説明

電子レンジを用いたマスクに付着しているインフルエンザウィルスの不活性化方法およびマスクを収納する容器

【課題】緊急避難的な対策として、インフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活化する方法、蔓延するインフルエンザウィルスを地域社会に撒き散らすことを防止し、インフルエンザウィルスを確実に不活性化する方法の提供。
【解決手段】プラスチック製樹脂からなる蓋11及び蓋に組み合わせて用いて閉じられる容器12から構成され、前記容器内には特定量の水を貯留する部分15及び水を貯留する部分の水と接触することなく設置されるプラスチック製多孔板13が配置され、前記プラスチック製多孔板の表面にはインフルエンザウィルスを不活化するマスク10を収納する部分18を有する容器にインフルエンザウィルスが付着したマスクを収納し、2.45GHzマイクロ波を照射して容器内に収納されているマスクに付着しているインフルエンザウィルスを不活化するインフルエンザウィルスの不活化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活化するために、インフルエンザウィルスが付着したマスクを収納する容器及びインフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活性化する方法である。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウィルス、とりわけ新型インフルエンザウィルスによるインフルエンザが流行したときには、治療薬や新型インフルエンザウィルスに対するワクチンが求められる。大量の治療薬の備えがあれば問題はないとされるが、予め大量の治療薬を備蓄しておくこともできないことが多く、十分な対応をとることができないことが問題とされることは起こり得ることである。又、ワクチンを接種しても免疫のある状態とするには一定の期間を必要とするし、ワクチンを大量に備蓄するために製造のための期間が必要とされ、緊急の対策には役立たないことが起こり得ることである。
このことから治療薬やワクチンに依存しない予防対策に重点がおかれることとなる。
その予防対策にはマスクの着用、手洗い及びうがいの励行などの手段が採用される。マスクは需要が急増したからと言って生産を急激に増産することもできず、逆に急激に品薄となり、マスクが入手困難となることが一層人々に不安な気持ちを起こさせる。
【0003】
緊急避難的な対策として、使用後のインフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活化することによりマスクの使用時間を延ばすことが有効であるといわざるを得ない事態に対処することが必要となる。
使用済みのインフルエンザウィルスが付着したマスク等のインフルエンザウィルスを不活化する施設や場所として、医療廃棄物用の管理区域を設定し、対応した処置を行えば高度な処理が期待できる。日々個人の家庭や職場で発生する使用後のインフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活化するためには、手軽に確実に操作でき、インフルエンザウィルスを確実に死滅させることができるものであることが要求される。
また、仮にインフルエンザウィルスが付着していることが懸念されるマスクを廃棄する場合であっても、マスクを生活廃棄物として家庭ごみとして排出する場合、又職場で発生したごみとして排出する場合に、通常のごみとして排出することは、インフルエンザウィルスを撒き散らすことにつながることであって、廃棄物として廃棄する場合であっても、一度無毒化の処理を行なって廃棄することにより、地域社会の公衆衛生対策とし、市民が協力できることである。
【0004】
以上のことから、飛沫や空気を媒体としたウィルス性疾患の感染防止、ならびに感染者からの拡散を防止する両面からマスクが用いられてきた。殺菌・抗菌性を有し、マスク本来の細菌、ウィルス侵入の阻止効果に優れ、人体に安全であり、環境安全性の上でも支障なく、付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活化する手段が求められている。
【0005】
マスクにおける抗菌性対策は見てみると以下の通りである。
特定構造のペルオキシカルボン酸を含浸させた通気性シートをマスク本体に用いたマスクがある(特許文献1 特開2007−267811号公報)。空気中浮遊粒子に対する防御性を容易に高めることができるマスク処理用組成物および該組成物のスプレー剤として、ノニオン系界面活性剤および/または多価アルコールを含有する組成物を提案する(特許文献2 特開2006−348429号公報)。
原料の入手が容易で、安全性が高く、様々なタイプのウィルスを効率よく吸着できるウィルス捕捉組成物、及びそれを吸着させたウィルス捕捉フィルターとして、ウィルス捕捉組成物の有効成分として、燕窩の水抽出物及び/又は燕窩の酵素処理物を含有させた、ウィルス捕捉組成物をフィルターに吸着させることによりウィルス捕捉フィルターを提案する(特許文献3 特開2005−206547号公報)。又、抗菌処理などの施されていない市販のガーゼマスクや不織布マスクに優れた抗菌・抗ウィルス性を付与でき、アレルギーの原因とならないマスク用抗菌・抗ウィルススプレーとして、水中にCa/P比が1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物を0.1〜10重量%含有するマスク用抗菌・抗ウィルススプレー(特許文献4 特開平11−199403号公報)が提案されている。
濾材の少なくとも1層に、クエン酸、林檎酸、乳酸から選ばれる水酸基(−OH)とカルボキシル基(−COOH)を同時に有するヒドロキシ酸と水分散樹脂エマルジョンの混合物を用い、乾燥固化することにより、繊維状基材に固定した抗ウィルスマスク(特許文献5 特開2005−198676号公報)が知られている。特許文献5では、比較例として濾材にポリプロピレン製スパンボンドを用いる場合と比較したケースが示されており、明確な明示はないものの前記ヒドロキシ酸を用いない場合には格別な効果を期待することができないことを述べている。
呼吸により白色の不織布で空気の粉塵が捕集され後方の茶の抽出成分を添着したエレクトレットフィルタでインフルエンザウィルスが捕集され不活化されまた人体から排出されるインフルエンザウィルスが捕集され不活化されるように、前記エレクトレットフィルタの前段に粉塵を捕集する白色の不織布を設けている抗ウィルスマスク(特許文献6 特許第3633883号明細書、特開平8−333271号公報)の発明がある。
インフルエンザウィルスを不活化する薬剤としてクロルヘキシジンの有機酸または無機酸の塩類を水溶液あるいは合成樹脂分散液と併用して、空気清浄器のフィルター部分に処理してなることを特徴とするインフルエンザウィルス不活化剤(特許文献7 特開平10−45505号公報)の発明がある。
蒸気を放出する発熱体及び薬剤の担持体が組み込まれ、該発熱体と別個に水蒸気を放出する水分保持体が組み込まれていないマスクであって、マスクを装着したときに発熱体と顔面との間に温度緩衝材又は空隙を有し、透湿性を有するシート材料に発熱体組成物を収容してなる該発熱体の適用面の単位面積当たりの水蒸気放出量が0.5mg/cm・min以上である、上気道組織へ水蒸気及び薬剤蒸気を供給するためのマスク(特許文献8 特許第3765264号明細書)。
粉状の炭化物を圧縮して作った炭化物の固形体を水に入れ加熱し沸騰させた後に徐冷することによって得られるナノレベル炭素抽出液と酸化チタン水溶液を所定の割合で混合した混合液を高圧で含浸させた織布、又は、前記混合液を高圧で含浸させた繊維を織った織布をもちいるもの(特許文献9 特開2005−131072号公報、特許文献10 特開2002−145680号公報)。太陽光線や蛍光灯の照射利用により生菌数を減少させることができることが述べられている。
複数の不織布の積層体からなるマスクであって、表層の不織布が目付け重量8〜200g/mのポリオレフィンあるいはポリエステル不織布であり、かつ表面に二酸化チタンアパタイト光触媒を0.5〜10g/m添着させたものであって、この表層不織布とともに、その内側に帯電処理されたメルトブローポリプロピレン不織布を単数または複数配したマスク(特許文献10 特開2005−124777号公報)。光エネルギーの利用(この場合には十分に光エネルギーを利用できないと言う問題点が指摘されている(特許文献11 特開2008−188082号公報の0002)。
【0006】
以上述べたことから明らかなように、ウィルスを速やかに不活化し、殺菌・抗菌性を有し、マスク本来の細菌、ウィルス侵入の阻止効果が可能であり、再生使用可能をあげるマスクでは、ろ過膜の部分に特定の薬剤を保持させることを中心にして解決を図ってきたことがわかる。しかしながら、従来これらの対策を施していないマスクも多く、これらの薬剤を用いていないマスクでは、ウィルス侵入の阻止効果を有することができるものの、使用後のマスクではウィルスが残存し、ウィルスを速やかに不活化することが必要となることが明らかである。また、前記のように特定の薬剤を塗布することは、塗布が均一に行なわれるかどうかの不安があり、実際的な解決になっていない。特定の薬剤の効果は外観などの目視に依存するであるから、果たしてウィルス侵入を阻止しているかどうかについては確信が持てない状況にある。
【0007】
特定の線源、磁場及び時として高温蒸気を用いてウィルス対策を図る場合には、必要量をマスクの前面に均一に照射することが期待できるので、化学物質を用いるときの不安を解消させることができるともいえる。たとえば、20〜30KHzの高周波電磁場誘導加熱手段によって超高温化したスーパー蒸気雰囲気下に300〜1300℃の超高温下条件が達成される廃棄物不活性方法(特許文献12 国際公開2003/059399号公報)がある。過酷な条件であり、一般的に使用できる簡便な技術としては無理がある。手軽に採用できる設備ではない。興味深い点はウィルス不活性化・滅菌方法は加熱処理することが一般的であるとし、典型的な方法は、60℃10時間のような液状加熱、乾燥状態での100〜130℃加熱処理等である。蒸気を利用したウィルス・滅菌方法は、蒸気を担体にするものであり、いまだ一般化はされていないこと(2頁下から12行目以降)を指摘している。この恒常的なシステムを構築するうえでは、このような技術では対応できないことを述べているものと考える。
歯科用器材の衛生化方法においてマイクロ波を照射下で発熱し、界面活性剤、溶媒及び漂白剤を含む処理組成物と接触させる方法(特許文献13 特表2002−513642号公報)。マイクロ波は家庭内の使用に言及している(0018)。しかしながら、家庭内の使用を指摘しながら、界面活性剤、溶媒及び漂白剤を含む処理組成物と接触させる方法となると、手軽に採用できる設備であるということにはなり得ない。
外科用器具のマイクロ波の照射を受ける収納状態の金属物品のアーク放電を防止する容器(マイクロ波熱変換器)に関する放電防止容器の発明がある(特許文献14 特表平10―509601号公報)。これらはいずれも大掛かりな、専門とする処理装置であり、家庭内のレンジの使用に際しては、金属物品の使用は避けることから見ても、手軽に採用できる設備であるということにはなり得ない。
ウィルスが存在又は付着している可能性のある被処理物に電子線照射するウィルスを不活性化させる方法(特許文献15 特開平6−1213835号公報)がある。電子線照射の利用となると大掛かりな装置にならざるをえず、手軽に採用できる設備であるということにはなり得ない。
【特許文献1】特開2007−267811号公報
【特許文献2】特開2006−348429号公報
【特許文献3】特開2005−206547号公報
【特許文献4】特開平11−199403号公報
【特許文献5】特開2005−198676号公報
【特許文献6】特許第3633883号公報、特開平8−333271号公報
【特許文献7】特許第3765264号明細書
【特許文献8】特許第3765264号明細書
【特許文献9】特開2005−131072号公報
【特許文献10】特開2002−145680号公報
【特許文献11】特開2008−188082号公報
【特許文献12】国際公開2003/059399号公報
【特許文献13】特表2002−513642号公報
【特許文献14】特表平10―509601号公報
【特許文献15】特開平6−1213835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、緊急避難的な対策として、インフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活化する方法が求められており、また、蔓延するインフルエンザウィルスを地域社会に撒き散らすことを防止するものであり、廃棄物として廃棄するためには無毒化して廃棄することにより、地域社会での保険衛生対策となる技術として、手軽に採用できる手段であり、インフルエンザウィルスを確実に不活性化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題について鋭意研究し、以下のことがらを見出して本発明を完成させた。
(1)本発明者らは、マスク(本出願人企業による製品、MASK MM−101Stretch Type ミドリ安全株式会社製)を販売している。このマスクの形状は図1に示すとおりである。
マスクの外側部は外側覆いの部分があり、スパンボンド不織布製である。ポリプロピレン100%であり、ポリプロピレンの単位重量は、25g/mである。
マスクの中央部には、中フィルタがあり、メルトブロー不織布製である。ポリプロピレン100%であり、ポリプロピレンの単位重量は、25g/mである。
マスクの内側は、スパンボンド不織布製である。ポリプロピレン100%であり、ポリプロピレンの単位重量は、20g/mである。
マスクの両端には、ひもが付けられている。ひもはポリウレタン製である。長さは160mm±5mmである。中央部に上部にはノーズフットがあり、ポリプロピレン製100%であり、長さ9.5cmである。
(2) 従来、鳥由来の人獣共通感染症病原体の鶏卵製品汚染に対する食の安全・安心を確保するための基礎データが集められており、その中で鳥インフルエンザウィルス及びニューカッスル病ウィルスの物理化学的抵抗性について調査されてきた。液中の鳥インフルエンザウィルスは種々の温度においても凍結融解に対しても比較的安定であった。一方、乾燥状態では37℃と4℃において24時間以内に感染性を失い、液中のウィルスに比べ失活しやすいと考えられた。紫外線照射は60分以内に鳥インフルエンザウィルスを不活化し、有効であることが確認された。又、卵黄中のニューカッスル病ウィルスは61℃、3.5分、10分で容易に不活化されることがわかった(出典:財団法人旗影会平成17年度助成研究特別助成 鳥取大学農学部教授伊藤壽啓ら「鳥インフルエンザウィルスの鶏卵及び鶏卵加工食品内における感染性残存に関する実験研究」、鳥取大学農学部教授伊藤壽啓ら「加熱した卵黄内における鳥インフルエンザの生存性」食品衛生研究54巻7月号21〜24頁)。
(3) 前記(2)のことがらを前提として(1)で述べたマスクにについて、培養して得たウィルス液をマスクに滴下して、測定対象となる検体のマスクを作製し、4mlから100mlの水が存在する容器内に配置し、電子レンジ出力700W、1分から10分時間で処理することにより、いずれも、99.99%以上の不活性化率を達成することができることを確認した。この場合、水が特定量存在させることが必要であり、仮に水を共存させない場合には不活化を達成することはできない。
以上の結果、本発明者らは上記の条件下に処理するとインフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを不活化することができることを見出した。
(4) 具体的には以下の通りの発明である。
(a) プラスチック製樹脂からなる蓋及び蓋に組み合わせて用いて閉じられる容器から構成され、前記容器内には特定量の水を貯留する部分及び水を貯留する部分の水と接触することなく設置されるプラスチック製多孔板が配置され、前記プラスチック製多孔板の表面にはインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する部分を有することを特徴とするインフルエンザウィルスが付着したマスクを収納し、インフルエンザウィルスを不活性化するためのマスクを収納する容器。
(b) プラスチック製樹脂からなる蓋及び蓋に組み合わせる容器から構成され、前記容器底部は突起部を有しており、突起部の周囲には特定量の水を貯留する部分からなり、突起部は貯留する水と接触することなくインフルエンザウィルスを不活化するマスクを支承する構造であることを特徴とするインフルエンザウィルスが付着したマスクを収納し、インフルエンザウィルスを不活性化するためのマスクを収納する容器。
(c) 前記特定量の水は、4ml〜100mlの範囲で容器内に水を注入する際の目安として目盛がつけられていることを特徴とする前記(a)又は(b)記載のインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する容器。
(d) 前記プラスチック製樹脂は耐マイクロ波性であることを特徴とする(a)又は(b)記載のインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する容器。
(e) (a)又は(b)記載のインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する容器に、2.45GHzマイクロ波を照射して容器内に収納されているマスクに付着しているインフルエンザウィルスを不活化することを特徴とするマスクマスクに付着しているインフルエンザウィルスの不活化方法。
(f) 前記2.45GHzマイクロ波を照射する装置が家庭用電子レンジであることを特徴とする(d)記載のインフルエンザウィルスの不活化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インフルエンザウィルスが付着したマスクのインフルエンザウィルスを比較的手軽な手段を用いて完全に不活化することができる。その結果、蔓延するインフルエンザウィルスを地域社会に撒き散らすことを防止することができ、廃棄物として廃棄するためには無毒化して廃棄することにより、地域社会での保険衛生対策としなる。管理区域などの施設とは相違し、手軽に採用できる設備である。これを用いることにより万一マスクが手に入手することが困難な場合であっても、緊急避難の手段として備蓄する新しいマスクがなくなった場合でも、完全にインフルエンザウィルスを不活化したマスクを手軽に入手することができる。
又、廃棄物として使用後のインフルエンザウィルスが付着したマスクを廃棄する場合であってもインフルエンザウィルスを不活化した状態のマスクとして廃棄することができるので、インフルエンザウィルスを地域社会に対して撒き散らすことをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法により完全にインフルエンザウィルスを不活化することを確認したマスクは図1に示すものである。現在、本発明者らの企業において販売しているものである(MASK MM−101 Stretch Type ミドリ安全株式会社製)。以下にマスクについて述べる(図1)。
【0012】
マスクの外側部及び内側部である、外側覆1及び内側覆2の部分は、スパンボンド不織布製が用いられる。
スパンボンド不織布には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン−6繊維、ナイロン−66繊維等のポリアミド系繊維、共重合ポリエステル繊維、共重合ポリアミド繊維、芯鞘繊維のような複合繊維等が知られている。
スパンボンド不織布では、シートの強度の付与、毛羽立ち防止の意味から、つぼ量は10〜50g/mである。スパンボンド不織布の平均繊維間距離は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
本発明者らの企業のマスクでは、ポリプロピレン繊維を用いており、ポリプロピレン100%であり、ポリプロピレンの単位重量は、25g/mを採用している。
【0013】
中央フィルター3には不織布材料が用いられる。
不織布は、当業者に知られた方法である、例えばメルトブロー、スパンボンド、カ−ディング、エアレイ(air laying)及び湿式堆積によるウェブの形状のものが用いられる。
メルトブローは一般的には溶かして吹き付けたマイクロ繊維であり、例えば米国特許第5706804号明細書、米国特許第5472481号明細書、米国第5411576号明細書及び4419993号明細書などに記載されている(特開2007−522867号公報 0007)に述べられている。
これらの不織布は直径約500ミクロン未満の、好ましくは約100ミクロン未満の繊維サイズを有するランダムに配向された繊維材料のマット状である。
更に好ましい濾材は、前記のウェブをエレクトレット(electret)に変換するものを使用するものであり、静電気的に帯電したウェブである(特公昭59−124号公報、特開昭61−272063号公報)。エレクトレットは一般に、長期間持続する電荷を示す1つの誘電体である。帯電可能なエレクトレット材料としては、無極性ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリプロピレンが挙げられる。
不織布ウェブは、水流交絡処理、熱処理又は熱機械的結合のような方法による。いずれも、あまり圧密化されないものが好ましい。
中央フィルターの重量は、約5グラム/平方メートルg/m〜約1000g/m、より好ましくは約20g/m〜約200g/mの基本重量(basis weight)を有している。濾材12は、約0.005インチ〜約5インチの厚さを有することができる。好ましくは、濾材12は約0.1インチ〜約3インチ、より好ましくは約0.25インチ〜約1.5インチの厚さを有する。
前記マスクのフィルタは、メルトブロー不織布製である。ポリプロピレン100%であり、ポリプロピレンの単位重量は、25g/mのものを用いている。
【0014】
このマスク製作手順は、所要寸法に裁断した矩形のマスク生地となる外側覆1及び内側覆2のスパンボンド不織布により、不織布材料からなる中央フィルター3を包み込む。
四つに折り重ねて横長にしたマスク上下両端を裏側に折ねるようにして三つに折り重ねる。下側の折り重ね部の左右両端を一本のミシン目で縫い着けると共に、上側の折り重ね部の左右両端を一本の短いミシン目で縫い着ける。
四つ折りにしたマスク生地の上下の折り重ね部を短いミシン目から折り返して、2本の長いプリーツ4を形成し、マスク本体の左右両端部にミシン目をつけてマスクとして固定する。
マスク本体の中央部の左右両側にタックを施すことができる。左右両端から少し内側に縦のミシン目を入れて縫い着ける。
マスクの左右両端を縦のミシン目から裏側に折り重ねる。そして、長いプリーツを開いて、上下両端から短いミシン目まで縦に短いミシン目を入れて縫い着ける。こうして、上下両端の開いた帯部と、帯部の中間に短いプリーツを形成し、帯部に耳掛け用のひも6を熱溶着により固定する。
長いプリーツと左右各1本の短いプリーツを形成したので、マスクの着用時にマスク本体が船底状の立体構造になり、鼻先や唇に局部的に密着するのを防止できる。
本実施形態の衛生マスクは帯部の上下両側はミシン目で縫い着けるものの、中央部は縫い着けていないことと、帯部にタックを施して短いプリーツを形成することによりマスク本体の左右両端部を緩やかに湾曲した形状としたことにより、着用時にマスク本体の左右の端部が頬に密着し易く、マスク本体の左右の端部と頬の隙間から異物の侵入を防止できる。マスク本体によって覆われる顔の面積や部位を調整できる。
【0015】
中央部の上部にはノーズフィット5があり、ポリプロピレン製100%であり、長さ95mmである。これはマスクと顔との密着性を向上させるために有効である。ノーズフィット(ノーズクリップ)については米国特許第5558098号明細書に記載されている。鼻の形状に合わせて折り曲げてマスクを顔に固定密着させることができる。不活化に関しては電子レンジを使用するので、金属製の材料のノーズフィットを用いることはできない。
【0016】
マスクの両端には、ひも6が付けられている。ひも6はポリウレタン製である。長さは160mm±5mmである。
中央部に上部にはノーズフットがあり、ポリプロピレン製100%であり、長さ95mmである。
マスクの横幅は175mmである。
マスク重量は3.7g±20%である。
【0017】
ウィルスは一般に0.1ミクロン程度の大きさであるといわれる。人の飛まつなどにより感染される場合には数ミクロン程度であるとされ、前記の数ミクロンの大きさのフィルターにより、フィルターによりウィルスを含んだ飛まつは捕らえられる。その後、乾燥などによりウィルスは残ることなる。
【0018】
検体として用いるマスクは及び比較対象となるマスクによる処理の工程は以下の通りである(図2)。
1 マスクにインフルエンザウィルスを付着する工程(工程1)
本発明者らの企業において製造販売している前記のマスクを(MASK MM−101 Stretch Type ミドリ安全株式会社製)に対してマスクの外気側にインフルエンザウィルス液0.5mlを滴下する。これを1対、製作する。
2 マスクを容器内におく工程(工程2)
容器内の孔板の表面に平面状に置いて孔板の下部に特定量の蒸留水4mlを注入し、容器内の孔板の表面に平面状に置いて孔板の下部に特定量の水を注ぎ込んだ。
電子レンジ内にマスクを入れた前記容器を置き、前記のマスク1枚をおいた。
一方のマスクは通常の蓋の無い容器内においた。
3 マスクの不活性化処理(工程3)
前の工程2の容器内にマスクをおいた状態の容器を電子レンジ内において700Wで10分間加熱した。一方のマスクは通常の蓋の無い容器内においた状態で、室温で10分間放置した(10分間処理のケースである。)。
4 試験に用いたマスクよりインフルエンザウィルスを洗い出す工程(工程4)
前工程で得られた2枚のマスクに各々液9.5mlを添加してインフルエンザウィルス洗を液中に取り出しを行った。
5 取り出した液中に含まれるインフルエンザウィルスをプラーク法で分析する工程(工程5)
インフルエンザウィルスを含む液(10ml)より試料0.1ml×2を取り出し、プラーク法で行った。
【0019】
上記方法はプラーク法によっている。プラーク法の操作は以下の通りである(図3)。
測定したいウィルスが感染できる細胞を用いる。細胞にウィルスを感染させることによりウィルスの存在量を測定する。感染した細胞は変性する。さらに、感染した細胞から同心円状に感染が拡大するため、変性した細胞の集落は時間を追って、大きくなり、数日後には肉眼でも観察可能な大きさとなる。変性した細胞の集落をカウントすることで接種したウィルス量を算出する。具体的な操作は以下の通りである(図3)。
細胞を試験用プレートの表面にまく。細胞培養を4日間行う(第1工程)。
電子レンジで加熱試験をする(第2工程)。
試料を細胞に接種・培養し、ウィルスに感染し変性した細胞数、すなわち不活性化されていないウィルス量を測定する(第3工程)。
細胞の固定(第4工程)。
【0020】
上記の処理に際してマスクを充填した容器は以下の構造よりなっている(図4)。容器全体はプラスチック製樹脂からなる蓋11及び蓋に組み合わせて用いて、閉じられる容器12から構成される。水が気化すると体積膨張するので、蓋11と蓋12は容器内の空気を完全に密閉するわけではなく圧力上昇を防ぐため、容器内の水蒸気が漏れるようにしておくことが必要である。例えば、蓋11と蓋12との間に不織布が挟み込まれるように構成しても良い。この場合、容器内の水蒸気は不織布の繊維中を通って容器外へ出るので、ウィルスは不織布に付着することになり容器外へ出ることがない。この不織布は、上記のような蓋11と蓋12の間に設けられる形態に限らず、蓋11または蓋12の一部に孔を穿設し、その孔を塞ぐように設けても良い。この場合、蓋11と蓋12は完全に密着するように構成しても構わない。更に別の実施形態として、蓋11と蓋12との周囲を通気性を有する合成樹脂性のフィルムで覆うようにしても構わない。又、インフルエンザウィルスが付着している場合も想定されるマスクを取り扱うので、蓋の開閉は簡単に行うことができることが必要となる。
前記容器内には特定量の水を貯留する部分15が設けられている。電子レンジの照射時間に合わせて定量の水を必要とするので、そのための水ためを底部に設けることが必要となる。
前記特定量の水は、4ml〜100mlの範囲で変更できるように目盛がつけられている。複数枚のマスクを一回の操作で処理する場合には前記の結果に複数枚−1を乗じて必要量の水を算出して添加することができる。例えば、2枚のマスクを一回の操作で処理する場合には水量は2倍、3枚のマスクを一回の操作で処理する場合には水量は3倍を目安とする。
水と接触することなく設置されるプラスチック製の多孔板13が配置される。孔14は水蒸気が自由に通過できるように十分な数を設置する。多孔板13を通過した水蒸気は均一にマスクに注がれるように全面にわたり偏りがないように設置されていることが必要となる。多孔板13は下の水に接触しないようするために脚部16により支えられている。
プラスチック製多孔板の表面にはインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する部分18を有している。
前記プラスチック製樹脂は耐マイクロ波性であることからポリプロピレン製を用いることができる。
前記プラスチック製樹脂からなる蓋11と蓋に組み合わせる容器12の外側に何らかの原因でインフルエンザウィルスが附着している場合を想定して、附着しているインフルエンザウィルスが他の部分に広がることがないように、プラスチック製樹脂からなる蓋11と蓋に組み合わせる容器12の外側に、プラスチック製の覆い17をかぶせることもできる。この覆い17中に水を入れておくことにより、電子レンジで処理する際にインフルエンザウィルスを不活性化することができる。
【0021】
ワンタッチの操作でふたの開閉が可能な容器であり、底部に水たまりを設けた容器を図5に示す。ワンタッチ操作でふた11の開閉が可能であり、この蓋に組み合わされた容器12が示されている(最上部)。ふたはヒンジにより開閉が行われ、留め部が先端部に設けられている。容器底部には水たまりとなる部分15が示されている。水たまり部分には、4ml、8ml、20ml(図示せず)、100mlが示されている。
水と接触することなく設置されるプラスチック製の多孔板13が配置される。孔14は水蒸気が自由に通過できるように十分な数を設置する。多孔板13を通過した水蒸気は均一にマスクに注がれるように全面にわたり偏りがないように設置されていることが必要である。
【0022】
前記の容器では水だめと処理するマスクが接触しないようにすることが必要とされる。この点に留意すると、以下のような容器の使用が可能となる。
プラスチック製樹脂からなる蓋及び蓋に組み合わせる容器から構成され、前記容器底部は突起部を有しており、突起部には特定量の水を貯留する部分が設けられている。
突起部は貯留する水と処理しようとするマスクが直接接触することなくインフルエンザウィルスを不活化するマスクを支承する構造とする。
このようにインフルエンザウィルスが付着したマスクを容器中に収納し、インフルエンザウィルスを不活性化するためのマスクを収納する容器が有効である。
【0023】
上記の容器は電子レンジ内で使用する。
容器の外側がウィルスに汚染されることも想定されるし、電子レンジ内で使用するのであるから、ウィルスによる電子レンジ内の汚染を避けるために容器の外側をプラスチック製の覆い17を被せて用いること有効である。
【0024】
使用する電子レンジは家庭で用いられているものを使用できる。出力700W、1分から10分の範囲で処理することにより、いずれも、99.99%以上の不活性化率を達成することができたことを確認している。この場合、水が特定量存在させることが必要であり、仮に水を共存させない場合には不活化を達成することはできない。
【0025】
上記の操作を以下の条件で行った。
水量4mlで電子レンジ10分間、
水量8mlで電子レンジ5分間処理、
同じく、水量20mlで電子レンジ2分間処理、及び
同じく、水量100mlで電子レンジ1分間処理して以下の結果を得た。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
【表4】


対比実験に用いた室内条件は室温温度22.2〜27.70℃、湿度9〜33%であった。
【実施例1】
【0030】
電子レンジ内に前記で説明した容器内にウィルスを付着させたマスクを置き、10分700Wの条件で照射を行い以下のとおりの結果を得た。
不活性化率=(1−b/a)×100[%]
電子レンジ処理したものの結果が全て0の場合は、0の95%信頼性区間(0〜2.99)より95%信頼性不活性化率を求めた。
なお、表4は電子レンジ処理の個別データの合計値27の上側95%信頼限界37.2と室内放置個別データの合計値から不活性率を求めたものである。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
電子レンジ内に前記で説明した容器内にウィルスを付着させたマスクを置き、5分700Wの条件で照射を行い以下のとおりの結果を得た。
【0033】
【表2】

【実施例3】
【0034】
電子レンジ内に前記で説明した容器内にウィルスを付着させたマスクを置き、2分700Wの条件で照射を行い以下のとおりの結果を得た。
【0035】
【表3】

【実施例4】
【0036】
電子レンジ内に前記で説明した容器内にウィルスを付着させたマスクを置き、1分700Wの条件で照射を行い以下のとおりの結果を得た。
【0037】
【表4】

【0038】
本発明の電子レンジでの処理はいずれも満足できる結果となった。
処理時間と水量(4ml〜100ml)の関係は図6に示すとおりである。
なお、本実施形態では電子レンジ出力を700Wとしたが、これに限られるわけではなく、電子レンジ出力を変えて加熱処理することもできる。例えば、電子レンジ出力を上げる場合、加熱時間は電子レンジ出力に反比例して短縮させれば良く、電子レンジ出力を下げる場合には、加熱時間を電子レンジ出力に反比例して延長すれば良い。具体的な一例を挙げると、電子レンジ出力を500Wとする場合には、加熱時間を700Wのときの1.4倍(=700W/500W)とすれば、上記と同様の結果が得られる。
また、本実施形態ではウィルス不活性化とマスクの乾燥を同時に達成させる最適条件を開示したものである。ウィルス不活性化だけを重視する場合には、同じ水量に対し加熱時間を長くしても良く、加熱時間の短縮を重視する場合には水量を多くしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明者らの企業において販売しているマスク(MASK MM−101 Stretch Type ミドリ安全株式会社製)の概要を示す図。
【図2】マスクに付着しているウィルスを電子レンジにより処理した後に、残るウィルス取り出す工程を説明する図。
【図3】ウィルスをプラーク法で調べる工程を説明する図。
【図4】本発明の容器を説明する図。
【図5】本発明の容器を説明する図。
【図6】照射時間と水分量の関係を示す図。
【符号の説明】
【0040】
1 マスク外側覆
2 マスク内側覆
3 中央フィルター
4 プリーツ
5 ノーズフィット
6 ひも
7 プリーツ固定部
10 マスク
11 蓋
12 蓋に組み合わされ容器
13 多孔板
14 孔
15 特定量の水を貯留する部分
16 多孔板の脚部
17 覆い
18 マスクを収容する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製樹脂からなる蓋及び蓋に組み合わせて用いて閉じられる容器から構成され、前記容器内には特定量の水を貯留する部分及び水を貯留する部分の水と接触することなく設置されるプラスチック製多孔板が配置され、前記プラスチック製多孔板の表面にはインフルエンザウィルスが付着したマスクを収納する部分を有すること特徴とするインフルエンザウィルスが付着したマスクを収納し、インフルエンザウィルスを不活性化するためのマスクを収納する容器。
【請求項2】
プラスチック製樹脂からなる蓋及び蓋に組み合わせる容器から構成され、前記容器底部は突起部を有しており、突起部の周囲には特定量の水を貯留する部分からなり、突起部は貯留する水と接触することなくインフルエンザウィルスが付着したマスクを支承する構造であることを特徴とするインフルエンザウィルスが付着したマスクを収納し、インフルエンザウィルスを不活性化するためのマスクを収納する容器。
【請求項3】
前記特定量の水は、4ml〜100mlの範囲で容器内に水を注入する際の目安として目盛がつけられていることを特徴とする請求項1記載のインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する容器。
【請求項4】
前記プラスチック製樹脂は耐マイクロ波性であることを特徴とする請求項1又は2記載のインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する容器。
【請求項5】
請求項1又は2記載のインフルエンザウィルスを不活化するマスクを収納する容器に、2.45GHzマイクロ波を照射して容器内に収納されているマスクに付着しているインフルエンザウィルスを不活化することを特徴とするマスクに付着しているインフルエンザウィルスの不活化方法。
【請求項6】
前記2.45GHzマイクロ波を照射する装置が家庭用電子レンジであることを特徴とする請求項5記載のインフルエンザウィルスの不活化方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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