説明

電子内視鏡システムの画像処理プロセッサ

【課題】電子スコープの特性に対応して、映像信号値の持ち上がり現象を抑えることが出来る電子内視鏡システムの画像処理プロセッサを提供する。
【解決手段】電子内視鏡システムの画像処理プロセッサは、装着された電子スコープの特性と、黒レベルのサンプルの抽出可能な期間とに対応したパルス幅を有するクランプパルスを出力するパルス生成部を備える。パルス生成部から出力されたクランプパルスのパルス幅に対応する期間の間、電子スコープから出力された輝度信号に対して、黒レベルのサンプルの抽出を行い、黒レベルの調整を行うサグ補正回路を備える。サグ補正回路を介して出力された輝度信号に基づいて、電子スコープにより取得される画像データに画像処理を施す映像信号処理部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡システムの画像処理プロセッサに関し、特に黒レベルを正確に調整する画像処理プロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像素子が搭載された電子スコープを備えた電子内視鏡システムが提案されている。
【0003】
特許文献1は、電子スコープで撮像されて得られたた画像データに画像処理を施す画像処理プロセッサにおいて、クランプ回路を使って、サグ補正や黒レベル調整を行う電子内視鏡システムを開示する。
【特許文献1】特開2000−350194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1などにおけるクランプ回路は、コンデンサが用いられるが、コンデンサの容量が十分でない場合に、装着された電子スコープの特性によっては、黒レベル信号を一定に保持できずに、映像信号(デジタル・コンポーネント信号)値が時間の経過とともに増加する信号の持ち上がり現象が発生し、見た目(出力画像)では、黒レベルが右肩上がりに浮く現象が発生する。
【0005】
したがって本発明の目的は、電子スコープの特性に対応して、映像信号値の持ち上がり現象を抑えることが出来る電子内視鏡システムの画像処理プロセッサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子内視鏡システムの画像処理プロセッサは、装着された電子スコープの特性と、黒レベルのサンプルの抽出可能な期間とに対応したパルス幅を有するクランプパルスを出力するパルス生成部と、パルス生成部から出力されたクランプパルスのパルス幅に対応する期間の間、電子スコープから出力された輝度信号に対して、黒レベルのサンプルの抽出を行い、黒レベルの調整を行うサグ補正回路と、サグ補正回路を介して出力された輝度信号に基づいて、電子スコープにより取得される画像データに画像処理を施す映像信号処理部とを備える。
【0007】
好ましくは、パルス生成部は、バースト信号に対応したディレイ期間を考慮して、クランプパルスを出力する。
【0008】
また、好ましくは、パルス生成部は、装着された電子スコープを識別するための識別情報を取得する判別部と、判別部からの識別情報に基づいて、装着される電子スコープに対応したパルス幅を設定する調整部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、電子スコープの特性に対応して、映像信号値の持ち上がり現象を抑えることが出来る電子内視鏡システムの画像処理プロセッサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本実施形態における電子内視鏡システムの構成について、図を用いて説明する。本実施形態に係る電子内視鏡システム1は、電子スコープ10、画像処理プロセッサ20、及びモニタ30を備える。
【0011】
電子スコープ10は、施術者が手で保持しながら各種操作を行う操作部11と、先端に撮像素子14を有し患者の体内に挿入される可撓管である挿入部12と、信号処理回路19を有し画像処理プロセッサ(画像処理装置)20に接続される接続部13とを有する。また、接続部13には、電子スコープ10の識別情報が格納されている第1ROM15が設けられている。
【0012】
電子スコープ10の接続部13は画像処理プロセッサ20のフロント部(不図示)に接続される。画像処理プロセッサ20では電子スコープ10により取得された画像に対し、所定の画像処理が施される。
【0013】
画像処理プロセッサ20には、モニタ30が接続される。モニタ30は、画像処理プロセッサ20で画像処理された、所定のアナログビデオ信号の規格に依拠した画像を表示する。画像処理プロセッサ20には、画像処理プロセッサ20で画像処理された、所定のアナログビデオ信号の規格に依拠した画像をプリントアウトするビデオプリンタなどのプリンタ機器、及び画像処理プロセッサ20で画像処理された画像データ等を記録する外部記憶装置が接続されてもよい。
【0014】
電子スコープ10には、照明光導光用の多数の光ファイバから成るライトガイド(不図示)が挿通されており、ライトガイドは、電子スコープ10の挿入部12の先端まで延びている。
【0015】
画像処理プロセッサ20は、パルス生成部21、サグ補正回路22、及び映像信号処理部23を有する。画像処理プロセッサ20は、第1ROM15から電子スコープの識別情報を取得し、後述の画像処理制御に利用する。
【0016】
電子スコープ10の接続部13を画像処理プロセッサ20に接続すると、ライトガイドは、光源部(不図示)の光源に光学的に接続される。使用者による光源点灯操作が行われると、光源部の光源駆動回路から光源へ点灯駆動信号が出力され、光源から白色光が出射される。光源部から出射される白色光は絞り機構(不図示)等で光量調節され、ライトガイドの入射端に入射する。入射した白色光はライトガイドにより電子スコープ10の挿入部12の先端まで導かれ、配光光学系を介して被観察体に照明光として照射される。
【0017】
被観察体からの反射光は対物光学系(不図示)を介して撮像素子14に入射し、撮像素子14の入射面に被観察体の光学像が結像される。撮像素子14では入射した被観察体の光学像が光電変換され、該光学像に基づいたアナログ画像信号が出力される。
【0018】
撮像素子14から出力されたアナログ画像信号は接続部13の信号処理回路19でA/D変換、Y/C分離等の前段の画像信号処理が施され、画像処理プロセッサ20に入力される。信号処理回路19における前段の画像信号処理を介して同期信号はパルス生成部21に出力され、輝度信号(Y信号)はサグ補正回路22に出力され、Cb信号などその他の信号は映像信号処理部23に出力される。
【0019】
パルス生成部21は、FPGA(Field Programable Gate Array)など信号処理回路19から出力された同期信号に基づいて、画像処理プロセッサ20の各部を制御する制御信号を出力する。同期信号には、垂直同期信号、水平同期信号が含まれる。垂直同期信号、水平同期信号の立ち上がり、立ち下がりタイミング、及びバースト信号を考慮したディレイ期間に対応して、黒レベルのサンプルの抽出可能な期間(垂直ブランキング期間においては、立ち上がり時から立ち下がり時までの期間、ビデオ期間においては、立ち上がり時から、映像信号の出力開始時までの期間)に対応して黒レベルのサンプルの抽出可能な期間内の時間幅のパルス幅を有するクランプパルスがサグ補正回路22に出力される。
【0020】
具体的には、パルス生成部21は、スコープ判別回路25、第2ROM27、タイミング調整回路29を有する。スコープ判別回路25は、電子スコープ10の第1ROM15に格納された電子スコープの識別情報を取得する。第2ROM27は、電子スコープの識別情報と、電子スコープごとに最適な(電子スコープの特性に応じた)パルス幅(実際には時間計測カウンタのカウンタ値)と、そのパルス幅を設定する期間とを対応付けしたデータを格納する。スコープ判別回路25は、電子スコープの識別情報、第2ROM27に格納されたデータに基づいて、予め設定されている固定のパルス幅が利用可能か、あるいは装着された電子スコープに最適なパルス幅をタイミング調整回路29で調整(最適なパルス幅を設定)するかを判別(最適なパルス幅を設定)する。
【0021】
電子スコープ10からの水平同期信号、及び垂直同期信号は、タイミング調整回路29に入力される。固定のパルス幅が利用可能な場合、水平同期信号、垂直同期信号の立ち下がりタイミングに基づいて、固定のパルス幅を有するクランプパルスが、タイミング調整回路29からサグ補正回路22に出力される。装着された電子スコープに最適なパルス幅を調整する必要がある場合、水平同期信号、垂直同期信号の立ち下がりタイミング、電子スコープの識別情報に対応する期間ごとのパルス幅の情報とに基づいて、期間ごとに変動するパルス幅を有するクランプパルスが、タイミング調整回路29からサグ補正回路22に出力される。
【0022】
パルス幅に対応したクランプパルスのLow出力期間の間、サグ補正回路22に入力されたデジタル・コンポーネント信号の黒レベルのサンプルが抽出され、黒レベル調整(サグ補正)が行われる。本実施形態では、クランプパルスのLow出力の時間が、画像処理プロセッサ20に接続された電子スコープ10の特性や、フィールド期間内の期間ごとに設定される。
【0023】
例えば、フィールド期間の垂直ブランキング期間の前置等化パルス期間や後置等化パルス期間においては、デジタル・コンポーネント信号の黒レベルのサンプルを抽出できる期間が比較的長いため、電子スコープ10の特性に応じて、クランプパルスのLow出力の時間が短い時間Tc1から長い時間Ta1で調整される(図2参照)。
【0024】
また、フィールド期間の垂直ブランキング期間の垂直同期パルス期間や、フィールド期間のビデオ期間においては、デジタル・コンポーネント信号の黒レベルのサンプルを抽出できる期間が比較的短いため、電子スコープ10の特性に応じて、クランプパルスのLow出力の時間が短い時間Tc2〜Ta2の中で調整される。
【0025】
図2は、3種類の電子スコープ(スコープ(1)〜(3))が画像処理プロセッサ20に装着された場合のクランプパルスの例を示す。
【0026】
スコープ(1)が装着された場合には、前置等化パルス期間、後置等化パルス期間は比較的長い抽出期間(パルス幅)Ta1が設定され、垂直同期パルス期間及びビデオ期間は比較的短い抽出期間(パルス幅)Ta2が設定され、後置等化パルス期間後からビデオ期間が始まるまでの間は比較的長い抽出期間(パルス幅)Ta3が設定される。
【0027】
スコープ(2)が装着された場合には、前置等化パルス期間、後置等化パルス期間は中程度の抽出期間(パルス幅)Tb1が設定され、垂直同期パルス期間及びビデオ期間は比較的短い抽出期間(パルス幅)Tb2が設定され、後置等化パルス期間後からビデオ期間が始まるまでの間は中程度の抽出期間(パルス幅)Tb3が設定される。
【0028】
スコープ(3)が装着された場合には、前置等化パルス期間、後置等化パルス期間は比較的短い抽出期間(パルス幅)Tc1が設定され、垂直同期パルス期間及びビデオ期間は比較的短い抽出期間(パルス幅)Tc2が設定され、後置等化パルス期間後からビデオ期間が始まるまでの間は比較的短い抽出期間(パルス幅)Tc3が設定される(ta1>Tb1>Tc1、Ta2≧Tb2≧Tc2、Ta3>Tb3>Tc3)。
【0029】
黒レベル調整は、サグ補正回路における比較的容量の小さいコンデンサを使い、クランプパルスのLow出力期間に抽出される黒レベルのサンプルに基づいて行われる。クランプパルスのLow出力期間が固定値に設定される場合、ビデオ期間などの黒レベルのサンプルの抽出可能な期間が短い期間であることに対応して、固定値が短い値に設定される。この場合、画像処理プロセッサ20に接続された電子スコープ10の特性によっては、サグ補正は行われるものの、容量の小さいコンデンサからの放電などにより、デジタル・コンポーネント信号値が時間の経過とともに増加する信号の持ち上がり現象が発生し、見た目(出力画像)では、黒レベルが右肩上がりに浮く現象(画像の右側の輝度が上がり白っぽくなる現象)が発生する。
【0030】
しかし、本実施形態では、電子スコープ10の特性や、黒レベルのサンプルの抽出可能な期間の長さに合わせて、クランプパルスのLow出力期間を調整するため、サグ補正回路22にあるコンデンサの容量を調整することと同等の効果が得られ、このようなデジタル・コンポーネント信号の持ち上がり現象(黒レベルが右肩上がりに浮く現象)を回避することが可能になる。
【0031】
黒レベル調整後、輝度信号は、サブ補正回路22から映像信号処理部23に出力され、他の映像信号と共に後段の画像信号処理(デジタル画像信号に増幅処理、ガンマ補正、輪郭強調等)が施され、信号処理部25に設けられた画像メモリ(不図示)に画像データとして格納される。画像メモリ内の画像データは、適時読み出されて所定のビデオ信号の仕様に準拠したビデオ信号処理が施され、モニタ30へ出力される。その結果、メインモニタ30に被観察体像が表示される。
【0032】
次に、クランプパルスのLow出力期間の長さが調整される流れを図3のフローチャートを使って説明する。画像処理プロセッサ20の電源がオン状態にされると、ステップS11で、パルス生成部21からサグ補正回路22に対してクランプハルスのHigh出力が行われる。ステップS12で、画像処理プロセッサ20に電子スコープ10が装着されたか否かが判断される。装着されない場合は、ステップS11に戻され、装着された場合は、ステップS13に進められる。
【0033】
ステップS13で、パルス生成部21からサグ補正回路22に対してクランプハルスのHigh出力が行われる。ステップS14で、水平同期信号の立ち下がりがあったか否かが判断される。無い場合は、ステップS13に戻され、あった場合は、ステップS15に進められる。
【0034】
ステップS15で、バースト信号出力が開始されるまで、ディレイ制御(一定時間の間、クランプパルスのLow出力への切り替えを行わない制御)が行われ、その後、ステップS16で、パルス生成部21からサグ補正回路22に対してクランプパルスのLow出力が行われる。ステップS17で、装着された電子スコープ10の特性が、クランプパルスのLow出力期間を調整する必要があるか否かが判断される。必要がある場合には、ステップS18に進められ、必要が無い場合はステップS19に進められる。
【0035】
ステップS18で、装着された電子スコープ10の特性、及びフィールド期間内の期間(映像信号期間など)ごとに、クランプパルスのLow出力の時間を計測するカウンタ値が、設定される。ステップS19で、電子スコープ10の特性や期間に関係なく、一定の固定値に、クランプパルスのLow出力の時間を計測するカウンタ値が設定される。
【0036】
ステップS20で、クランプパルスのLow出力時間の計測が開始される。ステップS21で、クランプパルスのLow出力時間が、カウンタ値に到達したか否かが判断され、到達していない場合はステップS21が繰り返され、到達した場合はステップS22で、パルス生成部21からサグ補正回路22に対してクランプハルスのHigh出力が行われる。
【0037】
ステップS23で、ステップS20〜S23で使用されたカウンタ値がリセットされる。ステップS24で、垂直同期信号の立ち下がりがあったか否かが判断される。無い場合は、ステップS20に戻され、あった場合は、ステップ25に進められる。ステップS25で、設定されたカウンタ値の総てがリセットされ、ステップS13に進められる(ラインが切り替えられる)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態における電子内視鏡システムの構成図である。
【図2】デジタル・コンポーネント信号と、クランプ信号とを示すタイミングチャートである。
【図3】クランプパルスのLow出力期間の長さが調整される流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 電子内視鏡システム
10 電子スコープ
11 操作部
12 挿入部
13 接続部
14 撮像素子
15 第1ROM
19 信号処理回路
20 画像処理プロセッサ
21 パルス生成部
22 サグ補正回路
23 映像信号処理部
25 スコープ判別回路
27 第2ROM
29 タイミング調整回路
30 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着された電子スコープの特性と、黒レベルのサンプルの抽出可能な期間とに対応したパルス幅を有するクランプパルスを出力するパルス生成部と、
前記パルス生成部から出力された前記クランプパルスのパルス幅に対応する期間の間、前記電子スコープから出力された輝度信号に対して、前記黒レベルのサンプルの抽出を行い、前記黒レベルの調整を行うサグ補正回路と、
前記サグ補正回路を介して出力された輝度信号に基づいて、前記電子スコープにより取得される画像データに画像処理を施す映像信号処理部とを備えることを特徴とする電子内視鏡システムの画像処理プロセッサ。
【請求項2】
前記パルス生成部は、バースト信号に対応したディレイ期間を考慮して、前記クランプパルスを出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理プロセッサ。
【請求項3】
前記パルス生成部は、前記装着された電子スコープを識別するための識別情報を取得する判別部と、
前記判別部からの識別情報に基づいて、前記装着される電子スコープに対応した前記パルス幅を設定する調整部とを有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理プロセッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−104770(P2008−104770A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292302(P2006−292302)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】