説明

電圧調整装置及び電圧調整方法

【課題】発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線において、電力損失を低減するとともに、系統安定性を確保するための電圧調整装置及び電圧調整方法を提供する。
【解決手段】電圧調整器20の制御部21は、2次側電圧の測定処理を実行する。2次側電圧が適正電圧範囲内と判定した場合、制御部21は、1タップ昇圧した場合の電圧予測値の算出処理を実行する。電圧予測値が適正電圧範囲の上限電圧を超えると判定した場合、制御部21は、現在のタップ数を維持したまま、2次側電圧の測定処理に戻る。電圧予測値が適正上限電圧を超えないと判定した場合や、適正上限電圧を超えていないと判定した場合、制御部21は、適正上限電圧を超えるまでタップ切換により昇圧する。そして、適正上限電圧を超えた場合、タップを一段下げる処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧調整装置及び電圧調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、需要家において、太陽光発電設備などの自家発電設備が多く設置されるとともに、自家発電設備が分散電源として配電系統と連系するようになってきている。このような配電系統においては、図6に示すように、SVR(Step Voltage Regulator)等からなる自動電圧調整器10の2次側において、柱上変圧器等の電圧調整器を介して、各需要家の発電装置30が接続されている。また、発電装置30のパワーコンディショナには、出力制限機能が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。そして、柱上変圧器の2次側の連系点電圧が出力制限電圧を超えた場合には、系統側への発電出力の抑制を行なうようになっている。このため、柱上変圧器の2次側電圧が高い場合、太陽光発電の売電を妨げてしまう。
【0003】
また、タップ切換器付き柱上変圧器が用いられることもある(例えば、特許文献2参照。)。このような柱上変圧器のタップ切換を自動で行なうことにより、2次側電圧を、常時パワーコンディショナの出力制限電圧未満となるように電圧調整を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−319946号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開平10−234182号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、太陽光発電の通常状態においては、パワーコンディショナの出力抑制が動作しないように、出力制限電圧(適正電圧範囲の上限値)よりも連系点電圧を低く調整する必要がある。このタップ切換器付き柱上変圧器の自動電圧制御は「90リレー」と呼ばれる電圧調整継電器を用いて行なわれているが、図7に示すように、2次側電圧が設定した適正電圧範囲内に入った時点で制御を停止する。従って、適正電圧範囲より高い電圧から降圧してきて適正電圧範囲に入った場合は、適正電圧範囲内の最大電圧でタップ調整される。しかしながら、適正電圧範囲より低い電圧から昇圧してきた場合には、適正電圧範囲内に調整できる最小電圧タップに調整されてしまう。
【0006】
このように、適正電圧範囲内のどのあたりで電圧調整するかについての微調整までは制御されていない。ここで、連系点電圧が低いほど太陽光発電の出力容量に対する出力電流は大きくなることから、線路や柱上変圧器のインピーダンスによる損失やパワーコンディショナのインバータ損失が大きくなり、発電電力を効率的に活用することができない。
【0007】
また、パワーコンディショナにおいて過大出力がある場合、系統への逆潮流が大きくなるため、線路や柱上変圧器のインピーダンスによって連系点電圧が上昇する。この場合、タップ切換器付き柱上変圧器は、連系点電圧が出力制限電圧を超えないようにタップを切り換えて降圧する方向に制御を行なう。このため、太陽光発電に過大出力が生じている状況下においても、パワーコンディショナにおいて出力制限されない方向に制御するため、系統安定性が損なわれる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線において、電力損失を低減するとともに、系統安定性を確保するための電圧調整装置及び電圧調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、配電設備に接続された1次側と、パワーコンディショナを備えた分散型発電設備に接続される2次側とが設けられた変圧手段と、前記変圧手段の2次側電圧を多段階のタップ位置で変更するタップ切換手段と、前記2次側電圧を測定するセンサと、前記タップ切換手段と前記センサに接続された制御手段とを備えた電圧調整装置であって、前記制御手段が、分散型発電設備の出力が規定範囲内であり、かつ電力系統に異常を検知しない場合、前記タップ切換手段において、前記2次側に接続された分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以下であって、最も高い2次側電圧となるような最大タップ位置に切り換える第1制御を行なうことを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電圧調整装置において、前記制御手段が異常検知信号を取得した場合には、前記タップ切換手段において、2次側電圧が分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以上となるようなタップ位置に切り換える第2制御を行なうことを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電圧調整装置において、前記制御手段が、2次側に接続された分散型発電設備において過大出力を検知したことによる異常検知信号を取得した場合に、前記第2制御を行なうことを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の電圧調整装置において、前記制御手段は、電力系統の安定状態を監視する電力系統監視装置に接続されており、前記制御手段が、前記電力系統監視装置において電力系統に異常を検知したことによる異常検知信号を取得した場合に、前記第2制御を行なうことを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、配電設備に接続された1次側と、パワーコンディショナを備えた分散型発電設備に接続される2次側とが設けられた変圧手段と、前記変圧手段の2次側電圧を多段階のタップ位置で変更するタップ切換手段と、前記2次側電圧を測定するセンサと、前記タップ切換手段と前記センサに接続された制御手段とを備えた電圧調整装置を用いて、電圧を調整する方法であって、前記制御手段が、分散型発電設備の出力が規定範囲内であり、かつ電力系統に異常を検知しない場合、前記タップ切換手段において、前記2次側に接続された分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以下であって、最も高い2次側電圧となるような最大タップ位置に切り換える第1制御を行なうことを要旨とする。
【0014】
(作用)
請求項1又は5に記載の発明によれば、タップ切換手段において、2次側に接続された分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以下であって、最も高い2次側電圧となるような最大タップ位置に設定される。連系点電圧が低いほど分散型発電設備の出力容量に対する出力電流は大きくなることから、線路や柱上変圧器等のインピーダンスによる損失やパワーコンディショナのインバータ損失が大きくなる。従って、出力制限がかからない範囲内のできるだけ高い電圧に2次側電圧を調整することにより、電力損失を低減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段が異常検知信号を取得した場合には、2次側電圧が分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以上となるようなタップ位置に切り換えられる。これにより、系統安定性が損なわれる可能性があるような状態においてはパワーコンディショナの出力を抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段が、2次側に接続された分散型発電設備において過大出力を検知した場合、パワーコンディショナの出力を抑制するための制御を行なう。これにより、分散型発電設備の出力過大等による系統安定性が損なわれる状態を抑止することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、制御手段が、力系統監視装置において電力系統に異常を検知したことによる異常検知信号を取得した場合、パワーコンディショナの出力を抑制するための制御を行なう。これにより、電力系統監視装置にける指示に応じて、系統安定性が損なわれる状態を抑止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、発電設備を有する複数の需要家と連系する配電線において、電力損失を低減するとともに、系統安定性を確保するための電圧調整装置及び電圧調整方法を提供することができる。そして、省エネルギに貢献するとともに、系統安定性の確保や保安に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態のシステム概略図。
【図2】本発明の実施形態の電圧変化の説明図。
【図3】本発明の第1の実施形態の処理手順の説明図。
【図4】本発明の第2の実施形態の処理手順の説明図。
【図5】本発明の第3の実施形態の処理手順の説明図。
【図6】複数の需要家の発電装置に接続された送配電線の線路の説明図。
【図7】従来の電圧変化の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した電圧調整装置及び電圧調整方法の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。本実施形態では、図1に示すように、自動電圧調整器10から各需要家の発電装置30までの線路に設けられた電圧調整器20を用いて、出力電圧を調整する。
【0021】
自動電圧調整器10は、発電所からの1次側電圧を、需要家に供給する2次側電圧に変換する。本実施形態では、自動電圧調整器10には、SVRを用いる。
発電装置30は、各需要家に設置された分散型発電設備である。本実施形態では、自然エネルギとして太陽光を利用した発電設備を用いる。この発電装置30には、パワーコンディショナが接続されている。このパワーコンディショナは、連系点電圧が適正電圧範囲内にある場合には、発電出力を配電線に供給するとともに、連系点電圧が適正電圧範囲の上限値を超えると発電出力を抑制する。
【0022】
電圧調整器20は、自動電圧調整器10から供給された1次側電圧を、各需要家の発電装置30のパワーコンディショナに接続させるための2次側電圧に変換する。本実施形態では、電圧調整器20には、タップ切換器付き柱上変圧器を用いる。この電圧調整器20は、図1に示すように、制御部21、電圧センサ22、変圧器23、タップ切換器24を備えている。
【0023】
制御部21は、各需要家の発電装置30に接続された配電線に供給する2次側電圧を調整する。この制御部21は、制御手段としてのCPU、RAM及びROM等を有し、後述する処理(適正電圧範囲判定段階、上限電圧判定段階、切換段階等の各処理)を行なう。このための電圧制御プログラムを実行することにより、制御部21は、適正電圧範囲判定手段、上限電圧判定手段、切換指示手段等として機能する。
【0024】
適正電圧範囲判定手段は、2次側電圧が、適正電圧範囲内に収まっているかどうかを判定する処理を実行する。
上限電圧判定手段は、2次側電圧が適正電圧範囲の上限値に近いところに到達しているかどうかを判定する処理を実行する。この上限電圧判定手段は、2次側電圧が適正電圧範囲の上限値に近いかどうかを判定するために、一タップ分の昇圧を行なった場合の電圧上昇値を昇圧基準値として保持している。
切換指示手段は、適正電圧範囲判定手段や上限電圧判定手段の判定結果に応じて、タップ切換器24を制御する処理を実行する。
【0025】
電圧センサ22は、電圧調整器20の2次側電圧を測定し、制御部21に測定結果を提供する処理を実行する。
【0026】
変圧器23は、1次側電圧を2次側電圧に変換する変圧手段である。
タップ切換器24は、1次側電圧を2次側電圧に変換する変圧器のタップを多段階で切り換えるタップ切換手段である。このタップ切換により、タップ数に応じた2次側電圧に変更される。
【0027】
次に、上述した電圧調整器20を用いて、2次側電圧を調整する処理について図3を用いて説明する。
まず、電圧調整器20の制御部21は、2次側電圧の測定処理を実行する(ステップS101)。具体的には、制御部21は、電圧センサ22において計測した2次側電圧を取得する。
【0028】
次に、電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS102)。具体的には、制御部21は、電圧センサ22から取得した2次側電圧と、予め登録された適正電圧範囲とを比較して、2次側電圧が適正電圧範囲に含まれるかどうかを判定する。
【0029】
2次側電圧が適正電圧範囲内と判定した場合(ステップS102において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、1タップ昇圧した場合の電圧予測値の算出処理を実行する(ステップS103)。具体的には、制御部21は、現在の2次側電圧に昇圧基準値を加算して、電圧予測値を算出する。
【0030】
次に、電圧調整器20の制御部21は、電圧予測値が適正上限電圧を超えるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS104)。具体的には、制御部21は、算出した電圧予測値と、予め登録された適正電圧範囲とを比較して、2次側電圧が適正電圧範囲に含まれるかどうかを判定する。
【0031】
電圧予測値が適正電圧範囲の上限電圧を超えると判定した場合(ステップS104において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、現在のタップ数を維持したまま、2次側電圧の測定処理(ステップS101)に戻る。
【0032】
一方、2次側電圧が適正電圧範囲外と判定した場合(ステップS102において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、適正上限電圧を超えているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS105)。具体的には、制御部21は、2次側電圧が、適正電圧範囲の上限電圧より高い場合には適正上限電圧を超えていることになる。一方、2次側電圧が、適正電圧範囲の下限電圧より低い場合には適正上限電圧を超えていないことになる。
【0033】
ここで、適正上限電圧を超えていると判定した場合(ステップS105において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップ切換により降圧処理を実行する(ステップS106)。具体的には、制御部21は、タップ切換器24に対して、2次側電圧を下げる方向にタップ切換を指示する。この場合、タップ切換器24は、図2の左図に示すように、電圧を下げる方向で、一段階のタップ位置の切換を行なう。そして、電圧調整器20の制御部21は、2次側電圧の測定処理(ステップS101)に戻る。
【0034】
電圧予測値が適正上限電圧を超えないと判定した場合(ステップS104において「NO」の場合)や、適正上限電圧を超えていないと判定した場合(ステップS105において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップ切換により昇圧処理を実行する(ステップS107)。具体的には、制御部21は、タップ切換器24に対して、2次側電圧を上げる方向にタップ切換を指示する。この場合、タップ切換器24は、電圧を上げる方向で、一段階のタップ位置の切換を行なう。
【0035】
次に、電圧調整器20の制御部21は、適正上限電圧を超えたかどうかについての判定処理を実行する(ステップS108)。具体的には、制御部21は、電圧センサ22から、タップ切換後の2次側電圧を取得し、適正上限電圧と比較して、2次側電圧が適正電圧範囲に含まれるかどうかを判定する。
【0036】
適正上限電圧を超えていないと判定した場合(ステップS108において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップ切換により昇圧処理(ステップS107)を繰り返す。この場合、図2の右図に示すように、多段階(ここでは3段階)で昇圧される。
【0037】
一方、適正上限電圧を超えたと判定した場合(ステップS108において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップを一段下げる処理を実行する(ステップS109)。具体的には、制御部21は、タップ切換器24に対して、2次側電圧を下げる方向にタップ切換を指示する。この場合、タップ切換器24は、図2の右図の最終段階に示すように、電圧を下げる方向で、一段階のタップ位置の切換を行なう。そして、電圧調整器20の制御部21は、2次側電圧の測定処理(ステップS101)に戻る。
【0038】
上記実施形態の電圧調整装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、電圧予測値が適正上限電圧を超えないと判定した場合(ステップS104において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップ切換により昇圧処理を実行する(ステップS107)。そして、適正上限電圧を超えていないと判定した場合(ステップS108において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップ切換により昇圧処理(ステップS107)を繰り返す。そして、適正上限電圧を超えたと判定した場合(ステップS108において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップを一段下げる処理を実行する(ステップS109)。これにより、2次側電圧を適正電圧範囲内の上限値近くで維持することができる。従って、パワーコンディショナの出力抑制機能が働かない範囲内のできるだけ高い電圧で太陽光発電を連系できるので、線路や変圧器インピーダンスによる損失やパワーコンディショナのインバータ損失を低減でき、効率的な運転を行なうことができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、2次側電圧が適正電圧範囲内と判定した場合(ステップS102において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、1タップ昇圧した場合の電圧予測値の算出処理を実行する(ステップS103)。電圧予測値が適正上限電圧を超えると判定した場合(ステップS104において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、2次側電圧の測定処理(ステップS101)に戻る。これにより、不必要なタップ切換を抑制し、2次側電圧の安定性を確保することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した電圧調整装置の第2の実施形態を図4に従って説明する。上記第1の実施形態では、適正上限電圧を超えていないと判定した場合(ステップS108において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、タップ切換により昇圧処理(ステップS107)を繰り返す。第2の実施形態では、第1の実施形態のタップ切換時に、計算でタップ切換量を算出するように変更した構成である。第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0041】
以下、2次側電圧を調整する処理について図4を用いて説明する。
ここでは、電圧調整器20の制御部21は、ステップS101〜S104と同様に、2次側電圧の測定処理(ステップS201)〜電圧予測値が適正上限電圧を超えるかどうかについての判定処理(ステップS204)を実行する。
【0042】
2次側電圧が適正電圧範囲外と判定した場合(ステップS202において「NO」の場合)や、電圧予測値が適正上限電圧を超えないと判定した場合(ステップS204において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲内であって最高電圧のタップ数の算出処理を実行する(ステップS205)。具体的には、制御部21は、現在の2次側電圧と現在のタップ位置とを用いて、タップを一段切り換えた場合の電圧変化量を算出する。そして、制御部21は、現在の2次側電圧に対して電圧変化量を加減算して、適正電圧の上限値を越えない範囲で最も高い2次側電圧を特定する。ここで、適正上限電圧を超えている場合には電圧変化量の減算、適正下限電圧より低い場合には電圧変化量の加算を行なう。そして、制御部21は、この2次側電圧を出力するタップ切換数を算出する。
【0043】
次に、電圧調整器20の制御部21は、タップ切換処理を実行する(ステップS206)。具体的には、制御部21は、タップ切換器24に対して、算出したタップ切換数とタップ切換方向を指示する。この場合、タップ切換器24は、指示されたタップ切換方向で、タップ切換数のタップ位置の切換を行なう。
【0044】
上記実施形態の電圧調整装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3)上記実施形態では、2次側電圧が適正電圧範囲外と判定した場合(ステップS202において「NO」の場合)や、電圧予測値が適正上限電圧を超えないと判定した場合(ステップS204において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、適正電圧範囲内であって最高電圧のタップ数の算出処理を実行する(ステップS205)。これにより、現在の2次側電圧とタップ位置からタップ切換を行なった場合の2次側電圧を予測できるので、実際にタップを動かすことなく、速やかに目標のタップ位置に切り換えることができる。そして、2次側電圧が適正電圧範囲から逸脱することを抑制できる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した電圧調整装置の第3の実施形態を図5に従って説明する。上記第1の実施形態では、測定した2次側電圧に基づいて、タップ切換の要否を判定する。第3の実施形態では、第1の実施形態のタップ切換の要否判定に加えて、配電状態に基づいて、タップ切換の要否を判定するように変更した構成である。第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0046】
この場合、電圧調整器20に、通信ネットワークに接続された通信部を設け、通信ネットワークを介して、電圧調整器20の2次側が接続されている発電装置30に接続する。そして、電圧調整器20は、通信ネットワークを介して、発電装置30から、逆潮流についての出力状況情報を取得する。また、電圧調整器20が、発電装置30からの逆潮流を監視するようにしてもよい。そして、規定値以上の逆潮流が流れた場合に系統安定性が損なわれると判定する。更に、電圧調整器20を、通信ネットワークを介して、系統状態を監視している電力事業者の監視システム(電力系統監視装置)に接続するようにしてもよい。そして、電圧調整器20は、監視システムから系統判定性情報を取得する。そして、電圧調整器20は、出力状況情報や系統判定性情報に基づいて、異常の有無を判定するためのパターンを記憶している。
【0047】
以下、2次側電圧を調整する処理について図5を用いて説明する。
ここでは、電圧調整器20の制御部21は、状態情報の取得処理を実行する(ステップS301)。具体的には、制御部21は、ネットワークを介して、発電装置30から出力状況情報を取得する。また、電圧調整器20が、発電装置30からの逆潮流を監視するようにしてもよい。更に、制御部21は、ネットワークを介して、監視システムから系統判定性情報を取得する。そして、出力状況情報や系統判定性情報に基づいて、配電状況の状態情報を取得する。
【0048】
次に、電圧調整器20の制御部21は、異常があるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS302)。具体的には、制御部21は、状態情報に基づいて、発電装置30において過大出力を検知した場合に異常ありと判定する。また、監視システムから取得した系統判定性情報に基づいて、系統安定性が損なわれる可能性を検知した場合に異常ありと判定する。
【0049】
異常があると判定した場合(ステップS302において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、電力系統状態の安定化を図るタップ切換処理を実行する(ステップS303)。具体的には、制御部21は、タップ切換器24に対して、1タップ上げるタップ切換を指示する。この場合、タップ切換器24は、電圧を上げる方向で、一段階のタップ位置の切換を行なう。そして、制御部21は、状態情報の取得処理(ステップS301)に戻る。
【0050】
一方、異常がないと判定した場合(ステップS302において「NO」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、ステップS101〜S109と同様に、電圧調整器20の制御部21は、2次側電圧の測定処理(ステップS304)〜タップを一段下げる処理(ステップS312)を実行する。なお、電圧予測値が適正上限電圧を超えると判定した場合(ステップS307において「YES」の場合)や、タップを一段下げる処理(ステップS309)を実行した場合、電圧調整器20の制御部21は、状態情報の取得処理(ステップS301)に戻る。
【0051】
上記実施形態の電圧調整装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(4)上記実施形態では、電圧調整器20の制御部21は、状態情報の取得処理を実行する(ステップS301)。そして、異常があると判定した場合(ステップS302において「YES」の場合)、電圧調整器20の制御部21は、電力系統状態の安定化を図るタップ切換処理を実行する(ステップS303)。タップ位置は適正電圧範囲内において、最も2次側電圧が高い位置に設定されているため、1段のタップ切換により、適正電圧範囲の上限値を超えることになる。これにより、系統安定性が損なわれる可能性があると判定した場合には、2次側電圧をパワーコンディショナの出力制限電圧以上となるまで速やかに昇圧するタップ切換を行なうことができる。従って、タップ切換により、パワーコンディショナによる出力制限を動作させて、系統の安定性維持を図ることができる。
【0052】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態においては、電圧調整装置として柱上変圧器を用いるが、これに限定されるものではなく、配電線において自動電圧調整を行なう機器に適用することができる。例えば、高圧配電用SVR、シャントリアクトル、静止形無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)において、自動電圧調整機能を設け、柱上変圧器に対してタップ切換を指示するようにしてもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、発電装置30として太陽光発電を想定したが、分散型発電設備はこれに限定されるものではなく、風力等の自然エネルギを利用した分散型発電設備に適用することができる。
【0054】
・上記第3の実施形態では、第1の実施形態に加えて、状態情報の取得処理(ステップS301)〜電力系統状態の安定化を図るタップ切換処理(ステップS303)を実行する。これに代えて、第2の実施形態に加えて、ステップS301〜S303の各処理を実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…自動電圧調整器、20…電圧調整器、21…制御部、22…電圧センサ、23…変圧器、24…タップ切換器、30…発電装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電設備に接続された1次側と、パワーコンディショナを備えた分散型発電設備に接続される2次側とが設けられた変圧手段と、
前記変圧手段の2次側電圧を多段階のタップ位置で変更するタップ切換手段と、
前記2次側電圧を測定するセンサと、
前記タップ切換手段と前記センサに接続された制御手段とを備えた電圧調整装置であって、
前記制御手段が、分散型発電設備の出力が規定範囲内であり、かつ電力系統に異常を検知しない場合、前記タップ切換手段において、前記2次側に接続された分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以下であって、最も高い2次側電圧となるような最大タップ位置に切り換える第1制御を行なうことを特徴とする電圧調整装置。
【請求項2】
前記制御手段が異常検知信号を取得した場合には、前記タップ切換手段において、2次側電圧が分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以上となるようなタップ位置に切り換える第2制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記制御手段が、2次側に接続された分散型発電設備において過大出力を検知したことによる異常検知信号を取得した場合に、前記第2制御を行なうことを特徴とする請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記制御手段は、電力系統の安定状態を監視する電力系統監視装置に接続されており、
前記制御手段が、前記電力系統監視装置において電力系統に異常を検知したことによる異常検知信号を取得した場合に、前記第2制御を行なうことを特徴とする請求項2又は3に記載の電圧調整装置。
【請求項5】
配電設備に接続された1次側と、パワーコンディショナを備えた分散型発電設備に接続される2次側とが設けられた変圧手段と、
前記変圧手段の2次側電圧を多段階のタップ位置で変更するタップ切換手段と、
前記2次側電圧を測定するセンサと、
前記タップ切換手段と前記センサに接続された制御手段とを備えた電圧調整装置を用いて、電圧を調整する方法であって、
前記制御手段が、分散型発電設備の出力が規定範囲内であり、かつ電力系統に異常を検知しない場合、前記タップ切換手段において、前記2次側に接続された分散型発電設備のパワーコンディショナの出力制限電圧以下であって、最も高い2次側電圧となるような最大タップ位置に切り換える第1制御を行なうことを特徴とする電圧調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78237(P2013−78237A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217947(P2011−217947)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】