説明

電子機器用粘着性防水パッキンと、その製法

【課題】電子機器が水中に没したり、また噴流水に曝された場合にも、優れた防水性を確保する信頼性の高いパッキンを提供する。
【解決手段】粘着性とゴム弾性を有する硬化性液状樹脂組成物からなるパッキンで、該硬化性液状樹脂組成物が(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する有機重合体(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物(C)ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型携帯電子機器の防水構造、特にパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、モバイルパソコン、MP3プレイヤー、デジタルビデオレコーダー、デジタルカメラ等に代表される小型携帯電子機器は、処理速度の向上や記録容量の増大といった高性能化に加え、インターネットによる通信機能、ゲーム機能、音楽・画像ファイルの取り込み及び再生機能等、多機能化も急速に進んでいる。さらに、小型化、薄型化、軽量化といったより携帯しやすいものが開発され、屋外での使用頻度はますます高くなってきており、使用環境の変化に対応した筺体構造の改変や機能付与がより重要となってきている。
【0003】
中でも、防水性は、上記に代表される小型携帯電子機器を野外にて使用する際、誤って水中に落としたり、雨や雪、霧などで濡れた場合、水や水蒸気がその内部に侵入することによる故障を防ぐためには特に重要な機能であり、その要求レベルも年々高まってきている。
【0004】
小型携帯電子機器の防水性を評価する方法として、例えばJIS IPX7のように、該機器を一定の水圧下・一定の時間、すなわち水深1mに30分間暴露する静的な試験のみならず、IPX5のように一定量の水を局部的に当てる、すなわち2.5〜3m離れたノズルから毎分12.5リットルの水を3分間以上噴射する動的な試験もあり、要求特性は多岐にわたるため、防水機能の付与には筺体の構造のみならず、筺体分割部に挿入するパッキンやガスケット形状の最適化も含めて複合的に検討されている。例えば、異形断面のガスケットを用いた電子機器の筺体分割部を防水する技術としては、特許文献1のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−218633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のパッキンやガスケットはゴム弾性を有する素材からなっており、その使用環境では一定の割合に圧縮された際の反発力を利用して、防水性等シール機能を発現しているが、筺体の構造上、例えば製品の薄型化や筺体の薄肉化によって、パッキン全周にわたって防水性を発現するために最低限必要な圧縮率や圧縮力を印加することが困難であったり、また、素材の劣化によって十分な反発力が得られなくなることで、防水性を維持できなくなるような問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来のパッキンやガスケットの課題を解決すべくなされたものであり、低い圧縮率、圧縮力下でも防水性能を発現しうるパッキンを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、簡易に筺体に装着できるパッキンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ゴム弾性体に粘着性を付与することで、低い圧縮率でも優れた防水性能を発現することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は2次加工なしで粘着性を付与したゴム弾性体からなるパッキンによって低圧縮率で被シール部を密閉することを特徴とする小型電子機器用の防水パッキンを提供する。
【0011】
さらに、ゴム弾性体の粘着性を調整することで、容易に該パッキンを成形用金型から樹脂フィルムへ移行、取り出しが可能であり、また粘着性を利用して、パッキンを筺体等被シール部に密着させ、樹脂フィルムを剥離することでパッキン形状を変化させることなく簡易に所定の位置に組み込む方法をも提供する。
【0012】
すなわち本発明は、
(1).
硬化により、23℃におけるポリカーボネート板に対する90°剥離強度で3N/25mm以上の表面粘着性を有し、JIS K6262に従って測定した90℃、22時間での25%圧縮永久歪で35%以下である架橋ゴムを形成する硬化性液状樹脂組成物を硬化させてなるパッキン、
(2).
JIS K6253に従って測定した硬化性液状組成物の硬化後の硬度がJIS硬度40A以下であることを特徴とする(1)記載のパッキン、
(3).
硬化性液状樹脂組成物が、下記(A)〜(C)成分を含有してなることを特徴とする、(1)または(2)のいずれか1項に記載のパッキン、
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する数平均分子量1,000〜50,000である有機重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(4).
(3)に記載の重合体(A)が、(a−1)飽和炭化水素系重合体、(a−2)ポリオキシアルキレン系重合体、(a−3)ポリ(メタ)アクリル系重合体、から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のパッキン、
(5).
前記(B)成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする(3)〜(4)のいずれか1項に記載のパッキン、
(6).
硬化性液状樹脂組成物を射出成形することにより得られる、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のパッキン、
(7).
断面形状が略矩形であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載のパッキン、
(8).
硬化性液状樹脂組成物から得られるパッキンが20%以下に圧縮されることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のパッキンの使用方法、
(9).
(1)〜(5)のいずれか1項に記載のパッキンの片面に剥離容易な樹脂フィルムを密着してなるパッキンーフィルム複合体、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、硬化性液状樹脂組成物からなるパッキン成形体を得る場合において、該成形体を2次加工することなく粘着性を付与し、低圧縮率でも被シール部位に対する防水性が良好なパッキンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態のパッキン部材の形状図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態の図1に記載のパッキン部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
粘着性を有するゴム弾性体は硬化性液状樹脂組成物からなり、下記(A)〜(C)成分を含有してなることを特徴とする。
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する有機重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
該ゴム弾性体は、上記(A)〜(C)成分、さらに必要に応じて使用する各種添加剤や、充填剤をプラネタリーミキサーや2軸ディスパなどの回転式ミキサーや、ニーダー、バンパリーミキサー、ロールなどの装置を使用し、混合して硬化性組成物を得る混合工程と、混合工程で得られた該硬化性組成物を、成形、特にプレス成形、押出成形、トランスファー成形、射出成形のいずれかの成形方法による架橋工程によって得られる。
【0017】
該ゴム弾性体の粘着性は、具体的には90°剥離粘着力(23℃、対ポリカーボネート板)が2N/25mm以上、好ましくは3N/25mm以上であることが望ましい。また、該ゴム弾性体の硬度は具体的にはJIS K6253に従って測定したJIS硬度で60A以下、好ましくは40A以下が望ましい。また、該ゴム弾性体の25%圧縮永久歪みは、90℃、22時間で40%以下、好ましくは35%以下が望ましい。
【0018】
本発明における(a−1)成分は、上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基が、飽和炭化水素系重合体の主鎖末端あるいは側鎖にあってもよいし、また両方にあってもよい。とくに、アルケニル基が主鎖末端にあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる飽和炭化水素系重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度で高伸びのゴム状硬化物が得られやすくなるなどの点から好ましい。
【0019】
(a−1)成分の飽和炭化水素系重合体の骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主成分として重合させる、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、上記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させたりした後水素添加する、などの方法により得ることができるが、末端に官能基を導入しやすい、分子量を制御しやすい、末端官能基の数を多くすることができるなどの点から、イソブチレン系重合体、水添ポリブタジエン系重合体あるいは水添ポリイソプレン系重合体であるのが好ましい。
【0020】
前記イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよく、イソブチレンと共重合性を有する単量体単位をイソブチレン系重合体中の好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下の範囲で含有してもよい。
【0021】
このような単量体成分としては、例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエ−テル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類等が挙げられる。このような共重合体成分の具体例としては、例えば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−ヘキセニルオキシスチレン、p−アリロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。特に好ましくは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されたものである。
【0022】
前記水添ポリブタジエン系重合体や他の飽和炭化水素系重合体においても、上記イソブチレン系重合体の場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に、他の単量体単位を含有させてもよい。
【0023】
また、本発明中(a−1)成分として用いる飽和炭化水素系重合体には、本発明の目的が達成される範囲でブタジエン、イソプレン、1,13−テトラデカジエン、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン、1,5−ヘキサジエンのようなポリエン化合物のごとき重合後2重結合の残るような単量体単位を少量、好ましくは10重量%以下の範囲で含有させてもよい。
【0024】
本発明の(a−1)成分の製造方法としては、特開平3−152164号、特開平7−304969号公報に開示されているような水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させ重合体に不飽和基を導入する方法が上げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するのにアルケニルフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシランなどと置換反応を行う方法、種々のフェノール類とフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入方法を併用する方法などが上げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているような単量体の重合時に不飽和基を導入する方法も可能である。
【0025】
アルケニル基は、重合体(a−1)1分子中に平均1個を超える量、好ましくは平均5個以下存在するのがよい。さらに好ましくは1.2個以上3個以下である。重合体(a−1)1分子中に含まれるアルケニル基の数が平均1個以下になると、硬化性が不充分になるほか、得られる網目構造が不完全なものとなり、良好な成形体が得られない。また、1分子中に含まれるアルケニル基が多くなると網目構造があまりに密となるため、得られる成形体は硬く脆くなり好ましくない。特に、5個以上になるとその傾向は顕著となる。
【0026】
本発明の(a−2)成分である、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、特に制限はなく、公知のものがあげられる。具体的には、重合体の主鎖骨格が、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものがあげられる。
一般式(1):
−R1−O− (1)
(式中、R1は2価のアルキレン基)
【0027】
一般式(1)中に記載のR1としては、2価のアルキレン基ならば特に限定されず、このなかでも炭素数1〜14のアルキレン基が好ましく、2〜4の、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基がより好ましい。一般式(1)記載の繰り返し単位としては、特に限定されず、たとえば、−CH2O −、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH (C25)O−、−CH2C(CH32O−、−CH2CH2CH2CH2O−等が挙げられる。
【0028】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなるものでも、複数の繰り返し単位を組み合わせたものでもよい。このなかでも、入手が容易なこと、作業性に優れることなどから、主な繰り返し単位として−CH2CH(CH3)O−からなる重合体が好ましい。また、重合体の主鎖骨格中にはオキシアルキレン単位以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中に含まれるオキシアルキレン単位の総和の割合は、80重量%以上、特には90重量%以上が好ましい。
【0029】
(a−2)成分の重合体の主鎖骨格は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、また、その混合物でもよい。この中でも良好な弾性を得るため、直鎖状の重合体を50重量%以上含有することが好ましい。
【0030】
(a−2)成分の重合体の数平均分子量は1,000 〜100,000であることが好ましく、より好ましくは、1,000〜50,000である。数平均分子量が1,000未満のものでは、得られる架橋ゴムの弾性率が高くなり、逆に数平均分子量が50,000を超えると高粘度となり組成物の取り扱いが著しく低下する傾向にある。数平均分子量は、各種の方法で測定可能であるが、通常、ポリオキシアルキレン系重合体の末端基分析からの換算や、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
【0031】
(a−2)成分中のアルケニル基としては、特に限定されず、公知のものがあげられる。このなかでも、下記の一般式(2)で示されるアルケニル基が好ましい。一般式(2):
2C =C(R2 )− (2)
(式中、R2は水素又はメチル基である。)
【0032】
アルケニル基のポリオキシアルキレン系重合体への結合様式としては特に限定されず、たとえば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0033】
(a−2)成分の重合体としては、一般式(3):
{H2C =C(R3)−R4−O}a−R5 (3)
(式中、R3は水素又はメチル基である。R4は炭素数1 〜20の2価の炭化水素基であり、その中には、1個以上のエーテル基が含まれていてもよい。R5はポリオキシアルキレン系重合体の開始剤残基である。aは正の整数である。)で示される重合体が挙げられる。一般式(3)中に記載のR4は、特に限定されず、たとえば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2 −、−CH2CH2CH2CH2−,−CH2CH2OCH2 CH2 −、または−CH2CH2OCH2CH2CH2 −などがあげられる。このなかでも、合成が容易なことなどから、−CH2 −が好ましい。
【0034】
前記以外の、(a−2)成分の重合体としては一般式(4):
{H2C=C(R3)−R4−OC(=O)}a−R5 (4)
(式中、R3 ,R4 ,R5 及びa は一般式(3)の表記と同じ)で示されるエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0035】
また、一般式(5):
{H2C =C(R3)}a−R5 (5)
(式中、R3、R5 及びa は、一般式(3)、(4)の表記と同じ)で示される重合体も挙げられる。さらに、次の一般式(6):
{H2C =C(R3)−R4−OC(=O)O }a−R5 (6)
(式中、R3、R4、R5及びaは一般式(3)、(4)、(5)の表記と同じ)で示されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレン系重合体(a−2)の重合方法としては、特に限定されず、たとえば、特開昭50−13496号等に開示されているオキシアルキレンの通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)、特開昭50−149797号等に開示されている前記アニオン重合法によって得られた重合体を原料とした鎖延長反応方法による重合法、特開平7−179597号等に開示されているセシウム金属触媒を用いる重合法、特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号に開示されているポルフィリン/アルミ錯体触媒を用いる重合法、特公昭46−27250号及び特公昭59−15336号等に開示されている複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合法、特開平10−273512号等に開示されているポリフォスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法等があげられる。
【0037】
このなかでも、実用性が高いこと、触媒の入手が容易であること、重合体が安定して得られることなどから、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる重合方法が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒の製造方法としては、特に限定されず公知の方法があげられ、たとえば、米国特許第3,278,457号、同3,278,459号、同5,891,818号、同5,767,323号、同5,767,323号、同5,536,883号、同5,482,908号、同5,158,922号、同4,472,560号、同6,063,897号、同5,891,818号、同5,627,122号、同5,482,908号、同5,470,813号、同5,158,922号等に開示されている製造方法が好ましい。
【0038】
ポリオキシアルキレン系重合体にアルケニル基を導入する方法としては、特に限定されず公知の方法があげられ、たとえば、アリルグリシジルエーテルのようなアルケニル基を有する化合物とオキシアルキレン化合物との共重合による方法があげられる。また、アルケニル基を主鎖あるいは側鎖に導入する方法としては、特に限定されず、たとえば、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基等の官能基を有するオキシアルキレン重合体に、これらの官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物を反応させる方法があげられる。なお、アルケニル基が重合体の主鎖末端に存在する重合体を含む硬化性組成物は、得られる硬化物が、大きな有効網目鎖長を有し、機械的特性に優れることから好ましい。
【0039】
水酸基、アルコキシド基等の官能基に対して反応性を有する官能基及びアルケニル基を有する有機化合物としては、特に限定されず、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、アクリル酸クロライド若しくはアクリル酸ブロマイド等の炭素数3〜20の不飽和脂肪酸の酸ハライド、酸無水物、アリルクロロホルメート、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1 −ブテニル(クロロメチル)エーテル,1 −ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0040】
(a−2)成分である重合体の1分子中に存在するアルケニル基の数としては、1個を超え5個以下が好ましい。重合体(A)1分子中に存在するアルケニル基の数が1個以下になると、硬化性組成物の硬化が不充分になる傾向があり、得られる硬化物は、網目構造が不完全なものとなり、良好な成形体が得られない傾向がある。また、重合体(a−2)1分子中に存在するアルケニル基が多くなると、得られる硬化物の網目構造があまりに密となるため、成形体は硬く脆くなる傾向がある。特に、5個以上になるとその傾向は顕著となる。
【0041】
本発明の(a−3)成分である、1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合体は、分子量が1,000〜50,000であることが好ましく、主鎖が(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して製造される重合体であることが好ましい。ここで「主として」とは、主鎖を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
【0042】
なかでも、生成物の物性等から、(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーがより好ましく、アクリル酸エステルモノマーがさらに好ましい。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルである。
【0043】
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0044】
本発明におけるポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)の分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が大きすぎると同一架橋点間分子量における粘度が増大し、取り扱いが困難になる傾向にある。本発明でのGPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0045】
本発明におけるポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)の数平均分子量は1,000〜100,000のであり、より好ましくは1,000〜50,000である。数平均分子量が1,000未満のものでは、得られる架橋ゴムの弾性率が高くなり、逆に数平均分子量が50,000を超えると高粘度となり組成物の取り扱いが著しく低下する傾向にある。
【0046】
本発明におけるポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)は、種々の重合法により得ることができ、特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」と「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)の分子量、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましく、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。上記ラジカル重合、制御ラジカル重合、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法、原子移動ラジカル重合は公知の重合法ではあるが、これら各重合法については、たとえば、特開2005−232419公報や、特開2006−291073公報などの記載を参照できる。
【0047】
本発明におけるポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)の好ましい合成法の一つである、原子移動ラジカル重合について以下に簡単に説明する。
【0048】
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられることが好ましい。具体的には特開2005−232419公報 段落[0040]〜 [0064]記載の化合物が挙げられる。
【0049】
1分子内に1個を超えるアルケニル基を有するビニル系重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、下記の化合物等が挙げられる。
【0050】
【化1】

【0051】
【化2】

【0052】
原子移動ラジカル重合において用いられる(メタ)アクリル酸系モノマーとしては特に制約はなく、上述した例示した(メタ)アクリル酸系モノマーをすべて好適に用いることができる。
【0053】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体であり、より好ましくは0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
【0054】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005−232419公報 段落[0067]]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体CO2を媒体とする系においても重合を行うことができる。
【0055】
重合温度は、限定はされないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0056】
(a−3)成分中のアルケニル基としては、特に限定はされないが、一般式(7)で表されるものであることが好ましい。
2C=C(R6)− (7)
(式中、R6は水素又は炭素数1〜20の有機基を示す。)
【0057】
上記R6の炭素数1〜20の有機基としては、特に限定されないが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく挙げられ、具体的には以下のような基が例示される。
−(CH2n−CH3、−CH(CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH32、−C(CH32−(CH2n−CH3、−C(CH3)(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−C65、−C64(CH3)、−C63(CH32、−(CH2n−C65、−(CH2n−C64(CH3)、−(CH2n−C63(CH32
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)
【0058】
本発明の架橋反応となるヒドロシリル化反応の活性の点から、R6としては水素又はメチル基がより好ましい。
【0059】
ポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)のアルケニル基は、特に限定はされないが、その炭素−炭素二重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
【0060】
アルケニル基とポリ(メタ)アクリル系重合体の主鎖との結合形式は、特に限定されないが、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合等を介して結合されていることが好ましい。
【0061】
ポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)は、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するものであり、硬化物の機械物性の点から、ポリ(メタ)アクリル系重合体1分子当たり平均して1.2個〜3.0個有するものが好ましい。特に限定するわけではないが、具体的には、ポリ(メタ)アクリル系重合体1分子当たりに導入されたアルケニル基の数を1H−NMR分析により求めた平均値が1.2個〜3.0個であることが好ましく、1.5個〜2.5個であることがより好ましい。
【0062】
本発明の硬化性組成物から得られる硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、アルケニル基の少なくとも1個は分子鎖(主鎖)の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全てのアルケニル基を分子鎖末端に有するものである。
【0063】
上記1個を超えるアルケニル基を分子末端に有するポリ(メタ)アクリル系重合は、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に開示されている方法により製造できる。しかしながら、これらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、アルケニル基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、分子量分布(Mw/Mn)の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低いポリ(メタ)アクリル系重合であって、高い割合で分子鎖末端にアルケニル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合を得るためには、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましい。
【0064】
得られたポリ(メタ)アクリル系重合へのアルケニル基の導入方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特開2005−232419公報 段落[0074]〜[0099]記載の方法が挙げられる。これらの方法の中でも制御がより容易である点から、ジエン化合物添加法が好ましい。水酸基を分子中に少なくとも1個含有するポリ(メタ)アクリル系重合から得る場合は、制御がより容易である点から重合の終期にアルケニルアルコールを反応させる方法、重合体の反応末端に安定化カルバニオンを反応させる方法により得られる、水酸基を分子中に少なくとも1個含有するビニル系重合体を用いることが好ましい。
【0065】
ここでは、好ましい導入方法の一つである、ジエン化合物添加法について以下に簡単に説明する。ジエン化合物添加法は、(メタ)アクリル系モノマーのリビングラジカル重合により得られるポリ(メタ)アクリル系重合に、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物(以下、「ジエン化合物」という。)を反応させる。
【0066】
ジエン化合物が有するアルケニル基としては、末端アルケニル基[CH2=C(R)−R’;Rは水素又は炭素数1〜20の有機基、R’は炭素数1〜20の一価または二価の有機基であり、RとR’は互いに結合して環状構造を有していてもよい。]又は内部アルケニル基[R’−C(R)=C(R)−R’;Rは水素又は炭素数1〜20の有機基、R’は炭素数1〜20の一価または二価の有機基であり、二つのR若しくは二つのR’は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。二つのRと二つのR’のうちいずれか二つが互いに結合して環状構造を有していてもよい。]のいずれでもよいが、末端アルケニル基がより好ましい。Rは水素又は炭素数1〜20の有機基であるが、炭素数1〜20の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。これらの中でもRとしては水素又はメチル基が特に好ましい。R’の炭素数1〜20の一価または二価の有機基としては、炭素数1〜20の一価または二価のアルキル基、炭素数6〜20の一価または二価のアリール基、炭素数7〜20の一価または二価のアラルキル基が好ましい。これらの中でもR’としてはメチレン基、エチレン基、イソプロピレン基が特に好ましい。ジエン化合物の少なくとも2つのアルケニル基は互いに同一又は異なっていてもよく、ジエン化合物のアルケニル基のうち、少なくとも2つのアルケニル基は共役していてもよい。
【0067】
ジエン化合物の具体例としては例えば、イソプレン、ピペリレン、ブタジエン、ミルセン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン等が挙げられるが、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンが好ましい。
【0068】
(メタ)アクリル系モノマーのリビングラジカル重合を行い、得られた重合体を重合系より単離した後、単離した重合体とジエン化合物をラジカル反応させることにより、目的とする末端にアルケニル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合を得ることも可能であるが、重合反応の終期あるいは所定の(メタ)アクリル系モノマーの反応終了後にジエン化合物を重合反応系中に添加する方法が簡便であるのでより好ましい。
【0069】
ジエン化合物の添加量は、2つのアルケニル基の反応性に大きな差があるジエン化合物を使用する場合、重合体成長末端に対して当量又は小過剰量程度であればよく、2つのアルケニル基の反応性が等しい又はあまり差がないジエン化合物を使用する場合、重合体生長末端に対して過剰量であることが好ましく、具体的には1.5倍以上が好ましく、さらに好ましくは3倍以上、特に好ましくは5倍以上である。
【0070】
本発明の硬化性組成物に使用されるポリ(メタ)アクリル系重合体(a−3)としては、上述した製法の中でも、下記方法により得られるものが特に好適である。
【0071】
第1の方法としては、
(1a)(メタ)アクリル系モノマーを原子移動ラジカル重合法により重合することにより、下記一般式(8)
−C(R7)(R8)(X) (8)
(式中、R7及びR8は(メタ)アクリル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基を示す。Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す。)
で示す末端構造を有するポリ(メタ)アクリル系重合体を製造し、
(2a)前記重合体の末端ハロゲンを、アルケニル基を有する置換基に変換する、
方法が挙げられる。
【0072】
第2の方法としては、
(1b)(メタ)アクリル系モノマーをリビングラジカル重合法により重合することにより、ポリ(メタ)アクリル系重合体を製造し、
(2b)前記重合体を、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物と反応させる、
方法が挙げられる。
【0073】
本発明における(B)成分である1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物としては、ヒドロシリル基を2個有するものであれば特に限定されず、このなかでも原材料の入手が容易なこと、(A)成分への相溶性が良好なことなどから、有機基で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0074】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、公知の鎖状または環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができ、(A)成分との相溶性の観点からは、芳香族環含有鎖状または環状オルガノハイドロジェンシロキサンが好適である。具体的には、特開2006−291073号公報 段落[0088]〜[0093]記載のヒドロシリル基含有化合物が挙げられる。
【0075】
また、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物でヒドロシリル基の一部が置換された鎖状または環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することもできる。具体的には、過剰量の上記ヒドロシリル基含有化合物に対し、後述するヒドロシリル化触媒の存在下、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物をゆっくり滴下することにより得られる変性ヒドロシリル基含有化合物をヒドロシリル基含有化合物(B)として使用できる。分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物としては、脂肪族炭化水素系化合物、エーテル系化合物、エステル系化合物、カーボネート系化合物、イソシアヌレート系化合物や芳香族炭化水素系化合物等が挙げられ、具体的には特開2006−291073号公報 段落[0094]記載の化合物を使用できる。このような変性ヒドロシリル基含有化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたヒドロシリル基含有化合物の除去のしやすさ、さらには(A)への相溶性を考慮して、下記のものが好ましく挙げられる。
【0076】
【化3】

【0077】
本発明における(B)成分であるヒドロシリル基を有する化合物の使用量は、(A)成分の重合体中に存在するアルケニル基の量と、(B)成分中の化合物中に存在するヒドロシリル基の量の関係において、適宜選択され、また、本発明の硬化性組成物においては、上記ヒドロシリル基を有する化合物を1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
本発明における(B)成分であるヒドロシリル基含有化合物の使用量は、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上2.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.7以上2.0以下である。[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5を下回る場合、得られる硬化物は架橋密度が低いため、ゴム弾性を発現することが困難となる。
【0078】
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、特に限定されず、公知のものがあげられ、たとえば塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、PtX(ViMe2SiOSiMe2Vi)y 、Pt〔(MeViSiO)4z};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh34 、Pt(PBu34 };白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)34 、Pt〔P(OBu)34 (式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、x、y、zは整数を表す)、Pt(acac)2 (ただし、acacは、アセチルアセトナトを表す)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に開示されている白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号に開示されている白金アルコラート触媒等も挙げられる。
【0079】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33 、RhCl3、Rh/Al23 、RuCl3 、IrCl3 、FeCl3 、AlCl3 、PdCl2・2H2O、NiCl2 、TiCl4 等が挙げられる。
【0080】
これらの触媒は単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。前記の触媒のなかでも、触媒活性が高いことなどから塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0081】
触媒(C)の使用量としては、特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10-8〜10-1molが好ましく、10-6〜10-2molがより好ましい。10-8mol未満の量を使用した硬化性組成物は、硬化速度が遅く、また硬化が不安定となる傾向がある。逆に10-1molを越える量を使用した硬化性組成物は、ポットライフの確保が困難となる傾向がある。
【0082】
また、本発明の(A)〜(C)成分を含む硬化性組成物には、必要に応じて保存安定性改良剤を添加することができる。保存安定性改良剤とは、硬化性組成物の貯蔵中の硬化、劣化等物性の低下を防止する働きを担う。保存安定性改良剤としては、本発明の(B)成分の保存安定剤として知られている公知の安定剤であって所期の目的を達成するものであれば特に限定されず、たとえば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等があげられる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられる。
また、本発明の(A)〜(C)成分を含む硬化性組成物には、必要に応じて、各種充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤、シリコン化合物を適宜添加してもよい。
本発明の硬化性組成物を硬化させてなるパッキンを得る方法としては、特に限定されず、たとえば、該硬化性組成物を何らかの基材上に塗布し、熱風乾燥機などで加熱硬化させるなどの接着剤を扱うのと同様の方法や、プレス金型に硬化性組成物を充填し、加熱プレスする方法、射出成形機により硬化性組成物を射出成形金型に充填し、加熱硬化させる方法などが挙げられる。また、圧縮成形、トランスファー成形、押出成形、注入成形などの方法も可能である。
また、これら各種の成形方法において、本発明の液状組成物は、全ての成分を含む1液形態として扱うことも、(B)成分と(C)成分とが混合しないように全成分を2液に配分した2液形態として扱うことも可能である。前者の場合、室温下でも徐々に反応は進行し得るため、低温下での保管が必要となるが、成形に際して2液を混合するなどの手間が省略できる。また、後者の場合には、成形する際に2液を混合し、泡を含まない状態で塗布、充填、射出できるように工夫が必要となるが、液状組成物の長期保管には有利である。このような2液形態の液状組成物の取り扱いには、液状シリコーン向けに開発された液状射出成形システムに使用されている2液混合吐出装置や、2液形態のウレタン樹脂、エポキシ樹脂に使用されている2液混合吐出装置が使用できる。これらのうち液状射出成形システムは、2液組成物の供給から射出成形までが一体となった自動化の進んだ成形システムであり、本発明の液状組成物とポリカーボネート樹脂との複合成形体を得るには好適な成形方法である。
加熱硬化させる際の加熱温度は特に限定されないが、80℃以上220℃以下が好ましく、100℃以上200℃以下がより好ましい。加熱時間は、10秒以上300分以下が好ましく、30秒以上250分以下がより好ましい。
【0083】
本発明では、粘着性を有するパッキンの片面に剥離容易な樹脂フィルムを密着してなるパッキンーフィルム複合体を例えば、該フィルムを型内に挿入した状態で硬化性液状樹脂組成物を注型、架橋する、フィルムインサート成形によって作製する事ができるが、作製方法は前述の方法に限定されない。
【0084】
パッキンーフィルム複合体の樹脂フィルムとしては、例えばポリオレフィン系(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、アクリル系(例えばポリメタクリル酸メチル重合体)、ポリエステル系(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド系(例えばナイロン6、芳香族系ナイロン)フッ素樹脂系(例えばポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン共重合体)、ポリイミド系などが挙げられる。なかでも、ポリエステル系、ポリイミド系フィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【0085】
フィルムは表面が剥離剤でコーティングされたものでもよく、剥離剤として例えば、シリコン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。
【0086】
樹脂フィルムはパッキン成形時には成形金型からパッキン成形体を取り出す役割をすると共に、パッキンの硬度、形状、寸法にかかわらず、パッキン形状を保持する機能を担う。さらに、パッキンを筺体等被シール部に装着する際に容易に剥離され、簡易にパッキンを所定の位置に装着される。
【0087】
パッキンの断面形状と寸法は特に制限されないが、例えば、断面形状が図2に記載されたような矩形状であることが好ましく、寸法は2mm以下(例えば0.1mm〜2mm)が好ましく、さらに好ましくは0.5mm〜1.5mm程度の範囲から選択することができる。
【0088】
小型携帯電子機器の筺体や被シール部の材質または材料は、特に制限されない。例えば、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PC/ABSアロイ系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および、それらの無機フィラー強化樹脂などのプラスチック材、ガラス材、金属材等を用いることができる。
【0089】
該パッキンが使用される小型携帯電子機器は、特に制限されない。例えば、携帯通信機器(例えば携帯電話機、PDA端末等)、携帯型パーソナルコンピューター、デジタル時計、携帯型ラジオ、携帯型テレビ、デジタルカメラ、携帯デジタルビデオレコーダー、携帯型CDプレーヤー、MDプレイヤー、DVDプレーヤー、MP3プレーヤー、デジタルレコーダーなどの携帯型の録音・録画再生装置などが上げられる。
【実施例】
【0090】
次に実施例により本発明の硬化性組成物、及びその架橋ゴムを具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
(製造例1)
数平均分子量3,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤として、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて、プロピレンオキシドを重合することにより数平均分子量が約20,000の水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体の水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeの28%メタノール溶液と塩化アリルを添加して末端をアリル基に変換した。この反応物をヘキサンに溶かしケイ酸アルミニウムで吸着処理した後、ヘキサンを減圧除去することにより、黄色透明で、1分子中に平均して2個のアリル基末端を有するポリオキシプロピレン重合体(A−1)を得た。この重合体(A−1)は、粘度が50Pa・sの淡黄色液体であり、ヨウ素価数より求めたアリル含有量は、0.12mmol/gであった。
【0092】
(製造例2)
(―Si−O−)で示される繰り返し単位を平均して10個もつメチルハイドロジェンシリコーンに白金触媒存在下全ヒドロシリル基量の0.5当量のα―メチルスチレンを添加し、1分子中に平均5個のヒドロシリル基を有する化合物(B−1)を得た。この化合物のSi−H基含有量は3.8mmol/gであった。ここで、ヒドロシリル基含有量は、上記化合物(B−1)のNaOH水溶液による加水分解反応により発生する水素量から算出した。
【0093】
(実施例1)
アリル基末端を有するポリオキシプロピレン重合体(A−1)100gとヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガノックス245)2g、湿式シリカ15g(嵩比重70g/l)、ヒドロシリル基を有する化合物(B−1)(2.13g)、触媒として白金ビニルシロキサン錯体触媒のキシレン溶液(ディーエムスクエアージャパン(株)製、PT−VTSC−3.0X)を0.037g、保存性改良剤としてアセチレンアルコール(日信化学工業社製サーフィノール61)を0.036gを混合して硬化性液状樹脂組成物を作成した。
【0094】
このようにして得られた組成物は液状であり、さらに脱泡した後、厚さ2mm、幅25mm、長さ100mmのアルミ製枠型と2枚の鏡面仕上げしたプレス板を使用し、125℃、90秒間の加熱プレス成形により2mm厚の硬化物シートを得た。得られたシートをさらに150℃熱風乾燥機にて1時間加熱処理した。得られた硬化物シートを23℃、50RH%に24時間状態調整した後に、厚さ0.5mmポリカーボネート板(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンNF2000)に6kgローラーを用いて圧着後、デジタルフォースゲージ((株)イマダ製、DS2−50N)にて90°剥離強度を測定した。結果を表1に記す。また、得られた硬化物シートを3枚重ね、JIS K6253に記載の硬度試験に基づき、硬度を測定した。その結果を表1に記す。
【0095】
【表1】

【0096】
前述硬化性液状組成物を直径25mm、厚さ12.5mmの円筒形金型と2枚の鏡面仕上げしたプレス板を使用し、125℃、10分間の加熱プレス成形により所定の形状の硬化物を得た。得られた硬化物をさらに150℃熱風乾燥機にて1時間加熱処理した。得られた硬化物をJIS K6262に記載の圧縮永久歪試験に基づき、90℃、22時間後の圧縮永久ひずみを測定した。結果を表1に記す。
【0097】
前述硬化性液状組成物を図1と図2に記載のパッキン形状と同一のキャビティー部を有するプレス金型を使用し、125℃、90秒間の加熱プレス成形により、図1と図2に記載の形状のパッキンを得た。得られたパッキンをさらに150℃熱風乾燥機にて1時間加熱処理した。得られたパッキンは厚さ2mmのポリカーボネート板2枚の間に挟みこみ、所定の圧縮率にまで圧縮し、防水試験を実施した。防水試験には解析用防水試験器((株)ハムロンテック製HPT8701P005)を用いて、23℃、30分間所定の圧力下に水没させた後、パッキン内側への水の浸入の有無を目視にて判定した。結果を表2に記す。
【0098】
【表2】

【0099】
(実施例2)
アリル基末端を有するポリオキシプロピレン重合体(A−1)100gとヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガノックス245)2g、湿式シリカ15g(嵩比重70g/l)、ヒドロシリル基を有する化合物(B−1)(5.11g)、触媒として白金ビニルシロキサン錯体触媒のキシレン溶液(ディーエムスクエアージャパン(株)製、PT−VTSC−3.0X)を0.037g、保存性改良剤としてアセチレンアルコール(日信化学工業社製サーフィノール61)を0.036gを混合して硬化性液状樹脂組成物を作成した。
【0100】
前述の液状組成物を実施例1に記載の方法で90°剥離強度、硬度、25%圧縮永久歪を測定した。結果を表1に示す。防水試験も実施例1に記載の方法で実施、結果を表2に記す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化により、23℃におけるポリカーボネート板に対する90°剥離強度で3N/25mm以上の表面粘着性を有し、JIS K6262に従って測定した90℃、22時間での25%圧縮永久歪で35%以下である架橋ゴムを形成する硬化性液状樹脂組成物を硬化させてなるパッキン。
【請求項2】
JIS K6253に従って測定した硬化性液状組成物の硬化後の硬度がJIS硬度40A以下であることを特徴とする請求項1記載のパッキン。
【請求項3】
硬化性液状樹脂組成物が、下記(A)〜(C)成分を含有してなることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載のパッキン。
(A)1分子中に少なくとも平均1個を超えるアルケニル基を有する数平均分子量1,000〜50,000である有機重合体
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
【請求項4】
請求項3に記載の重合体(A)が、(a−1)飽和炭化水素系重合体、(a−2)ポリオキシアルキレン系重合体、(a−3)ポリ(メタ)アクリル系重合体、から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のパッキン。
【請求項5】
前記(B)成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項3〜4のいずれか1項に記載のパッキン。
【請求項6】
硬化性液状樹脂組成物を射出成形することにより得られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパッキン。
【請求項7】
断面形状が略矩形であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパッキン。
【請求項8】
硬化性液状樹脂組成物から得られるパッキンが20%以下に圧縮されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のパッキンの使用方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のパッキンの片面に剥離容易な樹脂フィルムを密着してなるパッキンーフィルム複合体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−12768(P2011−12768A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158017(P2009−158017)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】