説明

電気パルス発生装置

【課題】従来方法の複合磁性ワイヤを使用した電気パルス発生装置においては、複合磁性ワイヤに磁界を印加するための2個以上の磁石を使用して磁界を反転する必要があるとされた。簡素な構成で複合磁性ワイヤを使用した電気パルス発生装置が実現可能であれば、無接点スイッチ、エンコーダナドなどに応用範囲を拡大できる。
【解決手段】大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性ワイヤにコイルを巻き回し配置し、少なくとも1つ以上の磁石または電磁石である磁界発生手段を持つ電気パルス発生装置であって、前記磁性ワイヤに磁界を局所的に与え、この磁界の強度あるいは方向を変化させることで電気パルスを発生することが可能な装置であって、簡素で応用範囲の広い構造の電気パルス発生装置が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼンジャンプを利用した電気パルス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動している物体の移動位置や移動速度に応じた電気パルスを得る、あるいは種々の操作に応じた電気パルス信号を発生することは、自動制御分野や、電気および電子機器等の各種の分野において必要とされている。従来、この種の電気パルスを発生する手段としては、光学式あるいは磁気式など種々なものがエンコーダとして開発され使用されているが、それらの一つとして、大バルクハウゼンジャンプを利用した電気パルス発生装置がある。
この電気パルス発生装置は、磁性ワイヤ、磁石、電気コイル等から構成されるもので、磁石などの磁界発生手段の移動あるいは置き換えにより磁気異方性を持つ磁性体中の磁束密度を変化させて、この変化により近接する電気コイルに、電磁誘導作用により電圧が発生され、この電圧をパルス信号として使用するものである。
【0003】
また電気スイッチの一種に磁性体よりなる可動部分を設けこれに連動する接点よりなっており、外部より磁界を印加することによりオン−オフ動作を行うリードスイッチがある。このような電気スイッチのチャタリング動作を起こすなどの接点に関する欠点を補うものとして、本発明の属する分野の大バルクハウゼンジャンプを利用した電気パルス発生装置は電源が不要であり、パルス信号を出力する無接点スイッチとして有用である。
【0004】
本発明の背景技術として大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性ワイヤについて説明する。強磁性体を線引きして細いワイヤにしたものは、その合金組成とともに独特な磁気的性質を持つ。このワイヤにひねり応力を加えると、ワイヤの外周部付近ほど多くひねられ、中心部ほどひねられ方は少なくなり、このため外周部と中心部では磁気特性が異なることとなる。この状態を残留させる加工を施すと、外周部と中心部で磁気特性が異なる強磁性体の磁性ワイヤができる。
【0005】
この磁性ワイヤの外周部の磁気特性は、比較的小さな磁界によってその磁化方向を変える。これに対して、中心部は、外周部よりも大きな磁界によってその磁化方向を変える。すなわち、一本の磁性ワイヤの中に比較的磁化されやすい磁気特性を持つ外周部と、磁化されにくい中心部という2種類の異なった磁気特性を持つ複合磁性体が形成されている。ここでは、外周部をソフト層、中心部をハード層と呼び、このような磁性ワイヤを複合磁性ワイヤと称する。
【0006】
この複合磁性ワイヤのハード層およびソフト層は、初期的には、どのような方向に磁化されているか定まっておらず、バラバラな磁化状態にある。この複合磁性ワイヤの長手方向、つまり軸線方向と平行に、ハード層の磁化方向を反転させるのに十分な外部磁界をかけると、ソフト層は、当然のこと、ハード層も磁化され同じ磁化方向にそろう。次に、ソフト層だけを磁化できるような外部磁界を、前とは逆方向にかける。その結果、複合磁性ワイヤのソフト層とハード層とでは磁化されている方向が逆であるという磁化状態ができる。この状態で外部磁界を取り去ってもソフト層の磁化方向は、ハード層の磁化に押さえられていて磁化状態は安定している。このときの外部磁界をセット磁界と呼ぶ。
【0007】
次に、セット磁界と反対方向の外部磁界をかけてこの外部磁界を増加させる。外部磁界の強さがある臨界強度を越すと、ソフト層の磁化方向は急激に反転する。この磁界を臨界磁界と呼ぶ。このときの反転現象は、雪崩をうつような状態でソフト層の磁壁が移動して一瞬のうちに磁化反転が起きる。この結果、ソフト層とハード層の磁化方向は同じとなり最初の状態に戻る。外部磁界は臨界磁界よりも大きな磁界をかけることとなる。この磁界をリセット磁界と呼ぶ。この雪崩をうつように磁化状態が反転する現象を大バルクハウゼンジャンプとされている。磁化反転の速度は、この大バルクハウゼンジャンプのみに依存していて外部磁界には無関係とされる。
【0008】
従来の技術において、前述の大バルクハウゼンジャンプを発生させるためには、基本的に磁極を反転した状態の2個以上の磁石を磁性ワイヤに交互に近接させて電気パルスを発生することを動作原理としていた。
【0009】
この動作原理に従う電気パルス発生装置は、複合磁性ワイヤを感磁要素とし、その全体を正方向に磁化する第1の磁界発生源および感磁要素の比較的ソフトな部分を負方向に磁化するための第2の磁界発生源が必要であり、さらに感磁要素の近くに検出コイルを設置固定し、第1の磁界発生源に続けて第2の磁界発生源を近接させることにより感磁要素である複合磁性ワイヤに大バルクハウゼンジャンプを起こさせて、前記検出コイルにパルス電圧を発生させるようにしたものである。
【0010】
この方式の電気パルス発生装置の例として、特公昭52−13705号公報に開示されているパルス信号発生装置が提案されている。このパルス信号発生装置は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる強磁性体からなる感磁要素と、その全体を正方向に磁化する第1の磁界発生源および感磁要素の比較的ソフトな部分を負方向に磁化するための第2の磁界発生源ならびに感磁要素の近くに配置された検出コイルよりなり、感磁要素および検出コイルとを固定し、第1の磁界発生源で磁化された後に第1の磁界発生源と逆の方向の磁化を第2の磁界発生源によりなされるよう磁界発生源を可動体として組み合わせてなり、可動体の回転により感磁要素に所定の変化を起こさせて、検出コイルにパルス電圧を発生させるようにしたものである。この従来例は、ワイヤ全体に磁界が印加されさらにワイヤ全体の磁界が交番するように磁界発生源が配置されている例である。
【0011】
この方式について電気パルス発生装置の他の例が、特公昭64−8929号公報に開示されている。この電気パルス発生装置は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる感磁要素と、その全体を正方向に磁化する第1の磁界発生源と感磁要素の比較的ソフトな部分を負方向に磁化するための第2の磁界発生源ならびに感磁要素の近くに配置された検出コイルとを固定し、この固定側に対し、第1の磁界発生源の感磁要素に対する磁化作用を断続的に減殺させる可動体を組み合わせてなり、可動体の挙動により感磁要素に所定の変化を起こさせて、検出コイルにパルス電圧を発生させるようにしたものである。この従来例は、ワイヤ全体に印加される磁界が変動するように磁性体よりなる可動体が配置されている例である。
【0012】
これらの従来の電気パルス発生装置は、無電源とすることができ、外部磁界の影響を受けにくい点を優れているところとして、従来の電磁ピックアップやホール効果型センサの代わりに使用することができるものである。
【0013】
【特許文献1】特公昭52−13705号公報
【特許文献2】特公昭64−8929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記の磁性ワイヤに磁気バイアスを印加して大バルクハウゼンジャンプを利用したパルス信号を得るためには、前記の感磁要素である複合磁性ワイヤに印加する磁気バイアスとして前述の第1の磁界発生源と第2の磁界発生源に相当する磁界が必要である。
【0015】
図13に、従来例の動作原理図を示す。図13に示すように、N極とS極の方向が交互に入れ替わるように少なくとも2個以上の磁石を複合磁性ワイヤの中心線の方向に該平行に配置し、少なくとも2個以上配置した磁石より複合磁性ワイヤに交番磁界が印加できるよう、回転などの運動をさせる。しかし、このような構造を持つと、
電気パルス発生装置は構造が複雑で形状的にも大きなものとなる。そのため、小型の電子機器内に組み込むことは困難な状況にあり、さらには少なくとも2個以上の磁石を使用するため、磁石間の着磁のばらつきを抑えることと組み立ての精度を必要とし、安価な製品を提供することは困難であった。
【0016】
特許文献2において提案されている電気パルス発生装置においても、次のような問題点を有している。すなわち、磁性体にスリットを設けた可動体が必要である。この可動体は、第1の磁界発生源および第2の磁界発生源としての磁石や感磁要素よりも小さくできない。さらには、可動体と磁石や感磁要素は、互いに平行を保ち運動しなければならないという複雑な構造となる。したがって電子機器の内部に組み込めるような小型で安価なものとすることは困難であった。
【0017】
本発明の課題は、簡素な構成で充分な性能を持ち、さらに幅広い分野で応用可能な電気パルス発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による電気パルス発生装置は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる複合磁性ワイヤと、複合磁性ワイヤに巻き回して配置された検出コイルと、1つの磁界発生手段を持った簡単な構造を持つ装置である。
【0019】
従来、大バルクハウゼンジャンプを誘起するためには、複合磁性ワイヤの中心方向のほぼ全体に磁界を印加させる必要があるとされていた。しかし、複合磁性ワイヤの局所に磁界を印加させるだけでも大バルクハウゼンジャンプと思われる現象を見出した。動作原理については、上述の大バルクハウゼンジャンプによるものと考えられるが、詳細な理論的解明は今後に待つところである。
【0020】
大バルクハウゼンジャンプを起こしうる複合磁性ワイヤに対して、1つの磁界発生手段から発せられる磁界を、前記磁性ワイヤの局所に印可し、前記磁界発生手段の磁界強度あるいは磁界の方向を変化させることで電気パルスを発生させることができる。この現象を利用した電気パルス発生装置を提供しようとするものである。
【0021】
磁界発生手段を移動させる典型的な例としては、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性ワイヤに対して、複合磁性ワイヤの長さのおおよそ1/4の部分の複合磁性ワイヤ側面に複合磁性ワイヤの中心線と直交して、磁界発生手段のN極を近接させて、これを磁性ワイヤの中心線と磁界発生手段のN極とS極を結ぶ直線とそれぞれに直交する方向に移動させる場合において、磁界発生手段と磁性ワイヤ間の距離、磁界発生手段の大きさ、発生する磁界の強度などを適切に選ぶことによって電気パルスを発生することができる。
【0022】
磁界発生手段を近接させて磁界を印加する部分は、上記の例に限らず、磁性ワイヤの一部側面であれば、電気パルスを発生させることができる。ただし、磁性ワイヤの長さ方向の中心付近、あるいは磁性ワイヤの端部付近では、電気パルスの出力が小さく不安定で実用的ではない。したがって磁界を印加する部分は、長さ方向の中心付近および端部以外のいずれかに磁界を印加する方法が望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一つの磁性ワイヤに対して磁界発生手段が一つあれば出力が発生するため、従来から苦慮されていた複数の磁界発生手段の磁界強度を均一化することと、取り付け精度を維持することが簡略化でき、小型で安価な電気パルス発生装置の提供が可能となった。
【0024】
さらに、本発明による電気パルス発生装置は、従来の大バルクハウゼンジャンプを利用した電気パルス発生装置に比較して簡素な構成で充分な性能を達成するため、電気パルス信号を発生する無電源のスイッチやエンコーダなどの広い応用分野において利用可能な電気パルス発生装置の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
従来例では複数の磁界発生手段が必要であるとされるのに比して磁界発生手段を、1個の永久磁石または1個の電磁石として磁性ワイヤの一部に局所的に近接することにより、磁性ワイヤの一部を磁化する構成をとる。以下実施例に従って説明する。
【0026】
なお、実施例において複合磁性ワイヤの中心線の方向をX方向、複合磁性ワイヤの中心線の方向に直角の方向をそれぞれY方向、Z方向として説明する。
【実施例1】
【0027】
図1に実施例1を示す。図1の電気パルス発生装置は、複合磁性ワイヤ1と、この複合磁性ワイヤ1の周りに巻き回された検出コイル2と、複合磁性ワイヤ1の一部を磁化しうる磁界を発生する磁界発生手段としての直方体の永久磁石3を備えている。永久磁石3は複合磁性ワイヤ1の長さ方向の中心線位置から適度な距離を持って、複合磁性ワイヤ1に接触せず、複合磁性ワイヤ1の側面より複合磁性ワイヤ1を磁化するよう近接配置されている。永久磁石3は、複合磁性ワイヤ1の中心線と直交する方向(Z方向)に着磁されていて、図1の例では複合磁性ワイヤ1に近接する方向がN極になっているが、複合磁性ワイヤ1に近接する方向がS極でも同じ効果は得られる。
【0028】
図1において、永久磁石3がY方向へ往復移動した場合、ほぼ永久磁石3のY方向の端部と複合磁性ワイヤが最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。したがって磁石の移動するスピードと磁石の幅に対応した間隔で正負の電気パルスを発生することができる。
【0029】
具体的に、このような構成を有する電気パルス発生装置の動作例について説明する。図1において、複合磁性ワイヤ1として直径250μm長さ22mmのバイカロイワイヤを用い、中心部10mmの範囲に3000ターンの検出コイル2が巻きまわしてある。永久磁石3はY方向の幅5mm、X方向の幅6mm、Z方向厚さ2.5mmの大きさであり、350mTの磁界強度に着磁してある。
【0030】
永久磁石は、ワイヤに接触しないようZ方向へ1mm離れた状態でY方向へ移動できるよう配置されており、X方向の永久磁石中心の位置は、複合磁性ワイヤ1の一方の端部より8.3mmの位置に一致してY方向へ移動する。永久磁石が複合磁性ワイヤに相対的に移動する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイルに電気パルスが発生する。実施例1のY方向へ永久磁石3が移動する場合、ほぼ永久磁石3のY方向の端部と複合磁性ワイヤが最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。すなわち永久磁石3の移動する速度に依存しない正負のそれぞれ1個のパルスが発生する。図7に実施例1の電気パルスを図示する。実施例1のような構造を持つ電気パルス発生装置は、正負二つの電気パルスの大きさは異なる。
【0031】
実施例1において、永久磁石3の着磁によりN極とS極の方向を逆に配置した場合、検出コイルに発生する電気パルスは、極性が逆転した電気パルスが得られ図7を反転した出力パルスとなる。
【実施例2】
【0032】
図2に実施例2を示す。図2はこの実施例の電気パルス発生装置の構成を概略的に示している。図2の電気パルス発生装置は、基本的な構成は図1と同様の図であって、電気パルス発生装置を構成する各要素は図1と同じものとして説明できる。
【0033】
実施例2では、永久磁石3は、複合磁性ワイヤ1の中心線と該並行に移動する。
【0034】
このような構成を有する電気パルス発生装置の動作について説明する。図2において、永久磁石3は複合磁性ワイヤ1に対して、X方向へ移動する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイル2に電気パルス信号が発生する。実施例2のX方向へ永久磁石3が移動する場合、ほぼ永久磁石3のX方向の端部と複合磁性ワイヤの端部が最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。したがって磁石の移動するスピードと磁石の幅に対応した間隔で電気パルスを発生することができる。
【0035】
具体的に、このような構成を有する電気パルス発生装置の動作例について説明する。各要素について大きさと性能は実施例1と同様とする。
【0036】
永久磁石は、ワイヤに接触しないようZ方向へ9.5mm離れた状態でX方向へ移動できるよう配置されており、X方向の永久磁石中心の位置は、複合磁性ワイヤ1の中心線に沿って移動する。実施例2においてX方向へ永久磁石3が移動する場合、ほぼ永久磁石3のX方向の端部と複合磁性ワイヤの端部が最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。すなわち磁石の移動する速度に依存しない正負のそれぞれ1個のパルスが発生する。図8に発生する電気パルスを図示する。実施例2のような構造を持つ電気パルス発生装置は、正負二つの電気パルスの大きさは異なる。
【0037】
実施例2において、永久磁石3の着磁によりN極とS極の方向を逆に配置した場合、検出コイルに発生する電気パルスは、極性が逆転したパルス信号が得られ図8を反転した出力パルスとなる。
【実施例3】
【0038】
図3に実施例3を示す。図3は、この実施例の電気パルス発生装置の構成を概略的に示している。実施例3の各要素と配置は実施例1と同様であるが、実施例1では永久磁石3の着磁方向がZ方向であるのに対し、実施例3では永久磁石の着磁方向はY方向である。
【0039】
次にこのような構成を有する電気パルス発生装置の動作について説明する。図3において、永久磁石3は複合磁性ワイヤ1に対して、Y方向へ移動する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイル2に電気パルスが発生する。実施例3のY方向へ永久磁石3が移動する場合、ほぼ永久磁石3のY方向の端部すなわちN極とS極の側面と複合磁性ワイヤが最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。したがって磁石の移動するスピードと磁石の幅に対応した間隔で電気パルスを発生することになる。
【0040】
このような構成を有する電気パルス発生装置の動作例について説明する。図3において、複合磁性ワイヤ1と検出コイル2については、実施例1と同様のものを用いた。永久磁石3はY方向の幅2.5mm、X方向の幅6mm、Z方向厚さ5mmの大きさであり、350mTの磁界強度に着磁してある。
【0041】
永久磁石は、ワイヤに接触しないようZ方向へ1mm離れた状態でY方向へ移動可能に設置されており、X方向の永久磁石中心の位置は、複合磁性ワイヤ1の一方の端部より3mmの位置に一致して移動する。永久磁石が複合磁性ワイヤに相対的に移動する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイルに電気パルス信号が発生する。実施例3のY方向へ永久磁石3が移動する場合、ほぼ永久磁石3のY方向の端部すなわち磁極Nと磁極Sの側面と複合磁性ワイヤが最近接するそれぞれの位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。すなわち磁石の移動する速度に依存しない正負のそれぞれ1個のパルスが発生する。
【実施例4】
【0042】
図4に実施例4を示す。図4は、この実施例の電気パルス発生装置の構成を概略的に示している。図4の電気パルス発生装置は、複合磁性ワイヤ1と、この複合磁性ワイヤ1の周りに巻き回された検出コイル2と、複合磁性ワイヤ1の近傍にそって配置され、複合磁性ワイヤ1を磁化しうる磁界を発生する磁界発生手段として円板状永久磁石33とを備えている。
【0043】
実施例4では、回転中心を複合磁性ワイヤ1の中心線と該平行に持つ円板状永久磁石33が、複合磁性ワイヤ1の長さ方向の中心線位置から適度な距離をもって、複合磁性ワイヤ1に近接するが接触しない状態で回転可能に設置されている。円板状永久磁石33の外周部は、複合磁性ワイヤ1の中心線と直角方向(YまたはZ方向)にN極とS極が着磁されていている。なお、実施例4では単極着磁の円板状永久磁石としたが、磁気ドラムのように多極面着磁された永久磁石でも効果は同じである。
また、実施例4では単極着磁の円板状永久磁石としたが、棒状永久磁石でも効果は同じである。
【0044】
図4において、複合磁性ワイヤ1として直径250μm長さ22mmのバイカロイワイヤを用い、中心部10mmの範囲に3000ターンの検出コイル2が巻き回してある。円板状永久磁石33は直径が10mm、X方向の幅3mmの円板であり、表面において30mTの磁界強度のN極とS極が交互にそれぞれ着磁してある。
【0045】
円板状永久磁石33の外周は、複合磁性ワイヤ1と1mm離れて設置されて、接触しないよう配置されている。円板状永久磁石が回転する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイルに電気パルス信号が発生する。円板状永久磁石33のN極とS極が入れ替わり複合磁性ワイヤに近接する特定の位置で、正または負の電気パルスが発生する。すなわち磁石の移動する速度に依存しない回転数と磁極に応じた正または負のパルスが発生する。図10に発生する電気パルスを図示する。実施例4のような構造を持つ電気パルス発生装置は、正負二つの電気パルスの大きさはほぼ等しくなる。
【実施例5】
【0046】
図5に実施例5を示す。図5は、この実施例の電気パルス発生装置の構成を概略的に示している。図5の電気パルス発生装置の構成は、基本的に実施例4と同様のものである。
【0047】
実施例5では、回転中心を複合磁性ワイヤ1の中心線と該直行方向に持つ円板状永久磁石33が、複合磁性ワイヤ1の長さ方向の中心線位置から適度な距離をもって、複合磁性ワイヤ1に近接するが接触しない状態で回転可能に設置されている。円板状永久磁石33の外周部は、複合磁性ワイヤ1の中心線と直角方向(XまたはZ方向)にN極とS極が着磁されていている。なお、実施例4では単極着磁の円板状永久磁石としたが、磁気ドラムのように多極面着磁された永久磁石でも効果は同じである。
また、実施例5では単極着磁の円板状永久磁石としたが、棒状永久磁石でも効果は同じである。
【0048】
図5において、複合磁性ワイヤ1、検出コイル2、および円板状永久磁石33は実施例4と同一の仕様のものである。
【0049】
円板状永久磁石33の外周は、複合磁性ワイヤ1と3mm離れて設置されて、接触しないよう配置されている。円板状永久磁石が回転する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイルに電気パルス信号が発生する。円板状永久磁石33のN極とS極が入れ替わり複合磁性ワイヤに近接する特定の位置で、正または負の電気パルスが発生する。すなわち磁石の移動する速度に依存しない回転数と磁極に応じたパルスが発生する。図11に発生する電気パルスを図示する。実施例5のような構造を持つ電気パルス発生装置は、正負二つの電気パルスの大きさはほぼ等しくなる。
【実施例6】
【0050】
図6に実施例6を示す。図6は電気パルス発生装置の構成を概略的に示している。この実施例の電気パルス発生装置は、磁界発生手段の構成以外は、図1に示した実施例と同様の構成であり、ここでは、磁界発生手段の構成についてのみ説明する。この磁界発生手段は電磁石34であり、複合磁性ワイヤ1の長さ方向の中心線位置から適度な距離をもって、複合磁性ワイヤ1に接触せず配置されている。
【0051】
図6において、複合磁性ワイヤ1として直径250μm長さ22mmのバイカロイワイヤを用い、中心部10mmの範囲に3000ターンの検出コイル2が巻き回してある。電磁石34は直径が3mm、Z方向長さ35mmの円柱状フェライトコアの中央部25mmに10000ターンのコイルが巻き回したものであり、電磁石34の中心線は複合磁性ワイヤ1の一方の端部よりX方向へ3mm内側において複合磁性ワイヤ1の中心線と直交し、先端部を複合磁性ワイヤよりZ方向へ2mm離れて設置してある。50サイクルの交流電流を電磁石34に流したとき検出コイルより図12のパルス信号を得た。図12に示すように電磁石に流す電流によって交番する磁界の特定の磁界が印加する際に、正負の電圧パルスが発生する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の電気パルス発生装置は、非常に簡素な構成で無電源の電気パルス出力のスイッチ、各種の位置変化を電気パルス信号として出力するエンコーダに応用可能である。
【0053】
従来、磁気バイアスの変動を与えるために複雑な構成をとっていたことにより実用化が充分進展しなかった複合磁性ワイヤ応用の電気パルス発生装置が、非常に簡素な構成で実現可能となることによって、パルス出力のスイッチ、各種のエンコーダなどが容易に実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の電気パルス発生装置の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の電気パルス発生装置の第2の実施例を示す構成図である。
【図3】本発明の電気パルス発生装置の第3の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明の電気パルス発生装置の第4の実施例を示す構成図である。
【図5】本発明の電気パルス発生装置の第5の実施例を示す構成図である。
【図6】本発明の電気パルス発生装置の第6の実施例を示す図である。
【図7】本発明の電気パルス発生装置の第1の実施例の出力を示す図である。
【図8】本発明のパルス発生装置の第2の実施例の出力を示す図である。
【図9】本発明の電気パルス発生装置の第3の実施例の出力を示す図である。
【図10】本発明の電気パルス発生装置の第4の実施例の出力を示す図である。
【図11】本発明の電気パルス発生装置の第5の実施例の出力を示す図である。
【図12】本発明の電気パルス発生装置の第6の実施例の出力を示す図である。
【図13】電気パルス発生装置の従来例動作原理を示す構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1 複合磁性ワイヤ
2 検出コイル
3 永久磁石
33 円板状永久磁石
34 電磁石


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性ワイヤにコイルを巻きまわし配置し、大バルクハウゼンジャンプを誘起させる少なくとも1つ以上の磁界発生手段を持つ電気パルス発生装置であって、前記磁性ワイヤに対して、前記磁界発生手段から発せられる磁界を局所的に与えることを特徴とする電気パルス発生装置。
【請求項2】
前記磁界発生手段は、少なくとも1つ以上の永久磁石とし、前記磁性ワイヤに対して前記永久磁石を相対的に移動させることを特徴とする請求項1記載の電気パルス発生装置。
【請求項3】
前記永久磁石は、多極面着磁された永久磁石とする請求項1、又は請求項2記載の電気パルス発生装置。
【請求項4】
前記磁界発生手段は、少なくとも1つ以上の電磁石とし、前記電磁石から発せられる交番磁界により、電気パルスを発生することを特徴とする請求項1記載の電気パルス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−352608(P2006−352608A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177296(P2005−177296)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000110985)ニッコーシ株式会社 (11)