説明

電子鍵盤楽器の鍵盤装置

【課題】鍵スイッチの着脱作業を容易に行えるとともに、ハンマーおよび鍵スイッチを高い精度で設置でき、また、奥行き寸法をコンパクトに維持しながら、グランドピアノに近似したタッチ感を得ることができる電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供する。
【解決手段】揺動自在に構成された複数の鍵2と、合成樹脂の成形品で構成されたハンマーサポート4と、これに回動自在に支持された複数のハンマー5と、ハンマー5ごとに設けられた複数のスイッチ本体30およびスイッチ基板29を有する鍵スイッチ7と、を備え、ハンマーサポート4は、上下方向に貫通する開口を有するスイッチ取付部20を有しており、鍵スイッチ7は、スイッチ本体30がスイッチ取付部20の開口を介してハンマー5に上方から臨むとともに、スイッチ基板29がスイッチ取付部20の上面に載置された状態で着脱自在に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器に適用される鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノの鍵盤装置として、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されたものが知られている。この鍵盤装置は、揺動自在の複数の鍵と、鍵ごとに設けられ、押鍵に伴って回動する複数のハンマーと、各鍵の押鍵情報を検出する鍵スイッチなどを備えている。各鍵は、前後方向の中央に設けられたバランスピン孔を介して、立設されたバランスピンに揺動自在に支持されている。各ハンマーは、押出加工によって所定形状に成形された金属製のアクションシャーシに、後端部の軸受けを介して回動自在に支持されており、軸受けよりも前方の所定位置に下方からねじ込まれたキャプスタンスクリューを介して、対応する鍵の上面後端部に載置されている。また、鍵スイッチは、プリント基板から成るスイッチ基板と、このプリント基板のハンマー側に、ハンマーごとに設けられた複数のスイッチ本体とで構成されている。そして、この鍵スイッチは、アクションシャーシの上部に設けられたスイッチ取付部の下側に取り付けられている。より具体的には、スイッチ基板の後端部が、スイッチ取付部の基部に係止されるとともに、スイッチ基板の前端部が、スイッチ取付部との間にスペーサを介してねじ止めされている。
【0003】
また、この鍵盤装置では、鍵の前端からバランスピンまでの長さ(以下「鍵前部長さ」という)と、バランスピンからハンマーが鍵に当接するキャプスタンスクリューまでの長さ(以下「鍵後部長さ」という)との比が、約3:2に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−262129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の鍵盤装置では、鍵スイッチが、アクションシャーシのスイッチ取付部の下側に取り付けられるようになっているため、鍵スイッチの取り付け作業が煩雑である。加えて、電子ピアノの製造時に、鍵スイッチをアクションシャーシに一旦取り付けた後に調整が必要になった場合や、電子ピアノのメンテナンスが必要になった場合などにおいても、アクションシャーシからの鍵スイッチの取り外し作業、およびその後の取り付け作業が煩雑である。
【0006】
また、鍵スイッチのスイッチ基板は、スペーサを介してアクションシャーシにねじ止めされるため、例えばスペーサの製造上の寸法誤差などによっては、ハンマーに対し、鍵スイッチのスイッチ基板やスイッチ本体を適正な位置に精度良く設置できないおそれがある。
【0007】
さらに、電子ピアノでは通常、奥行き寸法に対するコンパクト化の要請があるため、鍵全体の前後方向の長さは、アコースティックなグランドピアノ(以下適宜、単に「グランドピアノ」という)のそれに比べて短く構成される。しかも、前述したように、従来の鍵盤装置では、鍵前部長さと鍵後部長さとの比が、約3:2に設定されているため、その鍵前部長さは、グランドピアノのそれに比べて非常に短い。このため、上記の鍵盤装置を備えた電子ピアノを演奏する際に、例えば鍵の前端付近の部分を押し下げる場合と、鍵の前端から奥側に離れた部分を押し下げる場合とでは、グランドピアノを演奏する場合と異なり、荷重差が大きくなる。このため、上記の鍵盤装置では、グランドピアノに近似したタッチ感を十分に得ることができず、したがって、上記の鍵盤装置には、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、鍵スイッチの取り付けおよび取り外し作業を容易に行えるとともに、ハンマーおよび鍵スイッチを高い精度で設置することができ、それにより、従来の電子鍵盤楽器の鍵に比べて、鍵前部長さを長くかつ鍵後部長さを短くすることができ、その結果として、鍵盤装置の奥行き寸法をコンパクトに維持しながら、アコースティックなグランドピアノに近似したタッチ感を得ることができる電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各々が前後方向に延びるとともに、前後方向の所定位置に位置する支点を中心として揺動自在に構成された複数の鍵と、合成樹脂の成形品で構成され、複数の鍵の後ろ側に配置されたハンマーサポートと、このハンマーサポートに回動自在に支持され、複数の鍵の後端部の当接部にそれぞれ上方から当接するとともに、対応する前記鍵の押鍵に伴って回動する複数のハンマーと、これらのハンマーごとに設けられた複数のスイッチ本体、およびこれらの複数のスイッチ本体が下面に取り付けられたスイッチ基板を有し、押鍵に伴って回動するハンマーが、対応するスイッチ本体を押圧することによって、押鍵された鍵の押鍵情報を検出する鍵スイッチと、を備え、ハンマーサポートは、ハンマーの上側に位置し、上下方向に貫通する開口を有するスイッチ取付部を有しており、鍵スイッチは、スイッチ本体がスイッチ取付部の開口を介してハンマーに上方から臨むとともに、スイッチ基板がスイッチ取付部の上面に載置された状態で、スイッチ取付部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、複数の鍵の後ろ側に配置されたハンマーサポートが、ハンマーの上側に位置するスイッチ取付部を有しており、このスイッチ取付部に、スイッチ本体およびスイッチ基板を有する鍵スイッチが取り付けられている。具体的には、鍵スイッチは、スイッチ本体がスイッチ取付部の開口を介してハンマーに上方から臨むとともに、スイッチ基板がスイッチ取付部の上面に載置された状態で、スイッチ取付部に着脱自在に取り付けられている。これにより、鍵スイッチを、ハンマーサポートのスイッチ取付部に対し、上方から取り付けたり、上方へ取り外すことができ、その取り付けおよび取り外し作業を容易に行うことができる。また、ハンマーサポートは、合成樹脂の成形品で構成されるので、それ自体を精度良く成形でき、加えて、このハンマーサポートに回動自在に支持されるハンマー、およびハンマーサポートに載置された状態で取り付けられる鍵スイッチを、高い精度で設置することができる。それにより、従来の電子ピアノの鍵盤装置の鍵に比べて、鍵前部長さを長くかつ鍵後部長さを短くした場合でも、押鍵に伴って回動するハンマー、およびそれに押圧されるスイッチ本体を有する鍵スイッチにより、押鍵された鍵の押鍵情報を精度良く検出することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、複数の鍵の各々は、前端から支点までの長さである鍵前部長さと、支点から当接部までの長さである鍵後部長さとの比が、2:1〜2.4:1に設定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、鍵における鍵前部長さと鍵後部長さとの比が2:1〜2.4:1に設定されるので、鍵盤装置の奥行き寸法を従来の電子ピアノの鍵盤装置と同程度にコンパクトに維持しながら、従来の鍵盤装置に比べて、鍵前部長さを長くすることができる。つまり、鍵の全長を、従来の鍵盤装置の鍵のそれと同程度に設定することにより、鍵前部長さについて、アコースティックなグランドピアノの鍵のそれと同程度の長さを確保することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、複数の鍵の各々は、鍵前部長さが、アコースティックなグランドピアノにおいて支点を中心として揺動自在の鍵における鍵前部長さとほぼ同じに設定されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、各鍵の鍵前部長さが、アコースティックなグランドピアノの鍵のそれとほぼ同じであるので、アコースティックなグランドピアノに近似したタッチ感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による鍵盤装置を適用した電子ピアノの鍵盤装置を、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
【図2】(a)は、鍵盤シャーシを、一部を切り欠いた状態で示す平面図であり、(b)は、(a)の一点鎖線枠C内を拡大して示す図である。
【図3】(a)は、リブおよびパネル支持金具を示す斜視図であり、(b)は、パネル支持金具でコントロールパネルを支持した状態を示す鍵盤装置の側面図である。
【図4】鍵の前端からバランスピンまでの長さである鍵前部長さと、バランスピンから鍵のキャプスタンスクリューが当接する後端部までの長さである鍵後部長さとの関係を説明するための図であり、(a)は本実施形態の鍵盤装置、(b)は従来の電子ピアノの鍵盤装置を示している。
【図5】ハンマーサポートを示す斜視図であり、(a)は、1オクターブ分のハンマーサポートの全体を示し、(b)は、一部を切り欠いた状態を示す。
【図6】ハンマーサポートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】ハンマーサポートに、ハンマー、レットオフ部品および鍵スイッチを取り付けた状態、および鍵スイッチを取り外した状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を、離鍵状態において示している。
【0017】
同図に示すように、鍵盤装置1は、電子ピアノの左右方向(図1の表裏方向)に並んだ多数の鍵2(白鍵2aおよび黒鍵2bを各1つのみ図示)と、これらの鍵2を支持する鍵盤シャーシ3と、この鍵盤シャーシ3の後端部(図1の右端部)に連結されたハンマーサポート4と、鍵2ごとに設けられ、押鍵された鍵2に連動して回動する多数のハンマー5(1つのみ図示)と、ハンマー5ごとに設けられ、鍵2の押鍵時にレットオフ感を付与するための多数のレットオフ部品6(1つのみ図示)と、鍵2の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ7などで構成されている。
【0018】
鍵盤シャーシ3は、左右方向に延びる前レール9a、中レール9bおよび後レール9cから成る3本の支持レール9と、前後方向に延びる5本の補強用のリブ10とを、井桁状に組み立てたものであり、棚板(図示せず)上に固定されている。これらの支持レール9およびリブ10はいずれも、プレスによる打抜きおよび折曲げ加工によって所定の形状に形成された鉄板で構成されている。支持レール9の板厚は、その軽量化のためにより薄く(例えば1.0mm)、リブ10の板厚は、補強のためにより厚く(例えば1.6mm)設定されている。
【0019】
前レール9aの下面および中レール9bの上面にはそれぞれ、筬前11および筬中12が固定されている。筬前11および筬中12は、合成樹脂から成る肉厚の板状のものであり、前レール9aおよび中レール9bの全体にわたって左右方向に延びている。筬中12には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のバランスピン13(支点)が、左右方向に並んだ状態で立設されている。また、筬前11には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のフロントピン14が、左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0020】
鍵2は、前後方向に延びるとともに矩形状の横断面を有する木製の鍵本体15と、その前部の上面および前面に接着された合成樹脂製の鍵カバー16で構成されている。鍵本体15の中央よりも後ろ側には、バランスピン孔17が形成されており、鍵2は、このバランスピン孔17を介して、バランスピン13に揺動自在に支持されている。また、鍵本体15の前端部には、フロントピン孔18が形成されており、このフロントピン孔18がフロントピン14に係合することによって、鍵2が回動する際の左右方向のぶれが防止される。
【0021】
ハンマーサポート4は、合成樹脂で構成され、例えば1オクターブ分の複数の成形品を互いに連結したものであり、すべてのハンマー5にわたるように左右方向に延びており、鍵盤シャーシ3の後レール9cにねじ止めされている。ハンマーサポート4は、この後レール9c付近から直立するハンマー支持部19と、その上端部から前方に斜め上がりに延びるスイッチ取付部20などで構成されている。ハンマー支持部19の上端部には、各ハンマー5を支持するための水平なピン状の支点軸部21が形成されている。
【0022】
ハンマー5は、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体22と、その左右の側面の前端部に取り付けられた錘板23(1つのみ図示)を有する。ハンマー本体22は合成樹脂で構成され、錘板23は、比重が比較的大きな鉄などの金属材料で構成されている。ハンマー本体22の後端部には、円弧状の軸穴24が形成されており、ハンマー5は、この軸穴24が支点軸部21に係合することによって、ハンマーサポート4に回動自在に支持されている。
【0023】
また、ハンマー本体22の下面には、軸穴24のすぐ前側の位置に、キャプスタンスクリュー25が進退自在にねじ込まれている。ハンマー5は、このキャプスタンスクリュー25を介して、鍵2の後端部に載置されている。また、ハンマー本体22の上面の軸穴24とキャプスタンスクリュー25との間の部分は、押鍵時に鍵スイッチ7を作動させるためのアクチュエータ部26になっている。さらに、ハンマー本体22の上面の前後方向の中央には、押鍵時にレットオフ部品6に係合する板状の係合突起27が設けられている。
【0024】
レットオフ部品6は、所定の弾性材料(例えば、スチレン系の熱可塑性エラストマーなど)の成形品で構成されており、ハンマーサポート4のスイッチ取付部20に取り付けられている。レットオフ部品6は、スイッチ取付部20から後ろ下がりに斜めに延びており、その先端部には、くびれ部を介して頭部28が形成されている。この頭部28は、離鍵状態において、ハンマー5の係合突起27に対向している。
【0025】
また、鍵スイッチ7は、プリント基板から成るスイッチ基板29と、このスイッチ基板29の下面に、鍵2ごとに設けられたゴムスイッチから成るスイッチ本体30で構成されている。スイッチ基板29は、その後端部がスイッチ取付部20に差し込まれるとともに、前端部および中央部がスイッチ取付部20にねじ止めされている。また、スイッチ本体30は、離鍵状態において、ハンマー5のアクチュエータ部26に若干の間隔をもって対向している。さらに、スイッチ取付部20の下面の前端部には、ハンマー5の上方への回動を規制する、発泡ウレタンなどで構成されたハンマーストッパ31が設けられている。
【0026】
次に、上記構成の鍵盤装置1の動作について説明する。図1に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、鍵2は、バランスピン13を中心として、同図の反時計方向に回動し、それに伴い、ハンマー5は、キャプスタンスクリュー25を介して押し上げられ、支点軸部21を中心として、上方(同図の時計方向)に回動する。
【0027】
このハンマー5の回動の途中で、その係合突起27が、レットオフ部品6の頭部28に係合し、頭部28を介してレットオフ部品6を圧縮させながら押圧することにより、レットオフ部品6からハンマー5に作用する反力が増大する。ハンマー5の回動が進むと、係合突起27が頭部28から外れることで、レットオフ部品6からの反力が急激に消失する。このようなレットオフ部品6の反力の増大と消失によって、アコースティックピアノに近似したレットオフ感が得られる。
【0028】
その後、ハンマー5がハンマーストッパ31に当接することによって、ハンマー5の上方への回動が終了する。また、ハンマー5の上方への回動の間、そのアクチュエータ部26が鍵スイッチ7のスイッチ本体30を押圧し、鍵スイッチ7をONすることによって、ハンマー5の回動量に応じた鍵2の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。そして、この発音制御装置により、検出された押鍵情報に基づいて、電子ピアノの発音が制御される。
【0029】
その後、鍵2が離鍵されると、鍵2は押鍵時と反対方向に回動し、図1に示す離鍵状態に復帰し、それに伴い、ハンマー5も、下方に回動し、離鍵状態に復帰する。
【0030】
次に、本発明に係る鍵盤装置1について、さらに詳細に説明する。図2(a)は鍵盤シャーシ3の一部を示し、図3(a)はリブ10を示している。鍵盤シャーシ3の前レール9aには、フロントピン14に対応して、多数の孔40が形成されており、それらの孔40を貫通した状態で、フロントピン14が上方に延びている。また、図2(b)に示すように、前レール9aには、各リブ10に対応して、ねじ止め用の前後2つの孔41、41が形成され、各孔41の直ぐ右側に、位置決め用の孔42も形成されている。同様に、中レール9bには、各リブ10に対応して、ねじ止め用の前後2つの孔が形成され、前側の孔の直ぐ右側に、位置決め用の孔が形成されている。なお、後レール9cにも、各リブ10に対応して、ねじ止め用の前後2つの孔が形成されている。
【0031】
図3(b)に示すように、リブ10は、前後方向に所定長さ延びるとともにL字状の横断面を有しており、前レール9a、中レール9bおよび後レール9cにそれぞれ対応する所定部分の上端部が、右方に直角に折曲げ加工されている。前レール9aに対応する前後2つの折曲げ部43、43の各々には、前レール9aのねじ止め用の孔41に対応する位置にねじ孔43aが形成されるとともに、前レール9aの位置決め用の孔42に対応する位置に、ハーフパンチによって、上方に若干突出する凸部43bが形成されている。同様に、中レール9bに対応する前後2つの折曲げ部44および45には、中レール9bのねじ止め用の孔に対応する位置にねじ孔44aおよび45aがそれぞれ形成され、前側の折曲げ部44には、中レール9bの位置決め用の孔に対応する位置に、凸部44bが形成されている。なお、後レール9cに対応する折曲げ部46にも、後レール9cの前後2つのねじ止め用の孔に対応する位置にそれぞれ、前後2つのねじ孔46a、46aが形成されている。
【0032】
以上のように構成された前レール9a、中レール9bおよび後レール9cを、リブ10によって連結するように、鍵盤シャーシ3を組み立てる場合、特に、前レール9aおよび中レール9bについては、リブ10側の各凸部43b、44bを、前レール9aおよび中レール9b側の位置決め用の孔42に挿入するとともに、リブ10側の各ねじ孔43a、44aを、前レール9aおよび中レール9bのねじ止め用の孔41に合致させた状態でねじ止めする。このようにして、鍵盤シャーシ3を組み立てることにより、ねじ止めの際などに、リブ10が前レール9aや中レール9bなどに対して回ることがなく、それらの支持レール9とリブ10を、効率よく連結することができる。また、リブ10側の凸部43b、44bと、支持レール9側の位置決め用の孔42との係合により、前レール9aと中レール9bの位置決めを容易に行うことができ、それにより、鍵盤シャーシ3を高い精度で組み立てることができる。
【0033】
また、リブ10の中レール9bに対応する前側の折曲げ部44は、他の折曲げ部43、45および46に比べて、前後方向の寸法が長くなっており、前記ねじ孔44aの前方にもねじ孔44cが形成されている。このねじ孔44cは、電子ピアノにおけるコントロールパネル47(図3(b)参照)を支持するパネル支持金具48を、リブ10に取り付けるためものである。
【0034】
コントロールパネル47は、音色や音源などを設定するための多数の操作部(図示せず)が設けられており、全体として左右方向に延びる横長の板状に形成されている。また、コントロールパネル47は、左右両端部が電子ピアノの左右の腕木(図示せず)などに支持されるとともに、左右方向の中央部などが、コントロールパネル47の裏面に固定された連結金具47aを介して、パネル支持金具48にねじ止めされる。
【0035】
パネル支持金具48は、細長い所定形状の金属板の両端部を、互いに反対方向に直角に折曲げ加工されたものである。図3(a)に示すように、パネル支持金具48には、下端部にねじ止め用の孔48aが形成され、上端部にねじ孔48bが形成されている。このように構成されたパネル支持金具48は、下端部の孔48aを、リブ10の中レール9bに対応する折曲げ部44の前側のねじ孔44cに合致させた状態で、ねじ49によって、リブ10に固定されている。また、パネル支持金具48とコントロールパネル47を連結する場合には、コントロールパネル47側の連結金具47aの取付孔(図示せず)を、パネル支持金具48の上端部のねじ孔48bに合致させた状態で、連結金具47aとパネル支持金具48をねじ止めする。
【0036】
図4(a)は、本実施形態の鍵盤装置1を示し、同図(b)は、従来の電子ピアノの鍵盤装置1’を示している。同図(a)に示すように、この鍵盤装置1では、鍵2の前端からバランスピン13までの長さである鍵前部長さFと、バランスピン13からキャプスタンスクリュー25が当接する鍵2の上面後端部(当接部)までの長さである鍵後部長さBとの比が、2:1〜2.4:1に設定されている。また、上記の鍵前部長さFは、一般的なアコースティックのグランドピアノにおける鍵前部長さと同程度に設定されており、具体的には、例えば約240mmに設定されている。
【0037】
これに対し、図4(b)に示す従来の鍵盤装置1’では、鍵2’の前端からバランスピン13’までの長さである鍵前部長さF’と、バランスピン13’からキャプスタンスクリュー25’が当接する鍵2’の上面後端部までの長さである鍵後部長さB’との比が、約3:2に設定されている。
【0038】
図4(a)および(b)から明らかなように、両者の鍵2および2’の全長はほぼ同じであるものの、本実施形態の鍵2の鍵前部長さFが、従来の鍵2’の鍵前部長さF’に比べて長くなっている。このため、鍵盤装置1を備えた電子ピアノを演奏する際に、例えば鍵2の前端付近の部分を押し下げる場合と、鍵2の前端から奥側に離れた部分を押し下げる場合との荷重差は、従来の鍵盤装置1’の鍵2’を上記のように押鍵する場合に比べて小さくなり、アコースティックなグランドピアノの鍵を上記のように押鍵する場合とほぼ同様になる。
【0039】
図5および図6は、1オクターブ分のハンマーサポート4を示している。前述したように、このハンマーサポート4は、合成樹脂の成形品で構成されており、互いに左右方向に所定間隔を隔てた状態で、隣り合うハンマー5を仕切る複数の仕切壁51を有している。各仕切壁51は、前記ハンマー支持部19に対応し、側面形状が縦長のほぼ長方形状に形成された方形壁52と、前記スイッチ取付部20に対応し、方形壁52の上部前端に連なりかつ側面形状がほぼ三角形状に形成された三角壁53とで構成されている。そして、このハンマーサポート4において、すべての方形壁52は、その下部の前端部および下端部が左右方向に連なるとともに、上部の後端部が、背壁部54を介して、左右方向に連なっている。一方、すべての三角壁53は、その上部の前半部が、上壁部55を介して、左右方向に連なっている。
【0040】
背壁部54の前面上端部には、方形壁52の上端付近に適宜、斜め上前方に突出する複数の基板係止部54aが突設されている。これらの基板係止部54aと各方形壁52との間に、鍵スイッチ7のスイッチ基板29の後端部が差し込まれた状態で係止される。
【0041】
上壁部55には、その上面前端部に、ねじ孔56aを有しかつ上方に所定長さ突出する複数(本実施形態では2つ)のねじ止め部56が設けられる一方、上面後端部に、上方に所定長さ突出する複数(本実施形態では3つ)の基板支持部57が設けられている。各基板支持部57は、左右方向に若干間隔を隔てた一対の突起で構成され、両突起の間にねじ孔57aが形成されている。また、上壁部55には、隣り合う仕切壁51、51(三角壁53、53)の間にそれぞれ、前記レットオフ部品6を取り付けるための複数の取付孔58が形成されている。なお、上壁部55の各取付孔58の後方に形成された開口59は、ハンマー5が上方に回動したときに、レットオフ部品6に係合するハンマー5の係合突起27が、上壁部55に当たるのを回避するためのものである。
【0042】
また、隣り合う仕切壁51、51間にはそれぞれ、方形壁52と三角壁53が連なる部分に、左右方向に延びる前記支点軸部21が設けられている。そして、前述したように、この支点軸部21にハンマー5が回動自在に支持されている。
【0043】
図7は、ハンマーサポート4に、ハンマー5、レットオフ部品6および鍵スイッチ7を取り付けた状態、および鍵スイッチ7を取り外した状態を示している。同図に示すように、鍵スイッチ7は、ハンマーサポート4のスイッチ取付部20の上面に載置された状態で、着脱自在に取り付けられている。
【0044】
具体的には、鍵スイッチ7のスイッチ基板29は、前述したように、後端部(図7の右端部)が背壁部54の基板係止部54aと方形壁52との間に差し込まれた状態で係止され、中央部が上壁部55の基板支持部57に載置され、前端部が上壁部55のねじ止め部56に載置されている。また、スイッチ基板29の前端部および中央部には、ハンマーサポート4側の各ねじ孔56a、57aに対応する位置にそれぞれ、取付孔29aが形成されており、それらの取付孔29aを介して、ねじ60がねじ止め部56のねじ孔56aおよび基板支持部57のねじ孔57aに上方からねじ込まれている。さらに、鍵スイッチ7の各スイッチ本体30は、対応するハンマー5の両側の仕切壁51、51、背壁部54および上壁部55によって上下方向に貫通するように画成された開口50(図5および図6参照)を介して、ハンマー5のアクチュエータ部26に上方から臨んでいる。
【0045】
以上のように、鍵スイッチ7は、ハンマーサポート4に対し、その上方から容易に取り付けることが可能である。また、ねじ60をハンマーサポート4側のねじ止め部56および基板支持部57のねじ孔56a、57aから外すことにより、鍵スイッチ7を、ハンマーサポート4から容易に取り外すことが可能である。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態によれば、鍵スイッチ7を、ハンマーサポート4のスイッチ取付部20に対し、上方から取り付けたり、上方へ取り外したりすることができ、その取り付けおよび取り外し作業を容易に行うことができる。また、ハンマーサポート4は、合成樹脂の成形品で構成されるので、それ自体を精度良く成形でき、加えて、このハンマーサポート4に回動自在に支持されるハンマー5、およびハンマーサポート4に取り付けられる鍵スイッチ7を、高い精度で設置することができる。それにより、従来の電子ピアノの鍵盤装置1’の鍵2’に比べて、鍵前部長さFを長くかつ鍵後部長さBを短くした場合でも、押鍵に伴って回動するハンマー5、およびそれに押圧されるスイッチ本体30を有する鍵スイッチ7により、押鍵された鍵2の押鍵情報を精度良く検出することができる。
【0047】
また、鍵盤装置1の鍵2における鍵前部長さFと鍵後部長さBとの比が2:1〜2.4:1に設定され、しかも、鍵前部長さFがアコースティックなグランドピアノの鍵のそれとほぼ同じであるので、鍵盤装置1の奥行き寸法を従来の電子ピアノの鍵盤装置1’と同程度にコンパクトに維持しながら、アコースティックなグランドピアノに近似したタッチ感を得ることができる。
【0048】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。また、実施形態で示した鍵盤装置1の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 鍵盤装置
2 鍵
3 鍵盤シャーシ
4 ハンマーサポート
5 ハンマー
7 鍵スイッチ
13 バランスピン(支点)
19 ハンマー支持部
20 スイッチ取付部
21 支点軸部
29 スイッチ基板
30 スイッチ本体
F 鍵前部長さ
B 鍵後部長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が前後方向に延びるとともに、前後方向の所定位置に位置する支点を中心として揺動自在に構成された複数の鍵と、
合成樹脂の成形品で構成され、前記複数の鍵の後ろ側に配置されたハンマーサポートと、
このハンマーサポートに回動自在に支持され、前記複数の鍵の後端部の当接部にそれぞれ上方から当接するとともに、対応する前記鍵の押鍵に伴って回動する複数のハンマーと、
これらのハンマーごとに設けられた複数のスイッチ本体、および当該複数のスイッチ本体が下面に取り付けられたスイッチ基板を有し、押鍵に伴って回動する前記ハンマーが、対応する前記スイッチ本体を押圧することによって、押鍵された鍵の押鍵情報を検出する鍵スイッチと、
を備え、
前記ハンマーサポートは、前記ハンマーの上側に位置し、上下方向に貫通する開口を有するスイッチ取付部を有しており、
前記鍵スイッチは、前記スイッチ本体が前記スイッチ取付部の前記開口を介して前記ハンマーに上方から臨むとともに、前記スイッチ基板が前記スイッチ取付部の上面に載置された状態で、前記スイッチ取付部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
前記複数の鍵の各々は、前端から前記支点までの長さである鍵前部長さと、当該支点から前記当接部までの長さである鍵後部長さとの比が、2:1〜2.4:1に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項3】
前記複数の鍵の各々は、前記鍵前部長さが、アコースティックなグランドピアノにおいて支点を中心として揺動自在の鍵における鍵前部長さとほぼ同じに設定されていることを特徴とする請求項2に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73007(P2013−73007A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211820(P2011−211820)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】