説明

電子鍵盤楽器のハンマー装置

【課題】ハンマーの取り付け時に、アクチュエータ部にグリースなどが付着するのを防止でき、それにより、ハンマーの取り付け作業を迅速に行うことができ、その作業性を向上させることができる電子鍵盤楽器のハンマー装置を提供する。
【解決手段】ハンマーサポート4と、このハンマーサポート4に左右方向に並んだ状態にかつ各々が回動自在に支持されるとともに、押鍵された鍵に連動して回動する複数のハンマー5と、を備えた電子鍵盤楽器のハンマー装置であって、ハンマー5の左右の突起45は、ハンマー5のハンマーサポート4への取り付け時において、軸穴24が支点軸部21に係合される際に、支点軸部21の左右の端部付近に設けられた左右のストッパ壁60にそれぞれ当接することにより、アクチュエータ部26が支点軸部21に接するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器に適用され、押鍵された鍵に連動して回動するハンマーを備えた電子鍵盤楽器のハンマー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハンマー装置として、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されたものが知られている。このハンマー装置は、電子ピアノの鍵盤装置に適用されたものであり、金属の押出加工によって成形されたアクションシャーシと、このアクションシャーシに回動自在に支持され、互いに左右方向に並んだ状態で配置された複数のハンマーとを備えている。アクションシャーシは、左右方向に延びる支点軸部を有するハンマー支持部と、このハンマー支持部の上側に設けられ、斜め上前方に延びるスイッチ取付部とを備えている。スイッチ取付部には、鍵の押鍵情報を検出する鍵スイッチが取り付けられている。この鍵スイッチは、プリント基板から成るスイッチ基板と、このスイッチ基板の下面にハンマーごとに設けられ、ゴムスイッチから成る複数のスイッチ本体とで構成されている。
【0003】
一方、ハンマーは、鍵ごとに設けられており、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体と、このハンマー本体の前端部に取り付けられた錘とを有している。ハンマー本体の後端部には、側面形状がC字状に形成された軸穴が形成されており、ハンマーは、この軸穴がアクションシャーシの支点軸部に着脱自在に係合し、アクションシャーシに上下方向に回動自在に支持されている。また、ハンマー本体には、軸穴の直ぐ前側の上部に、押鍵時に鍵スイッチのスイッチ本体を下方から押圧するアクチュエータ部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−262129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成されたハンマー装置では通常、各ハンマーの円滑な回動を確保するために、アクションシャーシの支点軸部の全体に、潤滑剤としてグリースなどが塗布されている。また、メンテナンス時などにハンマーをアクションシャーシから取り外したときには、その後、ハンマーをアクションシャーシに取り付ける必要がある。このハンマーの取り付け時に、ハンマーの軸穴を支点軸部に係合させる際に、ハンマーのアクチュエータ部が支点軸部に接触することがあり、この場合には、支点軸部に塗布されているグリースが、アクチュエータ部に付着するおそれがある。この場合、ハンマーのアクチュエータ部にグリースが付着した状態のまま、ハンマーがアクションシャーシに取り付けられると、次のような問題が生じる。
【0006】
すなわち、電子ピアノの演奏時には、押鍵された鍵に対応するハンマーが上方に回動し、アクチュエータ部がスイッチ本体を押圧した後、離鍵に伴ってハンマーが下方に回動し、元の離鍵状態に復帰する。しかし、ハンマーのアクチュエータ部が、押圧したスイッチ本体から離れる際に、アクチュエータ部に付着しているグリースの粘着力により、ゴム製のスイッチ本体がアクチュエータ部側に若干引っ張られ、両者が離れる瞬間に、雑音が発生することがある。このような雑音は、電子ピアノの演奏を阻害することになる。もちろん、ハンマーのアクションシャーシへの取り付けの際に、アクチュエータ部が支点軸部に接触しないよう、注意しながら取り付けることにより、アクチュエータ部へのグリースの付着を回避することは可能である。しかしこの場合、多数のハンマーを取り付ける必要がある場合には、取り付け作業に手間がかかってしまう。したがって、上記のハンマー装置には、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ハンマーの取り付け時に、アクチュエータ部にグリースなどが付着するのを防止でき、それにより、ハンマーの取り付け作業を迅速に行うことができ、その作業性を向上させることができる電子鍵盤楽器のハンマー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ハンマーサポートと、このハンマーサポートに左右方向に並んだ状態にかつ各々が回動自在に支持されるとともに、押鍵された鍵に連動して回動する複数のハンマーと、を備えた電子鍵盤楽器のハンマー装置であって、ハンマーサポートは、互いに左右方向に所定の第1幅を隔てて配置され、複数のハンマーをそれぞれ仕切る複数の仕切壁と、隣り合う仕切壁の間に左右方向に延びるようにそれぞれ設けられ、複数のハンマーをそれぞれ回動自在に支持する複数の支点軸部と、各支点軸部の左右の端部付近にそれぞれ設けられ、互いに左右方向に第1幅よりも小さい所定の第2幅を隔てて配置された左右のストッパと、を有しており、各ハンマーは、前後方向に延びるアーム状に形成されており、後端部に設けられるとともに第2幅よりも小さい左右方向の幅寸法を有し、支点軸部に回動自在にかつ着脱自在に係合する係合部と、この係合部の前側に設けられ、対応する鍵の押鍵に伴いハンマーが回動することにより、鍵の押鍵情報を検出するための鍵スイッチを押圧するアクチュエータ部と、左右の側面のアクチュエータ部の付近にそれぞれ突設された左右の突出部と、を有し、左右の突出部は、ハンマーのハンマーサポートへの取り付け時において、係合部が支点軸部に係合される際に、左右のストッパにそれぞれ当接することにより、アクチュエータ部が支点軸部に接するのを阻止するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ハンマーをハンマーサポートに取り付ける場合、ハンマーの後端部の係合部を、ハンマーサポートの隣り合う仕切壁の間に設けられた支点軸部に係合させる。この場合、ハンマーサポートの支点軸部の左右の端部付近にはそれぞれ、隣り合う仕切壁間の第1幅よりも小さい第2幅を隔てた左右のストッパが設けられる一方、ハンマーの係合部が第2幅よりも小さい幅寸法を有するので、ハンマーの係合部は、仕切壁間および左右のストッパ間への進入が許容され、支点軸部に係合することが可能である。また、ハンマーの左右の側面には、上記の鍵スイッチを押圧するためのアクチュエータ部の付近にそれぞれ、左右の突出部が設けられており、これらの突出部は、左右のストッパにそれぞれ当接することにより、アクチュエータ部が支点軸部に接するのを阻止する。このように、ハンマーのハンマーサポートへの取り付け時において、ハンマーの係合部をハンマーサポートの支点軸部に係合させる際に、アクチュエータ部が支点軸部に接するのを阻止することができるので、支点軸部に潤滑剤としてグリースなどが塗布されている場合でも、アクチュエータ部にグリースが付着するのを防止することができる。これにより、アクチュエータ部にグリースが付着しないよう注意しながらハンマーを取り付ける場合に比べて、ハンマーの取り付け作業を迅速に行うことができ、その作業性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器のハンマー装置において、各ハンマーの左右の突出部における先端間の左右方向の幅寸法は、第1幅よりも小さくかつ第2幅よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ハンマーの左右の突出部における先端間の左右方向の幅寸法が、隣り合う仕切壁間の第1幅よりも小さいので、両仕切壁間へのハンマーのアクチュエータ部の進入が許容される。また、ハンマーの左右の突出部の上記幅寸法が、左右のストッパ間の第2幅よりも大きいので、両ストッパ間へのハンマーのアクチュエータ部の進入が阻止される。このように、ハンマーサポートの隣り合う仕切壁間および左右のストッパ間の幅寸法、ならびにハンマーの左右の突出部の幅寸法が上記のように設定されることにより、請求項1の前述した作用、効果を、容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態によるハンマー装置を適用した電子ピアノの鍵盤装置を、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
【図2】ハンマーサポートを示す斜視図であり、(a)は、1オクターブ分のハンマーサポートの全体を示し、(b)は、一部を切り欠いた状態を示す。
【図3】ハンマーサポートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】ハンマーを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】ハンマーサポートの仕切壁およびストッパ壁と、ハンマーの突起との左右方向の幅寸法の関係を説明するための説明図である。
【図6】(a)および(b)は、ハンマーをハンマーサポートに取り付ける際に、ハンマーの突起がハンマーサポートのストッパ壁に前方および下方からそれぞれ当接した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるハンマー装置を適用した電子ピアノの鍵盤装置を、離鍵状態において示している。
【0014】
同図に示すように、鍵盤装置1は、電子ピアノの左右方向(図1の表裏方向)に並んだ多数の鍵2(白鍵2aおよび黒鍵2bを各1つのみ図示)と、これらの鍵2を支持する鍵盤シャーシ3と、この鍵盤シャーシ3の後端部(図1の右端部)に連結されたハンマーサポート4と、鍵2ごとに設けられ、押鍵された鍵2に連動して回動する多数のハンマー5(1つのみ図示)と、ハンマー5ごとに設けられ、鍵2の押鍵時にレットオフ感を付与するための多数のレットオフ部品6(1つのみ図示)と、鍵2の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ7などで構成されている。
【0015】
鍵盤シャーシ3は、左右方向に延びる前レール9a、中レール9bおよび後レール9cから成る3本の支持レール9と、前後方向に延びる5本の補強用のリブ10とを、井桁状に組み立てたものであり、棚板(図示せず)上に固定されている。これらの支持レール9およびリブ10はいずれも、プレスによる打抜きおよび折曲げ加工によって所定の形状に形成された鉄板で構成されている。支持レール9の板厚は、その軽量化のためにより薄く(例えば1.0mm)、リブ10の板厚は、補強のためにより厚く(例えば1.6mm)設定されている。
【0016】
前レール9aの下面および中レール9bの上面にはそれぞれ、筬前11および筬中12が固定されている。筬前11および筬中12は、合成樹脂から成る肉厚の板状のものであり、前レール9aおよび中レール9bの全体にわたって左右方向に延びている。筬中12には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のバランスピン13が、左右方向に並んだ状態で立設されている。また、筬前11には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のフロントピン14が、左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0017】
鍵2は、前後方向に延びるとともに矩形状の横断面を有する木製の鍵本体15と、その前部の上面および前面に接着された合成樹脂製の鍵カバー16で構成されている。鍵本体15の中央よりも後ろ側には、バランスピン孔17が形成されており、鍵2は、このバランスピン孔17を介して、バランスピン13に揺動自在に支持されている。また、鍵本体15の前端部には、フロントピン孔18が形成されており、このフロントピン孔18がフロントピン14に係合することによって、鍵2が回動する際の左右方向のぶれが防止される。
【0018】
ハンマーサポート4は、合成樹脂で構成され、例えば1オクターブ分の複数の成形品を互いに連結したものであり、すべてのハンマー5にわたるように左右方向に延びており、鍵盤シャーシ3の後レール9cにねじ止めされている。ハンマーサポート4は、この後レール9c付近から直立するハンマー支持部19と、その上端部から前方に斜め上がりに延びるスイッチ取付部20などで構成されている。ハンマー支持部19の上端部には、各ハンマー5を支持するための水平なピン状の支点軸部21が形成されている。
【0019】
ハンマー5は、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体22と、その左右の側面の前端部に取り付けられた錘板23(1つのみ図示)を有する。ハンマー本体22は合成樹脂で構成され、錘板23は、比重が比較的大きな鉄などの金属材料で構成されている。ハンマー本体22の後端部には、円弧状の軸穴24(係合部)が形成されており、ハンマー5は、この軸穴24が支点軸部21に係合することによって、ハンマーサポート4に回動自在に支持されている。
【0020】
また、ハンマー本体22の下面には、軸穴24のすぐ前側の位置に、キャプスタンスクリュー25が進退自在にねじ込まれている。ハンマー5は、このキャプスタンスクリュー25を介して、鍵2の後端部に載置されている。また、ハンマー本体22の上面の軸穴24とキャプスタンスクリュー25との間の部分は、押鍵時に鍵スイッチ7を作動させるためのアクチュエータ部26になっている。さらに、ハンマー本体22の上面の前後方向の中央には、押鍵時にレットオフ部品6に係合する板状の係合突起27が設けられている。
【0021】
レットオフ部品6は、所定の弾性材料(例えば、スチレン系の熱可塑性エラストマーなど)の成形品で構成されており、ハンマーサポート4のスイッチ取付部20に取り付けられている。レットオフ部品6は、スイッチ取付部20から後ろ下がりに斜めに延びており、その先端部には、くびれ部を介して頭部28が形成されている。この頭部28は、離鍵状態において、ハンマー5の係合突起27に対向している。
【0022】
また、鍵スイッチ7は、プリント基板から成るスイッチ基板29と、このスイッチ基板29の下面に、鍵2ごとに設けられたゴムスイッチから成るスイッチ本体30で構成されている。スイッチ基板29は、その後端部がスイッチ取付部20に差し込まれるとともに、前端部および中央部がスイッチ取付部20にねじ止めされている。また、スイッチ本体30は、離鍵状態において、ハンマー5のアクチュエータ部26に若干の間隔をもって対向している。さらに、スイッチ取付部20の下面の前端部には、ハンマー5の上方への回動を規制する、発泡ウレタンなどで構成されたハンマーストッパ31が設けられている。
【0023】
次に、上記構成の鍵盤装置1の動作について説明する。図1に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、鍵2は、バランスピン13を中心として、同図の反時計方向に回動し、それに伴い、ハンマー5は、キャプスタンスクリュー25を介して押し上げられ、支点軸部21を中心として、上方(同図の時計方向)に回動する。
【0024】
このハンマー5の回動の途中で、その係合突起27が、レットオフ部品6の頭部28に係合し、頭部28を介してレットオフ部品6を圧縮させながら押圧することにより、レットオフ部品6からハンマー5に作用する反力が増大する。ハンマー5の回動が進むと、係合突起27が頭部28から外れることで、レットオフ部品6からの反力が急激に消失する。このようなレットオフ部品6の反力の増大と消失によって、アコースティックピアノに近似したレットオフ感が得られる。
【0025】
その後、ハンマー5がハンマーストッパ31に当接することによって、ハンマー5の上方への回動が終了する。また、ハンマー5の上方への回動の間、そのアクチュエータ部26が鍵スイッチ7のスイッチ本体30を押圧し、鍵スイッチ7をONすることによって、ハンマー5の回動量に応じた鍵2の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。そして、この発音制御装置により、検出された押鍵情報に基づいて、電子ピアノの発音が制御される。
【0026】
その後、鍵2が離鍵されると、鍵2は押鍵時と反対方向に回動し、図1に示す離鍵状態に復帰し、それに伴い、ハンマー5も、下方に回動し、離鍵状態に復帰する。
【0027】
次に、本発明に係るハンマー装置について、詳細に説明する。図2および図3は、1オクターブ分のハンマーサポート4を示している。前述したように、このハンマーサポート4は、合成樹脂の成形品で構成されており、互いに左右方向に所定間隔を隔てた状態で、隣り合うハンマー5を仕切る複数の仕切壁51を有している。各仕切壁51は、前記ハンマー支持部19に対応し、側面形状が縦長のほぼ長方形状に形成された方形壁52と、前記スイッチ取付部20に対応し、方形壁52の上部前端に連なりかつ側面形状がほぼ三角形状に形成された三角壁53とで構成されている。そして、このハンマーサポート4において、すべての方形壁52は、その下部の前端部および下端部が左右方向に連なるとともに、上部の後端部が、背壁部54を介して、左右方向に連なっている。一方、すべての三角壁53は、その上部の前半部が、上壁部55を介して、左右方向に連なっている。
【0028】
背壁部54の前面上端部には、方形壁52の上端付近に適宜、斜め上前方に突出する複数の基板係止部54aが突設されている。これらの基板係止部54aと各方形壁52との間に、鍵スイッチ7のスイッチ基板29の後端部が差し込まれた状態で係止される。
【0029】
上壁部55には、その上面前端部に、ねじ孔56aを有しかつ上方に所定長さ突出する複数(本実施形態では2つ)のねじ止め部56が設けられる一方、上面後端部に、上方に所定長さ突出する複数(本実施形態では3つ)の基板支持部57が設けられている。各基板支持部57は、左右方向に若干間隔を隔てた一対の突起で構成され、両突起の間にねじ孔57aが形成されている。また、上壁部55には、隣り合う仕切壁51、51(三角壁53、53)の間にそれぞれ、前記レットオフ部品6を取り付けるための複数の取付孔58が形成されている。なお、上壁部55の各取付孔58の後方に形成された開口59は、ハンマー5が上方に回動したときに、レットオフ部品6に係合するハンマー5の係合突起27が、上壁部55に当たるのを回避するためのものである。
【0030】
また、隣り合う仕切壁51、51間にはそれぞれ、方形壁52と三角壁53が連なる部分に、左右方向に延びる前記支点軸部21が設けられている。加えて、各仕切壁51には、支点軸部21の端部との間に、支点軸部21の横断面よりも大きな所定形状を有しかつ支点軸部21側に若干突出するストッパ壁60(ストッパ)が設けられている。そして、前述したように、この支点軸部21にハンマー5が回動自在に支持されている。なお、各支点軸部21には、ハンマー5の円滑な回動を確保するために、潤滑剤としてグリースなどが塗布されている。
【0031】
図4は、ハンマー5を示している。同図に示すように、ハンマー本体22は、基本的に左右対称に構成されるとともに、図4(b)に示すような所定の側面形状を有している。ハンマー本体22の前端部は、板状の錘取付部41になっており、この錘取付部41の左右の側面に、板状の錘板23、23がリベット42によって取り付けられている。また、ハンマー本体22の錘取付部41よりも後ろ側の部分には、ハンマー本体22の長さ方向に沿って、前凹部43a、中凹部43bおよび後凹部43cから成る3つの凹部43が並設されている。これらの前凹部43a、中凹部43bおよび後凹部43cは、ハンマー本体22の左右の両側面に形成されており、それぞれの周縁部を残して、側面のほぼ全体に設けられている。
【0032】
ハンマー本体22の後端部に設けられた軸穴24は、側面形状が上方に開放するC字状に形成されており、その開放部分には、外方に広がるように形成されたガイド部44が設けられている。また、ハンマー本体22に設けられたアクチュエータ部26は、軸穴24の直ぐ前側でかつ軸穴24よりも上側に位置し、前後方向に延びる所定長さを有するように形成されている。
【0033】
また、ハンマー本体22の左右の側面には、アクチュエータ部26の後端付近に、左右の突起45、45(突出部)が設けられている。これらの突起45、45は、ハンマー5のハンマーサポート4への取り付け時に、ハンマー5のアクチュエータ部26が、ハンマーサポート4の支点軸部21に接するのを阻止するためのものである。
【0034】
図5は、ハンマーサポート4の仕切壁51およびストッパ壁60と、ハンマー5の突起45との左右方向の幅寸法の関係を示している。同図に示すように、ハンマー5の後端部(軸穴24)の左右方向の幅寸法Hは、隣り合う仕切壁51、51間の横幅W1(第1幅)、および左右のストッパ壁60、60間の横幅W2(第2幅)に対し、それらよりも小さく設定されている(H<W2<W1)。また、ハンマー5の左右の突起45、45間の先端間の幅寸法Tは、仕切壁51、51間の横幅W1よりも小さく、ストッパ壁60、60間の横幅W2よりも大きく設定されている(W2<T<W1)。
【0035】
次に、ハンマー5のハンマーサポート4への取り付け動作について説明する。鍵盤装置1のメンテナンス時などにハンマーサポート4から取り外されたハンマー5を、ハンマーサポート4に再度、取り付ける場合、まず、後端部の軸穴24を、ハンマーサポート4に前方から接近させ、隣り合う仕切壁51、51間に挿入する。次いで、ハンマー5の軸穴24の開放部分を、両仕切壁51、51間の支点軸部21の下方に位置させる。そして、軸穴24を、開放部分のガイド部44で支点軸部21に案内しながら上方へ移動させ、支点軸部21に係合させる(図1参照)。
【0036】
この場合、例えば、ハンマー5のアクチュエータ部26がハンマーサポート4の支点軸部21とほぼ同じ高さに位置した状態で、ハンマー5を、隣り合う仕切壁51、51間に挿入した場合、図6(a)に示すように、ハンマー5の左右の突起45、45が、前方からストッパ壁60、60にそれぞれ当接する。これにより、アクチュエータ部26を含め、ハンマー5のそれ以上の後方への移動が阻止される。このため、アクチュエータ部26が支点軸部21に接することはない。
【0037】
また、ハンマー5のアクチュエータ部26がハンマーサポート4の支点軸部21よりも低く、軸穴24が支点軸部21よりも後ろ側に位置した状態で、軸穴24を上方へ移動させた場合、図6(b)に示すように、ハンマー5の左右の突起45、45が、下方からストッパ壁60、60にそれぞれ当接する。これにより、アクチュエータ部26を含め、ハンマー5の後端部のそれ以上の上方への移動が阻止される。このため、上記の場合と同様、アクチュエータ部26が支点軸部21に接することはない。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ハンマー5のハンマーサポート4への取り付け時に、ハンマー5の軸穴24をハンマーサポート4の支点軸部21に係合させる際に、ハンマー5のアクチュエータ部26がハンマーサポート4の支点軸部21に接触することがなく、それにより、アクチュエータ部26に支点軸部21のグリースが付着するのを防止することができる。これにより、アクチュエータ部26にグリースが付着しないよう注意しながらハンマー5を取り付ける場合に比べて、ハンマー5の取り付け作業を迅速に行うことができ、その作業性を向上させることができる。
【0039】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、本発明のストッパに相当するストッパ壁60を、仕切壁51と支点軸部21の間に壁状に形成したが、本発明のストッパはこれに限定されるものではなく、ハンマー5のアクチュエータ部26がハンマーサポート4の支点軸部21に接するのを阻止できるような構成であれば、種々のものを採用することが可能である。例えば、本発明のストッパとして、上記のストッパ壁60の外周縁に沿って延び、仕切壁51に突設されるようなものであってもよい。
【0040】
また、実施形態では、ハンマー5の左右の突起45、45を、断面円形の凸状に形成したが、例えば、アクチュエータ部26に沿って前後方向に延びるように形成することも可能である。また、実施形態で示したハンマーサポート4およびハンマー5の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 鍵盤装置
2 鍵
4 ハンマーサポート
5 ハンマー
7 鍵スイッチ
22 ハンマー本体
24 軸穴(係合部)
26 アクチュエータ部
45 突起(突出部)
51 仕切壁
60 ストッパ壁(ストッパ)
W1 仕切壁間の横幅(第1幅)
W2 ストッパ壁間の横幅(第2幅)
H ハンマーの後端部の幅寸法
T 突起の先端間の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンマーサポートと、このハンマーサポートに左右方向に並んだ状態にかつ各々が回動自在に支持されるとともに、押鍵された鍵に連動して回動する複数のハンマーと、を備えた電子鍵盤楽器のハンマー装置であって、
前記ハンマーサポートは、
互いに左右方向に所定の第1幅を隔てて配置され、前記複数のハンマーをそれぞれ仕切る複数の仕切壁と、
隣り合う前記仕切壁の間に左右方向に延びるようにそれぞれ設けられ、前記複数のハンマーをそれぞれ回動自在に支持する複数の支点軸部と、
当該各支点軸部の左右の端部付近にそれぞれ設けられ、互いに左右方向に前記第1幅よりも小さい所定の第2幅を隔てて配置された左右のストッパと、
を有しており、
前記各ハンマーは、前後方向に延びるアーム状に形成されており、
後端部に設けられるとともに前記第2幅よりも小さい左右方向の幅寸法を有し、前記支点軸部に回動自在にかつ着脱自在に係合する係合部と、
この係合部の前側に設けられ、対応する鍵の押鍵に伴い当該ハンマーが回動することにより、当該鍵の押鍵情報を検出するための鍵スイッチを押圧するアクチュエータ部と、
左右の側面の前記アクチュエータ部の付近にそれぞれ突設された左右の突出部と、
を有し、
前記左右の突出部は、当該ハンマーの前記ハンマーサポートへの取り付け時において、前記係合部が前記支点軸部に係合される際に、前記左右のストッパにそれぞれ当接することにより、前記アクチュエータ部が前記支点軸部に接するのを阻止するように構成されていることを特徴とする電子鍵盤楽器のハンマー装置。
【請求項2】
前記各ハンマーの前記左右の突出部における先端間の左右方向の幅寸法は、前記第1幅よりも小さくかつ前記第2幅よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器のハンマー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−73205(P2013−73205A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214411(P2011−214411)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】