説明

電圧調整器用逆送切換装置

【課題】 既存の電圧調整器を用いて逆送時の電圧調整に対応できること
【解決手段】 配電系統13の電源側に接続される電源側端子15aと負荷側に接続される負荷側端子15bの間に配置される第1開閉部14aと、電源側端子と電圧調整器の一次側に接続される一次側端子15cの間に配置される第2開閉部15bと、負荷側端子と電圧調整器の二次側に接続される二次側端子14dの間に配置される第3開閉部15cと、負荷側端子と一次側端子の間に配置される第4開閉部15dと、電源側端子と二次側端子の間に配置される第5開閉部15eを備え、第2開閉部と第3開閉部を閉じるとともに、他の開閉部を開いた順送電モードと、第4開閉部と第5開閉部を閉じるとともに、他の開閉部を開いた逆送電モードを切り換え、電圧調整器の常に一次側から二次側に電流が流れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線系統に電圧調整器を接続するための電圧調整器用逆送切換装置に関するもので、負荷側から電源側に流れる逆送電時でも、電圧調整器を用いて電圧調整できるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の安定供給を図るため、配電線系統の途中に直列に自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)を配置した構成が採られている。この自動電圧調整器は、配電線の電圧降下を補償するため自動的に電圧調整器を構成する変圧器のタップを切り換え、電圧を調整するものである。
【0003】
図1は、この自動電圧調整器を配電線の系統に接続する一形態を示している。図に示すように、自動電圧調整器1は、開閉器2を介して配電系統3に接続されている。開閉器2は、独立して動作する3つの手動式の開閉部4a,4b,4cを備え、それら各開閉部4a,4b,4cを適宜開閉することで、自動電圧調整器1をバイパスさせて点検,試験を行うことができるようになっている。
【0004】
すなわち、開閉器2は、配電系統3の上流の電源側に接続される電源側端子2aと、配電系統3の下流の負荷側に接続される負荷側端子2bと、自動電圧調整器1の一次側に接続される一次側端子2cと、自動電圧調整器1の二次側に接続される二次側端子2dを備え、各端子をそれぞれ所定の配電系統3並びに自動電圧調整器1に接続する。さらに開閉器2は、電源側端子2aと負荷側端子2bとの間を第1開閉部4aを介して接続し、第1開閉部4aにより、両端子2a,2b間を通電、遮断可能にしている。また、電源側端子2aと一次側端子2cとを第2開閉部4bを介して接続し、負荷側端子2bと二次側端子2dとを第3開閉部4cを介して接続する。
【0005】
そして、通常の運転時は、第1開閉部4aを開路状態にするともに、第2,第3開閉部4b,4cを閉路状態にする。これにより、図1(a)に示すように、電源側から負荷側に向かって電圧が供給される順送電の際は、電流は、電源側端子2aから第2開閉部4bを経由して自動電圧調整器1の一次側に入力される。そして、自動電圧調整器1の二次側には、タップTの位置に応じて調整された電圧が発生し、その電圧が、第3開閉部4cを経由して負荷側に供給される。
【0006】
自動電圧調整器1の保守点検時は、第1開閉部4aを閉路状態にするとともに、第2,第3開閉部4b,4cを開路状態にすることで、自動電圧調整器1を配電線3から独立させ、負荷側への電力供給は第1開閉部4aを経由して行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開閉11−54000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、系統切換や、太陽光発電・熱併給発電(Co-generation)を初めとする分散電源の増加により、逆送・逆潮となるケースが増えつつある。上述した既存の自動電圧調整器1における電圧の調整(タップ切換)は、電流が一次側から二次側に流れることを前提としているため、図1(b)に示すように、負荷側から電源側に電流が流れる逆送電の際には、二次側のタップTの位置を一次側と同じ基準位置で固定し、自動電圧調整器1をスルー状態(変圧器で変圧をしない)としている。そのため、電圧の調整ができず、逆送電時の電圧の安定供給ができないという課題がある。
【0009】
地球規模の温暖化防止策としての二酸化炭素の排出抑制のための太陽光や風力などの自然エネルギーの利用や、電力自由化に伴う自治体や企業の発電事業の参集に伴い、上記の逆送・逆潮となるケースは今後も継続、拡大することが予想されるため、二次側から一次側の電流が流れる際にも電圧調整が行えるといった逆送・逆潮対応の自動電圧調整器の開発は必要となっている。しかし、逆送・逆潮対応の自動電圧調整器は、多くの系統事象に対応させるために複雑な制御を必要とし、さらなる理論の確立などが必要となる。この制御の方法を確立するまでは逆送・逆潮対応の自動電圧調整器そのものの製品化や、標準仕様化を行うことはできない。さらに、既設の自動電圧調整器を、係る逆送・逆潮対応の自動電圧調整器に切り換えるのは、技術面のみならずコストの点からも大変であり、容易にできないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)配電系統の電源側に接続される電源側端子と、前記配電系統の負荷側に接続される負荷側端子と、電圧調整器の一次側に接続される一次側端子と、前記電圧調整器の二次側に接続される二次側端子と、前記電源側端子と前記負荷側端子との間に配置される第1開閉部と、前記電源側端子と前記一次側端子との間に配置される第2開閉部と、前記負荷側端子と前記二次側端子との間に配置される第3開閉部と、前記負荷側端子と前記一次側端子との間に配置される第4開閉部と、前記電源側端子と前記二次側端子との間に配置される第5開閉部と、を備え、前記配電系統が順送電の際は、前記第2開閉部と前記第3開閉部を閉じるとともに、他の開閉部を開いた順送電モードにし、前記配電系統が逆送電の際は、前記第4開閉部と前記第5開閉部を閉じるとともに、他の開閉部を開いた逆送電モードにし、前記第1開閉部を閉じた状態で、他の開閉部の開閉を行い前記順送電モードと前記逆送電モードの切換を行うように構成した。
【0011】
係る構成を採ると、逆送電モードの時は、負荷側端子から流れ込んだ電流は、第4開閉部から一次側端子を経由して電圧調整器の一次側に流すことができる。また、それに伴い電圧調整器の二次側に発生する所望の電圧に基づき、二次側端子から第5開閉部を経由して電源側端子から配電系統に電流を流すことができる。よって、逆送電時でも、電圧調整器に対しては、一次側から二次側の順方向に電流を流すことができ、電圧調整が可能となる。
【0012】
(2)前記電圧調整器の一次側と二次側で変圧しない素通し状態で、前記第1開閉部を閉じて前記順送電モードと前記逆送電モードの切換を行うようにするとよい。一旦素通し状態にすることで、負荷側端子と電源側端子との間の電位差が0(ほぼ0)にすることができるため、その状態で第1開閉部を閉じても問題が無くなる。よって、順送電と逆送電の切り換えを素通し状態で行うことで、本装置に負荷開閉機能は必要なくなる。
【0013】
(3)具体的な構成としては、前記電源側端子と前記負荷側端子とを結ぶ線と、前記一次側端子と前記二次側端子とを結ぶ線が交差するようにそれら4つの端子をケースに取付け、そのケース内には、回転軸に連結して一体に回転する第1回転体と第2回転体を設け、前記第1回転体は、前記回転軸と直交する回転平面内であって円周上の所定位置に第1導体部と第2導体部を有し、前記円周上には、前記4つの端子が、前記電源側端子,前記一次側端子,前記二次側端子,前記負荷側端子の順に配置され、前記第1導体部と第2導体部は、それぞれ前記第1回転体の回転に伴い、前記4つの端子のうちの第1回転体の回転方向で隣接する2つの端子に同時に接触してその隣接する2つの端子同士を導通させるとともに、他の2つの端子と非導通にする状態と、それら4つの端子を相互に非導通にする状態がとれるように設定され、前記第2回転体は、その回転位置により前記電源側端子と前記負荷側端子にそれぞれ同時に導通する状態と、非導通の状態をとる一対の第3導体部を備えるとともに、その一対の第3導体部同士が導通されるように構成され、かつ前記第3導体部の一部は、前記円周上であって、前記第1導体部並びに前記第2導体部の未形成領域に重なるように配置されるようにするとよい。このようにすると、回転軸を回転するだけで、上記の各開閉部の開閉の切換を適切に行える。
【0014】
(4)前記第1回転体は、リング状の絶縁性の支持プレートを備え、その支持プレートの表面に前記第1導体部と前記第2導体部を取り付けるとともに、それら第1,第2導体部の表面と、その第1,第2導体部の未形成領域の表面が同一平面上に位置するように形成するとよい。
【0015】
(5)前記第2回転体は、リング状の絶縁性の支持プレートを備え、その支持プレートの表面に前記第3導体部を取り付けるとともに、その第3導体部の表面と、その第3導体部の未形成領域の表面が同一平面上に位置するように形成するとよい。
【0016】
上記の(4),(5)の発明によれば、各端子の接点が導体部から外れたり、接続される際に、導体部と導体部の未形成領域に段差が無いため、スムーズに行え、開閉の切換を繰り返し行うことに伴い生じる端子や導体部の摩耗・損傷等の発生を抑制できる。
【0017】
(6)前記第2回転体は、径方向反対側に配置される一対の前記第3導体部と、それを連結する連結プレートを備え、その連結プレートを介して前記回転軸に取り付けられるようにするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、常に電圧調整器内部には電流が一次側から二次側に流れることとなるので、既存の電圧調整器に手を加えないか、最小限の改造で逆送(逆潮)の電圧調整に対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来例を示す図である。
【図2】本発明に係る電圧調整器用逆送切換装置の好適な一実施形態を示す回路図である。
【図3】その構成図である。
【図4】その構成図である。
【図5】作用を説明する図である。
【図6】作用を説明する図である。
【図7】作用を説明する図である。
【図8】作用を説明する図である。
【図9】作用を説明する図である。
【図10】作用を説明する図である。
【図11】作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2は、本発明に係る電圧調整器用逆送切換装置の好適な一実施形態を示している。この電圧調整器用逆送切換装置10は、自動電圧調整器(SVR)11を配電系統13に直列に接続するとともに、配電系統13に流れる電流が順送電時と逆送電時のいずれの時も自動電圧調整器11にて電圧調整をできるようにするための装置である。
【0021】
この電圧調整器用逆送切換装置10は、配電系統13の上流の電源側に接続される電源側端子15aと、配電系統13の下流の負荷側に接続される負荷側端子15bと、自動電圧調整器11の一次側に接続される一次側端子15cと、自動電圧調整器11の二次側に接続される二次側端子15dを備え、各端子をそれぞれ所定の配電系統13並びに自動電圧調整器11に接続する。図では1相分を示しており、実際には、3相のため係る構成が3相分併設される。これは、以下の説明も同様である。
【0022】
さらに電圧調整器用逆送切換装置10は、電源側端子15aと負荷側端子15bとの間を第1開閉部14aを介して接続し、第1開閉部14aを開閉することで、両端子15a,15b間を通電、遮断可能にしている。また、電源側端子15aと一次側端子15cとを第2開閉部14bを介して接続し、負荷側端子15bと二次側端子15dとを第3開閉部14cを介して接続する。さらに本実施形態では、負荷側端子15bと一次側端子15cとを第4開閉部14dを介して接続し、電源側端子15aと二次側端子15dとを第5開閉部14eを介して接続する。
【0023】
このように5つの開閉部を適宜位置に配置し、それらの開閉を制御することで、配電系統(高圧系統)の送電方向が変化しても自動電圧調整器11内部に流れ込む電流の向きを同じにすることができる。つまり、自動電圧調整器11には、常に一次側から電流が流れ込むので、順送電時と逆送電時のいずれの場合も、タップTの位置を適宜切り換えることで、二次側の電圧が一定になるように調整できる。
【0024】
すなわち、図2(a)に示すように、順送電時は、第1開閉部14aと第4開閉部14dと第5開閉部14eとを開路状態にすると共に、第2開閉部14bと第3開閉部14cとを閉路状態にする。これにより、電源側端子15aと一次側端子15cとが導通状態になり、また、負荷側端子15bと二次側端子15dとが導通状態となる。よって、電源側端子15a側から電圧調整器用逆送切換装置10内に流れ込んできた電流は、第2開閉部14bを経由して一次側端子15cに至り、自動電圧調整器11の一次側に流れ込む。これにより、自動電圧調整器11の一次側には、所望の電圧が印加され、二次側にはタップTの位置に応じた所望の電圧が発生するので、その発生した電圧に基づく電流が、二次側端子15d→第3開閉部14c→負荷側端子15bの順に流れ、負荷側へ電力供給できる。この順送電時の機能・作用は、基本的に図1に示したものと同様の構成を採ることができる。
【0025】
一方、図2(b)に示すように、逆送電時は、第1開閉部14aと第2開閉部14bと第3開閉部14cとを開路状態にすると共に、第4開閉部14dと第5開閉部14eとを閉路状態にする。これにより、電源側端子15aと二次側端子15dとが導通状態になり、また、負荷側端子15bと一次側端子15cとが導通状態となる。よって、負荷側端子15b側から電圧調整器用逆送切換装置10内に流れ込んできた電流は、第4開閉部14dを経由して一次側端子15cに至り、自動電圧調整器11の一次側に流れ込む。これにより、自動電圧調整器11の一次側には、所望の電圧が印加され、二次側にはタップTの位置に応じた所望の電圧が発生するので、その発生した電圧に基づく電流が、二次側端子15d→第5開閉部14e→電源側端子15aの順に流れ、電源側へ電力供給できる。
【0026】
さらに、図示省略するが、第1開閉部14aのみを閉路状態に他の開閉部を開路状態にすることで、電源側端子15aと負荷側端子15bを導通させるとともに、自動電圧調整器11を配電系統13から切り離すことができる。これにより、自動電圧調整器11に対する保守点検等を行うことができる。
【0027】
本実施形態の電圧調整器用逆送切換装置10を用いることで、自動電圧調整器11は、逆送電時においても順送電時と全く同じタップ数・タップ値を備えた構成となる。そして、逆送電時におけるタップ切換による電圧の制御は、既存のVT(計器用変圧器)、CT(変流器)より得られる一次側の電圧・電流情報を用いて制御する構成とでき、特別なセンサや制御回路を追加することなく逆送電時の電圧制御を行うことができるとともに、係る逆送電時の電圧制御効果は順送電時の制御効果と同程度となる。
【0028】
上記の各開閉部14a〜14eは、それぞれ独立して開閉の切換を手動あるいは自動で行うことのできる各種の構成をとることができる。たとえば、特許文献1に示す開閉器は、本実施形態の第1から第3開閉部を備えているので、係る開閉器に所定の端子間を接続可能に第4開閉部と第5開閉部を配置するようにしてもよいが、本実施形態では、各開閉部の開閉の切換制御を一括して同一タイミングで行うようにしている。
【0029】
さらに、自動電圧調整器11は、自己への潮流を監視する手段(67リレー(方向継電器))を設けている。これは、従来方式のものでは、自動電圧調整器に逆向きの電流が流れた場合、タップ位置を切り換えて素通し状態(変圧しない)にする制御を行う。そこで、本実施形態では、係る潮流を監視する手段の出力に基づき、各開閉部の開閉の切換を制御し、順送電時と逆送電時のそれぞれの状態でいずれも自動電圧調整器11に対して一次側から電流が流れるようにするのを自動的に行うことができる。
【0030】
そして、具体的には、ロータリー型接点構造の開閉装置を用い、接点を回転させることで、順送電時の順送電モードと、逆送電時の逆送電モードと、自動電圧調整器11を配電系統から切り離すバイパスモードを適宜に切り換えることができるようにしている。すなわち、図3,図4に示すように、電圧調整器用逆送切換装置10は、矩形状のケース20に内蔵された回転軸21に対し、第1回転板22と第2回転板23を取り付け、その第1回転板22と第2回転板23が、ケース10の4角にそれぞれ配置される各端子15a〜15dに接触するように構成される。これらの各端子は、図3に示すように、電源側端子15aと負荷側端子15bが対角線上に配置され、一次側端子15cと二次側端子15dが別の対角線上に配置される。換言すると、電源側端子15aと負荷側端子15bとを結ぶ線と、一次側端子15cと二次側端子15dとを結ぶ線が、直交するように配置される。なお、本発明では、必ずしも直交するように配置される必要はなく、それらの結ぶ線が所定角度(非直角)で交差する場合には、各回転板22,23に形成する導体部の形成領域を適宜に修正設定することで対応できる。
【0031】
さらに、各端子15a〜15dのケース20側の先端15a′〜15d′は、二股状に分岐し、それぞれの先端接点(図4では電源側端子15aの先端接点15a′と、負荷側端子15bの先端接点15b′を示す)が、第1回転板22と第2回転板23に接触し、回転板の導体部に接触すると、その導体部と先端接点ひいては端子とが導通状態になるようにしている。
【0032】
回転軸21は、ケース20内に実装される操作機構部24によりその回転が制御される。操作機構部24は、サーボモータ等の回転角度を制御可能な駆動モータと、その駆動モータの回転を制御する制御部と、を備えている。制御部は、自動電圧調整器11から送られてくる現在の状態(順送電(順方向の潮流)OR逆送電(逆方向の潮流))を示す信号に基づき、モードの切換の要否を判断し、モード切換が必要な場合には、回転軸21を所定角度回転することで、各開閉部14a〜14eの開閉状態を所望の状態に切り換える(所定の端子(15a〜15d)同士を導通状態にする)。
【0033】
第1回転板22は、図3(b)に示すように、リング状の支持プレート22aを十字状に延びる帯状の連結アーム22bにて回転軸21に連結する。支持プレート22aには、円周に沿って2カ所に導体部(第1導体部22c,第2導体部22d)が取り付けられて一体化される。第1導体部22cと第2導体部22dは、支持プレート22aの取り付け面と平行な平面が円弧状となり、それら第1導体部22cと第2導体部22dとの間には、絶縁領域22eが配置され、両導体部22c,22d同士は絶縁されている。この絶縁領域22eは、実際にはFRPなどの樹脂を用い、円板状の支持プレート22aの導体部取付面側の所定位置に凸部を一体成型することで形成される。絶縁領域22eの表面と、第1,第2導体部22c,22dの表面は面一にしている。
【0034】
第1,第2導体部22c,22dの形成位置は、隣接する2つの端子が1つの導体部に接続してその導体部を介して当該隣接する2つの端子が導通し、他の2つの端子とは非導通の状態となる(3つの端子が同時に1つの導体部に接触することはない)とともに、さらに、4つの導体部が、それぞれ導体部22c,22dと2つの絶縁領域22e上に1つずつ存在し、第1回転板22を介しては全ての導体部が相互に非導通の状態をとれるように設定される。
【0035】
図3(a)では、電源側端子15aと一次側端子15cとが第1導体部22cを介して導通し、負荷側端子15bと二次側端子15dとは第2導体部22dを介して導通する。このとき、電源側端子15aと一次側端子15cのペアと、負荷側端子15bと二次側端子15dのペアの間では、非導通の状態となる。この状態は、第2開閉部14bと第3開閉部14cが閉路状態になったことを意味する。
【0036】
また、図9(a)等では、負荷側端子15bと一次側端子15cとは第1導体部22cを介して導通し、電源側端子15aと二次側端子15dとが第2導体部22dを介して導通した状態となる。この状態は、第4開閉部14dと第5開閉部14eが閉路状態になったことを意味する。
もちろん、第1回転板22の回転角度を変えることで、隣接する端子同士の導通を、上記とは逆の導体部を用いてとることもできる。
【0037】
さらに、図8(a)に示すように、電源側端子15aと、負荷側端子15bは、それぞれ別々の絶縁領域22eに位置し、一次側端子15cは第1導体部22cと接触し、二次側端子15dは第2導体部22dと接触する状態をとれる。この状態では、第1回転板22では全ての開閉部が開路状態となる。なお、後述するように、第2回転板23を介して電源側端子15aと負荷側端子15bとは導通されるので、実際には、第1開閉部14aはその第2回転板23によって閉路状態になる。
【0038】
一方、第2回転板23は、径方向反対側に配置される一対の円弧状の第3導体部23aを備えている。また、この第3導体部23a同士は、帯状の導体プレート23bにより導通されている。実際には、それら2つの第3導体部23aと導体プレート23bを一体に形成する。導体プレート23bには、中心に貫通孔を形成し、回転軸21を装着する。なお、この回転軸と導体プレート23bとの間は、所定の絶縁処理がなされている。なお、本実施形態では、一対の第3導体部23a同士の導通を、第3導体部23aと一体形成した導体プレート23bによりとるようにしているが、本発明はこれに限ることはなく、回転軸21に取り付けられ、一対の第3導体部23a同士を機械的に連結する部材は、第1回転板22における連結アーム22bのように樹脂等の絶縁部材で構成し、リード線その他の導通部材を用いて一対の第3導体部23a同士を電気的に接続するようにしても良い。
【0039】
また、第3導体部23aと、第1導体部22c及び第2導体部22dの径は、等しくしている。これより、第1,第2回転板22,23を回転軸21に取り付けた場合、両回転板22,23は互いに平行で、外周縁が一致するように配置される。さらに、第3導体部23aは、第1回転板22の絶縁領域22eと重なるとともに、第3導体部23aの周方向の両端は,それぞれ第1導体部22cと第2導体部22dに重なるようにしている。
【0040】
また、この第2回転板23も、好ましくは、第1回転板22と同様に、リング状の支持プレート23cを設け、この支持プレート23cに第3導体部23a,導体プレート23bを装着するとともに、第3導体部23aが配置されていない支持プレート23cの表面の絶縁領域23dの表面と第3導体部23aの表面を面一にすることである。換言すると、支持プレート23cの表面の第3導体部23aに対向する領域に、その第3導体部23aの外形状に符合する内形状の凹部23eを設け、その凹部23eに第3導体部23aを嵌め込む。このようにすると、各端子の先端接点が第3導体部23aと絶縁領域23dとの境界部分を移動する際にも、その境界部分で段差がないのでスムーズに移動することができ、先端接点と第2回転板23との間で大きな衝撃も発生せず、損傷が防止できる。
【0041】
この一対の第3導体部23aは、図3に示すように、いずれの端子とも非接触の状態と、図7等に示すように、対向する端子(図7では電源側端子15aと負荷側端子15b)を導通させる状態を切り換えることができる。この図7に示す状態は、第1開閉部14aが閉路状態になったことを意味する。
【0042】
回転軸21を回転することで、第1回転板22と第2回転板23は同時に回転し、各同タイプ22c,22d,23aに接続する端子が切り換わることから、接点はロータリー式のスイッチを構成することになる。そして、かかる回転をさせることで、順送電モードと逆送電モードの切換等が行える。
【0043】
次に、本実施形態の動作原理を説明する。図5以降は、順送電の状態から逆送電になった場合のモード切換を示している。まず、図5は、順送電時の状態を示している。図5(a)に示すように、電源側端子15aと一次側端子15cとが、第1導体部22cを介して導通し(第2開閉部14bが閉路状態)、負荷側端子15bと二次側端子15dとが、第2導体部22dを介して導通している(第3開閉部14cが開路状態)。また、第2回転板23の第3導体部23aは、いずれの端子15a〜15dとも非接触の状態となる。
【0044】
これにより、図5(b)に示すように、第2開閉部14b,第3開閉部14cが閉路状態となり、他の開閉部14a,14d,14eは開路状態となる。よって、電源側端子15aからの電流は、第1導体部22c(第2開閉部14b)から一次側端子15cを経由して自動電圧調整器11の一次側に入力され、これに伴い、自動電圧調整器11の二次側には、タップTの位置に応じた電圧が発生する。この二次側に発生した電圧は、二次側端子15d→第2導体部22d(第3開閉部14c)→負荷側端子15bを経由して負荷側に供給される。自動電圧調整器11の機能により、タップTの位置が適宜変更され、安定した電力供給が行える。
【0045】
この順送電時において、自動電圧調整器11内の67リレーが逆送状態になったことを検知すると、図6(b)に示すように自動電圧調整器11が、素通し状態に切り換わる。つまり、タップTの位置が基準位置に戻り、変圧しない状態になる。このとき、電圧調整器用逆送切換装置10は、順送電時のまま保持される。よって、負荷側端子15bから電圧調整器用逆送切換装置10に流れ込んできた電流は、第2導体部22d(第3開閉部14c)から二次側端子15dを経由して自動電圧調整器11の二次側に流れ込む。素通し状態であるので、二次側の電圧がそのまま一次側の電圧として現れ、一次側端子15c→第1導体部22c(第2開閉部14b)→電源側端子15aを経由して電源側に供給される。これにより、自動電圧調整器11を損傷することなく逆送状態を維持できる。これは、図1に示した装置を用いた逆送電時における動作と同じである。
【0046】
次に本実施形態では、自動電圧調整器11は、逆送電になり素通し状態に切り換わったことを電圧調整器用逆送切換装置10(操作機構部24)に通知する。そこで、係る通知を受けた操作機構部24は、駆動モータを動作させて回転軸21を回転させ(図6(a)中時計方向)、図7(a)に示すように、第1回転板22側では、電源側端子15aと一次側端子15cとが、第1導体部22cを介して導通し(第2開閉部が閉路状態)、負荷側端子15bと二次側端子15dとが、第2導体部22dを介して導通している(第3開閉部が開路状態)状態を維持しつつ、第2回転板23側では電源側端子15aと負荷側端子15bとが第3導体部23aを介して導通した状態(第1開閉部14aが閉路状態)にする。
【0047】
これにより、図7(b)に示すように、第1開閉部14a,第2開閉部14b並びに第3開閉部14cが閉路状態で、第4開閉部14d,第5開閉部14eが開路状態となる。よって、負荷側端子15bと電源側端子15aとの間は、ループ開路が構成され、直結された第3導体部23a(第1開閉部14a)を経由して電流が流れる。
【0048】
次に、操作機構部24は、さらに回転軸21を回転させ、図8(a)に示すように、第3導体部23aによる電源側端子15aと負荷側端子15bの導通状態を維持しつつ、第1回転板22側では4つの端子15a〜15dをそれぞれ独立状態(非導通状態)にする。すると、図8(b)に示すように、第1開閉部14aのみ閉路状態で、他の開閉部はいずれも開路状態となり、自動電圧調整器11をバイパスした構成となる。
【0049】
次いで、操作機構部24は、さらに回転軸21を回転させて、図9(a)に示すように、第3導体部23aによる電源側端子15aと負荷側端子15bの導通状態を維持しつつ、負荷側端子15bと一次側端子15cとが、第1導体部22cを介して導通し(第4開閉部14dが閉路状態)、電源側端子15aと二次側端子15dとが、第2導体部22dを介して導通する(第5開閉部14eが閉路状態)ように構成する。
【0050】
すると、図9(b)から明らかなように、負荷側端子15bと電源側端子15aとの間は、直結された第3導体部23a(第1開閉部14a)を経由する通路と、負荷側端子15b→第1導体部22c(第4開閉部14d)→一次側端子15c→自動電圧調整器11→二次側端子15d→第1導体部22c(第5開閉部14e)を経由して電源側端子15aに至る経路を備えたループ状となる。そして、この状態では、直結された第3導体部23a(第1開閉部14a)を経由して、負荷側端子15bから電源側端子15aに電流が流れる。
【0051】
次に、操作機構部24は、さらに回転軸21を回転させて、図10(a)に示すように、第3導体部23aをいずれの端子15a〜15dと非接触の状態とする。このとき、負荷側端子15bと一次側端子15cとは第1導体部22cを介して導通し(第4開閉部14dが閉路状態)、電源側端子15aと二次側端子15dとは第2導体部22dを介して導通する(第5開閉部14eが閉路状態)状態を維持する。
【0052】
すると、図10(b)に示すように、第1開閉部14aが開路状態となり、負荷側端子15bから電源側端子15aへ直接流れる経路が遮断されるため、負荷側端子15bから電圧調整器用逆送切換装置10に流れ込んできた電流は、第1導体部22c(第4開閉部14d)から一次側端子15cを経由して自動電圧調整器11の一次側に流れ込む。素通し状態であるので、一次側の電圧がそのまま二次側の電圧として現れ、二次側端子15d→第2導体部22d(第5開閉部14e)→電源側端子15aを経由して電源側に供給される。
【0053】
このように負荷側端子15bから流れ込んだ電流が、自動電圧調整器11の一次側に入るので、通常の電圧調整ができ、二次側に出力される電圧が一定になるようにタップTの位置が切換制御される(図11参照)。
また、逆送電の状態から通常の順送電の状態に戻ったときには、上記と逆の手順をとることで、図5に示す順送電モードに復帰させることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 電圧調整器用逆送切換装置
11 自動電圧調整器
20 ケース
21 回転軸
22 第1回転板
22c 第1導体部
22d 第2導体部
23 第2回転板
23a 第3導体部
24 操作機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統の電源側に接続される電源側端子と、
前記配電系統の負荷側に接続される負荷側端子と、
電圧調整器の一次側に接続される一次側端子と、
前記電圧調整器の二次側に接続される二次側端子と、
前記電源側端子と前記負荷側端子との間に配置される第1開閉部と、
前記電源側端子と前記一次側端子との間に配置される第2開閉部と、
前記負荷側端子と前記二次側端子との間に配置される第3開閉部と、
前記負荷側端子と前記一次側端子との間に配置される第4開閉部と、
前記電源側端子と前記二次側端子との間に配置される第5開閉部と、
を備え、
前記配電系統が順送電の際は、前記第2開閉部と前記第3開閉部を閉じるとともに、他の開閉部を開いた順送電モードにし、
前記配電系統が逆送電の際は、前記第4開閉部と前記第5開閉部を閉じるとともに、他の開閉部を開いた逆送電モードにし、
前記第1開閉部を閉じた状態で、他の開閉部の開閉を行い前記順送電モードと前記逆送電モードの切換を行うように構成することを特徴とする電圧調整器用逆送切換装置。
【請求項2】
前記電圧調整器の一次側と二次側で変圧しない素通し状態で、前記第1開閉部を閉じて前記順送電モードと前記逆送電モードの切換を行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電圧調整器用逆送切換装置。
【請求項3】
前記電源側端子と前記負荷側端子とを結ぶ線と、前記一次側端子と前記二次側端子とを結ぶ線が交差するようにそれら4つの端子をケースに取付け、
そのケース内には、回転軸に連結して一体に回転する第1回転体と第2回転体を設け、
前記第1回転体は、前記回転軸と直交する回転平面内であって円周上の所定位置に第1導体部と第2導体部を有し、
前記円周上には、前記4つの端子が、前記電源側端子,前記一次側端子,前記二次側端子,前記負荷側端子の順に配置され、前記第1導体部と第2導体部は、それぞれ前記第1回転体の回転に伴い、前記4つの端子のうちの第1回転体の回転方向で隣接する2つの端子に同時に接触してその隣接する2つの端子同士を導通させるとともに、他の2つの端子と非導通にする状態と、それら4つの端子を相互に非導通にする状態がとれるように設定され、
前記第2回転体は、その回転位置により前記電源側端子と前記負荷側端子にそれぞれ同時に導通する状態と、非導通の状態をとる一対の第3導体部を備えるとともに、その一対の第3導体部同士が導通されるように構成され、
かつ前記第3導体部の一部は、前記円周上であって、前記第1導体部並びに前記第2導体部の未形成領域に重なるように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電圧調整器用逆送切換装置。
【請求項4】
前記第1回転体は、リング状の絶縁性の支持プレートを備え、その支持プレートの表面に前記第1導体部と前記第2導体部を取り付けるとともに、それら第1,第2導体部の表面と、その第1,第2導体部の未形成領域の表面が同一平面上に位置するように形成したことを特徴とする請求項3に記載の電圧調整器用逆送切換装置。
【請求項5】
前記第2回転体は、リング状の絶縁性の支持プレートを備え、その支持プレートの表面に前記第3導体部を取り付けるとともに、その第3導体部の表面と、その第3導体部の未形成領域の表面が同一平面上に位置するように形成したことを特徴とする請求項3または4に記載の電圧調整器用逆送切換装置。
【請求項6】
前記第2回転体は、径方向反対側に配置される一対の前記第3導体部と、それを連結する連結プレートを備え、その連結プレートを介して前記回転軸に取り付けられることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の電圧調整器用逆送切換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−115000(P2012−115000A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260290(P2010−260290)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】