説明

電子楽音発生器の自動伴奏装置

【課題】曲の盛り上がりの知識を有していない演奏者によっても、自動的に演奏を盛り上げたり抑えたりする伴奏パターンに切り替えることができる自動伴奏装置を提供する。
【解決手段】コードに応じて、予定の伴奏パターンのうち一つを選択して自動伴奏する。押鍵・離鍵検出部34での押鍵・離鍵の検出結果に従って演奏コードをカレントコードバッファ35に記憶する。予定の繰り返し区間分の小節に関する演奏コードをループバッファ36に記憶する。バッファ36に記憶された演奏コードのコード進行に基づいてコード繰り返し区間の演奏されたことをコード進行判別部37で検出する。コードが繰り返された場合に、その直後の小節のコードとバッファ36の冒頭に記憶されているコードとの度数に応じて伴奏パターンを切り替えて自動伴奏を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽音発生器の自動伴奏装置に関し、特に、和音タイプに合致するように伴奏パターンを決定する電子楽音発生器の自動伴奏装置に関する。
【背景技術】
【0002】
曲の盛り上がりに応じて強弱、アクセント等を変えることのできる自動演奏装置が知られている。例えば、特許文献1に記載されている自動演奏装置では、曲の盛り上がりを感じた演奏者が、曲の盛り上がりの程度に応じてイントネーションダイヤルまたはエクスプレッションペダルを操作すると、曲の盛り上がりの程度(演奏表現上の音調の強弱)を表すイントネーション値が制御部から出力される。そして、リズムおよびイントネーション値に応じてROMから読み出された伴奏パターンに応じて伴奏音が発生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2623174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されている従来技術では、選択されたリズムに予め対応させられている伴奏パターンの伴奏を発生させるだけでなく、曲の途中で演奏者の意図する曲の盛り上がりの程度に応じて伴奏パターンを変化させることができる。しかし、演奏者が曲の盛り上がりの程度を感じて手動でイントネーションダイヤル等を操作して伴奏パターンを切り替えるものであったために、演奏者が曲の盛り上がりに関する知識を有していることが前提として必要であるという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題に対して、演奏者が曲の盛り上がりに関する知識を備えていない場合でも、曲の盛り上がりを検出して自動的に伴奏パターンを切り替えることができる電子楽音発生器の自動伴奏装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、コードに応じて、予め設定されている伴奏パターンのうち一つを選択して自動伴奏を行う電子楽音発生装置の自動伴奏装置において、鍵盤の押鍵および離鍵を検出する押鍵・離鍵検出手段と、前記押鍵・離鍵検出手段による検出結果に従って演奏コードを記憶するカレントコードバッファと、予め設定された繰り返し区間分の小節に関する演奏コードを記憶するループバッファと、前記ループバッファに記憶された演奏コードのコード進行が、現在および直前の繰り返し区間で同一であるかどうかによって演奏コードが繰り返されたか否かを検出するコード繰り返し判別手段と、前記コードの繰り返しが検出された場合に、その直後の小節のコードと、前記ループバッファの冒頭に記憶されているコードとの度数に応じて、予め設定されている複数の伴奏パターンの一つを選択して自動伴奏を行う自動伴奏手段とを具備している点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記自動伴奏手段が、度数が上がっているときには、伴奏パターンのうち、演奏を盛り上げるように設定されているバリエーションを選択し、度数が下がっているときには、伴奏パターンのうち、演奏の盛り上がりを抑制するように設定されているバリエーションを選択して自動伴奏を行うように構成されている点に第2の特徴がある。
【発明の効果】
【0008】
第1の特徴を有する本発明によれば、所定小節数分のコードが繰り返し演奏されたならば、その次の小節のコードとその直前の所定小節数分前のコードとの差分(つまり度数)に応じて、複数の伴奏パターンのバリエーションから一つが選択されて自動伴奏が行われる。したがって、転調した場合に、その度数の増減に応じて伴奏パターンを切り替えることができる。例えば、第2の特徴を有する本発明では、検出された度数に応じて演奏を盛り上げたり、盛り上がりを抑えたりすることができる。
【0009】
したがって、演奏曲の盛り上がりの知識を有していない演奏者であっても、演奏を盛り上げたり抑えたりする伴奏が自動的に選択される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動伴奏装置の要部機能を示すブロック図である。
【図2】自動伴奏装置を含む電子楽器のフロントパネルの平面図である。
【図3】キーボードコンダクタのスイッチの例を示す図である。
【図4】電子楽器のシステム構成図である。
【図5】電子楽器のメインループ処理を示すフローチャートである。
【図6】イベント処理のフローチャートである。
【図7】押鍵処理のフローチャートである。
【図8】離鍵処理のフローチャートである。
【図9】スイッチ処理のフローチャートである。
【図10】時変数処理のフローチャートである。
【図11】自動伴奏の詳細なフローチャートである。
【図12】伴奏パターンのデータ構造を示す図である。
【図13】伴奏パターンのパターン本体の一例を示す図である。
【図14】伴奏パターン選択のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る楽音発生器である電子楽器のフロントパネルを示す図である。ここでは、電子楽器1として電子オルガンを想定するが、本発明はこれに限定されるものではない。電子楽器1は、上鍵盤2および下鍵盤3からなる鍵盤装置4を有する。さらに、鍵盤装置4には、フロントパネルではなく、電子楽器1の下部に配置される図示しないペダル鍵盤を含む。鍵盤装置4の左側および上側(本明細書では、電子楽器1の上面視で、演奏者から遠い側を「上」、演奏者に近い側を「下」と記述する)にはコントロールパネル5が配される。
【0012】
コントロールパネル5は、ほぼ中央部に位置する表示装置6と、表示装置6の左右および鍵盤装置4の左側に設けられる操作部7とからなる。表示装置6は、電子楽器1の各設定状態や動作状態を表示する。操作部7は音色選択部8と、ドローバー9と、自動演奏操作部10と、キーボードコンダクタ11と、インクリメントダイヤル12とを有する。インクリメントダイヤル12の右にはメインスイッチ100が設けられ、コントロールパネル5の左右にはスピーカ33が設けられる
【0013】
音色選択部8は、上鍵盤2、下鍵盤3およびペダル鍵盤の音色系列のそれぞれについて設けられる複数の音色設定ボタンとボリューム等の設定ボタンとを有する(詳細は後述する)。キーボードコンダクタ11は、音色選択部8で選択された音色系列のオン・オフを、演奏中に集中的に制御して曲想に応じたダイナミックなアレンジを可能にするスイッチ群である。音色系列は、上鍵盤2および下鍵盤3に6系列ずつ、ペダル鍵盤に4系列設定可能である。
【0014】
図3は、キーボードコンダクタ11の図である。図3において、キーボードコンダクタ11は、上鍵盤2、下鍵盤3およびペダル鍵盤毎に設定される音色系列に対応した16個のスイッチ11a〜11pからなる。なお、下鍵盤3については、上鍵盤2と同様にボタンが設定されるので、図示を一部省略している。スイッチ11a〜11pをオン操作することによって、これらに割り当てられた音色系列での発音が可能になる。
【0015】
図4は、電子楽器1のシステム構成図である。電子楽器1は、システムバス22に接続されるCPU23、ROM24、RAM25、インタフェース26、および音源27を備える。インタフェース26には、鍵盤装置4、コントロールパネル5、表示装置6、およびMIDI等の入出力端子28が接続される。音源27には、デジタル信号処理装置(DSP)29、デジタル/アナログ変換回路(D/A)30、増幅器(AMP)31およびスピーカ33が電気的に接続される。音源27は波形メモリを有することができる。
【0016】
CPU23は、インタフェース26を通じて、鍵盤装置4(ペダル鍵盤も含む)の各鍵の押鍵、離鍵やコントロールパネル5および表示装置6に設けられるスイッチやボリューム等の状態を読み込む。そして、読み込まれた状態に応じて音源27を駆動し、楽音信号を発生させる。楽音信号はDSP29に入力されてエフェクトがかけられ、DSP29の出力信号はD/A30でアナログ信号に変換された後、増幅器31を介してスピーカ33に入力され、スピーカ33から楽音となって発音される。
【0017】
図5は電子楽器1のメインループ処理のフローチャートである。コントロールパネル5のメインスイッチ100がオン操作(例えば、押し下げ操作)されると、電源が入り、メインループ処理が開始される。まず、ステップS1では、所定の初期化処理が行われる。ステップS2では、イベントを検出したか否かが判断される。イベントが発生したと判断した場合はステップS2からステップS3に進み、所定のイベント処理を行う。イベント処理の後、およびイベントが検出されないでステップS2が否定となった場合は、ステップS4に進む。ステップS4では、時変数処理が行われる。メインループ処理はメインスイッチ100がオフ操作されて電源が切れるまで繰り返される。
【0018】
図6は、イベント処理のフローチャートである。イベント処理には、押鍵イベント、離鍵イベント、スイッチイベント、およびその他の処理が含まれる。図6において、ステップS31では、検出されたイベントが押鍵イベントであるか否かが判別される。ステップS31が肯定ならばステップS32に進んで押鍵処理が行われる。押鍵処理では音源27の発音チャネルをアサインする。イベントが押鍵イベントでない場合は、ステップS33に進み、離鍵イベントであるか否かが判別される。ステップS33が肯定ならばステップS34に進んで離鍵処理が行われる。離鍵処理では発音中のチャネルをサーチして、そのチャネルを開放する。
【0019】
押鍵イベントでも離鍵イベントでもない場合は、ステップS33からステップS35に進んで、検出されたイベントがスイッチイベントであるか否かが判別される。スイッチイベントはコントロールパネル5の処理全般をいい、スイッチイベントの有無は、コントロールパネル5上に設けられる操作部7のスイッチ等(メインスイッチ100は除く)の状態変化の有無によって判別される。ステップS35が肯定ならばステップS36に進んで、状態が変化したスイッチ等に対応した所定のスイッチ処理を行う。ステップS35が否定ならば、ステップS37でその他のイベントに応じた処理を行う。その他の処理は、タイマイベント処理やMIDI情報の受信処理等である。
【0020】
図7は、ステップS32の押鍵処理のフローチャートである。ステップS320では、押鍵された鍵の番号KNとベロシティVLと音色系列番号CHとを検出する。ステップS321では、押鍵された鍵の番号KNと音色系列番号CHとに基づいて音源27の発音リソースを選択し、リソース番号RNとして記憶する。この発音リソースの選択は周知の方法で行うことができる。
【0021】
ステップS322では、鍵番号、ベロシティ、および音色系列番号に基づいて発音パラメータを演算し、バッファに記憶する。ステップS323では、バッファに記憶した発音パラメータを音源のRN番目の発音リソースに転送して発音を開始する。
【0022】
ステップS324では、自動伴奏中か否かを判別する。自動伴奏中であれば、ステップS325に進み、鍵番号KNと音色系列CHがコード検出エリアか否かを判別する。ここでは、押鍵した鍵が予め設定したコード検出エリアの鍵および音色系列であるかの否かを判別する。ステップS325が肯定ならばステップS326に進み、カレントコードバッファの、押鍵鍵の値に「オン」を書き込む。
【0023】
カレントコードバッファはオクターブ内の音階に応じた数の記憶領域を有しており、押鍵または離鍵される毎にその対応する音階の記憶領域に「オン=押鍵」または「オフ=離鍵」データを書き込む。具体的には、オクターブの鍵数「12」で鍵番号KNを割った値の余りの数に対応する記憶領域に、押鍵時は「オン」を、離鍵時は「オフ」を書き込むことになる。
【0024】
ステップS327では、小節内の所定の時間範囲での押鍵か否かを判別する。所定の時間は、例えば、小節の最後の1/8拍の範囲とする。この小節の最後の1/8拍には、通常、自動伴奏パターン中に新たな演奏情報がないからである。所定時間内の押鍵と判断されれば、ステップS328に進んで時間フラグTFをセットする(TF=1)。ステップS327が否定ならばステップS329に進んで時間フラグTFをリセットする(TF=0)。
【0025】
図8は、ステップS34の離鍵処理のフローチャートである。ステップS340では、離鍵された鍵の番号KNとベロシティVLと音色系列番号CHとを検出する。ステップS341では、鍵番号KN及び音色系列番号CHに基づいて発音中の音源(発音中リソース)を検索し、リソース番号RNとして記憶する。この発音中リソースの検索は周知の方法で行うことができる。
【0026】
ステップS342では、鍵番号KN、ベロシティVL、および音色系列番号CHに基づいて消音パラメータCPrm(KN,VL,CH)を演算し、バッファに記憶する。ステップS343では、バッファに記憶した消音パラメータCPrmを音源のRN番目の発音リソースに転送して消音を開始する。
【0027】
ステップS344では、自動伴奏中か否かを判別する。自動伴奏中であれば、ステップS345に進み、鍵番号KNと音色系列CHがコード検出エリアか否かを判別する。ステップS345が肯定ならばステップS346に進み、カレントコードバッファの鍵番号KNを「12」で割った値の余りの鍵番号に「オフ」を書き込む。
【0028】
ステップS347では、離鍵が所定の時間範囲内かどうかを判別する。所定時間内の離鍵ならば、ステップS348に進んで時間フラグTFをセットする(TF=1)。ステップS327が否定ならばステップS349に進んで時間フラグTFをリセットする(TF=0)。
【0029】
図7および図8に関して説明したように、押鍵および離鍵のつど、カレントコードバッファのデータが更新され、このカレントコードバッファのデータに基づいて小節毎のコードが判断される。
【0030】
図9は、ステップS36のスイッチ処理のフローチャートである。ステップS360では、スイッチ番号SNとスイッチの値VAおよびVBを検出する。ステップS361では、操作されたスイッチがループ長LLを設定するスイッチか否かを判別する。ループ長LLは、演奏が繰り返される小節数であり、例えば、演奏者がコントロールパネル5上の、予め設定されているスイッチを操作して入力する。ループ長LLの設定値は初期化ルーチンで読み込んでおく。
【0031】
予め設定されたスイッチ操作によるループ長LLが入力されたならば、ステップS362に進み、その設定値VAをループ長LLとしてセットする。操作されたスイッチがループ長LLの設定スイッチでなければ、ステップS363に進んでその他のスイッチ処理を行う。スイッチ処理では引数としてスイッチの値VAおよびVBを使用するが、このループ長LLの設定においては、スイッチの値VAおよびVBのうち、値VAのみを使用する。
【0032】
図10は、時変数処理のフローチャートである。ステップS41では、フリーランタイマを読み込む間、割込を禁止する。ステップS42では、現在時間tとしてフリーランタイマの値Tを読み込む。ステップS43では、割込禁止を解除する。
【0033】
ステップS44では、前回処理からの変化時間Δtを算出する(Δt=t−t0)。t0は前回のステップS42で読み込んだフリーランタイマの値である。
【0034】
ステップS45では、消音検出処理を行う。消音検出処理では、離鍵された鍵の消音処理が終了したかどうかを検出して、その消音処理が終了した発音チャネルを開放する。
【0035】
ステップS46では、フィルタエンベロープのフェーズ進行を行う。つまり、押鍵から時間の経過に伴って変化するデジタルフィルタのカットオフ周波数エンベロープのフェーズをアタックの終了を待ってディケイフェーズに移す。ステップS47では、振幅エンベロープを減少させるディケイ処理を進める。ステップS46、S47は音源27の状態をチェックして行う。
【0036】
ステップS48では、自動伴奏中か否かを所定の自動伴奏スイッチがオンか否かの判断(スイッチ処理で行われる)によって行う。自動伴奏中ならば、ステップS49に進んで、自動伴奏を時間Δt秒だけ実行する(自動伴奏実行)。
【0037】
ステップS50では、ビブラートやトレモロ等の効果を付加するための回路である低周波発生回路(LFO)を歩進する。ステップS51では、LFOから出力された低周波による変調処理を行う。
【0038】
ステップS52〜S55では、それぞれ、ピッチベンダ、モジュレーションホイール、鍵盤プレッシャ、エクスプレッションペダルにより、ギターのチョーキング、バイオリンのビブラート、ブラスのクレッシェンドなど、様々な音の様々な演奏表現をシミュレートするための処理を行う。これらの処理は周知であり、また本発明には直接関連がないので、詳細な説明は省略する。
【0039】
ステップS56では、前回時間t0として現在時tを記憶する。
【0040】
図11は、ステップS49の自動伴奏の詳細なフローチャートである。ステップS490では、最近のループ長LL分の小節がその前のループ長LL分の小節と同じコード進行か否かを判断する。ステップS490が肯定ならば、コード進行が2つの連続するループ長LLに関して同一であってコード進行が繰り返された場合であるので、ステップS491に進んで繰り返し判定フラグLFをセットし(LF=1)、ステップS490が否定なければ、ステップS492に進んで繰り返し判定フラグLFをリセットする(LF=0)。
【0041】
ステップS493では、カレントコードバッファから現在のコードを取得してCCDとして記憶する。ステップS494では、最後のコード変更が所定時間内であったか否かを時間フラグTFによって判別する。
【0042】
ステップS494が肯定(時間フラグTF=1)ならば、ステップS495に進み、自動伴奏の次の演奏データが小節冒頭であり、かつループ中であるか否かが判別される。ステップS495が肯定ならば、同じコード進行が繰り返された後であって、かつ、小節の冒頭に進行したので、ステップS496に進んで現在のコードつまりカレントコードバッファとループバッファの冒頭に記憶されているコードとの差分値(度数)SDを記憶する。ループバッファはループ長LL(小節数)分のコードを記憶するバッファである。
【0043】
ステップS497では、差分値SDに応じた伴奏パターンを伴奏パターンのバリエーションの中から選択する。つまり、度数が上がっていれば、伴奏パターンを差分値SDに対応する値だけ、中立から高い側(伴奏を盛り上げる側)に切り替え、度数が下がっていれば、伴奏パターンを差分値SDに対応する値だけ、中立から低い側(伴奏を抑える側)に切り替える。
【0044】
ステップS495が否定、つまり小節冒頭ではないか、あるいはコード進行がループ中でないならば、ステップS499に進んで伴奏パターンを中立のものに戻す。そして、この場合、転調が終了したと判断して、ステップS499では差分値SDをゼロにする。
【0045】
ステップS500では、現在の自動伴奏のパターンポインタに従って自動伴奏パターンからデータを読み出す。ステップS502では、読み出した自動伴奏パターンのデータでイベントを起こす。ステップS502では、自動伴奏のパターンポインタを次のポインタまで歩進する。
【0046】
ステップS503では、自動伴奏のパターンポインタがΔt分進んでいるかどうかを判別する。パターンポインタがΔt分進んでいれば、ステップS504に進んで、今回の処理でバーまたはビートを読み出していたかどうかを判別する。ステップS504が肯定ならば、ステップS505に進んで、現在のコードCCDに差分値SDを加算して転調によるコードの変化をコード進行のループ判定上で相殺する。ステップS506では、差分値を加算したコードを現在のコードCCDとして記録する。ステップS503の判断が否定ならば、ステップS500に戻る。
【0047】
図1は、本実施形態の要部機能を示すブロック図である。図1において、押鍵・離鍵検出部34は、鍵盤の押鍵および離鍵を検出する。カレントコードバッファ35は、押鍵・離鍵検出部34での押鍵・離鍵検出結果に基づいてオクターブ内で押鍵鍵を記憶する。ループバッファ36は、ループ長LL分の検出コード、つまり予定の繰り返し区間分の小節に関する演奏コードをカレントコードバッファ35から転送されて記憶する。コード進行判別部37は、ループバッファ36から最近のループ長LLと直前のループ長LLに関するコードを読み込んで、最近のループ長LLに関するコード進行とその直前のループ長LLに関するコード進行との一致・不一致を判別する。小節冒頭判定部38は、現在の演奏が小節冒頭であるか否かを判定する。
【0048】
コード差分値算出部39は、コード進行が一致しており、かつ、小節冒頭判定部38で小節冒頭が検出された場合、カレントコードバッファ35の内容と、ループバッファ36に記憶されているコードの内冒頭のコードとを比較し、その差分値(度数)SDを算出する。
【0049】
コード差分値算出部39で算出された差分値SDは、伴奏パターン記憶部40に入力される。伴奏パターン記憶部40は、差分値SDに応じた伴奏パターンデータを記憶しており、入力された差分値SDに応じて伴奏パターンデータを読み出して、自動伴奏部41に入力する。自動伴奏部41は、入力された伴奏パターンデータに従って、自動伴奏を行う。
【0050】
図12は、伴奏パターン記憶部に予め記憶してある伴奏パターンのデータ構造を示す図である。パターンデータはパターン[0]からパターン[M−1]まで複数設定されている。例えば、ブルース、ボレロ、ワルツ、マーチ、リズムパターン等であり、各パターンデータに関して、差分値SDに応じたバリエーションが設定されている。図12の例では、パターンデータ[i]に関して、バリエーション[i][0]からバリエーション[i][N−1]まで設定されている。この例では、バリエーション[i][j]に初期値が設定されており、差分値SDがプラス側であれば、その差分値SDの大きさに応じてバリエーション[i][0]側に偏ったバリエーションが選択される。一方、差分値SDがマイナス側であれば、その差分値SDの大きさに応じてバリエーション[i][N−1]側に偏ったバリエーションが選択される。
【0051】
バリエーション[i][0]側は伴奏が盛り上がるように、例えば、音量、音色、音色数等を増やした伴奏パターンが設定され、バリエーション[i][N−1]側は伴奏が抑制されるように、例えば、音量、音色、音色数等を少なくした伴奏パターンが設定される。
【0052】
なお、各バリエーションは、ヘッダとパターン本体とからなる。
【0053】
図13は、パターン本体の一例を示す図である。パターン本体は、ステータスコードと、バー(小節線)またはビート(拍の切れ目)からのステップタイムと、値VAおよびVBとからなる。
【0054】
本実施形態による伴奏パターン選択のイメージを図14に示す。図14において、ループ長LLは4小節である。この例では、先の4小節の演奏コードが「C/F/B♭/Dm」であり、次の4小節の演奏コードが同じく「C/F/B♭/Dm」であった場合、最後の小節のコード「Dm」を検出したところで4小節のコードが繰り返されたことが検出される。その結果、次の小節のコード「D」が注目され、このコード「D」と直前の4小節の冒頭のコード「C」との差分値SDが算出され、この差分値SDに応じた伴奏パターンのバリエーションがより
【0055】
上述のように、本実施形態によれば、予定サイズの小節数(ループ長LL)が繰り返し演奏されたならば、その次の小節の、冒頭のコードをその前の小節の、冒頭のコードと比較し、その差分値(度数)に応じて伴奏パターンが変更される。したがって、転調が生じて度数差が生じていれば、その度数差に応じて、自動的に伴奏を盛り上げたり抑制したりすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…電子楽器、 2…上鍵盤、 3…下鍵盤、 4…鍵盤装置、 5…コントロールパネル、 6…表示装置、 7…操作部、 11…キーボードコンダクタ、 12…インクリメントダイヤル、 13…音色選択スイッチ、 17…LCD、 35…カレントコードバッファ、 36…ループバッファ、 37…コード進行判別部、 39…コード差分値算出部、 40…伴奏パターン記憶部、 41…自動伴奏部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードに応じて、予め設定されている伴奏パターンのうち一つを選択して自動伴奏を行う電子楽音発生装置の自動伴奏装置において、
鍵盤の押鍵および離鍵を検出する押鍵・離鍵検出手段と、
前記押鍵・離鍵検出手段による検出結果に従って演奏コードを記憶するカレントコードバッファと、
予め設定された繰り返し区間分の小節に関する演奏コードを記憶するループバッファと、
前記ループバッファに記憶された演奏コードのコード進行が、現在および直前の繰り返し区間で同一であるかどうかによって演奏コードが繰り返されたか否かを検出するコード繰り返し判別手段と、
前記コードの繰り返しが検出された場合に、その直後の小節のコードと、前記ループバッファの冒頭に記憶されているコードとの度数に応じて、予め設定されている複数の伴奏パターンの一つを選択して自動伴奏を行う自動伴奏手段とを具備していることを特徴とする電子楽音発生装置の自動伴奏装置。
【請求項2】
前記自動伴奏手段が、
度数が上がっているときには、伴奏パターンのうち、演奏を盛り上げるように設定されているバリエーションを選択し、
度数が下がっているときには、伴奏パターンのうち、演奏の盛り上がりを抑えるように設定されているバリエーションを選択して自動伴奏を行うように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子楽音発生装置の自動伴奏装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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