説明

電子内視鏡の操作部

【課題】電気スイッチとスイッチ駆動回転体とを操作部フレームに取り付け、それとは分離して、操作部カバー外から回転操作されてスイッチ駆動回転体を回転させる回転伝達部材を操作部カバー側に設けることで、水密性と組立容易性を確保することができ、しかも、回転操作を常にスムーズに行うことができる電子内視鏡の操作部を提供すること。
【解決手段】操作部フレーム4側に設けられたスイッチ駆動回転体12と操作部カバー3側に設けられた回転伝達部材20との対向部の一方の側に、軸線位置に対して偏心した位置で他方側に向かって突出する係合ピン13が設けられ、他方側に、係合ピン13がスライド自在に係合する係合溝21が軸線に対する周方向以外の方向に向けて細長く設けられ、係合ピン13と係合溝21との係合により回転伝達部材20の回転運動がスイッチ駆動回転体12に伝達されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子内視鏡の操作部に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡の操作部は一般に、操作者が手で握って保持するためのグリップ部が下半部に形成されて、上半部には各種の操作部材が配置されている。そのような各種の操作部材のうち、モニタ画面に表示される内視鏡観察画像の倍率を連続的に任意に変化させる電子ズーム操作スイッチは、単純なオン/オフの切り換えではなくてオフ状態から拡大と縮小の両方の操作がある。
【0003】
しかも電子ズーム操作スイッチは、拡大と縮小の各々の操作中は倍率が連続して変化を続け、適宜の状態で操作を止めるとそこで倍率の変化が止まるという、他の電気スイッチよりやや複雑な機能を有している。
【0004】
そこで従来は、電子ズーム操作スイッチとして、根元部分を支点に揺動するレバー状のトグルスイッチを立設して用いていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−201882
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来用いられているトグルスイッチの類は、操作位置が操作者の指先から遠くなって操作性が悪くなりがちであるだけでなく、水密構造にするのが面倒で水密性が不完全になりがちであった。
【0006】
その方策として、軸線周りに回転操作される回転スイッチをトグルスイッチに代えて採用することが考えられるが、回転操作部分が取り付けられる操作部カバーに電気スイッチまで一体に取り付けると、電気スイッチに連なるリード線が操作部カバー側に引きずられる状態になる等して、組み立て性が極めて悪くなってしまう。
【0007】
そこで、電気スイッチとその電気スイッチをオン/オフさせるスイッチ駆動回転体とを操作部フレームに取り付けると共に、それとは分離して、操作部カバー外から回転操作されてスイッチ駆動回転体を回転させる回転伝達部材を、操作部カバー側に設ける構成を採ることが考えられる。
【0008】
ただしその場合には、操作部フレームに対する操作部カバーの取り付け誤差等により、回転伝達部材とスイッチ駆動回転体との係合が渋くなってスムーズに回転操作できなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、電気スイッチとその電気スイッチをオン/オフさせるスイッチ駆動回転体とを操作部フレームに取り付けると共に、それとは分離して、操作部カバー外から回転操作されてスイッチ駆動回転体を回転させる回転伝達部材を操作部カバー側に設けることで、水密性と組立容易性を確保することができ、しかも、回転操作を常にスムーズに行うことができる電子内視鏡の操作部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の電子内視鏡の操作部は、電気スイッチと、軸線周りに回転して電気スイッチをオン/オフさせるスイッチ駆動回転体とが操作部フレームに取り付けられると共に、それとは分離して、操作部フレームに対して着脱自在な操作部カバーに、操作部カバー外から回転操作されてスイッチ駆動回転体を回転させる回転伝達部材が、スイッチ駆動回転体と略同一軸線周りに回転自在にスイッチ駆動回転体に対向して設けられ、スイッチ駆動回転体と回転伝達部材との対向部の一方の側に、軸線位置に対して偏心した位置で他方側に向かって突出する係合ピンが設けられ、他方側に、係合ピンがスライド自在に係合する係合溝が軸線に対する周方向以外の方向に向けて細長く設けられ、係合ピンと係合溝との係合により回転伝達部材の回転運動がスイッチ駆動回転体に伝達されるようにしたものである。
【0011】
なお、回転伝達部材が、操作部カバーの外部に対して水密にシールされた状態で、操作部カバーの内側部分に配置されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作部フレーム側に設けられたスイッチ駆動回転体と操作部カバー側に設けられた回転伝達部材との対向部の一方の側に、軸線位置に対して偏心した位置で他方側に向かって突出する係合ピンが設けられ、他方側に、係合ピンがスライド自在に係合する係合溝が軸線に対する周方向以外の方向に向けて細長く設けられ、係合ピンと係合溝との係合により回転伝達部材の回転運動がスイッチ駆動回転体に伝達されるので、水密性と組立容易性を確保することができ、しかも、回転伝達部材とスイッチ駆動回転体との間に少々の芯ずれ等があっても回転伝達が渋くならず、回転操作を常にスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
電気スイッチと、軸線周りに回転して電気スイッチをオン/オフさせるスイッチ駆動回転体とが操作部フレームに取り付けられると共に、それとは分離して、操作部フレームに対して着脱自在な操作部カバーに、操作部カバー外から回転操作されてスイッチ駆動回転体を回転させる回転伝達部材が、スイッチ駆動回転体と略同一軸線周りに回転自在にスイッチ駆動回転体に対向して設けられ、スイッチ駆動回転体と回転伝達部材との対向部の一方の側に、軸線位置に対して偏心した位置で他方側に向かって突出する係合ピンが設けられ、他方側に、係合ピンがスライド自在に係合する係合溝が軸線に対する周方向以外の方向に向けて細長く設けられ、係合ピンと係合溝との係合により回転伝達部材の回転運動がスイッチ駆動回転体に伝達される。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は、図示されていない挿入部の先端に内視鏡観察像を撮像するための固体撮像素子が配置された電子内視鏡の操作部1を示している。操作部1の下半部は操作者が左手で保持するためのグリップ部1aになっており、上半部には、湾曲操作ノブ2等各種の操作部材が配置されている。
【0015】
3は、操作部1の上端部分のみを外装する上端部用の操作部カバーであり、その前後両面には、図示されていないビデオプロセッサ等の電子機器を遠隔操作するためのリモートコントロールスイッチ10,10′が配置されている。
【0016】
回転操作される方のリモートコントロールスイッチ10は、図示されていないテレビモニタに表示される内視鏡観察画像の倍率を無段階に変化させるための電子ズーム操作スイッチであり、操作部カバー3の壁面に対して垂直な軸線を中心に時計回りと反時計回りの任意の方向に回転操作されて、一方の方向に回転させた状態を保持するとその間は倍率が大きくなり続け、他方の方向に回転させた状態を保持するとその間は倍率が小さくなり続けるように機能する。
【0017】
図3は電子ズーム操作スイッチ10部分の縦断面図、図4は、図3と90°向きを相違させた方向からの縦断面図である。操作部カバー3は、操作部フレーム4に対してカバー固定ボルト5によって着脱自在にビス止め固定されている。6は、カバー固定ボルト5の外周部をシールするOリング、7は、操作部カバー3と操作部フレーム4との境界部をシールするOリングである。
【0018】
カバー固定ボルト5は、操作部フレーム4に対して直接ねじ止めされているのではなく、操作部フレーム4にフレーム連結ボルト9で固定された補助フレーム8にねじ孔が形成されていて、そのねじ孔にカバー固定ボルト5が螺脱自在に螺合している。
【0019】
図3、図4及び分解斜視図である図1にも示されるように、補助フレーム8には通常はオフの二つの電気スイッチ11A,11Bが取り付けられている。その一方の電気スイッチ11Aは、オンになっている時にテレビモニタ画面上での内視鏡観察画像の表示倍率を拡大させ続けるための拡大スイッチであり、他方の電気スイッチ11Bは、オンになっている時に表示倍率を縮小させ続けるための縮小スイッチである。
【0020】
補助フレーム8には、そのような二つの電気スイッチ11A,11Bをオン/オフさせるスイッチ駆動回転体12が、支軸12aによって回転自在に取り付けられている。即ち、二つの電気スイッチ11A,11Bとスイッチ駆動回転体12とが、補助フレーム8を介して操作部フレーム4に取り付けられた状態になっている。
【0021】
スイッチ駆動回転体12には、支軸12aを中心に回動することによって二つの電気スイッチ11A,11Bの一方をオン/オフさせる(即ち、時計回りと反時計回りの一方の方向では拡大用の電気スイッチ11Aのみをオンにし、他方の方向では縮小用の電気スイッチ11Bのみをオンにする)スイッチ押圧部12bが突出形成されると共に、支軸12aの軸線から偏心した位置に、支軸12aと平行方向に操作部カバー3の内壁面方向に向けて短円柱状の係合ピン13が突設されている。
【0022】
図3及び図4に示されるように、操作部カバー3に穿設されたスイッチ取り付け孔には、略円柱状のシリンダ体14が、スイッチ駆動回転体12の支軸12aの軸線の略延長線上に軸線が位置するように固定ナット15で固定されている。16は、その取り付け部をシールするOリングである。
【0023】
シリンダ体14内には、軸線周りに回転自在に略円柱状のピストン体17が嵌挿されていて、その外端部側に操作用指当て18が突出形成されている。19は、シリンダ体14との嵌合面をシールするようにピストン体17に取り付けられたOリングである。
【0024】
操作部カバー3内に位置するピストン体17の内端面には、スイッチ駆動回転体12を回転駆動するための例えば円盤状の回転伝達部材20が、スイッチ駆動回転体12に対向する状態に、固定ビス(図1の符号23)等によって一体的に連結固定されている。
【0025】
このようにして、回転伝達部材20は操作部カバー3の外部に対して水密にシールされた状態で、操作部カバー3の内側部分にスイッチ駆動回転体12に対向して配置されていて、操作用指当て18が外部から回転操作されると、回転伝達部材20がスイッチ駆動回転体12の軸線と略同一軸線周りに回転する。
【0026】
そのような回転伝達部材20の裏面(スイッチ駆動回転体12に対して対向する面)には、係合ピン13がスライド自在に係合する直線溝状の係合溝21が形成されている。図1に示されるように、この実施例の係合溝21は、回転伝達部材20の直径位置に真っ直ぐに形成されており、係合ピン13は、その係合溝21内にガタつきが発生しない程度の緩さで単に嵌め込まれた状態になっている。
【0027】
このようにして、操作部カバー3側に取り付けられた回転伝達部材20と、それと分離して操作部フレーム4側に取り付けられたスイッチ駆動回転体12とが係合溝21と係合ピン13で係合しており、その係合により、回転伝達部材20の回転運動がスイッチ駆動回転体12に伝達される。その結果、操作用指当て18を回転操作することにより、二つの電気スイッチ11A,11Bを選択的にオン/オフさせることができる。
【0028】
このように構成された実施例の電子ズーム操作スイッチ10においては、図5に示されるように、操作部カバー3側に設けられた回転伝達部材20の軸線20xと操作部フレーム4側に設けられたスイッチ駆動回転体12の軸線(正確には支軸12aの軸線)12xの位置が製造誤差等によってずれる場合がある。
【0029】
しかし、回転伝達部材20からスイッチ駆動回転体12への回転運動の伝達が係合溝21と係合ピン13との係合によって行われるので、回転伝達部材20の軸線20xとスイッチ駆動回転体12の軸線12xとの間にずれがあっても、図6及び図7に示されるように、回転伝達部材20の回転が支障なくスイッチ駆動回転体12に伝達されて、二つの電気スイッチ11A,11Bを選択的にスムーズにオン/オフさせることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば係合溝21は必ずしも回転伝達部材20の直径に相当する向きや長さに形成する必要はなく、回転伝達部材20の軸線20xに対する周方向以外の方向に向けてある程度の長さ(即ち、製造誤差を吸収できる程度の長さ)に細長く形成されていればよい。また、回転伝達部材20側に係合ピン13を設けてスイッチ駆動回転体12側に係合溝21を形成してもよく、本発明を電子ズーム操作スイッチ10以外の回転スイッチに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例の電子ズーム操作スイッチの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例の電子内視鏡の操作部の斜視図である。
【図3】本発明の実施例の電子ズーム操作スイッチの縦断面図である。
【図4】本発明の実施例の電子ズーム操作スイッチの、図3と90°向きを相違させた方向からの縦断面図である。
【図5】本発明の実施例の電子ズーム操作スイッチの透視図である。
【図6】本発明の実施例の電子ズーム操作スイッチの拡大スイッチをオンさせた状態の透視図である。
【図7】本発明の実施例の電子ズーム操作スイッチの縮小スイッチをオンさせた状態の透視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 操作部
3 操作部カバー
4 操作部フレーム
8 補助フレーム
10 電子ズーム操作スイッチ
11A,11B 電気スイッチ
12 スイッチ駆動回転体
12a 支軸
12x 軸線
13 係合ピン
17 ピストン体
18 操作用指当て
20 回転伝達部材
20x 軸線
21 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気スイッチと、軸線周りに回転して上記電気スイッチをオン/オフさせるスイッチ駆動回転体とが操作部フレームに取り付けられると共に、それとは分離して、上記操作部フレームに対して着脱自在な操作部カバーに、上記操作部カバー外から回転操作されて上記スイッチ駆動回転体を回転させる回転伝達部材が、上記スイッチ駆動回転体と略同一軸線周りに回転自在に上記スイッチ駆動回転体に対向して設けられ、
上記スイッチ駆動回転体と上記回転伝達部材との対向部の一方の側に、上記軸線位置に対して偏心した位置で他方側に向かって突出する係合ピンが設けられ、上記他方側に、上記係合ピンがスライド自在に係合する係合溝が上記軸線に対する周方向以外の方向に向けて細長く設けられ、上記係合ピンと上記係合溝との係合により上記回転伝達部材の回転運動が上記スイッチ駆動回転体に伝達されるようにしたことを特徴とする電子内視鏡の操作部。
【請求項2】
上記回転伝達部材が、上記操作部カバーの外部に対して水密にシールされた状態で、上記操作部カバーの内側部分に配置されている請求項1記載の電子内視鏡の操作部。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate