説明

電気めっき方法

【課題】水素よりもイオン化傾向の大きい金属をシード層として使用し、硫酸銅めっき液等の酸性のめっき液を使用した電気めっきを行っても、ビアホールの内部に銅等のめっき金属をより確実に埋込むことができるようにする。
【解決手段】表面に水素よりもイオン化傾向の大きな第1金属によって覆われたビアホールが形成された基板を用意し、基板を前記第1金属より貴な第2金属またはその塩を溶解させた前処理液に浸漬させて基板の前処理を行い、しかる後、基板の表面に電気めっきを行って前記ビアホール内に前記第2金属または第3金属を埋込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気めっき方法に関し、特に、内部に上下に貫通する多数の貫通電極(ビアプラグ)を有し、半導体チップ等のいわゆる3次元実装に使用される基板を製造する際に、基板に予め設けられたビアホール内に銅等の金属を埋込むのに使用される電気めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を多層に積層させる際に各層間を導通させるための手段として、基板の内部に上下に貫通する複数の銅等の金属からなる貫通電極を形成する技術が知られている。
【0003】
内部に銅からなる貫通電極を有する基板の製造例を図1を参照して説明する。先ず、図1(a)に示すように、シリコンウェーハ等からなる基材10の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、上方に開口する複数のビアホール12を形成し、ビアホール12の側壁を含む基材10の表面に絶縁膜(図示せず)を形成し、更にビアホール12の表面を含む基材10の全表面にTi(チタン)等からなるバリア層14を、バリア層14の表面に銅シード層16をPVD等により順次形成した基板Wを用意する。ビアホール12の直径dは、例えば2〜50μm、特に10〜20μmで、深さhは、例えば20〜150μmである。
【0004】
次に、基板Wの表面に、銅シード層16をカソードとした電気銅めっきを施すことで、図1(b)に示すように、基板Wのビアホール12の内部にめっき金属(銅)18を埋込むとともに、銅シード層16の表面にめっき金属18を堆積させる。このように、電気銅めっきによって、ビアホール12の内部に銅を埋込む場合、めっき液として、比較的安価で、排液処理を含めめっき液の管理が比較的容易な硫酸銅めっき液が広く使用される。
【0005】
その後、図1(c)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)等により、基材10上の余剰なめっき金属18、銅シード層16及びバリア層14を除去し、更に、ビアホール12内に充填しためっき金属18の底面が外部に露出する、例えば2点鎖線で示す位置まで基材10の裏面側を研磨除去する。これによって、上下に貫通する銅(めっき金属18)からなる複数の貫通電極を内部に有する基板Wを完成させる。
【0006】
ビアホール12は、直径に対する深さの比、即ちアスペクト比が一般に大きく、深さも深い。通常、このようなアスペクト比が大きく、深い深さのビアホール12内に電気めっきによって成膜される銅(めっき金属)を、内部にボイド等の欠陥を生じさせることなく完全に埋込むためには、ビアホール12の内部に優先的にめっき金属を成長させる、いわゆるボトムアップ成長が必要となる。
【0007】
このため、めっき液として、例えばSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルファイド)からなるめっき促進剤、PEG(ポリエチレングリコール)からなる抑制剤、及びPEI(ポリエチレンイミン)からなるレベラ(平滑化剤)といった各種添加剤を含む硫酸銅めっき液が一般に使用される。これらの添加剤は、基板の表面に吸着することでそれぞれの効果を示す。
【0008】
ここに、PVDは、一般にステップカバレッジが低い。このため、PVDによって、バリア層14の表面に連続した銅シード層16を形成するためには、銅シード層16の膜厚を、例えば800〜1000nm程度とかなり厚くする必要があり、シード層の膜厚をより薄くすることが求められている。
【0009】
このため、図2に示すように、ビアホール12の表面を含む基板の全表面に、バリア性を有しバリア層を兼ねるシード層としてのコバルト膜20を、コンフォーマルなCVDにより形成し、このコバルト膜20をカソードとした電気銅めっきを行って、ビアホール12内へのめっき金属(銅)の埋込みを行うことが考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば、図2に示す、表面をコバルト膜20で覆われた、アスペスト比が高く深さの深いビアホール12の内部に、銅等のめっき金属を未充填部を生じさせることなく電気めっきで完全に埋込むことはかなり困難である。
【0011】
例えば、図3に示すように、表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホール12aを有する基板Wの表面に、各種添加剤を含む硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホール12aの内部にめっき金属(銅)18を埋込むと、ビアホール12aの底部のかなりの領域に、表面がかなり荒れた未充填部22aが生じてしまう。
【0012】
図4に示すように、表面がコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120μm程度のビアホール12bを有する基板Wの表面に、各種添加剤を含む硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホール12bの内部にめっき金属(銅)18を埋込むと、ビアホール12aの底部のかなりの領域に、表面がかなり荒れた未充填部22bが生じ、しかも、めっき金属18の埋込み深さにばらつきが生じる。
【0013】
更に、図5に示すように、表面がコバルト膜で覆われた、直径30μmで深さ130μm程度のビアホール12cを有する基板Wの表面に、各種添加剤を含む硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホール12cの内部にめっき金属(銅)18を埋込むと、ビアホール12cの上部内周面にのみのめっき金属(銅)18が成膜され、しかもビアホール12cの開口端がめっき金属18で閉塞されずに、ビアホール12c内にめっき金属18が埋込まれない事態が発生する。
【0014】
上記のように、表面をコバルト膜で覆われた、アスペスト比が高く深さの深いビアホールの内部に、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきによって、未充填部を生じさせることなく銅(めっき金属)を完全に埋込むことが困難であるのは、めっき処理中に酸性の硫酸銅めっき液に直接触れることによって、コバルト膜が硫酸銅めっき液中に溶けてしまうためであると考えられる。つまり、シード層の金属がコバルトのように卑な金属の場合、すなわちイオン化傾向が水素より大きい金属の場合、シード層が酸性めっき液に溶解してしまう。
【0015】
コバルト膜(シード層)がめっき液に溶解してしまう問題は、基板の外周部のシール材と接触して該外周部をめっき液から保護(シール)するシール材との接触部及びその近傍で特に顕著になる。基板の外周部のシール材との接触部及びその近傍は、電場が遮蔽されるなどの影響によりめっき膜が析出しにくく、局所的にコバルト膜の溶解が進行しやすい。基板への電流の供給は、シール材でめっき液から保護された基板の外周部に接点を接触させて行うのが一般的であり、基板の外周部のシール材との接触部及びその近傍のコバルト膜が溶解してなくなってしまうと、コバルト膜からなるシード層が断絶して、電流の基板への供給ができなくなってしまう場合がある。
【0016】
めっき処理中にコバルト膜がめっき液中に溶けてしまうことを防止するため、めっき液として、アルカリ性のピロリン酸銅めっき液を使用することが考えられる。しかし、ピロリン酸銅めっき液は、硫酸銅めっき液に比べて高価であるばかりでなく、排液処理を含めためっき液の管理が複雑となる。
【0017】
酸性のめっき液にシード層が溶解してしまうという問題は、コバルト膜の表面に銅をめっきする場合だけでなく、水素よりもイオン化傾向が大きい金属の表面に他の金属をめっきする場合にも生じうる。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、水素よりもイオン化傾向の大きい金属をシード層として使用し、硫酸銅めっき液等の酸性のめっき液を使用した電気めっきを行っても、ビアホールの内部に銅等のめっき金属をより確実に埋込むことができるようにした電気めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の電気めっき方法は、表面に水素よりもイオン化傾向の大きな第1金属によって覆われたビアホールが形成された基板を用意し、基板を前記第1金属より貴な第2金属またはその塩を溶解させた前処理液に浸漬させて基板の前処理を行い、しかる後、基板の表面に電気めっきを行って前記ビアホール内に前記第2金属または第3金属を埋込む。
【0020】
このように、表面に水素よりもイオン化傾向の大きな第1金属によって覆われたビアホールが形成された基板を該第1金属より貴な第2金属またはその塩を溶解させた前処理液に浸漬させて基板の前処理を行うことで、第1金属の表面に、第1金属より貴な第2金属からなる金属皮膜を置換によって形成することができる。これによって、電気めっきの際に、第1金属が酸性のめっき液に直接接触してめっき液中に溶けることを第1金属の表面に形成された金属皮膜で防止して、ビアホールの内部にめっき金属をより確実に埋込むことができる。
【0021】
前記前処理液は、弱酸性から弱アルカリ性であることが望ましく、これによって、コバルト膜が前処理液に接触して前処理液中に溶けることを防止することができる。
【0022】
基板を脱気水に浸漬させる基板の前処理を行った後、基板を第2金属またはその塩を溶解させた前処理液に浸漬させる前記前処理を行うことが好ましい。
これにより、基板の親水性を良くして、ビアホールの内部に、浸透性の良好な脱気水を浸入させた後、ビアホールの内部に侵入した脱気水と前処理液との置換を行うことで、ビアホールの内部に前処理液を確実に浸入させることができる。
【0023】
前記第1金属は、例えばコバルトであり、コバルトより貴な第2金属は、例えば銅である。このように、第1金属としてコバルトを、コバルトより貴な第2金属として銅を使用する場合、前処理液中の銅濃度は、1〜70g/Lであることが好ましい。
これにより、コバルト膜の表面に銅からなる金属皮膜を置換によって形成することで、たとえめっき液として酸性の硫酸銅めっき液を使用しても、めっき液中にコバルト膜が溶けてしまうことを防止することができる。銅を有する前処理液は、例えば純水に硫酸銅を溶解させることで製造され、前処理液中の銅濃度は、ビアホールの大きさ等に応じて、任意に設定される。
【0024】
前記第2金属は、パラジウム、金、プラチナまたは銀で、前記第3金属は銅であってもよい。
この場合、めっき液として、酸性の硫酸銅めっき液が好ましく使用される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、水素よりもイオン化傾向の大きな第1金属(例えばコバルト)をシード層として使用し、たとえ硫酸銅めっき液等の酸性のめっき液を使用した電気めっきを行っても、第1金属の表面に置換によって形成される、第1金属より貴な第2金属からなる金属皮膜で第1金属をめっき液から保護して、第1金属で覆われたビアホールの内部に銅等のめっき金属をより確実に埋込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】内部に上下に貫通する複数の銅からなる貫通電極を有する基板の製造例を工程順に示す図である。
【図2】ビアホールを有する基板表面をコバルト膜で覆った状態を示す断面図である。
【図3】表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホールを有する基板の表面に、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ状態を模式的に示す断面図である。
【図4】表面をコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120μm程度のビアホールを有する基板の表面に、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ状態を模式的に示す断面図である。
【図5】表面をコバルト膜で覆われた、直径30μmで深さ130μm程度のビアホールを有する基板の表面に、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ状態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の電気めっき方法に使用されるめっき処理設備の全体配置図である。
【図7】図6に示すめっき処理設備に備えられている搬送ロボットの概要図である。
【図8】図6に示すめっき処理設備に備えられているめっき装置の概略断面図である。
【図9】図6に示すめっき装置の攪拌パドル(攪拌具)を示す平面図である。
【図10】図9のA−A線断面図である。
【図11】表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が10g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【図12】表面をコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が10g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【図13】表面をコバルト膜で覆われた、直径30μmで深さ130μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が10g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【図14】表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が30g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【図15】表面をコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が30g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【図16】表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が60g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【図17】表面をコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が60g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【図18】表面をコバルト膜で覆われた、直径30μmで深さ130μm程度のビアホールを有する基板の表面に、銅濃度が60g/Lの前処理液を使用した基板の前処理を行った後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)を埋込んだ時の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下の例では、図2に示す、ビアホール12の表面を含む全表面に、バリア性を有しバリア層を兼ねるシード層としてのコバルト膜20を、コンフォーマルなCVDにより形成した基板Wを用意し、基板Wの表面に、硫酸銅めっき液を使用した電気銅めっきを行って、ビアホール12の内部に銅(めっき金属)を充填し、これによって、基板Wの内部に銅からなる貫通電極を形成するようにした例を示す。
【0028】
図6は、本発明のめっき方法に使用されるめっき処理設備の全体配置図を示す。このめっき処理設備は、基板の前処理、めっき処理及びめっきの後処理のめっき全工程を連続して自動的に行うようにしたもので、外装パネルを取付けた装置フレーム110の内部は、仕切板112によって、基板のめっき処理及びめっき液が付着した基板の処理を行うめっき空間116と、それ以外の処理、すなわちめっき液に直接には関わらない処理を行う清浄空間114に区分されている。そして、めっき空間116と清浄空間114とを仕切る仕切板112で仕切られた仕切り部には、基板ホルダ160(図7参照)を2枚並列に配置して、この各基板ホルダ160との間で基板の脱着を行う、基板受渡し部としての基板脱着台162が備えられている。清浄空間114には、基板を収納した基板カセットを載置搭載するロード・アンロードポート120が接続され、更に、装置フレーム110には、操作パネル121が備えられている。
【0029】
清浄空間114の内部には、基板のオリフラやノッチなどの位置を所定方向に合わせるアライナ122と、めっき処理後の基板を洗浄し高速回転させてスピン乾燥させる2台の洗浄・乾燥装置124が配置されている。更に、これらの各処理装置、つまりアライナ122及び洗浄・乾燥装置124のほぼ中心に位置して、これらの各処理装置122,124、基板脱着台162及びロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットとの間で基板の搬送と受渡しを行う第1搬送ロボット128が配置されている。
【0030】
清浄空間114内に配置されたアライナ122、洗浄・乾燥装置124は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して処理する。搬送ロボット128は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して基板の搬送及び受渡しを行う。
【0031】
めっき空間116内には、仕切板112側から順に、基板ホルダ160の保管及び一時仮置きを行うストッカ164、例えば純水(DIW)からなる脱気水に基板を浸漬させて基板表面の親水性を良くするプリウェット処理(第1前処理)を行う第1前処理装置126、コバルトより貴な金属である銅を溶解させた中性または弱アルカリの前処理液に基板を浸漬させてコバルト膜表面のコバルトを銅に置換する置換処理(第2前処理)を行う第2前処理装置166、基板表面を純水で水洗する第1水洗装置168a、電気めっきを行う電気めっき装置170、第2水洗装置168b及びめっき処理後の基板の水切りを行うブロー装置172が順に配置されている。そして、これらの装置の側方に位置して、2台の第2搬送ロボット174a,174bがレール176に沿って走行自在に配置されている。この一方の第2搬送ロボット174aは、基板脱着台162とストッカ164との間で基板ホルダ160の搬送を行う。他方の第2搬送ロボット174bは、ストッカ164、第1前処理装置126、第2前処理装置166、第1水洗装置168a、電気めっき装置170、第2水洗装置168b及びブロー装置172の間で基板ホルダ160の搬送を行う。
【0032】
第2搬送ロボット174a,174bは、図7に示すように、鉛直方向に延びるボディ178と、このボディ178に沿って上下動自在でかつ軸心を中心に回転自在なアーム180を備えており、このアーム180に、基板ホルダ160を着脱自在に保持する基板ホルダ保持部182が2個並列に備えられている。基板ホルダ160は、表面を露出させ周縁部をシールした状態で基板Wを着脱自在に保持するように構成されている。
【0033】
ストッカ164、第1前処理装置126、第2前処理装置166、水洗装置168a,168b及び電気めっき装置170は、基板ホルダ160の両端部に設けた外方に突出する突出部160aを上端部に引っ掛けて、基板ホルダ160を鉛直方向に吊り下げた状態で支持する。
【0034】
第1前処理装置126には、例えば溶在酸素が2mg/L以下に脱気された純水(脱気DIW)からなる脱気水を内部に保持する2個の前処理槽127が備えられ、図7に示すように、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、基板ホルダ160を前処理槽127の上端部に引っ掛けて吊下げ支持することで、基板ホルダ160を基板Wごと前処理槽127内の脱気水に浸漬させて基板表面のプリウェット処理(第1前処理)を行うように構成されている。
【0035】
第2前処理装置166には、コバルトより貴な金属である銅を溶解させた弱酸性から弱アルカリ性の前処理液を内部に保持する2個の前処理槽183が備えられ、図7に示すように、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、基板ホルダ160を前処理槽183の上端部に引っ掛けて吊下げ支持することで、基板ホルダ160を基板Wごと前処理槽183内の前処理液に浸漬させてコバルト膜表面の置換処理(第2前処理)を行うように構成されている。
【0036】
銅を溶解させたpH範囲が2〜9の弱酸性から弱アルカリ性の前処理液は、例えば純水に硫酸銅を溶かすことで製造される。前処理液中の銅濃度は、例えば1〜70g/Lの範囲で、ビアホールの大きさ等によって、任意に設定される。また、前処理液のpH変動を抑えるため、pH緩衝剤(リン酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、ホウ酸など)を加えても良い。
【0037】
同様に、水洗装置168a,168bには、内部に純水を保持した各2個の水洗槽184a,184bが、電気めっき装置170には、内部にめっき液を保持した複数のめっき槽186がそれぞれ備えられ、基板ホルダ160を基板Wごとこれらの水洗槽184a,184b内の純水またはめっき槽186内のめっき液に浸漬させることで、水洗処理やめっき処理が行われるように構成されている。またブロー装置172は、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、この基板ホルダ160に装着した基板Wにエアーや不活性ガスを吹きかけることで、基板のブロー処理を行うように構成されている。
【0038】
電気めっき装置170には、図8に示すように、内部に一定量のめっき液Qを保持するめっき槽186が備えられており、このめっき槽186のめっき液Q中に、基板ホルダ160で周縁部を水密的にシールし表面(被めっき面)を露出させて保持した基板Wを浸漬させて、基板ホルダ160を垂直に配置するようになっている。めっき液Qとして、この例では、硫酸、硫酸銅及びハロゲンイオンの他に、例えばSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルファイド)からなるめっき促進剤、PEG(ポリエチレングリコール)からなる抑制剤、及びPEI(ポリエチレンイミン)からなるレベラ(平滑化剤)の有機添加物を含んだ、酸性の硫酸銅めっき液が使用される。ハロゲンイオンとしては塩素が好ましく用いられる。
【0039】
めっき槽186の上方外周には、めっき槽186の縁から溢れ出ためっき液Qを受け止めるオーバーフロー槽200が備えられている。オーバーフロー槽200の底部には、ポンプ202を備えた循環配管204の一端が接続され、循環配管204の他端は、めっき槽186の底部に設けられためっき液供給口186aに接続されている。これにより、オーバーフロー槽200内に溜まっためっき液Qは、ポンプ202の駆動に伴ってめっき槽186内に還流される。循環配管204には、ポンプ202の下流側に位置して、めっき液Qの温度を調節する恒温ユニット206と、めっき液内の異物をフィルタリング(除去)するフィルタ208が介装されている。
【0040】
更に、めっき槽186の底部には、内部に多数のめっき液流通口を有する底板210が配置されている。これによって、めっき槽186の内部は、上方の基板処理室214と下方のめっき液分散室212に区画されている。更に、底板210には、下方に垂下する遮蔽板216が取付けられている。
【0041】
これによって、この例の電気めっき装置170では、めっき液Qは、ポンプ202の駆動に伴ってめっき槽186のめっき液分散室212に導入され、底板210に設けられた多数のめっき液流通口を通過して基板処理室214内に流入し、基板ホルダ160で保持された基板Wの表面に対して略平行に上方に向けて流れてオーバーフロー槽200内に流出する。
【0042】
めっき槽186の内部には、基板Wの形状に沿った円板状のアノード220がアノードホルダ222に保持されて垂直に設置されている。このアノードホルダ222で保持されたアノード220は、めっき槽186内にめっき液Qを満たした時にめっき槽186内のめっき液Q中に浸漬され、基板ホルダ160で保持してめっき槽186内に配置される基板Wと対面する。
【0043】
更に、めっき槽186の内部には、アノード220とめっき槽186内に配置される基板ホルダ160との間に位置して、めっき槽186内の電位分布を調整する調整板(レギュレーションプレート)224が配置されている。調整板224は、この例では、筒状部226と矩形状のフランジ部228からなり、材質として、誘電体である塩化ビニールを用いている。筒状部226は、電場の拡がりを十分制限できるような開口の大きさ、及び軸心に沿った長さを有している。調整板224のフランジ部228の下端は、底板210に達している。
【0044】
めっき槽186の内部には、めっき槽186内に配置される基板ホルダ160と調整板224との間に位置して、鉛直方向に延び、基板Wと平行に往復運動して、基板ホルダ160と調整板224との間のめっき液Qを攪拌する攪拌具としての攪拌パドル232が配置されている。めっき中にめっき液Qを攪拌パドル(攪拌具)232で攪拌することで、十分な銅イオンを基板Wの表面に均一に供給することができる。
【0045】
攪拌パドル232は、図9及び図10に示すように、板厚tが3〜5mmの一定の厚みを有する矩形板状部材で構成され、内部に複数の長穴232aを平行に設けることで、鉛直方向に延びる複数の格子部232bを有するように構成されている。攪拌パドル232の材質は、例えばPVC、PPまたはPTFEなどの樹脂、またはSUSやチタンをフッ素樹脂などで被覆したものであり、少なくともめっき液と接触する部分を電気的絶縁状態にすることが望ましい。攪拌パドル232の垂直方向の長さL及び長孔232aの長さ方向の寸法Lは、基板Wの垂直方向の寸法よりも十分に大きくなるように設定されている。また、攪拌パドル232の横方向の長さHは、攪拌パドル232の往復運動の振幅(ストローク)と合わせた長さが基板Wの横方向の寸法よりも十分に大きくなるように設定されている。
【0046】
長穴232aの幅及び数は、長穴232aと長孔232aの間の格子部232bが効率良くめっき液を攪拌し、長穴232aをめっき液が効率良く通り抜けるように、格子部232bが必要な剛性を有する範囲で格子部232bが可能な限り細くなるように決めることが好ましい。
【0047】
電気めっき装置170には、めっき時に陽極が導線を介してアノード220に、陰極が導線を介して基板Wの表面にそれぞれ接続されるめっき電源250が備えられている。このめっき電源250は、制御部252に接続され、この制御部250からの信号に基づいて制御される。
【0048】
次に、図6に示すめっき処理設備を使用して、図2に示す、ビアホール12の表面を含む全表面にコバルト膜20を形成した基板Wの表面に、酸性の硫酸銅めっき液を使用した電気銅めっきを行って、ビアホール12の内部に銅(めっき金属)を充填するようにした一連のめっき処理について説明する。
【0049】
先ず、基板Wをその表面(被めっき面)を上にした状態で基板カセットに収容し、この基板カセットをロード・アンロードポート120に搭載する。このロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットから、第1搬送ロボット128で基板Wを1枚取出し、アライナ122に載せて基板Wのオリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。一方、基板脱着台162にあっては、ストッカ164内に鉛直姿勢で保管されていた基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで取出し、これを90゜回転させた水平状態にして基板脱着台162に2個並列に載置する。
【0050】
そして、アライナ122に載せてオリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせた基板Wを第1搬送ロボット128で搬送し、基板脱着台162に載置された基板ホルダ160に周縁部をシールして装着する。そして、この基板Wを装着した基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで2基同時に把持し、上昇させた後、ストッカ164まで搬送し、90゜回転させて基板ホルダ160を垂直な状態となし、しかる後、下降させ、これによって、2基の基板ホルダ160をストッカ164に吊下げ保持(仮置き)する。これを順次繰返して、ストッカ164内に収容された基板ホルダ160に順次基板を装着し、ストッカ164の所定の位置に順次吊り下げ保持(仮置き)する。
【0051】
一方、第2搬送ロボット174bにあっては、基板を装着しストッカ164に仮置きした基板ホルダ160を2基同時に把持し、上昇させた後、第1前処理装置126に搬送する。そして、この第1前処理装置126で、前処理槽127内に入れた純水(DIW)等の脱気水に基板Wを浸漬させて基板Wの表面にプリウェット処理(第1前処理)を施す。このとき使用する脱気水としての純水は、純水中の溶存酸素濃度を真空脱気装置により制御し、好ましくは2mg/L以下とする。このように、基板Wの表面にプリウェット処理(第1前処理)を施すことで、基板Wの表面の親水性を良くし、ビアホール12の内部に、浸透性の良好な脱気水を浸入させることができる。
【0052】
次に、第1前処理後の基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、第2前処理装置166に搬送し、前処理槽183に入れた弱酸性から弱アルカリ性の銅を溶解させた前処理液に基板Wを浸漬させてコバルト膜20の表面に置換処理(第2前処理)を施す。この時、基板Wの表面に予めプリウェット処理(第1前処理)を施すことで、ビアホール12の内部に侵入した脱気水と前処理液との置換を行って、ビアホール12の内部に前処理液を確実に浸入させることができる。
【0053】
つまり、銅を溶解させた前処理液中に、表面をコバルト膜20で覆った基板Wを浸漬させることで、コバルト膜20の表面の銅より卑な金属であるコバルトを前処理液中の銅に置換させ、これによって、コバルト膜20の表面を銅からなる金属皮膜(銅皮膜)で覆う。これによって、コバルト膜20の表面をめっき液から保護する。この時、銅皮膜がコバルト膜20の全表面を覆うと置換反応は停止し、コバルト膜20の表面に極薄い銅皮膜が形成される。このため、コバルト膜20の膜厚は、銅皮膜に殆ど影響を受けず、コバルト膜20のバリア層としての役割が阻害されることはない。
【0054】
前処理液として、弱酸性から弱アルカリ性のものを使用することが好ましく、これにより、コバルト膜20が前処理液に接触して処理液中に溶け出すことを防止できる。また、前処理液の溶存酸素濃度を前記脱気水と同様に制御してもよい。
【0055】
この第2前処理後の基板Wを装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、第1水洗装置168aに搬送し、この水洗槽184aに入れた純水で基板の表面を水洗する。
【0056】
水洗が終了した基板Wを装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして電気めっき装置170のめっき槽186の上方に搬送する。めっき槽186にあっては、この内部に所定の組成を有する所定量のめっき液Qを満たし循環させておく。そして、基板ホルダ160を下降させ、基板ホルダ160で保持した基板Wをめっき槽186内のめっき液Qに浸漬させてアノードホルダ222で保持したアノード220に対面させる。
【0057】
そして、アノード220と基板Wの表面の銅皮膜で覆われたコバルト膜20との間に電圧を印加することなく、基板Wをめっき液Q中に所定時間浸漬させ、これによって、ビアホール12内の前処理液をめっき液Qに置換する。しかる後、アノード220と基板Wの表面の銅皮膜で覆われたコバルト膜20との間に電圧を印加し、基板Wの銅皮膜で覆われたコバルト膜20の表面にめっき膜(銅)を析出させてビアホール12内にめっき膜(銅)を埋込む電気めっきを行う。
【0058】
この電気めっきには、比較的安価で、液管理が比較的容易な酸性の硫酸銅めっき液が使用される。この酸性の硫酸銅めっき液にコバルト膜20が直接接触すると、コバルト膜20はめっき液中に溶けてしまうが、この例では、コバルト膜20の表面に薄い銅皮膜で形成されているため、酸性の硫酸銅めっき液にコバルト膜20が直接接触することはなく、これによって、コバルト膜20がめっき液中に溶けてしまうが防止される。そして、アノード220と基板Wの表面のコバルト膜20との間に電圧を所定時間印加して電気めっきを終了する。
【0059】
ここで、基板がめっき液に浸漬されてから電気めっきが終了するまで、必要に応じて、攪拌パドル232を基板Wと平行に往復運動させて、調整板224と基板Wとの間のめっき液Qを攪拌パドル232で攪拌する。埋込みが進行して、めっき液が容易にビアホール内のめっき金属表面に到達することができる程にビアホールのアスペクト比が小さくなった時に、めっき液の強い撹拌を続けると、めっきの成長が遅くなり、埋込みまでの時間が余計にかかる場合がある。このような場合には、めっきがある程度進んだ段階で、めっき液の撹拌の強度を弱めた方が望ましい。
【0060】
そして、電気めっき終了後、アノード220と基板Wの表面の銅皮膜で覆われたコバルト膜20との間の電圧の印加を解き、基板を装着した基板ホルダ160を第2搬送ロボット174bで再度保持してめっき槽186から引き上げる。
【0061】
次に、前述と同様にして、基板ホルダ160を第2水洗装置168bまで搬送し、この水洗槽184bに入れた純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。次に、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ブロー装置172に搬送し、ここで、不活性ガスやエアーを基板に向けて吹き付けて、基板ホルダ160に付着しためっき液や水滴を除去する。しかる後、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。
【0062】
第2搬送ロボット174bは、上記作業を順次繰り返し、電気めっきが終了した基板を装着した基板ホルダ160を順次ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。一方、第2搬送ロボット174aにあっては、めっき処理後の基板を装着しストッカ164に戻した基板ホルダ160を2基同時に把持し、前記と同様にして、基板脱着台162上に載置する。
【0063】
そして、清浄空間114内に配置された第1搬送ロボット128は、この基板脱着台162上に載置された基板ホルダ160から基板を取出し、いずれかの洗浄・乾燥装置124に搬送する。そして、この洗浄・乾燥装置124で、表面を上向きにして水平に保持した基板を、純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させた後、この基板を第1搬送ロボット128でロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットに戻して、一連のめっき処理を完了する。
【0064】
次に、異なる大きさのビアホールの表面を含む全表面をコバルト膜で覆った複数種類の基板を用意し、基板を脱気水で浸漬させる基板のプリウェット処理(第1前処理)を行った後、銅濃度が異なる複数種類の前処理液を使用してコバルト膜の置換処理(第2前処理)を行い、しかる後、電気めっきを行って、ビアホールの内部にめっき金属(銅)の埋込みを行った時の埋込み状態を以下に説明する。
【0065】
図11は、表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホール12aを有する基板Wの表面に、基板Wを脱気水に浸漬させるプリウェット処理(第1前処理)を10分間行った後、銅濃度が10g/Lの前処理液を使用したコバルト膜表面の置換処理(第2前処理)を1分間行い、しかる後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホール12aの内部にめっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。図12は、表面をコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120m程度のビアホール12bを有する基板Wの表面に、前述と同様にして、めっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。図13は、表面をコバルト膜で覆われた、直径30μmで深さ130μm程度のビアホール12cを有する基板Wの表面に、前述と同様にして、めっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。
【0066】
図11〜図13から、銅濃度が10g/Lの前処理液を使用したコバルト膜表面の置換処理(第2前処理)を1分間行うと、図11に示すように、直径10μmで深さ100μm程度のビアホール12aに対しては埋込み深さにばらつきが生じ、図13に示すように、直径30μmで深さ130μm程度のビアホール12cに対してはビアホール12cの深部に未充填部が生じるものの、図12に示すように、直径20μmで深さ120μm程度のビアホール12bに対する埋込み性が良好となることが判る。
【0067】
なお、銅濃度が10g/Lの前処理液は、純水に硫酸銅を溶解させて調整される。このように、純水に硫酸銅を溶解させる前処理液を調整することは、以下の銅濃度が30g/Lの前処理液、及び銅濃度が60g/Lの前処理液にあっても同様である。
【0068】
図14は、表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホール12aを有する基板の表面Wに、基板Wを脱気水に浸漬させるプリウェット処理(第1前処理)を10分間行った後、銅濃度が30g/Lの前処理液を使用したコバルト膜表面の置換処理(第2前処理)を1分間行い、しかる後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホール12aの内部にめっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。図15は、表面をコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120μm程度のビアホール12bを有する基板Wの表面に、前述と同様にして、めっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。
【0069】
図14及び図15から、銅濃度が30g/Lの前処理液を使用したコバルト膜表面の置換処理(第2前処理)を1分間行うと、図14に示すように、直径10μmで深さ100μm程度のビアホール12aに対してはビアホール12aの深部に未充填部が生じるものの、かなりの深さまで均一に埋込むことができ、図15に示すように、直径20μmで深さ120μm程度のビアホール12bに対してはほぼ完全に埋込みを行うことができることが判る。
【0070】
図16は、表面をコバルト膜で覆われた、直径10μmで深さ100μm程度のビアホール12aを有する基板Wの表面に、基板Wを脱気水に浸漬させるプリウェット処理(第1前処理)を10分間行った後、銅濃度が60g/Lの前処理液を使用したコバルト膜表面の置換処理(第2前処理)を1分間行い、しかる後、硫酸銅めっき液を使用した電気めっきを行って、ビアホール12aの内部にめっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。図17は、表面をコバルト膜で覆われた、直径20μmで深さ120μm程度のビアホール12bを有する基板Wの表面に、前述と同様にして、めっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。図18は、表面をコバルト膜で覆われた、直径30μmで深さ130μm程度のビアホール12cを有する基板Wの表面に、前述と同様にして、めっき金属(銅)18の埋込みを行った時の状態を模式的に示す。
【0071】
図16〜図18から、銅濃度が60g/Lの前処理液を使用したコバルト膜表面の置換処理(第2前処理)を1分間行うと、図16に示す直径10μmで深さ100μm程度のビアホール12aにあっては、ビアホール12aの深部に僅かな未充填部が生じるものの、図17に示す直径20μmで深さ120μm程度のビアホール12bや図18に示す直径30μmで深さ130μm程度のビアホール12cに対する埋込み性が良好であることが判る。
【0072】
なお、上記の例では、水素よりもイオン化傾向の大きな第1金属としてコバルトを、コバルトより貴な第2金属として銅を使用し、めっきによって銅(第2金属)をビアホール内に埋込むようにしており、めっき液に含まれる硫酸銅を純水に溶かして銅を含む前処理液を調製している。このように、めっき液に含まれる成分を使用して前処理液を調製することで、後の工程での持ち込みを考慮する必要をなくすことができる。コバルト(第1金属)より貴な金属(第2金属)として、パラジウム、金、プラチナまたは銀を使用し、めっきによって銅(第3金属)をビアホール内に埋込むようにしてもよい。
【0073】
また、上記の例では、例えば純水(DIW)からなる脱気水に基板を浸漬させて基板表面の親水性を良くするプリウェット処理(第1前処理)と、コバルトより貴な金属である銅を溶解させた中性または弱アルカリの前処理液に基板を浸漬させてコバルト膜表面のコバルトを銅に置換する置換処理(第2前処理)を別々に行っているが、銅を溶解させた弱酸性から弱アルカリ性の前処理液を脱気して基板を浸漬させることで、上記プリウェット処理(第1前処理)と上記置換処理(第2前処理)を同時に行うようにしても良い。
【0074】
なお、上記の例では、バリア膜とシード膜を兼ねるコバルト膜の表面に銅を置換析出させ、さらにビアホール内に銅をめっきで埋込むようにしているが、水素よりもイオン化傾向の大きな金属の表面に銅をめっきで形成する場合にも、本発明は適用できる。この場合、銅を溶解させた前処理液によって前記金属の表面に銅を置換析出させ、しかる後、銅めっきを行う。上記の例のコバルト膜はバリア層として機能するが、バリア性として機能する膜としては、例えばニッケル膜であっても良い。さらに、ビアホールを覆う金属(第1金属)は、バリア性を有する必要性は必ずしもなく、予め他のバリア層を形成した上で、水素よりもイオン化傾向の大きな金属(第1金属)を堆積し、さらにその上に銅をめっきで形成する場合にも本発明は適用できる。また置換析出させる金属は銅に限定されず、またビアホールに埋込む金属も銅に限定されない。
【0075】
本発明が適用できる水素よりもイオン化傾向の大きな金属(第1金属)としては、コバルトの他に例えばニッケルがある。また、その表面に置換析出させる金属(第2金属)は、銅の他にパラジウム、金、白金、銀などがある。また上記の例では、ビアホール内に金属を埋込むようにしているが、トレンチ配線への金属の埋込み、或いはスルーホールめっきなどにも本発明は適用できる。
【0076】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
12,12a,12b,12c ビアホール
18 めっき金属(銅)
20 コバルト膜
124 洗浄・乾燥装置
126 第1前処理装置
160 基板ホルダ
164 ストッカ
166 第2前処理装置
168a,168b 水洗装置
170 電気めっき装置
172 ブロー装置
186 めっき槽
220 アノード
224 調整板
232 攪拌パドル(攪拌具)
250 めっき電源
252 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水素よりもイオン化傾向の大きな第1金属によって覆われたビアホールが形成された基板を用意し、
基板を前記第1金属より貴な第2金属またはその塩を溶解させた前処理液に浸漬させて基板の前処理を行い、しかる後、
基板の表面に電気めっきを行って前記ビアホール内に前記第2金属または第3金属を埋込むことを特徴とする電気めっき方法。
【請求項2】
前記前処理液は、弱酸性から弱アルカリ性であることを特徴とする請求項1記載の電気めっき方法。
【請求項3】
基板を脱気水に浸漬させる前処理を行った後、基板を前記第2金属またはその塩を溶解させた前処理液に浸漬させる前記前処理を行うことを特徴とする請求項1または2記載の電気めっき方法。
【請求項4】
前記第1金属は、コバルトであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気めっき方法。
【請求項5】
前記第2金属は銅で、前記前処理液中の銅濃度は、1〜70g/Lであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気めっき方法。
【請求項6】
前記第2金属は、パラジウム、金、プラチナまたは銀で、前記第3金属は銅であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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