説明

電子内視鏡装置

【課題】一回の演算処理によって、動画像用および静止画像用のホワイトバランス係数を算出する。
【解決手段】ホワイトバランスボタンが操作されると、動画像用のフィールド読み出し方式によって画素信号を読み出し、動画像用マトリックスKによって得られた動画像のR、G、Bの信号に基づき、動画像用のホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)を算出する。そして、静止画像用のフレーム読み出し方式に従って画素信号を読み出し、静止画像用マトリックスMによって得られた静止画像のR、G、B色信号に基づき、静止画像用のホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)を算出する。ホワイトバランス処理回路は、通常観察モードにおいては動画像用のホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)に基づいたホワイトバランス処理を実行し、フリーズ動作時には静止画像用のホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)に基づいたホワイトバランス処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を有するビデオスコープを備えた電子内視鏡装置に関し、特に、ホワイトバランス等の色調整処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置では、インターライン転送方式のCCDを用いて観察画像を動画像として表示するとともに、同一露光による高解像度の静止画像を表示、記録することが可能である(例えば、特許文献1参照)。動画像を表示する場合、フィールド読み出し方式に従って隣接する画素が加算され、奇数フィールドの画素信号、偶数フィールドの画素信号として交互に読み出される。静止画像を表示、記録するためフリーズボタンが操作されると、静止画像用処理モードに切り替わり、同一露光によって得られる1フレーム分の画素信号を、奇数ラインの画素信号、偶数ラインの画素信号に分けて順次読み出す。
【0003】
一方、電子内視鏡装置では、光源の種類によらず被写体の色を忠実に再現するため、ホワイトバランス処理が実行される。算出されたR、G、Bの色信号に対し、それぞれR、G、Bゲイン値(ホワイトバランス係数)を乗じ、R、G、Bの比が1:1:1となるように色信号を補正する。照明光の相違などに起因して動画像と静止画像の色成分に相違が生じる場合、静止画像の画像信号に対してホワイトバランス係数を乗じ、さらに動画像との静止画像との対応関係によってあらかじめ定められた補正係数を乗じる。これにより、静止画像と動画像との色調を統一する(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3370871号公報
【特許文献2】特公平6−17942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
読み出される画素信号の色成分は、色フィルタの配列に従う。静止画像の読み出し方式が動画像の読み出し方式と異なるため、静止画像の読み出し方式に従って得られた画素信号の色成分は、動画像の読み出し方式によって得られる画素信号の色成分と異なる。そのため、動画像のホワイトバランス係数、静止画像のホワイトバランス係数を別々に求める必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子内視鏡装置は、複数の色要素から構成されるカラーフィルタと撮像素子とを有するビデオスコープと、動画像を得るための読み出し方式に従って撮像素子から画素信号(以下では、動画像用画素信号という)を順次読み出す動画像読み出し手段と、静止画像を得るための読み出し方式に従って撮像素子から画素信号(以下では、静止画像用画素信号という)を読み出す静止画像読み出し手段と、読み出された動画像用画素信号または静止画像用画素信号を色調整処理する色調整処理手段とを備える。
【0006】
例えば、動画像読み出し手段は、フィールド読み出しによって画素信号を読み出し、静止画像読み出し手段は、フレーム読み出しによって画素信号を読み出せばよい。色フィルタとしては、例えば補色フィルタを用いる。色調整手段は、例えばホワイトバランス処理を実行する。色調整された色信号は、映像信号としてモニタ等へ出力される。
【0007】
また、電子内視鏡装置は、色調整処理に用いられる補正係数を算出する演算処理手段とを備える。例えば、ホワイトバランス処理の場合、補正係数はホワイトバランス係数であり、R、G、Bの色信号の比を1:1:1とするように補正係数が算出される。演算処理実行のため、例えば、演算処理手段を実行開始する操作部材を設ければよい。ホワイトバランス係数を算出する場合、スコープ先端部に白色の被写体に向けて撮像し、操作部材に対するオペレータの操作によって読み出された画素信号に基づき、ホワイトバランス係数を算出する。
【0008】
本発明の演算処理手段は、補正係数を算出する場合、動画像読み出し手段を実行させることによって動画像用の補正係数を算出するとともに、静止画像読み出し手段を実行させることによって静止画像用の補正係数を算出する。すなわち、一回の補正係数演算処理において、動画像用の読み出し方式と静止画像用の読み出し方式をそれぞれ実行し、動画像用の補正係数と静止画像用の補正係数を同時に算出する。ただし、ここでは、動画像用の補正係数算出の後に静止画像用の補正係数を算出し、あるいはその逆の順で算出する場合も含む。演算処理手段は、例えば、動画像用の補正係数を算出した後、静止画像用の補正係数を算出すればよい。
【0009】
本発明の内視鏡用色調整演算処理装置は、動画像を得るための読み出し方式に従い、カラーフィルタを通った光によって被写体像が形成される撮像素子から動画像用画素信号を読み出す第1の画素信号読み出し手段と、動画像用画素信号に基づいて動画像用の色調整に関する補正係数を算出する第1の演算処理手段と、静止画像を得るための読み出し方式に従い、撮像素子から静止画像用画素信号を読み出す第2の画素信号読み出し手段と、静止画像用画素信号に基づいて静止画像用の色調整に関する補正係数を算出する第2の演算処理手段と、補正係数を算出する場合、第1の画素信号読み出し手段および第1の演算処理手段を実行させ、連動して、第2の画素信号読み出し手段および第2の演算処理手段を実行させる演算制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のプログラムは、動画像を得るための読み出し方式に従い、カラーフィルタを通った光によって被写体像が形成される撮像素子から動画像用画素信号を読み出す第1の画素信号読み出し手段と、動画像用画素信号に基づいて動画像用の色調整に関する補正係数を算出する第1の演算処理手段と、静止画像を得るための読み出し方式に従い、撮像素子から静止画像用画素信号を読み出す第2の画素信号読み出し手段と、静止画像用画素信号に基づいて静止画像用の色調整に関する補正係数を算出する第2の演算処理手段と、補正係数を算出する場合、第1の画素信号読み出し手段および第1の演算処理手段を実行させ、連動して、第2の画素信号読み出し手段および第2の演算処理手段を実行させる演算制御手段とを機能させることを特徴とする。
【0011】
本発明の内視鏡用色調整演算処理方法は、動画像を得るための読み出し方式に従い、カラーフィルタを通った光によって被写体像が形成される撮像素子から動画像用画素信号を読み出し、動画像用画素信号に基づいて動画像用の色調整に関する補正係数を算出し、静止画像を得るための読み出し方式に従い、前記撮像素子から静止画像用画素信号を読み出し、静止画像用画素信号に基づいて静止画像用の色調整に関する補正係数を算出し、補正係数を算出する場合、前記第1の画素信号読み出し手段および前記第1の演算処理手段を実行させ、連動して、前記第2の画素信号読み出し手段および前記第2の演算処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一回の演算処理によって、動画像用および静止画像用のホワイトバランス係数を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。図2は、動画像に関する色フィルタの配列の一部を示した図である。図3は、静止画像に関する色フィルタの配列の一部を示した図である。
【0015】
電子内視鏡装置は、CCD54を有するビデオスコープ50と、CCD54から読み出される画素信号を処理するとともに光源ユニットが一体的に設けられたプロセッサ10とを備える。ビデオスコープ50はプロセッサ10に着脱自在に接続され、また、被写体像を表示するモニタ70およびレコーダ90がプロセッサ10に接続される。
【0016】
ランプ点灯スイッチ(図示せず)がONになると、ランプ制御部11からランプ12へ電源が供給され、ランプ12が点灯する。ランプ12から放射された光は、ロータリーシャッタ15、集光レンズ16を介してビデオスコープ50内を通ったライトガイド51の入射端51Aに入射する。ライトガイド51は、ランプ12から放射される光をビデオスコープ50の先端側へ伝達する光ファイバー束によって構成されており、ライトガイド51を通った光は出射端51Bから出射し、拡散レンズである配光レンズ(図示せず)を介して観察部位に光が照射する。
【0017】
観察部位において反射した光は対物レンズ(図示せず)を介してCCD54に到達し、観察部位の像がCCD54の受光面に形成される。本実施形態では、動画像表示の場合、カラー撮像方式としてフィールド色差線順次方式が適用されており、CCD54はインターライン転送型CCDが適用されている。また、CCD54の受光面上には、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)の色要素が市松状に並べられた補色カラーフィルタ54Aが受光面の各画素に対応するよう配置される(図2、3参照)。
【0018】
CCD54では、補色カラーフィルタ54Aを通る色に応じた被写体像の画素信号が光電変換により発生する。光電変換により生成された画素信号は、CCDドライバ59から送られてくる駆動信号に従い、1/60秒時間間隔ごとに読み出される。色差線順次方式(フィールド読み出し)に従い、奇数フィールド、偶数フィールドにおいて垂直方向に沿って異なった隣接2画素が加算されて読み出され(図2参照)、増幅回路55へ送られる。
【0019】
増幅回路55では、画素信号に対して増幅処理等が施され、増幅処理された画素信号が初期信号処理回路57へ送られる。初期信号処理回路57では、画像信号に対し所定の処理が施され、プロセッサ10のプロセッサ側信号処理回路28へ送られる。プロセッサ側信号処理回路28では、初期信号処理回路57から送られてくる画像信号に対し、ホワイトバランス処理、ガンマ補正など様々な処理が施され、映像信号が生成される。映像信号がモニタ70へ出力されることにより、観察画像が動画像としてモニタ70に表示される。
【0020】
一方、フリーズ動作によって静止画像を表示、記録する場合、フリーズボタン53が押下される。フリーズボタン53が押下されると、フレーム読み出し方式に従って画素信号がCCD54から読み出される。すなわち、1回の露光で蓄積された一フレーム分の画素信号が、CCD54の画素配列において奇数ラインの画素信号、偶数ラインの画素信号に分けられ、2フィールド期間に渡って順番に読み出される(図3参照)。奇数ライン、偶数ラインの画素信号は、初期信号処理回路57を介してプロセッサ側信号処理回路28へ順に送られる。プロセッサ側信号処理回路28では、モニタ70に表示する静止画像に応じた映像信号が生成され、静止画像用の映像信号がモニタ70に出力される。これにより、静止画像(フリーズ画像)がモニタ70に表示され、それとともに静止画像データがレコーダ90へ記録される。
【0021】
ロータリーシャッタ15は、遮光部と開口部によって構成されており、モータ(ここでは図示せず)を介して駆動部23から送られてくる駆動信号により一定速度で回転する。ロータリーシャッタ15の回転により、照明光が間欠的に被写体に照射される。これにより、CCD54の露光期間が周期的に定められる。ロータリーシャッタ15と集光レンズ16との間には、遮光用のチョッパ17が退避可能に設けられており、駆動回路24から送られてくる駆動信号に基づいて動作する。フリーズ動作によって偶数ラインの画素信号を読み出す間(第2フィールドの期間)、CCD54の露光を防ぐため、チョッパ17が遮光位置まで移動する。
【0022】
CPUを含むシステムコントロール回路22は、プロセッサ10の動作を制御し、ランプ制御部11、プロセッサ側信号処理回路28などの各回路に制御信号を出力する。プロセッサ側のタイミングコントロール回路(図示せず)は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルス信号をプロセッサ10内の各回路へ出力し、また、ビデオ信号に付随される同期信号をプロセッサ側信号処理回路28へ送る。フリーズボタン53が操作されると、システムコントロール回路22は、画素信号読み出し、および信号処理を動画像表示モード(通常観察モード)からフリーズ動作実行モードへ切り替えるように制御信号を出力する。
【0023】
ビデオスコープ50には、ビデオスコープ50を制御するスコープコントローラ56が設けられており、初期信号処理回路57、タイミングコントロール回路58を制御する。タイミングコントロール回路58は、スコープコントローラ56から送られてくる制御信号に基づいてCCDドライバ59に駆動信号を出力し、CCD54の画素信号読み出し処理を調整する。システムコントロール回路22からの制御信号に従い、動画像用の画素信号読み出し、あるいは静止画像用の画素信号読み出し処理を実行する。ビデオスコープ50がプロセッサ10に接続されると、スコープコントローラ56とシステムコントロール回路22との間でデータが送受信される。
【0024】
処置等の内視鏡作業を開始する前、ホワイトバランス処理に用いられるホワイトバランス係数を演算するため、内部が白色の筒80がスコープ先端部に被せられる。そして、後述するように、フロントパネルに設けられたホワイトバランスボタン60が操作されると、動画像用のホワイトバランス係数および静止画像用のホワイトバランス係数が一度に算出される。
【0025】
図4は、プロセッサ側信号処理回路28の概略的ブロック図である。ここでは、ホワイトバランス処理に関する構成のみ図示している。
【0026】
プロセッサ側信号処理回路28は、色変換処理回路32、ホワイトバランス処理回路34、輝度、色差信号生成回路36を備える。システムコントロール回路22からの制御信号に従い、動画像用画素信号に対する信号処理、および静止画像用画素信号に対する信号処理を選択的に実行する。
【0027】
動画像を表示する場合、色変換処理回路32では、奇数フィールドの画素信号が1フィールド期間サンプルホールドされ、奇数フィールドの画素信号と偶数フィールドの画素信号における隣接する4画素ごとにマトリックス演算が実行される。CCD54から読み出される画素信号を、それぞれWb(=Mg+Cy)、Wr(=Mg+Ye)、Gb(=G+Cy)、Gr(=G+Ye)と表すと、マトリックス係数kij(1£i£3、1£j£4)によって構成される3×4の動画用マトリックスKに基づき、R、G、Bの色信号(1)式によって求められる。
【0028】
【数1】

【0029】
生成されたR、G、Bの色信号は、ホワイトバランス処理回路34においてホワイトバランス処理される。すなわち、R、G、Bの比が1:1:1となるように、R、G、Bそれぞれに対し、ホワイトバランス係数(R、G、Bゲイン値)が乗じられる。動画像用のホワイトバランス係数は、後述するホワイトバランス係数の演算処理において算出され、ホワイトバランス処理回路34のレジスタ等に格納されている。
【0030】
ホワイトバランス調整されたR、G、Bの色信号は、隣接する画素の色成分に基づいた色成分補間処理、図示しないガンマ補正回路におけるガンマ補正などの処理後、輝度、色差信号生成回路36へ送られる。輝度、色差信号生成回路36では、R、G、Bの色信号から輝度信号Y、色差信号Cb、Crが生成され、映像信号としてモニタ70へ出力される。
【0031】
一方、フリーズ動作を実行する場合、色変換処理回路32では、奇数ラインの画素信号がサンプルホールドされ、奇数ラインの画素信号、偶数ラインの画素信号における隣接する4画素Cy、Mg、Ye、Gごとにマトリックス演算が実行される。静止画像の場合、マトリックス係数mij(1£i£3、1£j£4)によって構成される静止画用マトリックスMに基づき、R、G、Bの色信号が(2)式によって求められる。
【0032】
【数2】

【0033】
生成されたR、G、Bの色信号は、ホワイトバランス処理回路34においてホワイトバランス調整される。すなわち、R、G、Bの色信号に静止画像用のホワイトバランス係数が乗じられる。ホワイトバランス調整されたR、G、Bの色信号は、輝度、色差信号生成回路36において輝度信号Y、色差信号Cb、Crに変換される。静止画像用のホワイトバランス係数も、後述するホワイトバランス係数の演算処理において算出され、ホワイトバランス処理回路34のレジスタ等に格納されている。
【0034】
図5は、システムコントロール回路22によって実行されるホワイトバランス係数演算処理を示したフローチャートである。
【0035】
ステップS101では、ホワイトバランスボタン60が操作されたか否かが判断される。ホワイトバランスボタン60が操作されたと判断されると、ステップS102へ進み、動画像用ホワイトバランス係数を算出するため、動画像用の画素信号読み出し、および動画像用の信号処理を実行するように、システムコントロール回路22からスコープコントローラ56、プロセッサ側信号処理回路28へ制御信号が出力される。ただし、スコープ先端部に筒80が装着されているものとする。
【0036】
ステップS103では、ホワイトバランス処理回路34に入力された動画像用のR、G、Bの色信号がシステムコントロール回路22へ送信される。そして、システムコントロール回路22において、R、G、Bの色信号の比(R:G:B)を1:1:1とする動画像用ホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)、すなわちR、G、Bのゲイン値が算出される。算出された動画像用ホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)は、ホワイトバランス処理回路34のレジスタに格納される。ステップS103が実行されると、ステップS104へ進む。
【0037】
ステップS104では、静止画像用画素信号の読み出し、および信号処理が実行されるように、システムコントロール回路22から制御信号が出力される。そして、ステップS105では、ホワイトバランス処理回路34に入力された静止画像用のR、G、Bの色信号の比を1:1:1にする静止画像用ホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)が算出される。算出された静止画像用ホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)は、ホワイトバランス処理回路34のレジスタに格納される。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、ホワイトバランスボタン60が操作されると、動画像用のフィールド読み出し方式によって画素信号が読み出され、動画像用マトリックスKによって得られた動画像のR、G、Bの信号に基づき、動画像用のホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)が算出される。そして、静止画像用のフレーム読み出し方式に従って画素信号が読み出され、静止画像用マトリックスMによって得られた静止画像のR、G、B色信号に基づき、静止画像用のホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)が算出される。ホワイトバランス処理回路34は、通常観察モードにおいては動画像用のホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)に基づいたホワイトバランス処理を実行し、フリーズ動作時には静止画像用のホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)に基づいたホワイトバランス処理を実行する。
【0039】
次に、図6を用いて、第2の実施形態である電子内視鏡装置について説明する。第2の実施形態では、算出された動画像用ホワイトバランス係数に基づいて、静止画像用ホワイトバランス係数を計算式によって算出する。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0040】
図6は、第2の実施形態におけるホワイトバランス係数演算処理を示したフローチャートである。
【0041】
ステップS201〜S203の実行は、ステップS101〜S103の実行と同じである。すなわち、ホワイトバランスボタン60が操作されると、動画像用の画素信号読み出し方式、信号処理が実行され、動画像用ホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)が算出される。
【0042】
ステップS204では、算出された動画像用ホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)に基づき、以下の演算によって静止画像用ホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)が算出される。
【0043】
動画像表示のフィールド読み出し方式によって読み出される画素信号Wb、Wr、Gb、Grと、静止画像のフレーム読み出し方式によって読み出される画素信号Cy、Mg、Ye、Gとの間には、色フィルタ14Bの配列特性によって以下の対応関係が成り立つ。
【0044】
【数3】

【0045】
(3)式に表された「1」と「0」のマトリクス係数から構成されるマトリックスをLとすると、(2)式の静止画像用マトリックスMは、(1)式で表された動画像用マトリックスKとLとの積によって表され、以下の関係式が成り立つ。
【0046】
【数4】

【0047】
静止画像、動画像との間に色再現について相違を生じさせないためには、動画像表示においてホワイトバランス調整されたR、G、Bの色信号の色成分が、フリーズ動作時にホワイトバランス調整されたR、G、Bの色信号の色成分が、一致しなければならない。一方、画素信号読み出し方式の違いにより、ホワイトバランス処理回路34に入力されるR、G、Bの色信号の値は、動画像および静止画像において相違し、それに従い、動画像用マトリックスKは、(4)式から明らかなように、静止画像用マトリックスMと一致しない。
【0048】
ステップS204では、静止画像用マトリックスMによって得られるR、G、Bの各色成分の値を動画像用マトリックスKによって得られるR、G、Bの各色成分の値と一致させるホワイトバランス補正係数(Nr、Ng、Nb)が、以下の式によって算出される。
【0049】
【数5】

【0050】
ホワイトバランス補正係数(Nr、Ng、Nb)は、動画像用マトリックスKと静止画像用マトリックスMとの各行の総和比によって求められ、それぞれ動画像におけるR、G、Bの色信号と静止画像におけるR、G、Bの色信号の値との各色成分における比を表す。
【0051】
そして、(5)式によって算出されたホワイトバランス補正係数(Nr、Ng、Nb)をステップS203で求められた動画像用ホワイトバランス補正係数(Kr、Kg、Kb)に乗じることにより、静止画像用ホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)が算出される。
【0052】
このように第2の実施形態によれば、ホワイトバランスボタン60が操作されると、動画像用のフィールド読み出し方式によって画素信号が読み出され、動画像用マトリックスKによって得られた動画像のR、G、Bの信号に基づき、動画像用のホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)が算出される。さらに、動画像用マトリックスKと静止画像用マトリックスMとに基づき、ホワイトバランス補正係数(Nr、Ng、Nb)が算出され、ホワイトバランス補正係数(Nr、Ng、Nb)と動画像用のホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)から静止画像用のホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)が算出される。ホワイトバランス処理回路34は、通常観察モードにおいては動画像用のホワイトバランス係数(Kr、Kg、Kb)に基づいたホワイトバランス処理を実行し、フリーズ動作時には静止画像用のホワイトバランス係数(Mr、Mg、Mb)に基づいたホワイトバランス処理を実行する。
【0053】
色フィルタの配列、画素信号読み出し方式については、補色フィルタ以外の原色フィルタを用いてもよく、また、インターリーブ方式など他の読み出し方式を適用してもよい。
【0054】
プロセッサの電源ONから所定時間経過後に自動的にホワイトバランス係数を求める演算処理を実行するなど、ホワイトバランスボタン以外の構成によって演算処理を実行開始してもよい。また、先に静止画像のホワイトバランス係数、次に動画像のホワイトバランス係数を算出してもよい。この場合、第1の実施形態では、先に静止画像に合わせたフレーム読み出し方式、信号処理が実行され、次に動画像に合わせたフィールド読み出し方式、信号処理が実行される。一方、第2の実施形態では、静止画像に合わせたフレーム読み出し方式、信号処理が実行され、静止画像用ホワイトバランス係数から動画像用ホワイトバランス係数が算出される。この場合、動画像用マトリックスと静止画像用マトリックスの各色成分のマトリクス係数の比(Σm1j/Σk1j、Σm2j/Σk2j、Σm3j/Σk3j)によってホワイトバランス補正係数を算出すればよい。
【0055】
第1の実施形態では、ホワイトバランス調整のためホワイトバランス係数が補正係数として求められるが、ホワイトバランス以外の色調整処理に用いられる補正係数の演算についても、同様に動画像、静止画像に分けて演算処理を一度に実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。
【図2】動画像に関する色フィルタの配列の一部を示した図である。
【図3】静止画像に関する色フィルタの配列の一部を示した図である。
【図4】プロセッサ側信号処理回路の概略的ブロック図である。
【図5】システムコントロール回路によって実行されるホワイトバランス係数演算処理を示したフローチャートである。
【図6】第2の実施形態におけるホワイトバランス係数演算処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10 プロセッサ
22 システムコントロール回路
28 プロセッサ側信号処理回路
32 色変換処理回路
34 ホワイトバランス処理回路
50 ビデオスコープ
54 CCD
54 色フィルタ
56 スコープコントローラ
59 CCDドライバ
60 ホワイトバランスボタン
Kr、Kg、Kb 動画像用ホワイトバランス係数(補正係数)
Mr、Mg、Mb 静止画像用ホワイトバランス係数(補正係数)
Nr、Ng、Nb ホワイトバランス補正係数(ホワイトバランス補正係数)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色要素から構成されるカラーフィルタと撮像素子とを有するビデオスコープと、
動画像を得るための読み出し方式に従って前記撮像素子から動画像用画素信号を順次読み出す動画像読み出し手段と、
静止画像を得るための読み出し方式に従って前記撮像素子から静止画像用画素信号を読み出す静止画像読み出し手段と、
読み出された動画像用画素信号または静止画像用画素信号を色調整処理する色調整処理手段と、
色調整処理に用いられる補正係数を算出する演算処理手段とを備え、
前記演算処理手段が、補正係数を算出する場合、前記動画像読み出し手段を実行させることによって動画像用の補正係数を算出するとともに、前記静止画像読み出し手段を実行させることによって静止画像用の補正係数を算出することを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
前記色調整処理がホワイトバランス処理を含み、前記補正係数がホワイトバランス係数であることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記動画像読み出し手段が、フィールド読み出しによって画素信号を読み出すことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記静止画像読み出し手段が、フレーム読み出しによって画素信号を読み出すことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項5】
前記演算処理手段が、動画像用の補正係数を算出した後、静止画像用の補正係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項6】
前記演算処理手段を実行開始する操作部材をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項7】
前記色フィルタが、補色フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項8】
動画像を得るための読み出し方式に従い、カラーフィルタを通った光によって被写体像が形成される撮像素子から動画像用画素信号を読み出す第1の画素信号読み出し手段と、
動画像用画素信号に基づいて動画像用の色調整に関する補正係数を算出する第1の演算処理手段と、
静止画像を得るための読み出し方式に従い、前記撮像素子から静止画像用画素信号を読み出す第2の画素信号読み出し手段と、
静止画像用画素信号に基づいて静止画像用の色調整に関する補正係数を算出する第2の演算処理手段と、
補正係数を算出する場合、前記第1の画素信号読み出し手段および前記第1の演算処理手段を実行させ、連動して、前記第2の画素信号読み出し手段および前記第2の演算処理手段を実行させる演算制御手段と
を備えたことを特徴とする内視鏡用色調整演算処理装置。
【請求項9】
動画像を得るための読み出し方式に従い、カラーフィルタを通った光によって被写体像が形成される撮像素子から動画像用画素信号を読み出す第1の画素信号読み出し手段と、
動画像用画素信号に基づいて動画像用の色調整に関する補正係数を算出する第1の演算処理手段と、
静止画像を得るための読み出し方式に従い、前記撮像素子から静止画像用画素信号を読み出す第2の画素信号読み出し手段と、
静止画像用画素信号に基づいて静止画像用の色調整に関する補正係数を算出する第2の演算処理手段と、
補正係数を算出する場合、前記第1の画素信号読み出し手段および前記第1の演算処理手段を実行させ、連動して、前記第2の画素信号読み出し手段および前記第2の演算処理手段を実行させる演算制御手段と
を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
動画像を得るための読み出し方式に従い、カラーフィルタを通った光によって被写体像が形成される撮像素子から動画像用画素信号を読み出し、
動画像用画素信号に基づいて動画像用の色調整に関する補正係数を算出し、
静止画像を得るための読み出し方式に従い、前記撮像素子から静止画像用画素信号を読み出し、
静止画像用画素信号に基づいて静止画像用の色調整に関する補正係数を算出し、
補正係数を算出する場合、前記第1の画素信号読み出し手段および前記第1の演算処理手段を実行させ、連動して、前記第2の画素信号読み出し手段および前記第2の演算処理を実行させることを特徴とする内視鏡用色調整演算処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−113177(P2008−113177A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294367(P2006−294367)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】