説明

電子機器用基板

【課題】樹脂基材上にガスバリア性を有する層が形成された電子機器用基板において、高いガスバリア性を有し、且つ、層間の密着力に優れた信頼性の高い膜を簡易に形成可能とする。
【解決手段】樹脂基板101上に複数の層が積層された積層膜を有する電子機器用基板100において、積層膜を、正又は負に帯電可能な無機化合物を含む1層以上の無機物層110と、無機物層110と反対の電荷に帯電可能な無機層状化合物を含む1層以上の層状化合物層120とで構成し、無機物層110と層状化合物層120とを交互に積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基材上にガスバリア性を有する層が形成された電子機器用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のFPD(Flat Panel Display)及び照明等のほとんどは、ガラス基板上にデバイスが形成されており、ガラス基板以外の基板を用いた実用的なものはほぼ存在しない。その理由としては、ガラス基板が高耐熱性であることから、高温形成が必要なディスプレイの駆動回路や部材を形成するのに適している点、線膨張係数が小さいことから、駆動回路や部材に与える応力を抑制でき、配線の破断や部品の特性変動が少ない点、可視光域で透明なため光を取り出すのが容易である点、さらに、ガスバリア性が高いことから、外部からの酸素や水蒸気の進入を阻止することができ、必要によっては高真空を保持できる点などが挙げられる。従って、上記のような特徴を兼ね備えたガラス基板は非常に理想的な材料である。
【0003】
一方で、ガラス基板には欠点も存在する。具体的には、ガラス基板は柔軟性がなく、割れやすい点、また、重量が大きく、基板の変形や取り扱いが困難である点が問題となっている。特に、コストダウンを目的としたディスプレイパネル製造時の基板サイズの拡大に伴い、基板の重量によるたわみ、及び、割れの発生が問題となっている。また、持ち運んで使用するモバイル用途として考えた場合、ガラス基板では曲げて持ち運ぶ等の用途を想定したアプリケーションには使えない。さらに、重量の低減は携帯性を重視するモバイル用途に関しては重要な課題である。また、ガラス基板は衝撃に対して割れやすく、落下させた場合にデバイスが損傷しやすいという欠点も持ち、モバイル用途にはあまり適していない。
【0004】
そこで、昨今、このようなガラス基板の欠点を克服し、ガラス基板と同等の耐熱性、線膨張係数、ガスバリア性等を有するディスプレイ用基板材料の開発が進められている。例えば、高いガスバリア性と柔軟性を有する基板としては、極薄のガラス基板に有機無機ハイブリッド材料をコーティングした基板、樹脂基板の上に窒化シリコンと窒化炭素との多層構造を形成した基板などが開発されているが、コスト等の問題で実用化は難しい。よって、最近は、樹脂基材の上に有機層と無機層、又は、無機層と無機層を積層したものが開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、粘土層と無機薄膜層とを積層して形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、粘土層と無機薄膜層との間に、補強層や平滑層を形成する技術が開示されている。これら特許文献1及び2の技術は、粘土層と無機薄膜層とを積層することにより、ガスバリア性を有するバリア層を形成する技術である。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、粘土層を積層させてバリア層を形成する際に、各粘土層間を静電気力で密着させるために、各粘土層間に数〜数十nmの厚みの有機層を形成する技術が開示されている。
【0007】
さらに、例えば、特許文献4には、粘土等の層状化合物と金属アルコキシド等をゾルゲル法により分散させてガスバリア性を有する膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−22075号公報
【特許文献2】特開2007−65644号公報
【特許文献3】国際公開第2004/024989号
【特許文献4】特開2003−41153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術では、組成及び工程から考慮すると、粘土層と無機薄膜層との密着力が低く、粘土層と無機薄膜層とが剥離する場合があるなど、信頼性の高い膜を形成することが困難であるという問題があった。これに対して、特許文献2の技術のように、粘土層と無機薄膜層との間に緩衝層や補強層等を設ければ、粘土層と無機薄膜層との密着力は向上させることはできるが、膜の構造や製造工程などが複雑となる、という問題があった。
【0010】
また、特許文献3の技術では、各粘土層を有機層を用いて静電気力で密着させるため、各粘土層間の密着力が高く、信頼性の高い膜を得ることができる。しかし、有機層部分にはバリア性を持たせることができず、また、有機層部分の耐熱性が低い、といった問題があった。
【0011】
さらに、特許文献4の技術は、粘土とアルコキシド等を分散させて膜を形成する技術であるが、実際に高いバリア性を有するだけの量の粘土を分散させることは非常に困難である、という問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、樹脂基材上にガスバリア性を有する層が形成された電子機器用基板において、高いガスバリア性を有し、且つ、層間の密着力に優れた信頼性の高い膜を簡易に形成可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無機物層と、当該無機物層と反対のチャージを有する層状化合物とを静電気力で密着させ、この層状化合物の層を、密着層、柔軟層、バリア層として兼用することにより、高いガスバリア性を有し、且つ、層間の密着力に優れた信頼性の高い膜が得られ、且つ、この膜を簡易な工程で形成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明のある観点によれば、樹脂基材上に複数の層が積層された積層膜を有する電子機器用基板であって、前記積層膜は、正又は負に帯電可能な無機化合物を含む1層以上の無機物層と、前記無機物層と反対の電荷に帯電可能な無機層状化合物を含む1層以上の層状化合物層とからなり、前記無機物層と前記層状化合物層とが交互に積層されている、電子機器用基板が提供される。
【0015】
ここで、前記無機化合物は、構成元素として、ケイ素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含むことができる。
【0016】
また、前記無機物層は、正に帯電可能な部位として、オニウム塩構造を有していてもよい。この場合に、オニウム塩は、例えば、アンモニウム塩であってもよい。
【0017】
また、前記無機物層は、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリからなる群より選択される少なくとも1種を含む溶液を前記樹脂基材上に塗布した後に乾燥させることにより形成される層であってもよい。
【0018】
また、前記無機物層は、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリが化学反応しない置換基を含むことが好ましい。
【0019】
また、前記無機層状化合物は、粘土鉱物、リン酸塩系誘導体型化合物及び層状複水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0020】
また、前記積層膜に含まれる複数の層のうち、前記樹脂基材に接触する最内層と前記樹脂基材から最も離隔した最表層がともに、前記無機物層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂基材上にガスバリア性を有する層が形成された電子機器用基板において、無機物層と、当該無機物層と反対のチャージを有する層状化合物とを静電気力で密着させることにより、高いガスバリア性を有し、且つ、層間の密着力に優れた信頼性の高い膜を簡易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器用基板の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】図1に示した無機物層と層状化合物層の密着状態を模式的に示す説明図である。
【図3】無機物層110上に層状化合物層120が積層されていることを確認した原子間力顕微鏡写真の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電子機器用基板の構成を概略的に示す説明図である。
【図5】図4に示した無機物層と層状化合物層の密着状態を模式的に示す説明図である。
【図6】化学反応しない置換基を含んだアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリの添加割合と膜厚との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
[第1の実施形態]
第1に、本発明の第1の実施形態に係る電子機器用基板100について説明する。
【0025】
(電子機器用基板100の構成)
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る電子機器用基板100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る電子機器用基板100の構成を概略的に示す説明図であり、図2は、図1に示した無機物層110と層状化合物層120の密着状態を模式的に示す説明図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電子機器用基板100は、FPD(Flat Panel Display)や照明等の発光素子などに用いられる基板であって、樹脂基板101と、無機物層110と、層状化合物層120とを有する。より詳細には、電子機器用基板100は、樹脂基板101上に複数の層が積層された積層膜を有する基板である。また、本実施形態に係る積層膜は、後述する無機物層110と層状化合物120とが各1層以上交互に積層された膜である。すなわち、積層膜は、1層以上の無機物層110と1層以上の層状化合物層120とからなり、無機物層110と層状化合物層120とが交互に積層された構造を有している。
【0027】
このように、本実施形態に係る電子機器用基板100では、樹脂基板101上に無機物層110と層状化合物層120とが各1層以上積層されており、且つ、図2に示すように、無機層状化合物を正又は負(図2の例では負)に帯電させ、その反対の電荷(図2の例では正)に帯電させた無機物層110上に帯電された無機層状化合物を静電気力で密着させ、層状化合物層120を形成する。これにより、無機物層110と層状化合物層120との強固な密着力と信頼性を得ることができる。以下、樹脂基板101、無機物層110及び層状化合物層120の構成について詳細に説明する。
【0028】
<樹脂基板101>
樹脂基板101は、上述したように、無機物層110と層状化合物層120とからなる積層膜が形成される樹脂製の基板である。樹脂基板101としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)等の既知のフィルム状の基板を用いることができる。
【0029】
<無機物層110>
無機物層110は、正又は負に帯電可能な無機化合物を主成分として含む層である。無機物層110の主成分となる無機化合物としては、構成元素として、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムのうちの少なくとも1種の元素を含む無機化合物が挙げられるが、このうち特に、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸化炭化物、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物、チタン酸化物、チタン窒化物、ジルコニウム酸化物及びジルコニウム窒化物、のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。このような化合物としては、具体的には、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0030】
本実施形態における無機物層110は、その表面が、層状化合物層120の主成分となる無機層状化合物と反対の電荷に帯電している。例えば、無機層状化合物として、モンモリロナイトのような負電荷を有する化合物を使用し、これを主成分とする層状化合物層120と無機物層110との積層構造を形成しようとする場合には、無機物層110として、オニウム塩構造を有するものを好適に使用することができる。この場合、無機物層110は、正に帯電可能な部位として、オニウム塩構造を有することになる。また、ここでいうオニウム塩とは、化学結合に関与しない電子対を有する化合物が、当該電子対によって、他の陽イオン形の化合物と配位結合して生ずる化合物をいい、例えば、N(窒素)、P(リン)、I(ヨウ素)、S(硫黄)、O(酸素)などのヘテロ原子を含む化合物がオニウム塩を形成することができる。
【0031】
オニウム塩は通常、対アニオンを伴って安定化構造を形成する。対アニオンとしては、ハロゲン化物イオン(塩化物イオン、臭化物イオンなど)が一般的であるが、これに限定されることはなく、有機酸(カルボン酸、スルホン酸)などのアニオンであってもよい。このようなオニウム塩構造の好ましい例としては、N原子からなるアンモニウム塩、P原子からなるホスホニウム塩、S原子からなるスルホニウム塩が好ましく、こららのうち特に好ましくはN原子からなるアンモニウム塩である。アンモニウム塩は安定性に優れたオニウム塩であるためである。
【0032】
以上のような無機物層110は、その骨格を形成するための物質として、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリからなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む溶液を樹脂基板101上に塗布した後に乾燥させることにより形成される層であることが好ましい。なお、無機物層110の形成方法の詳細については後述する。
【0033】
ここで、無機物層110の構造の具体例について、図2を参照しながら説明する。図2には、無機物層110形成用の溶液として、式Si(OR4−n(R:炭素数1‐10の有機基、R:‐NR、‐SR、‐PRを含むオニウム塩を形成可能な置換基)で表されるアルコキシシランを使用した例を示している。この場合、アルコキシシランを含む溶液を樹脂基板101上に塗布した後に乾燥させることにより、図2に示すような、−O−Si−O−結合を骨格として有し、且つ、正に帯電可能な部位として、アンモニウム塩の構造(NH基)を有する無機物層110が形成される。そして、このアンモニウム塩の構造により正に帯電した無機物層110を形成した場合には、これと反対の負の電荷を有する無機層状化合物(例えば、モンモリロナイト)を使用して層状化合物層120を形成する。このように、無機物層110と層状化合物層120とを反対の電荷に帯電させることにより、無機物層110と層状化合物層120とをクーロン力により強固に密着させることができる。
【0034】
正に帯電する無機化合物の他の例としては、後述する層状化合物層120にも用いることが可能な層状複水酸化物などがあるが、この他に、金属イオンが挙げられる。この場合の金属イオンとしては、Al、Fe、Mg、K等が好適である。これらの金属を含む水溶性の化合物、例えば硫酸塩、塩化物、水酸化物等を水に溶解して、該金属イオンを含む水溶液、すなわち、無機物層110形成用の溶液を作製することができる。例えば、Alを使用した場合、AlK(SOやAlNH(SO等の水溶液を、Feを使用した場合、FeK(SOの水溶液を、Kを使用した場合、KOH、KSO、KClを、それぞれ用いることができる。これらの金属イオンは通常、正の電荷を持つ。
【0035】
一方、負に帯電する無機化合物の例としては、後述する層状化合物層120にも用いることが可能な粘土鉱物やリン酸塩系誘導体型化合物があるが、この他に、金属のオキソ酸が挙げられる。金属のオキソ酸としては、水に可溶な金属オキソ酸の化合物、例えば、ナトリウム塩やアンモニウム塩等を使用することが好ましく、具体的には、NaVO、(NHMoO、(NHWO等が挙げられる。無機物層110に用いる無機化合物として他に利用可能なものには、TiOSO等がある。これら金属のオキソ酸は通常、負の電荷を持つ。
【0036】
<層状化合物層120>
層状化合物層120は、無機物層110と反対の電荷に帯電可能な無機層状化合物を主成分として含む層である。層状化合物層120の主成分となる無機層状化合物としては、例えば、粘土鉱物、リン酸塩系誘導体型化合物、及び層状複水酸化物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0037】
本実施形態で用いられる粘土鉱物としては、天然粘土であってもよいし、合成粘土であってもよく、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトのうちの少なくとも1種であることが好ましい。また、本実施形態における粘土鉱物は、層状構造を有し、例えば、シリケート四面体シート単独、又は、シリケート四面体シートとアルミニウム、マグネシウムもしくは鉄の八面体シートとが積層した結晶構造を有する無機高分子化合物である。これらのうちでも、特に、層状化合物として知られるモンモリロナイトが好ましい。モンモリロナイトはスメクタイト類に属し、シリケート四面体シートがアルミネート八面体シートを挟んだ構造の2:1層状ケイ酸塩に属している。アルミネート八面体シートでは、1個のAl3+をイオン半径のあまり違わないMg2+が置換することがあり、この場合は、結晶構造が大きく変化せずに化学組成の異なった鉱物となる。この置換により電荷のバランスが崩れ、結晶本体は負に帯電する。それを補うためにアルカリ金属、アルカリ土類金属が結晶表面又は結晶層間に陽イオンとして入っている。これらの粒子は、酸素やケイ素を中心として構成される厚みが0.1nm〜10nmの四面体層や八面体層が1〜3層積層された、数十nm〜5μm程度の長軸方向の大きさを有するアスペクト比の大きなシート状の層状化合物粒子である。
【0038】
本実施形態で用いられるリン酸塩系誘導体型化合物としては、例えば、α−リン酸ジルコニウムを挙げることができる。α−リン酸ジルコニウムは、ジルコニウム原子の面が網目上に形成され、層状(シート状)の形状となっている。ジルコニウムの原子面の上下にはリン酸基が存在し、Zr(PO2n2−の形で層状結晶本体は負に帯電している。また、各層間にはイオン交換可能な水素イオンが位置している。
【0039】
本実施形態で用いられる層状複水酸化物としては、例えば、以下の一般式(1)であらわされる化合物を使用することができる。
[MII1−xMIII(OH)x+[Bn―x/n・yHO]x−
(式中、MIIは2価金属、MIIIは3価金属、Bn−はアニオン、nはアニオンの価数、xは0<x<0.4、yは0より大きい実数である。)
【0040】
すなわち、層状複水酸化物は、正に帯電したブルーサイト様の基本層([MII1−xMIII(OH)x+)の層間に、アニオン及び層間水からなる負に帯電した中間層([Bn―x/n・yHO]x−)を内包する層状(シート状)構造の化合物である。層状結晶本体は正に帯電しており、結晶全体では電気的中性を保っている。2価金属としては、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等が知られており、3価金属化合物としては、Al、Fe、Cr、Co、In等が知られている。また、アニオンとしては、OH、F、Cl、NO、SO2−、CO2−、Fe(CN)4−、CHCOO、V10286−、C1225SO等のアニオンが知られている。
【0041】
<各層の膜厚>
無機物層110の膜厚は、無機物層110を形成するための溶液の種類や塗布条件によって異なるが、乾燥後の膜厚として100nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。乾燥後の膜厚が100nm以上であれば、下層の表面の凹凸の影響等を受けてピンホール等が発生することを抑制し、十分な膜質を得ることができる。一方、乾燥後の膜厚は、クラックの発生を抑制するという観点から20μm以下が好ましい。無機物層110の乾燥後の膜厚は、より好ましくは200nm〜10μm、さらに好ましくは500nm〜5μmである。
【0042】
層状化合物層120の膜厚は、使用する材料により異なるが、0.1nm〜500nmの範囲にあることが好ましい。無機層状化合物が隙間なく位置するように層状化合物層120を形成させることが好ましく、層状化合物層120の厚みが0.1nm以上であれば、無機層状化合物が十分に隙間なく位置するように層状化合物層120が形成されていることになる。一方、層状化合物層120の厚みが厚すぎると各層状化合物間の隙間が大きくなり、また、層状化合物の二次凝集物が混合されている可能性があることから500nm以下が好ましい。層状化合物層120の膜厚は、より好ましくは0.5nm〜100nm、さらに好ましくは0.5nm〜50nmである。なお、層状化合物層120の膜厚は、触針式表面形状測定器(例えば、Bruker製 Dektak150等)により測定することができる。
【0043】
<各層の配置>
上述した無機物層110と層状化合物層120との配置については、無機物層110と層状化合物層120とが交互に配置されていれば、特に限定はされないが、積層膜に含まれる複数の層のうち、樹脂基板101に接触する最内層と樹脂基板101から最も離隔した最表層がともに、無機物層110であることが好ましい。すなわち、無機物層110がn層積層されている場合には、層状化合物層120は(n−1)層積層されており、積層膜における最下層及び最上層には無機物層110が配置される。粘土鉱物等の無機層状化合物は、水を吸収して膨張する性質を有するが、無機層状化合物が膨張すると、層が剥離する要因となるため、望ましくない。そこで、上記のように、積層膜における最下層と最上層をともに、無機物層110とすることにより、積層膜内に水が浸入することを抑制でき、無機層状化合物の膨張を抑制することができる。
【0044】
<無機層状化合物が積層されていることの確認方法>
ここで、無機物層110上に層状化合物層120が積層されていることは、例えば、積層膜が形成された基板の原子間力顕微鏡写真(AFM)により確認することができる。参考までに、図3に、無機物層110上に層状化合物層120が積層されていることを確認した原子間力顕微鏡写真の一例を示す。図3において、多角形状に見えるものが層状化合物層120を示しており、このような多角形状に見えるものが確認されれば、無機物層110上に層状化合物層120が積層されていることが確認されたといえる。
【0045】
(電子機器用基板100の製造方法)
以上、本実施形態に係る電子機器用基板100の構成について詳細に説明したが、続いて、上述した構成を有する電子機器用基板100の製造方法について説明する。
【0046】
本実施形態に係る電子機器用基板100は、樹脂基板101上に、無機物層110と層状化合物層120とが各1層以上ずつ交互に積層されたものであるが、このような層構造体は、樹脂基板101上に無機物層110を形成する工程と、無機物層110上に層状化合物層120を形成する工程とを、層状化合物層120上に無機物層110を形成する工程とを順次繰り返し行う方法により得ることができる。
【0047】
<無機物層110の形成工程>
無機物層110の形成方法としては、特に限定はされないが、以下に、オニウム塩構造を有する無機物層110の形成方法の一例について説明する。オニウム塩構造を有する無機物層110の形成方法としては、例えば、無機物層110を形成する際に調製するゾルゲル材料などに上述したオニウム塩化合物を所定量添加して形成することが可能である。オニウム塩化合物としては、アルキルアンモニウムハライドやアリールアンモニウムハライドのような単分子化合物を単に添加しても良いし、以下に説明するように無機物層110形成用のゾルゲル材料とオニウム塩を形成可能な置換基を有するゾルゲル材料を用いてオニウム塩形成部位を無機物層110中に化学的に結合させて組み込んでも良い。
【0048】
上記オニウム塩形成部位を化学的に結合させて組み込む方法においては、ゾルゲル材料及びオニウム塩を形成可能な置換基を有するゾルゲル材料として、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリのうちの少なくとも1種を含む溶液を選択することができる。ここで、アルコキシシランは、式Si(OR)やSi(OR4−n(R、R、Rは、水素、アルキル基、又は、−NR、−SR、−PR等といったオニウムを形成可能な置換基である。)のことであり、金属アルコキシドは、式M(OR)やM(ORx−n(R、R、Rは、水素、アルキル基、又は、−NR、−SR、−PR等といったオニウムを形成可能な置換基であり、Mは、Ti,Al,Zr等の金属であり、xは、金属の価数である。)のことである。また、ポリシラザンは、加熱によって酸化ケイ素や窒化ケイ素に転化するものであり、式−(R−Si−NH)−(R、Rは、水素、アルキル基、又は、−NR、−SR、−PR等といったオニウムを形成可能な置換基である。)で表される。ケイ酸アルカリは、式MO・nSiO(Mはアルカリ金属であり、nはモル比で1〜20程度の範囲である。)で表されるものである。本実施形態に係る無機物層110の形成方法では、これらの化合物を単独で、又は複数組み合わせたものを使用して無機物層110の膜を形成する。
【0049】
上記の方法をより具体的に説明すると、例えば、アルコキシシランの一種であるアミノ基を有するシランカップリング剤と、同じくアルコキシシランの一種であるテトラエトキシシラン(TEOS)などのシランカップリング剤とを混合し、加水分解を行うことにより、アミノ基を含有するゾルゲル材料を合成し、これを基板上に塗布した後に加熱焼成することによって、アミノ基を含有した無機物層110を形成することが可能である。アミノ基を含有するゾルゲル材料としては、例えば、信越シリコーン社や東京化成社から入手可能な、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどを使用することができる。
【0050】
以下に、ここまで説明した無機物層110の形成方法における化学反応式の一例(反応式1)を示す。例えば、下記反応式1中のCl(塩化物イオン)が無機層状化合物の負電荷とイオン交換して、無機層状化合物が無機物層110に静電吸着することで、無機物層110と層状化合物層120とによる積層構造を形成することができる。
【0051】
【化1】

・・・(反応式1)

【0052】
オニウム塩を含有する無機物層110の形成方法のその他の例としては、ハロゲン化アルキル基やハロゲン化アシル基などを有するゾルゲル材料(シランカップリング材料)を前述の方法でTEOSなどと混合して加水分解し、ハロゲン基を有する無機物層110を形成し、その後に種々のアルキルアミンやアリールアミン、アルキルスルフィドやアリールスルフィド、アルキルホスフィンやアリールホスフィンなどと反応させることで、オニウム塩構造を形成することも可能である。このような方法をとることで、市販されていない種々のオニウム塩を含有する無機物層110を形成することが可能である。
【0053】
ハロゲン化アルキル基やハロゲン化アシル基などを有するゾルゲル材料の例としては、信越シリコーン社や東京化成社から入手可能な3−クロロプロピルトリメトキシシラン、(クロロメチル)トリエトキシシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシランなどが挙げられる。
【0054】
以下に、ハロゲン化アルキル基を有する無機物層110からオニウム塩基への交換反応を行う化学反応式の一例(下記化学式2)を示す。
【0055】
【化2】

・・・(反応式2)

【0056】
ここで、上記シランカップリング剤の加水分解を行う際には、加水分解反応の速度を速めるために、酸触媒を添加してもよい。このような酸触媒としては、塩酸が好適に用いられるが、この他にも、例えば、硫酸や硝酸も用いることができる。
【0057】
また、上記無機物層110形成用の溶液では、溶媒としてエタノール等のアルコールを用いる。溶媒の量は、無機物層110形成用の溶液の樹脂基板101への塗布に適した粘度となるように調整すればよい。
【0058】
2種類のアルコキシシラン(オニウム塩を形成可能な置換基を有するものと有しないもの)、水、塩酸等の酸触媒を溶媒中で混合することにより、アルコキシシランの加水分解反応が一部進行し、−O−Si−O−結合によるネットワークが一部形成される。このとき、一部のアルコキシシランは未反応状態であり、加水分解反応により、−O−Si−O−結合が形成された部分と、未反応で−O−Si−O−結合が形成されていない部分とが混在した状態で、すなわち、上記反応式1及び2に示した部分構造が形成された状態で溶媒中に溶解している。
【0059】
また、無機物層110を構成する無機化合物の材料として、例えば、アルコキシシランを使用する場合、無機物層110形成用の溶液中の成分は、主に、オニウム塩を形成可能な置換基を含まないアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS))と、オニウム塩を形成可能な置換基を含むアルコキシシラン(例えば、アミノトリプロピルメトキシシラン(APTES))と、加水分解に用いる水と、酸触媒(例えば、塩酸)と、溶媒(例えば、エタノール)とを含むが、これらの配合比は、以下の通りである。
【0060】
溶液中のアルコキシシランの合計量の配合比(質量比)、すなわち、(オニウム塩を形成可能な置換基を含まないアルコキシシランの量+オニウム塩を形成可能な置換基を含むアルコキシシランの量)/オニウム塩を形成可能な置換基を含まないアルコキシシランの量+オニウム塩を形成可能な置換基を含むアルコキシシランの量+水の量+酸触媒の量)が、0.01以上0.7以下であることが好ましく、より好ましくは、0.05以上0.5以下、さらに好ましくは0.1以上0.4以下である。上記比率が0.7を超えるか、または、0.01未満となると、重合反応が進まずに、アルコキシシランが粉末状の固形分となってしまい、膜を形成することができないおそれがある。
【0061】
また、オニウム塩を形成可能な置換基を含まないアルコキシシランの量と、オニウム塩を形成可能な置換基を含むアルコキシシランの量との配合比(質量比)、すなわち、(オニウム塩を形成可能な置換基を含むアルコキシシランの量)/(オニウム塩を形成可能な置換基を含まないアルコキシシランの量+オニウム塩を形成可能な置換基を含むアルコキシシランの量)が、0.6以下であることが好ましく、より好ましくは0.4以下であり、さらに好ましくは0.3以下である。オニウム塩を形成可能な置換基を含むアルコキシシランの配合比を多くし、上記比率を超えると、無機物層110の構造内に欠陥、すなわち、無機物層110の構造内における空隙が増加し、その空隙から水や酸素が透過し、バリア性が低下するため、好ましくない。
【0062】
なお、以上の配合比については、無機物層110を構成する無機化合物の材料として、アルコキシシラン以外の金属アルコキシド、ポリシラザン、ケイ酸アルカリを使用した場合も同様である。
【0063】
次に、上述した無機物層110形成用の溶液を樹脂基板101上に塗布する。このときの溶液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、ロールコーティング法、スプレー法などの既知の方法を用いることができる。
【0064】
さらに、塗布した溶液を加熱乾燥させ、無機物層110を形成する。この加熱乾燥工程により、未反応状態のアルコキシシランが反応し、−O−Si−O−結合によるネットワークが完全に形成されることとなる。この時の乾燥条件としては、アルコキシシランの加水分解反応が十分に進む条件であれば特に限定はされないが、例えば、100℃〜400℃で乾燥させればよい。乾燥後、無機物層110が形成された樹脂基板101を純水等に浸透させて洗浄した後に、エアブロー等により水分を飛ばすことが好ましい。
【0065】
<層状化合物層120の形成工程>
上記のようにして形成した正又は負の電荷を有する無機物層110に、無機物層110と反対の電荷を有する無機層状化合物を静電気力により結合させ、層状化合物層120を形成する。
【0066】
ここで、層状化合物層120の形成に用いる無機層状化合物は、粉体の状態では粒子同士が凝集し、大きな粒径となっている。そこで、層状化合物層120の形成に用いるためには、凝集している粒子を剥離(Exfoliate)し、水中に分散させる必要がある。凝集している粒子は、扁平なシート状の形状を有しており、層状に重なり合っている状態である。各層間には、無機層状化合物と反対の電荷を有する物質(例えば、無機層状化合物がモンモリロナイトやリン酸ジルコニウム等の負の電荷を有する化合物の場合には、Naのような正の電荷を有する物質)が入り、静電気力により結合した状態となっている。このような凝集状態の無機層状化合物を水中に分散させると、無機層状化合物と反対の電荷を有する物質よりも大きな水分子が各層の間に浸透することにより、各層間の距離が広がり、静電気力による相互作用が弱くなり、各層を剥離させることができる。このように各層を剥離させることにより、正又は負に帯電した無機層状化合物を得ることができる。なお、上述した無機層状化合物の中でも、各層の剥離のしやすさを考慮すると、モンモリロナイトやリン酸ジルコニウムを使用することが好ましい。
【0067】
次に、上記のようにして得られた正又は負に帯電した無機層状化合物(粘土鉱物等)を水やアルコールなどに分散させた層状化合物120形成用の溶液を作製し、この溶液を、無機層状化合物と反対の電荷を有する無機物層110(例えば、アミノ基等のオニウム塩を形成可能な置換基を有する無機物層110)に塗布することで、無機層状化合物と無機物層110の帯電部位(アニオン基又はカチオン基)との間でイオン交換反応をさせ、無機層状化合物を無機物層110の表面に静電気力(クーロン力)により結合させることができる。
【0068】
具体例を挙げると、例えば、無機層状化合物として粘土鉱物等の負に帯電したものを使用し、無機物層110としてアミノ基等のオニウム塩を形成可能な置換基を有する正に帯電可能なものを使用する場合、無機層状化合物のリチウムやナトリウムなどの対カチオンとオニウム塩(アンモニウム塩など)との間でイオン交換反応をさせて、粘土鉱物等の無機層状化合物を無機物層110の表面に静電気力により結合させることができる。この際、アミノ基等を含有する無機物層110は、そのまま層状化合物層120形成用の溶液(粘土鉱物等を溶媒中に分散させた分散溶液)中に浸漬させても良いし、事前に塩酸や有機酸の水溶液やアルコール溶液による処理を行って、オニウム塩を積極的に形成した後、粘土鉱物等の分散溶液に浸漬させても良い。また、粘土鉱物等の分散溶液のpHを塩酸や有機酸などによって調整して上記イオン交換反応を促進させることも可能である。
【0069】
層状化合物120形成用の溶液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、ロールコーティング法、スプレー法などの既知の方法を用いることができる。この中でも、処理操作の容易性を考慮すると、ディッピング法を採用し、層状化合物120形成用の溶液に無機層状化合物と反対の電荷を有する無機物層110を浸漬させ、クーロン力で無機物層110表面に無機層状化合物を吸着させ、薄膜を形成すること(吸着法)が好ましい。
【0070】
層状化合物層120の形成に用いる無機層状化合物の分散溶液中の無機層状化合物の濃度は、0.01g/L〜10g/Lが好ましく、0.1g/L〜1g/Lがさらに好ましい。無機層状化合物の濃度が低すぎると、樹脂基板101や無機物層110への無機層状化合物粒子の吸着が不十分となる。一方、無機層状化合物の濃度が高すぎると、分散溶液の粘度が高くなりすぎてしまう。分散溶液は、少なくとも水と無機層状化合物とからなるが、これ以外にも、無機層状化合物粒子の分散性を高めるための分散剤や、無機層状化合物粒子の剥離(Exfoliate)を促進するためのインターカレート剤を含んでいても良い。
【0071】
従来においては、粘土のような無機層状化合物を積層させたものは存在したが、粘土のような無機層状化合物は、対カチオンとしてナトリウムイオンなどの小さなカチオンを有している場合には、各層の層間は狭く、多層構造を有している。一方、本実施形態におけるように、無機層状化合物が大きな対カチオンであるオニウム塩と静電気力で結合する場合には、無機層状化合物の一層のみを選択的に高い隠蔽率で形成し、これらの層状化合物を水平方向に配置することが可能となるため、高いガスバリア性の発現に寄与することができる。
【0072】
<2層以上の積層方法>
無機物層110や層状化合物層120を2層以上形成する場合には、以上説明した無機物層110の形成工程と層状化合物層120の形成工程を繰り返せばよい。例えば、無機物層110と層状化合物層120が1層ずつ形成されている基板に、さらに2層目以降の無機物層110を積層する場合には、層状化合物層120と反対の電荷に帯電可能な部位(カチオン基又はアニオン基)を有する無機物層110形成用の溶液を調製し、この溶液を1層目と同様の方法で層状化合物層120に塗布した後に加熱乾燥させればよい。2層目以降の層状化合物層120を積層する場合も、1層目の層状化合物120の形成方法と同様の方法で層状化合物層120を形成すればよい。
【0073】
<積層順序について>
上述した例では、樹脂基板101上に初めに無機物層110を形成し、その上に相応化合物層120を積層する例について説明したが、逆に、樹脂基板101上に初めに層状化合物層120を形成し、その上に無機物層110を積層してもよい。この場合、初めに、樹脂基板101の表面を正電荷又は負電荷に帯電させる帯電処理を行う必要がある。この帯電処理は、樹脂基板101を所定の方法で洗浄した後に行われる。帯電処理の方法としては、コロナ処理やUV/O処理などの物理的処理、電子線(EB)処理、あるいは、シランカップリング剤等の薬液による化学的処理を用いることができる。例えば、樹脂表面をコロナ処理すると、樹脂基板101の表面を負に帯電させることができる。また、アミノ基有するシランカップリング剤を用いると、樹脂基板101の表面を正に帯電させることができる。さらに、これら帯電処理の効果を高めるために、樹脂基板101上にシリカ等の薄膜を形成した後に、帯電処理を行っても良い。具体的には、シリカやアルミナ等の金属酸化物を形成する。一般に、これら金属酸化物は、大気中でその表面にOH基が存在しており、コロナ処理やUV/O処理を行うと、強力かつ均一に表面を帯電することができる。シランカップリング剤で表面を帯電処理する場合、該シランカップリング剤が金属酸化物表面のOH基と結合する結果、強力かつ均一に表面を帯電することができる。
【0074】
なお、無機物層110及び層状化合物層120の形成方法としては、上述した方法と同様の方法を用いることができる。
【0075】
[第2の実施形態]
第2に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器用基板200について説明する。電子機器用基板200は、上述した第1の実施形態に係る電子機器用基板100とは、無機物層の構成が一部異なるものである。以下、電子機器用基板200の構成及び製造方法について、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0076】
(電子機器用基板200の構成)
まず、図4及び図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る電子機器用基板200の構成について説明する。図4は、本実施形態に係る電子機器用基板200の構成を概略的に示す説明図であり、図5は、図4に示した無機物層210と層状化合物層220の密着状態を模式的に示す説明図である。
【0077】
図4及び図5に示すように、本実施形態に係る電子機器用基板200は、FPDや照明等の発光素子などに用いられる基板であって、樹脂基板101と、無機物層210と、層状化合物層120とを有する。より詳細には、電子機器用基板200は、樹脂基板101上に複数の層が積層された積層膜を有する基板である。また、本実施形態に係る積層膜は、後述する無機物層210と層状化合物120とが各1層以上交互に積層された膜である。すなわち、積層膜は、1層以上の無機物層210と1層以上の層状化合物層120とからなり、無機物層210と層状化合物層120とが交互に積層された構造を有している。
【0078】
本実施形態に係る無機物層210は、その骨格を形成するための物質として、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリからなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む溶液を樹脂基板101上に塗布した後に乾燥させることにより形成される層である。また、無機物層210を形成するための溶液中には、第1の実施形態における無機物層110とは異なり、その骨格を形成するための物質として、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリが化学反応しない置換基を有する化合物も含む。このような置換基としては、特に限定はされないが、例えば、炭素数1−10のアルキル基(例えば、メチル基)、フェニル基等が挙げられる。
【0079】
ここで、無機物層210の構造について、図5を参照しながらもう少し詳しく説明する。図5には、無機物層210形成用の溶液として、式Si(OR4−n(R:炭素数1‐10の有機基、R:‐NR、‐SR、‐PRを含むオニウム塩を形成可能な置換基)で表されるアルコキシシランに加えて、式Si(OR4−n(R:炭素数1‐10の有機基、R:炭素数1−10のアルキル基(図5の例ではメチル基))で表されるアルコキシシランを使用した例を示している。ここで、Rは、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリが化学反応しない置換基の一例である。この場合、アルコキシシランを含む溶液を樹脂基板101上に塗布した後に乾燥させることにより、図5に示すような、−O−Si−O−結合を骨格として有し、且つ、その一部にアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリが化学反応しない置換基(例えば、メチル基)が挿入され、さらに、正に帯電可能な部位として、アンモニウム塩の構造(NH基)を有する無機物層210が形成される。なお、図5には、アルコキシシランの一種であるアミノ基を有するシランカップリング剤を、同じくアルコキシシランの一種であるテトラエトキシシラン(TEOS)などのシランカップリング剤と混合する際、同時にメチルトリエトキシシラン(MeTEOS)などを加えて合成し、基板上に塗布及び加熱焼成して形成した無機物層の例を図示している。そして、このアンモニウム塩の構造により正に帯電した無機物層210を形成した場合には、これと反対の負の電荷を有する無機層状化合物(例えば、モンモリロナイト)を使用して層状化合物層120を形成する。
【0080】
このように、無機物層210と層状化合物層120とを反対の電荷に帯電させることにより、無機物層210と層状化合物層120とをクーロン力により強固に密着させることができる。また、無機物層210形成用の溶液中に、化学反応しない置換基を含んだアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリのうちのいずれか1種または2種以上を含むことにより、骨格中にアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリが化学反応しない置換基が含まれることになり、無機物層210の柔軟性が増加するとともに、膜厚も厚くなる。これにより、無機物層の補強層としての役割を強化することができる。
【0081】
ここで、図6を参照しながら、化学反応しない置換基を含んだアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリの添加割合(図6には「3官能添加割合」と記載している。)と、膜厚との関係について説明する。図6に示した例は、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリとして、TEOSを用い、化学反応しない置換基を含んだアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリとして、MeTEOSを用いた例である。図6に示すように、MeTEOSをTEOSに対し、25質量%添加した場合、膜厚が約4倍となり、TEOSと同量、すなわち50質量%添加した場合、膜厚は約15倍となった。ただし、MeTEOS等の化合物の添加量を増やしすぎると、化学反応しない置換基が増えることで膜内に空孔が増え、ガスバリア性が低下するため、柔軟性及び膜厚の増加効果とガスバリア性の低下とを比較考量し、適切な量を添加する必要がある。
【0082】
(電子機器用基板200の製造方法)
以上、本実施形態に係る電子機器用基板200の構成について詳細に説明したが、続いて、上述した構成を有する電子機器用基板200の製造方法について説明する。
【0083】
電子機器用基板200の製造方法は、第1の実施形態における電子機器用基板100の製造方法と基本的に同様であるが、無機物層形成用の溶液を調製する際に、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリのうちの少なくとも1種に加え、これらの化合物と反応しない置換基を有するアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリのうちの少なくとも1種を加える点のみ異なる。このように、反応しない置換基を有するアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリのうちの少なくとも1種を加えることにより、上述したように、積層膜の柔軟性及び膜厚の増加効果が得られる。
【0084】
[まとめ]
以上説明したように、本発明に係る電子機器用基板によれば、樹脂基材上にガスバリア性を有する層が形成された電子機器用基板において、無機物層と、当該無機物層と反対のチャージを有する層状化合物とを静電気力で密着させることにより、高いガスバリア性を有し、且つ、層間の密着力に優れた信頼性の高い膜を簡易に形成することが可能となる。これにより、電子機器用基板の製造コストを低減でき、また、フレキシブル性のあるフィルム基材(例えば、樹脂基材101)上に形成できるため、ディスプレイや照明用基材として応用展開が可能となる。また、無機物層の骨格形成に用いることが可能なアルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びケイ酸アルカリ等と化学反応しない置換基を有する材料を用いることにより、無機物層に柔軟性を付与し、無機物層の補強層としての役割を強化することが可能となる。
【0085】
ここで、上記特許文献1及び2に記載された技術は、粘土とアルコキシドを含む無機薄膜層の積層膜が開示されており、層の構成は本発明と類似しているが、積層技術に差異がある。すなわち、静電気力により各層を密着させて積層する本発明に係る電子機器用基板では各層間の密着力が高く、特許文献1及び2に記載の技術との差は大きい。よって、本発明によれば、より密着性が高く信頼性の高い膜が得られる。
【0086】
また、上記特許文献3に記載された技術は、静電気力で層を密着させるという点は開示されているが、この技術では有機層部分にはバリア性が存在せず、耐熱性が得られないなどの欠点がある。一方、本発明では、このような欠点を補うことが可能となり、より高いバリア性が期待できる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例により限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
まず、実施例1として、以下の1−1)〜1−5)の工程により、上記第1の実施形態に係る電子機器用基板に対応する基板を作製した。
1−1) テトラメトキシシラン6g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン2g、水2.5g、塩酸0.01g、エタノール9.5gをガラス容器中に投入し、1昼夜攪拌し、無機物層形成用の溶液を得た。
1−2) 1−1)で得られた溶液をPEN(帝人デュポン製)基材上にスピンコーターで塗布し、150℃で乾燥させた。
1−3) 1−2)で得られた基板をエタノール、水で洗浄した後、エアブローで水分をとばした。
1−4) 粘土(天然モンモリロナイト)1gと超純水100gとをプラスチック製のディスポ容器に入れ、10分間攪拌し、粘土を分散させ、層状化合物形成用の溶液を得た。
1−5) 1−4)で得られた溶液の中に1−3)で得られた基板を30分間浸透させ、水で洗浄した後に、エアブローで乾燥させた。
1−6) 更に層を追加する際は、上記1−2)〜1−5)の工程を繰り返すことにより、各層の膜を積層した。
【0089】
なお、無機物層を4層、層状化合物層を3層積層した。各層の膜厚は、無機物層については1層につき0.2μmであり、層状化合物層については1層につき0.001μmであった。
【0090】
上記方法で作製した積層膜を有する電子機器用基板に対し、この積層膜のガス透過率(WVTR)を、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて水蒸気(PERMATRAN−W(登録商標)3/33シリーズ)及び酸素(OX−TRAN(登録商標)2/21シリーズ)について測定した。その結果、水蒸気と酸素共にガスの透過は検出されなかったため(ガス透過率<0.02g/cm・24h)、実施例1による積層膜は、極めて高いガスバリア性を有していることが分かった。また、積層膜の密着強度を確認するため、スコッチテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行ったが、積層膜の各層の剥離は見られなかった。更に、積層膜の環境試験として耐熱試験を行ったが、PEN基材の耐熱温度である180℃まで積層膜の変形や剥離等は見られなかった。
【0091】
(実施例2)
次に、実施例2として、以下の2−1)〜2−5)の工程により、上記第2の実施形態に係る電子機器用基板に対応する基板を作製した。
2−1) テトラメトキシシラン5g、メチルトリエトキシシラン1g、3−アミノプロピルトリメトキシシラン2g、水2.5g、塩酸0.01g、エタノール9.5gをガラス容器中に投入し、1昼夜攪拌し、無機物層形成用の溶液を得た。
2−2) 2−1)で得られた溶液をPEN(帝人デュポン製)基材上にスピンコーターで塗布し、150℃で乾燥させた。
2−3) 2−2)で得られた基板をエタノール、水で洗浄した後、エアブローで水分をとばした。
2−4) 粘土(天然モンモリロナイト)1gと超純水100gとをプラスチック製のディスポ容器に入れ、10分間攪拌し、粘土を分散させ、層状化合物形成用の溶液を得た。
2−5) 2−4)で得られた溶液の中に2−3)で得られた基板を30分間浸透させ、水で洗浄した後に、エアブローで乾燥させた。
2−6) 更に層を追加する際は、上記2−2)〜2−5)の工程を繰り返すことにより、各層の膜を積層した。
【0092】
なお、無機物層を4層、層状化合物層を3層積層した。各層の膜厚は、無機物層については1層につき0.3μmであり、層状化合物層については1層につき0.001μmであった。
【0093】
上記方法で作製した積層膜を有する電子機器用基板に対し、この積層膜のガス透過率(WVTR)を、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて水蒸気(PERMATRAN−W(登録商標)3/33シリーズ)及び酸素(OX−TRAN(登録商標)2/21シリーズ)について測定した。その結果、水蒸気と酸素共にガスの透過は検出されなかったため(ガス透過率<0.02g/cm・24h)、実施例2による積層膜は、極めて高いガスバリア性を有していることが分かった。また、積層膜の密着強度を確認するため、スコッチテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行ったが、積層膜の各層の剥離は見られなかった。更に、積層膜の環境試験として耐熱試験を行ったが、PEN基材の耐熱温度である180℃まで積層膜の変形や剥離等は見られなかった。また、積層膜の膜厚については、実施例1よりもより厚い膜が形成され、柔軟性の向上が確認された。
【0094】
(比較例1)
次に、比較例1として、以下の3−1)〜3−5)の工程により、上記特許文献1に記載された基板に対応する基板を作製した。
3−1) 粘土(天然モンモリロナイト)1gと超純水49gとを15分間攪拌し、粘土を分散させ、層状化合物層形成用の溶液(粘土分散液)を調製した。
3−2) 3−1)で得られた粘土分散液を一昼夜放置した後、PENフィルムを敷いたディスポーザブルのトレイ上に広げ、50℃の温度条件下で約1日かけてゆっくりと乾燥させ、粘土薄膜層を形成した。
3−3) スピンコーターを用いて、3−2)で形成された粘土薄膜層にポリシラザンを塗布した。
3−4) ポリシラザンの塗布された粘土薄膜層を、150℃のホットプレートの上に乗せ、約10分間加熱し、溶媒を蒸発させてポリシラザン塗布面を乾燥させた。
3−5) 3−4)で得られた基板を、大気下、250℃で1時間焼成した。
3−6) 更に層を追加する際は、上記3−2)〜3−5)の工程を繰り返すことにより、各層の膜を積層した。
【0095】
なお、無機物層を4層、層状化合物層を3層積層した。各層の膜厚は、無機物層については1層につき0.2μmであり、層状化合物層については1層につき0.001μmであった。
【0096】
上記方法で作製した積層膜を有する基板に対し、この積層膜のガス透過率(WVTR)を、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて水蒸気(PERMATRAN−W(登録商標)3/33シリーズ)及び酸素(OX−TRAN(登録商標)2/21シリーズ)について測定した。その結果、水蒸気については、ガスの透過は検出されなかったが(ガス透過率<0.02g/cm・24h)、酸素については、若干のガスの透過が検出された(0.1g/cm・24h)。このことから、比較例1による積層膜は、実施例1,2よりもガスバリア性にやや劣ることが分かった。また、積層膜の密着強度を確認するため、スコッチテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行ったが、簡単に剥離してしまい、層間の密着強度が低いことが判明した。更に、積層膜の環境試験として耐熱試験を行ったが、PEN基材の耐熱温度である180℃まで積層膜の変形や剥離等は見られなかった。
【0097】
(比較例2)
次に、比較例2として、以下の4−1)〜4−5)の工程により、上記特許文献3に記載された基板に対応する基板を作製した。
4−1) アクリルモノマー50g、アクリロエチルトリメチルアンモニウム塩2g、純水300gを混合し、室温で1時間撹拌した。
4−2) 4−1)で得られた溶液に硫酸アンモニウム0.05g、亜硫酸ナトリウム0.05g、純水20gを加え、50℃で2時間撹拌した。さらに、硫酸アンモニウム0.05g、亜硫酸ナトリウム0.05g、純水20gを加え、室温に自然冷却しながら撹拌した。
4−3) モンモリロナイト0.5gを1Lの純水に入れ、24時間撹拌した。
4−4) PENフィルムを4−2)で得られた溶液に10分間浸透させた後、純水で十分に洗浄した。
4−5) 4−4)で得られたフィルムを4−3)の溶液に浸透させた後、純水で十分に洗浄した後、エアブローで乾燥させ、層状化合物層が形成された基板を得た。
4−6) 際は、上記4−4)〜4−5)の工程を繰り返すことにより、各層の膜を積層した。
【0098】
なお、比較例2では、層状化合物層を1層形成させたもの(比較例2−1)と、層状化合物層を10層積層させたもの(比較例2−2)を作製した。層状化合物層の膜厚は、1層につき0.001μmであった。
【0099】
上記方法で作製した膜を有する基板に対し、この膜のガス透過率(WVTR)を、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて水蒸気(PERMATRAN−W(登録商標)3/33シリーズ)及び酸素(OX−TRAN(登録商標)2/21シリーズ)について測定した。その結果、酸素については、ガスの透過は検出されなかったが(ガス透過率<0.02g/cm・24h)、水蒸気については、比較例2−1で27g/cm・24h、比較例2−2で5.8g/cm・24hと、多量のガスの透過が検出された。このことから、比較例1による積層膜は、実施例1,2よりもガスバリア性に劣ることが分かった。また、積層膜の密着強度を確認するため、スコッチテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行ったが、膜の各層の剥離は見られなかった。更に、積層膜の環境試験として耐熱試験を行ったところ、100℃近辺で膜の変形や剥離等が見られ、耐熱性が低いことが分かった。
【0100】
以上の実施例1、実施例2、比較例1、比較例2−1、比較例2−2における各層の積層数、膜厚、ガス透過率、ピーリング試験結果及び耐熱試験結果を下記表1にまとめた。
【0101】
【表1】

【0102】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0103】
100,200 電子機器用基板
101 樹脂基板
110,210 無機物層
120 層状化合物層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材上に複数の層が積層された積層膜を有する電子機器用基板であって、
前記積層膜は、正又は負に帯電可能な無機化合物を含む1層以上の無機物層と、前記無機物層と反対の電荷に帯電可能な無機層状化合物を含む1層以上の層状化合物層とからなり、
前記無機物層と前記層状化合物層とが交互に積層されていることを特徴とする、電子機器用基板。
【請求項2】
前記無機化合物は、構成元素として、ケイ素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電子機器用基板。
【請求項3】
前記無機物層は、正に帯電可能な部位として、オニウム塩構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子機器用基板。
【請求項4】
前記オニウム塩は、アンモニウム塩であることを特徴とする、請求項3に記載の電子機器用基板。
【請求項5】
前記無機物層は、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリからなる群より選択される少なくとも1種を含む溶液を前記樹脂基材上に塗布した後に乾燥させることにより形成される層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器用基板。
【請求項6】
前記無機物層は、アルコキシシラン、金属アルコキシド、ポリシラザン及びケイ酸アルカリが化学反応しない置換基を含むことを特徴とする、請求項5に記載の電子機器用基板。
【請求項7】
前記無機層状化合物は、粘土鉱物、リン酸塩系誘導体型化合物及び層状複水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子機器用基板。
【請求項8】
前記積層膜に含まれる複数の層のうち、前記樹脂基材に接触する最内層と前記樹脂基材から最も離隔した最表層がともに、前記無機物層であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子機器用基板。



【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240356(P2012−240356A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114525(P2011−114525)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】