説明

電子ピアノの鍵スイッチ

【課題】 鍵スイッチが3接点タイプの場合でも、各接点を確実に接触させ、その接触状態を保持でき、安定したスイッチング動作を確保し、押鍵情報をより精度良く検出できる電子ピアノの鍵スイッチを提供する。
【解決手段】 本発明による電子ピアノの鍵スイッチ7は、鍵2またはハンマー5の一方である回動体の長さ方向に沿って第1〜第3固定接点CS1〜CS3が並設されたスイッチ基板29と、スイッチ基板29に取り付けられた弾性のスイッチ本体30と、スイッチ本体30に並設され、回動体でスイッチ本体30が押圧されるのに伴い、第1〜第3固定接点CS1〜CS3に順次、接触し、押鍵情報を表す信号を出力する第1〜第3可動接点CM1〜CM3と、スイッチ本体30に設けられ、回動体が当接するとともに、当該当接点が、回動体の回動の途中で、回動体の長さ方向に移動するように構成された被押圧用突起51A、51Bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵または鍵の押鍵に伴って回動するハンマーの動きを、押鍵情報として検出する電子ピアノの鍵スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、この種の電子ピアノの鍵スイッチを、例えば特許文献1においてすでに提案している。この鍵スイッチは、ハンマーの長さ方向に沿って第1および第2固定接点が並設されたスイッチ基板と、このスイッチ基板に、ハンマーに対向するように取り付けられた、柔らかい弾性材から成るスイッチ本体と、このスイッチ本体に、第1および第2固定接点にそれぞれ対向するように並設された第1および第2可動接点を備えている。第1可動接点と第1固定接点との間の間隔は、第2可動接点と第2固定接点との間の間隔よりも狭く設定されている。また、スイッチ本体の表面には、ハンマーの長さ方向と直交する方向に延びる単一の被押圧用突起が設けられている。
【0003】
この鍵スイッチによれば、鍵の押鍵に連動してハンマーが回動すると、ハンマーがスイッチ本体の被押圧用突起に接触し、被押圧用突起を介してスイッチ本体を押圧することによって、スイッチ本体が圧縮され、変形する。このスイッチ本体の変形により、互いの間隔がより短い第1可動接点が第1固定接点にまず接触し、第1ON信号が出力される。その後、ハンマーがさらに回動すると、スイッチ本体が、第1固定接点に接触した第1可動接点を中心として回動することによって、第2可動接点が第2固定接点に接触し、第2ON信号が出力される。
【0004】
上記の第1および第2ON信号は、発音制御装置に順次、出力される。発音制御装置は、第1および第2ON信号の有無に基づいて鍵の押鍵の有無およびキーナンバーを判定し、ON時間差に基づいて押鍵速度を決定し、それらの結果に応じて電子ピアノの発音を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−44361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の鍵スイッチによれば、第1および第2可動/固定接点を有する2接点タイプの場合に、両可動接点を対応する固定接点に確実に接触させ、安定したスイッチング動作を得ることができる。これに対し、最近の電子ピアノの鍵スイッチとして、アコースティックピアノにより近いピアノ音を実現すべく、より詳細な押鍵情報を得るために、第1〜第3可動/固定接点を有する3接点タイプのものも用いられるようになっている。しかし、3接点タイプの鍵スイッチに上記の従来技術を適用した場合には、以下の理由から、安定したスイッチング動作を確保できないおそれがあり、この点において改善の余地がある。
【0007】
鍵スイッチが3接点タイプの場合には、2接点の場合と比較し、ハンマーの長さ方向における可動接点の配置長さ(第1可動接点から第3可動接点までの距離)が大きくなる。このため、従来技術のように、単一の被押圧突起を介してスイッチ本体を押圧し、第1固定接点に接触した第1可動接点を中心として、スイッチ本体を回動させても、第1可動接点から遠い位置に配置された第3可動接点と第3固定接点との接触圧が不足することで、第3可動接点をしっかりと接触させることができず、動作不良が生じるおそれがある。
【0008】
このような不具合を解消するために、例えば、被押圧突起を第3可動接点により近い位置に配置することも考えられるが、その場合には、先に接触した第1可動接点が、ハンマーの回動の途中で、第1固定接点から浮きがちになり、接触状態を保ちにくくなるため、やはり動作不良が生じるおそれがある。さらに、以上のような接点の接触不良を回避するために、第1〜第3可動/固定接点をハンマーの長さ方向に互いにより近づけて密に配置することも考えられるが、その場合には、接点間のON時間差が短くなることで、ハンマーの動きの検出精度が低下してしまう。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、鍵スイッチが3接点タイプの場合でも、回動体の回動中、各接点を確実に接触させ、その接触状態を保持でき、それにより、安定したスイッチング動作を確保し、押鍵情報をより精度良く検出することができる電子ピアノの鍵スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、鍵および鍵の押鍵に伴って回動するハンマーの一方である回動体の動きを、押鍵情報として検出する電子ピアノの鍵スイッチであって、回動体の長さ方向に沿って第1、第2および第3固定接点が並設された基板と、基板に取り付けられ、鍵の離鍵状態において、回動体に対向する弾性のスイッチ本体と、スイッチ本体に、第1、第2および第3固定接点にそれぞれ対向するように並設され、押鍵時に回動する回動体でスイッチ本体が押圧されるのに伴い、第1、第2および第3固定接点に順次、接触することによって、押鍵情報を表す信号を出力するための第1、第2および第3可動接点と、スイッチ本体に設けられ、回動する回動体が当接するとともに、当該当接点が、回動体の回動の途中で、回動体の長さ方向に移動するように構成された被押圧用突起と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この電子ピアノの鍵スイッチによれば、鍵が押鍵されるのに伴い、回動体(鍵またはハンマー)が回動すると、回動体が被押圧用突起に当接することによって、弾性のスイッチ本体が押圧され、圧縮変形する。このスイッチ本体の圧縮変形により、まず第1可動接点が第1固定接点に接触し、次に第2可動接点が第2固定接点に接触し、最後に第3可動接点が第3固定接点に接触することによって、押鍵情報を表す信号がそれぞれ出力される。また、この回動体の回動の途中で、被押圧用突起における回動体の当接点が、回動体の長さ方向に移動する。
【0012】
以上のように、本発明の鍵スイッチによれば、鍵の押鍵に伴って回動する回動体が被押圧用突起に当接し、この被押圧用突起を介してスイッチ本体を押圧するとともに、回動体の回動の途中で、押圧用突起における回動体の当接点が回動体の長さ方向に移動する。したがって、ハンマーの当接点が不動である従来の場合と異なり、回動体によるスイッチ本体の押圧を、当接点を移動させながら、効果的に行うことができる。その結果、鍵スイッチが3接点タイプの場合でも、回動体の回動中、第1〜第3可動接点を第1〜第3固定接点に確実に接触させ、その接触状態を保持でき、それにより、安定したスイッチング動作を確保し、押鍵情報をより精度良く検出することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子ピアノの鍵スイッチにおいて、被押圧用突起は、回動体の長さ方向に並設された複数の突起で構成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、回動体の回動の途中で、被押圧突起における回動体の当接点が、1つの突起から他の突起に切り替わり、回動体の長さ方向に段階的に移動することによって、前述した請求項1による作用を得ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の電子ピアノの鍵スイッチにおいて、被押圧用突起は、回動体の長さ方向に連続的に延びていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、回動体の回動が進むにつれて、回動体で被突起用突起を圧縮しながら、回動体の当接点が、回動体の長さ方向に無段階に移動することによって、前述した請求項1による作用を得ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子ピアノの鍵スイッチにおいて、被押圧用突起は、スイッチ本体の第2可動接点の付近に配置されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1〜第3可動接点のうちの中央の第2可動接点の付近に配置された被押圧用突起を介して、回動体がスイッチ本体を押圧するので、この押圧により、スイッチ本体を前後方向にバランス良く変形させることができ、したがって、鍵スイッチのスイッチング動作の安定性をさらに高めることができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子ピアノの鍵スイッチにおいて、スイッチ本体の、第1可動接点に対して第3可動接点と反対側の位置に設けられ、基板に対向する支持突起をさらに備え、支持突起は、スイッチ本体が回動体で押圧されるのに伴い、基板に当接し、当該当接点を支点としてスイッチ本体を回動させるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、スイッチ本体が回動体で押圧されるのに伴い、スイッチ本体に上記のように配置された支持突起が、基板に当接し、この当接点を支点としてスイッチ本体を回動させる。これにより、スイッチ本体の変形がアシストされ、スイッチ本体が円滑に変形するので、回動体の当接点が移動することと相まって、鍵スイッチのスイッチング動作の安定性をより一層、高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した電子ピアノの鍵盤装置を、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
【図2】鍵スイッチのスイッチ本体を示す側面図である。
【図3】複数のスイッチ本体を一体成形したスイッチ本体ユニットを斜め上方から示す斜視図である。
【図4】図3のスイッチ本体ユニットを斜め下方から示す斜視図である。
【図5】スイッチ本体をスイッチ基板に取り付けた状態を示す側面図である。
【図6】スイッチ基板における固定接点の配置を示す平面図である。
【図7】変形例によるスイッチ本体を示す、図3と同様の斜視図である。
【図8】図7のスイッチ本体をスイッチ基板に取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を、離鍵状態において示している。
【0023】
同図に示すように、鍵盤装置1は、電子ピアノの左右方向(図1の表裏方向)に並んだ多数の鍵2(白鍵2aおよび黒鍵2bを各1つのみ図示)と、これらの鍵2を支持する鍵盤シャーシ3と、この鍵盤シャーシ3の後端部(図1の右端部)に連結されたハンマーサポート4と、鍵2ごとに設けられ、押鍵された鍵2に連動して回動する多数のハンマー5(1つのみ図示)と、ハンマー5ごとに設けられ、鍵2の押鍵時にレットオフ感を付与するための多数のレットオフ部品6(1つのみ図示)と、鍵2の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ7などで構成されている。
【0024】
鍵盤シャーシ3は、左右方向に延びる前レール9a、中レール9bおよび後レール9cから成る3本の支持レール9と、前後方向に延びる5本の補強用のリブ10とを、井桁状に組み立てたものであり、棚板(図示せず)上に固定されている。これらの支持レール9およびリブ10はいずれも、プレスによる打抜きおよび折曲げ加工によって所定の形状に形成された鉄板で構成されている。支持レール9の板厚は、その軽量化のためにより薄く(例えば1.0mm)、リブ10の板厚は、補強のためにより厚く(例えば1.6mm)設定されている。
【0025】
前レール9aの下面および中レール9bの上面にはそれぞれ、筬前11および筬中12が固定されている。筬前11および筬中12は、合成樹脂から成る肉厚の板状のものであり、前レール9aおよび中レール9bの全体にわたって左右方向に延びている。筬中12には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のバランスピン13が、左右方向に並んだ状態で立設されている。また、筬前11には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のフロントピン14が、左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0026】
鍵2は、前後方向に延びるとともに矩形状の横断面を有する木製の鍵本体15と、その前部の上面および前面に接着された合成樹脂製の鍵カバー16で構成されている。鍵本体15の中心よりも後ろ側には、バランスピン孔17が形成されており、鍵2は、このバランスピン孔17を介して、バランスピン13に揺動自在に支持されている。また、鍵本体15の前端部には、フロントピン孔18が形成されており、このフロントピン孔18がフロントピン14に係合することによって、鍵2が回動する際の左右方向のぶれが防止される。
【0027】
ハンマーサポート4は、合成樹脂で構成され、例えば1オクターブ分の複数の成形品を互いに連結したものであり、すべてのハンマー5にわたるように左右方向に延びており、鍵盤シャーシ3の後レール9cにねじ止めされている。ハンマーサポート4は、この後レール9c付近から直立するハンマー支持部19と、その上端部から前方に斜め上がりに延びるスイッチ取付部20などで構成されている。ハンマー支持部19の上端部には、各ハンマー5を支持するための水平なピン状の支点軸部21が形成されている。
【0028】
ハンマー5は、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体22と、その左右の側面の前端部に取り付けられた錘板23(1つのみ図示)を有する。ハンマー本体22は合成樹脂で構成され、錘板23は、比重が比較的大きな鉄などの金属材料で構成されている。ハンマー本体22の後端部には、円弧状の軸穴24が形成されており、ハンマー5は、この軸穴24が支点軸部21に係合することによって、ハンマーサポート4に回動自在に支持されている。
【0029】
また、ハンマー本体22の下面には、軸穴24のすぐ前側の位置に、キャプスタンスクリュー25が進退自在にねじ込まれている。ハンマー5は、このキャプスタンスクリュー25を介して、鍵2の後端部に載置されている。また、ハンマー本体22の上面の軸穴24とキャプスタンスクリュー25との間の部分は、押鍵時に鍵スイッチ7を作動させるためのアクチュエータ部26になっている。さらに、ハンマー本体22の上面の前後方向の中央には、押鍵時にレットオフ部品6に係合する板状の係合突起27が設けられている。
【0030】
レットオフ部品6は、所定の弾性材料(例えば、スチレン系の熱可塑性エラストマーなど)の成形品で構成されており、ハンマーサポート4のスイッチ取付部20に取り付けられている。レットオフ部品6は、スイッチ取付部20から後ろ下がりに斜めに延びており、その先端部には、くびれ部を介して頭部28が形成されている。この頭部28は、離鍵状態において、ハンマー5の係合突起27に対向している。
【0031】
また、鍵スイッチ7は、プリント基板から成るスイッチ基板29と、このスイッチ基板29の下面に、鍵2ごとに設けられたゴムスイッチから成るスイッチ本体30で構成されている。スイッチ基板29は、その後端部がスイッチ取付部20に差し込まれるとともに、中央の部分で、スイッチ取付部20にねじ止めされている。また、スイッチ本体30は、離鍵状態において、ハンマー5のアクチュエータ部26に若干の間隔をもって対向している。さらに、スイッチ取付部20の下面の前端部には、ハンマー5の上方への回動を規制する、発泡ウレタンなどで構成されたハンマーストッパ31が設けられている。
【0032】
次に、上記構成の鍵盤装置1の動作について説明する。図1に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、鍵2は、バランスピン13を中心として、同図の反時計方向に回動し、それに伴い、ハンマー5は、キャプスタンスクリュー25を介して押し上げられ、支点軸部21を中心として、上方(同図の時計方向)に回動する。
【0033】
このハンマー5の回動の途中で、その係合突起27が、レットオフ部品6の頭部28に係合し、頭部28を介してレットオフ部品6を圧縮させながら押圧することにより、レットオフ部品6からハンマー5に作用する反力が増大する。ハンマー5の回動が進むと、係合突起27が頭部28から外れることで、レットオフ部品6からの反力が急激に消失する。このようなレットオフ部品6の反力の増大と消失によって、アコースティックピアノに近似したレットオフ感が得られる。
【0034】
その後、ハンマー5がハンマーストッパ31に当接することによって、ハンマー5の上方への回動が終了する。また、ハンマー5の上方への回動の間、そのアクチュエータ部26が鍵スイッチ7のスイッチ本体30を押圧し、鍵スイッチ7をONすることによって、ハンマー5の回動量に応じた鍵2の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。そして、この発音制御装置により、検出された押鍵情報に基づいて、電子ピアノの発音が制御される。
【0035】
その後、鍵2が離鍵されると、鍵2は押鍵時と反対方向に回動し、図1に示す離鍵状態に復帰し、それに伴い、ハンマー5も、下方に回動し、離鍵状態に復帰する。
【0036】
次に、図2〜図6を参照しながら、本発明に係る鍵スイッチ7について詳細に説明する。鍵スイッチ7のスイッチ本体30は、非常に柔らかいゴム、例えばシリコンゴムで構成されている。図3および図4に示すように、スイッチ本体30は、並設された4つのスイッチ本体30と、これらのスイッチ本体30をつなぐベース41と、ベース41から下方に突出する複数の取付用の脚部42とを一体に成形したスイッチ本体ユニット43として形成されている。
【0037】
各スイッチ本体30は、前後方向に長い小判状の平面形状を有するとともに、ベース41から立ち上がる薄肉の周壁部44と、それに連なる可動部45とから、全体としてドーム状に形成されている。図2に示すように、可動部45の表面は、前側(図2の右側)に向かってベース41に近づくように傾斜している。
【0038】
可動部45の表面には、円筒状の3つの凹部46〜48が前後方向に並んで形成され、これらの凹部46〜48の下縁から、薄肉部49を介して、第1〜第3スイッチ素子S1〜S3がそれぞれ垂下している。第1〜第3スイッチ素子S1〜S3の下端部には、カーボンから成る第1〜第3可動接点CM1〜CM3がそれぞれ設けられている。また、可動部45には、第1スイッチ素子S1の前側に、支持突起50が設けられている。この支持突起50は、ブロック状のものであり、ベース41の近くまで延びている。
【0039】
さらに、可動部45の表面には、中央の凹部47の左右両側にそれぞれ、前後2つの被押圧用突起(以下、単に「突起」という)51A、51Bが、互いに隣接した状態で設けられている。これらの突起51A、51Bは、ほぼ半円形の側面形状を有しており、そのサイズは互いに同じである。
【0040】
以上のように構成されたスイッチ本体30は、図5に示すように、複数の脚部42を、その弾性を利用して、スイッチ基板29の対応する孔52に差し込むことによって、スイッチ基板29の下面に取り付けられている。鍵2の離鍵状態では、スイッチ本体30の後ろ側の突起51Bに、ハンマー5のアクチュエータ部26が、近接した状態で対向している。なお、図5は、押鍵に伴い、アクチュエータ部26が突起51Bに当接した直後の状態を示している。
【0041】
また、離鍵状態では、可動部45の支持突起50は、スイッチ基板29に近接した状態で対向するとともに、第1〜第3可動接点CM1〜CM3は、スイッチ基板29に形成された第1〜第3固定接点CS1〜CS3に、それぞれ対向している。可動/固定接点間の間隔は、第1可動/固定接点CM1、CS1、第2可動/固定接点CM2、CS2および第3可動/固定接点CM3、CS3の順に短く、すなわち、前側のものほどより短くなっている。
【0042】
図6に示すように、第1〜第3固定接点CS1〜CS3は、前後方向(同図の左右方向)に並設されており、それぞれ、第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1、第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2と、第3コモン接点CC3および第3非コモン接点CN3から成る接点対で構成されている。同図にハッチングを付して示す第1〜第3コモン接点CC1〜CC3は、接地されており、互いに同一の基準電位を有する。一方、第1〜第3非コモン接点CN1〜CN3は、基準電位と異なる所定の電位を有している。
【0043】
同図に示すように、第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1は、前後方向に長い矩形状に形成され、互いに同じ長さおよび幅を有し、第1可動接点CM1の径よりも小さな所定の間隔を隔てて、左右方向(同図の上下方向)に互いに対向している。
【0044】
これに対し、第2および第3コモン接点CC2、CC3と第2および第3非コモン接点CN2、CN3はいずれも、本体部と、その一端部から延びる延出部で構成され、L字状に形成されている。第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2のそれぞれの本体部BC2、BN2は、第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1と同じ長さおよび幅を有する矩形状に形成され、それらの延長線上に前後方向に延びるとともに、所定の間隔を隔てて互いに対向している。一方、第2コモン接点CC2の延出部EC2は、その本体部BC2の前端部から、第1非コモン接点CN1と第2非コモン接点CN2の本体部BN2との間に入り込むように、左右方向に延びている。また、第2非コモン接点CN2の延出部EN2は、その本体部BN2の後端部から、第2コモン接点CC2の本体部BC2と第3コモン接点CC3の本体部BC3との間に入り込むように、左右方向に延びている。
【0045】
同様に、第3コモン接点CC3および第3非コモン接点CN3のそれぞれの本体部BC3、BN3は、第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2の本体部BC2、BN2と同じ長さおよび幅を有する矩形状に形成され、それらの延長線上に前後方向に延びるとともに、所定の間隔を隔てて互いに対向している。一方、第3コモン接点CC3の延出部EC3は、その本体部BC3の前端部から、第2非コモン接点CN2の本体部BN2と第3非コモン接点CN3の本体部BN3との間に入り込むように、左右方向に延び、第3非コモン接点CN3の延出部EN3は、その本体部BN3の後端部から、第3コモン接点CC3の本体部BC3の後ろ側に回り込むように、左右方向に延びている。
【0046】
次に、上記構成の鍵スイッチ7の動作を詳細に説明する。鍵2が押鍵されると、ハンマー5が図5の時計方向に回動し、そのアクチュエータ部26がスイッチ本体30の後ろ側の突起51Bに当接することによって、スイッチ本体30が突起51Bを介して押圧され、圧縮変形する。この圧縮変形により、まず第1可動接点CM1が、第1固定接点CS1の第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1に同時に接触することによって、両接点CC1、CN1が導通し、第1スイッチ素子S1がONされる。
【0047】
この第1可動接点CM1の第1固定接点CS1への接触と前後して、スイッチ本体30の支持突起50がスイッチ基板29に当接するようになり、その後、スイッチ本体30は、支持突起50を支点として、図5の反時計方向に回動するように変形する。ハンマー5がさらに回動すると、第2可動接点CM2が、第2固定接点CS2の第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2に同時に接触することによって、両接点CC2、CN2が導通し、第2スイッチ素子S2がONされる。
【0048】
また、この第2可動接点CM2の第2固定接点CS2への接触と前後して、ハンマー5のアクチュエータ部26が、スイッチ本体30の後ろ側の突起51Bから離れ、前側の突起51Aに当接するようになり、その後、スイッチ本体30は突起51Aを介して押圧される。そして、ハンマー5がさらに回動すると、第3可動接点CM3が第3固定接点CS3の第3コモン接点CC3および第3非コモン接点CN3に同時に接触することによって、両接点CC3、CN3が導通し、第3スイッチ素子S3がONされる。
【0049】
以上の第1〜第3スイッチ素子S1〜S3からのON信号は、発音制御装置に順次、入力される。例えば、発音制御装置は、鍵スイッチ7のON作動によって、鍵2が押鍵されたこととそのキーナンバーを判定するとともに、第1〜第3スイッチ素子S1〜S3のON時間差から、ハンマー5の回動速度を算出し、それらの結果に基づいて、電子ピアノの発音を制御する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、スイッチ本体30の表面に前後の突起51A、51Bが設けられ、押鍵に伴うハンマー5の回動の初期においては、ハンマー5のアクチュエータ部26が後ろ側の突起51Bに当接し、突起51Bを介してスイッチ本体30が押圧されるとともに、ハンマー5の回動の途中で、アクチュエータ部26の当接点が、後ろ側の突起51Bから前側の突起51Aに切り替わり、突起51Aを介してスイッチ本体30が押圧される。
【0051】
したがって、ハンマーの当接点が不動である従来の場合と異なり、ハンマー5によるスイッチ本体30の押圧を、当接点を移動させながら、効果的に行うことができる。その結果、本実施形態のように鍵スイッチ7が3接点タイプの場合でも、ハンマー5の回動中、第1〜第3可動接点CM1〜CM3を第1〜第3固定接点CS1〜CS3に確実に接触させ、その接触状態を保持することができる。例えば、第3可動接点CM3と第3固定接点CS3との接触圧が不足したり、第3スイッチ素子S3がONするハンマー5の回動の終期において、第1可動接点CM1が第1固定接点CS1から浮いたりすることがなくなることで、安定したスイッチング動作を確保し、押鍵情報をより精度良く検出することができる。
【0052】
また、突起51A、51Bが、スイッチ本体30の中央の凹部47付近、すなわち第2可動接点CS1の付近に配置されているので、スイッチ本体30を前後方向にバランス良く変形させることができる。さらに、突起51A、51Bが凹部47の左右両側に設けられているので、スイッチ本体30を左右方向にバランス良く変形させることができ、以上から、鍵スイッチ7のスイッチング動作の安定性をさらに高めることができる。
【0053】
また、スイッチ本体30がハンマー5で押圧されるのに伴い、スイッチ本体30の第1可動接点CM1よりも前側に配置された支持突起50が、スイッチ基板29に当接し、この当接点を支点としてスイッチ本体30が回動する。これにより、スイッチ本体30の変形がアシストされるので、ハンマー5の当接点が移動することと相まって、鍵スイッチ7のスイッチング動作の安定性をより一層、高めることができる。
【0054】
図7および図8は、鍵スイッチ7の変形例を示す。この変形例は、上述した実施形態と比較し、スイッチ本体30の突起の構成のみが異なる。両図に示すように、この突起61は、実施形態の突起51A、51Bと同様、スイッチ本体30の表面の中央の凹部47の左右両側にそれぞれ設けられている。また、各突起61は、前後方向に連続的に延びる単一の突起で構成されている。他の構成は、実施形態と同じである。
【0055】
この構成によれば、ハンマー5の回動が進むにつれて、ハンマー5で突起61を圧縮しながら、ハンマー5のアクチュエータ部26の当接点が後ろ側から前側に無段階に移動するので、実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、鍵スイッチがハンマーで押圧されるように構成されているが、本発明は、これに限らず、鍵で押圧される鍵スイッチに適用してもよい。また、実施形態では、スイッチ本体30に前後2つの被押圧用突起51A、51Bを設けているが、その数を3つ以上としてもよい。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
2 鍵
2a 白鍵
2b 黒鍵
5 ハンマー(回動体)
7 鍵スイッチ
29 スイッチ基板(基板)
30 スイッチ本体
50 支持突起
51A 前側の被押圧用突起
51B 後ろ側の被押圧用突起
61 被押圧用突起
CM1 第1可動接点
CM2 第2可動接点
CM3 第3可動接点
CS1 第1固定接点
CS2 第2固定接点
CS3 第3固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵および当該鍵の押鍵に伴って回動するハンマーの一方である回動体の動きを、押鍵情報として検出する電子ピアノの鍵スイッチであって、
前記回動体の長さ方向に沿って第1、第2および第3固定接点が並設された基板と、
当該基板に取り付けられ、前記鍵の離鍵状態において、前記回動体に対向する弾性のスイッチ本体と、
当該スイッチ本体に、前記第1、第2および第3固定接点にそれぞれ対向するように並設され、押鍵時に回動する前記回動体で前記スイッチ本体が押圧されるのに伴い、前記第1、第2および第3固定接点に順次、接触することによって、前記押鍵情報を表す信号を出力するための第1、第2および第3可動接点と、
前記スイッチ本体に設けられ、前記回動する回動体が当接するとともに、当該当接点が、前記回動体の回動の途中で、前記回動体の長さ方向に移動するように構成された被押圧用突起と、
を備えることを特徴とする電子ピアノの鍵スイッチ。
【請求項2】
前記被押圧用突起は、前記回動体の長さ方向に並設された複数の突起で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子ピアノの鍵スイッチ。
【請求項3】
前記被押圧用突起は、前記回動体の長さ方向に連続的に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の電子ピアノの鍵スイッチ。
【請求項4】
前記被押圧用突起は、前記スイッチ本体の前記第2可動接点の付近に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子ピアノの鍵スイッチ。
【請求項5】
前記スイッチ本体の、前記第1可動接点に対して前記第3可動接点と反対側の位置に設けられ、前記基板に対向する支持突起をさらに備え、
当該支持突起は、前記スイッチ本体が前記回動体で押圧されるのに伴い、前記基板に当接し、当該当接点を支点として前記スイッチ本体を回動させるように構成されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子ピアノの鍵スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−73771(P2013−73771A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211818(P2011−211818)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】