説明

電子整流式エンジン付き燃料輸送ポンプ

【課題】 製造上の低コスト性と作動上の高信頼性を兼ね備えた燃料輸送デバイスを提供する。
【解決手段】 燃料輸送デバイス(11)は、ポンプハウジング(10)と、ポンプハウジング(10)に接続されたポンプヘッド(12)とを備える。さらに、ポンプハウジング(10)には、電子整流式ブラシレスエンジンを有する燃料ポンプ(16)が設けられている。本発明に係る制御電子機器(18)は、燃料ポンプ(16)の電子整流式ブラシレスエンジンを制御する機器として、ポンプヘッド(12)内および/またはポンプヘッド(12)上に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関へ燃料を輸送する燃料輸送デバイスに関し、特に製造上の低コスト性と作動上の高信頼性を兼ね備えた燃料輸送デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車用内燃機関の燃料供給デバイスが記載されている。このデバイスには、燃料タンク(供給コンテナ)から内燃機関へ燃料を圧送するための、燃料ポンプユニット(コンベヤ集合体)が設けられている。その燃料ポンプユニットの下流には、燃料フィルタが配設され、その燃料フィルタの下流には、圧力センサが配設されている。圧力センサは、燃料の供給圧を計測し、その計測信号を燃料ポンプユニットの外部に配設された制御ユニットに送信する。一方、その計測信号を受信した制御ユニットは、燃料の供給圧力が所望の圧力またはその近傍に等しくなるように、燃料ポンプユニットの作動を制御する。
また、下記特許文献2には、ポンプヘッドと、電動ポンプをその内部に収容するポンプハウジングとを備えた燃料供給デバイスが記載されている。また、その燃料供給デバイスには、その電動ポンプを遠隔制御するための電子制御ユニットが設けられている。従って、その電子制御ユニットは、電動ポンプの外部に配設されている。
上記従来技術に見られるように、燃料ポンプユニットとその制御ユニットを離隔して配設すると、燃料ポンプユニットからの熱的・電磁的作用が制御ユニットに及ばなくなるため、制御ユニットの作動が安定する利点がある。しかし、その反面、別個のハウジングが必要となり、更には両ユニット間を接続する信号ラインが必要となり、材料コストが高くなる。また、燃料ポンプユニットから制御ユニットに到るライン経路が長くなることに起因して、送電損失が生じる。また、燃料ポンプユニットと電気的に接触している箇所で、接点不良等の不具合が生じることもあり、燃料ポンプの故障を招く危険性が増大する。特に、例えば、振動が原因で、接点不良が起こり得る。
ところで、燃料供給デバイスの構造上の容積を小さくするために、フィルタを燃料ポンプ内に内蔵し燃料ポンプのコンパクト化を図った燃料供給装置が知られている(例えば、特許文献3および特許文献4を参照。)。
【0003】
【特許文献1】DE 100 06 622号明細書
【特許文献2】DE 199 17 349号明細書
【特許文献3】特開2004−138004号公報
【特許文献4】特開2002−285930号公報
【特許文献5】特開2001−254655号公報
【特許文献6】米国特許第6,159,383号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した通り、従来の燃料供給デバイスでは、燃料ポンプユニットと、それを制御する制御ユニットが互いに離れた位置にあり、燃料ポンプユニットは信号ラインを介して制御ユニットによって遠隔制御されている。
しかし、燃料ポンプユニットと制御ユニットが離れていると、制御ユニットが燃料ポンプユニットを制御する際に送電損失が発生する。また、信号ラインが長くなることは電気的接点が増えるため、振動によって接点不良等の不具合が発生する場合があり、信頼性の観点からも好ましくない。また、制御ユニットを収容するためのハウジング及びスペースが別途必要となり、製造コストの観点から好ましくない。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、製造上の低コスト性と作動上の高信頼性を兼ね備えた燃料輸送デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の燃料輸送デバイスは、吸入口と排出口を有するポンプハウジング(10)と、該ポンプハウジング(10)に接続されそれを封止するポンプヘッド(12)と、前記ポンプハウジング(10)内に配設され燃料を内燃機関に輸送する燃料ポンプ(16)とを備えた燃料輸送デバイスであって、
前記燃料ポンプ(16)は電子整流式ブラシレスエンジンによって駆動され、
且つ前記電子整流式ブラシレスエンジンを制御する制御電子機器(18)は、前記ポンプヘッド(12)内および/または前記ポンプヘッド(12)上に配設されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の燃料輸送デバイスでは、燃料フィルタ(14)が、前記ポンプハウジング(10)内に配設されていることとした。
【0007】
請求項3に記載の燃料輸送デバイスでは、前記ポンプヘッド(12)内および/または前記ポンプヘッド(12)上に配設された制御電子機器は、前記燃料ポンプ(16)の前記電子整流式ブラシレスエンジンの回転数を制御することとした。
【0008】
請求項4に記載の燃料輸送デバイスでは、前記燃料ポンプ(16)の圧力を制御するために、前記ポンプヘッド(12)内または前記ポンプヘッド(12)上に圧力センサ(20)が配設されていることとした。
【0009】
請求項5に記載の燃料輸送デバイスでは、前記ポンプヘッド(12)が、高熱伝導率の材料から成っていることとした。
【0010】
請求項6に記載の燃料輸送デバイスでは、前記ポンプヘッド(12)が、金属材料から成っていることとした。
【0011】
請求項7に記載の燃料輸送デバイスでは、前記ポンプヘッド(12)が、冷却体(22)を備えることとした。
【0012】
上述した通り、本発明に係る、燃料を内燃機関へ輸送する燃料輸送デバイスは、ポンプハウジングと、ポンプハウジングに接続されたポンプヘッドとを備える。さらに、ポンプハウジングには、電子整流式ブラシレスエンジンによって駆動される燃料ポンプが設けられている。燃料ポンプは、好ましくは、燃料フィルタ内部に配設され、その燃料フィルタはフィルタハウジング内に収容される。フィルタハウジングは、例えば、測地学的に上側の位置で、フィルタヘッドによって閉じられる。
【0013】
本発明に係る、燃料ポンプの電子整流式ブラシレスエンジン用の制御電子機器は、ポンプヘッド内および/またはポンプヘッド上に配設される。例えば、ポンプヘッド内部に制御電子機器の全体を収容することが可能である。また、ポンプヘッド外部ではあるが、ポンプヘッドのすぐ隣に制御電子機器の全体を配設することも可能である。或いは、これらの2つの変形例を組み合わせることも可能である。
【0014】
電子整流式ブラシレスエンジン用の制御電子機器が、ポンプヘッド内部に収容されるため、燃料輸送デバイスに必要とされる材料費は安くなる。この為、特に、燃料輸送デバイスの構造は、より簡素で安価なものとなり得る。それに加えて、燃料ポンプから制御電子機器に到る長いライン経路に生じる送電損失が減少し、好ましくは完全に回避される。この為、制御電子機器から電子整流式ブラシレスエンジンに到るライン経路は短いほうが好ましい。
【0015】
他方、燃料ポンプには制御電子機器用の外部接点を設ける必要がないため、燃料輸送デバイスが故障する危険性が減少する。制御電子機器用にポンプハウジングとは別個のハウジングは必要とされないため、燃料輸送デバイスに要求される構造上の容積を減少させることが可能となる。ブラシレスモータを使用することで、より堅牢な構造が可能となり、燃料輸送デバイスの作動が高信頼性のものとなりうる。特に、ブラシレスタイプのモータを配設することで、燃料ポンプの作動上の障害を減少させることが可能となる。
【0016】
燃料フィルタは、ポンプハウジングの、燃料ポンプ外側の上流側または下流側に配設することが可能である。また、それに代わる他の方法として、燃料フィルタは、ポンプハウジングがフィルタハウジングを形成するように、ポンプハウジングの内部に、好ましくは、ポンプの周囲に配設することが可能である。この場合、ポンプヘッドは、フィルタヘッドとして構成される。
【0017】
制御電子機器、特に、電子整流式ブラシレスエンジンの回転数を制御するための制御電子機器は、フィルタヘッド内および/またはフィルタヘッド上に配設することが好ましい。また、燃料ポンプを圧力制御するための電子式の圧力センサは、フィルタヘッド内および/またはフィルタヘッド上に配設することが特に好ましい。
【0018】
上述した電子部品のすべては、例えば、フィルタヘッド内および/またはフィルタヘッドにある基板上に設けることが可能である。
【0019】
フィルタヘッドにある制御電子機器は、例えば、電子整流式エンジンの固定子を駆動する電子回路の形態で設けることが可能である。その駆動は、回転子の位置に基づいて行われ、その位置を計測するためのデバイスとしては、例えば、ホールセンサが適切である。
【0020】
伝熱を促進するために、フィルタヘッドは、高熱伝導率の材料、例えば、金属材料から構成されていることが好ましい。フィルタヘッドの材料としては、特に、100W/mKを超える熱伝導率を有していることが好ましく、200W/mKを超える熱伝導率を有している場合はさらに好ましい。このような好ましい材料の例としては、熱伝導率が約115W/mKの亜鉛ダイカスト、または熱伝導率が約237W/mKのアルミニウムである。それに加えて又はそれに代わる方法によって、フィルタヘッドは、例えば、冷却リブ又は、拡大された冷却面を有する冷却体を構成することも可能である。或いは、フィルタヘッドに対し高熱伝導率が要求されない場合、例えば、冷却される部品が廃熱をほとんど発生しない場合は、プラスチック材料を使用することも可能である。このようなプラスチック材料としては、熱伝導率が約0.28W/mKのPA6.6(溶解)が好ましい。
【0021】
伝熱をさらに促進するために、制御電子機器のフィルタヘッドへの接続は、熱伝導率を良好にする形態で成されていることが好ましい。このための形態としては、例えば、制御電子機器が、フィルタヘッドに対して大きな接触面を有する基板として形成されていることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の燃料輸送デバイスによれば、燃料ポンプ、その制御電子機器および燃料フィルタを一体に構成することが可能になる。従って、機器を収容するハウジングが一つとなり、製造コストが減少する。また、燃料ポンプとその制御電子機器との間の信号ラインが大幅に短縮され、送電損失および接点不良等の不具合が起こる危険性が減少し、燃料輸送に係る信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の燃料輸送デバイス11を示す要部断面説明図である。
この燃料輸送デバイス11は、内燃機関(図示せず)へと燃料を輸送するために、フィルタハウジング10と、フィルタヘッド12と、燃料フィルタ14とを備える。電子整流式ブラシレスエンジン(図示せず)を備えた燃料ポンプ16が、燃料フィルタ14内に配設されている。フィルタハウジング10は、燃料ポンプ16によって燃料を吸い込むための吸入口30を有するように形成されている。更に、フィルタハウジング10には、燃料ポンプ16によって内燃機関へと燃料を輸送するための排出口32が設けられている。フィルタヘッド12には、燃料ポンプ16を駆動する電子整流式ブラシレスエンジン用の制御電子機器18が、基板の形態で設けられている。また、その基板上には、燃料ポンプ16の圧力を制御するための電子式の圧力センサ20が配設されている。なお、燃料ポンプ16の圧力制御については、機械的な圧力制御手段を使用することによって機械的に実行することも可能である。
【0025】
電子接点として、燃料輸送デバイスには電気コネクタ26が設けられている。
【0026】
燃料輸送デバイスの熱伝導率を高めるために、フィルタヘッド12は、例えば金属材料から成る。それに代わる他の実施形態として、又はそれに追加して、例えば冷却体22を設けることも可能である。冷却体は、例えば、フィルタヘッド12の蓋24上に取り付けられる。
【0027】
燃料フィルタ14の上流および下流をシールするために、シール材、好ましくは、Oリング等のシール材が、例えば、燃料ポンプの上方および下方に設けられる。シール材は、燃料ポンプ16とフィルタハウジング10との間、または燃料フィルタ14とフィルタハウジング10との間および燃料フィルタ14とフィルタヘッド12との間に配設されうる。
【0028】
本発明の燃料輸送デバイスを作動させるために、制御ユニットの形態の電子部品は、特に必要とされない。
【0029】
また、圧力センサ20を作動させるために、別の電気プラグ又はハウジングは必要とされない。
【0030】
図面を参照しながら本発明の特定の実施形態について説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されることを意図したものではない。当業者であれば、特許請求の範囲の記載によって限定される本発明の技術的範囲には上記以外の様々な変形例および実施例が含まれ得ることを理解するであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲の記載およびその均等の範囲内にあるこのような全ての変形例および実施例を含むことを意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の電子整流式エンジン付き燃料輸送ポンプは、内燃機関に燃料を輸送する燃料供給デバイスに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の燃料輸送デバイスを示す要部断面説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 ポンプハウジング、フィルタハウジング
11 燃料輸送デバイス
12 ポンプヘッド、フィルタヘッド
14 燃料フィルタ
16 燃料ポンプ
18 制御電子機器
20 圧力センサ
22 冷却体
24 蓋
26 電気コネクタ
30 吸入口
32 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口と排出口を有するポンプハウジング(10)と、該ポンプハウジング(10)に接続されそれを封止するポンプヘッド(12)と、前記ポンプハウジング(10)内に配設され燃料を内燃機関に輸送する燃料ポンプ(16)とを備えた燃料輸送デバイスであって、
前記燃料ポンプ(16)は電子整流式ブラシレスエンジンによって駆動され、
且つ前記電子整流式ブラシレスエンジンを制御する制御電子機器(18)は、前記ポンプヘッド(12)内および/または前記ポンプヘッド(12)上に配設されていることを特徴とする燃料輸送デバイス。
【請求項2】
燃料フィルタ(14)が、前記ポンプハウジング(10)内に配設されている請求項1に記載の燃料輸送デバイス。
【請求項3】
前記ポンプヘッド(12)内および/または前記ポンプヘッド(12)上に配設された制御電子機器は、前記燃料ポンプ(16)の前記電子整流式ブラシレスエンジンの回転数を制御する請求項1に記載の燃料輸送デバイス。
【請求項4】
前記燃料ポンプ(16)の圧力を制御するために、前記ポンプヘッド(12)内または前記ポンプヘッド(12)上に圧力センサ(20)が配設されている請求項1に記載の燃料輸送デバイス。
【請求項5】
前記ポンプヘッド(12)が、高熱伝導率の材料から成っている請求項1に記載の燃料輸送デバイス。
【請求項6】
前記ポンプヘッド(12)が、金属から成っている請求項1に記載の燃料輸送デバイス。
【請求項7】
前記ポンプヘッド(12)が、冷却体(22)を備える請求項1に記載の燃料輸送デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2008−309156(P2008−309156A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155134(P2008−155134)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(508178593)ティーアイ オートモーティブ(ノイス) ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】TI Automotive(Neuss) GmbH
【Fターム(参考)】