説明

電子機器および電子機器の制御装置

【課題】簡略な構成を追加するのみで、サブCPU単体で動作確認を可能にした制御装置を提供する。
【解決手段】データをメインCPUに送信する第1の機能部、メインCPUからデータを受信する第2の機能部の一方または両方を備え、さらに、第1の機能部、第2の機能部とメインCPUとの通信を制御するデータ通信部と、を備えた電子機器の制御装置に、単体動作モード時に、データ通信部をメインCPUに接続するためのデータ経路を自己宛に切り換え、第1の機能部のデータの受信または第2の機能部に対するデータの送信を含むメインCPUの動作をシミュレートする単体動作制御部をさらに備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のCPUによって制御が行われる電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルトランシーバやカーナビゲーション装置などの高機能な電子機器は、装置全体の動作を制御するメインCPUと、複数のハードウェアを分担して制御する1または複数のサブCPUを備えているものがある(たとえば特許文献1)。このような電子機器の場合、サブCPUは、発生したデータをメインCPUに送信するとともに、メインCPUからの指示に基づいてハードウェアの動作を制御する。たとえば、サブCPUが、キーボードによるキー入力検出機能と液晶ディスプレイへの表示機能とを制御している場合、サブCPUは、キー入力検出機能で検出したキー操作データをメインCPUに送信し、メインCPUから受信した制御データに応じて液晶ディスプレイに文字等を表示する。なお、メインCPUは、サブCPUから入力されたキー操作データに基づき、通信回路を制御したり液晶ディスプレイへの表示内容を決定する等の処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−110058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子機器では、サブCPUをメインCPUと切り離して動作確認することが要求されることがある。しかし、上述したようにサブCPUは、メインCPUとデータをやり取りすることによって動作するよう構成されているため、上記従来の構成のサブCPUでは単体で動作確認することができない。
【0005】
仮に、通常モード時に使用されるキー入力検出機能や表示制御機能に加えて、単体で動作するキー入力検出機能や表示制御機能を別途設けることも考えられる。たとえば、サブCPUがキーの入力状態を検出し、当該入力状態に基づき液晶ディスプレイに表示を命令する等である。
【0006】
しかし、このように通常モードのキー入力検出機能、表示制御機能とは別に、動作確認用の機能部を別途設けることは、構成が複雑になるうえ、より容量の大きなメモリが必要になるという不都合があった。
【0007】
この発明は、このような不都合に鑑みてなされたものであり、簡略な構成を追加するのみで、サブCPU単体で動作確認を可能にしたことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の電子機器の制御装置は、データをメインCPUに送信する第1の機能部、前記メインCPUからデータを受信する第2の機能部の一方または両方を備え、さらに、前記第1の機能部、第2の機能部と前記メインCPUとの通信を制御するデータ通信部と、を備えた電子機器の制御装置であって、単体動作モード時に、前記データ通信部を前記メインCPUに接続するためのデータ経路を自己宛に切り換え、前記第1の機能部のデータの受信または前記第2の機能部に対するデータの送信を含む前記メインCPUの動作をシミュレートする単体動作制御部をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記第1の機能部が、ユーザ操作部を制御する機能部であって、前記ユーザ操作部に対する操作を検出してその操作データを前記メインCPUに送信し、前記第2の機能部が、表示部を制御する機能部であって、前記メインCPUから表示データを受信してその内容を前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0010】
また、この発明は、上記の電子機器の制御装置をサブCPUとして備えるとともに、前記サブCPUと通信して装置全体の動作を制御するメインCPUを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、メインCPUと通信することで動作するサブCPU等の制御装置に、最小限の機能を追加するのみで、単体で動作確認を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態である無線通信装置の制御部のブロック図である。
【図2】同無線通信装置のデータ通信部周辺のバッファおよびレジスタの構成を示す図である。
【図3】同無線通信装置の各機能部の動作および単体動作制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照してこの発明の実施形態である無線通信装置(無線機)について説明する。図1は同無線通信装置の制御部の概略ブロック図である。また、図2は同無線通信装置のデータ通信部周辺のバッファおよびレジスタの構成を示す図である。なお、図2(A)は通常モード時のバッファ・レジスタの接続形態を示し、同図(B)は単体動作モード時のバッファ・レジスタの接続形態を示している。
高性能な無線通信装置の場合、複数のCPUで動作が制御される。複数のCPUは、1つのメインCPUおよび1または複数のサブCPUからなる(図1には1つのサブCPUのみを示している)。サブCPUは、無線通信装置のハードウェアを制御するCPUである。たとえば、図1に示したサブCPU2は、無線通信装置のフロントパネル3の機器を制御する。メインCPU1は、サブCPU2と通信して装置全体の動作を制御する。また、メインCPU1もハードウェアの制御を担当してもよい。図1にはサブCPU2を1つのみ記載しているが、サブCPUは1つに限定されない。たとえば、通信回路(高周波回路、オーディオ回路)の動作を制御するサブCPUを別途設けてもよい。
【0014】
図1のサブCPU2においては、ソフトウェアにより、キー操作検出部20、表示制御部21などの機能部が構成されるとともに、メインCPU1と通信を行うデータ通信部23、単体動作モード時に動作する単体動作制御部25が構成されている。また、キー操作検出部20、表示制御部21等とデータ通信部23とがデータのやりとりを行うためのバッファ22、および、データ通信部23が外部(メインCPU1)と通信するためのシリアル通信I/O24も設けられている。なお、シリアル通信I/O24はデータ通信部23に含まれていてもよい。
【0015】
キー操作検出部20は、フロントパネル3に設けられているキーボード30の操作状態を検出する。また表示制御部21はフロントパネル3に設けられている表示部(液晶ディスプレイ)31に対する表示を制御する。
【0016】
単体動作制御部25は、動作の詳細は後述するが、サブCPU2がメインCPU1と通信することなく単体で各機能部の動作を確認する単体動作モード時に、メインCPU1に代わってデータ通信部23とデータの送受信を行う機能部である。
【0017】
無線通信装置が通常の動作を行う通常モード時において、ユーザによるキーボード30の操作(たとえば「1」の入力)をキー操作検出部20が検出すると、その検出内容をバッファ22の送信バッファ22Aに保存する。送信バッファ22Aにデータが保存されると、データ通信部23がそのデータを読み出して送信レジスタ用バッファ23Aに一旦記憶し、通信タイミングに合わせてシリアル通信I/O24の送信レジスタ24Aに転送する。シリアル通信I/O24は、送信レジスタ24Aに書き込まれたデータをシリアル通信ハードウェア24Cを介してメインCPU1に送信する。
【0018】
メインCPU1が、サブCPU2からキー操作検出部20が検出したキー操作データを受信すると、このキー入力に対応して各種のハードウェア(表示部,通信回路など)の設定を変更する。具体的には、フロントパネル3の機器を制御するサブCPU2に対して、キー入力された内容(たとえば「1」)を表示部31に表示すべき旨の制御データ(コマンド)を送信する。またさらに、メインCPU1は、通信回路を制御するサブCPUに対して、通信チャンネルを入力された数値のチャンネル(たとえば1チャンネル)に切り換えるべき旨の制御データを送信する。なお、メインCPU1自身が通信回路を制御している場合には、通信チャンネルの切り換えはメインCPU1内にソフトウェア的に構成されている機能部が行う。
【0019】
このように、メインCPU1は、サブCPU2からデータを受信すると、その受信したデータに応じて対応するハードウェアを制御するための制御データを各サブCPUに対して送信する。
【0020】
メインCPU1が送信した制御データは、サブCPU2のシリアル通信I/O24によって受信され、受信レジスタ24Bに書き込まれる。データ通信部23は、受信レジスタ24Bに書き込まれた制御データを受信レジスタ用バッファ23Bに一旦取り込んだのちこれを、バッファ22の受信バッファ22Bに転送する。受信バッファ22Bに記憶された制御データは対応する機能部によって取り出され、機能部は取り出した制御データに対応した制御動作を実行する。たとえば、メインCPU1から表示部31に特定の文字(たとえば「1」)を表示すべき旨の制御データが送られてきた場合、表示制御部21が受信バッファ22Bからこの制御データを取り出し、表示部31に「1」を表示するよう制御する。
【0021】
このように、通常モードでは、各機能部はデータ通信部23を介してメインCPU1とデータをやり取りすることによって動作する。したがって、各機能部が正常に動作するか否かを確認する場合、メインCPU1と通信することが必要であるが、動作確認はサブCPU2単独で行うことが要求される場合がある。たとえば、装置に異常が発生してCPU間のシリアル通信が不能になった場合の動作確認や、サブCPUが搭載されている基板をメイン基板から外して動作確認を行う場合などである。
【0022】
そこで、このような場合にサブCPU2単体で、メインCPU1と接続されている通常モードと変わらない動作を可能にするように単体動作制御部25が設けられている。
【0023】
単体動作制御部25は、電源オン時に何らかのキー入力があった場合やメインCPU1との通信に異常が検出された場合等の何らかのトリガにより単体動作モードが指示されたとき起動する。単体動作モードが指示されると、単体動作制御部25は、図2(B)に示すように、データ通信部23の送信レジスタ用バッファ23A、受信レジスタ用バッファ23Bを、シリアル通信I/O24の送信レジスタ24A、受信レジスタ24Bから切り離し、これらのレジスタを単体動作制御部25に接続する。これにより、データ通信部23がメインCPU1に向けて(シリアル通信I/O24の送信レジスタ24Aに向けて)送信したデータは単体動作制御部25に入力され、単体動作制御部25が送信した制御データは、データ通信部23の受信レジスタ用バッファ23Bに入力され、メインCPU1から到来したデータと同様にバッファ22から各機能部に読み取られる。
【0024】
なお、メインCPU1との通信に異常が検出された場合には、必ずしもデータ通信部23の送信レジスタ用バッファ23A、受信レジスタ用バッファ23Bをシリアル通信I/O24の送信レジスタ24A、受信レジスタ24Bから切り離す必要はない。
【0025】
サブCPU2に内蔵されている単体動作制御部25は、メインCPU1の動作のうち、このサブCPU2に対して行う動作のみをシミュレートする機能を備えている。たとえば、キー操作検出部20が検出したキー操作データ(たとえば「1」)をデータ通信部23が送信すると、このデータを受信して、表示部31にそのキー操作の内容(たとえば「1」)を表示すべき旨の制御データ(コマンド)を返信する。このため、単体動作制御部25は、たとえば、入力されたキー操作データに対応してどのような制御データを発生するかを記憶したテーブルを備えている。
【0026】
なお、上記のキー入力に応じて他のハードウェア(たとえば通信回路)を制御するコマンドを発生する機能は備えていない。これにより、最小限の機能追加でサブCPU2が単体で動作確認をすることが可能になる。
【0027】
ここで、図3を参照してサブCPU2の動作を説明する。同図(A)はキー入力操作があった場合の各部の動作を示すフローチャートである。この動作は通常モード時も単体動作モード時も同様である。キー操作検出部20がキーボード30の操作を検出すると(S1)、検出した内容(キー操作データ)をバッファ22(送信バッファ22A)に記憶する(S2)。バッファ22にデータが記憶されると、そのデータをデータ通信部23が取り出してシリアル通信I/O24を介して(メインCPU1に)送信する(S3)。このデータの送信に対応して、データ通信部23は、シリアル通信I/O24経由で(メインCPU1から)キー入力の内容を表示部31に表示すべき旨の制御データ(コマンド)を受信する(S4)。データ通信部23は受信した制御データをバッファ22(受信バッファ22B)に記憶する(S5)。バッファ22に制御データが記憶されると、対応する機能部である表示制御部21がこの制御データを取り出し(S6)、取り出した制御データの内容に基づいて表示部31に数字等を表示する(S7)。
【0028】
このようにデータ通信部23は常時メインCPU1とデータの送受をするように動作するが、単体動作モードではデータ通信部23の送信・受信レジスタ用バッファ23A,Bが単体動作制御部25側に切り換えられているため、実際には単体動作制御部25とデータの送受をすることになる。
【0029】
図3(B)は単体動作制御部25の動作を示すフローチャートである。単体動作制御部25は単体動作モードが指示されるとこの動作を実行する。まずデータ通信部23の送信・受信レジスタ用バッファ23A,Bをシリアル通信I/O24側から自己側に切り換える(S11)。こののちデータ通信部23からキー操作データが送信されてくるまで待機する(S12)。データ通信部23からキー操作データが送信されてくると(S12でYES)、このキー操作データに対応して表示部31に表示すべき内容を指示する制御データ(コマンド)を作成する(S13)。そして、この制御データをデータ通信部23の受信レジスタ用バッファ23Bに送信する(S14)。
【0030】
これにより、メインCPU1と通信しない単体動作モード時であっても、機能部であるキー操作検出部20、表示制御部21およびデータ通信部23は、メインCPU1と通信する通常モードと同様の動作を行う。これにより、サブCPU2単体で通常モード時に動作する機能部およびハードウェアの動作確認を行うことができる。
【0031】
なお、本発明は、無線通信装置に限定されず、メインCPUおよびサブCPUを有するあらゆる電子機器に適用することが可能である。
【0032】
また、本発明は、フロントパネル3を制御するサブCPU2、すなわちキーボード30の入力を検出して、表示部31への表示を制御するサブCPUに限定されず、メインCPU1と通信を行うことによって動作するあらゆるサブCPUに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 メインCPU
2 サブCPU
3 フロントパネル
20 キー操作検出部
21 表示制御部
22 バッファ
22A 送信バッファ
22B 受信バッファ
23 データ通信部
23A 送信レジスタ用バッファ
23B 受信レジスタ用バッファ
24 シリアル通信I/O
24A 送信レジスタ
24B 受信レジスタ
24C シリアル通信ハードウェア
25 単体動作制御部
30 キーボード
31 表示部(液晶ディスプレイ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データをメインCPUに送信する第1の機能部、前記メインCPUからデータを受信する第2の機能部の一方または両方を備え、さらに、前記第1の機能部、第2の機能部と前記メインCPUとの通信を制御するデータ通信部と、を備えた電子機器の制御装置であって、
単体動作モード時に、前記データ通信部を前記メインCPUに接続するためのデータ経路を自己宛に切り換え、前記第1の機能部のデータの受信または前記第2の機能部に対するデータの送信を含む前記メインCPUの動作をシミュレートする単体動作制御部をさらに備えた電子機器の制御装置。
【請求項2】
前記第1の機能部は、ユーザ操作部を制御する機能部であって、前記ユーザ操作部に対する操作を検出してその操作データを前記メインCPUに送信し、
前記第2の機能部は、表示部を制御する機能部であって、前記メインCPUから表示データを受信してその内容を前記表示部に表示する
請求項1に記載の電子機器の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子機器の制御装置をサブCPUとして備えるとともに、前記サブCPUと通信して装置全体の動作を制御するメインCPUを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−248797(P2011−248797A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123811(P2010−123811)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】