電子線装置及び該装置を用いたデバイス製造方法
【課題】 高スループットで試料の評価を行い、フリンジの電磁場の問題が生じず、軸上色収差又は球面収差を補正して処理速度を向上させた電子線装置を提供すること。
【手段】 複数の一次電子線によって試料Sを走査し、試料Sから放出される複数の二次電子線を写像投影光学系Cを介して検出する電子線装置において、写像投影光学系Cは軸上色収差補正レンズ20を備える。軸上色収差補正レンズ20は写像投影光学系Cのレンズ19の像面に配置され、4極子電極と4極子磁極とを有するウィーン・フィルタであることが望ましい。
【手段】 複数の一次電子線によって試料Sを走査し、試料Sから放出される複数の二次電子線を写像投影光学系Cを介して検出する電子線装置において、写像投影光学系Cは軸上色収差補正レンズ20を備える。軸上色収差補正レンズ20は写像投影光学系Cのレンズ19の像面に配置され、4極子電極と4極子磁極とを有するウィーン・フィルタであることが望ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収差を補正して性能を向上させ、最小線幅が0.2μm以下のパターンを有する基板を高スループットで評価する電子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上のパターンの欠陥を検査、評価する電子線装置は周知である。こうした電子線装置の技術分野において、軸上色収差補正レンズを用いて超高分解能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を構成する技術は公知である(非特許文献1参照)。また、複数のビームを形成して試料を走査し、試料から放出された二次電子を複数の検出器で検出して試料像を得る技術も公知である。軸上色収差補正レンズ及び球面収差補正レンズとしては、4極子や12極子の電極や磁極を有するものが公知である。
【0003】
しかしながら、複数の電子ビームを用いる公知の電子線装置においては、分解能を小さくすると、収差のために大きいビーム電流を得ることができず、スループットが極めて小さいという問題があった。また、多極子型の従来の収差補正レンズでは、フリンジの場によって余計な収差が発生する恐れがあった。しかも、軸上色収差や球面収差のような収差の補正をすることによって、大きい開口を有するNA開口部材を使用し、ビーム電流を大きくし、又は、空間電荷効果を低減することは報告されていなかった。
【0004】
一方、軸対称のレンズ系としては凸レンズしか出来ないのに対し、軸対称ではない多極子レンズでは凹レンズを作ること、負の軸上色収差や負の球面収差を発生させることが可能であり、こうした多極子レンズはSEMやTEMなどの1本の光学系を持つ電子線装置に用いられ始めている。
【0005】
従来、こうした軸上色収差補正レンズや球面収差補正レンズは単に解像度を小さくするために用いられていた。ところが、電子線装置を用いて半導体デバイスの製造や評価を行う場合、限界解像度よりも、解像度は数十nmのままで処理速度を大幅に向上させたいときがある。しかし、電子線装置において用いられている軸上色収差補正レンズ又は球面収差補正レンズは光路長を長くするので、空間電荷効果を増すことになり、処理速度の向上を阻止する要因となるという問題があった。
【非特許文献1】第52回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集(2005 春 埼玉大学)、pp.812、815
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みて提案されたものであり、本発明の一つ目的は、新規な収差補正技術を用いて100nm程度の解像度ではあるが超高スループットを得ることができる電子線装置を提供することであり、本発明の他の目的は、高スループットで試料の評価を行い、フリンジの電磁場の問題が生じないウィーン・フィルタを用いた電子線装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、軸上色収差又は球面収差を補正するレンズを適所に配置することにより処理速度を向上させた電子線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、
請求項1の発明は、
複数の一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出される複数の二次電子線を写像投影光学系を介して検出する電子線装置であって、
前記写像投影光学系が軸上色収差又は球面収差補正レンズを備えることを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0008】
請求項2の発明は、前記軸上色収差又は球面収差補正レンズが、多極子電極と多極子磁極とを有し、且つ、対向する前記電極間のボア径が光軸に沿って連続的に増減する区域を有する非分散のウィーン・フィルタであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、
複数の一次電子線によって第1電子光学系を介して試料を走査し、該試料から放出された複数の二次電子線を第2電子光学系を介して検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記第1電子光学系が第1軸上色収差補正レンズを備え、前記第2電子光学系が第2軸上色収差補正レンズを備え、
前記第1軸上色収差補正レンズと前記第2軸上色収差補正レンズとが、偶数の電磁極を有するウィーン・フィルタである
ことを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0010】
請求項4の発明は、
複数の一次電子線によって試料を照射するための電子光学系と、前記試料から放出された複数の二次電子線を集束する対物レンズ及び集束された前記二次電子線の軸上色収差を補正する収差補正レンズを有し、軸上色収差補正された前記二次電子線を検出器に結像させるための電子光学系とを備える電子線装置であって、
前記対物レンズと前記収差補正レンズとの間に配置されたNA開口部材を備えることを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0011】
請求項5の発明は、前記対物レンズが、円筒状電極と円板状電極板とからなる電極を備えることを特徴とする。
請求項6の発明は、
一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出された二次電子線を検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記一次電子線が、第1対物レンズによって集束されて試料を照射し、
前記二次電子線が前記第1対物レンズ及び第2対物レンズによって集束され、前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとによって集束された前記二次電子線の軸上色収差を収差補正レンズによって補正し、軸上色収差補正された前記二次電子線を前記検出器に結像させ、
前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとの間に、前記一次電子線と前記二次電子線とを分離するためのビーム分離器が配置されてなる
ことを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0012】
請求項7の発明は、前記第1対物レンズが、壁面の厚さが前記試料へ向かって連続的に減少する円錐台状電極板を備えることを特徴とする。
請求項8の発明は、
請求項1〜7の発明における電子線装置において軸上色収差と球面収差のいずれかを補正するときに使用されるマーカー板であって、二次電子線放出係数の大きい平滑な面に径の異なる複数の穴又はドットが形成されてなることを特徴とするマーカー板、
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子線装置の実施の形態について、添付の図を用いて説明する。なお、全図を通して、同じ又は同様の構成要素は同一の参照数字又は参照符号で指示するものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る電子線装置の第1の実施の形態を概略的に示す図である。同図において、電子線装置は、電子銃Gと、電子銃Gから放出された一次電子線を運ぶ電子光学系Aと、電子光学系Aから送られてきた一次電子線を試料Sに照射させるとともに試料Sから放出された二次電子線を一次電子線から分離する電子光学系Bと、分離された二次電子線を運ぶ電子光学系Cと、電子光学系Cからの二次電子線を受け取る検出器Dとを備えている。
【0015】
電子光学系Aは、マルチ開口部材1、コンデンサ・レンズ2、縮小レンズ3、4、NA開口部材5、収差補正レンズ6、第1走査偏向器7及びビーム分離用プリ偏向器8を備えている。収差補正レンズ6は例えば二段の補正レンズから成り、各補正レンズはウィーン・フィルタで構成される。電子銃Gから放出された一次電子線は、複数の開口を有するマルチ開口部材1のマルチ開口を一様に照射する。これにより複数の一次電子線が生成される。生成された複数の一次電子線はコンデンサ・レンズ2によって集束され、縮小レンズ3に入射する前にクロスオーバー即ち電子銃が作る光源の像を形成する。
【0016】
マルチ開口1の像は縮小レンズ3、4によって縮小されて収差補正レンズ6の物点9に縮小像を作る。NA開口部材5は縮小レンズ4の手前に配置され、縮小レンズ3を通過した複数の一次電子線のビーム分解能を確保する。物点9に作られた縮小像は収差補正レンズ6の中間の点10及び収差補正レンズ6の像点11に等倍の像を形成する。像点11に集束された複数の一次電子線は電子光学系Bの対物レンズ(後述する)によって再度集束されて試料Sの面上に結像される。
【0017】
第1走査偏向器7は、像点11に形成された複数の一次電子線の進行方向を所定の方向に所定の振幅で偏向させ、これによって複数の一次電子線に試料Sの面上を走査させる。更に、複数の一次電子線は、電子光学系B内のビーム分離器の中心に入射するようプリ偏向器8によって進行方向を偏向される。
【0018】
電子光学系Bは、ビーム分離器12、第2走査偏向器13、軸対称電極14、第1MOL(Moving Objective Lens)偏向器15、第2MOL偏向器16及び対物レンズ17を備えている。対物レンズ17は、例えば、磁気ギャップ18が試料Sの側に位置する電磁レンズである。プリ偏向器8によって偏向された複数の一次電子線はビーム分離器12を通過した後、第2走査偏向器13によって更に偏向され、こうして2段の偏向が施された複数の一次電子線のそれぞれが試料Sの面の異なる位置に結像されて試料Sを走査する。このときの偏向支点は、対物レンズで生じる偏向色収差とコマ収差との合計が最小になる位置に設定される。
【0019】
第1MOL偏向器15と第2MOL偏向器16は共に電磁偏向器であり、MOL条件に近い条件に設定することによって、偏向収差を更に小さくするよう動作する。MOL条件とは、対物レンズ17の軸上磁場分布の微分に比例する偏向磁場を発生させる条件である。この場合の偏向支点は−∞に位置する。即ち、複数の一次電子線の主光線は電子光学系Aの光軸Lに平行に入射される。MOL条件に近い条件に設定すると偏向収差が更に小さくなるのは、このような条件にすることにより、レンズの軸をビームの位置に移動させることができ、ビームを偏向したときもレンズの軸を主光線が通るので偏向収差を小さくすることができる。
【0020】
電子光学系Bを通過して試料Sの面上に結像される複数の一次電子線は、対物レンズ17によって軸上色収差と球面収差とを受ける。しかし、電子光学系Aにおける二段のウィーン・フィルタ6が負の軸上色収差と負の球面収差とを作るように動作するので、対物レンズ17によって作られる軸上色収差と球面収差は二段のウィーン・フィルタ6が作る負の軸上色収差と負の球面収差によって打ち消される。こうして収差が打ち消されるため、NA開口部材5のNA開口を大きな値にしても、縮小レンズ3、4によって複数の一次電子線を小さく絞ることが可能になる。軸対称電極14は該電極に印加する電圧を変えることにより対物レンズ17による軸上色収差の程度を調節することができる。
【0021】
第1MOL偏向器15と第2MOL偏向器16は、対物レンズ17の主光線に対する屈折作用を打ち消すよう動作する。このため、電子光学系Bで集束された複数の一次電子線によって照射された試料Sの面の異なる位置から放出された複数の二次電子線のうち、試料Sの法線方向に放出された複数の二次電子線の主光線は、対物レンズ17による屈折作用を受けることなく光軸Lに平行に進み、ビーム分離器12により一次電子線の到来方向から離れるように、図1においては左へ偏向されて電子光学系Cに入る。なお、プリ偏向器8は静電偏向器であり、ビーム分離器12において複数の一次電子線に発生する偏向色収差を打ち消すよう動作する。
【0022】
電子光学系Cは、二次電子像形成レンズ19、収差補正レンズ20、第1拡大レンズ21及び第2拡大レンズ22を備える写像投影型光学系である。なお、収差補正レンズ20は軸上色収差のみを補正すればよいので、4極子の電界と4極子の磁界を発生すれば良く、例えば、4極子のウィーン・フィルタであってよい。代わりに、収差補正レンズ20を6極子のウィーン・フィルタとし、球面収差のみを補正するようにしてもよい。
【0023】
ビーム分離器12で一次電子線と分離された複数の二次電子線は、二次電子像形成レンズ19によって収差補正レンズ20の物点23に像を作る。つまり、収差補正レンズ20は二次電子像形成レンズ19の像面に配置される。収差補正レンズ20は物点23の像を点24に形成する。収差補正レンズ20によって点24に作られた像は第1拡大レンズ21、第2拡大レンズ22によって拡大され、検出器Dに複数の二次電子線に対応した像を作る。検出器Dはマルチ検出器であり、入射した二次電子線のそれぞれに対応した信号を生成する。こうして生成された信号を用いて処理回路(図示せず)は試料Sの二次元像を作る。
【0024】
電子光学系Aの収差補正レンズ6には、25nmピクセル寸法の場合、25nm程度の解像度が要求される。そのため、収差補正レンズ6に一次電子線が入る側の端部と収差補正レンズ6から一次電子線が出る側の端部とで発生するフリンジ電場及びフリンジ磁場の影響で収差が発生することが予測される。こうしたフリンジ場の影響を回避するために、収差補正レンズ6として、二分割したウィーン・フィルタを用い、その対称性を利用してフリンジ場の影響を打ち消させることが好ましい。図1A及び図1Bは、この場合のウィーン・フィルタの構成の一例を示す断面図である。図1Aはこのフィルタの軸上電場及び磁場の分布をも示している。
【0025】
図1A及び図1Bにおいて、ウィーン・フィルタ30は10〜20mmの肉厚の円筒であるパーマロイ・コア31を有する。パーマロイ・コア31は磁気回路を形成し、且つウィーン・フィルタ30の剛性を高めるために厚く設計されている。図1Bにウィーン・フィルタ30の構成を詳細に示すように、パーマロイ・コア31の内側の空間には、一次電子線を通過させるための所定の径を有するボア32を中心として、12個の電磁極(即ち、12個の電極兼磁極)331、332、333、・・・、3312が、それぞれパーマロイ・コア31との間に絶縁スペーサ341、342、343、・・・、3412を介して等間隔に配置される。
【0026】
各絶縁スペーサ341〜3412の厚さa(即ち、径方向の幅)は、磁気抵抗が小さく且つ所要の絶縁性が保持されるよう最小限の値に選択される。一方、各絶縁スペーサの周方向の長さbは、図1Bにおいては、絶縁スペーサが光軸から見て磁極片に隠れるように、光軸Lから直視できない値に設定される。しかし、絶縁スペーサの周方向の長さbを磁極片の周方向の長さよりも大きくして放電を防止するようにしてもよい。これらの電磁極331〜3312及び絶縁スペーサは適宜の固定手段35によって、所要の複数の位置においてパーマロイ・コア31に取り付けられる。なお、図1A及び図1Bは簡略化のために固定手段35は一個所しか示していない。固定手段35として締め付けネジを用いた場合、締め付けネジとパーマロイ・コア31との間を絶縁するためのスペーサ351を設けるのがよい。
【0027】
それぞれの電磁極は光軸Lに沿って二段に分割され、各電磁極の周囲には励磁コイルが巻かれた同一の構造をしている。そこで、対向する二つの電磁極、例えば電磁極331、337について説明すると、電磁極331、337は、図1Aに示すように、光軸Lに沿って二段に配された上側電磁極331U、337Uと下側電磁極331L、337Lを有し、これら上下の電磁極は接続部331M、337Mで連結された一体構造をしており、電磁極331、337の周囲には、所定の方向に磁界を形成するための励磁コイル331C、337Cが巻回されている。これにより、それぞれの対向する電磁極は光軸Lに直交する方向に磁場を形成する。接続部331M、337Mは、実質的に磁場及び電場が発生しない程度のボア径を持ち、上側電磁極331U、337Uと下側電磁極331L、337Lが位置ズレしない一体構造になっている。
【0028】
更に、図1Aに示すように、上側電磁極331U、337Uと下側電磁極331L、337Lとの光軸Lを含む面での断面形状は台形に形成される。そのため、中央のボア32の径は、光軸Lを挟んで隣り合う電磁極間の最小値hから、光軸Lを挟んで隣り合う接続部間の最大値kまで変化する。その結果、光軸Lを挟んで隣り合う上側電磁極の間及び光軸Lを挟んで隣り合う下側電磁極の間に形成される軸上磁場の強さは、図1Aの右側に示すように、光軸Lの方向に二度、台形に近い形で最小値と最大値の間で変化する。このようにウィーン・フィルタ30の光軸Lに沿って変化する磁場が一次電子線に及ぼすロレンツ力を打ち消すように、ウィーン・フィルタ30の光軸Lに沿って6個の電磁極によって軸上電場が形成される。この軸上電場の分布も図1Aに示す形になる。
【0029】
収差補正レンズ6をこのように2段に分割した構造にしたことにより、物点9から発散して点10に集束する一次電子線と、点10から発散して像点11に集束する一次電子線との対称性を改善し、フリンジ場による影響を打ち消すことができる。更に、上側電磁極及び下側電磁極の光軸Lを含む面における断面形状を台形とし、ボア32が単調に変化するようにしたので、ウィーン・フィルタの上端及び下端におけるフリンジ磁場及びフリンジ電場の差を小さくすることができ、また、上側と板側が一体になっているので、上側と下側の製作精度の劣化を防止することができる。
【0030】
図2は、本発明に係る電子線装置の第2の実施の形態を概略的に示す図である。この実施の形態における電子線装置も、第1の実施の形態と同様に、電子銃G、電子光学系A、B、C及び検出器Dを備えており、電子銃から放出された電子線は電子光学系A、Bを通過して試料Sを照射し、それによって試料Sから放出された二次電子線は電子光学系Cによって導かれて検出器Dに至る。
【0031】
図2において、電子光学系Aは、軸合わせ偏向器41、コンデンサ・レンズ42、軸合わせ偏向器43、複数の正方形の開口を有する成形開口部材44、コンデンサ・レンズ45、軸合わせ偏向器46、成形レンズ47及び一次電子線軌道調整用偏向器48を備えている。ここで、開口が複数あるのは、開口が汚れた場合の交換用及びピクセル寸法を変えたときの異なる寸法のものであって、照射するのは1個である。電子銃Gから放出された一次電子線は、光軸Lに沿って進むよう軸合わせ偏向器41によって偏向され、次いでコンデンサ・レンズ42によって集束されて、成形開口部材44の正方形の開口を一様に照射し、これによって、正方形の断面形状を有する一次電子線が形成される。こうして断面が正方形にされた一次電子線はコンデンサ・レンズ45及び成形レンズ47によって倍率調整され、軸合わせ偏向器46及び軌道調整偏向器48によって正方形の一次電子線が光軸Lから外れた位置にある開口501に軌道修正されて電子光学系Bに入る。一次電子線は、ビーム・エネルギが高い場合には、軌道L1を通り、ビーム・エネルギが低い場合には、ビーム分離器49による偏向角が大きいので、軌道L2を通るよう制御される。
【0032】
電子光学系Bは、例えば電磁偏向器であるビーム分離器49、NA開口部材50及び複数枚(図2では3枚)の電極を有する対物レンズ51を備える。NA開口部材50は、図2Aに示すように、正方形の穴501と4分割されたリング状の穴502とを有しており、電子光学系Aから送出された正方形の一次電子線は、試料Sの二次光学系の光軸位置に入射するようにビーム分離器49によって進行方向を変更され、NA開口部材50の正方形の穴501を通過した後、対物レンズ51によって所定の寸法に集束されて試料Sの面上に合焦される。
【0033】
対物レンズ51の3枚の電極のうち、中央電極511は、図示のように、円板部分5111と該円板部分に垂直な円筒部分5112とを組み合わせた形状をしている。この結果、試料面上での電界強度が小さく、レンズのある光軸上では一次電子線のエネルギが高くなるので低収差となる。また、試料Sに近い方の電極512に中央電極511よりも低い電位を与えることによって、試料面の近傍の電界を放電を回避することができる値、例えば1.8kV/mm以下にすることができる。更に、中央電極511の513側の面は平面であるから、試料Sから遠い方の電極513との間隔を小さくすることができ、比較的小さい電圧を電極513に与えるだけで、所要の焦点距離を設定することができる。
【0034】
正方形の一次電子線の照射により試料Sから放出された二次電子線は、対物レンズ51によって集束され、NA開口部材50の4分割されたリング状の穴502を通過して断面が中空のホロービームとされる。後述するように、電子光学系Cの収差補正レンズによって軸上色収差が補正されるので、リング状の穴502によって大きい開口角のホロービームを作ることができる。このため、空間電荷効果によるボケは小さい。また、一次電子線はリング状の穴502から離れた穴501を通過するので、一次電子線による空間電荷が二次電子線のボケを生じさせる量は無視し得るほど小さい。リング状の穴502によってホロービームとされた二次電子線は、ビーム分離器49によって一次電子線から分離されて電子光学系Cに入射する。
【0035】
電子光学系Cは、静電偏向器52、収差補正レンズ53、補助レンズ54、第1拡大レンズ55、補助レンズ群56、第2拡大レンズ57及び偏向器58を備える。ビーム分離器49で分離された二次電子線は、静電偏向器52により、ビーム分離器49で生じる偏向色収差を補正するよう偏向されるとともに、試料Sに垂直な方向に進むよう進路を偏向されて収差補正レンズ53の物点59に二次電子像を形成する。
【0036】
収差補正レンズ53は例えば12極のウィーン・フィルタであり、第1の実施の形態におけるウィーン・フィルタ6と同様に、図1A及び図1Bに示したと同様の2段構造をしている。軸上色収差及び球面収差を補正するために、収差補正レンズ53にはダイポール電磁界がウィーン条件を満たすように与えられ、4極子電磁界によって負の軸上色収差を作り、6極子電磁界と8極子電磁界とで負の球面収差を作るよう制御される。収差補正レンズ53は、非分散となるよう、物点59から発散した二次電子線を中間点60に集束させた後、像点61に二次電子像を形成する。像点61は補助レンズ54の主面に位置する。図2に示すように、収差補正レンズ53の二次電子線進行方向における長さは物点59と像点61との距離よりも小さい。また、物点59からフィルタの一端までの寸法d1は中間点60からフィルタの対向端までの距離d2、d3及びフィルタの他端から像点61までの距離d4に等しい。
【0037】
上記のように、収差補正レンズ53としてウィーン・フィルタを用いると、二次電子線のビーム軌道は軸対称となり、視野が広いため、広がりのある二次電子像であっても、全体を低収差にすることができる。また、視野が広いため、収差補正レンズ53の軸合わせは容易である。
【0038】
補助レンズ54は、二次電子像の結像条件に影響を与えることなく、NA開口部材50のリング状の穴502の像を第1拡大レンズ55の主面に結像させる。そこで第1拡大レンズ55は二次電子の像を拡大し、二次電子の拡大された像は補助レンズ群56の一つに結像される。さらに、二次電子の像は第2拡大レンズ57によって更に拡大され、検出器Dに結像される。補助レンズ群56は複数の(図では3段の)レンズからなるので、ピクセル寸法を変えた場合であっても対応可能である。ピクセル寸法が最小のときは、補助レンズ群56のうちの第2拡大レンズ57に最も近いレンズが使われ、他のレンズは励起されない。このレンズの主面に結蔵された二次電子像は第2拡大レンズ57で大きく拡大され、検出器Dに最大の拡大率の二次電子像ができる。逆に、ピクセル寸法が最大のときには、補助レンズ群56のうちの第2拡大レンズ57から遠いレンズに二次電子像が作られ、検出器Dには同じ寸法の拡大像が作られる。
【0039】
検出器Dを複数のCCD装置を配列した構成とすると、CCDのデータ読み出し時間の方が露光時間よりも長いことによる無駄な待ち時間を生じさせないで済む。例えば、図2Bに示すように、検出器Dを4つのCCD装置62〜65を同一面上に配列した構成とした場合、偏向器58は第2拡大レンズ57から出た二次電子線を偏向させ、第2拡大レンズ57によって拡大された二次電子像を4つのCCD装置62〜65に順番に結像させる。これにより、CCD装置のデータ読み出し時間が露光時間の4倍であっても、無駄な待ち時間なしに二次電子像の検出を連続的に行うことができる。
【0040】
次に、図3を用いて、本発明の電子線装置の第3の実施の形態を概略的に説明する。この第3の実施の形態における電子線装置も、これまで説明した2つの実施の形態と同様に、電子銃G、電子光学系A、B、C及び検出器Dを備えており、更に、制御系Eを有する。電子銃Gから放出された電子線は電子光学系A、Bを通過して試料Sを照射し、それによって試料Sから放出された二次電子線は電子光学系Cによって導かれて検出器Dに至る。制御系Eは検出器Dからの出力を用いて対物レンズに与える電位を調整する。
【0041】
電子光学系Aは、2つのコンデンサ・レンズ71、72、長方形の開口を持つ開口部材73、2つのレンズ74、75及び入射点調整用の2段の偏向器76を備える。電子銃Gは例えばLaB6製のカソードを持ち、該カソードから放出された電子線は2段のコンデンサ・レンズ71、72によって集束され、開口部材73の長方形の開口を一様な照射強度で照射する。この開口によって断面長方形に成形された一次電子線は、2段のレンズ74、75によって所望の倍率で縮小又は拡大され、更に、偏向器76によって、電子光学系Bの所定の入射点に入射するよう進行方向を調整される。こうした調整が必要なのは、一次電子線のエネルギが小さい場合はビーム分離器77での偏向角が大きいので、軌道L3を取るようにするためである。
【0042】
電子光学系Bはビーム分離器77と3枚の電極を有する第1対物レンズ78とを備え、ビーム分離器77は例えば電磁偏向器である。偏向器76によって進行方向が調整された一次電子線はビーム分離器77の中心から所定の距離だけ離れた点、例えば4mm離れた点に向かって入射し、ビーム分離器77によって角度β(<α)だけ偏向される。βは例えば23度である。これによって一次電子線は試料Sに対してα−βの角度を持って第1対物レンズ78に入り、第1対物レンズ78によって集束されると共に更に僅かに偏向されて試料Sを照射する。
【0043】
一次電子線の照射によって試料Sから放出された二次電子線は第1対物レンズ78によって集束され、次いで、ビーム分離器77によって進行方向を一次電子線から離れるよう偏向されて電子光学系Cに入る。電子光学系Cは、ビーム軌道修正偏向器79、NA開口部材80、3枚の電極を有する第2対物レンズ81、収差補正レンズ82、第1拡大レンズ83、補助レンズ群84及び第2拡大レンズ85を備えている。
【0044】
ビーム分離器77によって分離された二次電子線は、ビーム軌道修正偏向器79によって更に偏向されて試料Sの法線方向と平行な方向に進む。ビーム軌道修正偏向器79も例えば電磁偏向器であり、ビーム分離器77が一次電子線を偏向した角と同じ角度で且つ逆方向に、即ち−αだけ二次電子線を偏向する。これにより、二次電子線の主光線を試料Sに垂直に進ませるとともに、試料から発散したビームは2段のレンズ間で平行ビームとなるため、偏向色収差を除去することができる。なお、ビーム分離器77及びビーム軌道修正偏向器79における偏向によって非点収差が発生し得る。これを除去するため、これらのビーム分離器には非点収差補正用の電流を重畳することが望ましい。また、ビーム軌道修正偏向器79を、その偏向角の1/2の角度だけ電子光学系Cの光軸L’に対して傾けることにより、ビーム分離器が小口径であっても歪みを生じなくすることができる。
【0045】
ビーム軌道修正偏向器79によって偏向された二次電子線はNA開口部材80で制限され、第2対物レンズ81によって僅かに縮小された二次電子像を収差補正レンズ82の物点86に形成する。なお、NA開口部材80の光軸L’方向の位置を調整することにより、コマ収差を最小にすることができ、また、倍率色収差も充分小さくすることができる。ここで、第1対物レンズ78と第2対物レンズ81との縮小率を大きくしたとき、二次電子線は実線87で示す経路を進み、第1対物レンズ78と第2対物レンズ81との縮小率を小さくしたときには、二次電子線は点線88で示す経路を進む。
【0046】
収差補正レンズ82の構成は図1に示す収差補正レンズ6と同様であり、ここでの説明は省略する。収差補正レンズ82は物点86における二次電子像を像点89に形成し、像点89からの二次電子線は第1拡大レンズ83、補助レンズ群84及び第2拡大レンズ85によって倍率を調整され、検出器Dの画素ピッチに一致するよう所望の大きさに拡大された像を検出器Dに形成する。
【0047】
検出器Dからの出力は制御系EのCPU90に供給され、CPU90は検出器Dの出力を用いて試料面の二次元画像信号を生成する。この二次元画像信号を用いて表示された画像に収差が含まれるとき、その収差を補正するため、CPU90からの命令を受けて、制御電源91は第1対物レンズ78及び第2対物レンズ81の各電極に与える電圧を調整する。
【0048】
ここで第1対物レンズ78及び第2対物レンズ81について説明する。まず、第1対物レンズ78は電極781、782、783を有しており、その中央電極782は、中央に電子線通過用の開口を有する円錐台部分とその周囲の円板部分とからなる。こうした形状にすることにより、コマ収差を小さくし、しかも、比較的小さな正の電圧で所望の焦点距離を得ることができる。試料Sに近い方の電極783に与える電圧を低くすることにより、試料面での電界強度を小さくして放電を回避することができる。逆に、電極783に与える電圧を高くすると、対物レンズ78の軸上色収差係数を小さくすることができるので、第1対物レンズ78及び第2対物レンズ81による軸上色収差を収差補正レンズ82の負の軸上色収差によって打ち消すことが容易になる。また、電極781に与える電圧を例えば±100V程度変化させることにより、試料面の凹凸によるフォーカスのズレをダイナミックに補正することができる。
【0049】
第2対物レンズ81も複数の(図3では3枚の)電極を持ち、中央の電極に与える電圧を調整することにより、一次電子線の結像位置86を変えることなく、二次電子像の倍率を調整することができる。この結果を用いて、第1対物レンズ78と第2対物レンズ81の球面収差補正係数或いは軸上色収差補正係数を微調整することもできる。
【0050】
ここで、図4A〜図4Eを用いて、これまで説明した第1〜第3の実施の形態に係る電子線装置においてビーム調整のために用いるマークについて説明する。図4Aは3種類の径の異なる穴を有するマーカー板101を示している。すなわち、マーカー板101には、径が最小の小マーカー穴102、径が中間の中マーカー穴103及び径が最大の大マーカー穴104がそれぞれ行方向に並ぶように形成されており、これらのマーカー穴以外の領域は二次電子放出率の大きい導電性材料で両面ともコーティングされている。図4Bはマーカー板101の断面形状を示している。
【0051】
このマーカー板101を試料Sと同じ高さの位置に置き、一次電子線を照射して検出器Dによってマーカー穴102、103又は104の二次元像を検出する。このとき検出される像の例を図4C、図4D及び図4Eに示す。電子銃Gから試料Sを経て検出器Dに至る電子線の光路における補正レンズの軸合わせが適切でない場合には、図4Cに示すようなコマ収差が観察されるので、図4Dに示すような円形の像を得るよう軸合わせを行う必要がある。実際には、図4Eに示すように、マーカー穴102は小さいので、コントラストが極めて低い像となり、収差が検出し難い。一方、マーカー穴104の像はコントラストが大きく且つはっきりしてはいるが、マーカー穴が大きいことによって像のボケも大きくなり、微妙な収差を見逃す危険性も生じ得る。そこで、最適な穴径を選択すればよい。または、別のマーカーとして、図4Fに示すように、マーカー板101を二次電子放出率の小さい薄膜で作り、マーカー穴102〜104の代わりに、重金属のドットによるマーカー105をSi薄膜上に形成したものを用いるのもよい。
【0052】
以上、本発明に係る電子線装置の若干の実施の形態を説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形及び修正が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上、本発明に係る電子線装置の若干の実施の形態を詳述したところから理解されるよおり、本発明は、二次電子光学系における軸上色収差又は球面収差を補正するので、一次電子線相互間の距離を小さくしても十分に複数の二次電子線を検出することができ、したがって、多くの数の一次電子線を光軸の近傍に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る電子線装置の第1の実施の形態を概略的に示す図である。
【図1A】図1に示す収差補正レンズの縦断面図であり、図1Bの線X−Xに沿う断面を示すとともに、これに対応させて図1の収差補正レンズにおける磁界強度及び電界強度の分布を示すグラフである。
【図1B】図1に示す収差補正レンズの横断面図であり、図1Aの線Y−Yに沿う断面を示す。
【図2】本発明に係る電子線装置の第2の実施の形態を概略的に示す図である。
【図2A】図2に示すNA開口部材の平面図である。
【図2B】図2に示す検出器のCCD検出器の配列を示す図である。
【図3】本発明に係る電子線装置の第3の実施の形態を概略的に示す図である。
【図4A】本発明に係る電子線装置で使用可能なマーカーの平面図である。
【図4B】図4Aにおける線Z−Zに沿う断面図である。
【図4C】軸合わせが不適切な場合のマーカー穴の像を示す図である。
【図4D】軸合わせが適切な場合のマーカー穴の像を示す図である。
【図4E】実際のマーカー穴の像を示す図である。
【図4F】代替のマーカーの断面図である。
【符号の説明】
【0055】
G:電子銃、 A、B、C:電子光学系、 D:検出器、E:制御系、 S:試料、
1:マルチ開口部材、 2:コンデンサ・レンズ、 3、4:縮小レンズ、 5:NA開口部材、 6:収差補正レンズ、 7:第1走査偏向器、 8:プリ偏向器、 9:物点、 11:像点、 12、ビーム分離器、 13:第2走査偏向器、 14:軸対称電極、 15:第1MOL偏向器、 16:第2MOL偏向器、 17:対物レンズ、 19:二次電子像形成レンズ、 20:収差補正レンズ、 21、22:拡大レンズ、
30:ウィーン・フィルタ、 31:パーマロイ・コア、 32:ボア、 331〜3312:磁極及び電極、 341〜3412:絶縁スペーサ、
41:軸合わせ偏向器、 42:コンデンサ・レンズ、 43:軸合わせ偏向器、 44:成形開口部材、 45:コンデンサ・レンズ、 46:軸合わせ偏向器、 47:成形レンズ、 48:一次電子線軌道調整用偏向器、 49:ビーム分離器、 50:NA開口部材、 51:対物レンズ、 52:静電偏向器、 53:収差補正レンズ、 54:補助レンズ、 55、57:拡大レンズ、 56:補助レンズ群、 58:偏向器、
501:正方形の穴、 502:リング状の穴、 62〜65:CCD装置、
71、72:コンデンサ・レンズ、 73:開口部材、 74、75:レンズ、 76:偏向器、 77:ビーム分離器、 78:第1対物レンズ、 79:ビーム軌道修正偏向器、 80:NA開口部材、 81:第2対物レンズ、 82:収差補正レンズ、 83、85:拡大レンズ、 84:補助レンズ群、 90:CPU、 91:制御電源、
101:マーカー板: 101:小マーカー穴、 102:中マーカー穴、 103:大マーカー穴、 105:重金属のドット
【技術分野】
【0001】
本発明は、収差を補正して性能を向上させ、最小線幅が0.2μm以下のパターンを有する基板を高スループットで評価する電子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上のパターンの欠陥を検査、評価する電子線装置は周知である。こうした電子線装置の技術分野において、軸上色収差補正レンズを用いて超高分解能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を構成する技術は公知である(非特許文献1参照)。また、複数のビームを形成して試料を走査し、試料から放出された二次電子を複数の検出器で検出して試料像を得る技術も公知である。軸上色収差補正レンズ及び球面収差補正レンズとしては、4極子や12極子の電極や磁極を有するものが公知である。
【0003】
しかしながら、複数の電子ビームを用いる公知の電子線装置においては、分解能を小さくすると、収差のために大きいビーム電流を得ることができず、スループットが極めて小さいという問題があった。また、多極子型の従来の収差補正レンズでは、フリンジの場によって余計な収差が発生する恐れがあった。しかも、軸上色収差や球面収差のような収差の補正をすることによって、大きい開口を有するNA開口部材を使用し、ビーム電流を大きくし、又は、空間電荷効果を低減することは報告されていなかった。
【0004】
一方、軸対称のレンズ系としては凸レンズしか出来ないのに対し、軸対称ではない多極子レンズでは凹レンズを作ること、負の軸上色収差や負の球面収差を発生させることが可能であり、こうした多極子レンズはSEMやTEMなどの1本の光学系を持つ電子線装置に用いられ始めている。
【0005】
従来、こうした軸上色収差補正レンズや球面収差補正レンズは単に解像度を小さくするために用いられていた。ところが、電子線装置を用いて半導体デバイスの製造や評価を行う場合、限界解像度よりも、解像度は数十nmのままで処理速度を大幅に向上させたいときがある。しかし、電子線装置において用いられている軸上色収差補正レンズ又は球面収差補正レンズは光路長を長くするので、空間電荷効果を増すことになり、処理速度の向上を阻止する要因となるという問題があった。
【非特許文献1】第52回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集(2005 春 埼玉大学)、pp.812、815
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みて提案されたものであり、本発明の一つ目的は、新規な収差補正技術を用いて100nm程度の解像度ではあるが超高スループットを得ることができる電子線装置を提供することであり、本発明の他の目的は、高スループットで試料の評価を行い、フリンジの電磁場の問題が生じないウィーン・フィルタを用いた電子線装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、軸上色収差又は球面収差を補正するレンズを適所に配置することにより処理速度を向上させた電子線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、
請求項1の発明は、
複数の一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出される複数の二次電子線を写像投影光学系を介して検出する電子線装置であって、
前記写像投影光学系が軸上色収差又は球面収差補正レンズを備えることを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0008】
請求項2の発明は、前記軸上色収差又は球面収差補正レンズが、多極子電極と多極子磁極とを有し、且つ、対向する前記電極間のボア径が光軸に沿って連続的に増減する区域を有する非分散のウィーン・フィルタであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、
複数の一次電子線によって第1電子光学系を介して試料を走査し、該試料から放出された複数の二次電子線を第2電子光学系を介して検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記第1電子光学系が第1軸上色収差補正レンズを備え、前記第2電子光学系が第2軸上色収差補正レンズを備え、
前記第1軸上色収差補正レンズと前記第2軸上色収差補正レンズとが、偶数の電磁極を有するウィーン・フィルタである
ことを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0010】
請求項4の発明は、
複数の一次電子線によって試料を照射するための電子光学系と、前記試料から放出された複数の二次電子線を集束する対物レンズ及び集束された前記二次電子線の軸上色収差を補正する収差補正レンズを有し、軸上色収差補正された前記二次電子線を検出器に結像させるための電子光学系とを備える電子線装置であって、
前記対物レンズと前記収差補正レンズとの間に配置されたNA開口部材を備えることを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0011】
請求項5の発明は、前記対物レンズが、円筒状電極と円板状電極板とからなる電極を備えることを特徴とする。
請求項6の発明は、
一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出された二次電子線を検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記一次電子線が、第1対物レンズによって集束されて試料を照射し、
前記二次電子線が前記第1対物レンズ及び第2対物レンズによって集束され、前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとによって集束された前記二次電子線の軸上色収差を収差補正レンズによって補正し、軸上色収差補正された前記二次電子線を前記検出器に結像させ、
前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとの間に、前記一次電子線と前記二次電子線とを分離するためのビーム分離器が配置されてなる
ことを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0012】
請求項7の発明は、前記第1対物レンズが、壁面の厚さが前記試料へ向かって連続的に減少する円錐台状電極板を備えることを特徴とする。
請求項8の発明は、
請求項1〜7の発明における電子線装置において軸上色収差と球面収差のいずれかを補正するときに使用されるマーカー板であって、二次電子線放出係数の大きい平滑な面に径の異なる複数の穴又はドットが形成されてなることを特徴とするマーカー板、
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子線装置の実施の形態について、添付の図を用いて説明する。なお、全図を通して、同じ又は同様の構成要素は同一の参照数字又は参照符号で指示するものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る電子線装置の第1の実施の形態を概略的に示す図である。同図において、電子線装置は、電子銃Gと、電子銃Gから放出された一次電子線を運ぶ電子光学系Aと、電子光学系Aから送られてきた一次電子線を試料Sに照射させるとともに試料Sから放出された二次電子線を一次電子線から分離する電子光学系Bと、分離された二次電子線を運ぶ電子光学系Cと、電子光学系Cからの二次電子線を受け取る検出器Dとを備えている。
【0015】
電子光学系Aは、マルチ開口部材1、コンデンサ・レンズ2、縮小レンズ3、4、NA開口部材5、収差補正レンズ6、第1走査偏向器7及びビーム分離用プリ偏向器8を備えている。収差補正レンズ6は例えば二段の補正レンズから成り、各補正レンズはウィーン・フィルタで構成される。電子銃Gから放出された一次電子線は、複数の開口を有するマルチ開口部材1のマルチ開口を一様に照射する。これにより複数の一次電子線が生成される。生成された複数の一次電子線はコンデンサ・レンズ2によって集束され、縮小レンズ3に入射する前にクロスオーバー即ち電子銃が作る光源の像を形成する。
【0016】
マルチ開口1の像は縮小レンズ3、4によって縮小されて収差補正レンズ6の物点9に縮小像を作る。NA開口部材5は縮小レンズ4の手前に配置され、縮小レンズ3を通過した複数の一次電子線のビーム分解能を確保する。物点9に作られた縮小像は収差補正レンズ6の中間の点10及び収差補正レンズ6の像点11に等倍の像を形成する。像点11に集束された複数の一次電子線は電子光学系Bの対物レンズ(後述する)によって再度集束されて試料Sの面上に結像される。
【0017】
第1走査偏向器7は、像点11に形成された複数の一次電子線の進行方向を所定の方向に所定の振幅で偏向させ、これによって複数の一次電子線に試料Sの面上を走査させる。更に、複数の一次電子線は、電子光学系B内のビーム分離器の中心に入射するようプリ偏向器8によって進行方向を偏向される。
【0018】
電子光学系Bは、ビーム分離器12、第2走査偏向器13、軸対称電極14、第1MOL(Moving Objective Lens)偏向器15、第2MOL偏向器16及び対物レンズ17を備えている。対物レンズ17は、例えば、磁気ギャップ18が試料Sの側に位置する電磁レンズである。プリ偏向器8によって偏向された複数の一次電子線はビーム分離器12を通過した後、第2走査偏向器13によって更に偏向され、こうして2段の偏向が施された複数の一次電子線のそれぞれが試料Sの面の異なる位置に結像されて試料Sを走査する。このときの偏向支点は、対物レンズで生じる偏向色収差とコマ収差との合計が最小になる位置に設定される。
【0019】
第1MOL偏向器15と第2MOL偏向器16は共に電磁偏向器であり、MOL条件に近い条件に設定することによって、偏向収差を更に小さくするよう動作する。MOL条件とは、対物レンズ17の軸上磁場分布の微分に比例する偏向磁場を発生させる条件である。この場合の偏向支点は−∞に位置する。即ち、複数の一次電子線の主光線は電子光学系Aの光軸Lに平行に入射される。MOL条件に近い条件に設定すると偏向収差が更に小さくなるのは、このような条件にすることにより、レンズの軸をビームの位置に移動させることができ、ビームを偏向したときもレンズの軸を主光線が通るので偏向収差を小さくすることができる。
【0020】
電子光学系Bを通過して試料Sの面上に結像される複数の一次電子線は、対物レンズ17によって軸上色収差と球面収差とを受ける。しかし、電子光学系Aにおける二段のウィーン・フィルタ6が負の軸上色収差と負の球面収差とを作るように動作するので、対物レンズ17によって作られる軸上色収差と球面収差は二段のウィーン・フィルタ6が作る負の軸上色収差と負の球面収差によって打ち消される。こうして収差が打ち消されるため、NA開口部材5のNA開口を大きな値にしても、縮小レンズ3、4によって複数の一次電子線を小さく絞ることが可能になる。軸対称電極14は該電極に印加する電圧を変えることにより対物レンズ17による軸上色収差の程度を調節することができる。
【0021】
第1MOL偏向器15と第2MOL偏向器16は、対物レンズ17の主光線に対する屈折作用を打ち消すよう動作する。このため、電子光学系Bで集束された複数の一次電子線によって照射された試料Sの面の異なる位置から放出された複数の二次電子線のうち、試料Sの法線方向に放出された複数の二次電子線の主光線は、対物レンズ17による屈折作用を受けることなく光軸Lに平行に進み、ビーム分離器12により一次電子線の到来方向から離れるように、図1においては左へ偏向されて電子光学系Cに入る。なお、プリ偏向器8は静電偏向器であり、ビーム分離器12において複数の一次電子線に発生する偏向色収差を打ち消すよう動作する。
【0022】
電子光学系Cは、二次電子像形成レンズ19、収差補正レンズ20、第1拡大レンズ21及び第2拡大レンズ22を備える写像投影型光学系である。なお、収差補正レンズ20は軸上色収差のみを補正すればよいので、4極子の電界と4極子の磁界を発生すれば良く、例えば、4極子のウィーン・フィルタであってよい。代わりに、収差補正レンズ20を6極子のウィーン・フィルタとし、球面収差のみを補正するようにしてもよい。
【0023】
ビーム分離器12で一次電子線と分離された複数の二次電子線は、二次電子像形成レンズ19によって収差補正レンズ20の物点23に像を作る。つまり、収差補正レンズ20は二次電子像形成レンズ19の像面に配置される。収差補正レンズ20は物点23の像を点24に形成する。収差補正レンズ20によって点24に作られた像は第1拡大レンズ21、第2拡大レンズ22によって拡大され、検出器Dに複数の二次電子線に対応した像を作る。検出器Dはマルチ検出器であり、入射した二次電子線のそれぞれに対応した信号を生成する。こうして生成された信号を用いて処理回路(図示せず)は試料Sの二次元像を作る。
【0024】
電子光学系Aの収差補正レンズ6には、25nmピクセル寸法の場合、25nm程度の解像度が要求される。そのため、収差補正レンズ6に一次電子線が入る側の端部と収差補正レンズ6から一次電子線が出る側の端部とで発生するフリンジ電場及びフリンジ磁場の影響で収差が発生することが予測される。こうしたフリンジ場の影響を回避するために、収差補正レンズ6として、二分割したウィーン・フィルタを用い、その対称性を利用してフリンジ場の影響を打ち消させることが好ましい。図1A及び図1Bは、この場合のウィーン・フィルタの構成の一例を示す断面図である。図1Aはこのフィルタの軸上電場及び磁場の分布をも示している。
【0025】
図1A及び図1Bにおいて、ウィーン・フィルタ30は10〜20mmの肉厚の円筒であるパーマロイ・コア31を有する。パーマロイ・コア31は磁気回路を形成し、且つウィーン・フィルタ30の剛性を高めるために厚く設計されている。図1Bにウィーン・フィルタ30の構成を詳細に示すように、パーマロイ・コア31の内側の空間には、一次電子線を通過させるための所定の径を有するボア32を中心として、12個の電磁極(即ち、12個の電極兼磁極)331、332、333、・・・、3312が、それぞれパーマロイ・コア31との間に絶縁スペーサ341、342、343、・・・、3412を介して等間隔に配置される。
【0026】
各絶縁スペーサ341〜3412の厚さa(即ち、径方向の幅)は、磁気抵抗が小さく且つ所要の絶縁性が保持されるよう最小限の値に選択される。一方、各絶縁スペーサの周方向の長さbは、図1Bにおいては、絶縁スペーサが光軸から見て磁極片に隠れるように、光軸Lから直視できない値に設定される。しかし、絶縁スペーサの周方向の長さbを磁極片の周方向の長さよりも大きくして放電を防止するようにしてもよい。これらの電磁極331〜3312及び絶縁スペーサは適宜の固定手段35によって、所要の複数の位置においてパーマロイ・コア31に取り付けられる。なお、図1A及び図1Bは簡略化のために固定手段35は一個所しか示していない。固定手段35として締め付けネジを用いた場合、締め付けネジとパーマロイ・コア31との間を絶縁するためのスペーサ351を設けるのがよい。
【0027】
それぞれの電磁極は光軸Lに沿って二段に分割され、各電磁極の周囲には励磁コイルが巻かれた同一の構造をしている。そこで、対向する二つの電磁極、例えば電磁極331、337について説明すると、電磁極331、337は、図1Aに示すように、光軸Lに沿って二段に配された上側電磁極331U、337Uと下側電磁極331L、337Lを有し、これら上下の電磁極は接続部331M、337Mで連結された一体構造をしており、電磁極331、337の周囲には、所定の方向に磁界を形成するための励磁コイル331C、337Cが巻回されている。これにより、それぞれの対向する電磁極は光軸Lに直交する方向に磁場を形成する。接続部331M、337Mは、実質的に磁場及び電場が発生しない程度のボア径を持ち、上側電磁極331U、337Uと下側電磁極331L、337Lが位置ズレしない一体構造になっている。
【0028】
更に、図1Aに示すように、上側電磁極331U、337Uと下側電磁極331L、337Lとの光軸Lを含む面での断面形状は台形に形成される。そのため、中央のボア32の径は、光軸Lを挟んで隣り合う電磁極間の最小値hから、光軸Lを挟んで隣り合う接続部間の最大値kまで変化する。その結果、光軸Lを挟んで隣り合う上側電磁極の間及び光軸Lを挟んで隣り合う下側電磁極の間に形成される軸上磁場の強さは、図1Aの右側に示すように、光軸Lの方向に二度、台形に近い形で最小値と最大値の間で変化する。このようにウィーン・フィルタ30の光軸Lに沿って変化する磁場が一次電子線に及ぼすロレンツ力を打ち消すように、ウィーン・フィルタ30の光軸Lに沿って6個の電磁極によって軸上電場が形成される。この軸上電場の分布も図1Aに示す形になる。
【0029】
収差補正レンズ6をこのように2段に分割した構造にしたことにより、物点9から発散して点10に集束する一次電子線と、点10から発散して像点11に集束する一次電子線との対称性を改善し、フリンジ場による影響を打ち消すことができる。更に、上側電磁極及び下側電磁極の光軸Lを含む面における断面形状を台形とし、ボア32が単調に変化するようにしたので、ウィーン・フィルタの上端及び下端におけるフリンジ磁場及びフリンジ電場の差を小さくすることができ、また、上側と板側が一体になっているので、上側と下側の製作精度の劣化を防止することができる。
【0030】
図2は、本発明に係る電子線装置の第2の実施の形態を概略的に示す図である。この実施の形態における電子線装置も、第1の実施の形態と同様に、電子銃G、電子光学系A、B、C及び検出器Dを備えており、電子銃から放出された電子線は電子光学系A、Bを通過して試料Sを照射し、それによって試料Sから放出された二次電子線は電子光学系Cによって導かれて検出器Dに至る。
【0031】
図2において、電子光学系Aは、軸合わせ偏向器41、コンデンサ・レンズ42、軸合わせ偏向器43、複数の正方形の開口を有する成形開口部材44、コンデンサ・レンズ45、軸合わせ偏向器46、成形レンズ47及び一次電子線軌道調整用偏向器48を備えている。ここで、開口が複数あるのは、開口が汚れた場合の交換用及びピクセル寸法を変えたときの異なる寸法のものであって、照射するのは1個である。電子銃Gから放出された一次電子線は、光軸Lに沿って進むよう軸合わせ偏向器41によって偏向され、次いでコンデンサ・レンズ42によって集束されて、成形開口部材44の正方形の開口を一様に照射し、これによって、正方形の断面形状を有する一次電子線が形成される。こうして断面が正方形にされた一次電子線はコンデンサ・レンズ45及び成形レンズ47によって倍率調整され、軸合わせ偏向器46及び軌道調整偏向器48によって正方形の一次電子線が光軸Lから外れた位置にある開口501に軌道修正されて電子光学系Bに入る。一次電子線は、ビーム・エネルギが高い場合には、軌道L1を通り、ビーム・エネルギが低い場合には、ビーム分離器49による偏向角が大きいので、軌道L2を通るよう制御される。
【0032】
電子光学系Bは、例えば電磁偏向器であるビーム分離器49、NA開口部材50及び複数枚(図2では3枚)の電極を有する対物レンズ51を備える。NA開口部材50は、図2Aに示すように、正方形の穴501と4分割されたリング状の穴502とを有しており、電子光学系Aから送出された正方形の一次電子線は、試料Sの二次光学系の光軸位置に入射するようにビーム分離器49によって進行方向を変更され、NA開口部材50の正方形の穴501を通過した後、対物レンズ51によって所定の寸法に集束されて試料Sの面上に合焦される。
【0033】
対物レンズ51の3枚の電極のうち、中央電極511は、図示のように、円板部分5111と該円板部分に垂直な円筒部分5112とを組み合わせた形状をしている。この結果、試料面上での電界強度が小さく、レンズのある光軸上では一次電子線のエネルギが高くなるので低収差となる。また、試料Sに近い方の電極512に中央電極511よりも低い電位を与えることによって、試料面の近傍の電界を放電を回避することができる値、例えば1.8kV/mm以下にすることができる。更に、中央電極511の513側の面は平面であるから、試料Sから遠い方の電極513との間隔を小さくすることができ、比較的小さい電圧を電極513に与えるだけで、所要の焦点距離を設定することができる。
【0034】
正方形の一次電子線の照射により試料Sから放出された二次電子線は、対物レンズ51によって集束され、NA開口部材50の4分割されたリング状の穴502を通過して断面が中空のホロービームとされる。後述するように、電子光学系Cの収差補正レンズによって軸上色収差が補正されるので、リング状の穴502によって大きい開口角のホロービームを作ることができる。このため、空間電荷効果によるボケは小さい。また、一次電子線はリング状の穴502から離れた穴501を通過するので、一次電子線による空間電荷が二次電子線のボケを生じさせる量は無視し得るほど小さい。リング状の穴502によってホロービームとされた二次電子線は、ビーム分離器49によって一次電子線から分離されて電子光学系Cに入射する。
【0035】
電子光学系Cは、静電偏向器52、収差補正レンズ53、補助レンズ54、第1拡大レンズ55、補助レンズ群56、第2拡大レンズ57及び偏向器58を備える。ビーム分離器49で分離された二次電子線は、静電偏向器52により、ビーム分離器49で生じる偏向色収差を補正するよう偏向されるとともに、試料Sに垂直な方向に進むよう進路を偏向されて収差補正レンズ53の物点59に二次電子像を形成する。
【0036】
収差補正レンズ53は例えば12極のウィーン・フィルタであり、第1の実施の形態におけるウィーン・フィルタ6と同様に、図1A及び図1Bに示したと同様の2段構造をしている。軸上色収差及び球面収差を補正するために、収差補正レンズ53にはダイポール電磁界がウィーン条件を満たすように与えられ、4極子電磁界によって負の軸上色収差を作り、6極子電磁界と8極子電磁界とで負の球面収差を作るよう制御される。収差補正レンズ53は、非分散となるよう、物点59から発散した二次電子線を中間点60に集束させた後、像点61に二次電子像を形成する。像点61は補助レンズ54の主面に位置する。図2に示すように、収差補正レンズ53の二次電子線進行方向における長さは物点59と像点61との距離よりも小さい。また、物点59からフィルタの一端までの寸法d1は中間点60からフィルタの対向端までの距離d2、d3及びフィルタの他端から像点61までの距離d4に等しい。
【0037】
上記のように、収差補正レンズ53としてウィーン・フィルタを用いると、二次電子線のビーム軌道は軸対称となり、視野が広いため、広がりのある二次電子像であっても、全体を低収差にすることができる。また、視野が広いため、収差補正レンズ53の軸合わせは容易である。
【0038】
補助レンズ54は、二次電子像の結像条件に影響を与えることなく、NA開口部材50のリング状の穴502の像を第1拡大レンズ55の主面に結像させる。そこで第1拡大レンズ55は二次電子の像を拡大し、二次電子の拡大された像は補助レンズ群56の一つに結像される。さらに、二次電子の像は第2拡大レンズ57によって更に拡大され、検出器Dに結像される。補助レンズ群56は複数の(図では3段の)レンズからなるので、ピクセル寸法を変えた場合であっても対応可能である。ピクセル寸法が最小のときは、補助レンズ群56のうちの第2拡大レンズ57に最も近いレンズが使われ、他のレンズは励起されない。このレンズの主面に結蔵された二次電子像は第2拡大レンズ57で大きく拡大され、検出器Dに最大の拡大率の二次電子像ができる。逆に、ピクセル寸法が最大のときには、補助レンズ群56のうちの第2拡大レンズ57から遠いレンズに二次電子像が作られ、検出器Dには同じ寸法の拡大像が作られる。
【0039】
検出器Dを複数のCCD装置を配列した構成とすると、CCDのデータ読み出し時間の方が露光時間よりも長いことによる無駄な待ち時間を生じさせないで済む。例えば、図2Bに示すように、検出器Dを4つのCCD装置62〜65を同一面上に配列した構成とした場合、偏向器58は第2拡大レンズ57から出た二次電子線を偏向させ、第2拡大レンズ57によって拡大された二次電子像を4つのCCD装置62〜65に順番に結像させる。これにより、CCD装置のデータ読み出し時間が露光時間の4倍であっても、無駄な待ち時間なしに二次電子像の検出を連続的に行うことができる。
【0040】
次に、図3を用いて、本発明の電子線装置の第3の実施の形態を概略的に説明する。この第3の実施の形態における電子線装置も、これまで説明した2つの実施の形態と同様に、電子銃G、電子光学系A、B、C及び検出器Dを備えており、更に、制御系Eを有する。電子銃Gから放出された電子線は電子光学系A、Bを通過して試料Sを照射し、それによって試料Sから放出された二次電子線は電子光学系Cによって導かれて検出器Dに至る。制御系Eは検出器Dからの出力を用いて対物レンズに与える電位を調整する。
【0041】
電子光学系Aは、2つのコンデンサ・レンズ71、72、長方形の開口を持つ開口部材73、2つのレンズ74、75及び入射点調整用の2段の偏向器76を備える。電子銃Gは例えばLaB6製のカソードを持ち、該カソードから放出された電子線は2段のコンデンサ・レンズ71、72によって集束され、開口部材73の長方形の開口を一様な照射強度で照射する。この開口によって断面長方形に成形された一次電子線は、2段のレンズ74、75によって所望の倍率で縮小又は拡大され、更に、偏向器76によって、電子光学系Bの所定の入射点に入射するよう進行方向を調整される。こうした調整が必要なのは、一次電子線のエネルギが小さい場合はビーム分離器77での偏向角が大きいので、軌道L3を取るようにするためである。
【0042】
電子光学系Bはビーム分離器77と3枚の電極を有する第1対物レンズ78とを備え、ビーム分離器77は例えば電磁偏向器である。偏向器76によって進行方向が調整された一次電子線はビーム分離器77の中心から所定の距離だけ離れた点、例えば4mm離れた点に向かって入射し、ビーム分離器77によって角度β(<α)だけ偏向される。βは例えば23度である。これによって一次電子線は試料Sに対してα−βの角度を持って第1対物レンズ78に入り、第1対物レンズ78によって集束されると共に更に僅かに偏向されて試料Sを照射する。
【0043】
一次電子線の照射によって試料Sから放出された二次電子線は第1対物レンズ78によって集束され、次いで、ビーム分離器77によって進行方向を一次電子線から離れるよう偏向されて電子光学系Cに入る。電子光学系Cは、ビーム軌道修正偏向器79、NA開口部材80、3枚の電極を有する第2対物レンズ81、収差補正レンズ82、第1拡大レンズ83、補助レンズ群84及び第2拡大レンズ85を備えている。
【0044】
ビーム分離器77によって分離された二次電子線は、ビーム軌道修正偏向器79によって更に偏向されて試料Sの法線方向と平行な方向に進む。ビーム軌道修正偏向器79も例えば電磁偏向器であり、ビーム分離器77が一次電子線を偏向した角と同じ角度で且つ逆方向に、即ち−αだけ二次電子線を偏向する。これにより、二次電子線の主光線を試料Sに垂直に進ませるとともに、試料から発散したビームは2段のレンズ間で平行ビームとなるため、偏向色収差を除去することができる。なお、ビーム分離器77及びビーム軌道修正偏向器79における偏向によって非点収差が発生し得る。これを除去するため、これらのビーム分離器には非点収差補正用の電流を重畳することが望ましい。また、ビーム軌道修正偏向器79を、その偏向角の1/2の角度だけ電子光学系Cの光軸L’に対して傾けることにより、ビーム分離器が小口径であっても歪みを生じなくすることができる。
【0045】
ビーム軌道修正偏向器79によって偏向された二次電子線はNA開口部材80で制限され、第2対物レンズ81によって僅かに縮小された二次電子像を収差補正レンズ82の物点86に形成する。なお、NA開口部材80の光軸L’方向の位置を調整することにより、コマ収差を最小にすることができ、また、倍率色収差も充分小さくすることができる。ここで、第1対物レンズ78と第2対物レンズ81との縮小率を大きくしたとき、二次電子線は実線87で示す経路を進み、第1対物レンズ78と第2対物レンズ81との縮小率を小さくしたときには、二次電子線は点線88で示す経路を進む。
【0046】
収差補正レンズ82の構成は図1に示す収差補正レンズ6と同様であり、ここでの説明は省略する。収差補正レンズ82は物点86における二次電子像を像点89に形成し、像点89からの二次電子線は第1拡大レンズ83、補助レンズ群84及び第2拡大レンズ85によって倍率を調整され、検出器Dの画素ピッチに一致するよう所望の大きさに拡大された像を検出器Dに形成する。
【0047】
検出器Dからの出力は制御系EのCPU90に供給され、CPU90は検出器Dの出力を用いて試料面の二次元画像信号を生成する。この二次元画像信号を用いて表示された画像に収差が含まれるとき、その収差を補正するため、CPU90からの命令を受けて、制御電源91は第1対物レンズ78及び第2対物レンズ81の各電極に与える電圧を調整する。
【0048】
ここで第1対物レンズ78及び第2対物レンズ81について説明する。まず、第1対物レンズ78は電極781、782、783を有しており、その中央電極782は、中央に電子線通過用の開口を有する円錐台部分とその周囲の円板部分とからなる。こうした形状にすることにより、コマ収差を小さくし、しかも、比較的小さな正の電圧で所望の焦点距離を得ることができる。試料Sに近い方の電極783に与える電圧を低くすることにより、試料面での電界強度を小さくして放電を回避することができる。逆に、電極783に与える電圧を高くすると、対物レンズ78の軸上色収差係数を小さくすることができるので、第1対物レンズ78及び第2対物レンズ81による軸上色収差を収差補正レンズ82の負の軸上色収差によって打ち消すことが容易になる。また、電極781に与える電圧を例えば±100V程度変化させることにより、試料面の凹凸によるフォーカスのズレをダイナミックに補正することができる。
【0049】
第2対物レンズ81も複数の(図3では3枚の)電極を持ち、中央の電極に与える電圧を調整することにより、一次電子線の結像位置86を変えることなく、二次電子像の倍率を調整することができる。この結果を用いて、第1対物レンズ78と第2対物レンズ81の球面収差補正係数或いは軸上色収差補正係数を微調整することもできる。
【0050】
ここで、図4A〜図4Eを用いて、これまで説明した第1〜第3の実施の形態に係る電子線装置においてビーム調整のために用いるマークについて説明する。図4Aは3種類の径の異なる穴を有するマーカー板101を示している。すなわち、マーカー板101には、径が最小の小マーカー穴102、径が中間の中マーカー穴103及び径が最大の大マーカー穴104がそれぞれ行方向に並ぶように形成されており、これらのマーカー穴以外の領域は二次電子放出率の大きい導電性材料で両面ともコーティングされている。図4Bはマーカー板101の断面形状を示している。
【0051】
このマーカー板101を試料Sと同じ高さの位置に置き、一次電子線を照射して検出器Dによってマーカー穴102、103又は104の二次元像を検出する。このとき検出される像の例を図4C、図4D及び図4Eに示す。電子銃Gから試料Sを経て検出器Dに至る電子線の光路における補正レンズの軸合わせが適切でない場合には、図4Cに示すようなコマ収差が観察されるので、図4Dに示すような円形の像を得るよう軸合わせを行う必要がある。実際には、図4Eに示すように、マーカー穴102は小さいので、コントラストが極めて低い像となり、収差が検出し難い。一方、マーカー穴104の像はコントラストが大きく且つはっきりしてはいるが、マーカー穴が大きいことによって像のボケも大きくなり、微妙な収差を見逃す危険性も生じ得る。そこで、最適な穴径を選択すればよい。または、別のマーカーとして、図4Fに示すように、マーカー板101を二次電子放出率の小さい薄膜で作り、マーカー穴102〜104の代わりに、重金属のドットによるマーカー105をSi薄膜上に形成したものを用いるのもよい。
【0052】
以上、本発明に係る電子線装置の若干の実施の形態を説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形及び修正が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上、本発明に係る電子線装置の若干の実施の形態を詳述したところから理解されるよおり、本発明は、二次電子光学系における軸上色収差又は球面収差を補正するので、一次電子線相互間の距離を小さくしても十分に複数の二次電子線を検出することができ、したがって、多くの数の一次電子線を光軸の近傍に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る電子線装置の第1の実施の形態を概略的に示す図である。
【図1A】図1に示す収差補正レンズの縦断面図であり、図1Bの線X−Xに沿う断面を示すとともに、これに対応させて図1の収差補正レンズにおける磁界強度及び電界強度の分布を示すグラフである。
【図1B】図1に示す収差補正レンズの横断面図であり、図1Aの線Y−Yに沿う断面を示す。
【図2】本発明に係る電子線装置の第2の実施の形態を概略的に示す図である。
【図2A】図2に示すNA開口部材の平面図である。
【図2B】図2に示す検出器のCCD検出器の配列を示す図である。
【図3】本発明に係る電子線装置の第3の実施の形態を概略的に示す図である。
【図4A】本発明に係る電子線装置で使用可能なマーカーの平面図である。
【図4B】図4Aにおける線Z−Zに沿う断面図である。
【図4C】軸合わせが不適切な場合のマーカー穴の像を示す図である。
【図4D】軸合わせが適切な場合のマーカー穴の像を示す図である。
【図4E】実際のマーカー穴の像を示す図である。
【図4F】代替のマーカーの断面図である。
【符号の説明】
【0055】
G:電子銃、 A、B、C:電子光学系、 D:検出器、E:制御系、 S:試料、
1:マルチ開口部材、 2:コンデンサ・レンズ、 3、4:縮小レンズ、 5:NA開口部材、 6:収差補正レンズ、 7:第1走査偏向器、 8:プリ偏向器、 9:物点、 11:像点、 12、ビーム分離器、 13:第2走査偏向器、 14:軸対称電極、 15:第1MOL偏向器、 16:第2MOL偏向器、 17:対物レンズ、 19:二次電子像形成レンズ、 20:収差補正レンズ、 21、22:拡大レンズ、
30:ウィーン・フィルタ、 31:パーマロイ・コア、 32:ボア、 331〜3312:磁極及び電極、 341〜3412:絶縁スペーサ、
41:軸合わせ偏向器、 42:コンデンサ・レンズ、 43:軸合わせ偏向器、 44:成形開口部材、 45:コンデンサ・レンズ、 46:軸合わせ偏向器、 47:成形レンズ、 48:一次電子線軌道調整用偏向器、 49:ビーム分離器、 50:NA開口部材、 51:対物レンズ、 52:静電偏向器、 53:収差補正レンズ、 54:補助レンズ、 55、57:拡大レンズ、 56:補助レンズ群、 58:偏向器、
501:正方形の穴、 502:リング状の穴、 62〜65:CCD装置、
71、72:コンデンサ・レンズ、 73:開口部材、 74、75:レンズ、 76:偏向器、 77:ビーム分離器、 78:第1対物レンズ、 79:ビーム軌道修正偏向器、 80:NA開口部材、 81:第2対物レンズ、 82:収差補正レンズ、 83、85:拡大レンズ、 84:補助レンズ群、 90:CPU、 91:制御電源、
101:マーカー板: 101:小マーカー穴、 102:中マーカー穴、 103:大マーカー穴、 105:重金属のドット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出される複数の二次電子線を写像投影光学系を介して検出する電子線装置であって、
前記写像投影光学系が軸上色収差又は球面収差補正レンズを備えることを特徴とする電子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子線装置に使用するための軸上色収差又は球面収差補正レンズであって、多極子電極と多極子磁極とを有し、且つ、対向する前記電極間のボア径が光軸に沿って連続的に増減する区域を有する非分散のウィーン・フィルタであることを特徴とする軸上色収差補正レンズ。
【請求項3】
複数の一次電子線によって第1電子光学系を介して試料を走査し、該試料から放出された複数の二次電子線を第2電子光学系を介して検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記第1電子光学系が第1軸上色収差補正レンズを備え、前記第2電子光学系が第2軸上色収差補正レンズを備え、
前記第1軸上色収差補正レンズと前記第2軸上色収差補正レンズとが、偶数の電磁極を有するウィーン・フィルタである
ことを特徴とする電子線装置。
【請求項4】
複数の一次電子線によって試料を照射するための電子光学系と、前記試料から放出された複数の二次電子線を集束する対物レンズ及び集束された前記二次電子線の軸上色収差を補正する収差補正レンズを有し、軸上色収差補正された前記二次電子線を検出器に結像させるための電子光学系とを備える電子線装置であって、
前記対物レンズと前記収差補正レンズとの間に配置されたNA開口部材を備えることを特徴とする電子線装置。
【請求項5】
前記対物レンズが、円筒状電極と円板状電極板とからなる電極を備えることを特徴とする、請求項8に記載の電子線装置。
【請求項6】
一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出された二次電子線を検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記一次電子線が、第1対物レンズによって集束されて試料を照射し、
前記二次電子線が前記第1対物レンズ及び第2対物レンズによって集束され、前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとによって集束された前記二次電子線の軸上色収差を収差補正レンズによって補正し、軸上色収差補正された前記二次電子線を前記検出器に結像させ、
前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとの間に、前記一次電子線と前記二次電子線とを分離するためのビーム分離器が配置されてなる
ことを特徴とする電子線装置。
【請求項7】
前記第1対物レンズが、壁面の厚さが前記試料へ向かって連続的に減少する円錐台状電極板を備えることを特徴とする、請求項6に記載の電子線装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の電子線装置において軸上色収差と球面収差のいずれかを補正するときに使用されるマーカー板であって、
二次電子線放出係数の大きい平滑な面に径の異なる複数の穴又はドットが形成されてなることを特徴とするマーカー板。
【請求項1】
複数の一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出される複数の二次電子線を写像投影光学系を介して検出する電子線装置であって、
前記写像投影光学系が軸上色収差又は球面収差補正レンズを備えることを特徴とする電子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子線装置に使用するための軸上色収差又は球面収差補正レンズであって、多極子電極と多極子磁極とを有し、且つ、対向する前記電極間のボア径が光軸に沿って連続的に増減する区域を有する非分散のウィーン・フィルタであることを特徴とする軸上色収差補正レンズ。
【請求項3】
複数の一次電子線によって第1電子光学系を介して試料を走査し、該試料から放出された複数の二次電子線を第2電子光学系を介して検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記第1電子光学系が第1軸上色収差補正レンズを備え、前記第2電子光学系が第2軸上色収差補正レンズを備え、
前記第1軸上色収差補正レンズと前記第2軸上色収差補正レンズとが、偶数の電磁極を有するウィーン・フィルタである
ことを特徴とする電子線装置。
【請求項4】
複数の一次電子線によって試料を照射するための電子光学系と、前記試料から放出された複数の二次電子線を集束する対物レンズ及び集束された前記二次電子線の軸上色収差を補正する収差補正レンズを有し、軸上色収差補正された前記二次電子線を検出器に結像させるための電子光学系とを備える電子線装置であって、
前記対物レンズと前記収差補正レンズとの間に配置されたNA開口部材を備えることを特徴とする電子線装置。
【請求項5】
前記対物レンズが、円筒状電極と円板状電極板とからなる電極を備えることを特徴とする、請求項8に記載の電子線装置。
【請求項6】
一次電子線によって試料を走査し、該試料から放出された二次電子線を検出器に結像させて前記試料の像を検出する電子線装置であって、
前記一次電子線が、第1対物レンズによって集束されて試料を照射し、
前記二次電子線が前記第1対物レンズ及び第2対物レンズによって集束され、前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとによって集束された前記二次電子線の軸上色収差を収差補正レンズによって補正し、軸上色収差補正された前記二次電子線を前記検出器に結像させ、
前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとの間に、前記一次電子線と前記二次電子線とを分離するためのビーム分離器が配置されてなる
ことを特徴とする電子線装置。
【請求項7】
前記第1対物レンズが、壁面の厚さが前記試料へ向かって連続的に減少する円錐台状電極板を備えることを特徴とする、請求項6に記載の電子線装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の電子線装置において軸上色収差と球面収差のいずれかを補正するときに使用されるマーカー板であって、
二次電子線放出係数の大きい平滑な面に径の異なる複数の穴又はドットが形成されてなることを特徴とするマーカー板。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【公開番号】特開2007−35386(P2007−35386A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215234(P2005−215234)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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