説明

電子楽音発生器の音域設定装置

【課題】音域を設定して音色を割り当てた場合に、その音域を演奏中に容易にかつ確実に視覚で認識できる電子楽音発生器を提供する。
【解決手段】電子楽器1は、複数の音域を指定して音域毎に異なる音色を割り当てる音色割り当て手段35と、割り当てられた音色による発音の可能および不可能の選択をするキーボードコンダクタ(KC)11とを有する。表示手段はKC11がオン操作されている間、KC11のスイッチに対応する音色が割り当てられている音域をLCD17または鍵盤2、3に表示する。表示手段はKC11のスイッチに対応する音色が割り当てられている音域を予定時間経過するまでの間表示するタイマ40を有する。表示手段はKC11のスイッチのオン操作が予定時間継続したときに、KC11のスイッチに対応する音色が割り当てられている音域を表示するようにタイマ42を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽音発生器の音域設定装置に関し、特に、演奏操作子に複数の音色を割り当てることができ、該音色を発音可能な音域を設定する設定装置を有する電子楽音発生器の音域設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指定した音域の演奏操作子(電子鍵盤楽器では鍵)に、複数の音色を設定することができる電子楽器において、指定した音域を鍵盤上で表示する電子楽器が知られる。例えば、特許文献1には、指定された音色の鍵域を表す最低音および最高音にそれぞれ対応する各鍵の発光手段を点灯して発音域を表示することができる電子楽器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−184063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されている従来技術では、音域指定手段によって指定された音色の鍵域を表す最低音および最高音にそれぞれ対応する各鍵の発光手段を点灯して発音音域を表示する音域表示手段を有するが、この音域表示手段による表示操作が複数の手順を必要とするため、演奏中に行う操作としては煩雑であるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題に対して、設定した音色の発音可能音域の表示操作を簡略化することができる電子楽音発生器の音域設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、複数の音域を指定して音域毎に異なる音色を割り当てる音色割り当て手段と、前記音域に対して割り当てられた音色による発音の可能および不可能の選択をする発音設定スイッチとを有する電子楽音発生器において、前記発音設定スイッチが、割り当てられた音色毎に設けられており、前記発音設定スイッチがオン操作されている間、該発音設定スイッチに対応する音色が割り当てられている音域を表示する表示手段を備えている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、表示手段が、発音設定スイッチのオン操作に応答して該発音設定スイッチに設定された音色による発音を可能にするとともに、該発音設定スイッチに対応する音色が割り当てられている音域を発音設定スイッチのオン操作時から予定時間経過するまでの間、表示する点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、表示手段が、発音設定スイッチのオン操作に応答して該発音設定スイッチに設定された音色による発音を可能にするとともに、該発音設定スイッチが予定時間継続してオン操作されたときに、該発音設定スイッチに対応する音色が割り当てられている音域を表示し、該発音設定スイッチがオフ操作されるまでの間、表示を継続する点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、電子楽音発生器の設定状態および動作状態を表示する液晶表示装置を備え、前記音域表示が、前記液晶表示装置に表示される演奏操作子の図形に関連して、前記音域にわたる演奏操作子の図形を該音域以外の音域の演奏操作子の図形と異ならせることによって行われる点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、全ての音階で演奏操作子のそれぞれに対応させて発光素子を配置し、前記音域表示が、前記音域に含まれる演奏操作子に対応する発光素子の点灯状態を、外音域に含まれない演奏操作子に対応する発光素子の点灯状態と異ならせることによって行われる点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
第1〜第5の特徴を有する本発明によれば、演奏中に、発音設定スイッチ(後述するキーボードコンダクタの各スイッチ)を操作するだけで、該スイッチに割り当てられている音色で発音可能な音域が表示されるので、演奏者は、その音域を確認しつつ多彩な演奏をすることができる。
【0012】
特に、第1の特徴を有する本発明では、スイッチをオフにするまで表示が継続されるので、発音可能な音域を、任意、かつ十分な時間をとって確認することができる。
【0013】
また、第2の特徴を有する本発明では、一旦スイッチをオン操作すれば、所定時間のあいだ継続して発音可能な音域を表示できるので、表示している間でも演奏の手を長時間休めることを回避できる。
【0014】
また、第3の特徴を有する本発明では、所定の時間継続してスイッチを操作しなければ、発音可能な音域が表示されることがないので、発音設定スイッチに短時間だけ触れるような誤操作によって表示が切り替わることを防止できる。
【0015】
また、第4、第5の特徴を有する本発明では、発音可能な音域の全ての鍵に対応して表示され、表示が帯状になるので、音域の上限および下限を表示している従来技術と比べて音域の被視認性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイッチ処理Aにおけるゾーン表示のための要部機能を示すブロック図である。
【図2】電子楽器のフロントパネルの平面図である。
【図3】コントロールパネルに設けられる音色選択部のスイッチの例を示す図である。
【図4】キーボードコンダクタのスイッチの例を示す図である。
【図5】表示装置の一例を示す図である。
【図6】表示装置のLCDに表示したゾーンの上限と下限とを設定する画面の一例を示す図である。
【図7】ゾーンの表示画面の一例を示す図である。
【図8】鍵盤に沿って配置したLEDでゾーンを表示した例を示す図である。
【図9】電子楽器のシステム構成図である。
【図10】電子楽器のメインループ処理を示すフローチャートである。
【図11】イベント処理のフローチャートである。
【図12】スイッチ処理Aのフローチャートである。
【図13】スイッチ処理Bのフローチャートである。
【図14】スイッチ処理Bのタイマ処理に係るフローチャートである。
【図15】割込処理のフローチャートである。
【図16】スイッチ処理Cのフローチャートである。
【図17】スイッチ処理Cを行う場合の、その他の処理のフローチャートである。
【図18】スイッチ処理Bによるゾーン表示の要部機能を示すブロック図である。
【図19】スイッチ処理Cによるゾーン表示の要部機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る楽音発生器である電子楽器のフロントパネルを示す図である。ここでは、電子楽器1として電子オルガンを想定するが、本発明はこれに限定されるものではない。電子楽器1は、上鍵盤2および下鍵盤3からなる鍵盤装置4を有する。さらに、鍵盤装置4には、フロントパネルではなく、電子楽器1の下部に配置される図示しないペダル鍵盤を含む。鍵盤装置4の左側および上側(本明細書では、電子楽器1の上面視で、演奏者から遠い側を「上」、演奏者に近い側を「下」と記述する)にはコントロールパネル5が配される。
【0018】
コントロールパネル5は、ほぼ中央部に位置する表示装置6と、表示装置6の左右および鍵盤装置4の左側に設けられる操作部7とからなる。表示装置6は、電子楽器1の各設定状態や動作状態を表示する。操作部7は音色選択部8と、ドローバー9と、自動演奏操作部10と、キーボードコンダクタ11と、インクリメントダイヤル12とを有する。インクリメントダイヤル12の右にはメインスイッチ100が設けられ、コントロールパネル5の左右にはスピーカ33が設けられる
【0019】
音色選択部8は、上鍵盤2、下鍵盤3およびペダル鍵盤の音色系列のそれぞれについて設けられる複数の音色設定ボタンとボリューム等の設定ボタンとを有する(詳細は後述する)。キーボードコンダクタ11は、音色選択部8で選択された音色系列のオン・オフを、演奏中に集中的に制御して曲想に応じたダイナミックなアレンジを可能にするスイッチ群である(図4参照)。音色系列は、上鍵盤2および下鍵盤3に6系列ずつ、ペダル鍵盤に4系列設定可能である。
【0020】
図3は音色選択部8のスイッチの例を示す図であり、一例として上鍵盤2用に設けられる複数の音色のうち、第1ソロ(アッパー・ソロ1)の音色選択部を示す。アッパー・ソロ1には、フルート、サックス、ヴァイオリン、コズミック(シンセサイザ)、オーボエ、トランペット、ギター、およびこれら全ての音色系列を選択する音色選択スイッチ13が設けられるとともに、これら各音色のボリューム設定ボタン14と、エフェクト/設定スイッチ15やポルタメントの設定スイッチ16が設けられる。音色選択スイッチ13のいずれかをオン操作して音色(例えばヴァイオリン)を選択すると、グローバルモード画面が表示装置6に表示され、その画面から、選択された音色(ヴァイオリン)を設定する音域を設定することができる。
【0021】
図3は、音色選択部8のうち、第1ソロに関するスイッチの例であるが、上鍵盤2および下鍵盤3には、音色系列として、第1ソロのほか、第2ソロ、第1オーケストラ、第2オーケストラ、スペシャル、およびティビア・パーカッションが設けられる。また、ペダル鍵盤には、第1ソロ、第2ソロ、オーケストラ、およびティビアが音色系列として設定される。列挙した音色は一例であり、上鍵盤2、下鍵盤3およびペダル鍵盤に設定される音色はこれらに限定されない。
【0022】
図4は、キーボードコンダクタ11の図である。図4において、キーボードコンダクタ11は、上鍵盤2、下鍵盤3およびペダル鍵盤毎に設定される音色系列に対応した16個のスイッチ11a〜11pからなる。なお、下鍵盤3については、上鍵盤2と同様にボタンが設定されるので、図示を一部省略している。これらのスイッチ11a〜11pをオン操作することによって、前記音色選択部8〜10で設定された音色での発音が可能になる。例えば、図3に示したアッパーソロ1に設定された音色(例えば、ヴァイオリン)での発音を可能にするためには、スイッチ11oを押す。これにより、設定された音域でヴァイオリンの音が発音可能になる。さらに、スイッチ11a〜11pをオン操作した場合、オン操作されたスイッチに割り当てられている音色で発音可能な音域が表示装置6に表示される。音域の表示例は後述する。
【0023】
図5は表示装置6の一例を示す図である。表示装置6は、液晶表示パネル(LCD)17とLCD17に表示されている情報を設定・変更するのに使用される左右の選択スイッチ18L、18Rと、下部の機能スイッチ19とからなる。選択スイッチ18L、18Rおよび機能スイッチ19は、LCD17の左右および下方に、それぞれLCD17内の情報表示位置に対応させてそれぞれ複数設けられる。図5は、グローバルモードの一例として「ゾーン」のエディタ画面が表示されている表示装置6を示す図である。「ゾーン」とは、音色選択部8で割り当てられた音色で発音可能な音域をいう。
【0024】
ゾーンエディタ画面では、鍵盤装置4のどの範囲の鍵を弾いたらどの音色が発音できるようになっているかが表示される。この例では、上鍵盤2に設定される音色系列の発音可能領域つまりゾーンが設定された鍵盤図形がLCD17に5種類示されている。ここでは、上の段から順に、第1ソロ(SLO1)、第2ソロ(SOLO2)、第1オーケストラ(ORCH1)、第2オーケストラ(ORCH2)、およびスペシャル(SPECIAL)のゾーンが表示されている。この例では、第1ソロ(SOLO1)およびスペシャル(SPECIAL)について設定されているゾーンを、鍵盤図形の該当する部分の下方に引いた横線で示している。ゾーンに関する表示の例はさらに後述する。
【0025】
図3および図4に示したスイッチを使用した音色の割り当ては次のようにして行うことができる。電源が投入されている状態で、まず、音色選択部8の音色選択スイッチ13をオン操作して、設定する音色を選ぶ。これによって、図6に一例を示すように、表示装置6のLCD17にゾーンの上限と下限とを設定する画面が表示される。図6では、上限を設定するゾーン上限キー画面(ZONE HIGH KEY)が表示されている。この画面に最初はデフォルト値の鍵が表示されるので、その表示の横に位置するスイッチ18R(R5)をオン操作し、かつインクリメントダイヤル12を回転させる。そうすると、順に鍵の名称が切り替わるので、所望の鍵名になったところでダイヤル操作を止めて、エフェクト/設定スイッチ15をオン操作する。これによって、ゾーンの上限が確定し、続いて表示装置6に下限を設定するゾーン下限キー画面(ZONE LOW KEY)がLCD17の左下部に表示されるので(図示せず)、今度は、ゾーン下限キー画面が表示された位置に対応するスイッチ18L(L5)とインクリメントダイヤル12を使ってゾーンの下限を確定する。ゾーンが設定されたならば、エフェクト/設定スイッチ15をオン操作して設定を確定する。これにより、設定したゾーンに、選択された音色が割り当てられる。
【0026】
ゾーンの表示は、図5に示した形態に限らない。図7は設定されたゾーンの表示例を示す図である。図7では、一つの音色系列についてのゾーンをLCD17に表示している。図7において、鍵盤の形状図形2Aと、該鍵盤が上鍵盤2であることを示す表示([KBD]Upper)と、音色系列がスペシャルであることを示す表示([CND]Special)と、設定されているゾーンを示す表示(G1−F♯4)がLCD17上に表示される。さらに、鍵盤の形状図形2Aにおいて、ゾーンとゾーン以外とで鍵の表示形態を異ならせることでゾーンを明確にする。例えば、G1からF♯4の間以外の部分は、白鍵と黒鍵との色を反転させて白鍵を黒で表示し、黒鍵を白で表示する。G1からF♯4の間は、実際の鍵の色に合わせて、白鍵は白、黒鍵は黒で表示する。図7の鍵盤図形は、単一の音色系列についてLCD17に表示するのであってもよいし、図5のように複数の音色系列を1画面で表示する場合に、図7の表示形態を採用してもよい。
【0027】
また、ゾーンの表示は、LCD17で行うものに限らない。図8は、ゾーン表示の変形例を示す図である。この例では、発光素子(例えば、LED)を実際の鍵盤の各鍵に対応して設け、このLEDの点灯または消灯でゾーンを表示する。図8では、上鍵盤2の例を示す。上鍵盤2の各鍵に対応付けてLEDの列20、21を設ける。LED列20は黒鍵に対応して上鍵盤2の上方に配置し、LED列21は白鍵に対応して上鍵盤2の下方に配置する。これらのLED列20、21のうち、ゾーンに含まれるものは点灯させ、それ以外は消灯させる。これにより、ゾーンとゾーン以外とを明確に区別する。図8中、黒丸は点灯されたLEDを示し、白丸は消灯されているLEDを示す。
【0028】
図9は、電子楽器1のシステム構成図である。電子楽器1は、システムバス22に接続されるCPU23、ROM24、RAM25、インタフェース26、および音源27を備える。インタフェース26には、鍵盤装置4、コントロールパネル5、表示装置6、およびMIDI等の入出力端子28が接続される。音源27には、デジタル信号処理装置(DSP)29、デジタル/アナログ変換回路(D/A)30、増幅器(AMP)31およびスピーカ33が電気的に接続される。音源27は波形メモリを有することができる。
【0029】
CPU23は、インタフェース26を通じて、鍵盤装置4(ペダル鍵盤も含む)の各鍵の押鍵、離鍵やコントロールパネル5および表示装置6に設けられるスイッチやボリューム等の状態を読み込む。そして、読み込まれた状態に応じて音源27を駆動し、楽音信号を発生させる。楽音信号はDSP29に入力されてエフェクトがかけられ、DSP29の出力信号はD/A30でアナログ信号に変換された後、増幅器31を介してスピーカ33に入力され、スピーカ33から楽音となって発音される。
【0030】
図10は電子楽器1のメインループ処理のフローチャートである。メインスイッチ100がオン操作(例えば、押し下げ操作)されると、電源が入り、メインループ処理が開始される。まず、ステップS1では、所定の初期化処理が行われる。ステップS2では、イベントを検出したか否かが判断される。イベントが発生したと判断した場合はステップS2からステップS3に進み、所定のイベント処理を行う(一例は後述する)。イベント処理の後、およびイベントが検出されないでステップS2が否定となった場合は、ステップS4に進む。ステップS4では、時変数処理が行われる。なお、事変数処理は、前回の処理からどれだけ時間が経ったかを取得するための処理で、所定インターバルの割込時間で、CPU23に割り込み処理がかかるように用いられる。メインループ処理はメインスイッチ100がオフ操作されて電源が切れるまで繰り返される。
【0031】
図11は、イベント処理のフローチャートである。イベント処理には、押鍵イベント、離鍵イベント、スイッチイベント、およびその他の処理が含まれる。図11において、ステップS31では、検出されたイベントが押鍵イベントであるか否かが判別される。ステップS31が肯定ならばステップS32に進んで押鍵処理が行われる。押鍵処理では音源27の発音チャネルをアサインする。イベントが押鍵イベントでない場合は、ステップS33に進み、離鍵イベントであるか否かが判別される。ステップS33が肯定ならばステップS34に進んで離鍵処理が行われる。離鍵処理では発音中のチャネルをサーチして、そのチャネルを開放するための処理を行う。なお、押鍵処理および離鍵処理は周知の技術を使用できるので、詳細は説明を省略する。
【0032】
押鍵イベントでも離鍵イベントでもない場合は、ステップS33からステップS35に進んで、検出されたイベントがスイッチイベントであるか否かが判別される。スイッチイベントはコントロールパネル5の処理全般をいい、スイッチイベントの有無は、コントロールパネル5上に設けられる操作部7のスイッチ等(メインスイッチ100は除く)の状態変化の有無によって判別される。ステップS35が肯定ならばステップS36に進んで、状態が変化したスイッチ等に対応した所定のスイッチ処理を行う(一例は後述する)。ステップS35が否定ならば、ステップS37でその他のイベントに応じた処理を行う。その他の処理は、タイマイベント処理やMIDI情報の受信処理等である。
【0033】
図12は、スイッチ処理の一例である(処理A)のフローチャートである。ステップS41では、発生したスイッチイベントがスイッチオン・イベントであったのか否かが判別される。スイッチオン・イベントであった場合は、ステップS42に進み、スイッチオン・イベントでなかった場合はステップS43へ進む。
【0034】
ステップS42では、オン操作されたスイッチがキーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11pであるかどうかが判別される。フローチャートでは、スイッチ11a〜11pは符号KC[n]で示す。[n]は0から15までの変数であり、キーボードコンダクタ11として設けられる16個のスイッチ11a〜11pに対応する。すなわち、スイッチ11aはKC[0]、スイッチ11bはKC[1]、以下、……スイッチ11pはKC[15]で示される。スイッチ11a〜11pは、それぞれインジケータとしてLEDを有しており、設定されている音色系列をオン(発音可能)にしているときはLEDを点灯させ、該音色系列をオフ(発音不能)にしているときはLEDを消灯させる。ステップS42が肯定ならば、ステップS44に進む。
【0035】
ステップS44では、スイッチ11a〜11pの状態を反転させる。つまり、押されたスイッチに設けられるLEDが点灯される。これに伴って、該スイッチに割り当てられた音色による発音が可能になる。
【0036】
ステップS45では、LCD17の表示モードをグローバルモードにする。表示モードにはグローバルモード、ホームモード、およびその他のモードがある。ホームモードは電源を投入したときの初期画面である。グローバルモードは、鍵毎の音色のセッティングや図5や図7に示したようなゾーンのセッティング等を表示するモードである。ステップS46では、表示されている音色系列、つまりキーボードコンダクタ11の、n番目のスイッチに関するゾーン表示を行う。
【0037】
ステップS42が否定の場合、つまりキーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11p以外のスイッチが操作された場合は、ステップS47に進む。ステップS47では、ゾーンの設定(または変更)を行うスイッチがオン操作されたか否かを判別する。このスイッチは、ゾーン上限キー画面およびゾーン下限キー画面に対応するスイッチであり、上述の例では選択スイッチ18L、18Rおよびインクリメントダイヤル12である。ステップS47が肯定ならば、ステップS48に進んでゾーンの上限および下限を設定する。
【0038】
ステップS47が否定の場合は、その他のスイッチ(本発明の要部に関わらないスイッチ)の処理であるので、ステップS49に進み、そのスイッチのオン操作に対応する所定の処理を行う。
【0039】
ステップS41が否定の場合はスイッチのオフ操作が行われた場合であり、ステップS43では、オフ操作されたスイッチがキーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11pのうち、n番目のスイッチであるか否かが判別される。ステップS43が肯定ならば、ステップS50に進み、LCD17の表示をホームモードに切り替える。つまり、キーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11pのうち、n番目のスイッチに対応する音色系列のゾーン表示がホームモードの画面に戻る。したがって、このスイッチ処理Aによれば、キーボードコンダクタ11のスイッチが押されている間だけ音色系列に応じたゾーン表示される。ステップS43が否定ならば、ステップS51に進んで他のスイッチのオフ処理を行う。ステップS42、S43はn=0からn=15まで、順に判断される。
【0040】
図13は、スイッチ処理Bのフローチャートである。図13において、ステップS61では、発生したスイッチイベントがスイッチオン・イベントであったのか否かが判別される。スイッチオン・イベントであった場合は、ステップS62に進み、スイッチオン・イベントでなかった場合はステップS63へ進む。
【0041】
ステップS62では、オン操作されたスイッチがキーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11pであるかどうかが判別される。ステップS62が肯定ならば、ステップS64に進む。ステップS64では、スイッチ11a〜11pの状態を反転させる。ステップS42と同様である。
【0042】
ステップS65では、LCD17の表示モードをグローバルモードにする。ステップS66では、グローバルモードの画面上で、表示されている音色系列、つまりキーボードコンダクタ11の、n番目のスイッチに関するゾーン表示に切り替える。
【0043】
ステップS67では、ゾーン表示タイマTzに所定の時間TLをセットし、該ゾーン表示タイマTzによる時間計測を開始する。このゾーン表示タイマTzが所定の時間TLを計数するまでの間ゾーン表示は維持される。
【0044】
ステップS62が否定の場合、ステップS68に進む。ステップS68では、ゾーンの設定(または変更)を行うスイッチがオン操作されたか否かを判別する。ステップS68が肯定ならば、ステップS69に進んでゾーンの上限および下限を設定する。ステップS68が否定の場合は、ステップS70に進み、その他のスイッチのオン操作に対応する所定の処理を行う。
【0045】
このステップS61、S62、S64〜S66、S68〜S70は、図12で説明したステップS41、S32、S44〜S46、S47〜S49と同じ処理である。スイッチ処理Bがスイッチ処理Aと異なるのは、ステップS67の処理を有する点と、ステップS43およびS50に相当する処理が含まれていない点である。したがって、ステップS61が否定の場合は、ステップS63で、オフになったスイッチに対応するスイッチオフ処理を行うのみである。
【0046】
このように、オフになったスイッチがキーボードコンダクタ11のスイッチか否かの判断やホームモードに戻るステップを有していないスイッチ処理Bでは、キーボードコンダクタ11のスイッチがオフされても、グローバルモードが保持される。このグローバルモードは、後述する処理でホームモードに戻される。したがって、その間は、グローバルモードでゾーンの表示が継続される。
【0047】
図14は、図11におけるその他の処理(ステップS37)の一例を示すフローチャートである。ステップS71では、その他の処理がタイマイベントであるか否かを判別する。タイマイベントであれば、ステップS72に進み、ステップS67でセットしたゾーン表示タイマTzがゼロになったか否かが判別される。ゾーン表示タイマTzがゼロになったと判別されたならば、ステップS73に進む。ステップS73では、LCD17の表示をホームモードに切り替える。つまり、所定のゾーン表示時間が経過したときに、ゾーンの表示は終了してグローバルモードの画面からホームモードの画面に戻る。
【0048】
ステップS74では、ゾーン表示タイマTzに「−1」をセットする。これにより、ステップS67でタイマ値TLのセットが再び行われるまで、ゾーン表示タイマTzの値によって処理が行われることは禁止される。
【0049】
ステップS72が否定の場合は、ステップS75に進んでその他のタイマ処理を行う。また、ステップS71が否定の場合は、ステップS76に進んでタイマイベント以外の他のイベント処理、例えば、MIDI受信に関する処理等が行われる。
【0050】
図15は、割込処理のフローチャートである。この処理は所定の割込時間毎に実行され、この電子楽器1に設けられる複数のタイマの、全ての状態(イベント)を検出する。ステップS81では、全てのタイマイベントを検出したか否かを、タイマ識別データTxxがゼロ以上かどうかによって判別する。ステップS81が肯定ならば、ステップS82に進んでタイマ識別データTxxをデクリメントする(−1)。ステップS83では、該タイマTxxのイベントを検出する。ステップS84では、すべてのタイマイベントを検出したか否かを判断する。ステップS84が肯定ならば、この割込処理は終了する。
【0051】
次の実施形態(スイッチ処理C)では、キーボードコンダクタ11のスイッチを押した後、所定時間経過後にグローバルモードに切り替わってゾーン表示を行う。
【0052】
図16は、スイッチ処理Cのフローチャートである。ステップS91では、スイッチのオンイベントであるか否かが判別される。ステップS91が肯定ならば、ステップS92に進んでオンイベントが検出されたスイッチが、キーボードコンダクタ11の、16個のスイッチのうち、n番目のスイッチであるか否かが判別される。ステップS92が肯定ならば、ステップS93に進み、スイッチ11a〜11pの、n番目のスイッチの状態を反転させる。図12ステップS44と同様である。ステップS94では、ゾーン表示タイマTzに所定の時間TLをセットする。つまり、スイッチ処理Cでは、スイッチの状態を反転させた後、スイッチ処理Aやスイッチ処理Bのようにゾーンの表示画面に直ちに移行せず、タイマTzのセットおよび計数開始を行う。
【0053】
ステップS92が否定の場合は、ステップS95に進み、オン操作されたスイッチがスイッチ11a〜11pに設定されたn番目の音色系列のゾーン設定(または変更)を行うスイッチがオン操作されたか否かを判別する。ステップS92が肯定であれば、ステップS96に進んで、ゾーンの上限および下限を設定して、ゾーンの設定を変更する。ステップS95が否定ならば、ステップS97に進んで、キーボードコンダクタ11に含まれるスイッチ以外の、他のスイッチのオン操作に対応する所定の処理を行う。
【0054】
ステップS91が否定の場合、つまりスイッチがオフ操作されたと判別された場合はステップS98に進む。ステップS98では、オフ操作されたスイッチがキーボードコンダクタ11のn番目のスイッチであるか否かを判別する。ステップS98が肯定ならば、ステップS99に進んでゾーン表示タイマTzに「−1」をセットする。ステップS98が否定の場合は、ステップS100に進んでキーボードコンダクタ11に含まれるスイッチ以外の、他のスイッチのオフ操作に対応する所定の処理を行う。
【0055】
図17はスイッチ処理Cを行う場合の、その他の処理(ステップS37)の一例を示すフローチャートである。ステップS101では、その他の処理がタイマイベントであるか否かを判別する。タイマイベントであれば、ステップS102に進み、そのタイマイベントにおいてステップS94でセットしたゾーン表示タイマTzがゼロになったか否かが判別される。ゾーン表示タイマTzがゼロになったと判別されたならば、ステップS103に進む。ステップS103では、LCD17の表示をゾーン表示に切り替える。つまり、所定のゾーン表示時間が経過したときに、キーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11pのうち、n番目のスイッチに対応する音色系列のゾーンの表示が行われる。
【0056】
ステップ104では、ゾーン表示タイマTzに「−1」をセットする。これにより、ステップS94でタイマ値TLのセットが再び行われるまで、ゾーン表示タイマTzの値に基づく処理は行われない。
【0057】
ステップS102が否定の場合は、ステップS105に進んでその他のタイマ処理を行う。また、ステップS101が否定の場合は、ステップS106に進んでタイマイベント以外の他のイベント処理、例えば、MIDI受信に関する処理等が行われる。
【0058】
図16と図17に示したスイッチ処理Cでは、キーボードコンダクタ11のスイッチがゾーン表示タイマTzにセットされた時間TLが経過するまでの間、オン操作を持続していれば、ゾーン表示に切り替わる。しかし、時間TLに満たない短時間の、キーボードコンダクタ11のスイッチ操作では、ゾーン表示が行われることはない。
【0059】
図1は、スイッチ処理Aによるゾーン表示の要部機能を示すブロック図である。図1において、音色割り当て手段35は、キーボードコンダクタ11として設けられる音色系列毎のスイッチ11a〜11pに音色および設定音域(ゾーン)を設定する手段であり、音色選択部8とインデックスダイヤル12、ならびに選択スイッチ18L、18Rが含まれる。音色割り当て手段35によって設定された割り当て内容、つまり、スイッチ11a〜11pに対応して音色とゾーンは、割り当て記憶部36に記憶される。
【0060】
スイッチ状態検出部37は、発音設定スイッチとしてのキーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11pがオン操作されたかオフ操作されたかを検出する。オン操作を検出した時はオン操作されたスイッチの識別情報を伴う「オン検出信号」を出力し、オフ操作を検出した時はオフ操作されたスイッチの識別情報を伴う「オフ検出信号」を出力する。オン検出信号およびオフ検出信号は表示制御部38に入力され、表示制御部38はオン検出信号に応答して割り当て記憶部36から、記憶されているゾーンと音色とをLCD17に読み出してゾーン表示させる。また、表示制御部38はオン検出信号に応答してLCD17によるゾーン表示を停止させる。
【0061】
これにより、キーボードコンダクタ11のスイッチがオン操作に応答して該スイッチがオン操作されている間、該スイッチに対応する音色が割り当てられているゾーンがLCD17に表示される。
【0062】
図18は、スイッチ処理Bによるゾーン表示の要部機能を示すブロック図であり、図1と同符号は同一または同等部分を示す。スイッチオン検出部39は、発音設定スイッチとしてのキーボードコンダクタ11のスイッチ11a〜11pがオン操作されたことを検出した時に「オン検出信号」を出力する。オン検出信号はタイマ40および表示制御部41に入力され、表示制御部38はオン検出信号に応答して割り当て記憶部36から、記憶されているゾーンと音色とをLCD17に読み出してゾーン表示させる。また、表示制御部41はタイマ40(タイマTz)にセットされた時間TLが計時終了(タイムアップ)に応答してLCD17によるゾーン表示を停止させる。
【0063】
これにより、キーボードコンダクタ11のスイッチがオン操作されると該スイッチのオフ操作のいかんにかかわらず、タイマ40がタイムアップするまでの間、該スイッチに対応する音色が割り当てられているゾーンがLCD17に表示される。
【0064】
図19は、スイッチ処理Cによるゾーン表示の要部機能を示すブロック図であり、図1と同符号は同一または同等部分を示す。スイッチオン検出部39から出力されるオン検出信号はタイマ42に入力され、オフ検出信号は表示制御部43に入力される。タイマ42はオン信号に応答して起動され、セットされた時間が経過すると、そのタイムアップ終了に応答して割り当て記憶部36から、記憶されているゾーンと音色とをLCD17に読み出してゾーン表示させる。また、表示制御部38はオフ検出信号に応答してLCD17によるゾーン表示を停止させる。タイマ42は、オン検出信号がなくなれば、計時を停止してリセットされる。
【0065】
これにより、キーボードコンダクタ11のスイッチがタイマ42にセットされた時間継続してオン操作されたときにのみ、該スイッチに対応する音色が割り当てられているゾーンをLCD17に表示し、該スイッチがオフ操作されるまでの間、ゾーン表示を継続する。
【0066】
上述の本実施形態によれば、演奏中にキーボードコンダクタ11のスイッチを操作するだけで、そのスイッチの操作状態に応じて該スイッチに割り当てられている音色で発音可能なゾーンが表示されるので、演奏者は、簡単な操作で必要に応じてゾーンを確認しつつ演奏を行うことができる。
【0067】
なお、本発明は、本実施形態に限定されず、変形して適用することが可能である。例えば、ゾーンの上限および下限は、インクリメントダイヤル12を使用する代わりに、実際に鍵盤2、3の鍵を押して入力してもよい。
【0068】
また、鍵盤2、3に配置した表示素子(LED20、21)でゾーン表示する場合、音色系列(つまりスイッチ11a〜11p)に応じて異なる色で表示をするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…電子楽器、 2…上鍵盤、 3…下鍵盤、 4…鍵盤装置、 5…コントロールパネル、 6…表示装置、 7…操作部、 11…キーボードコンダクタ、 12…インクリメントダイヤル、 13…音色選択スイッチ、 17…LCD、 18L、18R…選択スイッチ、 20、21…LED列、 35…音色割り当て手段、 36…割り当て記憶部、 37…スイッチ状態検出部、 38、41、43…表示制御部、 39…スイッチオン検出部、 40、42…タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音域を指定して音域毎に異なる音色を割り当てる音色割り当て手段と、前記音域に対して割り当てられた音色による発音の可能および不可能の選択をする発音設定スイッチとを有する電子楽音発生器の音域設定装置において、
前記発音設定スイッチが、割り当てられた音色毎に設けられており、
前記発音設定スイッチがオン操作されている間、該発音設定スイッチに対応する音色が割り当てられている音域を表示する表示手段を備えていることを特徴とする電子楽音発生器の音域設定装置。
【請求項2】
複数の音域を指定して音域毎に異なる音色を割り当てる音色割り当て手段と、前記音域に対して割り当てられた音色による発音の可能および不可能の選択をする発音設定スイッチとを有する電子楽音発生器の音域設定装置において、
前記発音設定スイッチが、割り当てられた音色毎に設けられており、
前記発音設定スイッチのオン操作に応答して該発音設定スイッチに設定された音色による発音を可能にするとともに、該発音設定スイッチに対応する音色が割り当てられている音域を、発音設定スイッチのオン操作時から予定時間経過するまでの間、表示する表示手段を備えていることを特徴とする電子楽音発生器の音域設定装置。
【請求項3】
複数の音域を指定して音域毎に異なる音色を割り当てる音色割り当て手段と、前記音域に対して割り当てられた音色による発音の可能および不可能の選択をする発音設定スイッチとを有する電子楽音発生器の音域設定装置において、
前記発音設定スイッチが、割り当てられた音色毎に設けられており、
前記発音設定スイッチのオン操作に応答して該発音設定スイッチに設定された音色による発音を可能にするとともに、該発音設定スイッチが予定時間継続してオン操作されたときに、該発音設定スイッチに対応する音色が割り当てられている音域を表示し、該発音設定スイッチがオフ操作されるまでの間、表示を継続する表示手段を備えていることを特徴とする電子楽音発生器の音域設定装置。
【請求項4】
電子楽音発生器の設定状態および動作状態を表示する液晶表示装置を備え、
前記音域表示が、前記液晶表示装置に表示される演奏操作子の図形に関連して、前記音域にわたる演奏操作子の図形を該音域以外の音域の演奏操作子の図形と異ならせることによって行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子楽音発生器の音域設定装置。
【請求項5】
全音階で演奏操作子のそれぞれに対応させて発光素子を配置し、
前記音域表示が、前記音域に含まれる演奏操作子に対応する発光素子の点灯状態を、外音域に含まれない演奏操作子に対応する発光素子の点灯状態と異ならせることによって行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子楽音発生器の音域設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−215256(P2011−215256A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81567(P2010−81567)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】