電子負荷装置
【課題】オーディオパワーアンプの駆動能力試験に用い、負荷インピーダンスと位相とを独立して設定できる電子負荷装置を提供する。
【解決手段】電子負荷装置は、被測定用アンプPの出力電圧がその一対の端子間に入力される入力端子L1、G1と、複素インピーダンスの大きさを設定する可変利得アンプ回路5と、複素インピーダンスの位相角を設定するための位相シフト回路3と、入力端子L1、G1の一対の端子間の電流が流れる経路上に、被測定用アンプPの出力電圧と、出力電圧の位相を位相シフト回路3で設定された位相角だけ偏移させ、出力電圧の振幅を可変利得アンプ回路5で設定された大きさに応じた所定の利得で増幅した電圧との差電圧を、被測定用アンプPの出力電圧に対して逆起電力となる電圧発生手段と、被測定用アンプPの出力電圧と電圧発生手段で発生される差電圧とにり、端子間に流れる電流の値を調整するための抵抗素子Rとを備える。
【解決手段】電子負荷装置は、被測定用アンプPの出力電圧がその一対の端子間に入力される入力端子L1、G1と、複素インピーダンスの大きさを設定する可変利得アンプ回路5と、複素インピーダンスの位相角を設定するための位相シフト回路3と、入力端子L1、G1の一対の端子間の電流が流れる経路上に、被測定用アンプPの出力電圧と、出力電圧の位相を位相シフト回路3で設定された位相角だけ偏移させ、出力電圧の振幅を可変利得アンプ回路5で設定された大きさに応じた所定の利得で増幅した電圧との差電圧を、被測定用アンプPの出力電圧に対して逆起電力となる電圧発生手段と、被測定用アンプPの出力電圧と電圧発生手段で発生される差電圧とにり、端子間に流れる電流の値を調整するための抵抗素子Rとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばオーディオパワーアンプ等の被測定用アンプの出力評価に用いられる電子負荷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオパワーアンプの出力特性試験の一つとして駆動能力試験が提案されている。この駆動能力試験は、オーディオパワーアンプの出力能力及び余裕度等を評価するために用いられるものであり、通常、オーディオパワーアンプの負荷としてスピーカが接続される。
【0003】
オーディオパワーアンプにとって負荷となるスピーカは、その逆起電力あるいはスピーカ内部に設けられるマルチウェイ用フィルターネットワークの存在等により一般に複素インピーダンスとして取り扱われる。また、スピーカによっては、オーディオパワーアンプに入力されるオーディオ信号の周波数に対して位相が偏移し、その位相の偏移が例えば60°にも達するものもある。
【0004】
したがって、上記駆動能力試験を行ってオーディオパワーアンプの特性を評価する場合、従来から採用されている純抵抗負荷のみによる特性評価だけでは不十分であり、位相偏移のある負荷による特性評価の必要性が要請されている。
【0005】
駆動能力試験における測定法の一つとして、インピーダンスの絶対値が一定で位相のみが変化する複素インピーダンスを有する負荷を用意し、それをオーディオパワーアンプに接続して行うものがある。
【0006】
この駆動能力試験では、負荷の位相を−60°から+60°まで変化させ、それぞれの位相においてオーディオパワーアンプが駆動できる最大出力電圧がプロットされる。より具体的には、例えば公称インピーダンスが4Ω、6Ω、8Ωの負荷を用意し、各負荷をオーディオパワーアンプに順番に接続し、各負荷に対して位相を20°ごとに変化させ、各位相における出力電圧がそれぞれ測定される。
【0007】
図15は、このような駆動能力試験におけるオーディオパワーアンプの出力能力結果の一例を示す図である。この図においては、一般には各プロット点において各出力電圧が高いとそれだけオーディオパワーアンプに余裕度があることを示す。
【0008】
図15に示す、オーディオパワーアンプの出力能力結果によれば、公称インピーダンスが小さいほど、あるいは位相偏移が大きくなるほど、出力電圧(太線の格子点)が若干低下しているが、オーディオパワーアンプによっては、純抵抗負荷時の最大出力電圧に対して、位相偏移時の最大出力電圧が急激に低下するものがあり、このようなオーディオパワーアンプでは、出力素子(例えばパワートランジスタ)の破壊を避けるため保護回路を差動させるものがあり、そのようなオーディオパワーアンプでは純抵抗負荷時に比べて位相偏移負荷時の最大出力電圧が急激に低下することになる。
【0009】
上記の駆動能力試験では、純抵抗負荷が接続されるため、負荷(スピーカ)のインピーダンスの絶対値は変化することがないので、オーディオパワーアンプに流れる最大電流は各位相において同じであり、また電源から供給される電力も同じである。これに対し、位相が変化して例えば力率が低下すると、位相偏移の増加に応じて負荷(スピーカ)で消費する電力は減少していく。したがって、その電力の差分はオーディオパワーアンプで消費されることになり、オーディオパワーアンプの出力素子の負担が増大することになる。
【0010】
図16は、一般的なB級SEPP(Single Ended Push-Pull)型出力のオーディオパワーアンプにおける出力素子(例えばパワートランジスタ)の負荷線を示す図であり、(a)は一方のトランジスタの負荷線、(b)は他方のトランジスタの負荷線である。これらの図では、横軸はコレクタ−エミッタ電圧VCE、縦軸はコレクタ電流Icであり、負荷の位相φをパラメータとして4種類の負荷線を描いている。また、Vccは、出力素子の電源電圧であり、Zは負荷インピーダンス(純抵抗の場合を含む)である。
【0011】
同図(a)に示すように、純抵抗負荷(位相φ=0°)の場合の負荷線は、(0,+Vcc/|Z|)と(Vcc,0)を結んだ右下がりの直線となるが、負荷が複素インピーダンス(位相φ≠0°)の場合は、図16(a),(b)を組み合わせると、右下がりの楕円形状となり、位相φの増大に応じて円形状に近づき、位相φが90°の純リアクタンスの場合は、負荷線は円形となる。
【0012】
このように、負荷が複素インピーダンスでその位相φが増大すると、図16に示すようにトランジスタに加わる電圧が大きい状態でかつ大きなコレクタ電流Icを流す必要があるため、出力素子が例えばバイポーラトランジスタである場合、2次降伏によってバイポーラトランジスタが破壊する危険性が増大する。すなわち、トランジスタの瞬時損失は、コレクタ−エミッタ電圧VCEとコレクタ電流Icとの積で表すことができるので、コレクタ−エミッタ電圧VCEが大きく、かつコレクタ電流Icが大きいと瞬時損失は大きくなる。つまり、負荷線が図16(a)の右上の領域(図16(b)では左下の領域)に向かうほど瞬時損失は大きくなる。そのため、負荷が複素インピーダンスの場合、オーディオパワーアンプにとっては厳しい負荷条件となる。したがって、複素インピーダンスを変化させて出力電圧の余裕度を測定するオーディオパワーアンプの駆動能力試験が重要なものとなってくる。
【0013】
上記の駆動能力試験を実際に行う場合、一般に図17に示されるように遅れ力率用として抵抗とコイルとが直列接続された試験用負荷(図17(a)参照)、進み力率用として抵抗とコンデンサとが直列接続された試験用負荷(図17(b)参照)がそれぞれ用いられる。
【0014】
遅れ力率用の試験用負荷のインピーダンスZは、式1で表すことができる。
【数1】
【0015】
また、遅れ力率用の試験用負荷のインピーダンスZの絶対値及び位相角は、式2及び式3で表すことができる。
【数2】
【数3】
【0016】
遅れ力率用の試験用負荷の場合、インピーダンスZの絶対値及び位相角は、式2及び式3で示されるように、いずれも角周波数ω(=2πf)、すなわち周波数fの関数となっている。
【0017】
一方、進み力率用の試験用負荷のインピーダンスZは、式4で表すことができる。
【数4】
【0018】
また、進み力率用の試験用負荷のインピーダンスZの絶対値及び位相角は、式5及び式6で表すことができる。
【数5】
【数6】
【0019】
進み力率用の試験用負荷の場合も、インピーダンスZの絶対値及びその位相角は、式5及び式6で示されるように、いずれも角周波数ω(=2πf)、すなわち周波数fの関数となっている。したがって、図17に示す試験用負荷は、特定の一つの周波数に限られることになる。
【0020】
所望の一つの周波数と所望のインピーダンス(絶対値)とを設定した上で、位相を−60°から+60°まで10°ステップで変化させて、上記駆動能力試験を行おうとする場合、位相0°のときの純抵抗負荷としての試験用負荷の他に、抵抗とコイルとの組み合わせで位相の異なる試験用負荷が6種類、抵抗とコンデンサとの組み合わせで位相の異なる試験用負荷が6種類といった計13種類の試験用負荷を用意する必要がある。
【0021】
また、別の周波数でも駆動能力試験を行う場合は、さらに12種類の試験用負荷が必要である。さらに、別のインピーダンスで駆動能力試験をする場合は、さらにまた13種類の試験用負荷が必要となってしまう。
【0022】
そこで、図17のような受動素子のみによって負荷インピーダンスを模擬するのではなく、図18に示すような能動素子で構成される電子負荷装置50を用いることによって、種々の負荷インピーダンスを模擬することが考えられる。
【0023】
図18によると、この電子負荷装置50は、抵抗素子Rと、位相シフト回路51と、可変利得アンプ回路52とによって構成されており、電子負荷装置50の入力端子L1,G1は、被測定用アンプPの信号出力端子Op,グランド端子Gpにそれぞれ接続される。
【0024】
この電子負荷装置50では、位相シフト回路51において出力電圧V0に対して位相が偏移され、その出力(V0(φ))が可変利得アンプ回路52に与えられる。可変利得アンプ回路52では利得Aで出力電圧V0(φ)が増幅され、その出力(AV0(φ))が抵抗素子Rに与えられる。
【0025】
そのため、抵抗素子Rに流れる負荷電流I0は式7で表される。
【0026】
【数7】
【0027】
ここで、V0=Esin(ωt),AV0(φ)=AEsin(ωt+φ)とすると、式7の右辺の分子である「V0−AV0(φ)」は式8で表される。
【0028】
【数8】
【0029】
ただし、
【数9】
である。したがって、負荷電流I0は、次式で表される。
【0030】
【数10】
【0031】
上式より、等価負荷インピーダンスの絶対値|Z|とその位相角arg(Z)とは、式11及び式12で表される。
【0032】
【数11】
【数12】
【0033】
式11及び式12からわかるように、等価負荷インピーダンスの絶対値|Z|及び位相角arg(Z)は、その両方ともが位相シフト回路51での位相φと可変利得アンプ回路52の利得Aとの2つの関数が含まれている。そのため、図18に示す電子負荷装置50では、利得A及び位相φをそれぞれ独立して設定できる構成ではあるが、これらを独立に設定しても等価負荷インピーダンスの絶対値|Z|及び位相角arg(Z)をそれぞれと独立して設定することができないといった問題点がある。
【0034】
なお、オーディオパワーアンプの駆動能力試験における電子負荷装置ではないが、例えば電源装置等の電子負荷装置としては、以下に示す特許文献1,2が挙げられる。
【0035】
【特許文献1】特許第3183559号公報
【特許文献1】特許第3753478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、オーディオパワーアンプの駆動能力試験を容易に行うことができ、負荷インピーダンスと位相とを独立して設定することのできる電子負荷装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0038】
本願発明によって提供される電子負荷装置は、被測定用アンプの出力評価をするための所定の複素インピーダンスを有する複数の負荷を各複素インピーダンスの大きさと位相角によって設定することができる電子負荷装置であって、一対の端子からなり、前記被測定用アンプの出力電圧がその一対の端子間に入力される入力端子と、ユーザが前記複素インピーダンスの大きさを設定するための第1の操作手段と、前記ユーザが前記複素インピーダンスの位相角を設定するための第2の操作手段と、前記入力端子の一対の端子間の電流が流れる経路上に、前記入力端子に入力された前記被測定用アンプの出力電圧と当該出力電圧の位相を前記第2の操作手段で設定された位相角だけ偏移させ、かつ、当該出力電圧の振幅を前記第2の操作手段で設定された大きさに応じた所定の利得で増幅した電圧との差電圧を、前記被測定用アンプの出力電圧に対して逆起電力となる方向に発生させる電圧発生手段と、前記入力端子から入力される前記被測定用アンプの出力電圧と前記電圧発生手段で発生される差電圧とによって前記入力端子の一対の端子間に流れる電流の値を調整するための抵抗素子と、を備え、前記被測定用アンプに対して、前記抵抗素子に流れる電流と前記被測定用アンプの出力電圧とで決定されるインピーダンスが前記負荷インピーダンスとして動作することを特徴としている(請求項1)。
【0039】
好ましい実施形態によれば、請求項1に記載の電子負荷装置において、前記入力端子は、一方の端子に前記被測定用アンプの不平衡型の出力電圧が入力され、他方の端子がグランドに接地される不平衡型の入力端子であり、前記電圧発生手段は、前記被測定用アンプの出力電圧を所定の減衰率で減衰する減衰手段と、前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記減衰手段によって減衰された出力電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、前記減衰手段からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との差電圧を演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果を前記減衰手段の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する固定利得増幅手段と、を備え、前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記固定利得増幅手段の出力端に接続されている(請求項2)。
【0040】
他の好ましい実施形態によれば、請求項1に記載の電子負荷装置において、前記入力端子は、前記被測定用アンプの平衡型の出力電圧が入力される平衡型の入力端子であり、前記電圧発生手段は、前記入力端子の一方の端子に入力される前記被測定用アンプの一方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第1の減衰回路と前記入力端子の他方の端子に入力される前記被測定用アンプの他方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第2の減衰回路とを有する減衰手段と、前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記前記第1の減衰回路によって減衰された出力電圧と前記第2の減衰回路によって減衰された出力電圧との差電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、前記第1の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第1の差電圧を演算する第1の演算回路と前記第2の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第2の差電圧を演算する第2の演算回路とを有する演算手段と、前記第1の演算回路による演算結果を前記第1の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第1の固定利得増幅回路と前記第2の演算回路による演算結果を前記第2の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第2の固定利得増幅回路とを有する固定利得増幅手段と、を備え、前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記第1の固定利得増幅回路の出力端に接続された第1の抵抗素子と、一端側が前記入力素子の他方の端子に接続され、他端側が前記第2の固定利得増幅回路の出力端に接続された第2の抵抗素子とで構成される(請求項3)。
【0041】
他の好ましい実施形態によれば、本願発明の電子負荷装置において、前記位相シフト調整手段及び前記可変利得調整手段は、DSP(Digital Signal Processor)によって構成されるとよい(請求項4)。
【0042】
他の好ましい実施形態によれば、本願発明の電子負荷装置において、前記固定利得増幅手段は、ディジタルアンプによって構成されるとよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0043】
この発明による電子負荷装置によれば、入力端子に入力される被測定用アンプの出力電圧をV0、測定したい複素インピーダンスZの位相角をφ、測定したい複素インピーダンスZの大きさ(絶対値)|Z|に応じた利得をA、抵抗素子の抵抗値をRとし、出力電圧V0の位相を位相角φだけ偏移させ、かつ、当該出力電圧の振幅を利得Aで増幅した電圧をAV0(φ)とすると、入力端子の一対の端子間の経路上に、V0−AV0(φ)の電圧が被測定用アンプの出力電圧に対して逆起電力となる方向に発生する。
【0044】
従って、入力端子の一対の端子間の経路上の回路は、等価的に抵抗素子の一方端に被測定用アンプの出力電圧V0が印加され、抵抗素子の他方端に電圧(V0−AV0(φ))が印加された回路となるので、入力端子の一対の端子間に流れる電流I0は、I0=(V0−(V0−AV0(φ)))/R=AV0(φ)/Rとなる。そして、電子負荷装置の負荷インピーダンスZ0は、Z0=V0/I0で表すことができるので、負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、|Z|=R/A、その位相角arg(Z)は、arg(Z)=−φとなる。
【0045】
そのため、負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、可変利得Aで決定され、負荷インピーダンスZの位相角は、位相φで決定される。したがって、被測定用アンプの出力特性を評価する試験を行う場合、絶対値と位相とを独立して操作設定することにより所望の負荷インピーダンスを簡単かつ迅速に設定でき、しかも絶対値と位相を順番に変更することにより、測定すべき複数の負荷インピーダンスを順番に設定できるので、従来のように、所望の周波数ごとに抵抗及びコイルあるいは抵抗及びコンデンサを組み合わせた膨大な数の試験用負荷を用意する必要がなく、またそれらをその都度被測定用アンプに接続する手間が省け、上記試験を迅速かつ容易に行うことができる。
【0046】
本願発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0048】
図1は、本願発明の第1実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。この電子負荷装置1は、被測定用のオーディオパワーアンプ(以下、「被測定用アンプ」という。)に接続され、被測定用アンプの駆動能力試験において用いられるものである。第1実施形態に係る電子負荷装置1では、被測定用アンプPが一般的な不平衡(片側接地型)出力を有する被測定用アンプとされている。
【0049】
被測定用アンプPは、例えばオーディオ信号発生源ESを有し、オーディオ信号発生源ESに基づいて出力電圧V0を出力するものである。この出力電圧V0は、被測定用アンプPの出力端子Op−グランド端子Gp間から出力される。
【0050】
電子負荷装置1は、非接地側入力端子L1及びグランド端子G1をそれぞれ有しており、被測定用アンプPの駆動能力試験が行われる場合、被測定用アンプPの出力端子Op及びグランド端子Gpに、非接地側入力端子L1及びグランド端子G1がそれぞれ接続される。
【0051】
電子負荷装置1は、減衰回路2と、位相シフト回路3と、抵抗素子Rと、演算回路4と、可変利得アンプ回路5と、固定利得アンプ回路6とによって概略構成されている。電子負荷装置1の非接地側入力端子L1、グランド端子G1間に入力された出力電圧V0は、減衰回路2及び抵抗素子Rにそれぞれ供給される。
【0052】
減衰回路2は、被測定用アンプPの出力電圧V0を1/K(K≧1)に減衰するためのものである。なお、Kは後述する固定利得アンプ回路6の利得を表す。そのため、仮に固定利得アンプ回路6の利得がK=1の場合、減衰回路2を省略することができる。減衰回路2の出力は、位相シフト回路3及び演算回路4にそれぞれ供給される。
【0053】
位相シフト回路3は、減衰回路2の出力(V0/K)の位相を偏移させるものであり、その偏移量は0°〜φ°の範囲でユーザの操作によって設定される。なお、以下の説明では、位相角φで偏移された出力電圧V0を「V0(φ)」で表すことにする。位相シフト回路3の出力(V0(φ)/K)は、可変利得アンプ回路5に供給される。
【0054】
可変利得アンプ回路5は、位相シフト回路3の出力(V0(φ)/K)を利得Aで増幅するものであり、その利得Aはユーザの操作によって変化させることができる。可変利得アンプ回路5の出力(A×V0(φ)/K)は、演算回路4に供給される。
【0055】
演算回路4は、減衰回路2の出力(V0/K)から可変利得アンプ回路5の出力(A×V0(φ)/K)を減算するものである。演算回路4の出力(V0/K−A×V0(φ)/K)は、固定利得アンプ回路6に供給される。
【0056】
固定利得アンプ回路6は、演算回路4の出力(V0/K−A×V0(φ)/K)を固定の利得Kで増幅するものである。その結果、固定利得アンプ回路6の出力電圧V1は、V1=V0−A×V0(φ)となる。
【0057】
固定利得アンプ回路6の出力端子には、抵抗素子Rを介して電子負荷装置1の非接地側入力端子L1(すなわち被測定用アンプPの出力端子Op)に接続されている。したがって、抵抗素子Rの両端電圧は、被測定用アンプPの出力電圧V0と、固定利得アンプ回路6の出力電圧V1(=V0−AV0(φ))との差電圧(V0−V0+AV0(φ)=AV0(φ))となる。
【0058】
図2は、図1に示す電子負荷装置1の動作原理を説明するための等価回路図である。同図によると、被測定用アンプPは、電圧V0を出力する交流電圧源7を有するものとみなすことができる。また、電子負荷装置1は、抵抗素子Rと、電圧AV0(φ)を出力する交流電圧源8と、逆起電力の電圧V0を出力する交流電圧源9とが直列に接続された構成とみなすことができる。
【0059】
これにより、抵抗素子Rに流れる電流I0は、図2に示すように交流電圧源7の電圧V0と交流電圧源9の電圧V0とがキャンセルされるので、式13に示すように、電圧AV0(φ)を抵抗値Rで除算したものとなる。そのため、抵抗素子Rには、この電流I0が被測定用アンプPの負荷電流として流れることになる。
【0060】
【数13】
なお、式13においてRは抵抗素子Rの抵抗値を示すものとする。
【0061】
ここで、この電子負荷装置1において等価的に表される負荷インピーダンスZ(以下、「等価負荷インピーダンスZ」という。)は、式14に示すように、被測定用アンプPの出力電圧V0を被測定用アンプPの負荷電流I0で除算したものとして表すことができる。また、このI0に式13を代入すれば、等価負荷インピーダンスZは、R/A(φ)で表すことができる。
【0062】
【数14】
【0063】
式14により、式15,16で表されるように、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、抵抗素子Rの大きさと可変利得アンプ回路5の利得Aとで表され、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路3の位相φの負の値で表されることになる。
【数15】
【数16】
【0064】
したがって、抵抗素子Rの抵抗値を適切に選択すれば、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、可変利得アンプ回路5の利得Aで決定することができ、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路3の位相φで決定することができる。
【0065】
このように、この電子負荷装置1によれば、図1に示す構成により被測定用アンプPの駆動能力試験において、等価負荷インピーダンスの絶対値と位相とを独立して操作設定することができる。したがって、被測定用アンプPの駆動能力試験において、従来のように、所望の周波数ごとに抵抗及びコイルあるいは抵抗及びコンデンサを組み合わせた膨大な数の試験用負荷を用意する必要がなく、またそれらをその都度被測定用アンプPに接続する手間が省け、被測定用アンプPの駆動能力試験を広い周波数範囲において迅速かつ容易に行うことができる。
【0066】
また、可変利得アンプ回路5における利得Aや位相シフト回路3における位相φは、後述するように、可変利得アンプ回路5内の可変抵抗器や位相シフト回路3内の可変抵抗器をユーザが調整することにより容易に設定できるため、ユーザが連続的にかつ直接的に負荷インピーダンスや位相を設定することができる。
【0067】
なお、式15に示すように、等価負荷インピーダンス|Z|は|Z|=R/Aであるので、1種類の抵抗素子Rを用い可変利得Aの値を選択することで広範囲なインピーダンス値を設定することができる。この場合、被測定用アンプPにおいて想定される負荷レンジに合わせて抵抗素子Rの値を選ぶようにすれば、可変利得Aの設定範囲を小さくすることができるので、その分、等価負荷インピーダンスの設定精度の向上を図ることができる。
【0068】
図3は、図1に示す電子負荷装置1の詳細回路図である。図3に示すように、図1に示した減衰回路2、演算回路4、可変利得アンプ回路5及び固定利得アンプ回路6は、それぞれオペアンプOP1,OP2とパワーアンプPA1と抵抗素子Ra,Rb,Rd,Reとを用いた周知の回路によって構成される。可変利得アンプ回路5については、オペアンプOP2の入力段の抵抗を可変抵抗器VRとし、この可変抵抗器VRの抵抗値をユーザが調整することより、可変利得アンプ回路5の利得Aが調整される。なお、図3において各抵抗素子の記号Ra,Rb,Rd,Reは、その抵抗素子の抵抗値をも示すものとする。
【0069】
図4は、位相シフト回路3の一例を示す詳細回路図である。また、図5は、位相シフト回路3の他の一例を示す詳細回路図である。図4及び図5に示す位相シフト回路3では、オペアンプOP3、可変抵抗器VR1及びコンデンサC1で構成される1次オールパスフィルターと、オペアンプOP4、可変抵抗器VR2及びコンデンサC2で構成される1次オールパスフィルターとが2段重ねられた構成とされている。ユーザは、図4に示す可変抵抗器VR1,VR2を操作することにより、入力された信号の周波数に対して所望の位相偏移を与えるよう調整を行うことができる。
【0070】
なお、位相シフト回路3は、図4及び図5に示す構成に限定されるものではなく、同様の作用効果を得るものであれば、他の構成を採用してもよい。例えば、使用する周波数レンジごとにコンデンサC1,C2の値を切り換えるようにしてもよい。
【0071】
図6は、本願発明の第2実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。この電子負荷装置1Aは、BTL(Bridged Transformer Less)またはHブリッジ等といった平衡(両側非接触型)出力を有する被測定用アンプP1に対して接続されるものであり、この点で第1実施形態に係る電子負荷装置1と異なる。なお、第2の実施形態の電子負荷装置1Aは、不平衡(片側接地)出力を有する被測定用アンプPに接続して用いることもできる。
【0072】
被測定用アンプP1は、オーディオ信号発生源ESを有し、その両端に所定の回路Z1,Z2が直列接続され、所定回路Z1,Z2の中点がグランドに接地され、これにより平衡型とされている。被測定用アンプP1は、出力端子O+から一方の出力電圧V01を出力し、出力端子O−から他方の出力電圧V02を出力する。
【0073】
電子負荷装置1Aは、入力端子L+,L−をそれぞれ有しており、被測定用アンプP1の駆動能力試験が行われる場合、被測定用アンプP1の出力端子O+,O−に、入力端子L+,L−がそれぞれ接続される。これにより、電子負荷装置1Aの入力端子L+には、出力電圧V01が供給され、入力端子L−には、出力電圧V02が供給される。
【0074】
第2実施形態の電子負荷装置1Aは、被測定用アンプP1の出力が平衡型であるため、それに対応して、図1に示した減衰回路2、抵抗素子R、演算回路4及び固定利得アンプ回路6等が、被測定用アンプP1の一方の出力電圧V01用及び被測定用アンプP1の他方の出力電圧V02用にそれぞれ設けられた構成とされている。
【0075】
図6を参照すると、入力端子L+に入力される出力電圧V01は、第1減衰回路11によって1/Kに減衰されるとともに、第1抵抗素子R1を介して利得Kを有する第1固定利得アンプ回路12に供給される。第1減衰回路11の出力(V01/K)は、第1演算回路13に供給されるとともに第2演算回路14に供給される。
【0076】
一方、入力端子L−に入力される出力電圧V02は、第2減衰回路15によって1/Kに減衰されるとともに、第2抵抗素子R2を介して第2固定利得アンプ回路16に供給される。第2減衰回路15の出力(V02/K)は、第1演算回路13に供給されるとともに第3演算回路17に供給される。
【0077】
第1演算回路13には、第1減衰回路11の出力(V01/K)及び第2減衰回路15の出力(V02/K)が供給され、演算結果として差電圧V3=(V01−V02)/Kが位相シフト回路18に入力される。位相シフト回路18において位相角φで偏移された後、位相シフト回路18の出力V3(φ)は、可変利得アンプ回路19に供給される。可変利得アンプ回路19において利得Aで出力V3(φ)増幅された後、可変利得アンプ回路19の出力AV3(φ)は、第2演算回路14及び第3演算回路17にそれぞれ供給される。
【0078】
第2演算回路14では、第1減衰回路11の出力(V01/K)と可変利得アンプ回路19の出力AV3(φ)の差電圧(V01/K−AV3(φ))が演算され、その演算結果が第1固定利得アンプ回路12に入力される。
【0079】
一方、第3演算回路17では、第2減衰回路15の出力(V02/K)と可変利得アンプ回路19の出力AV3(φ)の差電圧(V02/K−AV3(φ))が演算され、その演算結果が第2固定利得アンプ回路16に入力される。
【0080】
第1及び第2固定利得アンプ回路12,16では、差電圧がそれぞれ固定の利得Kで増幅されるので、第1固定利得アンプ回路12の出力電圧V1は、V1=V01−AV3(φ)となり、第2固定利得アンプ回路15の出力電圧V2は、V2=V02+AV3(φ)となる。
【0081】
第1固定利得アンプ回路12の出力端子は、抵抗素子R1を介して入力端子L+に接続されているので、抵抗素子R1の両端電圧は、被測定用アンプPの出力電圧V01と、第1固定利得アンプ回路12の出力電圧V1との差電圧(V01−V01+AV3(φ)=AV3(φ))となる。同様に、抵抗素子R2の両端電圧は、被測定用アンプPの出力電圧V02と、第2固定利得アンプ回路16の出力電圧V2との差電圧(V02−V02+AV3(φ)=AV3(φ))となる。
【0082】
図7は、図6に示す電子負荷装置1Aの動作原理を説明するための等価回路図である。同図によると、被測定用アンプP1は、電圧V01,V02をそれぞれ出力する交流電圧源21,22を有するものとみなすことができる。また、電子負荷装置1Aは、第1抵抗素子R1と、電圧A[V01−V02](φ)を出力する交流電圧源23と、電圧V01を出力する交流電圧源24と、電圧V02を出力する交流電圧源25と、電圧A[V01−V02](φ)を出力する交流電圧源26と、第1抵抗素子R2とが直列に接続され、交流電圧源24及び交流電圧源25の中点がグランドに接続された構成とみなすことができる。
【0083】
これにより、抵抗素子R1に流れる電流I01は、図7に示すように交流電圧源21の電圧V01と交流電圧源24の電圧V01とがキャンセルされるので、電圧A[V01−V02](φ)を抵抗値R1で除算したものとなる。そのため、抵抗素子R1には、この電流I01が被測定用アンプP1の負荷電流として流れることになる。同様に、抵抗素子R2に流れる電流I02は、電圧A[V01−V02](φ)を抵抗値R2で除算したものとなる。
【0084】
ここで、抵抗素子R1,R2の抵抗値が等しければ、抵抗素子R1,R2に流れる電流I01,I02は等しくなるので、電子負荷装置1Aは、被測定用アンプP1に対してバランス負荷となる。抵抗素子R1,R2に流れる電流I01,I02は、次式で表される。
【0085】
【数17】
なお、(17)式において、Rは抵抗素子R1,R2の抵抗値を示すものとする。
【0086】
ここで、この電子負荷装置1Aにおいて等価的に表される等価負荷インピーダンスZは、式18に示すように、被測定用アンプP1の出力電圧V01,V02を被測定用アンプP1の負荷電流I0(=I01,I02)で除算したものとして表すことができる。また、このI0に式17を代入すれば、等価負荷インピーダンスZは、R/A(φ)で表すことができる。
【数18】
【0087】
式18により、式19,20で表されるように、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、抵抗素子Rの大きさと可変利得アンプ回路5の利得Aとで表され、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路18の位相φの負の値で表されることになる。
【数19】
【数20】
【0088】
そのため、被測定用アンプP1に接続される電子負荷装置1Aでは、抵抗素子R1,R2の抵抗値を適切に選択すれば、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、可変利得アンプ回路19の利得Aで決定することができ、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路18の位相φで決定することができる。
【0089】
このように、この電子負荷装置1Aによれば、被測定用アンプP1が平衡型の場合であっても、等価負荷インピーダンスの絶対値と位相とを独立して操作設定することができる。したがって、被測定用アンプPの駆動能力試験を迅速かつ容易に行うことができる。
【0090】
図8は、図6に示す電子負荷装置1Aの詳細構成図である。図8に示すように、図3に示した電子負荷装置1と同様に、電子負荷装置1Aの第1,第2減衰回路11,15、第1,第2,第3演算回路13,14,17、可変利得アンプ回路19及び第1,第2固定利得アンプ回路12,16は、それぞれオペアンプOP5〜9とパワーアンプPA2,3と抵抗素子Ra,Rb,Rc,Rd,Reとを用いた周知の回路によって構成される。可変利得アンプ回路19については、オペアンプOP6の入力段の抵抗を可変抵抗器VRとし、この可変抵抗器VRの抵抗値をユーザが調整することより、可変利得アンプ回路19の利得Aが調整される。
【0091】
図9は、本願発明の第3実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。この電子負荷装置1Bは、図1に示す位相シフト回路3及び可変利得アンプ回路5における処理を、DSP(Digital Signal Processor)を用いたディジタル信号処理で実現するようにした点で、上記した第1実施形態の電子負荷装置1と異なる。
【0092】
例えば図1に示した位相シフト回路3では、図4及び図5に示したように、アナログ信号を取り扱う1次オールパスフィルターを用いていたが、1次オールパスフィルターを用いた位相シフト処理では、例えば位相計等によって位相を測定しながら調整を行わないと正確な位相測定が困難であるといった欠点がある。
【0093】
そこで、第3実施形態に係る電子負荷装置1Bは、図1の位相シフト回路3における位相シフト処理を、ディジタル信号で処理するように構成したものである。すなわち、図9に示すように、減衰回路2の出力には、ADコンバータ31が接続され、ADコンバータ31の出力には、DSP32が接続され、DSP32の出力には、DAコンバータ33が接続されている。そして、DAコンバータ33の出力には、可変利得アンプ回路5が接続されている。
【0094】
DSP32では、ディジタル信号の遅延処理が容易であり、DSP32内で入力正弦波のゼロクロス周期(サンプル数)を計測することで、信号の半周期(サンプル数)を求めることができる。そのため、所定の位相シフトに相当する遅延時間(遅延サンプル数)を演算することができるので、容易にかつ正確な位相測定を行うことができる。
【0095】
なお、図9に示す電子負荷装置1Bでは、被測定用アンプが不平衡出力の場合に対する構成を記載しているが、被測定用アンプが平衡出力であってもDSPを用いたディジタル信号処理を容易に適用させることができる。例えば図6に示した位相シフト回路18の構成を、図9に示したようなADコンバータ31、DSP32及びDAコンバータ33の構成に置き換えるようにすればよい。
【0096】
図10は、図1に示した被測定用アンプP及び電子負荷装置1の構成において、被測定用アンプPの出力電圧V0、固定利得アンプ回路6の出力電圧V1及び負荷電流I0の位相関係を表したベクトル図である。
【0097】
例えば被測定用アンプPの出力素子(図略)に対して、90°未満の負荷位相(例えば図10のベクトルK1参照)を与えるように、位相シフト回路3の位相φと可変利得アンプ回路5の利得Aを設定すると(この場合、背景技術の欄で説明した図16で示したように、右下がり特性の負荷線が適用される。)、一般に、固定利得アンプ回路6に対しては、90°以上の負荷位相(例えば図10のベクトルK2参照)が与えられることになる。
【0098】
したがって、固定利得アンプ回路6がB級SEPPで構成されているものと仮定するなら、その負荷線は、図11(a),(b)に示すように右上がり特性となり、被測定用アンプPよりもはるかに厳しい負荷条件が与えられることになる。すなわち、固定利得アンプ回路6の出力トランジスタの瞬時損失は、コレクタ−エミッタ電圧VCEとコレクタ電流Icとの積で表わされるので、負荷線が図11(a)の右上の領域(図11(b)では左下の領域)に向かうほど瞬時損失は大きくなる。固定利得アンプ回路6の場合、図11の負荷線は右上がり特性となっていることから、図16に示した出力トランジスタに比べ、瞬時損失が大きくなる傾向が増すことになる。そのため、固定利得アンプ回路6には充分な余裕を有する設計が必要となることから、第4実施形態では、上述のような固定利得アンプ回路6における過大な損失を抑制するため、固定利得アンプ回路6として例えばディジタルアンプを用いるようにしている。
【0099】
図12は、本願発明の第4実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。図12によると、演算回路4の後段には、図1に示した固定利得アンプ回路6に代えて、利得Kを有するディジタルアンプ34が接続されている。ディジタルアンプ34は、例えばパルス幅変調回路35とスイッチングアンプ36とによって構成される。ディジタルアンプ34の後段には、コイルL及びコンデンサCからなるLCフィルターが接続される。このLCフィルターは、ディジタルアンプ34の出力に含まれるスイッチング動作に基づく高周波成分を除去するためのものである。なお、第4実施形態の電子負荷装置1Cでは、上記LCフィルターの存在により、用いられる試験周波数に制限があることになる。
【0100】
この構成によると、ディジタルアンプ34のスイッチングアンプ36の出力素子(バイポーラトランジスタやFETなどのスイッチング素子。図略)は、スイッチング動作を行っているので、スイッチオン時の損失は、出力素子のオン抵抗とそれに流れる電流とで決定され、負荷の位相には無関係となる。したがって、例えば図1に示した固定利得アンプ回路6等の構成要素であるリニアアンプを用いる場合に比べて、出力素子の損失を大幅に低減することができ、装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0101】
図13は、図12に示す電子負荷装置1Cの動作原理を説明するための等価回路図である。抵抗素子Rの後端(コンデンサCとの接続点)における電圧V1は次式で表される。
【0102】
【数21】
【数22】
【数23】
【0103】
ここで、ω0は、LCフィルターのカットオフ周波数、QはLCフィルターの肩特性である。式21より、被測定用アンプPの出力電圧V0と電圧V1との差電圧は、次式で表される。
【数24】
【0104】
式24より、負荷電流I0は、以下に示す式25のように、被測定用アンプPの出力電圧V0に対する電流成分と、位相シフト回路3に相当する交流電圧源8及び可変利得アンプ回路5に相当する交流電圧源9における等価負荷電圧による電流成分との2つの形で表される。
【数25】
【0105】
図14は、式25に示す各電流成分の周波数特性を表した図である。式25及び図14に示す周波数特性によれば、被測定用アンプPの出力電圧V0による電流成分はω0をカットオフとする2次HPF(ハイパスフィルター)特性を有し、交流電圧源8及び交流電圧源9における等価負荷電圧による電流成分はω0をカットオフとする2次LPF(ローパスフィルター)特性を有している。
【0106】
この場合、電子負荷装置として必要なのは後者の電流成分(AV0(φ)による電流成分)であり、本第4実施形態に係る電子負荷装置1Cでは、前者の電流成分(V0による電流成分)の影響が無視できるような低い周波数帯域での試験に制限されることになる。
【0107】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、上記実施形態に示した回路構成は一例であり、同等の機能を有するものであれば、種々の回路を適用することができる。また、本願発明に係る電子負荷装置は、オーディオパワーアンプの駆動能力試験に用いられることを想定しているが、オーディオパワーアンプに限定されるものではなく、一般的なアンプの駆動能力試験においても、複素インピーダンスが実現できる電子負荷装置として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す電子負荷装置の動作原理を説明するための等価回路図である。
【図3】図1に示す電子負荷装置の詳細回路図である。
【図4】位相シフト回路の一例を示す詳細回路図である。
【図5】位相シフト回路の他の一例を示す詳細回路図である。
【図6】第2実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図7】図6に示す電子負荷装置の動作原理を説明するための等価回路図である。
【図8】図6に示す電子負荷装置の詳細構成図である。
【図9】第3実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図10】被測定用アンプの出力電圧、固定利得アンプ回路の出力電圧及び負荷電流の位相関係を表したベクトル図である。
【図11】固定利得アンプ回路の出力素子における負荷線を示す図である。
【図12】第4実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図13】図12に示す電子負荷装置の動作原理を説明するための等価回路図である。
【図14】第4実施形態に係る電子負荷装置における各電流成分の周波数特性を表した図である。
【図15】駆動能力試験におけるオーディオパワーアンプの出力能力結果の一例を示す図である。
【図16】SEPP型出力のオーディオパワーアンプにおける出力素子の負荷線を示す図である。
【図17】試験用負荷の一例であり、(a)は遅れ力率用を示し、(b)は進み力率用を示す。
【図18】従来の電子負荷装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0109】
1,1A,1B,1C 電子負荷装置
2,11,15 減衰回路
3,18 位相シフト回路
4,13,14,17 演算回路
5,19 可変利得アンプ回路
6,12,16 固定利得アンプ回路
7,8,9交流電圧源
32 DSP
34 ディジタルアンプ
OP1〜OP9 オペアンプ
P,P1 オーディオパワーアンプ(被測定用アンプ)
R,R1,R2 抵抗素子
VR,VR1,VR2 可変抵抗器
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばオーディオパワーアンプ等の被測定用アンプの出力評価に用いられる電子負荷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオパワーアンプの出力特性試験の一つとして駆動能力試験が提案されている。この駆動能力試験は、オーディオパワーアンプの出力能力及び余裕度等を評価するために用いられるものであり、通常、オーディオパワーアンプの負荷としてスピーカが接続される。
【0003】
オーディオパワーアンプにとって負荷となるスピーカは、その逆起電力あるいはスピーカ内部に設けられるマルチウェイ用フィルターネットワークの存在等により一般に複素インピーダンスとして取り扱われる。また、スピーカによっては、オーディオパワーアンプに入力されるオーディオ信号の周波数に対して位相が偏移し、その位相の偏移が例えば60°にも達するものもある。
【0004】
したがって、上記駆動能力試験を行ってオーディオパワーアンプの特性を評価する場合、従来から採用されている純抵抗負荷のみによる特性評価だけでは不十分であり、位相偏移のある負荷による特性評価の必要性が要請されている。
【0005】
駆動能力試験における測定法の一つとして、インピーダンスの絶対値が一定で位相のみが変化する複素インピーダンスを有する負荷を用意し、それをオーディオパワーアンプに接続して行うものがある。
【0006】
この駆動能力試験では、負荷の位相を−60°から+60°まで変化させ、それぞれの位相においてオーディオパワーアンプが駆動できる最大出力電圧がプロットされる。より具体的には、例えば公称インピーダンスが4Ω、6Ω、8Ωの負荷を用意し、各負荷をオーディオパワーアンプに順番に接続し、各負荷に対して位相を20°ごとに変化させ、各位相における出力電圧がそれぞれ測定される。
【0007】
図15は、このような駆動能力試験におけるオーディオパワーアンプの出力能力結果の一例を示す図である。この図においては、一般には各プロット点において各出力電圧が高いとそれだけオーディオパワーアンプに余裕度があることを示す。
【0008】
図15に示す、オーディオパワーアンプの出力能力結果によれば、公称インピーダンスが小さいほど、あるいは位相偏移が大きくなるほど、出力電圧(太線の格子点)が若干低下しているが、オーディオパワーアンプによっては、純抵抗負荷時の最大出力電圧に対して、位相偏移時の最大出力電圧が急激に低下するものがあり、このようなオーディオパワーアンプでは、出力素子(例えばパワートランジスタ)の破壊を避けるため保護回路を差動させるものがあり、そのようなオーディオパワーアンプでは純抵抗負荷時に比べて位相偏移負荷時の最大出力電圧が急激に低下することになる。
【0009】
上記の駆動能力試験では、純抵抗負荷が接続されるため、負荷(スピーカ)のインピーダンスの絶対値は変化することがないので、オーディオパワーアンプに流れる最大電流は各位相において同じであり、また電源から供給される電力も同じである。これに対し、位相が変化して例えば力率が低下すると、位相偏移の増加に応じて負荷(スピーカ)で消費する電力は減少していく。したがって、その電力の差分はオーディオパワーアンプで消費されることになり、オーディオパワーアンプの出力素子の負担が増大することになる。
【0010】
図16は、一般的なB級SEPP(Single Ended Push-Pull)型出力のオーディオパワーアンプにおける出力素子(例えばパワートランジスタ)の負荷線を示す図であり、(a)は一方のトランジスタの負荷線、(b)は他方のトランジスタの負荷線である。これらの図では、横軸はコレクタ−エミッタ電圧VCE、縦軸はコレクタ電流Icであり、負荷の位相φをパラメータとして4種類の負荷線を描いている。また、Vccは、出力素子の電源電圧であり、Zは負荷インピーダンス(純抵抗の場合を含む)である。
【0011】
同図(a)に示すように、純抵抗負荷(位相φ=0°)の場合の負荷線は、(0,+Vcc/|Z|)と(Vcc,0)を結んだ右下がりの直線となるが、負荷が複素インピーダンス(位相φ≠0°)の場合は、図16(a),(b)を組み合わせると、右下がりの楕円形状となり、位相φの増大に応じて円形状に近づき、位相φが90°の純リアクタンスの場合は、負荷線は円形となる。
【0012】
このように、負荷が複素インピーダンスでその位相φが増大すると、図16に示すようにトランジスタに加わる電圧が大きい状態でかつ大きなコレクタ電流Icを流す必要があるため、出力素子が例えばバイポーラトランジスタである場合、2次降伏によってバイポーラトランジスタが破壊する危険性が増大する。すなわち、トランジスタの瞬時損失は、コレクタ−エミッタ電圧VCEとコレクタ電流Icとの積で表すことができるので、コレクタ−エミッタ電圧VCEが大きく、かつコレクタ電流Icが大きいと瞬時損失は大きくなる。つまり、負荷線が図16(a)の右上の領域(図16(b)では左下の領域)に向かうほど瞬時損失は大きくなる。そのため、負荷が複素インピーダンスの場合、オーディオパワーアンプにとっては厳しい負荷条件となる。したがって、複素インピーダンスを変化させて出力電圧の余裕度を測定するオーディオパワーアンプの駆動能力試験が重要なものとなってくる。
【0013】
上記の駆動能力試験を実際に行う場合、一般に図17に示されるように遅れ力率用として抵抗とコイルとが直列接続された試験用負荷(図17(a)参照)、進み力率用として抵抗とコンデンサとが直列接続された試験用負荷(図17(b)参照)がそれぞれ用いられる。
【0014】
遅れ力率用の試験用負荷のインピーダンスZは、式1で表すことができる。
【数1】
【0015】
また、遅れ力率用の試験用負荷のインピーダンスZの絶対値及び位相角は、式2及び式3で表すことができる。
【数2】
【数3】
【0016】
遅れ力率用の試験用負荷の場合、インピーダンスZの絶対値及び位相角は、式2及び式3で示されるように、いずれも角周波数ω(=2πf)、すなわち周波数fの関数となっている。
【0017】
一方、進み力率用の試験用負荷のインピーダンスZは、式4で表すことができる。
【数4】
【0018】
また、進み力率用の試験用負荷のインピーダンスZの絶対値及び位相角は、式5及び式6で表すことができる。
【数5】
【数6】
【0019】
進み力率用の試験用負荷の場合も、インピーダンスZの絶対値及びその位相角は、式5及び式6で示されるように、いずれも角周波数ω(=2πf)、すなわち周波数fの関数となっている。したがって、図17に示す試験用負荷は、特定の一つの周波数に限られることになる。
【0020】
所望の一つの周波数と所望のインピーダンス(絶対値)とを設定した上で、位相を−60°から+60°まで10°ステップで変化させて、上記駆動能力試験を行おうとする場合、位相0°のときの純抵抗負荷としての試験用負荷の他に、抵抗とコイルとの組み合わせで位相の異なる試験用負荷が6種類、抵抗とコンデンサとの組み合わせで位相の異なる試験用負荷が6種類といった計13種類の試験用負荷を用意する必要がある。
【0021】
また、別の周波数でも駆動能力試験を行う場合は、さらに12種類の試験用負荷が必要である。さらに、別のインピーダンスで駆動能力試験をする場合は、さらにまた13種類の試験用負荷が必要となってしまう。
【0022】
そこで、図17のような受動素子のみによって負荷インピーダンスを模擬するのではなく、図18に示すような能動素子で構成される電子負荷装置50を用いることによって、種々の負荷インピーダンスを模擬することが考えられる。
【0023】
図18によると、この電子負荷装置50は、抵抗素子Rと、位相シフト回路51と、可変利得アンプ回路52とによって構成されており、電子負荷装置50の入力端子L1,G1は、被測定用アンプPの信号出力端子Op,グランド端子Gpにそれぞれ接続される。
【0024】
この電子負荷装置50では、位相シフト回路51において出力電圧V0に対して位相が偏移され、その出力(V0(φ))が可変利得アンプ回路52に与えられる。可変利得アンプ回路52では利得Aで出力電圧V0(φ)が増幅され、その出力(AV0(φ))が抵抗素子Rに与えられる。
【0025】
そのため、抵抗素子Rに流れる負荷電流I0は式7で表される。
【0026】
【数7】
【0027】
ここで、V0=Esin(ωt),AV0(φ)=AEsin(ωt+φ)とすると、式7の右辺の分子である「V0−AV0(φ)」は式8で表される。
【0028】
【数8】
【0029】
ただし、
【数9】
である。したがって、負荷電流I0は、次式で表される。
【0030】
【数10】
【0031】
上式より、等価負荷インピーダンスの絶対値|Z|とその位相角arg(Z)とは、式11及び式12で表される。
【0032】
【数11】
【数12】
【0033】
式11及び式12からわかるように、等価負荷インピーダンスの絶対値|Z|及び位相角arg(Z)は、その両方ともが位相シフト回路51での位相φと可変利得アンプ回路52の利得Aとの2つの関数が含まれている。そのため、図18に示す電子負荷装置50では、利得A及び位相φをそれぞれ独立して設定できる構成ではあるが、これらを独立に設定しても等価負荷インピーダンスの絶対値|Z|及び位相角arg(Z)をそれぞれと独立して設定することができないといった問題点がある。
【0034】
なお、オーディオパワーアンプの駆動能力試験における電子負荷装置ではないが、例えば電源装置等の電子負荷装置としては、以下に示す特許文献1,2が挙げられる。
【0035】
【特許文献1】特許第3183559号公報
【特許文献1】特許第3753478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、オーディオパワーアンプの駆動能力試験を容易に行うことができ、負荷インピーダンスと位相とを独立して設定することのできる電子負荷装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0038】
本願発明によって提供される電子負荷装置は、被測定用アンプの出力評価をするための所定の複素インピーダンスを有する複数の負荷を各複素インピーダンスの大きさと位相角によって設定することができる電子負荷装置であって、一対の端子からなり、前記被測定用アンプの出力電圧がその一対の端子間に入力される入力端子と、ユーザが前記複素インピーダンスの大きさを設定するための第1の操作手段と、前記ユーザが前記複素インピーダンスの位相角を設定するための第2の操作手段と、前記入力端子の一対の端子間の電流が流れる経路上に、前記入力端子に入力された前記被測定用アンプの出力電圧と当該出力電圧の位相を前記第2の操作手段で設定された位相角だけ偏移させ、かつ、当該出力電圧の振幅を前記第2の操作手段で設定された大きさに応じた所定の利得で増幅した電圧との差電圧を、前記被測定用アンプの出力電圧に対して逆起電力となる方向に発生させる電圧発生手段と、前記入力端子から入力される前記被測定用アンプの出力電圧と前記電圧発生手段で発生される差電圧とによって前記入力端子の一対の端子間に流れる電流の値を調整するための抵抗素子と、を備え、前記被測定用アンプに対して、前記抵抗素子に流れる電流と前記被測定用アンプの出力電圧とで決定されるインピーダンスが前記負荷インピーダンスとして動作することを特徴としている(請求項1)。
【0039】
好ましい実施形態によれば、請求項1に記載の電子負荷装置において、前記入力端子は、一方の端子に前記被測定用アンプの不平衡型の出力電圧が入力され、他方の端子がグランドに接地される不平衡型の入力端子であり、前記電圧発生手段は、前記被測定用アンプの出力電圧を所定の減衰率で減衰する減衰手段と、前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記減衰手段によって減衰された出力電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、前記減衰手段からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との差電圧を演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果を前記減衰手段の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する固定利得増幅手段と、を備え、前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記固定利得増幅手段の出力端に接続されている(請求項2)。
【0040】
他の好ましい実施形態によれば、請求項1に記載の電子負荷装置において、前記入力端子は、前記被測定用アンプの平衡型の出力電圧が入力される平衡型の入力端子であり、前記電圧発生手段は、前記入力端子の一方の端子に入力される前記被測定用アンプの一方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第1の減衰回路と前記入力端子の他方の端子に入力される前記被測定用アンプの他方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第2の減衰回路とを有する減衰手段と、前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記前記第1の減衰回路によって減衰された出力電圧と前記第2の減衰回路によって減衰された出力電圧との差電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、前記第1の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第1の差電圧を演算する第1の演算回路と前記第2の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第2の差電圧を演算する第2の演算回路とを有する演算手段と、前記第1の演算回路による演算結果を前記第1の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第1の固定利得増幅回路と前記第2の演算回路による演算結果を前記第2の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第2の固定利得増幅回路とを有する固定利得増幅手段と、を備え、前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記第1の固定利得増幅回路の出力端に接続された第1の抵抗素子と、一端側が前記入力素子の他方の端子に接続され、他端側が前記第2の固定利得増幅回路の出力端に接続された第2の抵抗素子とで構成される(請求項3)。
【0041】
他の好ましい実施形態によれば、本願発明の電子負荷装置において、前記位相シフト調整手段及び前記可変利得調整手段は、DSP(Digital Signal Processor)によって構成されるとよい(請求項4)。
【0042】
他の好ましい実施形態によれば、本願発明の電子負荷装置において、前記固定利得増幅手段は、ディジタルアンプによって構成されるとよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0043】
この発明による電子負荷装置によれば、入力端子に入力される被測定用アンプの出力電圧をV0、測定したい複素インピーダンスZの位相角をφ、測定したい複素インピーダンスZの大きさ(絶対値)|Z|に応じた利得をA、抵抗素子の抵抗値をRとし、出力電圧V0の位相を位相角φだけ偏移させ、かつ、当該出力電圧の振幅を利得Aで増幅した電圧をAV0(φ)とすると、入力端子の一対の端子間の経路上に、V0−AV0(φ)の電圧が被測定用アンプの出力電圧に対して逆起電力となる方向に発生する。
【0044】
従って、入力端子の一対の端子間の経路上の回路は、等価的に抵抗素子の一方端に被測定用アンプの出力電圧V0が印加され、抵抗素子の他方端に電圧(V0−AV0(φ))が印加された回路となるので、入力端子の一対の端子間に流れる電流I0は、I0=(V0−(V0−AV0(φ)))/R=AV0(φ)/Rとなる。そして、電子負荷装置の負荷インピーダンスZ0は、Z0=V0/I0で表すことができるので、負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、|Z|=R/A、その位相角arg(Z)は、arg(Z)=−φとなる。
【0045】
そのため、負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、可変利得Aで決定され、負荷インピーダンスZの位相角は、位相φで決定される。したがって、被測定用アンプの出力特性を評価する試験を行う場合、絶対値と位相とを独立して操作設定することにより所望の負荷インピーダンスを簡単かつ迅速に設定でき、しかも絶対値と位相を順番に変更することにより、測定すべき複数の負荷インピーダンスを順番に設定できるので、従来のように、所望の周波数ごとに抵抗及びコイルあるいは抵抗及びコンデンサを組み合わせた膨大な数の試験用負荷を用意する必要がなく、またそれらをその都度被測定用アンプに接続する手間が省け、上記試験を迅速かつ容易に行うことができる。
【0046】
本願発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0048】
図1は、本願発明の第1実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。この電子負荷装置1は、被測定用のオーディオパワーアンプ(以下、「被測定用アンプ」という。)に接続され、被測定用アンプの駆動能力試験において用いられるものである。第1実施形態に係る電子負荷装置1では、被測定用アンプPが一般的な不平衡(片側接地型)出力を有する被測定用アンプとされている。
【0049】
被測定用アンプPは、例えばオーディオ信号発生源ESを有し、オーディオ信号発生源ESに基づいて出力電圧V0を出力するものである。この出力電圧V0は、被測定用アンプPの出力端子Op−グランド端子Gp間から出力される。
【0050】
電子負荷装置1は、非接地側入力端子L1及びグランド端子G1をそれぞれ有しており、被測定用アンプPの駆動能力試験が行われる場合、被測定用アンプPの出力端子Op及びグランド端子Gpに、非接地側入力端子L1及びグランド端子G1がそれぞれ接続される。
【0051】
電子負荷装置1は、減衰回路2と、位相シフト回路3と、抵抗素子Rと、演算回路4と、可変利得アンプ回路5と、固定利得アンプ回路6とによって概略構成されている。電子負荷装置1の非接地側入力端子L1、グランド端子G1間に入力された出力電圧V0は、減衰回路2及び抵抗素子Rにそれぞれ供給される。
【0052】
減衰回路2は、被測定用アンプPの出力電圧V0を1/K(K≧1)に減衰するためのものである。なお、Kは後述する固定利得アンプ回路6の利得を表す。そのため、仮に固定利得アンプ回路6の利得がK=1の場合、減衰回路2を省略することができる。減衰回路2の出力は、位相シフト回路3及び演算回路4にそれぞれ供給される。
【0053】
位相シフト回路3は、減衰回路2の出力(V0/K)の位相を偏移させるものであり、その偏移量は0°〜φ°の範囲でユーザの操作によって設定される。なお、以下の説明では、位相角φで偏移された出力電圧V0を「V0(φ)」で表すことにする。位相シフト回路3の出力(V0(φ)/K)は、可変利得アンプ回路5に供給される。
【0054】
可変利得アンプ回路5は、位相シフト回路3の出力(V0(φ)/K)を利得Aで増幅するものであり、その利得Aはユーザの操作によって変化させることができる。可変利得アンプ回路5の出力(A×V0(φ)/K)は、演算回路4に供給される。
【0055】
演算回路4は、減衰回路2の出力(V0/K)から可変利得アンプ回路5の出力(A×V0(φ)/K)を減算するものである。演算回路4の出力(V0/K−A×V0(φ)/K)は、固定利得アンプ回路6に供給される。
【0056】
固定利得アンプ回路6は、演算回路4の出力(V0/K−A×V0(φ)/K)を固定の利得Kで増幅するものである。その結果、固定利得アンプ回路6の出力電圧V1は、V1=V0−A×V0(φ)となる。
【0057】
固定利得アンプ回路6の出力端子には、抵抗素子Rを介して電子負荷装置1の非接地側入力端子L1(すなわち被測定用アンプPの出力端子Op)に接続されている。したがって、抵抗素子Rの両端電圧は、被測定用アンプPの出力電圧V0と、固定利得アンプ回路6の出力電圧V1(=V0−AV0(φ))との差電圧(V0−V0+AV0(φ)=AV0(φ))となる。
【0058】
図2は、図1に示す電子負荷装置1の動作原理を説明するための等価回路図である。同図によると、被測定用アンプPは、電圧V0を出力する交流電圧源7を有するものとみなすことができる。また、電子負荷装置1は、抵抗素子Rと、電圧AV0(φ)を出力する交流電圧源8と、逆起電力の電圧V0を出力する交流電圧源9とが直列に接続された構成とみなすことができる。
【0059】
これにより、抵抗素子Rに流れる電流I0は、図2に示すように交流電圧源7の電圧V0と交流電圧源9の電圧V0とがキャンセルされるので、式13に示すように、電圧AV0(φ)を抵抗値Rで除算したものとなる。そのため、抵抗素子Rには、この電流I0が被測定用アンプPの負荷電流として流れることになる。
【0060】
【数13】
なお、式13においてRは抵抗素子Rの抵抗値を示すものとする。
【0061】
ここで、この電子負荷装置1において等価的に表される負荷インピーダンスZ(以下、「等価負荷インピーダンスZ」という。)は、式14に示すように、被測定用アンプPの出力電圧V0を被測定用アンプPの負荷電流I0で除算したものとして表すことができる。また、このI0に式13を代入すれば、等価負荷インピーダンスZは、R/A(φ)で表すことができる。
【0062】
【数14】
【0063】
式14により、式15,16で表されるように、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、抵抗素子Rの大きさと可変利得アンプ回路5の利得Aとで表され、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路3の位相φの負の値で表されることになる。
【数15】
【数16】
【0064】
したがって、抵抗素子Rの抵抗値を適切に選択すれば、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、可変利得アンプ回路5の利得Aで決定することができ、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路3の位相φで決定することができる。
【0065】
このように、この電子負荷装置1によれば、図1に示す構成により被測定用アンプPの駆動能力試験において、等価負荷インピーダンスの絶対値と位相とを独立して操作設定することができる。したがって、被測定用アンプPの駆動能力試験において、従来のように、所望の周波数ごとに抵抗及びコイルあるいは抵抗及びコンデンサを組み合わせた膨大な数の試験用負荷を用意する必要がなく、またそれらをその都度被測定用アンプPに接続する手間が省け、被測定用アンプPの駆動能力試験を広い周波数範囲において迅速かつ容易に行うことができる。
【0066】
また、可変利得アンプ回路5における利得Aや位相シフト回路3における位相φは、後述するように、可変利得アンプ回路5内の可変抵抗器や位相シフト回路3内の可変抵抗器をユーザが調整することにより容易に設定できるため、ユーザが連続的にかつ直接的に負荷インピーダンスや位相を設定することができる。
【0067】
なお、式15に示すように、等価負荷インピーダンス|Z|は|Z|=R/Aであるので、1種類の抵抗素子Rを用い可変利得Aの値を選択することで広範囲なインピーダンス値を設定することができる。この場合、被測定用アンプPにおいて想定される負荷レンジに合わせて抵抗素子Rの値を選ぶようにすれば、可変利得Aの設定範囲を小さくすることができるので、その分、等価負荷インピーダンスの設定精度の向上を図ることができる。
【0068】
図3は、図1に示す電子負荷装置1の詳細回路図である。図3に示すように、図1に示した減衰回路2、演算回路4、可変利得アンプ回路5及び固定利得アンプ回路6は、それぞれオペアンプOP1,OP2とパワーアンプPA1と抵抗素子Ra,Rb,Rd,Reとを用いた周知の回路によって構成される。可変利得アンプ回路5については、オペアンプOP2の入力段の抵抗を可変抵抗器VRとし、この可変抵抗器VRの抵抗値をユーザが調整することより、可変利得アンプ回路5の利得Aが調整される。なお、図3において各抵抗素子の記号Ra,Rb,Rd,Reは、その抵抗素子の抵抗値をも示すものとする。
【0069】
図4は、位相シフト回路3の一例を示す詳細回路図である。また、図5は、位相シフト回路3の他の一例を示す詳細回路図である。図4及び図5に示す位相シフト回路3では、オペアンプOP3、可変抵抗器VR1及びコンデンサC1で構成される1次オールパスフィルターと、オペアンプOP4、可変抵抗器VR2及びコンデンサC2で構成される1次オールパスフィルターとが2段重ねられた構成とされている。ユーザは、図4に示す可変抵抗器VR1,VR2を操作することにより、入力された信号の周波数に対して所望の位相偏移を与えるよう調整を行うことができる。
【0070】
なお、位相シフト回路3は、図4及び図5に示す構成に限定されるものではなく、同様の作用効果を得るものであれば、他の構成を採用してもよい。例えば、使用する周波数レンジごとにコンデンサC1,C2の値を切り換えるようにしてもよい。
【0071】
図6は、本願発明の第2実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。この電子負荷装置1Aは、BTL(Bridged Transformer Less)またはHブリッジ等といった平衡(両側非接触型)出力を有する被測定用アンプP1に対して接続されるものであり、この点で第1実施形態に係る電子負荷装置1と異なる。なお、第2の実施形態の電子負荷装置1Aは、不平衡(片側接地)出力を有する被測定用アンプPに接続して用いることもできる。
【0072】
被測定用アンプP1は、オーディオ信号発生源ESを有し、その両端に所定の回路Z1,Z2が直列接続され、所定回路Z1,Z2の中点がグランドに接地され、これにより平衡型とされている。被測定用アンプP1は、出力端子O+から一方の出力電圧V01を出力し、出力端子O−から他方の出力電圧V02を出力する。
【0073】
電子負荷装置1Aは、入力端子L+,L−をそれぞれ有しており、被測定用アンプP1の駆動能力試験が行われる場合、被測定用アンプP1の出力端子O+,O−に、入力端子L+,L−がそれぞれ接続される。これにより、電子負荷装置1Aの入力端子L+には、出力電圧V01が供給され、入力端子L−には、出力電圧V02が供給される。
【0074】
第2実施形態の電子負荷装置1Aは、被測定用アンプP1の出力が平衡型であるため、それに対応して、図1に示した減衰回路2、抵抗素子R、演算回路4及び固定利得アンプ回路6等が、被測定用アンプP1の一方の出力電圧V01用及び被測定用アンプP1の他方の出力電圧V02用にそれぞれ設けられた構成とされている。
【0075】
図6を参照すると、入力端子L+に入力される出力電圧V01は、第1減衰回路11によって1/Kに減衰されるとともに、第1抵抗素子R1を介して利得Kを有する第1固定利得アンプ回路12に供給される。第1減衰回路11の出力(V01/K)は、第1演算回路13に供給されるとともに第2演算回路14に供給される。
【0076】
一方、入力端子L−に入力される出力電圧V02は、第2減衰回路15によって1/Kに減衰されるとともに、第2抵抗素子R2を介して第2固定利得アンプ回路16に供給される。第2減衰回路15の出力(V02/K)は、第1演算回路13に供給されるとともに第3演算回路17に供給される。
【0077】
第1演算回路13には、第1減衰回路11の出力(V01/K)及び第2減衰回路15の出力(V02/K)が供給され、演算結果として差電圧V3=(V01−V02)/Kが位相シフト回路18に入力される。位相シフト回路18において位相角φで偏移された後、位相シフト回路18の出力V3(φ)は、可変利得アンプ回路19に供給される。可変利得アンプ回路19において利得Aで出力V3(φ)増幅された後、可変利得アンプ回路19の出力AV3(φ)は、第2演算回路14及び第3演算回路17にそれぞれ供給される。
【0078】
第2演算回路14では、第1減衰回路11の出力(V01/K)と可変利得アンプ回路19の出力AV3(φ)の差電圧(V01/K−AV3(φ))が演算され、その演算結果が第1固定利得アンプ回路12に入力される。
【0079】
一方、第3演算回路17では、第2減衰回路15の出力(V02/K)と可変利得アンプ回路19の出力AV3(φ)の差電圧(V02/K−AV3(φ))が演算され、その演算結果が第2固定利得アンプ回路16に入力される。
【0080】
第1及び第2固定利得アンプ回路12,16では、差電圧がそれぞれ固定の利得Kで増幅されるので、第1固定利得アンプ回路12の出力電圧V1は、V1=V01−AV3(φ)となり、第2固定利得アンプ回路15の出力電圧V2は、V2=V02+AV3(φ)となる。
【0081】
第1固定利得アンプ回路12の出力端子は、抵抗素子R1を介して入力端子L+に接続されているので、抵抗素子R1の両端電圧は、被測定用アンプPの出力電圧V01と、第1固定利得アンプ回路12の出力電圧V1との差電圧(V01−V01+AV3(φ)=AV3(φ))となる。同様に、抵抗素子R2の両端電圧は、被測定用アンプPの出力電圧V02と、第2固定利得アンプ回路16の出力電圧V2との差電圧(V02−V02+AV3(φ)=AV3(φ))となる。
【0082】
図7は、図6に示す電子負荷装置1Aの動作原理を説明するための等価回路図である。同図によると、被測定用アンプP1は、電圧V01,V02をそれぞれ出力する交流電圧源21,22を有するものとみなすことができる。また、電子負荷装置1Aは、第1抵抗素子R1と、電圧A[V01−V02](φ)を出力する交流電圧源23と、電圧V01を出力する交流電圧源24と、電圧V02を出力する交流電圧源25と、電圧A[V01−V02](φ)を出力する交流電圧源26と、第1抵抗素子R2とが直列に接続され、交流電圧源24及び交流電圧源25の中点がグランドに接続された構成とみなすことができる。
【0083】
これにより、抵抗素子R1に流れる電流I01は、図7に示すように交流電圧源21の電圧V01と交流電圧源24の電圧V01とがキャンセルされるので、電圧A[V01−V02](φ)を抵抗値R1で除算したものとなる。そのため、抵抗素子R1には、この電流I01が被測定用アンプP1の負荷電流として流れることになる。同様に、抵抗素子R2に流れる電流I02は、電圧A[V01−V02](φ)を抵抗値R2で除算したものとなる。
【0084】
ここで、抵抗素子R1,R2の抵抗値が等しければ、抵抗素子R1,R2に流れる電流I01,I02は等しくなるので、電子負荷装置1Aは、被測定用アンプP1に対してバランス負荷となる。抵抗素子R1,R2に流れる電流I01,I02は、次式で表される。
【0085】
【数17】
なお、(17)式において、Rは抵抗素子R1,R2の抵抗値を示すものとする。
【0086】
ここで、この電子負荷装置1Aにおいて等価的に表される等価負荷インピーダンスZは、式18に示すように、被測定用アンプP1の出力電圧V01,V02を被測定用アンプP1の負荷電流I0(=I01,I02)で除算したものとして表すことができる。また、このI0に式17を代入すれば、等価負荷インピーダンスZは、R/A(φ)で表すことができる。
【数18】
【0087】
式18により、式19,20で表されるように、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、抵抗素子Rの大きさと可変利得アンプ回路5の利得Aとで表され、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路18の位相φの負の値で表されることになる。
【数19】
【数20】
【0088】
そのため、被測定用アンプP1に接続される電子負荷装置1Aでは、抵抗素子R1,R2の抵抗値を適切に選択すれば、等価負荷インピーダンスZの絶対値|Z|は、可変利得アンプ回路19の利得Aで決定することができ、等価負荷インピーダンスZの位相角は、位相シフト回路18の位相φで決定することができる。
【0089】
このように、この電子負荷装置1Aによれば、被測定用アンプP1が平衡型の場合であっても、等価負荷インピーダンスの絶対値と位相とを独立して操作設定することができる。したがって、被測定用アンプPの駆動能力試験を迅速かつ容易に行うことができる。
【0090】
図8は、図6に示す電子負荷装置1Aの詳細構成図である。図8に示すように、図3に示した電子負荷装置1と同様に、電子負荷装置1Aの第1,第2減衰回路11,15、第1,第2,第3演算回路13,14,17、可変利得アンプ回路19及び第1,第2固定利得アンプ回路12,16は、それぞれオペアンプOP5〜9とパワーアンプPA2,3と抵抗素子Ra,Rb,Rc,Rd,Reとを用いた周知の回路によって構成される。可変利得アンプ回路19については、オペアンプOP6の入力段の抵抗を可変抵抗器VRとし、この可変抵抗器VRの抵抗値をユーザが調整することより、可変利得アンプ回路19の利得Aが調整される。
【0091】
図9は、本願発明の第3実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。この電子負荷装置1Bは、図1に示す位相シフト回路3及び可変利得アンプ回路5における処理を、DSP(Digital Signal Processor)を用いたディジタル信号処理で実現するようにした点で、上記した第1実施形態の電子負荷装置1と異なる。
【0092】
例えば図1に示した位相シフト回路3では、図4及び図5に示したように、アナログ信号を取り扱う1次オールパスフィルターを用いていたが、1次オールパスフィルターを用いた位相シフト処理では、例えば位相計等によって位相を測定しながら調整を行わないと正確な位相測定が困難であるといった欠点がある。
【0093】
そこで、第3実施形態に係る電子負荷装置1Bは、図1の位相シフト回路3における位相シフト処理を、ディジタル信号で処理するように構成したものである。すなわち、図9に示すように、減衰回路2の出力には、ADコンバータ31が接続され、ADコンバータ31の出力には、DSP32が接続され、DSP32の出力には、DAコンバータ33が接続されている。そして、DAコンバータ33の出力には、可変利得アンプ回路5が接続されている。
【0094】
DSP32では、ディジタル信号の遅延処理が容易であり、DSP32内で入力正弦波のゼロクロス周期(サンプル数)を計測することで、信号の半周期(サンプル数)を求めることができる。そのため、所定の位相シフトに相当する遅延時間(遅延サンプル数)を演算することができるので、容易にかつ正確な位相測定を行うことができる。
【0095】
なお、図9に示す電子負荷装置1Bでは、被測定用アンプが不平衡出力の場合に対する構成を記載しているが、被測定用アンプが平衡出力であってもDSPを用いたディジタル信号処理を容易に適用させることができる。例えば図6に示した位相シフト回路18の構成を、図9に示したようなADコンバータ31、DSP32及びDAコンバータ33の構成に置き換えるようにすればよい。
【0096】
図10は、図1に示した被測定用アンプP及び電子負荷装置1の構成において、被測定用アンプPの出力電圧V0、固定利得アンプ回路6の出力電圧V1及び負荷電流I0の位相関係を表したベクトル図である。
【0097】
例えば被測定用アンプPの出力素子(図略)に対して、90°未満の負荷位相(例えば図10のベクトルK1参照)を与えるように、位相シフト回路3の位相φと可変利得アンプ回路5の利得Aを設定すると(この場合、背景技術の欄で説明した図16で示したように、右下がり特性の負荷線が適用される。)、一般に、固定利得アンプ回路6に対しては、90°以上の負荷位相(例えば図10のベクトルK2参照)が与えられることになる。
【0098】
したがって、固定利得アンプ回路6がB級SEPPで構成されているものと仮定するなら、その負荷線は、図11(a),(b)に示すように右上がり特性となり、被測定用アンプPよりもはるかに厳しい負荷条件が与えられることになる。すなわち、固定利得アンプ回路6の出力トランジスタの瞬時損失は、コレクタ−エミッタ電圧VCEとコレクタ電流Icとの積で表わされるので、負荷線が図11(a)の右上の領域(図11(b)では左下の領域)に向かうほど瞬時損失は大きくなる。固定利得アンプ回路6の場合、図11の負荷線は右上がり特性となっていることから、図16に示した出力トランジスタに比べ、瞬時損失が大きくなる傾向が増すことになる。そのため、固定利得アンプ回路6には充分な余裕を有する設計が必要となることから、第4実施形態では、上述のような固定利得アンプ回路6における過大な損失を抑制するため、固定利得アンプ回路6として例えばディジタルアンプを用いるようにしている。
【0099】
図12は、本願発明の第4実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。図12によると、演算回路4の後段には、図1に示した固定利得アンプ回路6に代えて、利得Kを有するディジタルアンプ34が接続されている。ディジタルアンプ34は、例えばパルス幅変調回路35とスイッチングアンプ36とによって構成される。ディジタルアンプ34の後段には、コイルL及びコンデンサCからなるLCフィルターが接続される。このLCフィルターは、ディジタルアンプ34の出力に含まれるスイッチング動作に基づく高周波成分を除去するためのものである。なお、第4実施形態の電子負荷装置1Cでは、上記LCフィルターの存在により、用いられる試験周波数に制限があることになる。
【0100】
この構成によると、ディジタルアンプ34のスイッチングアンプ36の出力素子(バイポーラトランジスタやFETなどのスイッチング素子。図略)は、スイッチング動作を行っているので、スイッチオン時の損失は、出力素子のオン抵抗とそれに流れる電流とで決定され、負荷の位相には無関係となる。したがって、例えば図1に示した固定利得アンプ回路6等の構成要素であるリニアアンプを用いる場合に比べて、出力素子の損失を大幅に低減することができ、装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0101】
図13は、図12に示す電子負荷装置1Cの動作原理を説明するための等価回路図である。抵抗素子Rの後端(コンデンサCとの接続点)における電圧V1は次式で表される。
【0102】
【数21】
【数22】
【数23】
【0103】
ここで、ω0は、LCフィルターのカットオフ周波数、QはLCフィルターの肩特性である。式21より、被測定用アンプPの出力電圧V0と電圧V1との差電圧は、次式で表される。
【数24】
【0104】
式24より、負荷電流I0は、以下に示す式25のように、被測定用アンプPの出力電圧V0に対する電流成分と、位相シフト回路3に相当する交流電圧源8及び可変利得アンプ回路5に相当する交流電圧源9における等価負荷電圧による電流成分との2つの形で表される。
【数25】
【0105】
図14は、式25に示す各電流成分の周波数特性を表した図である。式25及び図14に示す周波数特性によれば、被測定用アンプPの出力電圧V0による電流成分はω0をカットオフとする2次HPF(ハイパスフィルター)特性を有し、交流電圧源8及び交流電圧源9における等価負荷電圧による電流成分はω0をカットオフとする2次LPF(ローパスフィルター)特性を有している。
【0106】
この場合、電子負荷装置として必要なのは後者の電流成分(AV0(φ)による電流成分)であり、本第4実施形態に係る電子負荷装置1Cでは、前者の電流成分(V0による電流成分)の影響が無視できるような低い周波数帯域での試験に制限されることになる。
【0107】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、上記実施形態に示した回路構成は一例であり、同等の機能を有するものであれば、種々の回路を適用することができる。また、本願発明に係る電子負荷装置は、オーディオパワーアンプの駆動能力試験に用いられることを想定しているが、オーディオパワーアンプに限定されるものではなく、一般的なアンプの駆動能力試験においても、複素インピーダンスが実現できる電子負荷装置として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す電子負荷装置の動作原理を説明するための等価回路図である。
【図3】図1に示す電子負荷装置の詳細回路図である。
【図4】位相シフト回路の一例を示す詳細回路図である。
【図5】位相シフト回路の他の一例を示す詳細回路図である。
【図6】第2実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図7】図6に示す電子負荷装置の動作原理を説明するための等価回路図である。
【図8】図6に示す電子負荷装置の詳細構成図である。
【図9】第3実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図10】被測定用アンプの出力電圧、固定利得アンプ回路の出力電圧及び負荷電流の位相関係を表したベクトル図である。
【図11】固定利得アンプ回路の出力素子における負荷線を示す図である。
【図12】第4実施形態に係る電子負荷装置の概略構成図である。
【図13】図12に示す電子負荷装置の動作原理を説明するための等価回路図である。
【図14】第4実施形態に係る電子負荷装置における各電流成分の周波数特性を表した図である。
【図15】駆動能力試験におけるオーディオパワーアンプの出力能力結果の一例を示す図である。
【図16】SEPP型出力のオーディオパワーアンプにおける出力素子の負荷線を示す図である。
【図17】試験用負荷の一例であり、(a)は遅れ力率用を示し、(b)は進み力率用を示す。
【図18】従来の電子負荷装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0109】
1,1A,1B,1C 電子負荷装置
2,11,15 減衰回路
3,18 位相シフト回路
4,13,14,17 演算回路
5,19 可変利得アンプ回路
6,12,16 固定利得アンプ回路
7,8,9交流電圧源
32 DSP
34 ディジタルアンプ
OP1〜OP9 オペアンプ
P,P1 オーディオパワーアンプ(被測定用アンプ)
R,R1,R2 抵抗素子
VR,VR1,VR2 可変抵抗器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定用アンプの出力評価をするための所定の複素インピーダンスを有する複数の負荷を各複素インピーダンスの大きさと位相角によって設定することができる電子負荷装置であって、
一対の端子からなり、前記被測定用アンプの出力電圧がその一対の端子間に入力される入力端子と、
ユーザが前記複素インピーダンスの大きさを設定するための第1の操作手段と、
前記ユーザが前記複素インピーダンスの位相角を設定するための第2の操作手段と、
前記入力端子の一対の端子間の電流が流れる経路上に、前記入力端子に入力された前記被測定用アンプの出力電圧と当該出力電圧の位相を前記第2の操作手段で設定された位相角だけ偏移させ、かつ、当該出力電圧の振幅を前記第1の操作手段で設定された大きさに応じた所定の利得で増幅した電圧との差電圧を、前記被測定用アンプの出力電圧に対して逆起電力となる方向に発生させる電圧発生手段と、
前記入力端子から入力される前記被測定用アンプの出力電圧と前記電圧発生手段で発生される差電圧とによって前記入力端子の一対の端子間に流れる電流の値を調整するための抵抗素子と、を備え、
前記被測定用アンプに対して、前記抵抗素子に流れる電流と前記被測定用アンプの出力電圧とで決定されるインピーダンスが前記負荷インピーダンスとして動作することを特徴とする、電子負荷装置。
【請求項2】
前記入力端子は、一方の端子に前記被測定用アンプの不平衡型の出力電圧が入力され、他方の端子がグランドに接地される不平衡型の入力端子であり、
前記電圧発生手段は、
前記被測定用アンプの出力電圧を所定の減衰率で減衰する減衰手段と、
前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記減衰手段によって減衰された出力電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、
前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、
前記減衰手段からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との差電圧を演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果を前記減衰手段の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する固定利得増幅手段と、を備え、
前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記固定利得増幅手段の出力端に接続されている、請求項1に記載の電子負荷装置。
【請求項3】
前記入力端子は、前記被測定用アンプの平衡型の出力電圧が入力される平衡型の入力端子であり、
前記電圧発生手段は、
前記入力端子の一方の端子に入力される前記被測定用アンプの一方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第1の減衰回路と前記入力端子の他方の端子に入力される前記被測定用アンプの他方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第2の減衰回路とを有する減衰手段と、
前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記前記第1の減衰回路によって減衰された出力電圧と前記第2の減衰回路によって減衰された出力電圧との差電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、
前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、
前記第1の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第1の差電圧を演算する第1の演算回路と前記第2の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第2の差電圧を演算する第2の演算回路とを有する演算手段と、
前記第1の演算回路による演算結果を前記第1の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第1の固定利得増幅回路と前記第2の演算回路による演算結果を前記第2の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第2の固定利得増幅回路とを有する固定利得増幅手段と、を備え、
前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記第1の固定利得増幅回路の出力端に接続された第1の抵抗素子と、一端側が前記入力素子の他方の端子に接続され、他端側が前記第2の固定利得増幅回路の出力端に接続された第2の抵抗素子とで構成される、請求項1に記載の電子負荷装置。
【請求項4】
前記位相シフト調整手段及び前記可変利得調整手段は、DSP(Digital Signal Processor)によって構成される、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子負荷装置。
【請求項5】
前記固定利得増幅手段は、ディジタルアンプによって構成される、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子負荷装置。
【請求項1】
被測定用アンプの出力評価をするための所定の複素インピーダンスを有する複数の負荷を各複素インピーダンスの大きさと位相角によって設定することができる電子負荷装置であって、
一対の端子からなり、前記被測定用アンプの出力電圧がその一対の端子間に入力される入力端子と、
ユーザが前記複素インピーダンスの大きさを設定するための第1の操作手段と、
前記ユーザが前記複素インピーダンスの位相角を設定するための第2の操作手段と、
前記入力端子の一対の端子間の電流が流れる経路上に、前記入力端子に入力された前記被測定用アンプの出力電圧と当該出力電圧の位相を前記第2の操作手段で設定された位相角だけ偏移させ、かつ、当該出力電圧の振幅を前記第1の操作手段で設定された大きさに応じた所定の利得で増幅した電圧との差電圧を、前記被測定用アンプの出力電圧に対して逆起電力となる方向に発生させる電圧発生手段と、
前記入力端子から入力される前記被測定用アンプの出力電圧と前記電圧発生手段で発生される差電圧とによって前記入力端子の一対の端子間に流れる電流の値を調整するための抵抗素子と、を備え、
前記被測定用アンプに対して、前記抵抗素子に流れる電流と前記被測定用アンプの出力電圧とで決定されるインピーダンスが前記負荷インピーダンスとして動作することを特徴とする、電子負荷装置。
【請求項2】
前記入力端子は、一方の端子に前記被測定用アンプの不平衡型の出力電圧が入力され、他方の端子がグランドに接地される不平衡型の入力端子であり、
前記電圧発生手段は、
前記被測定用アンプの出力電圧を所定の減衰率で減衰する減衰手段と、
前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記減衰手段によって減衰された出力電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、
前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、
前記減衰手段からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との差電圧を演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果を前記減衰手段の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する固定利得増幅手段と、を備え、
前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記固定利得増幅手段の出力端に接続されている、請求項1に記載の電子負荷装置。
【請求項3】
前記入力端子は、前記被測定用アンプの平衡型の出力電圧が入力される平衡型の入力端子であり、
前記電圧発生手段は、
前記入力端子の一方の端子に入力される前記被測定用アンプの一方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第1の減衰回路と前記入力端子の他方の端子に入力される前記被測定用アンプの他方の出力電圧を所定の減衰率で減衰する第2の減衰回路とを有する減衰手段と、
前記第2の操作手段で位相角が設定され、前記前記第1の減衰回路によって減衰された出力電圧と前記第2の減衰回路によって減衰された出力電圧との差電圧における位相を前記位相角だけ偏移させる位相シフト調整手段と、
前記第1の操作手段で設定された前記負荷インピーダンスの大きさに応じた利得が設定され、前記位相シフト調整手段によって位相偏移された出力電圧を前記利得で増幅する可変利得調整手段と、
前記第1の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第1の差電圧を演算する第1の演算回路と前記第2の減衰回路からの出力電圧と前記可変利得調整手段からの出力電圧との第2の差電圧を演算する第2の演算回路とを有する演算手段と、
前記第1の演算回路による演算結果を前記第1の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第1の固定利得増幅回路と前記第2の演算回路による演算結果を前記第2の減衰回路の減衰率の逆数と等しい利得で増幅する第2の固定利得増幅回路とを有する固定利得増幅手段と、を備え、
前記抵抗素子は、一端側が前記入力素子の一方の端子に接続され、他端側が前記第1の固定利得増幅回路の出力端に接続された第1の抵抗素子と、一端側が前記入力素子の他方の端子に接続され、他端側が前記第2の固定利得増幅回路の出力端に接続された第2の抵抗素子とで構成される、請求項1に記載の電子負荷装置。
【請求項4】
前記位相シフト調整手段及び前記可変利得調整手段は、DSP(Digital Signal Processor)によって構成される、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子負荷装置。
【請求項5】
前記固定利得増幅手段は、ディジタルアンプによって構成される、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子負荷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−293932(P2009−293932A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144592(P2008−144592)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】
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