説明

電子柄編機の巻取制御方法および装置

【課題】編地の柄を変更しても、編地を適切で安定した巻取張力で自動的に巻き取ることができる電子柄編機の巻取制御方法および装置を提供する。
【解決手段】巻取制御部6により、巻取サーボモータ5の制御モードを、編地の巻取張力が一定となるように巻取サーボモータ5を回転させるトルク制御モード、および編機の回転に対して巻取サーボモータ5を一定の回転角度で回転させる位置制御モードを含むモードに設定可能とし、位置制御モードで第1の柄の編地を生産している場合に第2の柄に変更されたとき、当該位置制御モードからトルク制御モードへ自動的に移行させることによって、該トルク制御モードで変更された第2の柄の編地の巻き取りが自動的に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地の柄設定を含む編成条件に基づいて編み立てられた筒状の編地を巻き取る制御を行う、電子選針機能を有する丸編機のような電子柄編機の巻取制御方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子選針機能を有する丸編機は、編地の柄設定を含む編成条件に基づいて編針を針溝に収容したシリンダをモータによる駆動で回動させ、編針に糸を供給させて筒状の編地を編み立てる編成部と、この編成部により編み立てられた筒状の編地を巻き取る巻取機構部とを有している。近年では、糸や編地の柄などの多様化および品質レベルの高度化に伴い、巻取機構部の巻取ローラを駆動させるために、精密で高速な制御が可能なサーボモータを使用する場合が多い。この場合、巻取制御部は、編機の稼働速度に同期した指令パルスをサーボモータに与えて編地を巻き取る制御を行い、サーボモータの速度制御、位置制御およびトルク制御モードを使用することが知られている。
【0003】
丸編機の編地巻取では、巻取張力が一定でないと、巻きむらができて製品不良が生じ得る。また、反物のロールの巻き径が大きくなるラージ巻取の場合、反物の巻き始めと巻き終わりでは反物のロールの重量が大きく異なるため、編地に加わる巻取張力が変動する。
【0004】
従来の巻取制御において、編機の編地巻取にトルク(サーボ)モータのトルク制御を使用したもので、モータの出力トルクを一定にすることで、編地生産量が変化しても一定の巻取張力を保つようトルクモータを制御して、自動トルク調整を行うことが知られている。
【0005】
その一方、巻取にサーボモータの位置制御を使用したもので、編地の柄の変更ごとに、予め編機1回転あたりのサーボモータの回転角度である編地生産量、つまりサーボモータへの指令パルス数の1パルスあたりの移動量データ(位置制御データ)をサーボモータドライバに与えることにより、編地を一定の巻取張力で巻き取ることも知られている。
【0006】
また従来の巻取制御において、最初はトルク制御モードを使用して設定した巻取張力で編地を巻き取りながらその際の生産量を測定し、その生産量に設定した位置制御モードに切り替える一連の作業を自動的に行うことも知られている(特許文献1)。編地の柄を変更した際には手動でこのモード切り替えを行うことにより、適切な巻取張力における移動量データを取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−285700号公報
【特許文献2】特許第2733760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のサーボモータの位置制御では、巻取サーボモータの位置制御を使用して所定の生産用の柄の編地を生産した後、この柄に代えて別の柄の編地を生産する場合がある。そのような場合には、新規の柄への変更であれば実際に編み下ろした後に測定しなければ把握することができない。また、生産中の柄に関して何らかの機械トラブルが発生したときにトラブル解決のために機械調整に適したテスト用の柄に変更する場合もある。この場合、編地の柄ごとにそれぞれ編地生産量が異なるため、編地の巻取張力が異常に大きくなったり、または小さくなったりする不具合により、編地が破れるまたは編地を突き上げるといった二次トラブルが発生するという問題があった。これを防止するには、柄の変更の都度、適切な巻取張力となるように上記サーボモータへの指令パルス数の1パルスあたりの移動量データを調べて設定する必要があるが、この設定は煩雑であり、巻取制御の自動化が困難であった。
【0009】
また、サーボモータのトルク制御は、一定の力でサーボモータを回すことで、一定範囲内の巻取張力は得られるものの、モータの出力トルクと巻取張力が比例関係にあることを利用したものであるため、巻取機構部のギアやローラなどの機械的な負荷変動や反物のロール径の変化などによって、前記出力トルクと巻取張力の比例関係が変化することから、同じ出力トルクでも巻取張力が変化してしまい、必ずしも安定した巻取張力での巻取制御とはいえなかった。このような場合には、巻き取り時にロールの重量の変化を検出し、それに応じてトルクを漸次増加させるようにトルクモータを制御して自動トルク調整を行う方法が知られている(例えば、特許文献2)。しかし、当該方法ではロール重量の変化を検出する検出回路を追加する必要がある。
【0010】
本発明は、前記の問題点を解決して、編地の柄を変更しても、編地を適切で安定した巻取張力で自動的に巻き取ることができる電子柄編機の巻取制御方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一構成にかかる電子柄編機の巻取制御方法および装置は、巻取ローラおよびローラ駆動用の巻取サーボモータを含む巻取機構部により、編地の柄設定を含む編成条件に基づき編成部で編み立てられた筒状の編地を巻き取り、巻取制御部により前記巻取機構部を制御するものであって、前記巻取制御部により、前記巻取サーボモータの制御モードを、前記編地の巻取張力が一定となるように巻取サーボモータを回転させるトルク制御モード、および編機の回転に対して巻取サーボモータを一定の回転角度で回転させる位置制御モードを含むモードに設定可能とし、前記位置制御モードで第1の柄の編地を生産した後、第2の柄への変更時に、自動的に当該位置制御モードから前記トルク制御モードへ移行させることによって、該トルク制御モードで前記変更された第2の柄の編地の巻き取りが自動的に行われるものである。
【0012】
この構成によれば、位置制御モードで第1の柄の編地を生産した後、第2の柄への変更時に、位置制御モードからトルク制御モードへ自動的に移行させるので、トルク制御モードのもとで編地の巻取張力が一定となるから、編地の柄を変更して編地生産量が変化してもこれに応じて適切で安定した巻取張力で自動的に編地を巻き取ることができる。
【0013】
好ましくは、前記巻取制御部により、前記編地の柄が第1の柄から第2の柄に変更された後、元の第1の柄に変更されたとき、前記第2の柄に変更されたときのトルク制御モードから第1の柄を生産していたときの位置制御モードへ移行させることによって、該位置制御モードで前記変更された元の第1の柄の編地が巻き取られる。したがって、編地の柄が第2の柄に変更された後に元の第1の柄に変更されたとき、該位置制御モードのもとで編地を適切で安定した巻取張力で自動的に巻き取ることができる。
【0014】
好ましくは、前記第1の柄が生産用の柄であり、前記第2の柄が前記テスト用の柄または別の生産用の柄である。したがって、編地の柄を生産用の柄同士で変更する場合だけでなく、トラブル解決のためにテスト用の柄に変更する場合でも、編地を適切で安定した巻取張力で自動的に巻き取ることができる。
【0015】
好ましくは、前記巻取制御部により、前記編地の柄が第1の柄から第2の柄に変更されたときオートモードに設定されるものであり、前記オートモードの設定により、第1の柄を生産しているときの位置制御モードから、第2の柄に変更されたときトルク制御モードへ移行させ、該トルク制御モードで巻取状態が安定するまで、つまり、編機1回転あたりの巻取サーボモータの回転角度がほぼ一定になるまで第2の柄の編地を巻き取りながら、その安定状態で該トルク制御モードにおける編地生産量である位置制御データが測定され、測定された位置制御データを用いた位置制御モードへ移行させて、前記変更した第2の柄の編地が巻き取られる。したがって、編地の柄の変更に加えて、機械的な負荷変動や反物のロール径の変化があっても、自動的に一定の巻取張力を保持でき、より安定して編地を巻き取ることができる。
【0016】
好ましくは、前記巻取制御部により設定されるトルク制御モードが、第1の柄を生産しているときの位置制御モードにおける出力トルクが測定され、第1の柄から第2の柄に変更されたとき、前記測定された出力トルク値に設定されるものである。したがって、編地の柄の変更時に、出力トルクと巻取張力の関係が変化する状態であっても、必要な巻取張力にするための出力トルクを使用してトルク制御モードで適切に編地を巻き取ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、位置制御モードで第1の柄の編地を生産している場合に第2の柄に変更されたとき、位置制御モードからトルク制御モードへ自動的に移行させるので、トルク制御モードのもとで編地の巻取張力が一定となるから、編地の柄を変更してもこれに応じて適切で安定した巻取張力で自動的に編地を巻き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による巻取制御装置を備え電子選針機能を有する丸編機のような電子柄編機の全体の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子柄編機の巻取制御装置を示すブロック図である。
【図3】図2の電子柄編機の巻取制御装置の動作の第1例を示すフローチャートである。
【図4】図2の電子柄編機の巻取制御装置の動作の第2例を示すフローチャートである。
【図5】図2の電子柄編機の巻取制御装置の動作の第3例を示すフローチャートである。
【図6】図2の電子柄編機の巻取制御装置の動作の第4例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、丸編機のような電子柄編機の全体の正面図である。図1に示すように、丸編機1は、筒状の編地を編み立てる編成部2と、編み立てられた筒状の編地を巻き取る巻取機構部3および巻取機構部3を制御する巻取制御部6からなる巻取部とを備えている。編成部2を含む編機本体側には、編機へのデータ入力や各種の表示などを行うための編機制御パネル20が設けられている。
【0020】
図1において、複数個の脚21によって支持されたベッド22の上方に編成部2が設置されている。ベッド22上には複数本のポスト24が立てられてあり、その上部は連結部材によって水平部材25が固定されている。水平部材25に給糸部9が支持されている。ベッド22の下方には編み立てられた編地を巻き取る巻取ローラ4およびローラ駆動用の巻取サーボモータ5を含む巻取機構部6が設置されている。
【0021】
ベッド22の下方左側には前記編機制御パネル20および丸編機全体を制御する全体制御部8が設けられている。全体制御部8は、編機(シリンダ)の編成条件を設定する編成条件設定手段16を備え、編成条件設定手段16は編地の柄を設定する柄設定部17を含む(図2)。編地の柄の変更は通常、手動による柄設定部17への入力によって行われる。
【0022】
図1の編成部2は、編地の柄設定を含む編成条件に基づいて、図示しない複数の編針を滑動自在に針溝に収容した編機(シリンダ)をメインモータ7による駆動で回動させ、編針に給糸部9から糸を供給させて螺旋状に編目を積み重ね、筒状の編地を編み立てる。編機(シリンダ)を回転させるメインモータ7は、前記全体制御部8により、例えばインバータによる周波数制御によって所定回転数で駆動するように制御される。
【0023】
図2は、巻取制御部6のブロック図を示す。前記巻取制御部6は、図1の巻取機構部3に設けられた巻取サーボドライバ10と、全体制御部8に設けられたデータ処理設定部13に含まれる制御モード設定手段11と、図1の巻取機構部3に設けられて(シリンダと巻取機構部3とは連結されている)、メインモータ7によるシリンダの回転数を検知する編機回転検出部(ロータリーエンコーダ)12とを備えている。
【0024】
巻取サーボドライバ10は、巻取サーボモータ5に対して例えばPWM制御出力(図示c)をしてPWM制御するもので、編機回転検出部12から入力するメインモータ7によるシリンダの回転角度(図示gの編機回転検出信号)に同期した指令パルスの出力パルス数を巻取サーボモータ5に与えることにより、巻取サーボモータ5の回転角度を制御する。巻取サーボドライバ10は、いずれも図示しないが、これらモータ制御・PWM制御出力部および編機回転検出信号入力部のほかに、データ処理設定部13とのシリアル通信部、後述する巻取サーボドライバ5との間におけるフィードバック電流検出部、モータ回転角度入力部を有している。
【0025】
図2の制御モード設定手段11は、前記編成条件設定手段16の柄設定部17からの編地の柄の変更に基づいて、巻取サーボモータ5の制御モードを、トルク制御モード、位置制御モードおよびオートモードに設定する(図示e)。編地の柄の変更には、第1の柄である生産用の柄から、第2の柄であるテスト用の柄または別の生産用の柄に変更される場合、または逆にテスト用の柄または別の生産用の柄から元の生産用の柄に変更される場合がある。テスト用の柄は、生産中の柄に関して何らかの機械トラブルが発生したときにトラブル解決のために機械調整に適した柄として使用される。
【0026】
トルク制御モードは、出力トルクが一定となるように図2の巻取サーボモータ5を回転させる制御を行う。このトルク制御では、前記したように、トルク制御がモータの出力トルクと巻取張力の比例関係を利用したものであるため、一定範囲内の巻取張力が得られる。その反面、巻取機構部のギアやローラなどの機械的な負荷変動や反物のロール径の変化などの影響を受けて、該比例関係が変化して、同じ出力トルクでも巻取張力が変化する場合がある。
【0027】
位置制御モードは、編機の回転に対して図2の巻取サーボモータ5を一定の回転角度(図示bのモータ回転信号)で回転させる制御を行う。この位置制御では、一定の巻取張力を保持しながら巻取サーボモータ5の高精度な回転角度制御を行うので、上記トルク制御と異なり、巻取機構部3のギアやローラなどの機械的な負荷変動の影響を受けないから、常に同じ編地生産量を巻き取ることができ、安定した巻取張力で巻き取ることが可能となる。その反面、前記したように、装置稼働中に編地の生産量が変化した場合には、トルク制御のような追従した巻き取りができない。本発明では、編地の柄の変更に際して、これら位置制御モードおよびトルク制御モードの長所に着目して、編地を適切で安定した巻取張力で自動的に巻き取る巻取制御を行う。
【0028】
前記制御モード設定手段11は、生産用の柄の編地を生産しているときの位置制御モードから移行して、テスト用の柄または別の生産用の柄に変更されたときのトルク制御モードに設定する場合、例えば、テスト用の柄または別の生産用の柄について予め指定したトルク値に設定したトルク制御モードが使用される。または、生産用の柄の編地を生産しているときの位置制御モードにおける出力トルクが測定されて、トルク制御モードへの移行の際に、この測定された出力トルク値に設定したトルク制御モードが使用される。
【0029】
トルク制御モードから移行して位置制御モードに設定する場合、例えば、元の生産用の柄の編地生産量(位置制御データ)に設定した位置制御モード、または、トルク制御モードで巻取状態が安定するまで第2の柄の編地を巻き取りながら、その安定状態で該トルク制御モードにおける編地生産量である位置制御データが測定され、この測定された位置制御データに設定した位置制御モードが使用される。
【0030】
位置制御モードから移行してオートモードに設定する場合、このオートモードは、トルク制御モードおよび位置制御モードを含むものであり、生産用の柄の編地を生産しているときの位置制御モードからテスト用の柄または別の生産用の柄に変更されてトルク制御モードへ移行させたとき、該トルク制御モードで巻取状態が安定するまでテスト用の柄または別の生産用の柄の編地を巻き取りながら、その安定状態で該トルク制御モードにおける編地生産量である位置制御データを測定し、測定した位置制御データを用いた位置制御モードへ移行させる。
【0031】
図2のデータ処理設定部13は、編機本体および巻取部全体のデータを処理し、データ設定するもので、前記制御モード設定手段11のほかにデータ取得手段14および安定判断手段15を備えている。
【0032】
データ取得手段14は、トルク制御モードにおける巻取状態で、巻取サーボドライバ10から巻取サーボモータ5の編機1回転ごとの回転角度(図示dのモータ回転角度)を取得して、編地における編機1回転あたりの巻取サーボモータ5の回転角度である生産量データを所定数取得させる処理を行う。この生産量データは、前記したメインモータ7によるシリンダの回転角度に同期した巻取サーボモータ5への指令パルスの出力パルス数における1パルスあたりの移動量データ(位置制御データ)である。
【0033】
また、前記した制御モード設定手段11が、位置制御モードで生産用の柄の編地を生産しているとき、当該位置制御モードにおける出力トルクが測定されて、柄が変更されたときトルク制御モードへの移行の際に、この測定された出力トルク値のトルク制御モードに設定する場合に、まず、データ取得手段14は、位置制御モードにおける巻取状態で、巻取サーボドライバ10がサーボモータ5から例えば1秒ごとの出力トルク値(図示hの出力トルク値)を取得し保存する。その後、柄を変更して位置制御モードからトルク制御モードへ移行する際に、保存していた出力トルク値の平均値をトルク指令値として設定することで、編地の巻取張力を柄変更前と同じにすることができる。例えば、柄変更前t秒間の出力トルク値を保存しておき、1<t/2<t秒のとき、柄変更時に柄変更前t/2〜t秒間の出力トルク値の平均値をトルク指令値として設定される処理を行う。機械停止直前(柄変更前1〜t/2秒間)の出力トルク値を使用しないのは、糸切れなどのトラブルにより編地に穴が開き機械が停止した場合、この穴により編地張力が変動することで出力トルク値も変動するため、機械停止直前の出力トルク値はそれまでの傾向から外れた値となるためである。
【0034】
安定判断手段15は、トルク制御モードにおける巻取状態で、編地の所定数の生産量データ、つまり巻取サーボモータ5への指令パルス数の1パルスあたりの移動量データが所定範囲内に収束したとき、前記巻取状態が安定したと判断する処理を行う。例えば10個の編機1回転あたりの前記移動量データが、その平均値の±1%以内に収束したときに、巻取状態が安定したと判断する。
【0035】
データ処理設定部13では、例えば、編地の生産量データである移動量データ(位置制御データ)および巻取サーボモータ5の電流データを自動設定(図示f)して、巻取サーボドライバ10に与え、トルク制御モードから位置制御モードに移行させる。
【0036】
こうして、データ処理設定部13は巻取サーボドライバ10に対して、トルク制御モード、位置制御モードおよびオートモードのモード設定(図示e)をし、生産量データの自動設定(図示f)を行う。巻取サーボドライバ10は巻取サーボモータ5に対して、前記PWM制御出力を行うことにより、トルク制御モードにおいて適切な巻取張力となる巻取サーボモータ5の電流による、および位置制御モードにおいて自動設定された巻取サーボモータ5の前記移動量データ(位置制御データ)と巻取サーボモータ5の電流とによるモータ制御(図示c)を行う。
【0037】
以下、上記構成を有する電子柄編機1の巻取制御装置の動作について説明する。図3は、電子柄編機1の巻取制御装置の動作の第1例を示すフローチャートである。まず、生産用の柄(第1の柄)の編地を位置制御モードで生産している場合に(ステップS1)、何らかの機械トラブルが発生したことにより、生産用の柄から機械調整に適したテスト用の柄(第2の柄)に変更されたか否かが確認される(ステップS2)。生産用の柄からテスト用の柄に変更された場合には、予めテスト用の柄について指定したトルク値に設定されたトルク制御モードで稼働させて(ステップS3)、ステップS2へ進む。この指定したトルク値は、テスト柄の場合における巻取機構部のギアやローラなどの機械的な負荷変動や反物のロール径の変化に応じて予め規定された値である。生産用の柄からテスト用の柄に変更されていない場合にも、ステップS2へ進む。
【0038】
これにより、生産用の柄からテスト用の柄に変更されたとき、トルク制御モードのもとで編地の巻取張力が一定となるから、編地の柄を変更してもこれに応じて適切な巻取張力で自動的に編地を巻き取ることができる。なお、この第1例では、編地の柄が生産用の柄からテスト用の柄に変更されているが、生産用の柄から別の生産用の柄に変更されてもよい。
【0039】
図4は、電子柄編機の巻取制御装置の動作の第2例を示すフローチャートである。まず、第1例と同様に、生産用の柄を位置制御モードで生産している場合に(ステップT1)、生産用の柄からテスト用の柄に変更されたか否かが確認され(ステップT2)、生産用の柄からテスト用の柄に変更された場合には、予めテスト用の柄について指定したトルク値に設定されたトルク制御モードで稼働させ(ステップT3)、生産用の柄からテスト用の柄に変わっていない場合には、ステップT2へ進む。つぎに、テスト用の柄による機械調整により機械トラブルが解決して、生産を再開するため、テスト用の柄から元の生産用の柄に変更されたか否かが確認される(ステップT4)。テスト用の柄から元の生産用の柄に変更された場合には、該元の生産用の柄についての位置制御モードで稼働させて(ステップT5)、ステップT2へ進む。テスト用の柄から元の生産用の柄に変更されていない場合には、ステップT4へ進む。
【0040】
これにより、編地の柄がテスト用の柄に変更された後に元の生産用の柄に戻したとき、該位置制御モードのもとで編地を適切で安定した巻取張力で自動的に巻き取ることができる。なお、第1例と同様に、生産用の柄からテスト用の柄への変更に代えて、生産用の柄から別の生産用の柄に変更されてもよい。
【0041】
図5は、電子柄編機の巻取制御装置の動作の第3例を示すフローチャートである。まず、生産用の柄を位置制御モードで生産している場合に(ステップP1)、この位置制御モードにおける機械稼働中の出力トルクが測定される(ステップP2)。この出力トルクは、機械の負荷変動や反物のロール径の変化に応じたもので、また、編地の柄が変更されても編地生産量が変わるだけで、柄変更後に出力トルク自体は変化しない。
【0042】
つぎに、生産用の柄から別の生産用の柄に変更されたか否かが確認される(ステップP3)。生産用の柄から別の生産用の柄に変更された場合には、オートモードで稼働して(ステップP4)、ステップP2へ進む。生産用の柄から別の生産用の柄に変更されていない場合にも、ステップP2へ進む。
【0043】
このステップP4のオートモードでは、まず、ステップP2で測定された出力トルク値で設定されたトルク制御モードで稼働し、巻取張力が安定するまで編地が巻かれる(ステップP4−1)。ここで、巻取張力の安定は、トルク制御モードでの巻き取り中の編機1回転ごとの生産量、つまり巻取サーボモータ5への指令パルス数の1パルスあたりの移動量データ(位置制御データ)が所定数計測されて、その平均値が所定範囲内で収束したか否かで判断される。つぎに、その安定状態での位置制御データ(編地生産量)が測定される(ステップP4−2)。その後、トルク制御モードから前記測定した位置制御データを使用した位置制御モードへ移行されて、常に同じ編地生産量を巻き取ることができる(ステップP4−3)。
【0044】
これにより、編地の柄の変更に加えて、機械の負荷変動や反物のロール径の変化があっても、一定の巻取張力を保持でき、自動的に安定して編地を巻き取ることができる。なお、予め別のノーマル柄の編地生産量が規定されている場合があるので、別のノーマル柄に変更したとき、このオートモードにおいて、予め規定された編地生産量に設定された位置制御モードを使用するか、または前記測定された編地生産量に設定された位置制御モードを使用するかを選択できることが好ましい。
【0045】
図6は、電子柄編機の巻取制御装置の動作の第4例を示すフローチャートである。まず、生産用の柄を位置制御モードで生産している場合に(ステップR1)、この位置制御モードにおける機械稼働中の出力トルクが測定される(ステップR2)。第3例と同様に、この出力トルクは、機械の負荷変動や反物のロール径の変化に応じたもので、また、編地の柄が変更されても編地生産量が変わるだけで、柄変更後に出力トルク自体は変化しない。つぎに、生産用の柄からテスト用の柄または別の生産用の柄に変更されたか否かが確認される(ステップR3)。生産用の柄から変更された場合には、第3例と同様に、ステップR2で測定された出力トルク値が利用されて、この出力トルク値で設定されたトルク制御モードまたは前記オートモードを利用した場合のそのうちのトルク制御モードで稼働させる(ステップR4)。生産用の柄から柄が変更されていない場合には、ステップR2へ進む。
【0046】
つぎに、テスト用の柄または別の生産用の柄が元の生産用の柄に変更されたか否かが確認される(ステップR5)。元の生産用の柄に変更された場合には、元の生産用の柄についての位置制御モードで稼働させて(ステップR6)、ステップR2へ進む。元の生産用の柄に変更されていない場合には、ステップR5へ進む。
【0047】
前記第4例は、例えばラージ巻きのように反物のロール重量が大きい場合に使用される。この場合は、反物のロール重量が小さい場合と比較して、同じ出力トルクでも編地の巻取量が小さくなり巻取張力が弱くなる。このため、上述したような出力トルクと巻取張力の関係が変化する。そこで、モータの出力トルクで制御しない位置制御モード時の出力トルクが柄変更前の状態で稼働中に測定され、柄の変更時にその測定された出力トルク値を使用したトルク制御モードに設定することにより、柄変更時に出力トルクと巻取張力との関係が変化した場合であっても、必要な巻取張力にするための出力トルクを使用したトルク制御モードで、適切で安定して編地を自動的に巻き取ることができる。こうして、生産用の柄からテスト用の柄または別の生産用の柄に柄が変更されたときに、ラージ巻きのように反物のロール重量が大きい場合であっても、適切で安定して編地を自動的に巻き取ることができる。
【0048】
なお、ラージ巻きの生産が終了し、大きな反物を下ろした後、柄を変更して生産するときは、反物のロール重量が大きい状態の測定された出力トルク値を使用すると、巻取張力が高くなり、トラブルを引き起こす可能性がある。このため、柄を変更した時に、その測定された出力トルク値を使用するか、または予め規定された出力トルク値を使用するかを選択できることが好ましい。または、図示しない機械稼動周回数カウントの数値をリセットした時、自動的に予め規定された出力トルク値を使用することが好ましい。もしくはロール重量センサーを設け、ロール重量が変動した場合に、自動的に予め規定された出力トルク値を使用することが好ましい。
【0049】
このように、本発明では、位置制御モードで第1の柄(生産用の柄)の編地を生産している場合に第2の柄(テスト用の柄または別の生産用の柄)に変更されたとき、位置制御モードからトルク制御モードへ自動的に移行させるので、トルク制御モードのもとで編地の巻取張力が一定となるから、編地の柄を変更してもこれに応じて適切で安定した巻取張力で自動的に編地を巻き取ることができ、ACT(Automatic Control Tension)を実現できる。
【符号の説明】
【0050】
1:電子柄編機(丸編機)
2:編成部
3:巻取機構部
4:巻取ローラ
5:巻取サーボモータ
6:巻取制御部
8:全体制御部
10:巻取サーボドライバ
11:制御モード設定手段
12:編機回転検出部
13:データ処理設定部
14:データ取得手段
15:安定判断手段
16:編成条件設定手段
17:柄設定部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取ローラおよびローラ駆動用の巻取サーボモータを含む巻取機構部により、編地の柄設定を含む編成条件に基づき編成部で編み立てられた筒状の編地を巻き取り、巻取制御部により前記巻取機構部を制御する電子柄編機における巻取制御方法において、
前記巻取制御部により、
前記巻取サーボモータの制御モードを、前記編地の巻取張力が一定となるように巻取サーボモータを回転させるトルク制御モード、および編機の回転に対して巻取サーボモータを一定の回転角度で回転させる位置制御モードを含むモードに設定可能とし、
前記位置制御モードで第1の柄の編地を生産している場合に第2の柄に変更されたとき、当該位置制御モードから前記トルク制御モードへ自動的に移行させることによって、該トルク制御モードで前記変更された第2の柄の編地の巻き取りが自動的に行われる、電子柄編機の巻取制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記巻取制御部により、前記編地の柄が第1の柄から第2の柄に変更された後、元の第1の柄に変更されたとき、前記第2の柄に変更されたときのトルク制御モードから第1の柄を生産していたときの位置制御モードへ移行させることによって、該位置制御モードで前記変更された元の第1の柄の編地が巻き取られる、電子柄編機の巻取制御方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の柄が生産用の柄であり、前記第2の柄がテスト用の柄または別の生産用の柄である、電子柄編機の巻取制御方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記巻取制御部により、前記編地の柄が第1の柄から第2の柄に変更されたときオートモードに設定されるものであり、
前記オートモードの設定により、第1の柄を生産しているときの位置制御モードから、第2の柄に変更されたときトルク制御モードへ移行させ、該トルク制御モードで巻取状態が安定するまで第2の柄の編地を巻き取りながら、その安定状態で該トルク制御モードにおける編地生産量である位置制御データが測定され、測定された位置制御データを用いた位置制御モードへ移行させて、前記変更した第2の柄の編地が巻き取られる、電子柄編機の巻取制御方法。
【請求項5】
請求項1または4において、
前記巻取制御部により設定されるトルク制御モードが、第1の柄を生産しているときの位置制御モードにおける出力トルクが測定され、第1の柄から第2の柄に変更されたとき、前記測定された出力トルク値に設定されるものである、電子柄編機の巻取制御方法。
【請求項6】
編地の柄設定を含む編成条件に基づき編成部で編み立てられた筒状の編地を巻き取る巻取ローラおよびローラ駆動用の巻取サーボモータを含む巻取機構部と、この巻取機構部を制御する巻取制御部とを有する電子柄編機における巻取制御装置において、
前記巻取制御部は、
前記巻取サーボモータの制御モードを、前記編地の巻取張力が一定となるように巻取サーボモータを回転させるトルク制御モード、および編機の回転に対して巻取サーボモータを一定の回転角度で回転させる位置制御モードを含むモードに設定可能な制御モード設定手段を有し、
前記位置制御モードで第1の柄の編地を生産している場合に第2の柄に変更されたとき、前記位置制御モードから前記トルク制御モードへ自動的に移行させることによって、該トルク制御モードで前記変更された第2の柄の編地の巻き取りを自動的に行わせる、電子柄編機の巻取制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19082(P2013−19082A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155075(P2011−155075)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000154510)株式会社福原精機製作所 (14)
【Fターム(参考)】