電器端子とアース端子を間違えて測定する可能性がある。継電器にかかる電圧が適正値を超えている状態で、不動作状態になっている保護継電器を動作可能状態にすると、保護継電器が動作して遮断器を遮断し、大規模な停電が発生することもある。
【0004】
下記の特許文献1には、誤配線等による事故を防止するための電圧計測器が掲載されている。これは、電圧検出部が鋭利な形状であり、被覆電線に突き刺すことでその先端が電線内の導電部に触れ、これにより、作業者が回路に触れることなく安全に電圧を計測できるものである。
【0005】
【特許文献1】特開2005−134233
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記電圧計測器では、電圧検出部を接続する電線の選択は作業者の判断に委ねられており、誤った接続をした場合にそれを知らせることは考えられていない。そのため、作業者が電圧計の極性の間違いに気付かないで作業してしまうことを防止するのが困難である。
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、人間の誤操作による事故を防止できる電圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、継電器にかかる電圧を計測する電圧計であって、前記電圧の極性を判定する極性判定手段と、前記極性判定手段からの判定信号に応じて極性を報知する音声出力手段とを備えたことを特徴とする。ここで「音声」には人間の声のほか、ブザー等の音響も含む。
【0009】
前記電圧計は、極性判定手段からの判定信号に応じて発光する表示灯を備えることが望ましい。また、電圧の測定時に前記継電器の接点に接続する複数の接続端子のうち少なくとも一つは前記判定信号に応じて振動する振動体を備えることが望ましい。
【0010】
更に、前記電圧計は、電圧の測定時に前記継電器の接点に接続する複数の接続線の差込み端子を挿入する複数の差込穴を有し、各差込穴は対応する差込み端子のみ挿入可能な形状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電圧計によれば、継電器にかかる電圧の極性を極性判定手段により判定し、その判定信号に応じて音声出力手段による音声で極性を報知するので、作業者が極性を視覚で判断できない場合やその判断が困難な状況でも、聴覚で確認できる。これにより、人間の誤操作による事故を効果的に防止できる。
【0012】
電圧計が極性判定手段からの信号に応じて発光する表示灯を備えた場合には、作業者は、暗い場所においても一目で極性を確認できる。また、極性判定手段からの信号に応じて振動する振動体を備えた場合には、継電器にかかる電圧の極性を触覚で確認できる。更に、複数の接続線の差込み端子を挿入する複数の差込穴が各々対応する差込み端子のみを挿入可能な形状にすることで、各差込み端子を確実に電圧計の対応する差込穴に挿入し接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、実施例の電圧計を示す。この電圧計1は、箱状の本体2に電圧表示部3を有し、その中の指針4が目盛5の範囲内で回動するように構成されている。電源となる電池を収納した状態で電源スイッチ6をオンにし、プラス(+)接続ケーブル7及びマイナス(−)接続ケーブル8の各一端を夫々対応するプラス差込穴9及びマイナス差込穴10に挿入して、内部の回路に接続した各ケーブル7,8の他端を被測定箇所に当てると、指針4が目盛5中の被測定箇所間の電圧を示す位置に停止するので、測定箇所の電圧がわかる。
【0014】
この電圧計1は、音声発生手段としてスピーカ11を内蔵している。これは、後述の極性判定回路50(図2)で極性を判定し、その極性が、例えばプラスの場合には「プラスです」等の音声を出力するものであり、これにより、電圧表示部3での目視による確認に加えて、音声で極性を確認できる。また、本体2の正面には、スピーカ11から出た音声を外に出すためのスリット12が設けてある。
【0015】
更に、この電圧計1は、極性判定回路50からの判定信号に応じて発光する表示灯として、2つの表示ランプ13及び14を備えている。左側の(−)極性表示ランプ13は、極性判定回路50で判定した極性がマイナスの場合に点灯し、右側の(+)極性表示ランプ14は、極性がプラスの場合に点灯する。これらのランプによる視認性を良くするため、例えば、マイナス極性表示ランプ13は緑色発光ダイオード、プラス極性表示ランプ14は赤色発光ダイオードで構成することが好ましい。
【0016】
本体2の背面には、磁石板15が固着されている。これにより、電圧計1を鉄製の筐体などに取り付けて使用すれば、作業者が保持する手間をなくすことができる。本体2の背面下部には、内部の電池収納部を覆う電池蓋16が設けてある。
【0017】
プラス(+)接続ケーブル7は、その本体接続側の一端が、例えば直径6 mm の円形断面の導体からなる接続端子20で形成され、その根元に絶縁体で形成された把持部21を有する。他端の接続端子22は、先端が円錐状に形成された導体からなり、その根元に絶縁体で形成された把持部23を有する。このケーブル7の両端の接続端子20及び22は、被覆された導線コード24により接続されている。
【0018】
マイナス(−)接続ケーブル8は、その本体接続側の一端が、例えば一辺5 mm の正方形断面の導体からなる接続端子30で形成され、その根元に絶縁体で形成された把持部31を有する。他端の接続端子32、その根元の把持部33及び導線コード34は、上記プラス(+)接続ケーブル7の接続端子22、把持部23及び導線コード24と同様に構成される。
【0019】
プラス差込穴9及びマイナス差込穴10は夫々、上記接続ケーブル7,8の各接続端子20及び30がぴったり挿入されるように設けられ、各穴9,10に各接続端子20,30を差し込むことにより、プラス接続ケーブル7及びマイナス接続ケーブル8が電圧計1の内部回路と電気的に接続される。
【0020】
この実施例では、プラス接続ケーブル7の接続端子20は、断面形状がマイナス差込穴10と異なるので、この接続端子20をマイナス差込穴10に挿入又は差し込むことができない。また、マイナスプラス接続ケーブル8の接続端子30は、断面形状がプラス差込穴9と異なるので、この接続端子30をプラス差込穴9に挿入又は差し込むことができない。このように、一の接続線の差込み端子が他の差込み端子と対応する差込穴には挿入できないように互いに排他的な形状に形成することにより、接続端子の接続間違いを防止できる。なお、接続端子や差込穴の形状、寸法は例示であり、互いに排他的であれば他の形状でもよい。
【0021】
図2は、上記電圧計1の回路構成を示す図である。この回路は、前述のプラス差込穴9をプラス側の入力端子とし、マイナス差込穴10をマイナス側の入力端子として構成され、極性判定回路50、音信号生成回路78及び電源回路73を備えている。動作時には、極性判定回路50から出力される判定信号を受けて音信号生成回路78が音声信号を生成し、前述のスピーカ11を駆動して音声を出力する。
【0022】
電源回路73は、前記電源スイッチ6及び本体2内に収納された電池を含み、極性判定回路50及び音信号生成回路78にそれぞれ所定の電圧を供給するように構成されている。
【0023】
音信号生成回路78は、例えば、入力信号に応じて所定の音声信号を生成する音声合成IC(集積回路素子)で構成される。
【0024】
極性判定回路50は、プラス差込穴9に接続した第1入力端子51と、マイナス差込穴10に接続した第2入力端子52を有する。また、音信号生成回路78に接続された第1、第2及び第3の出力端子53、54及び57を有する。
【0025】
極性判定回路50の入力側、すなわち、プラス差込穴9に接続した第1入力端子51とマイナス差込穴10に接続した第2入力端子52との間には、前述の電圧表示部3が接続されている。これにより、2つの入力端子51と52間の電圧及び極性を表示する。
【0026】
極性判定回路50の出力側では、第2出力端子54と第3出力端子57との間に、緑色発光ダイオードからなるマイナス極性表示ランプ13が接続され、第1出力端子53と第3出力端子57との間には、赤色発光ダイオードからなるプラス極性表示ランプ14と、電圧がかかると機械的に振動する振動体76とが直列接続されている。
【0027】
図3は、極性判定回路50の構成を示す。
【0028】
第1入力端子51は、ヒューズ67a、第1抵抗68a、第1ダイオード69a及び第2抵抗68bを介して、第1比較器58aの+側入力端に接続され、第1比較器58aの出力端は、第1AND回路59aの2つの入力端の一方に接続され、第1AND回路59aの出力端は、第1トランジスタ60aのベースに接続され、第1トランジスタ60aのコレクタが第1出力端子53に接続されている。
【0029】
この第1入力端子51から第1出力端子53に至る線路において、第1抵抗68aと第1ダイオード69aとの接続部に第2ダイオード69bの一端(カソード側)が接続され、第2抵抗68bと第1比較器58aの+側入力端との接続部に、第3抵抗68cの一端と第3ダイオード69cの一端(アノード側)が接続され、第1比較器58aの出力端には、第4抵抗68dを介して一定の電圧VCが印加され、第1AND回路59aの入力端の他方には、後述の第3AND回路59cの出力が加えられる。なお、上記第2ダイオード69bの他端(アノード側)、第3抵抗68cの他端、第1比較器58aの−側入力端、及び第1トランジスタ60aのエミッタは、それぞれアース(基準電位)に接続されている。
【0030】
一方、第2入力端子52は、ヒューズ67b、第5抵抗68e、第4ダイオード69d及び第6抵抗68fを介して、第2比較器58bの+側入力端に接続され、第2比較器58bの出力端は、第2AND回路59bの2つの入力端の一方に接続され、第2AND回路59bの出力端は、第2トランジスタ60bのベースに接続され、第2トランジスタ60bのコレクタが第2出力端子54に接続されている。
【0031】
この第2入力端子52から第2出力端子54に至る線路において、第5抵抗68eと第4ダイオード69dとの接続部に第5ダイオード69eの一端(カソード側)が接続され、第6抵抗68fと第2比較器58bの−側入力端との接続部に、第7抵抗68gの一端と第6ダイオード69fの一端(アノード側)が接続され、第2比較器58bの出力端には、第8抵抗68hを介して一定の電圧VCが印加され、第2AND回路59bの入力端の他方には、後述の第3AND回路59cの出力が加えられる。なお、上記第5ダイオード69eの他端(アノード側)、第7抵抗68gの他端、第2比較器58bの−側入力端、及び第2トランジスタ60bのエミッタは、それぞれアース(基準電位)に接続されている。
【0032】
上記第3ダイオード69cの他端(カソード側)と、第6ダイオード69fの他端(カソード側)は、それぞれ第3比較器58cの+側入力端と第4比較器58dの−側入力端に接続され、第3比較器58cの−側入力端には、下限電圧を設定するための電圧設定器55が接続され、第4比較器58dの+側入力端には、上限電圧を設定するための電圧設定器56が接続されている。
【0033】
更に、第3比較器58cの出力端は、第3AND回路59cの2つの入力端の一方に、第4比較器58dの出力端は、第3AND回路59cの2つの入力端の他方にそれぞれ接続され、第3AND回路59cの出力端は、上記第1AND回路59aの入力端の他方と第2AND回路59bの入力端の他方に接続されている。第3比較器58c及び第4比較器58dの各々の出力端には、それぞれ第9抵抗68i、第10抵抗68jを介して一定の電圧VCが印加される。
【0034】
第3出力端子57は、アース(基準電位)に接続されている。
【0035】
以下、第1入力端子51の入力電圧をVin(+)、第2入力端子52の入力電圧をVin(-)で表す。また、第1出力端子53の出力電圧をVout(+)、第2出力端子54の出力電圧をVout(-)で表す。第3出力端子57は基準電位である。更に、電圧設定器55及び56により設定される下限電圧及び上限電圧を、それぞれV、Vで表す。
【0036】
図3の回路において、第1入力端子51に正の入力電圧Vin(+)がかかると、第1比較器58aの+入力端にVin(+)と同程度の電圧Vaが入力されるので、第1比較器58aは定電圧VCより低い電圧Vaoを出力し、この電圧Vaoは、第1AND回路59aの入力端の一方に入力される。同時に、入力電圧Vaは、第3ダイオード69cを介して、第3比較器58cの+側入力端と第4比較器58dの−側入力端に入力される。
【0037】
このとき、Va<Vであれば、第3比較器58cが出力しないので、第3AND回路59cは出力せず、第1AND回路59aも出力しない。従って、第1トランジスタ60aはオフであり、第1出力端子53の出力電圧Vout(+)は、第1トランジスタ60aのコレクタ電位のままである。
【0038】
また、Va>Vのときにも、第4比較器58dが出力しないので、第3AND回路59cは出力せず、第1AND回路59aも出力しない。従って、第1トランジスタ60aはオフであり、第1出力端子53の出力電圧Vout(+)は、第1トランジスタ60aのコレクタ電位のままである。
【0039】
これに対し、V<Va<Vであれば、第3比較器58cは電圧VLoを出力し、第4比較器58dは電圧VHoを出力する。従って、第3AND回路59cが所定の電圧を出力し、その出力電圧が第1AND回路59aの入力端の一方に入力されるので、第1AND回路59aも出力し、第1トランジスタ60aをオンにする。このため、第1出力端子53の出力電圧Vout(+)は、第1トランジスタ60aのコレクタ電位からアース(基準電位)に変化する。
【0040】
従って、第1入力端子51の入力電圧Vin(+)が所定の範囲内にある場合のみ、第1出力端子53の出力電圧Vout(+)が変化するので、この出力変化をプラスの極性判定信号とする。
【0041】
一方、第2入力端子52に正の入力電圧Vin(-)がかかると、第2比較器58bの+入力端にVin(-)と同程度の電圧Vbが入力されるので、第2比較器58bは定電圧VCより低い電圧Vboを出力し、この電圧Vboは、第2AND回路59bの入力端の一方に入力される。同時に、入力電圧Vbは、第6ダイオード69fを介して、第3比較器58cの+側入力端及び第4比較器58dの−側入力端に入力される。
【0042】
このとき、第1入力端子51の場合と同様に、Vb<V或いはVb>Vであれば、第2トランジスタ60bはオフであるから、第2出力端子54の出力電圧Vout(-)は、第2トランジスタ60bのコレクタ電位となり、V<Vb<Vであれば、第2トランジスタ60bがオンになるので、第2出力端子54の出力電圧Vout(-)は、第2トランジスタ60bのコレクタ電位からアース(基準電位)に変化する。
【0043】
従って、第2入力端子52の入力電圧Vin(-)が所定の範囲内にある場合のみ、第2出力端子54の出力電圧Vout(-)が変化するので、この出力変化をマイナスの極性判定信号とする。
【0044】
以上により、極性判定回路50からプラス判定信号が出力される条件は、Vin(+)が正で、Vin(+)がVとVの間の値であること、すなわち、Vin(+)>0かつVin(-)<0であって、
<Vin(+)<V ・・・(1)
である。
【0045】
また、第2出力端子54からマイナス判定信号が出力される条件は、Vin(-)が正で、Vin(-)がVとVの間の値であること、すなわち、Vin(+)<0,Vin(-)>0であって、
<Vin(-)<V ・・・(2)
である。
【0046】
上記のように、極性判定回路50がプラス判定信号としてVout(+)を出力するときは、赤色発光ダイオードからなるプラス極性表示ランプ14が点灯し、振動体76が振動する。また、音声合成装置78が「プラスです」という音声を生成し、これをスピーカ11から出力する。また、極性判定回路50がマイナス判定信号としてVout(-)を出力するときは、緑色発光ダイオードからなるマイナス極性表示ランプ13が点灯すると共に、音声合成装置78が「マイナスです」という音声を生成し、これをスピーカ11から出力する。
【0047】
最後に図4を参照して、実施例の電圧計を使用して測定する方法について説明する。
【0048】
送電線40は、電源41から送られる電力を需要地域42へ供給する送電線路である。事故時に事故箇所を健全箇所から切り離す遮断器43,44が設けられている。
【0049】
ここで、例えば地点45に落雷事故があった場合を考える。この場合、送電線40に過電流が流れるため、送電線40に備えられた変流器46に通常以上の電流が流れる。これを保護継電器47が検知し、その接点部48を通じて遮断信号を発して遮断器43を作動させる。これにより、遮断器43の一次側(電源側)と二次側の送電線が切り離され、電源側の機器が保護される。
【0050】
この保護継電器47の性能を維持するために定期的に点検する必要があり、点検作業は保護継電器47を回路から切離して行う。この時、手動で接点部48を開放状態に設定(ロック)してから作業を行う。
【0051】
保護継電器47の点検作業終了後、通常運転を再開する際には、保護継電器47を回路に接続して、接点部48のロックを解除する。接続部48のロックを解除するためには、保護継電器47が遮断信号を発しない状態であることを確認する必要がある。なぜなら、保護継電器47が遮断信号を発する状態で接点部48のロックを解除すると、遮断器43が再度遮断され、その原因として保護継電器47の回路の誤結線か素子の故障が考えられるからである。そこで確認のため、上記電圧計1により開放状態の接点部48にかかる電圧を測定する。
【0052】
事故から復旧後、通常運転を再開する際には、接点部48のロックを解除するが、その前に、保護継電器47が遮断信号を発しない状態であることを確認する必要がある。なぜなら、保護継電器47が遮断信号を発する状態で接点部48のロックを解除すると、遮断器43が再度遮断され、大規模な停電等の二次被害を引き起こす場合があるからである。そこで、確認のため、上記電圧計1により、開放状態の接点部48にかかる電圧を測定する。
【0053】
具体的には、電圧計1のマイナス差込穴10に接続したマイナス接続ケーブル8の接続端子32をアース端子80に接続する一方、電圧計1のプラス差込穴9に接続したプラス接続ケーブル7の接続端子22を保護継電器側の接点端子48aに接続する。この時、接点端子48aに所定値以上のプラス電圧がかかっていると、極性判定回路50の第1入力端子51に正の電圧Vin(+)が入力されるので、前述のように、第1出力端子53からプラス判定信号Vout(+)が出力される。これにより、プラス極性表示ランプ14は赤色発光し、接続端子22及び接続端子32が振動すると共に、音信号生成回路78が音声信号を生成し、スピーカ11から「プラスです」という音声が出る。これにより、作業者は、接点部48に所定値以上の電圧がかかっていて保護継電器47が遮断信号を発する状態にあることを認識できる。
【0054】
また、図示の実施例では、作業者が測定箇所を取り違えて測定した場合であっても、保護継電器47が遮断信号を発する状態にあることを確認することができる。すなわち、電圧計1のプラス差込穴9に接続したプラス接続ケーブル7の接続端子22をアース端子80に接続する一方、電圧計1のマイナス接続ケーブル8の接続端子32を保護継電器側の接点端子48aに接続した場合、接点端子48aに所定値以上のプラス電圧がかかっていると、極性判定回路50の第2入力端子52に正の電圧Vin(-)が入力されるので、前述のように、第2出力端子54からマイナス判定信号Vout(-)が出力される。これにより、マイナス極性表示ランプ13は緑色発光し、音信号生成回路78が音声信号を生成し、スピーカ11から「マイナスです」という音声が出る。これにより、作業者は、測定箇所を取り違えて測定したことを知ると同時に、接点部48に所定値以上の電圧がかかっていて保護継電器47が遮断信号を発する状態にあることを認識できる。
【0055】
なお、式(1)及び(2)のどちらの条件にも該当しない場合は、電圧表示部3の指針4が目盛5のどの部分を指しているかを確認することで、状況を判断する。
【0056】
以上の音声、発光及び振動により、人間の誤操作による事故を防止できる。また、離れた場所からでも極性を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例の電圧計を示す斜視図。
【図2】実施例の回路構成を示すブロック図。
【図3】実施例の極性判定回路の構成を示す回路図。
【図4】電圧計の使用態様を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1…電圧計、2…本体、3…電圧表示部、4…指針、5…目盛、6…電源スイッチ、7…プラス接続ケーブル、8…マイナス接続ケーブル、9…プラス差込穴、10…マイナス差込穴、11…スピーカ、12…スリット、13,14…極性表示ランプ、15…磁石板、16…電池蓋、20,22…接続端子、21,23…把持部、24…導線コード、30,32…接続端子、31,33…把持部、34…導線コード、40…送電線、41…電源、42…需要地域、43,44…遮断器、45…事故地点、48…接点部、48a…接点端子、50…極性判定回路、51…第1入力端子、52…第2入力端子、53…第1出力端子、54…第2出力端子、55,56…電圧設定器、57…第3出力端子、73…電源回路、78…音信号生成回路、80…アース端子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
継電器にかかる電圧を測定する電圧計であって、
前記電圧の極性を判定する極性判定手段と、前記極性判定手段からの判定信号に応じて極性を報知する音声出力手段とを備えたことを特徴とする電圧計。
【請求項2】
請求項1記載の電圧計において、前記極性判定手段からの判定信号に応じて発光する表示灯を備えたことを特徴とする電圧計。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電圧計において、前記電圧の測定時に前記継電器の接点に接続する複数の接続端子のうち少なくとも一つが前記判定信号に応じて振動する振動体を備えたことを特徴とする電圧計。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の電圧計において、
前記電圧の測定時に前記継電器の接点に接続する複数の接続線の差込み端子を挿入する複数の差込穴を有し、各差込穴は対応する差込み端子のみ挿入可能な形状に形成されていることを特徴とする電圧計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−147425(P2007−147425A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341506(P2005−341506)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】