説明

電圧調整装置及び電圧調整方法

【課題】発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線において、需要家の連系点電圧を適正に調整するための電圧調整装置及び電圧調整方法を提供する。
【解決手段】自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報を収集し、連系点電圧が適正電圧範囲内かどうかについて判定する。適正電圧範囲に含まれない場合、すべての連系点電圧を適正電圧範囲に収めることができる2次側電圧を模索し、電圧調整処理を実行する。一方、適正電圧範囲に収めることができる2次側電圧がない場合、制御部21は、優先順位記憶部26を用いて、優先順位の高い需要家を特定し、この需要家の連系点電圧が適正電圧範囲内に収まるように電圧調整を行なう。そして、制御部21は、調整結果に基づいて、各需要家の優先順位を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧調整装置及び電圧調整方法に関するものであり、詳しくは、特定の地域送配電系統と系統内の分散型電源との間で協調を取りながら送配電を行なうためのものである。
【背景技術】
【0002】
近年、需要家において、太陽光発電設備などの自家発電設備が多く設置されるとともに、自家発電設備が分散電源として配電系統と連系するようになってきている。このような配電系統においては、自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。このような自動電圧調整器においては、2次側電圧が予め定められた電圧範囲内に収まるように電圧調整を行なう。
【0003】
また、自動電圧調整器によっては、負荷電流に応じて母線電圧を自動的に変更して調整する線路電圧降下補償器(LDC:Line Drop Compensation)が内蔵されているものもある。そして、線路電圧降下補償器は、2次側電流情報及び予め登録された線路インピーダンス情報によって、線路電圧上昇又は降下を計算し、その線路電圧上昇分又は降下分を2次側電圧に加味した上で電圧調整を行なう。ここで、線路インピーダンスは2次側の高圧配電線のインピーダンスが用いられる。そして、通常は自動電圧調整器から見た負荷中心点までの線路インピーダンスを登録し、負荷中心点の電圧が予め登録した電圧範囲内に収まるように調整する。
【0004】
また、センサ機能を有する開閉器等によって配電線各地点の電圧情報を収集し、その電圧情報に基づいて、遠隔から操作できる遠隔制御型自動電圧調整器を用いて、その送り出し電圧を調整し、配電線各地点の電圧を最適化する試みもなされている(例えば、特許文献2参照。)。この文献に記載された技術においては、地域送配電系統の潮流と電圧に関する系統情報を収集するとともに、各需要家の消費電力や電力量に関する計測情報を収集する。そして、収集した情報に基づいて、地域電力情報センタにおいて、地域送配電系統電圧調整装置の出力を調整するとともに、発電装置の出力を調整するための制御信号を電圧調整装置や電源出力調整装置に出力する。
【0005】
また、太陽光発電システムの電圧上昇抑制による不公平をなくし、太陽電池で発電されるエネルギを活用するための太陽光発電システムも検討されている(例えば、特許文献3参照。)。この文献に記載された技術においては、太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に、電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを送信する。そして、他の太陽光発電装置から受信した出力状態に基づいて、電力変換装置が商用電力系統に出力する電力出力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−190025号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2004−56996号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開2006−180660号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、自動電圧調整器は2次側電圧を監視して調整する。しかしながら、2次側電圧が予め登録した電圧範囲内に収まるように電圧調整を行なう場合、配電線の自動電圧調整器設置点の電圧情報に基づいて行なわれており、低圧側の需要家連系点における電圧情報は考慮されていない。
【0008】
また、上述の線路電圧降下補償器においても、負荷中心点の電圧を調整するものであるため、全需要家の連系点電圧が適正な範囲内に収まっている保証はない。従って、線路構成やインピーダンス分布によっては、需要家の連系点電圧が適正電圧範囲を逸脱することがある。また、一般的には、線路インピーダンスは高圧配電線しか考慮されておらず、低圧線や引込線の線路インピーダンスまでは考慮されていない。従って、低圧線や引込線の線路インピーダンスによる電圧上昇分及び降下分までは考慮されておらず、需要家の連系点電圧が逸脱する可能性は更に高くなる。
【0009】
一方、太陽光発電には、連系点電圧が適正電圧範囲の上限値を超えると発電出力を抑制するパワーコンディショナが設けられている。そして、発電出力による系統への逆潮流に伴う線路電圧上昇によって、更に適正電圧範囲を逸脱してしまう事態を防止している。なお、パワーコンディショナが出力を抑制する適正電圧範囲の上限値は、通常、107Vに設定されている。このため、太陽光発電設備を有する需要家の連系点電圧が適正電圧範囲を逸脱すると、需要家の売電が阻害され、需要家に損害を与えることになる。また、需要家毎に連系点電圧が異なることから、適正電圧範囲を逸脱しやすい需要家と、逸脱しにくい需要家とが発生することがある。この場合、売電量に差異が生じ、不公平が生じることになる。
【0010】
ここで、図7を用いて具体的に説明する。図7における各パラメータは以下の通りである。
V21:SVR地点における2次側電圧
I21:SVR地点における通過電流
Z21:SVR〜分岐点までの高圧線インピーダンス
I11,I12:分岐点〜柱上変圧器A,分岐点〜柱上変圧器Bの高圧線電流
Z11,Z12:分岐点〜柱上変圧器A,分岐点〜柱上変圧器Bの高圧線インピーダンス
ZT1,ZT2:柱上変圧器A,Bのインピーダンス
V11,V12:柱上変圧器A,Bの2次側電圧
I01,I02,I03,I04:柱上変圧器〜各需要家の低圧線の電流
Z01,Z02,Z03,Z04:柱上変圧器〜各需要家の低圧線インピーダンス
V01,V02,V03,V04:各需要家(A,B,C,D)の連系点電圧
ここで、Z01>Z02>Z03>Z04と想定する。
【0011】
需要家A〜Dには太陽光発電による発電装置10が設置されており、昼間は系統へ発電出力が行なわれ、逆潮流I01〜I04が系統側へ流れ、配電線及び柱上変圧器のインピーダンスによって電圧上昇が生じる。
【0012】
実際には、需要家A〜Dの負荷消費電力によって発電出力が消費されるため、必ずしも逆潮流になるとは限らないが、分かりやすくするためここでは負荷消費は発電出力に対して小さいと想定する。また、夜間においては、発電出力がないことから負荷消費のみとなり、I01〜I04は順潮流となって電圧降下が生じる。
【0013】
上記の場合、図1の各需要家(A〜D)の連系点電圧は次の関係式で表される。
【0014】
(数1)
V01=V21+{I21・Z21+I11・(ZT1+Z11)+I01・Z01}
V02=V21+{I21・Z21+I11・(ZT1+Z11)+I02・Z02}
V03=V21+{I21・Z21+I12・(ZT2+Z12)+I03・Z03}
V04=V21+{I21・Z21+I12・(ZT2+Z12)+I04・Z04}
【0015】
潮流の向きは昼夜で逆転することから、昼間は電圧が上昇し、夜間は電圧が降下する。各需要家がほぼ同じ電流であれば、柱上変圧器及び線路のインピーダンスが大きいほど、電圧の上昇下降が大きくなる。
【0016】
ここで、自動電圧調整器20の2次側電圧又は2次側の負荷中心点電圧における1日の変化イメージを図8(a)、需要家の連系点電圧V01〜V04における1日の変化イメージを図8(b)に示す。自動電圧調整器20は2次側電圧又は線路電圧降下補償器によって補正された負荷中心点電圧を監視し、その電圧を予め登録された適正電圧範囲内に収めるようにタップ切換を行なう。このため、図8(a)に示すように、自動電圧調整器20の2次側電圧又は2次側の負荷中心点電圧は、適正電圧範囲内に収まっている。しかしながら、線路インピーダンスが最も大きい需要家Aの連系点電圧においては、電圧変動が大きくなる。このため、需要家Aでは適正電圧範囲内を逸脱するようなケースも起こりうる。
【0017】
このように、監視電圧の変動は需要家における連携点電圧に比べて小さいことから、適正電圧範囲内に収まってしまい、需要家の連系点電圧が適正電圧範囲を逸脱しているにもかかわらず、電圧調整しない事態が生じる。この場合、需要家Aにおいては、発電出力ピークの時間帯にもかかわらず、パワーコンディショナが出力を抑制するため、損失を被ることになり、また他の需要家と比べて売電量が減るという不公平が生じることになる。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線において、需要家の連系点電圧を適正に調整するための電圧調整装置及び電圧調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線の線路情報を記憶し、各需要家の発電設備に接続された電圧調整装置であって、前記電圧調整装置が、前記配電線に接続された各需要家の発電設備毎に、連系点電圧についての計測情報を収集する手段と、前記計測情報及び線路情報に基づいて、各需要家の連系点電圧が、予め定められた適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を計算する手段と、前記計算した2次側電圧に基づいて出力電圧を調整する手段とを備えたことを要旨とする。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電圧調整装置において、需要家毎に優先順位を特定するための情報を記録した優先順位情報を更に記憶し、各需要家の連系点電圧が、前記適正電圧範囲内に収まらない場合には、前記優先順位情報を用いて、各需要家の優先順位を特定し、優先順位が高い需要家の連系点電圧が、前記適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を計算することを要旨とする。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電圧調整装置において、連系点電圧が前記適正電圧範囲内に収まらなかった需要家については、優先順位を高めるように優先順位情報を更新することを要旨とする。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の電圧調整装置において、各需要家の発電設備毎に、逆潮流量及び力率についての計測情報を更に収集し、前記需要家までの線路情報及び前記計測情報を用いて、各需要家における連系点電圧の変化予測を行ない、前記変化予測に基づいて2次側電圧を計算することを要旨とする。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電圧調整装置において、前記発電設備は、自然エネルギを利用して発電する設備であり、前記自然エネルギの変化予測を行ない、前記変化予測に基づいて連系点電圧の変化予測を行ない、前記変化予測に基づいて2次側電圧を計算することを要旨とする。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電圧調整装置において、前記計測情報において、前記適正電圧範囲内に収まらない連系点電圧を検知した場合、前記線路情報に基づいて、需要家までの中継地点に設置された変圧器を特定し、前記変圧器に対して、各需要家の連系点電圧が前記電圧範囲内に収まるように、電圧調整指示を送信し、前記電圧調整指示によっても前記適正電圧範囲内に収まらない場合に、前記出力電圧を調整することを要旨とする。
【0025】
請求項7に記載の発明は、発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線の線路情報を記憶し、各需要家の発電設備に接続された電圧調整装置を用いて、前記電圧調整装置の出力電圧を調整する方法であって、前記電圧調整装置が、前記配電線に接続された各需要家の発電設備毎に、連系点電圧についての計測情報を収集する段階と、前記計測情報及び線路情報に基づいて、各需要家の連系点電圧が、予め定められた適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を計算する段階と、前記計算した2次側電圧に基づいて出力電圧を調整する段階とを実行することを要旨とする。
【0026】
(作用)
請求項1、7に記載の発明によれば、需要家の発電設備毎の、連系点電圧についての計測情報に基づいて計算された2次側電圧を出力するので、各需要家の連系点電圧が適正電圧範囲内に収まるように出力電圧を調整することができる。例えば、適正電圧範囲として発電設備の出力制限がかからない範囲に設定しておくことにより、各需要家は的確に売電することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、優先順位情報に基づいて2次側電圧を調整するので、各需要家の状況を考慮して出力電圧を調整することができる。
請求項3に記載の発明によれば、出力電圧の調整によって優先順位が更新されるので、各需要家の不公平を是正することができる。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、逆潮流量及び力率を用いることにより、連系点電圧の変化予測を行ない、この予測に応じて、適切な出力電圧の調整を行なうことができる。
請求項5に記載の発明によれば、自然エネルギは時期や季候によって変化するので、この変化を考慮して、連系点電圧が適正電圧範囲に収まるように出力電圧を調整することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、需要家までの線路上に設置された変圧器により、電圧調整を行なうことができる。すなわち、線路上の変圧器においては、連系する発電設備の数が少ないので、部分的な電圧調整により、連系点電圧の適正化を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線において、需要家の連系点電圧を適正に調整するための電圧調整装置及び電圧調整方法を提供することができる。そして、発電出力の抑制による売電阻害や需要家間の売電不公平を解消し、需要家の金銭的損害や不満を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態のシステム概略図。
【図2】本発明の実施形態の電圧変化の説明図であって、(a)は自動電圧調整器の2次側電圧又は2次側の負荷中心点電圧、(b)は各需要家の連系点電圧の説明図。
【図3】本発明の第1の実施形態の処理手順の説明図。
【図4】本発明の第2の実施形態の処理手順の説明図。
【図5】本発明の第3の実施形態の処理手順の説明図。
【図6】本発明の第4の実施形態の処理手順の説明図。
【図7】複数の需要家の発電装置に接続された送配電線の線路の説明図。
【図8】従来の電圧変化の説明図であって、(a)は自動電圧調整器の2次側電圧又は2次側の負荷中心点電圧、(b)は各需要家の連系点電圧の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した電圧調整装置及び電圧調整方法の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。本実施形態では、各需要家(A〜D)の発電装置10の連系点電圧を計測し、自動電圧調整器20において、出力電圧を調整する。
【0033】
発電装置10は、各需要家(A〜D)に設置された発電設備である。本実施形態では、自然エネルギとして太陽光を利用した発電設備を用いる。この発電装置10には、パワーコンディショナが接続されている。このパワーコンディショナは、連系点電圧が適正電圧範囲内にある場合には、発電出力を配電線に供給するとともに、連系点電圧が適正電圧範囲の上限値を超えると発電出力を抑制する。
【0034】
監視装置11は、各需要家(A〜D)の発電装置10の連系点電圧を計測する。この監視装置11は、通信ネットワークを介して、自動電圧調整器20に接続されている。そして、監視装置11は、自動電圧調整器20に対して、連系点電圧に関する情報を含めた計測情報を定期的に送信する。この計測情報には、更に需要家を特定するための需要家コードに関する情報を含める。監視装置11としては、例えば、スマートメータと呼ばれる電力量計を用いることが可能である。
【0035】
自動電圧調整器20は、発電所からの一次電圧を、需要家に供給する2次側電圧に変換する。この自動電圧調整器20は、図1に示すように、制御部21、タップ切換器22、通信部23、計測情報記憶部24、線路情報記憶部25、優先順位記憶部26を備えている。
【0036】
制御部21は、各需要家の発電装置10に接続された配電線に供給する2次側電圧を調整する。この制御部21は、制御手段としてのCPU、RAM及びROM等を有し、後述する処理(計測情報収集段階、連系点電圧管理段階、2次側電圧調整段階、優先順位管理段階等の各処理)を行なう。このための電圧制御プログラムを実行することにより、制御部21は、計測情報収集手段、連系点電圧管理手段、2次側電圧調整手段、優先順位管理手段等として機能する。
【0037】
計測情報収集手段は、この自動電圧調整器20に接続された各需要家の監視装置11から、発電装置10の計測情報を取得する処理を実行する。本実施形態では、計測情報として、連系点電圧を取得する。
【0038】
連系点電圧管理手段は、連系点電圧と適正電圧範囲とを比較し、電圧調整の要否を判定する処理を実行する。更に、連系点電圧管理手段は、連系点電圧を適正電圧範囲内に収めるための切換タップ数を計算する処理を実行する。ここでは、タップ切換を行なった場合における各需要家の連系点電圧の予測値を、線路情報記憶部25に記録された線路情報やインピーダンス情報を用いて算出する。このため、(数1)で示した、連系点電圧とインピーダンス及び潮流との関係式を保持している。
【0039】
2次側電圧調整手段は、連系点電圧と適正電圧範囲との比較結果に基づいて、タップ切換を指示する処理を実行する。
優先順位管理手段は、2次側電圧を調整する場合、需要家の連系点電圧を適正電圧範囲に収める優先順位を管理する処理を実行する。具体的には、優先順位記憶部26において、優先順位が高い順番に需要家の連系点電圧が適正電圧範囲に収まるように調整する。また、電圧調整後に、連系点電圧を適正電圧範囲に調整できなかった需要家の優先順位を高める処理を実行する。
【0040】
タップ切換器22は、1次電圧を2次側電圧に変換する変成器のタップを切り換える処理を実行する。このタップ切換により、タップ数に応じた2次側電圧に変更される。
通信部23は、通信ネットワークを介して、各監視装置11から、計測情報を受信する処理を実行する。
【0041】
計測情報記憶部24には、各需要家の発電装置10の計測情報(連系点電圧)についての計測情報管理レコードが記録される。この計測情報管理レコードは、各監視装置11から新たな計測情報を取得した場合に記録される。この計測情報管理レコードには、需要家コード、受信時刻、連系点電圧に関するデータが記録される。
【0042】
需要家コードデータ領域には、自動電圧調整器20に接続されている需要家を特定する識別情報が記録される。
受信時刻データ領域には、この計測情報を取得した年月日及び時刻に関するデータが記録される。
連系点電圧データ領域には、この需要家の発電装置10の連系点電圧に関するデータが記録される。
【0043】
線路情報記憶部25には、自動電圧調整器20に接続されている発電装置10までの線路管理ファイル(線路情報)が記録されている。この線路管理ファイルは、自動電圧調整器20に接続されている発電装置10までの線路情報や、各線路及び柱上変圧器等のインピーダンスの測定が登録された場合に記録される。この線路管理ファイルには、各需要家の発電装置10までの線路図、低圧線や引込線を含む各線路や線路上柱上変圧器等におけるインピーダンスに関するデータが記録される。
【0044】
優先順位記憶部26には、自動電圧調整器20に接続されている各需要家について、電圧制御を行なう場合の優先順位に関する優先順位管理レコード(優先順位情報)が記憶されている。この優先順位管理レコードは、電圧調整を行なった場合に更新記録される。この優先順位管理レコードには、需要家コード、順位評価点に関するデータが記録される。
【0045】
需要家コードデータ領域には、自動電圧調整器20に接続されている需要家を特定する識別情報が記録される。
順位評価点データ領域には、この需要家の優先順位を特定するための順位評価点が記録されている。この順位評価点が高いほど、優先順位が高いと判定する。
【0046】
次に、上述した自動電圧調整器20を用いて、連系点電圧を調整する処理について図3を用いて説明する。
まず、自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報の収集処理を実行する(ステップS101)。具体的には、制御部21の計測情報収集手段は、各需要家の監視装置11から計測情報を取得する。この計測情報には、監視装置11が設置された需要家の需要家コード及び発電装置10の連系点電圧に関する情報が含まれる。そして、制御部21は、需要家コードに関連づけて、受信時刻、連系点電圧を計測情報記憶部24に記録する。
【0047】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS102)。具体的には、制御部21の連系点電圧管理手段は、計測情報記憶部24に記録された連系点電圧と、予め登録された適正電圧範囲とを比較して、各需要家の連系点電圧が適正電圧範囲に含まれるかどうかを判定する。
【0048】
すべての連系点電圧が適正電圧範囲内の場合(ステップS102において「YES」の場合)には、自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報の収集処理(ステップS101)に戻る。
【0049】
一方、適正電圧範囲に含まれない連系点電圧を検知した場合(ステップS102において「NO」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、すべての連系点電圧を適正電圧範囲に収めることができる2次側電圧の模索処理を実行する(ステップS103)。具体的には、制御部21は、タップ切換を行なった場合の、需要家における連系点電圧の予測値を算出する。この算出には、線路情報記憶部25に記録された線路インピーダンスを利用する。
【0050】
例えば、需要家の逸脱電圧幅が〔+2V〕と仮定すると、柱上変圧器の変圧比が〔6600V/105V〕の場合、次の計算で自動電圧調整器20の降圧必要幅が求まる。
【0051】
(数2)
2×6600/105=125.7V
この電圧よりも大きい調整幅となるような切換タップ数で自動電圧調整器20が降圧動作を行なう場合を想定する。
【0052】
更に、制御部21は、計測情報記憶部24において、他の需要家の連系点電圧を特定し、線路情報記憶部25を用いて、各需要家までの線路におけるインピーダンス情報を取得する。そして、制御部21は、現在の連系点電圧及びインピーダンス情報を用いて、関係式により、この降圧による他の需要家についての連系点電圧の予測値を算出する。
【0053】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、すべての連系点電圧が適正電圧範囲に収まる2次側電圧があるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS104)。具体的には、制御部21は、各連系点電圧の予測値と適正電圧範囲とを比較することにより、予測値が適正電圧範囲に含まれるかどうかを判定する。すなわち、他の需要家の連系点電圧が適正電圧範囲を逸脱しないかどうかを確認する。
【0054】
すべての連系点電圧を適正電圧範囲に収めることができる2次側電圧がある場合(ステップS104において「YES」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、電圧調整処理を実行する(ステップS105)。具体的には、制御部21の2次側電圧調整手段は、タップ切換器22に対してタップの切り換えを指示する。これにより、自動電圧調整器20の2次側電圧が変更される。この場合、図2(a)に示すように、自動電圧調整器20の2次側電圧又は2次側の負荷中心点電圧は、適正電圧範囲内に収まっている。また、図2(b)に示すように、各需要家の連系点電圧についても、タップ切換により、適正電圧範囲内に収まることになる。
そして、自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報の収集処理(ステップS101)に戻る。
【0055】
一方、適正電圧範囲に収まる2次側電圧がない場合(ステップS104において「NO」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、優先順位が最も高い需要家の特定処理を実行する(ステップS106)。具体的には、制御部21の優先順位管理手段は、優先順位記憶部26において、最も高い順位評価点を特定し、この順位評価点に関連付けられた需要家コードを特定する。
【0056】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、特定した全需要家の連系点電圧が適正電圧範囲に収まる2次側電圧の模索処理を実行する(ステップS107)。具体的には、制御部21は、特定した優先順位が高い需要家の連系点電圧を特定し、線路情報記憶部25を用いて、各需要家までの線路におけるインピーダンス情報を取得する。そして、制御部21は、現在の連系点電圧及びインピーダンス情報を用いて、関係式により、タップ維持又はタップ切換による、各需要家の連系点電圧の予測値を算出する。
【0057】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲に収まらない2次側電圧があるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS108)。具体的には、制御部21は、算出した各連系点電圧の予測値と適正電圧範囲とを比較することにより、予測値が適正電圧範囲に含まれるかどうかを判定する。
【0058】
優先順位に基づいて特定した需要家の連系点電圧の予測値が適正電圧範囲に収まる2次側電圧がある場合(ステップS108において「NO」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、次順位の需要家の特定処理を実行する(ステップS109)。具体的には、制御部21は、優先順位記憶部26において、次に高い順位評価点に関連付けられた需要家コードを特定する。
そして、自動電圧調整器20の制御部21は、特定した全需要家の連系点電圧が適正電圧範囲に収まる2次側電圧の模索処理(ステップS107)に戻る。
【0059】
一方、適正電圧範囲に収まらない連系点電圧の予測値を検知した場合(ステップS108において「YES」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲に収まらない需要家を除いて電圧調整処理を実行する(ステップS110)。具体的には、制御部21は、最後に特定した需要家を除いて、他の全連系点電圧の予測値が適正電圧範囲に収まるタップ切換数を特定する。そして、制御部21は、タップ切換器22に対して、このタップ切換数についてのタップ切換指示を行なう。
【0060】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、需要家の優先順位の更新処理を実行する(ステップS111)。具体的には、制御部21は、タップ切換において、連系点電圧の予測値が適正電圧範囲を逸脱している需要家を特定する。そして、制御部21は、連系点電圧の予測値が適正電圧範囲を逸脱している需要家を特定する。そして、制御部21は、優先順位記憶部26において、特定した需要家の需要家コードの順位評価点に「1」を加算することにより、優先順位を高める設定を行なう。なお、適正電圧範囲を逸脱している需要家の順位を上げる方法は、これに限定されるものではない。
【0061】
上記実施形態の電圧調整装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、線路情報記憶部25には、自動電圧調整器20に接続されている発電装置10までの線路管理ファイルが記録されている。そして、自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報の収集処理を実行する(ステップS101)。更に、自動電圧調整器20の制御部21は、すべての連系点電圧を適正電圧範囲に収めることができる2次側電圧の模索処理を実行する(ステップS103)。自動電圧調整器20が、各需要家の連系点電圧を取得するので、この電圧を考慮して2次側電圧を変更するタップ切換を行なうことができる。この場合、線路情報記憶部25に記録された、低圧線や引込線の線路インピーダンスを考慮するため、線路構成やインピーダンス分布に応じた連系点電圧を、より的確に予測することができ、この予測に応じてタップ切換を行なうことができる。
【0062】
(2)上記実施形態では、優先順位記憶部26には、自動電圧調整器20に接続されている各需要家について、電圧制御を行なう場合の優先順位に関する優先順位管理レコードが記憶されている。そして、自動電圧調整器20の制御部21は、優先順位の順番で特定した全需要家の連系点電圧が適正電圧範囲に収まる2次側電圧の模索処理を実行する(ステップS107)。これにより、優先順位記憶部26に記録された順位評価点に基づいて、タップ切り換えを行なうことができる。ここで、連系点電圧が適正電圧範囲に収まらなかった需要家に対しては、高い評価点が付与されるため、次回以降の電圧調整時の優先順位を高く設定することができる。従って、各需要家の連系点電圧が適正電圧範囲を逸脱する回数を平均化して、不公平を是正することができる。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した電圧調整装置の第2の実施形態を図4に従って説明する。上記第1の実施形態では、各需要家の連系点電圧に基づいて、2次側電圧の電圧調整を行なう。第2の実施形態では、第1の実施形態の計測情報(連系点電圧)に加えて、潮流量、力率を用いて、連系点電圧の予測を行なうように変更した構成である。ここで、第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。本実施形態では、監視装置11は、需要家の連系点電圧に加えて、連系点の潮流量や力率情報を収集して自動電圧調整器20へ送信する。そして、自動電圧調整器20は、線路情報記憶部25に記録された線路情報を用いて、各需要家の潮流量・力率から、連系点電圧の上昇・降下を予測する。
【0064】
ここでは、まず、自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報の収集処理を実行する(ステップS201)。具体的には、制御部21は、各需要家の監視装置11から、連系点電圧、潮流量、力率についての計測情報を収集する。そして、制御部21は、取得した情報を計測情報記憶部24に、需要家コード、受信時刻に関連付けて計測情報を記録する。
【0065】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、連系点電圧の上昇・降下の予測処理を実行する(ステップS202)。具体的には、制御部21は、取得した連系点電圧、潮流量、力率を用いて、将来の連系点電圧の予測値を算出することにより、連系点電圧の上昇又は降下を予測する。
【0066】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、予想値が適正電圧範囲内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS203)。具体的には、制御部21は、現在の連系点電圧および、算出した予測値と適正電圧範囲とを比較して、予測値が適正電圧範囲に含まれるかどうかを判定する。
【0067】
すべての予測値が適正電圧範囲に含まれる場合(ステップS203において「YES」の場合)には、自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報の収集処理(ステップS201)に戻る。
【0068】
一方、適正電圧範囲に含まれない予測値を検知した場合(ステップS203において「NO」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、ステップS103と同様に、すべての連系点電圧を適正電圧範囲に収めることができる2次側電圧の模索処理を実行する(ステップS204)。
【0069】
そして、自動電圧調整器20の制御部21は、ステップS104〜S111と同様に、すべての連系点電圧が適正電圧範囲に収まる2次側電圧があるかどうかについての判定処理(ステップS205)〜需要家の優先順位の更新処理(ステップS212)を実行する。
【0070】
上記実施形態の電圧調整装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3)上記実施形態では、自動電圧調整器20の制御部21は、連系点電圧、潮流量、力率についての計測情報の収集処理を実行する(ステップS201)。そして、自動電圧調整器20の制御部21は、連系点電圧の上昇・降下の予測処理を実行する(ステップS202)。これにより、潮流量と力率の変化による電圧上昇や降下の予測に基づいて、将来の連系点電圧の変化を予測することができる。そして、この連系点電圧の予測値を考慮して的確な電圧制御を実現することができ、適正電圧範囲の逸脱の可能性を更に低減することができる。例えば、その余力分の潮流増加による電圧上昇を予め裕度として見越した電圧制御を行なうことができる。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した電圧調整装置の第3の実施形態を図5に従って説明する。上記第2の実施形態では、各需要家の連系点電圧、潮流量、力率を用いて、連系点電圧の予測を行なう。第3の実施形態では、第2の実施形態の予測方法に加えて、太陽光発電容量及び太陽光発電出力情報を収集して、自動電圧調整器20が出力余力を評価するように変更した構成である。ここで、第3の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、自動電圧調整器20の制御部21は、インターネット等のネットワークを介して、天候情報提供サーバに接続しておく。更に、自動電圧調整器20には、需要家コードに関連づけて、各発電装置10が設置されている地域を特定するための情報を記録した需要家情報記憶部を設ける。
【0073】
更に、自動電圧調整器20には、太陽光量テーブル、天気補正テーブルを記憶させておく。太陽光量テーブルには、年月日毎に太陽光量の時間的変化を記録させておく。例えば、基準時刻(正午)の太陽光量を「1」として、各時刻の太陽光量の割合を記録しておく。
【0074】
また、天気補正テーブルには、天候情報提供サーバにおいて提供される天気情報に対応させて、太陽光量の補正値を記録しておく。例えば、基準天気(晴天)の太陽光量を「1」として、各天気(雨天や曇天等)の太陽光量の割合を記録しておく。
【0075】
そして、自動電圧調整器20の制御部21は、ステップS201、S202と同様に、計測情報の収集処理(ステップS301)、連系点電圧の上昇・降下の予測処理(ステップS302)を実行する。
【0076】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、太陽光量の予測処理を実行する(ステップS303)。具体的には、制御部21は、内蔵タイマから現在の日付及び時刻を取得する。更に、制御部21は、天候情報提供サーバにアクセスして、各発電装置10が設置されている地域の天気情報を取得する。そして、制御部21は、太陽光量テーブルを用いて、現在の日付及び時刻から所定時間内の光量の増減率を予測する。更に、制御部21は、天気情報に基づいて、天気補正テーブルから補正値を取得する。そして、制御部21は、増減率と補正値を用いて、太陽光量の変化を予測する。
【0077】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、予測値の修正処理を実行する(ステップS304)。具体的には、制御部21は、ステップS302において算出した連系点電圧の予測値を、太陽光量の変化予測に応じて修正する。
【0078】
そして、自動電圧調整器20の制御部21は、ステップS203〜S112と同様に、予想値が適正電圧範囲内かどうかについての判定処理(ステップS305)〜需要家の優先順位の更新処理(ステップS314)を実行する。
【0079】
上記実施形態の電圧調整装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(4)上記実施形態では、自動電圧調整器20の制御部21は、太陽光量の予測処理(ステップS303)、予測値の修正処理(ステップS304)を実行する。これにより、潮流量と力率の変化に加えて、太陽光量の変化を考慮して電圧上昇や降下の予測に基づいて、将来の連系点電圧の変化を予測することができる。そして、この連系点電圧の予測値を考慮して的確な電圧制御を実現することができ、適正電圧範囲の逸脱の可能性を更に低減することができる。
【0080】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した電圧調整装置の第4の実施形態を図6に従って説明する。上記第1の実施形態では、優先順位を用いて、需要家の連系点電圧が適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を調整した。第4の実施形態では、第1の実施形態の自動電圧調整器20における2次側電圧の調整に加えて、配電線の線路上に設けられた柱上変圧器を用いて電圧調整を試みるように変更した構成である。第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0081】
ここでは、自動電圧調整器20の制御部21は、ステップS101〜S105と同様に、計測情報の収集処理(ステップS401)〜電圧調整処理(ステップS405)を実行する。
【0082】
そして、適正電圧範囲に収まる2次側電圧がない場合(ステップS404において「NO」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲に収まらない需要家までの線路上の柱上変圧器の特定処理を実行する(ステップS406)。具体的には、制御部21は、線路情報記憶部25を用いて、連系点電圧が適正電圧範囲に含まれない需要家までの線路を特定する。そして、制御部21は、この線路上に設置された柱上変圧器を特定する。
【0083】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、柱上変圧器の調整処理を実行する(ステップS407)。具体的には、制御部21は、特定した柱上変圧器に対して、連系点電圧が適正電圧範囲に収まるように電圧調整を指示する。この場合、この柱上変圧器に接続された他の発電装置10の連系点電圧が適正電圧範囲を逸脱しないように指示する。
【0084】
次に、自動電圧調整器20の制御部21は、柱上変圧器により調整できたかどうかについての判定処理を実行する(ステップS408)。具体的には、制御部21は、柱上変圧器の電圧調整により、この柱上変圧器に接続されたすべての需要家の連系点電圧と適正電圧範囲とを比較することにより、適正電圧範囲内に収まったかどうかを確認する。
【0085】
柱上変圧器により調整ができた場合(ステップS408において「YES」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、計測情報の収集処理(ステップS401)に戻る。
一方、柱上変圧器により調整ができなかったと判定した場合(ステップS408において「NO」の場合)、自動電圧調整器20の制御部21は、ステップS106〜S111と同様に、優先順位の高い需要家の特定処理(ステップS409)〜需要家の優先順位の更新処理(ステップS414)を実行する。
【0086】
上記実施形態の電圧調整装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(5)上記実施形態では、自動電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲に収まらない需要家からの送電線の柱上変圧器の特定処理(ステップS406)、柱上変圧器の調整処理(ステップS407)を実行する。これにより、柱上変圧器に接続された需要家の数は、自動電圧調整器20に接続された需要家の数よりも限定されているため、限定的な領域内で、効率的に連系点電圧を調整することができる。
【0087】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態においては、電圧調整装置として自動電圧調整器20を用いたが、これに限定されるものではなく、配電線において自動電圧調整を行なう機器に適用することができる。例えば、自動電圧調整機能を有したタップ切換器付き柱上変圧器、シャントリアクトル、静止形無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)等にも適用することができる。
【0088】
・上記各実施形態では、発電装置10として太陽光発電を想定したが、発電方法はこれに限定されるものではなく、風力等の自然エネルギを利用した発電に適用することができる。
【0089】
・上記各実施形態では、発電装置10を有している需要家の連系点電圧が適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を調整する。これに加えて、発電装置10を有していない需要家の連系点電圧についても、適正電圧範囲に収まっているかどうかを確認するようにしてもよい。
【0090】
・上記第1の実施形態では、すべての連系点電圧を適正電圧範囲に収めることができる2次側電圧の模索処理を実行する(ステップS103)。これに代えて、タップ切換を行なった場合に、最も低い連系点電圧が適正電圧範囲内に収まっているかどうかを確認するようにしてもよい。この場合、制御部21は、計測情報記憶部24において、連系点電圧が最も低い需要家の需要家コードを特定する。次に、制御部21は、線路情報記憶部25を用いて、この需要家までの線路におけるインピーダンス情報を取得する。そして、制御部21は、この降圧によって最も低い連系点電圧の需要家が適正電圧範囲下限値を下回らないかどうかを確認する。
【0091】
・上記実施形態では、自動電圧調整器20の制御部21は、各需要家の監視装置11から、計測情報を収集する。需要家数が多い場合はそのデータ数も多くなり、計算も複雑になる。そこで、需要家までの線路上の配電設備から計測情報を取得するようにしてもよい。例えば、柱上変圧器が2次側の状況情報(連系点電圧の統計値)を収集し、計測情報として自動電圧調整器20に送信する。そして、自動電圧調整器20は、柱上変圧器の2次側電圧が適正電圧範囲内に収まるようにタップ切換を行なう。
【符号の説明】
【0092】
10…発電装置、11…監視装置、20…自動電圧調整器、21…制御部、22…タップ切換器、23…通信部、24…計測情報記憶部、25…線路情報記憶部、26…優先順位記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線の線路情報を記憶し、各需要家の発電設備に接続された電圧調整装置であって、
前記電圧調整装置が、
前記配電線に接続された各需要家の発電設備毎に、連系点電圧についての計測情報を収集する手段と、
前記計測情報及び線路情報に基づいて、各需要家の連系点電圧が、予め定められた適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を計算する手段と、
前記計算した2次側電圧に基づいて出力電圧を調整する手段と
を備えたことを特徴とする電圧調整装置。
【請求項2】
需要家毎に優先順位を特定するための情報を記録した優先順位情報を更に記憶し、
各需要家の連系点電圧が、前記適正電圧範囲内に収まらない場合には、前記優先順位情報を用いて、各需要家の優先順位を特定し、優先順位が高い需要家の連系点電圧が、前記適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を計算することを特徴とする請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
連系点電圧が前記適正電圧範囲内に収まらなかった需要家については、優先順位を高めるように優先順位情報を更新することを特徴とする請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
各需要家の発電設備毎に、逆潮流量及び力率についての計測情報を更に収集し、
前記需要家までの線路情報及び前記計測情報を用いて、各需要家における連系点電圧の変化予測を行ない、
前記変化予測に基づいて2次側電圧を計算することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電圧調整装置。
【請求項5】
前記発電設備は、自然エネルギを利用して発電する設備であり、
前記自然エネルギの変化予測を行ない、前記変化予測に基づいて連系点電圧の変化予測を行ない、前記変化予測に基づいて2次側電圧を計算することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の電圧調整装置。
【請求項6】
前記計測情報において、前記適正電圧範囲内に収まらない連系点電圧を検知した場合、前記線路情報に基づいて、需要家までの中継地点に設置された変圧器を特定し、
前記変圧器に対して、各需要家の連系点電圧が前記電圧範囲内に収まるように、電圧調整指示を送信し、
前記電圧調整指示によっても前記適正電圧範囲内に収まらない場合に、前記出力電圧を調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の電圧調整装置。
【請求項7】
発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線の線路情報を記憶し、各需要家の発電設備に接続された電圧調整装置を用いて、前記電圧調整装置の出力電圧を調整する方法であって、
前記電圧調整装置が、
前記配電線に接続された各需要家の発電設備毎に、連系点電圧についての計測情報を収集する段階と、
前記計測情報及び線路情報に基づいて、各需要家の連系点電圧が、予め定められた適正電圧範囲内に収まるように2次側電圧を計算する段階と、
前記計算した2次側電圧に基づいて出力電圧を調整する段階と
を実行することを特徴とする電圧調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78236(P2013−78236A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217946(P2011−217946)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】