説明

電子物品監視装置

【課題】受発信型のタグ検出装置と分離型のタグ検出装置とを簡易に並存させることができ、両タイプのタグ検出装置の干渉を確実に回避できる電子物品監視装置。
【解決手段】本発明の電子物品監視装置100では、複数の受発信型のタグ検出装置TRが、伝送路13,14上に配置されて周期的に繰り返される第1タイミングで動作し、複数の分離型のタグ検出送信装置TX1,TX2が、伝送路14転送線路15上に配置されて上記第1タイミングを除いて周期的に繰り返される第2タイミングで動作し、共振タグ40が共振可能な信号を発信する。これにより、分離型のタグ検出送信装置TX1,TX2の動作が受発信型のタグ検出装置TRの動作と干渉することを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振タグを用いた電子物品監視装置に関し、特に複数の電子物品監視装置を設置する環境下でも共振タグからの信号を少ない誤動作で検出することができる電子物品監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子物品監視装置として、複数のバーストを送信し、バーストを送信しない休止期間中に電磁信号を受信し、この電磁信号が所定レベルを超えた場合に、警報手段を起動する受発信型のタグ検出装置が存在する(特許文献1参照)。なお、受発信型のタグ検出装置を複数設置する場合、例えばマスタ装置から複数のスレーブ装置に対して、低周波の矩形波をタイミング信号として送信することが行われている。
【0003】
また、別の電子物品監視装置として、搬送波を周波数変調して送信する送信装置と、これと並行して受信した無線周波数から周波数変調成分を除去して検出信号の有無を弁別する受信装置とを備える分離型のタグ検出装置が存在する(特許文献2参照)。なお、分離型のタグ検出装置を複数設置する場合、同一の励振装置によって周波数変調した信号を発生させる。
【特許文献1】特公平6−97476号公報
【特許文献2】実公昭63−36465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際の電子物品監視手段として、受発信型のタグ検出装置と分離型のタグ検出装置とを並存させることが望ましい場合がある。例えば、受発信型のタグ検出装置は、通路間口を広くとれる点で相対的に有利である。一方、分離型のタグ検出装置は、通路外側の商品の誤報率が低い点で相対的に有利である。よって、両タイプのタグ検出装置を並存させて一元的に管理することが望ましくなる。
【0005】
しかしながら、受発信型のタグ検出装置と分離型のタグ検出装置との動作原理の大きな差に起因して、両タイプのタグ検出装置を並存させて相互の干渉を回避できる監視システムは存在しない。例えば、受発信型のタグ検出装置と、分離型のタグ検出装置とを時分割で動作させることも考えられるが、分離型のタグ検出装置は、一定周期で間欠的なバーストを発生させる受発信型のタグ検出装置の場合と異なって、これまでは連続して送信する必要があると思われていた。つまり分離型のタグ検出装置は、一般に低周波の矩形波をタイミング信号とする同期駆動に適していないので、マスタからの周波数掃引されたRFの信号をそのままスレーブ入力し、アンプしてアンテナから出力していた。そのため、受発信型のタグ検出装置との干渉を回避することは容易でなく、他の分離型のタグ検出装置等の動作との同期をとることも容易でない。
【0006】
そこで、本発明は、受発信型のタグ検出装置と分離型のタグ検出装置とを簡易に並存させることができ、両タイプのタグ検出装置の干渉を確実に回避できる電子物品監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の電子物品監視装置は、(a)周期的な同期信号を伝達する伝送路と、(b)伝送路上に配置されて同期信号のうち周期的に繰り返される第1タイミングで動作し、共振タグが応答可能な信号を発信するとともに共振タグからの応答信号を検出する少なくとも1つ以上の受発信型のタグ検出送受信装置と、(c)伝送路上に配置されて同期信号のうち第1タイミングを除いて周期的に繰り返される第2タイミングで動作し、共振タグが共振可能な信号を発信する少なくとも1つ以上の分離型のタグ検出送信装置とを備える。なお、分離型のタグ検出送信装置は、同期信号から例えばアナログ処理によって遅延信号を形成することで、第2タイミングに相当する遅延同期信号を得る。
【0008】
上記電子物品監視装置では、少なくとも1つ以上の分離型のタグ検出送信装置が、伝送路上に配置されて、周期的な同期信号のうち第1タイミングを除いて周期的に繰り返される第2タイミングで動作し、共振タグが共振可能な信号を発信する。なお、共振タグの応答は、後述するタグ検出受信装置によって減衰吸収として検出される。よって、分離型のタグ検出送信装置の動作が受発信型のタグ検出送受信装置の動作と干渉することを回避できる。この際、分離型のタグ検出送信装置或いはこれに対応する分離型のタグ検出受信装置については、これらの動作を周期的な間欠動作に適したものとする。具体的には、例えば低周波のデジタルクロック信号で周期的な間欠動作のタイミングを制御し、間欠動作に伴う過渡的変動の影響をキャンセルすることによって誤報の発生を防止する。
【0009】
本発明の具体的な態様によれば、上記電子物品監視装置において、受発信型のタグ検出送受信装置が、第1タイミングにおいて周波数変調された高周波を断続して生成するとともに、断続的に高周波が生成されるバースト期間後の休止期間中の第1理期間中において共振タグからの応答信号を検出する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、伝送路が、メインマスタ装置からそれぞれ延びる複数系統の直列部分を含む。この場合、受発信型のタグ検出送受信装置、分離型のタグ検出送信装置等を簡易に多数接続でき、電子物品監視装置を様々な環境に合わせて簡易に設置することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、メインマスタ装置が、受発信型のタグ検出送受信装置と、分離型のタグ検出送信装置と、制御用のコンピュータとのうちいずれか1つで構成される。受発信型のタグ検出送受信装置や分離型のタグ検出送信装置をメインマスタ装置とする場合、電子物品監視装置を簡易型のシステムとすることができる。制御用のコンピュータをメインマスタ装置とする場合、制御用のコンピュータによる全体の管理や監視が可能になり、電子物品監視装置の付加価値を高めることができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、伝送路によって伝達される同期信号は、矩形波であり、受発信型のタグ検出送受信装置は、矩形波の一周期を構成する一対の半サイクルの一方に対応して第1タイミングを割り当てられ、分離型のタグ検出送信装置は、一対の半サイクルの他方に対応して第2タイミングを割り当てられる。この場合、矩形波のサイクルを利用した各タグ検出装置のタイミング制御や干渉回避が可能になり、分離型のタグ検出送信装置の動作と受発信型のタグ検出送受信装置の動作とを無駄なく精密に切替えることができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、少なくとも1つ以上の分離型のタグ検出送信装置のうち対応する分離型のタグ検出送信装置からのタイミング信号に応じて、共振タグによる減衰吸収を検出する分離型のタグ検出受信装置をさらに備える。この場合、特定の分離型のタグ検出送信装置に従属する形式で、これに対応する分離型のタグ検出受信装置を適切なタイミングで動作させることができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、分離型のタグ検出受信装置が、第2タイミングのうち初期を除いた第2処理期間中において共振タグによる減衰吸収を検出する。この場合、分離型のタグ検出送信装置からの送信開始直後に発生する過渡的ノイズが分離型のタグ検出受信装置によって検出されることを防止して、両者を組み合わせた分離型のタグ検出装置によるタグ検出精度を高めることができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、分離型のタグ検出送信装置が、第2処理期間中において、共振タグが共振可能な信号を含む所定周波数範囲で周波数偏移させるように周波数変調された搬送波を出力する。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、マスタとしての分離型のタグ検出送信装置からの動作転送信号を入力するとともに、動作転送信号に応じてスレーブとして共振タグが共振可能な信号を発信する別の分離型のタグ検出送信装置をさらに備える。この場合、伝送路上のマスタとしての分離型のタグ検出送信装置からの動作転送信号に基づいて、伝送路外のスレーブとしての分離型のタグ検出送信装置を動作させることができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、マスタとしての分離型のタグ検出送信装置からの動作転送信号に応じてスレーブとしての別の分離型のタグ検出送信装置を動作させる場合、マスタは、第2タイミング中に同期信号から周波数変調によって生成した送信信号をスレーブに送り、マスタとスレーブとは、共通の送信信号から得た搬送波を同時タイミングで出力する。この場合、伝送路上のマスタで生成した送信信号を伝送路外のスレーブに供給することになり、位相ズレの少ない状態で複数の分離型のタグ検出送信装置を動作させることができ、これら複数の分離型のタグ検出送信装置に対応して設けた分離型のタグ検出受信装置による検出動作を安定で信頼性の高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子物品監視装置の構造を説明するブロック図である。
【0019】
この電子物品監視装置100は、複数種類のタグ検出装置TR,SP1,SP2を混成した物品監視システムであり、核となる1つのメインマスタ装置11と、このメインマスタ装置11から延びる複数の伝送路13,14と、各伝送路13,14上に直列配置される多数のタグ検出装置TR,SP1と、独立のタグ検出装置SP1から延びる転送線路15上に直列接続される多数の従属のタグ検出装置SP2とを備える。
【0020】
ここで、メインマスタ装置11は、伝送路13,14を介して結合されたタグ検出装置TR,SP1に対して例えばデジタル型のクロック信号である同期信号を出力している。メインマスタ装置11は、同期信号を発生するタイミングクロック発生部11aと、タイミングクロック発生部11aから出力された同期信号を並列出力に分岐する分岐部11bと、同期信号に基づいて動作するタグ検出部11cと、これらの部分を制御する制御部11dとを備える。タイミングクロック発生部11aは、LC回路、水晶発振子等で構成される発振回路を内蔵しており、例えばデューティ比が50%で周波数が100Hz前後の低周波の矩形波を発生する。分岐部11bは、高速のデジタル回路等を内蔵しており、タイミングクロック発生部11aからの同期信号を少ない遅延及び損失で各伝送路13,14に分岐する。タグ検出部11cは、例えば後述するタグ検出装置TRと同様の機能を実現する部分であり、タイミングクロック発生部11aからの同期信号を受けつつ制御部11dの制御下で動作して、共振タグの通過を検出する。
【0021】
各伝送路13,14は、デジタル信号の伝送に適するものであればよいが、信号の遅延があまり大きくならないように、長さに一定の制限を設けることが望ましい。なお、各伝送路13,14は、経路の途中の1箇所以上で複数に分岐することもできる。この際、分岐箇所に専用の分岐装置を設けることもできるが、伝送路13,14上のタグ検出装置TR,SP1において、例えばデジタル・ロジック回路等による分岐機能を持たせることもできる。つまり、タグ検出装置TRや、タグ検出装置SP1の後述する装置部分TX1等のタイミング出力端子を例えば複数にすることで、これらに簡易に分岐機能を持たせることができる。
【0022】
各伝送路13,14上に設けられたタグ検出装置TRは、受発信型のタグ検出送受信装置であり、共振タグが応答可能な信号を発信するとともに共振タグからの応答信号を検出する。1つの伝送路14上に1つ設けられた独立のタグ検出装置SP1は、分離型のタグ検出装置であり、互いに分離されたタグ検出送信装置TX1とタグ検出受信装置RXとを一組とするものである。なお、転送線路15上に多数設けられた従属のタグ検出装置SP2も、独立のタグ検出装置SP1と同様の回路を有する分離型のタグ検出装置であり、互いに分離されたタグ検出送信装置TX2とタグ検出受信装置RXとを一組として備える。以上の分離型のタグ検出装置SP1,SP2において、タグ検出送信装置TX1,TX2は、共振タグが吸収可能な信号を発信し、タグ検出受信装置RXは、共振タグの吸収に起因する信号の変化すなわち減衰吸収を検出する。
【0023】
以上において、受発信型のタグ検出装置TRは、伝送路13,14上の任意の箇所に単独で介挿されるものであるが、独立分離型のタグ検出装置SP1については、タグ検出送信装置TX1やタグ検出受信装置RXのいずれか一方(図示の例では検出送信装置TX1)のみが伝送路14上に介挿され、従属分離型のタグ検出装置SP2についても、タグ検出送信装置TX2やタグ検出受信装置RXのいずれか一方(図示の例では検出送信装置TX2)のみが転送線路15上に介挿される。本実施形態の場合、タグ検出受信装置RXは、親機であるタグ検出送信装置TX1,TX2に対して伝送路14又は転送線路15と異なる無線で接続された子機であり、親機であるタグ検出送信装置TX1,TX2から別個に出力されるタイミング信号に基づいて動作する。このタイミング信号は、タグ検出送信装置TX1,TX2でタグ検出のために生成される各種信号であって例えば周波数変調されて放射される搬送波MCや受信される減衰波DCそのものを利用したものとできるが、各伝送路13,14に伝搬する同期信号と同一又は同種のものとすることもできる。
【0024】
なお、本実施形態では、マスタのタグ検出送信装置TX1が、伝送路14から取得した同期信号から周波数変調によって生成した送信信号(動作転送信号に相当)を、スレーブのタグ検出送信装置TX2に対して有線で送って同期をとっている。つまり、両タグ検出送信装置TX1,TX2は、共通の送信信号から得た搬送波MCを同時タイミングで出力する。
【0025】
以上の電子物品監視装置100において、多数の受発信型のタグ検出装置TRと、1つの独立分離型のタグ検出送信装置TX1とは、伝送路13,14から供給される周期的な同期信号の半サイクル毎に交番動作する。すなわち、矩形波型の同期信号の前半サイクルに同期するものとして受発信型のタグ検出装置TRにタグ検出動作を行わせ、その後半サイクルに同期するものとして独立分離型のタグ検出送信装置TX1にタグ検出動作を行わせる。具体的には、受発信型のタグ検出装置TRの場合、伝送路13から得た同期信号の例えば立ち上がりエッジを利用し、適当な遅延時間で動作を開始し、半サイクル期間内に動作を完了する。また、独立分離型のタグ検出装置SP1を構成するマスタとしてのタグ検出送信装置TX1の場合、伝送路13から得た同期信号の例えば立ち下がりエッジを利用し、適当な遅延時間で送信動作を開始し、半サイクル期間内に動作を完了する。さらに、従属分離型のタグ検出装置SP2を構成するスレーブとしてのタグ検出送信装置TX2は、独立分離型のタグ検出装置SP1を構成するマスタのタグ検出送信装置TX1から転送線路15を介して受け取った送信信号に応じて、マスタのタグ検出送信装置TX1と同じタイミングで送信動作を開始する。さらに、マスタのタグ検出送信装置TX1の子機であるタグ検出受信装置RXと、スレーブのタグ検出送信装置TX2の子機であるタグ検出受信装置RXとは、親機であるタグ検出送信装置TX1,TX2の送信動作に同期して受信動作を行う。
【0026】
これにより、同期信号が例えば100Hzの周期的矩形波であるとすると、その周期の前半の5mSで受発信型の全タグ検出装置TRが一斉に動作して受発信型のタグ検出が行われるとともに、独立分離型のタグ検出装置SP1と従属分離型の全タグ検出装置SP2とが休止する。また、同期信号の周期の後半の5mSで独立分離型のタグ検出装置SP1と従属分離型の全タグ検出装置SP2とが一斉に動作して分離型のタグ検出が行われるとともに、受発信型の全タグ検出装置TR側が休止する。
【0027】
図2は、受発信型のタグ検出装置TRの回路構成を説明するブロック図である。タグ検出装置TRは、アンテナ20と、アンテナ20に接続される送受信ユニット30とを備える。送受信ユニット30は、アンテナ20に給電し、このアンテナ20から高周波のバーストである送信波TWを周囲の所定方向に放射させる。この送信波TWは、その伝搬に伴って高周波の電磁界を形成し、周囲の所定方向に存在するLC型の共振タグ40が共振条件を満たすものである場合、送信波TWのエネルギーが電磁波吸収体である共振タグ40に供給される。エネルギーの供給を受けた共振タグ40は、これに内蔵された共振回路により、一定の遅延時間で減衰する応答信号としてタグ応答波BEを放射する。共振タグ40から放出される応答信号であるタグ応答波BEは、アンテナ20を介して送受信ユニット30で検出され適当な処理が施される。送受信ユニット30は、タグ応答波BEの検出を確認した場合、その判定結果を不図示の警報装置(警報スピーカ、警報ランプ、これらの駆動用のリレー等を含む)に出力する。
【0028】
ここで、送受信ユニット30は、送信波TWのもとになる送信信号を形成する送信部50と、タグ応答波BEを選択的に検出する受信部60と、アンテナ20を送信部50及び受信部60のいずれかに切り替えて接続するスイッチ70と、図1に示す伝送路13,14との間で同期信号の授受を行うバッファ80と、これらの部分を制御する制御部90とを備える。このうち、バッファ80は、図1の伝送路13,14に接続されるタイミング入力端子から同期信号を受け取って、これに隣接するタイミング出力端子から図1の伝送路13,14に同期信号を送り出す。バッファ80がタイミング入力端子から受け取った同期信号は、制御部90等の動作に利用される。なお、バッファ80は、制御部90のインピーダンスにもよるが、省略することができ、この場合、タイミング入力端子とタイミング出力端子とを直結することができる。
【0029】
図3は、独立分離型のタグ検出装置SP1の回路構成を説明するブロック図である。
【0030】
タグ検出送信装置TX1は、送信アンテナ20Aと、送信アンテナ20Aに給電する送信ユニット130Aとを備え、タグ検出受信装置RXは、受信アンテナ20Bと、受信アンテナ20Bに接続される受信ユニット130Bとを備える。前者の送信ユニット130Aは、送信アンテナ20Aに給電し、この送信アンテナ20Aから高周波の搬送波MCを周囲の所定方向に放射させる。周囲の所定方向に存在するLC型の共振タグ40が共振条件を満たすものである場合、搬送波MCのエネルギーが共振タグ40に吸収される。結果的に受信アンテナ20Bに到達する減衰波DCは、共振タグ40が存在しなければ、共振周波数に対して比較的強度が高く維持され、共振タグ40が存在すれば、共振周波数に対して比較的強度が低くなる。このように共振タグ40の応答信号とも言えるディップを含む減衰波DCは、受信アンテナ20Bを介して受信ユニット130Bで検出され適当な処理が施される。受信ユニット130Bは、減衰波DCから共振タグ40の応答信号の検出を確認した場合、その判定結果を不図示の警報装置(警報スピーカ、警報ランプ、これらの駆動用のリレー等を含む)に出力する。
【0031】
ここで、タグ検出送信装置TX1側の送信ユニット130Aは、搬送波MCのもとになる送信信号を形成する送信部150と、図1に示す伝送路13との間で同期信号の授受を行うタイミング信号部81と、これらの部分を制御する制御部190Aとを備える。このうち、タイミング信号部81は、図2の送受信ユニット30に設けたバッファ80と同様の機能を有する。すなわち、タイミング信号部81は、図1の伝送路14に接続されるタイミング入力端子から同期信号を受け取って、制御部190A等の動作に利用するとともに、この同期信号をタイミング出力端子から図1の伝送路14にそのまま送り出す。なお、送信部150は、後に詳述するが、従属する複数のスレーブたるタグ検出送信装置TX2に対して転送線路15を介して有線で動作転送信号を送信する。この場合、動作転送信号は、タイミング信号部81で受け取った同期信号から周波数変調によって生成した高周波の送信信号そのものとしている。
【0032】
また、タグ検出受信装置RX側の受信ユニット130Bは、減衰波DCから共振タグ40の応答信号に相当するディップを検出する受信部160と、受信部160の検出信号からタイミング信号を抽出するタイミング信号部82と、これらの部分を制御する制御部190Bとを備える。ここで、タイミング信号部82は、減衰波DCを受信する受信部160の出力する検出信号を分岐するとともにその立ち上がりを検出することによって、タグ検出送信装置TX1側の送信ユニット130Aから上述のタイミング信号を受け取る。
【0033】
図4は、従属分離型のタグ検出装置SP2の回路構成を説明するブロック図である。
【0034】
タグ検出送信装置TX2は、図3に示すものと基本的に同様の回路を有している。ただし、この送信ユニット230Aにおいて、タイミング信号部81が省略されている。その代わり、送信部250は、後に詳述するが、それ自体で図3のタイミング信号部81と同様に同期信号を転送する役割を有している。つまり、送信部250は、マスタたるタグ検出送信装置TX1や上流のスレーブたるタグ検出送信装置TX2から延びる入力側の転送線路15を介して有線で動作転送信号を受信するとともに、受信した動作転送信号を出力側の転送線路15を介して下流のスレーブたるタグ検出送信装置TX2に有線で送信する。
【0035】
タグ検出受信装置RXは、図3に示すタグ検出受信装置RXと同様の回路を有しているので、詳細な説明は省略する。
【0036】
図5は、図2に示す受発信型のタグ検出装置TRの具体的な回路構成を説明する図である。送信部50は、バースト型の高周波を断続して生成するためのバースト送信部であり、高周波発振装置51と、電力増幅回路53とを備える。なお、制御部90は、伝送路13から得たデジタル型のクロック信号の立ち上がりエッジE1(図6(A)参照)に同期して動作しており、タグ検出送信装置TX1,TX2等との干渉を避けて送信部50を動作させる。制御部90は、クロック信号の立ち上がりエッジE1から規定の遅延時間Tdだけ遅延し半周期HP1の幅を有するTR動作イネーブル信号を発生する(図6(B)参照)。このTR動作イネーブル信号動作に基づいて、バースト信号を間欠的に発生させつつ検出動作を行うといった諸動作を開始する(図6(C)参照)。
【0037】
高周波発振装置51は、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザ等で構成され、基準発振部、演算部、波形メモリ、D−Aコンバータ等を有する。また、電力増幅回路53は、高周波発振装置51からの高周波出力を電力増幅してバースト信号を生成する。このバースト信号は、スイッチ70を介してアンテナ20に送出され、送信波TWが放射される。前者の高周波発振装置51は、制御部90の制御下でクロック信号の前半サイクルに対応して図6(B)のTR動作イネーブル信号のオン期間を構成する各識別サイクル中だけ周期的に発振動作を行い、前半サイクル間において、基準発振部から出力される搬送波を直接FM変調することにより、例えば7.7MHz〜8.7MHzの帯域の高周波を掃引するように発生する。つまり、送信波TWの元になる高周波は、所定周波数範囲内で周波数偏移するように変調される。この際、高周波発振装置51から出力される高周波は、例えば20kHz単位で周波数が漸増する。具体的に説明すると、受発信型のタグ検出装置TRは、同期信号であるクロック信号の周波数100Hzに対応する10mSの周期又はサイクルで同様の動作を繰り返し、その前半サイクルの期間(半周期HP1)に対応する5mSのトランシーバ動作期間(第1タイミング)だけ動作を継続し、残りの後半サイクルの期間(半周期HP2)に対応する5mSのトランシーバ休止期間(第2タイミング)で動作を休止する。このトランシーバ動作期間中において、高周波発振装置51は、7.7MHzからスタートして、0.1mSごとに周波数を20kHzだけ増加させ、10μSのバースト信号の高周波を出力する。この場合、50ステップの周波数増加によって、全周波数の掃引が上記前半サイクルに相当する5mSで完了する。
【0038】
なお、送信部50は、制御部90の制御下で動作しており、TR動作イネーブル信号を制御部90から受け取り、このTR動作イネーブル信号をゲートとして、スイッチ70やアンテナ20への電力供給タイミングを調整することができるようになっている。
【0039】
受信部60は、応答信号を受信するアンテナ部であり、同調回路61と、高周波増幅器62と、局部発振装置63と、混合回路64と、中間周波増幅器65と、絶対値変換器66と、AD変換器67とを備える。ここで、同調回路61は、アンテナ20で受信した電波からタグ応答波BEに同調する適当な波長帯域(具体的には、例えば波長7.7MHz〜8.7MHzの帯域)の信号を選択的に検出し、高周波増幅器62は、同調回路61からの高周波出力を電力増幅して混合回路64に出力する。一方、局部発振装置63は、高周波発振装置51と類似した構造を有し、制御部90の制御下で、基準発振部から発信される搬送波を直接FM変調することにより、例えば6.5MHz〜7.5MHzの高周波を掃引するように発生する。具体的に説明すると、例えば周波数100Hzのクロック信号の前半サイクルの期間に対応して図6(B)のTR動作イネーブル信号のオン期間に相当する5mSのトランシーバ動作期間中において、局部発振装置63は、6.5MHzからスタートして、0.1mSごとに周波数を20kHzだけ増加させた高周波を出力する。この場合も、50ステップの周波数増加によって、全周波数の掃引が5mSで完了する。混合回路64は、所謂スーパーヘテロダインと呼ばれる中間周波形成用の回路で、高周波増幅器62からの高周波出力と、局部発振装置63からの局部発振出力との混合により、両者の周波数差に対応する振幅信号を得る。具体的には、上述した高周波発振装置51からの出力が電力増幅回路53で電力増幅されアンテナ20から放射され、アンテナ20の付近に共振タグ40が存在する場合、その存在がタグ応答波BEとしてアンテナ20で受信されるが、混合回路64により、同調回路61から高周波増幅器62を経た受信信号と、局部発振装置63からの局部発振出力とを混合(MIX)させた結果として、1.2MHzの中間周波数信号が得られる。
【0040】
なお、局部発振装置63は、高周波発振装置51に兼用させることもできる。つまり、制御部90の制御下で高周波発振装置51を時分割で動作させ、受信時に高周波発振装置51を局部発振装置63として機能させることができる。
【0041】
中間周波増幅器65は、混合回路64から出力される中間周波数信号を必要なレベルまで増幅するとともに不要な周波数の信号成分を除去する。具体的には、1.2MHzの中間周波数信号が応答検出信号として選択的に増幅され、共振タグ40の存在可能性を示す信号として利用される。絶対値変換器66は、中間周波増幅器65で増幅された応答検出信号から所謂検波と同様の処理を行う部分であり、応答検出信号の振幅の絶対値が取り出される。AD変換器67は、絶対値変換器66から出力された応答検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。このAD変換器67から出力されたデジタル応答検出信号は、各種演算処理を行うための制御部90に出力される。
【0042】
なお、受信部60は、制御部90の制御下で動作しており、制御部90からのTR動作イネーブル信号をゲートとして、アンテナ20やスイッチ70からの検出信号の受信タイミングや増幅タイミングを調整することができるようになっている。
【0043】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータで構成され、プロセッサやメモリを備える。この制御部90は、サイクル調整部92を有しており、TR動作イネーブル信号を送信部50に出力するタイミングや、TR動作イネーブル信号を受信部60に出力するタイミングを調整している。また、制御部90は、受信部60から出力されるデジタル応答検出信号の強度値が所定の閾値を越えた場合に、共振タグ40が存在することを示す判定信号を出力するだけでなく、各種のフィルタ91を有しており、受信部60から出力されるデジタル応答検出信号に適当なフィルタ処理を施して共振タグ40の誤検出等を防止している。具体的には、フィルタ91において、デジタル応答検出信号に対して例えばコムフィルタ処理が施される。このコムフィルタ処理では、高周波発振装置51等が例えば100Hzのサイクルで周波数を変化させることを利用して、このサイクルに関して、受信部60から出力されるデジタル応答検出信号のうちN次周期成分のみを選択的に増幅することができる。このようなコムフィルタ処理により、デジタル応答検出信号の検出感度を高めることができ、存在する共振タグ40の検出不能や、存在しない共振タグ40の誤検出を確実に防止・低減することができる。
【0044】
図7(A)〜7(F)は、送受信ユニット30の動作例を説明するタイミングチャートである。
【0045】
図7(A)は、制御部90から送信部50に出力される送信イネーブル信号であり、送信イネーブル信号がオンのタイミングは、送信部50からアンテナ20に対して断続的にバースト用の電力が供給される。この場合、例えば100Hzの半周期(5mS)程度であるトランシーバ動作期間中に、上述したTR動作イネーブル信号(図6(B))が形成される。このトランシーバ動作期間中、例えば50回の識別サイクルを実施し、各識別サイクルにおいて1回のバーストを発生させる。図7(B)は、送信部50から出力される高周波すなわちアンテナ20から放射される送信波TWに対応する送信波形が示されている。図7(C)は、共振タグ40からのタグ応答波BEに対応するものであり、各識別サイクルにおいて休止期間中の初期段階に出現する。図7(D)は、制御部90から受信部60に出力される受信イネーブル信号であり、休止期間の初期所定期間(第1処理期間)中と、休止期間中の後期所定期間中とにオンとなる。これらは、バースト期間中のバーストに起因するタグ応答波BEと、バックグラウンドノイズとを選択的に検出するための窓となっている。図7(E)は、受信部60に設けたAD変換器67を動作させるタイミングを示しており、図7(D)の受信イネーブル信号に対応したものとなっている。ここで、AD変換器67によるサンプリングのタイミングは、バーストの受信イネーブル中の待機時間t1経過後の第1検出期間(応答信号検出用)と、バーストの受信イネーブル中の待機時間t2経過後の第2検出期間(バックグラウンドノイズ検出用)とで構成される。図7(F)は、制御部90での処理の一例を示すものである。このタグ差分出力は、デジタル応答検出信号のad1,ad2の双方が、正常である場合、すなわち隣接する他の電子物品監視装置100からの送信波TWがデジタル応答検出信号に混信していない場合に対応する。タグ差分出力は、例えば以下の演算式
ad=ad1−ad2
によって与えられる。この判別値adが所定値を越えると、制御部90は、電子物品監視装置100近くに共振タグ40が存在し、物品の不正な持ち出し等が行われていると判断する。
なお、上記のような動作は、例えば100Hzの半周期に相当するトランシーバ動作期間中に繰り返されるものであり、残りの半周期に相当するトランシーバ休止期間中、送受信ユニット30は、検出動作を完全に休止する。
【0046】
図8は、図1に示す分離型のタグ検出装置SP1のうちタグ検出送信装置TX1の具体的な回路構成を説明する図である。送信部150は、ローパスフィルタ151と、周波数変調部152と、高周波発振装置153と、スイッチ154と、バッファ回路155と、電力増幅部156と、同調回路157とを備える。さらに、送信部150は、転送線路15を介して有線で動作転送信号を送信するため、バッファ回路175と、スレーブ出力176とを備える。なお、制御部190Aは、伝送路14から得たデジタル型のクロック信号の立ち下がりエッジE2(図6(A)参照)に同期して動作しており、タグ検出装置TRとの干渉を避けて送信部150を動作させる。制御部190Aは、クロック信号の立ち下がりエッジE2から規定の遅延時間Tdだけ遅延し半周期HP2の幅を有する新分離送信イネーブル信号を発生する(図6(D)参照)。送信部150は、この新分離送信イネーブル信号に基づいて、変調波信号を発生しつつ検出動作を行うといった諸動作を開始する。
【0047】
送信部150において、ローパスフィルタ151は、制御部190Aを介して伝送路14から得たデジタル型のクロック信号から、低周波成分を抽出する。この低周波成分は、クロック信号の周波数で変動する正弦波となっており、クロック信号の立ち下がりエッジE2から遅延時間Tdだけ遅延して最小値を示す(図6(E)参照)。周波数変調部152は、ローパスフィルタ151の出力に応じて共振条件を変化させる部分であり、高周波発振装置153は、ローパスフィルタ151の出力する正弦波に応じた周波数変調を行って周波数を増減させる。結果的に、所定周波数範囲内で周波数偏移させることが可能になる。具体的には、例えば7.7MHz〜8.7MHzの高周波を掃引するように発生する。スイッチ154は、制御部190Aの制御下で動作しており、高周波発振装置153の出力を図6(E)の最小値から最大値までの半周期HP2に限る時間ゲートとしての機能を有する。スイッチ154の出力に接続された一方のバッファ回路155とその後段の電力増幅部156とは、スイッチ154を経た高周波発振装置153からの高周波出力を増幅して変調波信号を生成する。この変調波信号は、同調回路157を介してアンテナ20Aに送出され、搬送波MCが放射される(図6(F)参照)。
【0048】
スイッチ154の出力に接続された他方のバッファ回路175は、高周波発振装置153で形成された高周波の送信信号をそのまま分岐してスレーブ出力176に転送する。スレーブ出力176は、転送線路15を着脱可能にするコネクタ状の部分であり、転送線路15を介して検出送信装置TX2に接続される。スレーブ出力176から転送線路15に出力される信号は、上記のように所定周波数範囲内で周波数変調された高周波の送信信号をそのまま活用した動作転送信号となっている。
【0049】
具体的動作について説明すると、分離型のタグ検出送信装置TX1は、例えば100Hz(10mS)程度である識別サイクルで間欠的に動作している。つまり、タグ検出送信装置TX1は、同期信号であるクロック信号の周波数100Hzに対応する10mSの周期又はサイクルで同様の動作を繰り返している。タグ検出送信装置TX1は、この後半サイクルの期間(半周期HP2)に対応する5mSの分離検出期間(第2タイミング)だけ動作を継続し、残りの前半サイクルの期間(半周期HP1)に対応する5mSの分離非検出期間(第1タイミング)で動作を休止する。この分離検出期間中において、高周波発振装置153は、7.7MHz〜8.7MHzまで徐々に周波数を増加させ、5mSで変調波信号として全周波数の掃引が完了する。
【0050】
図9は、図1に示す分離型のタグ検出装置SP1等に組み込まれるタグ検出受信装置RXの具体的な回路構成を説明する図である。受信部160は、同調回路161と、高周波増幅器162と、検波回路163と、スイッチ164と、ハイパスフィルタ165と、ローパスフィルタ166と、低周波増幅器167とを備える。また、タイミング信号部82は、2値化回路82aと、ローパスフィルタ82bとを備える。なお、タイミング信号部82は、受信部160の出力する検出信号を分岐するとともにその立ち上がりを検出することによって、検出信号からタイミング信号を抽出する。また、制御部190Bは、タイミング信号部82から入力されるタイミング信号に同期して動作しており、タグ検出装置TRとの干渉を避けて受信部160に増幅動作を行わせるとともに受信部160の出力に基づいて共振タグ40の存否を判定する。
【0051】
受信部160において、同調回路161は、受信アンテナ20Bで受信した電波から減衰波DCに同調する適当な波長帯域(具体的には、例えば波長7.7MHz〜8.7MHzの帯域)の信号を選択的に検出し、高周波増幅器162は、同調回路161からの高周波信号を増幅する。次段の検波回路163は、高周波増幅器162からの高周波出力の検波によってエンベロープをとることによって低周波成分を抽出する(図6(G)参照)。この低周波成分は、共振タグ40の存在によって発生する応答信号としてのディップを含んでいる。スイッチ164は、制御部190Bから新分離受信イネーブル信号(図6(H)参照)を受けて動作しており、検波回路163の出力を図6(G)の半周期HP2において初期Tiを除いた第2処理期間T1に限る時間ゲートとしての機能を有する。ここで、初期Tiは、タグ検出送信装置TX1が変調波信号である搬送波MCの送信を開始する立上時であり、広帯域のノイズが発生する。よって、初期Tiの減衰波DCに含まれるノイズを拾わないように、半周期HP2のうち処理期間T1に限って検波回路163の出力を取り出し、ハイパスフィルタ165やローパスフィルタ166を介して低周波増幅器167で増幅している。ここで、ハイパスフィルタ165は、共振タグ40の共振によるディップの周波数が2〜3kHz程度であることを考慮して、2kHz以上の低周波成分を通過させ、ローパスフィルタ166は、3kHz以下の低周波成分を通過させる。また、低周波増幅器167は、音声レベルの周波数の増幅器であり、両フィルタ165,166を経た狭い周波数帯域の信号成分すなわち共振タグ40に起因するディップを選択的に増幅する。
【0052】
タイミング信号部82において、2値化回路82aは、検波回路163から出力された高周波である減衰波DCを所定の閾値で2値化する。また、ローパスフィルタ82bは、高周波やノイズをカットして減衰波DCの入力の立ち上がりを検出する。タイミング信号部82から出力される信号は、図6(B)のTR動作イネーブル信号に類似するデジタルクロック型のタイミング信号となっている。
【0053】
制御部190Bは、サイクル調整部92を有しており、新分離受信イネーブル信号を受信部160のスイッチ164に出力するタイミングを調整している。また、制御部190Bは、受信部160から出力される応答検出信号の強度値が所定の閾値を越えた場合に、共振タグ40が存在することを示す判定信号を出力するだけでなくデジタルフィルタ91を有しており、受信部160から出力されるデジタル応答検出信号に適当なフィルタ処理を施して共振タグ40の誤検出等を防止している。具体的には、デジタルフィルタ91において、デジタル応答検出信号に対して例えばコムフィルタ処理が施される。
【0054】
具体的動作について説明すると、分離型のタグ検出受信装置RXは、同期信号であるクロック信号の周波数100Hzに対応する10mSの周期又はサイクルで同様の動作を繰り返し、その後半サイクルの期間(半周期HP2)に対応する5mSの分離検出期間(第2タイミング)だけ動作を継続し、残りの前半サイクル(第1タイミング)で動作を休止する。この分離検出期間中において、低周波増幅器167は、半周期HP2のうち処理期間T1に限って検波回路163の出力を取り出す。この際、タグ検出受信装置RXは、タグ検出送信装置TX1等から出力される7.7MHz〜8.7MHzの変調波信号に相当する減衰波DCを検出することができ、この周波数帯域を共振周波数とする共振タグ40の応答信号を確実に検出することができる。
【0055】
図10は、図1に示す従属分離型のタグ検出装置SP2に組み込まれるタグ検出送信装置TX2の具体的な回路構成を説明する図である。このタグ検出送信装置TX2において、送信部250は、図8のタグ検出送信装置TX1に組み込んだ送信部150を簡略化した構造を有しており、スレーブ入力257と、電力増幅部156と、同調回路157とを備える。スレーブ入力257は、図8に示すスレーブ出力176と同様に転送線路15を着脱可能にするコネクタ状の部分(不図示)を有する他、遅延回路257aと、切替部257bと、バッファ回路257cとを備える。ここで、遅延回路257aは、上流側(前段のタグ検出送信装置側)の転送線路15によって高周波の送信信号に生じた遅延を修正する部分であり、オペレータが切替部257bを操作することによって任意の遅延量を達成できるようになっている。つまり、上流側の転送線路15は、高周波回路的には遅延回路として機能するケーブルであり、その入力端と出力端との間にその長さに対応する位相の遅延が生じる。このような位相の遅延は不可避であるが、前段のタグ検出送信装置(不図示)と図示のタグ検出送信装置TX2との同期をとらなければ、分離型のタグ検出装置SP1,SP2の性質上、分離型のタグ検出装置SP1,SP2相互で干渉が生じて測定が不可能になる場合がある。このため、遅延回路257aを設けて、独立分離型のタグ検出装置SP1やこれに付随する多数の従属分離型のタグ検出装置SP2との間で同期をとって誤検出が生じないようにしている。つまり、マスタのタグ検出送信装置TX1と、これに付随する多数のスレーブのタグ検出送信装置TX2とから出力される搬送波は、まったく同一の周波数で出力されるので、お互いに混信を与えない。なお、バッファ回路257cは、遅延回路257aで適度に遅延させた高周波の送信信号を搬送波形生成用の電力増幅部156に出力するとともに、コネクタ状の部分(不図示)を介して高周波の送信信号(動作転送信号)を下流側の転送線路15に転送する。バッファ回路257cは、高周波の送信信号をスレーブたる別のタグ検出送信装置TX2へ出力する。
【0056】
以上では、スレーブ入力257中に遅延回路257aや切替部257bを積極的に設けて転送線路15による遅延を補正しているが、転送線路15の長さを直接調整することによって、転送線路15による遅延量を制御することもできる。また、以上では、機能していない制御部190A(図4参照)についての説明を省略したが、タグ検出送信装置TX2は、スイッチ操作でタグ検出送信装置TX1に切り替えて動作させることもでき、この場合、図8に示す制御部190Aの他、ローパスフィルタ151、周波数変調部152、高周波発振装置153、スイッチ154等も有効に動作させることになる。
【0057】
以上の説明から明らかなように、本発明の電子物品監視装置100では、複数の受発信型のタグ検出装置TRが、伝送路13,14上に配置されて周期的に繰り返される第1タイミングで動作し、複数の分離型のタグ検出送信装置TX1,TX2が、伝送路14又は転送線路15上に配置されて上記第1タイミングを除いて周期的に繰り返される第2タイミングで動作し、共振タグ40が共振可能な信号を発信する。これにより、分離型のタグ検出送信装置TX1,TX2の動作が受発信型のタグ検出装置TRの動作と干渉することを回避できる。なお、各タグ検出装置TR,SP1,SP2は、店舗等の設置環境に応じて例えば近接して適所に配置されるが、通路間口を広くとる必要のある場所に受発信型のタグ検出装置TRを設置し、通路外側の商品の誤報率を低くする必要のある場所に分離型のタグ検出装置SP1,SP2を設置することができる。
【0058】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態では、メインマスタ装置11がタグ検出装置TRと同様の機能を有するタグ検出部11cを有するとしたが、図2及び図3に示すタグ検出装置TRやタグ検出送信装置TX1のいずれかをメインマスタ装置11とすることができる。すなわち、これらのタグ検出装置TRやタグ検出送信装置TX1にマスタ及びスレーブの切替えスイッチを設け、メインマスタに設定された場合、制御部90,190Aからバッファ80、タイミング信号部81を介して伝送路14に同期信号を送り出すことができる。つまり、最も極端な使用状態では、マスタ・スレーブの切替えスイッチ付きの1台のタグ検出装置TRと、同様に切替えスイッチ付きの1台のタグ検出送信装置TX1とを伝送路14でつなぎ、一方から他方に同期信号を転送する構成とできる。
【0059】
また、メインマスタ装置11は、タグ検出部11cを有する必要はなく、例えばコンピュータのみで構成することもできる。
【0060】
また、以上の実施形態では、同期信号の矩形波のデューティ比を例えば50%としているが、デューティ比についてはそのバランスを偏らせることができる。
【0061】
また、以上の実施形態では、受発信型のタグ検出装置TRをクロック信号の立ち上がりエッジE1に同期させ、分離型のタグ検出送信装置TX1,TX2やタグ検出受信装置RXをクロック信号の立ち下がりエッジE2に同期させているが、同期信号は、矩形波に限らず、タグ検出装置TRの同期用の第1パルスと、タグ検出送信装置TX1,TX2等の同期用の第2パルスと含むものとできる。この際、パルスの高さ幅等によって、第1パルスと第2パルスとを識別できる。
【0062】
また、以上の実施形態では、分離型のタグ検出装置SP1,SP2において、タグ検出受信装置RXのタイミング信号部82が受信部160の出力する検出信号の立ち上がりを検出することによってタイミング信号を受け取るものとしているが、タグ検出送信装置TX1,TX2とタグ検出受信装置RXとに無線通信回路を設けて、タグ検出送信装置TX1,TX2の送信部150,250や制御部190Aで得た同期信号又は動作転送信号から得たタイミング信号を検出受信装置RXに転送することもできる。
【0063】
また、図5に示すタグ検出装置TRの回路構成や、図8,10に示すタグ検出送信装置TX,TX2等の回路構成は単なる例示であり、設置場所、タグのタイプ等の条件に応じて種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子物品監視装置の構造を説明する図である。
【図2】受発信型のタグ検出装置の回路構成を説明するブロック図である。
【図3】独立分離型のタグ検出装置について回路構成を説明するブロック図である。
【図4】従属分離型のタグ検出装置について回路構成を説明するブロック図である。
【図5】図2に示す受発信型のタグ検出装置の具体的な回路構成を説明する図である。
【図6】(A)〜(H)は、図2に示す受発信型のタグ検出装置や、図3に示す分離型のタグ検出装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図7】(A)〜(F)は、送受信ユニットの動作例を説明するタイミングチャートである。
【図8】独立分離型のタグ検出装置のうちタグ検出送信装置の回路構成を例示する図である。
【図9】独立分離型のタグ検出装置のうちタグ検出受信装置の回路構成を例示する図である。
【図10】従属分離型のタグ検出装置のうちタグ検出送信装置の回路構成を例示する図である。
【符号の説明】
【0065】
11…メインマスタ装置、 11a…タイミングクロック発生部、 11b…分岐部、 11c…タグ検出部、 11d…制御部、 13,14…伝送路、 15…転送線路、 20…アンテナ、 20A…送信アンテナ、 20B…受信アンテナ、 30…送受信ユニット、 40…共振タグ、 50…送信部、 51…高周波発振装置、 53…電力増幅回路、 60…受信部、 61…同調回路、 62…高周波増幅器、 63…局部発振装置、 64…混合回路、 65…中間周波増幅器、 66…絶対値変換器、 67…AD変換器、 70…スイッチ、 80…バッファ、 81,82…タイミング信号部、 82a…2値化回路、 82b…ローパスフィルタ、 90…制御部、 91…デジタルフィルタ、 92…サイクル調整部、 100…電子物品監視装置、 130A…送信ユニット、 130B…受信ユニット、 150…送信部、 151…ローパスフィルタ、 152…周波数変調部、 153…高周波発振装置、 154…スイッチ、 155…バッファ回路、 156…電力増幅部、 157…同調回路、 160…受信部、 161…同調回路、 162…高周波増幅器、 163…検波回路、 164…スイッチ、 165…ハイパスフィルタ、 166…ローパスフィルタ、 167…低周波増幅器、 175…バッファ回路、 176…スレーブ出力、 190A,190B…制御部、 230A…送信ユニット、 250…送信部、 257…スレーブ入力、 257a…遅延回路、 257b…切替部、 257c…バッファ回路、 BE…タグ応答波、 DC…減衰波、 MC…搬送波、 TW…送信波、 RX…タグ検出受信装置、 SP1,SP2…分離型のタグ検出装置、 TR…受発信型のタグ検出装置、 TX1,TX2…タグ検出送信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な同期信号を伝達する伝送路と、
前記伝送路上に配置されて前記同期信号のうち周期的に繰り返される第1タイミングで動作し、共振タグが応答可能な信号を発信するとともに共振タグからの応答信号を検出する少なくとも1つ以上の受発信型のタグ検出送受信装置と、
前記伝送路上に配置されて前記同期信号のうち前記第1タイミングを除いて周期的に繰り返される第2タイミングで動作し、共振タグが共振可能な信号を発信する少なくとも1つ以上の分離型のタグ検出送信装置と、
を備える電子物品監視装置。
【請求項2】
前記受発信型のタグ検出送受信装置は、前記第1タイミングにおいて周波数変調された高周波を断続して生成するとともに、断続的に高周波が生成されるバースト期間後の休止期間中の第1処理期間中において共振タグからの減衰振動を検出する、請求項1に記載の電子物品監視装置。
【請求項3】
前記伝送路は、メインマスタ装置からそれぞれ延びる複数系統の直列部分を含む、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の電子物品監視装置。
【請求項4】
前記メインマスタ装置は、受発信型のタグ検出送受信装置と、分離型のタグ検出送信装置と、制御用のコンピュータとのうちいずれか1つで構成される、請求項3に記載の電子物品監視装置。
【請求項5】
前記伝送路によって伝達される前記同期信号は、矩形波であり、
前記受発信型のタグ検出送受信装置は、前記矩形波の一周期を構成する一対の半サイクルの一方に対応して前記第1タイミングを割り当てられ、
前記分離型のタグ検出送信装置は、前記一対の半サイクルの他方に対応して前記第2タイミングを割り当てられる、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子物品監視装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つ以上の分離型のタグ検出送信装置のうち対応する分離型のタグ検出送信装置からのタイミング信号に応じて、共振タグによる減衰吸収を検出する分離型のタグ検出受信装置をさらに備える請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電子物品監視装置。
【請求項7】
前記分離型のタグ検出受信装置は、前記第2タイミングのうち初期を除いた第2処理期間中において共振タグによる減衰吸収を検出する、請求項5に記載の電子物品監視装置。
【請求項8】
前記分離型のタグ検出送信装置は、前記第2処理期間中において、共振タグが共振可能な信号を含む所定周波数範囲で周波数偏移させるように周波数変調された搬送波を出力する、請求項7に記載の電子物品監視装置。
【請求項9】
マスタとしての前記分離型のタグ検出送信装置からの動作転送信号を入力するとともに、前記動作転送信号に応じてスレーブとして共振タグが共振可能な信号を発信する別の分離型のタグ検出送信装置をさらに備える、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電子物品監視装置。
【請求項10】
マスタとしての前記分離型のタグ検出送信装置からの動作転送信号に応じてスレーブとしての前記別の分離型のタグ検出送信装置を動作させる場合、前記マスタは、前記第2タイミング中に前記同期信号から周波数変調によって生成した送信信号を前記スレーブに送り、前記マスタと前記スレーブとは、共通の前記送信信号から得た搬送波を同時タイミングで出力する、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の電子物品監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−251830(P2009−251830A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97603(P2008−97603)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000108649)タカヤ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】